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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074243
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230522BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230522BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230522BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H01L29/78 652A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 653C
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187096
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古村 雄太
(57)【要約】
【課題】半導体装置の特性がばらつくことを抑制しつつ、イオン注入層の不純物濃度を高くし易くする。
【解決手段】一面10aおよび他面10bを有する半導体基板10と、半導体基板10に形成されたイオン注入層15、22、23を含んで構成される半導体素子とを備える。そして、イオン注入層15、22、23は、希ガス元素と、第1導電型の不純物または第2導電型の不純物を含んで構成されるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された半導体装置であって、
一面(10a)および他面(10b)を有する半導体基板(10)と、
前記半導体基板に形成されたイオン注入層(15、22、23)を含んで構成される前記半導体素子と、を備え、
前記イオン注入層は、希ガス元素と、第1導電型の不純物または第2導電型の不純物を含んで構成されている半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板の一面上に配置される電極(29)を有し、
前記半導体基板には、前記一面側に前記電極と接続される接続領域(22、23)が形成され、
前記接続領域は、前記イオン注入層で構成され、前記電極側の部分が前記電極側と反対側の部分より不純物濃度が高くされている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板は、
第1導電型のドリフト層(19)と、
前記ドリフト層の表層部に形成された第2導電型のベース層(21)と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた前記接続領域としての第1導電型の第1不純物領域(22)と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ベース層よりも高不純物濃度とされた前記接続領域としての第2導電型の第2不純物領域(23)と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース層と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、を有し、
前記半導体基板の一面が前記第1不純物領域および前記第2不純物領域で構成され、
前記電極は、前記半導体基板の一面上に配置されて前記第1不純物領域および前記第2不純物領域と接続されている請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、
第1導電型のドリフト層(19)と、
前記ドリフト層の表層部に形成された第2導電型のベース層(21)と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(22)と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ベース層よりも高不純物濃度とされた第2導電型の第2不純物領域(23)と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース層と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、を有し、
前記ベース層および前記第1不純物領域を貫通して前記ドリフト層に達するトレンチ(25)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(26)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(27)とを有するトレンチゲート構造と、
前記ドリフト層のうちの前記トレンチの下方であって、前記トレンチと離れた状態で形成された第2導電型の第1ディープ層(15)と、
前記ベース層と前記第1ディープ層とを接続する第2導電型の第2ディープ層(18)と、を備え、
前記第1ディープ層は、前記イオン注入層で構成され、前記半導体基板の一面側に、前記一面側と反対側の部分より不純物濃度が高くされた高濃度ピーク(P)を有する構成とされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
一面(10a)および他面(10b)を有する半導体基板(10)と、
前記半導体基板に形成されたイオン注入層(15、22、23)を含んで構成される半導体素子と、を備え、
前記イオン注入層は、希ガス元素と、第1導電型の不純物または第2導電型の不純物を含んで構成されている半導体装置の製造方法であって、
