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  • 特開-移動壁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074218
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】移動壁
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/00 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
E05D15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187051
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩
(57)【要約】
【課題】 防音性能が高い移動壁を提供する。
【解決手段】 本発明の移動壁1は、走行レール3に沿って移動可能な移動壁において、パネル本体10のフレーム40が、上下方向にのびる左右複数本の縦枠41と、左右の縦枠間に掛け渡される複数本の横枠42とで構成されており、縦枠と横枠が共に板材から成り、縦枠と横枠の板材の肉厚が異なる。両者の肉厚を変えて固有振動数を異なるものにすれば共鳴を防いで移動壁の防音性能を高めることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに沿って移動可能な移動壁において、
パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成されており、
前記縦枠と前記横枠が共に板材から成り、
前記縦枠と前記横枠の前記板材の肉厚が異なることを特徴とする移動壁。
【請求項2】
走行レールに沿って移動可能な移動壁において、
パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成されており、
前記縦枠と前記横枠が共に板材から成り、
左右複数本の前記縦枠の前記板材の肉厚が異なることを特徴とする移動壁。
【請求項3】
走行レールに沿って移動可能な移動壁において、
パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成されており、
前記縦枠と前記横枠が共に板材から成り、
複数本の前記横枠のうち少なくとも2本の前記横枠の前記板材の肉厚が異なることを特徴とする移動壁。
【請求項4】
前記パネル本体の表面材と、前記縦枠及び/又は前記横枠との間に配置される受け材について、
前記縦枠及び/又は前記横枠と接触するための凸部を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の移動壁。
【請求項5】
前記縦枠と前記横枠との突き当り箇所の表側に配置される表側ガセットプレートと、裏側に配置される裏側ガセットプレートを備えており、前記両ガセットプレートが前記縦枠及び前記横枠にボルト締めにより固定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の移動壁。
【請求項6】
前記フレームがブレースで補強されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の移動壁。
【請求項7】
前記表側ガセットプレートと前記裏側ガセットプレートの間に掛け渡される棒状部材を備えており、
前記ブレースの端部が前記棒状部材に連結されることを特徴とする請求項6に記載の移動壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レールに沿って移動可能な大型の移動壁に関し、特に防音性能が高い移動壁に関する。
【背景技術】
【0002】
多目的ホール等では空間を適当な大きさに仕切るために大型の移動壁(「スライディングウォール」又は「移動間仕切」と呼ぶ場合がある。)を使用する。移動壁は走行レールにランナーを介して吊り下げられており、走行レールに沿ってスライド移動させることができる。
移動壁ではパネル本体の上端部及び下端部に圧接体を備えており、圧接体をパネル本体から外側に突出させて走行レールの下面及び床面に圧接することで移動壁を固定すると共に防音性を確保している。
【0003】
例えば特許文献1及び2にはパネル本体と圧接体との間に防音目的でパッキン(防音材)を配置した構造が開示されている。
また、特許文献3には圧接体を駆動するための機構をパネル本体のフレームに沿って配置することでフレーム内の空間を広くとり、そこに防音材を充填して防音性能を高めた移動壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-221061号公報
【特許文献2】実用新案登録第3026036号公報
【特許文献3】特開2020-196997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防音性能を更に高めるには、パネル本体が音を受けることで生じる振動の伝搬を抑制する必要がある。
