IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コマニー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-移動壁 図1
  • 特開-移動壁 図2
  • 特開-移動壁 図3
  • 特開-移動壁 図4
  • 特開-移動壁 図5
  • 特開-移動壁 図6
  • 特開-移動壁 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074217
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】移動壁
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/00 20060101AFI20230522BHJP
   E06B 7/18 20060101ALI20230522BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
E05D15/00 A
E06B7/18 A
E06B7/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187050
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036AA05
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036DA07
2E036EB02
2E036EB10
2E036EC03
2E036FA02
2E036FA03
2E036FB01
2E036GA02
2E036HA01
2E036HB03
(57)【要約】
【課題】 高い防音性能を長期間に亘り維持できる大型の移動壁を提供する。
【解決手段】 本発明の移動壁1は、走行レール3に沿って移動可能な移動壁において、パネル本体10と、パネル本体の内部に出退自在に格納される上部及び下部の二つの圧接体20と、上部の圧接体を走行レールに、下部の圧接体を床面4に圧接させる駆動機構とを備えており、圧接時には圧接体の防音材41がパネル本体の内壁に接触し、圧接解除時には防音材が内壁から離れる又は圧接時よりも相対的に弱い力でパネル本体の内壁に接触する。したがって、従来のように防音材が常時パネル本体に接触していると比較して圧接体の動きを滑らかにすることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに沿って移動可能な移動壁において、
パネル本体と、
前記パネル本体の内部に出退自在に格納される上部及び下部の二つの圧接体と、
前記上部の圧接体を前記走行レールに、前記下部の圧接体を床面に圧接させる駆動機構とを備えており、
圧接時には前記圧接体の防音材が前記パネル本体の内壁に接触し、圧接解除時には前記防音材が前記内壁から離れる又は圧接時よりも相対的に弱い力で前記パネル本体の内壁に接触することを特徴とする移動壁。
【請求項2】
走行レールに沿って移動可能な移動壁において、
パネル本体と、
前記パネル本体の内部に出退自在に格納される右部又は左部の一つの圧接体と、
前記圧接体を壁レールに圧接させる駆動機構とを備えており、
圧接時には前記圧接体の防音材が前記パネル本体の内壁に接触し、圧接解除時には前記防音材が前記内壁から離れる又は圧接時よりも相対的に弱い力で前記パネル本体の内壁に接触することを特徴とする移動壁。
【請求項3】
前記圧接体は、前記駆動機構の駆動力を受けて移動する第1フレームと、
前記第1フレームを保持すると共に前記防音材が取り付けられる第2フレームとを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動壁。
【請求項4】
前記第2フレームは前記第1フレームを保持する保持部を有しており、
圧接時の前記第1フレームの移動により前記保持部が前記第1フレームから外力を付与されて前記防音材が前記内壁に接触する方向に移動することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の移動壁。
【請求項5】
前記保持部が傾斜面を有しており、圧接時に前記第1フレームの端部が前記傾斜面上を摺動することで前記保持部が前記外力を付与されることを特徴とする請求項4に記載の移動壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レールに沿って移動可能な大型の移動壁に関し、特に高い防音性能を長期間に亘り維持できる移動壁に関する。
【背景技術】
【0002】
多目的ホール等では空間を適当な大きさに仕切るために大型の移動壁(「スライディングウォール」又は「移動間仕切」と呼ぶ場合がある。)を使用する。移動壁は走行レールにランナーを介して吊り下げられており、走行レールに沿ってスライド移動させることができる。
移動壁ではパネル本体の上端部及び下端部に圧接体を備えており、圧接体をパネル本体から外側に突出させて走行レールの下面及び床面に圧接することで移動壁を固定すると共に防音性を確保している。更にパネル本体の左右いずれかの端部にも圧接体を備えており、圧接体をパネル本体から外側に突出させて壁レールに圧接させることもある。
【0003】
例えば特許文献1及び2にはパネル本体と圧接体との間に防音目的でパッキン(防音材)を配置した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-221061号公報