前記第1導電型の不純物または前記第2導電型の不純物と、前記希ガス元素とをイオン注入して構成層(150a、220a、230a)を形成することと、
加熱処理による活性化処理を行うことにより、前記構成層の不純物を活性化させて前記イオン注入層を構成することと、を行う半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記構成層を形成することでは、前記希ガス元素をイオン注入した後、前記第1導電型の不純物または前記第2導電型の不純物をイオン注入する請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入層を有する半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、イオン注入層を有する半導体装置およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この半導体装置では、ドリフト層を有する半導体基板を備え、半導体基板の一面側にベース層が形成されていると共に、ベース層の表層部にソース領域およびコンタクト領域が形成されている。また、半導体基板には、ソース領域およびベース層を貫通するようにトレンチが形成されている。そして、トレンチにゲート絶縁膜およびゲート電極が配置されることでトレンチゲート構造が構成されている。
【0003】
半導体基板の他面側には、ドレイン領域が配置されている。そして、半導体基板の一面側には、ソース領域およびコンタクト領域と電気的に接続されるように上部電極が配置されている。半導体基板の他面側には、ドレイン領域と電気的に接続されるように下部電極が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-46908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の半導体装置では、ソース領域およびコンタクト領域がイオン注入されて形成されるイオン注入層によって構成される。そして、ソース領域およびコンタクト領域は、上部電極との接触抵抗を低減するため、一面側の不純物濃度を高濃度にすることが望まれる。すなわち、上記の半導体装置では、イオン注入層の少なくとも一部の不純物濃度を高くすることが望まれる。
【0006】
この場合、ソース領域およびコンタクト領域の一面側の不純物濃度を高濃度にするため、例えば、イオン注入を行う際のドーズ量を多くすることが考えられる。ここで、イオン注入層は、イオン注入を行った後に加熱処理を行うことによって形成され、イオン注入された不純物がイオン注入時に形成される空孔(すなわち、欠陥)に入り込んで活性化されることで構成される。しかしながら、ドーズ量を多くすることで不純物濃度を高濃度にしようとした場合、ドーズ量が少ない場合と比較すれば高濃度にできるものの、活性化率は大きくならないため、形成される欠陥のばらつきによって不純物濃度のばらつきが大きくなる可能性があり、半導体装置の特性がばらつく可能性がある。
【0007】
また、半導体装置を製造する際、製造工程中に新たな欠陥が導入される可能性がある。このため、上記の半導体装置の製造方法では、導入され得る欠陥のばらつきにより、同じドーズ量でイオン注入したとしても不純物の活性化率が変化してしまい、不純物濃度がばらつくことによって半導体装置の特性がばらつく可能性がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、半導体装置の特性がばらつくことを抑制しつつ、イオン注入層の不純物濃度を高くし易くできる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1では、半導体素子が形成された半導体装置であって、一面(10a)および他面(10b)を有する半導体基板(10)と、半導体基板に形成されたイオン注入層(15、22、23)を含んで構成される半導体素子と、を備え、イオン注入層は、希ガス元素と、第1導電型の不純物または第2導電型の不純物を含んで構成されている。
【0010】
これによれば、イオン注入層は、不純物と希ガス元素とを含んで構成されている。このため、各不純物が活性化し易くなり、不純物濃度がばらつくことを抑制できるので半導体装置の特性がばらつくことを抑制できる。また、各不純物が活性化し易くなるため、ドーズ量を多くしなくても不純物濃度を高くできる。
【0011】
また、半導体装置を製造する際には、製造工程時に新たな欠陥が導入され、当該欠陥によって活性化率がばらつき易くなる。しかしながら、イオン注入層は、希ガス元素を含んで構成されているため、不純物の活性化率を希ガス元素の影響が支配的となるようにし易くできる。このため、活性化率を安定化させることができ、半導体装置の特性がばらつくことを抑制できる。
【0012】
また、請求項5は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、第1導電型の不純物または第2導電型の不純物と、希ガス元素とをイオン注入して構成層(150a、220a、230a)を形成することと、加熱処理による活性化処理を行うことにより、構成層内の不純物を活性化させてイオン注入層を構成することと、を行う。
【0013】
これによれば、イオン注入層が不純物と希ガス元素とを含んで構成される。このため、不純物が活性化し易くなり、不純物濃度がばらつくことを抑制できるので特性がばらつくことを抑制した半導体装置を製造できる。また、各不純物が活性化し易くなるため、ドーズ量を多くしなくても不純物濃度を高くした半導体装置を製造できる。
【0014】
