(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074219
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】移動壁
(51)【国際特許分類】
E05D 15/00 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
E05D15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187052
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 達也
(72)【発明者】
【氏名】田渕 晴夫
(57)【要約】
【課題】 厚みを抑えて軽量で且つ高剛性の移動壁を提供する。
【解決手段】 本発明の移動壁1は、走行レール3に沿って移動可能な移動壁において、パネル本体10のフレーム40が、上下方向にのびる左右複数本の縦枠41と、左右の縦枠間に掛け渡される複数本の横枠42とで構成される矩形状であり、且つブレース60で補強されている。フレームをブレースで補強するので、縦枠及び横枠として断面係数が大きい部材を使用する必要がなくなり、移動壁を軽量化することができる。また、ブレースの張り具合を調節することによって組み立て精度を高めることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに沿って移動可能な移動壁において、
パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成される矩形状であり、且つブレースで補強されていることを特徴とする移動壁。
【請求項2】
前記縦枠及び前記横枠が連結手段で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の移動壁。
【請求項3】
前記ブレースの端部が前記連結手段に連結されることを特徴とする請求項2に記載の移動壁。
【請求項4】
前記連結手段として、前記縦枠と前記横枠との突き当り箇所の表側に配置される表側ガセットプレートと、裏側に配置される裏側ガセットプレートを備えており、前記両ガセットプレートが前記縦枠及び前記横枠にボルト締めにより固定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の移動壁。
【請求項5】
前記表側ガセットプレートと前記裏側ガセットプレートの間に掛け渡される第1棒状部材を備えており、
前記ブレースの一方の端部が前記第1棒状部材に連結されることを特徴とする請求項4に記載の移動壁。
【請求項6】
前記ブレース同士の交差箇所に配置される交差部金物を備えており、
前記交差部金物が、表側と裏側に離間して配置される2枚のベースプレートと、前記2枚のベースプレート間に掛け渡される4本の第2棒状部材とを備えており、
前記ブレースの他方の端部が前記第2棒状部材に連結されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の移動壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レールに沿って移動可能な大型の移動壁に関し、特に厚みを抑えて軽量且つ高剛性の移動壁に関する。
【背景技術】
【0002】
多目的ホール等では空間を適当な大きさに仕切るために大型の移動壁(「スライディングウォール」又は「移動間仕切」と呼ぶ場合がある。)を使用する。移動壁は走行レールにランナーを介して吊り下げられており、走行レールに沿ってスライド移動させることができる。
大型の移動壁の場合、移動時に捩じれや撓みが生じやすいためフレームに角パイプを使用して剛性を高めるのが一般的であるが、そのぶん高重量になってしまうという問題や、角パイプのサイズが大きくなり移動壁の厚みが増すため広い収納スペースを確保しなければならないという問題がある。
また、角パイプ同士を溶接で連結するため、溶接時の歪みにより寸法精度を高めるのが難しいという問題もある。
【0003】
例えば特許文献1にはフレームをアルミニウム押出材で形成することで軽量化した移動壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アルミニウム押出材は一般的に鉄鋼よりも剛性が低く、高価なため大型の移動壁には使用し辛いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を考慮して、厚みを抑えて軽量で且つ高剛性の移動壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動壁は、走行レールに沿って移動可能な移動壁において、パネル本体のフレームが、上下方向にのびる左右複数本の縦枠と、左右の前記縦枠間に掛け渡される複数本の横枠とで構成される矩形状であり、且つブレースで補強されていることを特徴とする。