【特許文献2】実用新案登録第3026036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に開示された技術では防音材が常に圧接体と接触しているため、防音材が圧接体に対して強く接触している場合は圧接体の動きが悪くなり、弱く接触している場合には防音性が悪くなるという問題や、防音材が消耗し易いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を考慮して、高い防音性能を長期間に亘り維持できる大型の移動壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動壁は、走行レールに沿って移動可能な移動壁において、パネル本体と、前記パネル本体の内部に出退自在に格納される上部及び下部の二つの圧接体と、前記上部の圧接体を前記走行レールに、前記下部の圧接体を床面に圧接させる駆動機構とを備えており、圧接時には前記圧接体の防音材が前記パネル本体の内壁に接触し、圧接解除時には前記防音材が前記内壁から離れる又は圧接時よりも相対的に弱い力で前記パネル本体の内壁に接触することを特徴とする。
また、走行レールに沿って移動可能な移動壁において、パネル本体と、前記パネル本体の内部に出退自在に格納される右部又は左部の一つの圧接体と、前記圧接体を壁レールに圧接させる駆動機構とを備えており、圧接時には前記圧接体の防音材が前記パネル本体の内壁に接触し、圧接解除時には前記防音材が前記内壁から離れる又は圧接時よりも相対的に弱い力で前記パネル本体の内壁に接触することを特徴とする。
また、前記圧接体は、前記駆動機構の駆動力を受けて移動する第1フレームと、前記第1フレームを保持すると共に前記防音材が取り付けられる第2フレームとを備えることを特徴とする。
また、前記第2フレームは前記第1フレームを保持する保持部を有しており、圧接時の前記第1フレームの移動により前記保持部が前記第1フレームから外力を付与されて前記防音材が前記内壁に接触する方向に移動することを特徴とする。
また、前記保持部が傾斜面を有しており、圧接時に前記第1フレームの端部が前記傾斜面上を摺動することで前記保持部が前記外力を付与されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では圧接時には圧接体の防音材がパネル本体の内壁に接触し、圧接解除時には防音材が内壁から離れるか、又は圧接時よりも相対的に弱い力でパネル本体の内壁に接触する。したがって、従来のように防音材が常時パネル本体に強い力で接触している場合と比較して圧接体の動きを滑らかにすることができる。
また、圧接時に第1フレームが移動し、第1フレームの外力を受けて第2フレームが移動し、防音材が内壁に接触する。防音材は圧接時にのみパネル本体に強い力で接触し、それ以外のときはパネル本体から離れているか、又は相対的に弱い力で接触するので、従来のように圧接体がパネル本体に強い力で接触したまま摺動してしまい、圧接体のスムーズな動きを妨げるという事態や防音材の消耗が早いという事態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複数の移動壁で空間を間仕切りした状態を示す正面図
図2】移動壁の圧接解除時の状態を示す縦断面図(a)、圧接時の状態を示す縦断面図(b)及び移動壁がランナーを介して走行レールに吊り下げられている箇所を示す部分拡大図(c)
図3】最も右端に配置される移動壁の圧接解除時の状態を示す横断面図(a)及び圧接時の状態を示す横断面図(b)
図4】圧接体の動作を説明するための縦断面図(a)及び部分拡大図(b)
図5】圧接体の動作を説明するための縦断面図(a)及び部分拡大図(b)
図6】圧接体の動作を説明するための縦断面図(a)及び部分拡大図(b)
図7】圧接体の動作を説明するための縦断面図(a)及び部分拡大図(b)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の移動壁の実施の形態について説明する。
図1図3に示すように移動壁1はランナー2を介して走行レール3に吊り下げられており、走行レール3に沿ってスライド移動させることができる。図1及び図2中の符号6は天井面を指している。
【0011】
移動壁1はパネル本体10、上部及び下部の二つの圧接体20及び駆動機構(図示略)を備える。また、移動壁1は複数枚を左右方向に連結して1枚の大型の壁として使用することになるが、最も右端(又は左端)に位置することになる1つの移動壁1に関しては上部及び下部の圧接体20以外に右部(又は左部)の圧接体21も備えている。図1は右部に圧接体21を備える場合を示している。上部、下部及び右部の各圧接体20,21の構造及び動作はほぼ同じであるため、以下、主に下部の圧接体20について説明する。
【0012】
パネル本体10の構造は周知のものを採用すればよく特に限定されないが、本実施の形態では矩形の外枠11とその内部の横枠12を角パイプで構成し、表面材13として石膏ボードを使用し、内部にグラスウール14を充填している。上下左右の縁をアルミニウム等の金属からなる断面コ字状の縁部材15で囲んでいる。表面材として他には例えばケイ酸カルシウム板、ベニヤ板等を用いることができ、表面材の上に表装材を貼ってもよい。
【0013】
圧接体20は図2及び図3に示すようにパネル本体10の内部、詳細には縁部材15の内部に出退自在に格納される。作業者は移動壁1を所定位置まで移動させて駆動機構を操作することで上部の圧接体20を走行レール3に、下部の圧接体20を床面4に圧接させて固定する。詳しい説明は後述するが圧接体20は防音材41を備えており、圧接時には防音材41がパネル本体10の内壁、詳細には縁部材15の内壁に接触し、圧接解除時には防音材41が内壁から離れる。