また、半導体装置を製造する際には、製造工程時に新たな欠陥が導入され、当該欠陥によって活性化率がばらつき易くなる。しかしながら、希ガス元素を含んでイオン注入層を構成しているため、不純物の活性化率を希ガス元素の影響が支配的となるようにし易くできる。このため、活性化率を安定化させることができ、特性がばらつくことを抑制した半導体装置を製造できる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の斜視断面図である。
図2】ソース領域の不純物濃度を示す濃度プロファイルである。
図3】第1ディープ層の不純物濃度を示す濃度プロファイルである。
図4A図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4B図4Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4C図4Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4D図4Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4E図4Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4F図4Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4G図4Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4H図4Gに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5】ソース領域の不純物濃度を示す濃度プロファイルであって、Arをイオン注入した濃度プロファイルと、Arをイオン注入していない濃度プロファイルとを示す図である。
図6】第1ディープ層の不純物濃度を示す濃度プロファイルであって、Arをイオン注入した濃度プロファイルと、Arをイオン注入していない濃度プロファイルとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の半導体装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。また、本実施形態では、トレンチゲート構造の反転型のMOSFETが形成されている炭化珪素(以下では、SiCともいう)半導体装置について説明する。なお、本実施形態では、SiC半導体装置のうちのMOSFETが形成されているセル領域の構成について説明するが、実際のSiC半導体装置には、セル領域を囲むように、FLR(Field Limiting Ringの略)構造等が形成された外周領域が備えられている。
【0019】
また、以下では、後述する基板11の面方向における一方向をX軸方向とし、基板の面方向における一方向と交差する方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向として説明する。なお、本実施形態では、X軸方向とY軸方向とは直交している。また、本実施形態におけるZ軸方向とは、後述する半導体基板10の深さ方向に相当しており、後述するドリフト層19とベース層21との積層方向にも相当している。
【0020】
SiC半導体装置は、図1に示されるように、半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置は、SiCからなるn型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cmとされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものであり、高濃度層に相当している。
【0021】
基板11の表面上には、SiCからなるn型のバッファ層12が形成されている。バッファ層12は、基板11の表面にエピタキシャル成長を行うことによって構成される。そして、バッファ層12は、n型不純物濃度が、基板11と、後述する低濃度層13との間の不純物濃度とされ、厚さが1μm程度とされている。
【0022】
バッファ層12の表面上には、例えば、n型不純物濃度が5.0~10.0×1015/cmとされ、厚さが10~15μm程度とされたSiCからなるn型の低濃度層13が形成されている。この低濃度層13は、不純物濃度がZ軸方向において一定とされていてもよいが、濃度分布に傾斜が付けられ、低濃度層13のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。例えば、低濃度層13は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm程度他の部分よりも高くされるのが好ましい。このような構成にすることにより、低濃度層13の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。
【0023】
低濃度層13の表層部には、JFET部14および第1ディープ層15が形成されている。本実施形態では、JFET部14および第1ディープ層15は、それぞれX軸方向に沿って延設されると共に、Y軸方向において交互に繰り返し並べて配置された線状部分を有している。つまり、JFET部14および第1ディープ層15は、基板11の表面に対する法線方向において、それぞれX軸方向に沿って延設されたストライプ状とされ、それらがY軸方向に沿って交互に並べられたレイアウトとなる構成とされている。なお、基板11の表面に対する法線方向においてとは、言い換えると、基板11の表面に対する法線方向から視たときということもできる。また、基板11の表面に対する法線方向とは、後述するドリフト層19とベース層21との積層方向に沿った方向でもある。
【0024】