また、前記縦枠及び前記横枠が連結手段で固定されていることを特徴とする。
また、前記ブレースの端部が前記連結手段に連結されることを特徴とする。
また、前記連結手段として、前記縦枠と前記横枠との突き当り箇所の表側に配置される表側ガセットプレートと、裏側に配置される裏側ガセットプレートを備えており、前記両ガセットプレートが前記縦枠及び前記横枠にボルト締めにより固定されることを特徴とする。
また、前記表側ガセットプレートと前記裏側ガセットプレートの間に掛け渡される第1棒状部材を備えており、前記ブレースの一方の端部が前記第1棒状部材に連結されることを特徴とする。
また、前記ブレース同士の交差箇所に配置される交差部金物を備えており、前記交差部金物が、表側と裏側に離間して配置される2枚のベースプレートと、前記2枚のベースプレート間に掛け渡される4本の第2棒状部材とを備えており、前記ブレースの他方の端部が前記第2棒状部材に連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明ではパネル本体のフレームを縦枠と横枠とで構成し、フレームをブレースで補強するので、縦枠及び横枠として断面係数が大きい部材を使用する必要がなくなり、移動壁の厚みを抑えて軽量化でき、且つ充分な剛性を確保できる。また、ブレースの張り具合を調節することによって組み立て精度を高めることができる。
また、本発明では縦枠と横枠を連結手段(ガセットプレートやリブ)で固定する。ガセットプレートを用いる場合、縦枠と横枠とを溶接で固定する場合と比較して組み立て精度を高めることができる。
表側ガセットプレートと裏側ガセットプレートの間に第1棒状部材が掛け渡し、ブレースの端部を第1棒状部材に連結する。こうすることでフレームの厚み方向の中心箇所にブレースでテンションを掛けることになるので、フレームに歪みや撓みが生じにくくなる。
交差部金物を使用することでX形状に配置した2本のブレース同士が接触する事態を防止できる。また、表側と裏側のベースプレートの間に生じた隙間に移動壁を構成する部材を通すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】複数の移動壁で空間を間仕切りした状態を示す正面図
【
図2】移動壁の圧接解除時の状態を示す縦断面図(a)、圧接時の状態を示す縦断面図(b)及び移動壁がランナーを介して走行レールに吊り下げられている箇所を示す部分拡大図(c)
【
図4】縦枠と横枠との突き当り箇所にガセットプレートをボルト締めした状態を示す斜視図(a)、ブレースの一方の端部を第1棒状部材に連結した状態を示す斜視図(b)及び連結手段としてリブを用いる場合の斜視図(c)
【
図6】交差部金物の斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)、側面図(d)及びブレースの他方の端部を第2棒状部材に連結した状態を示す正面図(d)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の移動壁の第1の実施の形態について説明する。
図1~
図3に示すように移動壁1はランナー2を介して走行レール3に吊り下げられており、走行レール3に沿ってスライド移動させることができる。
図1及び
図2中の符号5は天井面を指している。
【0011】
移動壁1はパネル本体10、上部及び下部の二つの圧接体20及び駆動機構30を備える。また、移動壁1は複数枚を左右方向に連結して1枚の大型の壁として使用することになるが、最も右端(又は左端)に位置することになる1つの移動壁1に関しては上部及び下部の圧接体20以外に右部(又は左部)の圧接体20も備えている。
図1は右部に圧接体20を備える場合を示している。
【0012】
圧接体20はパネル本体10の内部、詳細には縁部材13の内部に出退自在に格納される。作業者は移動壁1を所定位置まで移動させて駆動機構30を操作することで上部の圧接体20を走行レール3に、下部の圧接体20を床面4に圧接させて固定する。
駆動機構30の構造は周知のものを使用すればよく特に限定されないが、例えば操作者がパネル本体10の表面又は側面の操作孔にハンドルを差し込んで回転させるとその動力がギヤ・ナット等を介して上下方向及び右方向にのびるシャフト31に伝達されてシャフト31が軸回りに回転し、シャフト31にギヤ・ナット等を介して連結された圧接体20が上下及び左右に移動する仕組みになっている。他にはパンタグラフ構造の駆動機構も知られている。