駆動機構の構造は周知のものを使用すればよく特に限定されないが、例えば操作者がパネル本体10の表面又は側面の操作孔にハンドルを差し込んで回転させるとその動力がギヤ・ナット等を介して上下方向及び右方向にのびるシャフト22に伝達されてシャフト22が軸回りに回転し、シャフト22にギヤ・ナット等を介して連結された圧接体20が上下及び左右に移動する仕組みになっている。他にはパンタグラフ構造の駆動機構も知られている。
【0014】
図4に示すように圧接体20は第1フレーム30及び第2フレーム40を備える。
第1フレーム30は縦断面視が下方に開口したコ字状でありパネル本体10の幅とほぼ同じ長さで左右方向にのびている。第1フレーム30は駆動機構の駆動力を受けて上下方向に移動する。なお、図4図7では駆動機構のシャフト22の図示を省略している。
第1フレーム30は上部に係止片31を備えており、下部に接触片32を備えている。
第2フレーム40は縦断面視で板状の部材でありパネル本体10の幅とほぼ同じ長さで左右方向にのびている。第2フレーム40は防音材41と保持部42を備えている。
【0015】
防音材41の「防音」は「遮音」と「吸音」を含む総称である。「遮音」とは空気中を伝わる音を遮断することを意味し、「吸音」とは音を吸収して反射を防ぐことを意味する。遮音部材としてはゴム、吸音部材としてはウレタンフォームが挙げられるがこれらに限られない。
防音材41は第2フレーム40の上部においてその端部が外側(パネル本体10の内壁側)を向くように取り付けられている。
【0016】
保持部42は第1フレーム30を保持するために設けられる。
具体的には上部の保持部42aは第2フレーム40の上部に設けられる爪状の部材であり、その端部が内側に向かって僅かに垂れ下がるように取り付けられている。上部の保持部42に第1フレーム30の係止片31が引っ掛かる仕組みになっている。
下部の保持部42bは第2フレーム40の下部に設けられる凹形状の部材であり、内面に傾斜面42cを有している。傾斜面42cは下方に向かって外側に傾斜している。下部の保持部42に第1フレーム30の接触片32が嵌り込む仕組みになっている。
このように、第1フレーム30の係止片31が上部の保持部42に引っ掛かり、接触片32が下部の保持部42に嵌り込むことで第1フレーム30が第2フレーム40に保持されている。
保持部42の下方にはゴム製の脚部50が取り付けられており、圧接時に脚部50が床面4に圧接されることで移動壁1を固定する。圧接時に上部の圧接体20の脚部50は走行レール3に圧接され、右部の圧接体20の脚部50は壁レールに圧接される。
【0017】
次に圧接体20の動作について説明する。
図4に示すように圧接体20がパネル本体10の内部に格納された状態から操作者が駆動機構のハンドルを回転させるとその動力が第1フレーム30に伝達され、第1フレーム30が下降し始める。このとき、第1フレーム30は第2フレーム40に保持されているため、第1フレーム30と共に第2フレーム40も下降していき、図5に示すようにまず脚部50が床面4に接触し、第2フレーム40は直立姿勢のまま下降を停止する。
脚部50が床面4に接触した後も第1フレーム30は下降し続け、図6に示すように接触片32は下部の保持部42の傾斜面42cに接触する。
【0018】
接触片32は傾斜面42c上を更に下方に摺動していくが、その際に傾斜面42cが接触片32から外力(反力)を受けることになり、図7に示すように第2フレーム40は外力によりその上部が外側(パネル本体10の内壁側)に向かって移動し、傾斜姿勢になる。
第2フレーム40の上部には防音材41が取り付けられているので、防音材41がパネル本体10の内壁、詳細には縁部材15の内壁に接触する。接触片32が下部の保持部42の底に至ると反力によりハンドルが重たくなるのでそのタイミングで操作者はハンドル操作を停止する。
このように圧接時に防音材41がパネル本体10の内壁に接触するので、パネル本体10の表面側から裏面側への音の伝達を抑制できる。
なお、図4に示す圧接解除時に防音材41がパネル本体10の内壁に接触していてもよい。この場合、防音材41がパネル本体10の内壁に常時接触していることになるが、図7に示す圧接時と比較して図4に示す圧接解除時には防音材41が相対的に弱い力でパネル本体10の内壁に接触する。
【0019】
圧接解除時に操作者がハンドルを反対方向に回転させると第1フレーム30が上昇し始める。第2フレーム40は傾斜姿勢から直立姿勢に戻り、接触片32はパネル本体10の内壁から離れ、第1フレーム30と共に上昇し続け、最終的にパネル本体10の内部に格納される。
なお、図3(b)に示すように右部の圧接体20もハンドル操作により壁レール5に接触し、防音材41がパネル本体10の内壁に接触するので、パネル本体10の表面側から裏面側への音の伝達を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、高い防音性能を長期間に亘り維持できる大型の移動壁であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0021】
1 移動壁
2 ランナー
3 走行レール
4 床面
5 壁レール
6 天井面
10 パネル本体
11 外枠
12 横枠
13 表面材
14 グラスウール
15 縁部材
20 圧接体
21 右部の圧接体
22 シャフト
30 第1フレーム
31 係止片
32 接触片
40 第2フレーム
41 防音材
42 保持部
42a 上部の保持部
42b 下部の保持部
42c 傾斜面
50 ゴム製の脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7