JFET部14は、低濃度層13よりも高不純物濃度とされたn型とされており、深さが0.3~1.5μmとされている。本実施形態では、JFET部14は、n型不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cmとされている。第1ディープ層15は、イオン注入にて形成されるイオン注入層によって構成され、希ガス元素とp型不純物を含んで構成されている。なお、第1ディープ層15の不純物濃度については、後述する。
【0025】
また、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14より浅く形成されている。つまり、第1ディープ層15は、底部がJFET部14内に位置するように形成されている。言い換えると、第1ディープ層15は、低濃度層13との間にJFET部14が位置するように形成されている。
【0026】
JFET部14および第1ディープ層15上には、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、コンタクト領域23等が形成されている。
【0027】
電流分散層17は、n型とされ、JFET部14と繋がるように形成されている。このため、本実施形態では、低濃度層13、JFET部14、および電流分散層17が繋がり、これらによってドリフト層19が構成されている。そして、第1ディープ層15は、ドリフト層19内に形成された状態となっている。
【0028】
第2ディープ層18は、p型とされ、厚さが電流分散層17と等しくされている。また、第2ディープ層18は、第1ディープ層15と接続されるように形成されている。
【0029】
そして、電流分散層17および第2ディープ層18は、JFET部14のうちのストライプ状とされた部分や、第1ディープ層15の長手方向に対して交差する方向に延設されている。本実施形態では、電流分散層17および第2ディープ層18は、Y軸方向を長手方向として延設されると共に、X軸方向において交互に複数本が並べられたレイアウトとされている。なお、電流分散層17および第2ディープ層18の形成ピッチは、後述するトレンチゲート構造の形成ピッチに合わせてあり、第2ディープ層18は、後述するトレンチ25を挟むように形成されている。
【0030】
ベース層21は、p型とされ、電流分散層17および第2ディープ層18上に形成されている。このため、第1ディープ層15は、第2ディープ層18を介してベース層21と接続された状態となっている。
【0031】
ソース領域22は、n型とされており、ベース層21の表層部に形成されている。コンタクト領域23は、p型とされており、ベース層21の表層部に形成されている。具体的には、ソース領域22は、後述するトレンチ25の側面に接するように形成されており、コンタクト領域23は、ソース領域22を挟んで後述するトレンチ25と反対側に形成されている。なお、本実施形態では、ソース領域22およびコンタクト領域23が接続領域に相当し、ソース領域22が第1不純物領域に相当し、コンタクト領域23が第2不純物領域に相当している。
【0032】
ベース層21は、例えば、p型不純物濃度が3.0×1017/cm以下とされている。また、本実施形態のベース層21は、例えば、イオン注入等で形成されている。ソース領域22は、イオン注入にて形成されるイオン注入層によって構成され、希ガス元素とn型不純物を含んで構成されている。コンタクト領域23は、イオン注入にて形成されるイオン注入層によって構成され、希ガス元素とp型不純物を含んで構成されている。なお、ソース領域22およびコンタクト領域23の不純物濃度については、後述する。
【0033】
本実施形態では、以上のように、基板11、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、コンタクト領域23等を含んで半導体基板10が構成されている。そして、上記のように半導体基板10が構成されているため、半導体基板10は、SiCで構成されているといえる。また、本実施形態では、半導体基板10の一面10aがソース領域22やコンタクト領域23で構成され、半導体基板10の他面10bが基板11で構成されている。
【0034】
半導体基板10には、ソース領域22やベース層21等を貫通して電流分散層17に達すると共に、底面が電流分散層17内に位置するように、例えば、幅が1.4~2.0μmとされたトレンチ25が形成されている。なお、トレンチ25は、JFET部14および第1ディープ層15に達しないように形成されている。つまり、トレンチ25は、底面よりも下方に、トレンチ25とは離れた状態でJFET部14および第1ディープ層15が位置するように形成されている。
【0035】
また、トレンチ25は、図1中では1本のみしか図示していないが、実際には、Y軸方向に沿って延びるように複数本が延設されると共に、X軸方向に等間隔で並べられてストライプ状となるように形成されている。つまり、本実施形態では、トレンチ25は、長手方向が第1ディープ層15の長手方向と直交するように形成されている。また、トレンチ25は、ドリフト層19とベース層21との積層方向において、第2ディープ層18に挟まれるように形成されている。
【0036】
トレンチ25には、内壁面にゲート絶縁膜26が形成され、ゲート絶縁膜26上には、ドープトPoly-Si等によって構成されるゲート電極27が形成されている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面を熱酸化する、またはCVD(chemical vapor depositionの略)法を行うことで形成される。そして、ゲート絶縁膜26は、厚さがトレンチ25の側面側および底面側で共に100nm程度とされている。
【0037】