【0013】
パネル本体10の骨格部分は縦枠41と横枠42で構成される矩形のフレーム40からなる。
縦枠41は上下方向にのびる左右2本の部材である。縦枠41を2本以上使用してもよい。例えば縦枠41としての角パイプを左右方向に並べたり、角パイプと曲げ加工した板材を左右方向に並べたりすることで強度を高めた構造にしてもよい。
横枠42は左右の縦枠41間に掛け渡される部材である。縦枠41及び横枠42としては角パイプを使用するのが好ましいが、H形鋼、C形鋼や異形断面の棒状部材を使用してもよい。
フレーム40の表裏には表面材11として石膏ボードを配置し、内部にグラスウール12を充填している。フレーム40の上下左右の縁をアルミニウム等の金属からなる断面コ字状の縁部材13で囲んでいる。表面材11として他には例えばケイ酸カルシウム板、ベニヤ板等を用いることができ、表面材11の上に表装材を貼ってもよい。
【0014】
図4(a)及び(b)に示すように縦枠41と横枠42との突き当り箇所には連結手段としてガセットプレート50がボルト締めで固定される。突き当り箇所の表側に配置される表側ガセットプレート51と、裏側に配置される裏側ガセットプレート52である。本発明では縦枠41と横枠42とを溶接で固定しないので、組み立て精度を高めることができる。
また、フレーム40はブレース60で補強される。ブレース60で補強することによって、縦枠41及び横枠42として断面係数が大きい角パイプを使用する必要がなくなり、移動壁1を軽量化することができる。また、ブレース60の張り具合を調節することによっても組み立て精度を高めることができる。
複数のガセットプレート50のうち、ブレース60と連結するガセットプレート50の表側ガセットプレート51及び裏側ガセットプレート52はフレーム40の内側方向にのびる延長部53を備える。両延長部53の間に第1棒状部材54が掛け渡され、ブレース60の端部が第1棒状部材54に連結される。こうすることでフレーム40の厚み方向の中心箇所にブレース60でテンションが掛かることになるので、フレーム40に歪みや撓みが生じにくくなる。
更に、
図3に示すようにブレース60に取り付けたターンバックル61で張力を調節することでフレーム40の組み立て精度を高めることができる。
連結手段として他にも例えば
図4(c)に示すように縦枠41と横枠42との突き当り箇所にリブ80を溶接やボルトで固定してもよい。この場合、フレーム40の厚み方向の中心箇所にリブ80を固定し、リブ80にブレース60の端部を連結するのが好ましい。
【0015】
[第2の実施の形態]
次に移動壁の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成になる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図5及び
図6に示すように本実施の形態では交差部金物70を備える点に特徴を有する。
交差部金物70はブレース60同士の交差箇所に配置される部材であり、ベースプレート71と第2棒状部材72で構成される。
【0016】
ベースプレート71は表側と裏側に離間して配置される2枚の板状部材である。2枚のベースプレート71の間に4本の第2棒状部材72を掛け渡している。ベースプレート71を矩形にして、その四隅に第2棒状部材72を配置するのが好ましい。
上述のとおり、ブレース60の一方の端部を第1棒状部材54に連結し、他方の端部を第2棒状部材72に連結する。
交差部金物70を使用することでX形状に配置した2本のブレース60同士が接触する事態を防止できる。また、表側と裏側のベースプレート71,71の間に生じた隙間73に移動壁1を構成する部材を通すことが可能になる。例えば圧接体20を上下に移動させるためのシャフト31を隙間73に通すことにすればシャフト31とブレース60とが干渉する事態を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、厚みを抑えて軽量で且つ高剛性の移動壁であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
1 移動壁
2 ランナー
3 走行レール
4 床面
5 天井面
10 パネル本体
11 表面材
12 グラスウール
13 縁部材
20 圧接体
30 駆動機構
31 シャフト
40 フレーム
41 縦枠
42 横枠
50 ガセットプレート
51 表側ガセットプレート
52 裏側ガセットプレート
53 延長部
54 第1棒状部材
60 ブレース
70 交差部金物
71 ベースプレート
72 第2棒状部材
73 隙間
80 リブ