【0006】
本発明は、このような問題を考慮して、防音性能が高い移動壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動壁は、走行レールに沿って移動可能な移動壁において、パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成されており、前記縦枠と前記横枠が共に板材から成り、前記縦枠と前記横枠の前記板材の肉厚が異なることを特徴とする。
本発明の移動壁は、走行レールに沿って移動可能な移動壁において、パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成されており、前記縦枠と前記横枠が共に板材から成り、左右複数本の前記縦枠の前記板材の肉厚が異なることを特徴とする。
本発明の移動壁は、走行レールに沿って移動可能な移動壁において、パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成されており、前記縦枠と前記横枠が共に板材から成り、複数本の前記横枠のうち少なくとも2本の前記横枠の前記板材の肉厚が異なることを特徴とする。
また、前記パネル本体の表面材と、前記縦枠及び/又は前記横枠との間に配置される受け材について、前記縦枠及び/又は前記横枠と接触するための凸部を備えることを特徴とする。
また、前記縦枠と前記横枠との突き当り箇所の表側に配置される表側ガセットプレートと、裏側に配置される裏側ガセットプレートを備えており、前記両ガセットプレートが前記縦枠及び前記横枠にボルト締めにより固定されることを特徴とする。
また、前記フレームがブレースで補強されていることを特徴とする。
また、前記表側ガセットプレートと前記裏側ガセットプレートの間に掛け渡される棒状部材を備えており、前記ブレースの端部が前記棒状部材に連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では縦枠と横枠が共に板材から成り、左右の縦枠同士、縦枠と横枠及び横枠同士の板材の肉厚が異なる。板材の肉厚を変えて固有振動数を異なるものにすれば移動壁の防音性能を高めることができる。
受け材に凸部を設けて、凸部を介して縦枠や横枠の表面と接触させることで振動をフレームに伝わり難くして防音性能を高めることができる。
縦枠や横枠を構成する板材の肉厚を異なるものにする場合には両者の熱容量の違いに起因した歪が発生し易く、両者を溶接で接合することが難しいのでガセットプレートで両者をボルト締めする連結方法が好ましく、フレームをブレースで補強するのが更に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複数の移動壁で空間を間仕切りした状態を示す正面図
図2】移動壁の圧接解除時の状態を示す縦断面図(a)、圧接時の状態を示す縦断面図(b)及び移動壁がランナーを介して走行レールに吊り下げられている箇所を示す部分拡大図(c)
図3】フレームの正面図
図4】左右に連結した2枚の移動壁の横断面図(a)、受け材の平面図(b)及び受け材を縦枠にねじ止めした状態を示す部分拡大図(c)
図5】縦枠と横枠との突き当り箇所にガセットプレートをボルト締めした状態を示す斜視図(a)及びブレースの一方の端部を第1棒状部材に連結した状態を示す斜視図(b)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の移動壁の実施の形態について説明する。
図1及び図2に示すように移動壁1はランナー2を介して走行レール3に吊り下げられており、走行レール3に沿ってスライド移動させることができる。図1及び図2中の符号5は天井面を指している。
【0011】
移動壁1はパネル本体10、上部及び下部の二つの圧接体20及び駆動機構30を備える。また、移動壁1は複数枚を左右方向に連結して1枚の大型の壁として使用することになるが、最も右端(又は左端)に位置することになる1つの移動壁1に関しては上部及び下部の圧接体20以外に右部(又は左部)の圧接体20も備えている。図1は右部に圧接体20を備える場合を示している。
【0012】
圧接体20はパネル本体10の内部、詳細には縁部材13の内部に出退自在に格納される。作業者は移動壁1を所定位置まで移動させて駆動機構30を操作することで上部の圧接体20を走行レール3に、下部の圧接体20を床面4に圧接させて固定する。
駆動機構30の構造は周知のものを使用すればよく特に限定されないが、例えば操作者がパネル本体10の表面又は側面の操作孔にハンドルを差し込んで回転させるとその動力がギヤ・ナット等を介して上下方向及び右方向にのびるシャフト31に伝達されてシャフト31が軸回りに回転し、シャフト31にギヤ・ナット等を介して連結された圧接体20が上下及び左右に移動する仕組みになっている。他にはパンタグラフ構造の駆動機構も知られている。
【0013】