なお、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜26は、半導体基板10の一面10aの一部も覆うように形成されている。より詳しくは、ゲート絶縁膜26は、ソース領域22の表面の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜26には、ゲート電極27が配置される部分と異なる部分において、ソース領域22およびコンタクト領域23を露出させるコンタクトホール26aが形成されている。
【0038】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極27やゲート絶縁膜26等を覆うように、層間絶縁膜28が形成されている。層間絶縁膜28は、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成されている。
【0039】
層間絶縁膜28には、コンタクトホール26aと連通してソース領域22およびコンタクト領域23を露出させるコンタクトホール28aが形成されている。なお、層間絶縁膜28に形成されたコンタクトホール28aは、ゲート絶縁膜26に形成されたコンタクトホール26aと連通するように形成されており、当該コンタクトホール26aと共に1つのコンタクトホールとして機能する。このため、以下では、コンタクトホール26aおよびコンタクトホール28aを纏めてコンタクトホール26bともいう。そして、コンタクトホール26bのパターンは、任意であり、例えば複数の正方形のものを配列させたパターン、長方形のライン状のものを配列させたパターン、または、ライン状のものを並べたパターン等が挙げられる。本実施形態では、コンタクトホール26bは、トレンチ25の長手方向に沿ったライン状とされている。
【0040】
層間絶縁膜28上には、コンタクトホール26bを通じてソース領域22およびコンタクト領域23と電気的に接続される上部電極29が形成されている。なお、本実施形態では、上部電極29が第1電極に相当している。
【0041】
本実施形態の上部電極29は、Al(アルミニウム)を主成分とするAl-Si層等で構成され、次のようにしてソース領域22およびコンタクト領域23と接続されている。具体的には、ソース領域22およびコンタクト領域23には、コンタクトホール26bから露出する部分に、Ni(ニッケル)等の金属を用いて構成された金属シリサイド層30が形成されている。この金属シリサイド層30は、ソース領域22およびコンタクト領域23と上部電極29との間の接触抵抗を低減するためのものである。
【0042】
そして、金属シリサイド層30上には、Ti(チタン)やTiN(窒化チタン)等で構成されるバリアメタル膜31が形成されている。なお、バリアメタル膜31は、コンタクトホール26bの壁面や層間絶縁膜28の表面にも形成されている。このバリアメタル膜31は、上部電極29を構成するAlが半導体基板10側や層間絶縁膜28側に拡散することを抑制したり、金属シリサイド層30を構成するNiが上部電極29側に拡散することを抑制するものである。
【0043】
そして、上部電極29は、バリアメタル膜31上に配置されることにより、バリアメタル膜31および金属シリサイド層30を介してソース領域22およびコンタクト領域23と接続されている。
【0044】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続される下部電極32が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極32が第2電極に相当している。
【0045】
本実施形態のSiC半導体装置では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。なお、本実施形態では、n型、n型、n型が第1導電型に相当しており、p型、p型が第2導電型に相当している。
【0046】
そして、このようなSiC半導体装置は、具体的には後述するが、ゲート電極27に印加されるゲート電圧が絶縁ゲート構造の閾値電圧以上とされると、上部電極29と下部電極32との間に電流が流れるオン状態となる。また、このようなSiC半導体装置は、ゲート電極27に印加されるゲート電圧が閾値電圧未満とされると、上部電極29と下部電極32との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0047】
次に、本実施形態におけるソース領域22、コンタクト領域23、および第1ディープ層15を構成するイオン注入層の不純物濃度について、具体的に説明する。
【0048】
本実施形態のソース領域22は、上記のように、イオン注入層で構成され、希ガス元素と、n型不純物とを含んで構成されている。そして、ソース領域22は、上部電極29側(すなわち、金属シリサイド層30側)の部分の不純物濃度を高くすることにより、上部電極29との接触抵抗の低減を図ることができる。このため、ソース領域22は、図2に示されるように、上部電極29側の部分の不純物濃度が上部電極29と反対側の部分の不純物濃度よりも高くなる濃度プロファイルとなるように形成されている。言い換えると、ソース領域22は、Z軸方向(すなわち、深さ方向)において、一面10a(すなわち、金属シリサイド層30)側の部分の不純物濃度が高くなる濃度プロファイルとなるように形成されている。
【0049】
コンタクト領域23は、上記のように、イオン注入層で構成され、希ガス元素と、p型不純物とを含んで構成されている。そして、コンタクト領域23は、特に図示しないが、ソース領域22と同様に、上部電極29側の部分の不純物濃度が上部電極29と反対側の部分の不純物濃度よりも高くなるように形成されている。
【0050】
なお、特に限定されるものではないが、ソース領域22は、上部電極29側のn型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cm以上とされている。コンタクト領域23は、上部電極29側のp型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cm以上とされている。
【0051】
第1ディープ層15は、上記のように、イオン注入層で構成され、希ガス元素と、p型不純物とを含んで構成されている。そして、第1ディープ層15は、図3に示されるように、電流分散層17との境界面側に不純物濃度が最大となり、オフ状態である際に空乏化しない不純物濃度とされた高濃度ピークPを有する高濃度領域15aを備える濃度プロファイルとされている。また、第1ディープ層15は、高濃度領域15aより基板11側に、Z軸方向に沿って不純物濃度がほぼ変化しない領域を有し、オフ状態である際に空乏化する低濃度領域15bを有する濃度プロファイルとされている。なお、第1ディープ層15における基板11側の部分は、不純物濃度の変化の傾きが急峻に大きくなって不純物濃度が急峻に小さくなるが、この部分も空乏化する領域であるために低濃度領域15bとなる。
【0052】
そして、このような第1ディープ層15は、高濃度領域15aに空乏化しない領域が構成されるように、高濃度ピークPの不純物濃度が高くされることが好ましい。高濃度ピークPは、電流分散層17よりも高不純物濃度とされ、例えば、1.0×1018/cm以上とされる。
【0053】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。次に、上記SiC半導体装置の作動および効果について説明する。
【0054】
まず、SiC半導体装置では、ゲート電極27に閾値電圧以上のゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース層21に反転層が形成されない。このため、下部電極32に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域22からベース層21内に電子が流れず、SiC半導体装置は、上部電極29と下部電極32との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0055】
また、SiC半導体装置がオフ状態である場合には、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜26の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、トレンチ25よりも深い位置に、第1ディープ層15およびJFET部14が備えられている。そして、第1ディープ層15は、高濃度ピークPが空乏化されない不純物濃度とされている。このため、第1ディープ層15およびJFET部14との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制され、高電界がゲート絶縁膜26に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜26が破壊されることを抑制できる。
【0056】
また、第1ディープ層15における低濃度領域15bは、空乏化される不純物濃度とされている。このため、SiC半導体装置がオフ状態である場合には、第1ディープ層15における低濃度領域15bを含む部分も空乏化される。このため、第1ディープ層15を形成することによるSiC半導体装置の耐圧の低下を抑制できる。
【0057】
そして、ゲート電極27に、閾値電圧以上のゲート電圧、例えば20Vが印加されると、ベース層21のうちのトレンチ25に接している表面に反転層が形成される。これにより、上部電極29と下部電極32との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、反転層を通過した電子が電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を通過して基板11へ流れるため、電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を有するドリフト層19が構成されているといえる。
【0058】
続いて、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について図4A図4Hを参照して説明する。なお、図4A図4Hは、図1におけるY軸方向を法線方向とする断面図である。
【0059】
まず、図4Aに示されるように、基板11の表面上に、SiCからなる、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14が形成された構成基板100を用意する。言い換えると、ドリフト層19のうちの基板11側の部分を含んで構成される構成基板100を用意する。
【0060】
そして、図4Bに示されるように、構成基板100上に図示しないマスクを用いてイオン注入することにより、活性化処理が行われることによって第1ディープ層15を構成する第1ディープ層構成層150を形成する。具体的には、上記図3に示すような高濃度領域15aおよび低濃度領域15bを有する第1ディープ層15が構成されるように、加速エネルギを変更しながら複数回のイオン注入を行って第1ディープ層構成層150を形成する。また、第1ディープ層構成層150を形成する際には、p型不純物としてのAl等と共に、希ガス元素としてのAr等をイオン注入する。但し、この工程では、希ガス元素をイオン注入した後にp型不純物をイオン注入することが好ましい。なお、希ガス元素は、He、Ne、Xe、Rn等であってもよい。また、後述のイオン注入で注入される希ガス元素についても、Arを例に挙げて説明するが、He、Ne、Xe、Rn等であってもよい。