図3に示すようにパネル本体10の骨格部分は縦枠41と横枠42で構成される矩形のフレーム40から成り、縦枠41及び横枠42は板材を加工した角パイプから成る。角パイプ以外にも例えばコ字型、ハット型等の板材を異形断面に加工した棒状部材を使用してもよい。
縦枠41は上下方向にのびる左右2本の部材である。縦枠41を2本以上使用してもよい。例えば縦枠41としての角パイプを左右方向に並べたり、角パイプと曲げ加工した板材を左右方向に並べたりすることで強度を高めた構造にしてもよい。
横枠42は左右の縦枠41間に掛け渡される部材であり、フレーム40の最上部又は最下部に位置する上下横枠42aと、上下横枠以外の中間横枠42bとで構成される。
【0014】
縦枠41、横枠42は板材の肉厚を異ならせてある。
表1(a)に示すように縦枠41と横枠42(上下横枠42a及び中間横枠42b)の板材の肉厚を異ならせてもよいし、表1(b)のように左右の縦枠の板材の肉厚を異ならせてもよいし、表1(c)のように縦枠41と上下横枠42aと中間横枠42bの肉厚を異ならせてもよい。
【表1】
縦枠41、横枠42の板材の肉厚を変えることで固有振動数を異ならせることができる。例えばパネル本体10の表側の表面材11が受けた音の振動はフレーム40(縦枠41及び横枠42)に伝わり、次に裏側の表面材11に伝わり、裏側に存在する空間の空気を振動させて音が発生してしまう。本発明では例えば縦枠41と横枠42の固有振動数を異ならせる、つまり両者が振動する周波数を変えることで移動壁1の防音性能を高めることができる。
特に、長さがほぼ同一となる上下横枠42aと中間横枠42bは肉厚を同一にすると固有振動数がほぼ一致してしまうため、肉厚を異ならせて両者の固有振動数を変えることで防音性能をより高めることができる。
【0015】
フレーム40の表裏には表面材11として石膏ボードを配置し、内部にグラスウール12を充填している。フレーム40の上下左右の縁をアルミニウム等の金属からなる断面コ字状の縁部材13で囲んでいる。表面材11として他には例えばケイ酸カルシウム板、ベニヤ板等を用いることができ、表面材11の上に表装材を貼ってもよい。
【0016】
図4に示すように、表面材11と、縦枠41及び/又は横枠42との間に受け材43が配置される。
受け材43は縦枠41や横枠42にねじ止めされた状態で表面材11の裏面に接触することで表面材11を支えるための部材である。
受け材43は凸部43aを備える。凸部43aは上下方向にのびており、縦枠41や横枠42の表面と接触する。受け材43が縦枠41や横枠42の表面と面接触すると、パネル本体10の表側の表面材11が受けた音の振動がフレーム40(縦枠41及び横枠42)に伝わり易くなってしまうが、凸部43aを介して接触することにより振動をフレーム40に伝わり難くして防音性能を高めることができる。
【0017】
図5に示すように縦枠41と横枠42との突き当り箇所にはガセットプレート50がボルト締めで固定される。突き当り箇所の表側に配置される表側ガセットプレート51と、裏側に配置される裏側ガセットプレート52である。本発明のように縦枠41と横枠42の肉厚が異なる場合には両者を溶接で接合することが難しいのでガセットプレート50でボルト締めする方法が有効になる。また、縦枠41と横枠42とを溶接で固定しないことによって組み立て精度を高めることができる。
【0018】
フレーム40はブレース60で補強される。ブレース60で補強することによって、縦枠41及び横枠42として断面係数が大きい角パイプを使用する必要がなくなり、移動壁1を軽量化することができる。また、ブレース60の張り具合を調節することによっても組み立て精度を高めることができる。
表側ガセットプレート51及び裏側ガセットプレート52はフレーム40の内側方向にのびる延長部53を備える。両延長部53の間に棒状部材54が掛け渡され、ブレース60の端部が棒状部材54に連結される。こうすることでフレーム40の厚み方向の中心箇所にブレース60でテンションが掛かることになるので、フレーム40に歪みや撓みが生じにくくなる。
【0019】
なお、上記実施の形態では縦枠41と横枠42とをガセットプレート50で固定するものとしたが、溶接で固定することにしてもよい。
また、フレーム40をブレース60で補強するものとしたが、ブレース60を使用しないことにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、防音性能が高い移動壁であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0021】
1 移動壁
2 ランナー
3 走行レール
4 床面
5 天井面
10 パネル本体
11 表面材
12 グラスウール
13 縁部材
20 圧接体
30 駆動機構
31 シャフト
40 フレーム
41 縦枠
42 横枠
42a 上下横枠
42b 中間横枠
43 受け材
43a 凸部
50 ガセットプレート
51 表側ガセットプレート
52 裏側ガセットプレート
53 延長部
54 棒状部材
60 ブレース
図1
図2
図3
図4
図5