【0061】
続いて、図4Cに示されるように、JFET部14および第1ディープ層15上に、電流分散層17等を形成するための構成層17aをエピタキシャル成長させて半導体基板10を構成する。
【0062】
次に、図4Dに示されるように、半導体基板10の一面10a上に図示しないマスクを用いてn型不純物をイオン注入し、活性化処理が行われることによって電流分散層17を構成する電流分散層構成層170を形成する。また、半導体基板10の一面10a上に図示しないマスクを用いてp型不純物をイオン注入し、活性化処理が行われることによって第2ディープ層18を構成する第2ディープ層構成層180を形成する。
【0063】
続いて、図4Eに示されるように、再び半導体基板10の一面10a上に図示しないマスクを用いてp型不純物をイオン注入し、活性化処理が行われることによってベース層21を構成するベース層構成層210を形成する。また、半導体基板10の一面10a上に図示しないマスクを用いてn型不純物をイオン注入し、活性化処理が行われることによってソース領域22を構成するソース領域構成層220を形成する。さらに、半導体基板10の一面10a上に図示しないマスクを用いてp型不純物をイオン注入し、活性化処理が行われることによってコンタクト領域23を構成するコンタクト領域構成層230を形成する。
【0064】
この際、ソース領域構成層220およびコンタクト領域構成層230を形成する際には、上記図2に示すような濃度プロファイルとなるように、加速エネルギを変更しながら複数回のイオン注入を行ってソース領域構成層220およびコンタクト領域構成層230を形成する。また、ソース領域構成層220を形成する際には、n型不純物と共に、希ガス元素としてのArをイオン注入する。同様に、コンタクト領域構成層230を形成する際には、p型不純物と共に、希ガス元素としてのArをイオン注入する。
【0065】
その後、図4Fに示されるように、半導体基板10に図示しないカーボンマスクを配置し、1700~1900°で加熱処理を行って各不純物を活性化させる活性化処理を行う。これにより、第1ディープ層15、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、およびコンタクト領域23が形成される。
【0066】
この際、本実施形態では、第1ディープ層構成層150、ソース領域構成層220、コンタクト領域構成層230には、各不純物と共に希ガス元素としてのArがイオン注入されており、結晶性が崩れた状態となっている。なお、ここでのArをイオン注入することで結晶性が崩れるとは、p型不純物またはn型不純物をイオン注入することで欠陥が形成される場合と比較すると、Arの方が各不純物よりも原子量が大きいため、結晶性の崩れ(欠陥)が多くなると共に安定した結晶性の崩れとなる。
【0067】
そして、加熱処理を行った際には、上記のように結晶性の崩れが多くなっているため、各不純物は、トラップされ易くなり、活性化し易くなる。なお、Arは、希ガス元素であって活性化し難いため、加熱処理を行った際にトラップされ難い。つまり、Arをイオン注入するのは、各不純物の活性化率を高くするためである。このため、希ガス元素がイオン注入されている部分では、各不純物の活性化率を高くできる。また、希ガス元素がイオン注入されている部分では、各不純物の活性化率を安定化させることができる。言い換えると、希ガス元素がイオン注入されている部分では、各不純物の活性化率をArの注入量に依存させ易くできる。つまり、希ガス元素がイオン注入されている部分では、各不純物の活性化率に対してArの影響が支配的となるようにし易くできる。したがって、本実施形態では、第1ディープ層15、ソース領域22、コンタクト領域23に不純物濃度が高い部分を構成し易くなると共に、不純物濃度がばらつくことを抑制できる。
【0068】
具体的には、図5に示されるように、ソース領域22は、Arをイオン注入することにより、不純物濃度が活性化し易くなって不純物濃度を高くできることが確認される。また、特に図示しないが、コンタクト領域23も同様である。さらに、図6に示されるように、第1ディープ層15は、Arをイオン注入することにより、高濃度ピークPの不純物濃度を高くできることが確認される。
【0069】
なお、図5中の「Arあり」は、ソース領域22を構成するためのn型不純物をイオン注入する際と同じドーズ量および加速エネルギでArをイオン注入した結果を示している。同様に、図6中の「Arあり」は、第1ディープ層15を構成するためのp型不純物をイオン注入する際と同じドーズ量および加速エネルギでArをイオン注入した結果を示している。また、図5および図6中の「Arあり」と「Arなし」の場合では、各不純物のドーズ量を等しくしている。そして、Arをイオン注入することにより、Arは、半導体基板10に残存した状態となるが、希ガス元素であって、活性化し難いため、半導体装置の特性にはほとんど影響しない。
【0070】
続いて、図4Gに示されるように、一般的な半導体製造プロセスを行い、トレンチゲート構造を形成すると共に、層間絶縁膜28を形成する。そして、コンタクトホール28bを形成した後、金属シリサイド層30を形成するための金属膜をコンタクトホール28bに配置する。続いて、レーザアニール等を行い、金属シリサイド層30を形成する。
【0071】
その後は、図4Hに示されるように、バリアメタル膜31、上部電極29、下部電極32を形成することにより、上記SiC半導体装置が製造される。
【0072】
以上説明した本実施形態によれば、第1ディープ層15、ソース領域22、およびコンタクト領域23は、イオン注入層で構成されており、イオン注入層は、各不純物と希ガス元素とを含んで構成されている。このため、各不純物が活性化し易くなり、不純物濃度がばらつくことを抑制できるのでSiC半導体装置の特性がばらつくことを抑制できる。また、各不純物が活性化し易くなるため、ドーズ量を多くしなくても不純物濃度を高くできる。
【0073】
また、SiC半導体装置を製造する際には、製造工程時に新たな欠陥が導入され、当該欠陥によって活性化率がばらつき易くなる。しかしながら、本実施形態では、Arをイオン注入することで敢えて結晶性を崩しており、活性化率に対してArの影響が支配的となるようにし易くできる。このため、活性化率を安定化させることができ、SiC半導体装置の特性がばらつくことを抑制できる。
【0074】
(1)本実施形態では、ソース領域22およびコンタクト領域23は、上部電極29側の不純物濃度が高くされている。このため、上部電極29との接触抵抗を低減できる。
【0075】
(2)本実施形態では、第1ディープ層15は、高濃度領域15aにおける高濃度ピークPの不純物濃度が高くされている。したがって、オフ時に空乏化しない領域を形成し易くできる。
【0076】
(3)本実施形態では、第1ディープ層構成層150、ソース領域構成層220、およびコンタクト領域構成層230を形成する場合には、希ガス元素をイオン注入してから各不純物をイオン注入する。このため、各不純物をイオン注入してから希ガス元素をイオン注入する場合と比較して、希ガス元素をイオン注入することによって各不純物が散乱することを抑制でき、不純物濃度がばらつくことを抑制できる。
【0077】
(4)本実施形態では、半導体基板10がSiCで構成されている。そして、SiCで構成される基板11には初期欠陥が存在するため、半導体基板10には、初期欠陥に依存する欠陥が存在する。このため、Arをイオン注入して結晶性を崩すことにより、活性化率に対してArの影響が支配的となるようにし易くできる。したがって、活性化率を安定化させることができ、SiC半導体装置の特性がばらつくことを抑制できる。
【0078】
(5)本実施形態では、上記のように、Arをイオン注入することにより、活性化率を向上できる。このため、図4Fの工程にて加熱処理を行う際、Arをイオン注入していない場合と比較すると、比較的低い温度でも各不純物を十分に活性化させることができる。したがって、温度制御性を向上でき、品質を安定化させることができる。
【0079】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0080】
例えば、上記第1実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETを例に挙げて説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、他の構造の半導体素子、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETとしてもよい。さらに、半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記第1実施形態におけるn型の基板11をp型のコレクタ層に変更する以外は、上記第1実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【0081】
また、上記第1実施形態では、半導体基板10をSiCで構成した例について説明した。しかしながら、半導体基板10は、シリコン基板や他の化合物半導体基板等を用いて構成されていてもよい。
【0082】
そして、上記第1実施形態では、第1ディープ層15がX軸方向に沿って延設されている例について説明したが、第1ディープ層15がY軸方向に延設されていてもよい。さらに、上記第1実施形態において、第1ディープ層15および第2ディープ層18は形成されていなくてもよい。
【0083】
また、上記第1実施形態では、Arを各不純物と同様の条件でイオン注入する例について説明したが、異なる条件でイオン注入するようにしてもよい。例えば、Arのドーズ量を多くすることにより、さらに活性化率を向上できる。
【0084】
さらに、上記第1実施形態では、第1ディープ層15、ソース領域22、およびコンタクト領域23が希ガス元素としてのArを含んで構成される例について説明した。しかしながら、Arを含んだイオン注入層とすることで不純物の活性化率を向上できるため、ベース層21等もArを含んだイオン注入層で構成してもよい。また、SiC半導体装置が適用される用途によっては、第1ディープ層15のみが希ガス元素としてのArを含んで構成されるようにしてもよいし、ソース領域22およびコンタクト領域23のみが希ガス元素としてのArを含んで構成されるようにしてもよい。
【0085】
また、上記第1実施形態では、構成層17aを形成した後にイオン注入を行うことで電流分散層17を形成する例について説明した。しかしながら、電流分散層17は、エピタキシャル成長で構成層17aを配置する際、不純物濃度を調整しながら構成層17aを配置することで形成されるようにしてもよい。すなわち、電流分散層17は、イオン注入ではなく、構成層17aを配置する工程で同時に形成されるようにしてもよい。
【0086】
そして、上記第1実施形態において、第1ディープ層15を形成する前に構成層17aを配置して半導体基板10を構成し、半導体基板10に対してイオン注入を行うことで第1ディープ層15等を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 半導体基板
10a 一面
10b 他面
15 第1ディープ層(イオン注入層)
22 ソース領域(イオン注入層)
23 コンタクト領域(イオン注入層)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6