(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074249
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】高温用ゲートバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 3/16 20060101AFI20230522BHJP
F16K 51/02 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
F16K3/16
F16K51/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187104
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 俊昭
【テーマコード(参考)】
3H053
3H066
【Fターム(参考)】
3H053AA02
3H053AA25
3H053AA33
3H053BA23
3H053DA09
3H066AA03
3H066BA14
3H066BA17
3H066BA32
3H066BA33
3H066CA01
(57)【要約】
【課題】高温下であっても、安定状態で弁開閉が可能で、特に、弁体のシール部材の熱膨張による過荷重の発生がなく、弁開閉時の振動や音の発生を極力抑制することができ、しかも、コンパクトな高温用ゲートバルブを提供すること。
【解決手段】
高温用ゲートバルブは、ボデー2内を上下動する駆動軸21と、前記駆動軸21に設けられ、かつ前記駆動軸21に対して水平移動する弁体駆動体3と、前記弁体駆動体3の両側の一面に前記ボデー2の開口内壁面を弁座シールする弾性部材のパッキン8を設けた横長で長尺形状の弁体5と、前記弁体駆動体3の両側の他面に前記ボデー2の壁面に押圧接触する弾性部材のクッション9を設けた横長で短尺形状のテンションプレート7と、を備え、前記弁体駆動体3による前記弁体5の締付荷重により前記パッキン8と前記クッション9が略同等の変形量になる形状に形成した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー内を上下動する駆動軸と、前記駆動軸に設けられ、かつ前記駆動軸に対して水平移動する弁体駆動体と、前記弁体駆動体の両側の一面に前記ボデーの開口内壁面を弁座シールする弾性部材のパッキンを設けた横長で長尺形状の弁体と、前記弁体駆動体の両側の他面に前記ボデーの壁面に押圧接触する弾性部材のクッションを設けた横長で短尺形状のテンションプレートと、を備え、前記弁体駆動体による前記弁体の締付荷重により前記パッキンと前記クッションが略同等の変形量になる形状に形成したことを特徴とする高温用ゲートバルブ。
【請求項2】
前記パッキンと前記クッションは、高温時における弁締め切り時の変形量を同程度になるような接地面積に形成した請求項1に記載の高温用ゲートバルブ。
【請求項3】
前記ボデーは、厚み幅方向に横長の第1開口部と横長の第2開口部を形成し、このボデー内における前記テンションプレートの水平移動領域と上下動領域の前記ボデー内壁には、凹部が形成され、前記凹部以外の前記ボデーの厚み幅を変えないようにした請求項1又は請求項2に記載の高温用ゲートバルブ。
【請求項4】
前記テンションプレート面の上下位置に設けられた前記クッションは、前記ボデーの前記第2開口部内壁の上下面で突っ張る構造とした請求項3項に記載の高温用ゲートバルブ。
【請求項5】
前記弁体駆動体は、前記駆動軸に取付けられたリンクブロックと、このリンクブロックに取付けられたリンク機構と、前記駆動軸が上下動する際に作動する前記リンク機構に設けたピストンとを備えた構造である請求項1乃至4の何れか1項に記載の高温用ゲートバルブ。
【請求項6】
複数の前記駆動軸の下端に設けられた駆動軸プレートにアクチュエータにより上下動する出力軸を取付け、この出力軸に定荷重スプリングを有する定荷重ユニットを設け、高温時に、前記パッキンと前記クッションの膨張により前記駆動軸を押下げて前記定荷重スプリングを圧縮し、過大な荷重が加わるのを防ぐ構造とした請求項1乃至5の何れか1項に記載の高温用ゲートバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用ゲートバルブに関し、特に、高温下でも耐久性に優れ、安定した開閉動作を確保すると共に、コンパクト化が可能な高温用ゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置において、真空チャンバーに通じるウェハの搬送通路を開閉する仕切弁として、長尺角型の弁体などを備えた真空用ゲートバルブが用いられる。この弁体のシール部材とシール面との間では、開閉の際に捩れや摺動或は衝撃などによるシール材からパーティクルの発生を防止した所謂無摺動タイプのゲートバルブが知られている。
【0003】
近年、半導体等を製造する成膜装置はウェハのプロセス温度が高くなっており、プロセスチャンバーを250℃程に加熱する場合はプロセスチャンバーとトランスファーチャンバーの仕切りに使用されるゲートバルブも高温に対応できるゲートバルブが求められる。
【0004】
高温対策として、ヒーターを搭載したゲートバルブも知られている。従来のヒーター加熱ゲートバルブは、弁体のシール部材にパーフロロエラストマー材を使用しており高温で使用すると弁体のシール部材の熱膨張により過荷重が発生し開閉時の振動や音が大きくなり、シール部材の耐久性が悪くなる。よって、従来のゲートバルブは高温の対応策が十分ではない。
【0005】
そして、従来の特許文献1のゲートバルブは、弁体のシール部材には、樹脂製の材料を用いており、ステム先端に弁体を設けステムを傾動させてボデーのシール面に弁体を押圧して弁閉シールを形成する構造である。
【0006】
特許文献2のゲートバルブは、一対の第1弁板と第2弁板を弁体駆動体に有し、弁箱の第1開口側に第1弁板が移動して弁閉機能を発揮し、第1弁板にベローズを介して第2開口側に移動可能な第2弁板を形成して、第1弁板を弁座から離間させる方向に作用する逆圧の差圧が生じた際には、ベローズが伸長して第2弁板が弁箱の第2開口側のストッパーに当接する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-56498号公報
【特許文献2】特許第3425937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のゲートバルブは、高温下において、弁体のシール部材の熱膨張が発生した際の対策がない。このため、ステムを傾動させてボデーのシール面に弁体を押圧して弁閉する構造であるから、弁閉時にステムの傾動位置は固定されて、高温下で弁体のシール部材が熱膨張すると熱膨張を吸収するための逃げ場がなく、ステムを押し返す過大な荷重で開閉時の振動や音が増加し、シール部材の耐久性が低下する問題があった。また、過荷重が作用する弁体のシール部材からパーティクルが発生する問題があった。
【0009】
特許文献2は、弁体駆動体は片側の第1弁板のみが開閉駆動しステムを撓ませて弁閉シールし、背面側の第2弁板はストッパーで受ける構造となっており、ボデーとストッパーの隙間や変異が大きいとステムの撓み量が大きくなり、シール面とは反対方向にステムが傾くと弁閉性能が低下する問題がある。
さらには、背面側の弁板には、ステムの撓みを抑制するための変位抑制部材(テンションプレートなど)や弾性変形が小さいPTFE等よりなるクッションがなく、弁体のシール部材の熱膨張をストッパーで逃がすことができない。このため、特許文献2の構造でも、弁体のシール部材の熱膨張が発生したときの対応策がない。
【0010】
加えて、この種のゲートバルブを含む半導体装置には、搬送室の周囲に複数のチャンバーを集積させて構成しており、装置全体のコンパクト化を図るには、高温用のゲートバルブにも、更なるコンパクト化が要求される。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、高温用のゲートバルブであっても安定状態で弁開閉が可能となり、特に、弁体のシール部材の熱膨張による過荷重の発生がなく、弁開閉時の振動や音の発生を極力抑制することができ、しかも、コンパクトな高温用ゲートバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ボデー内を上下動する駆動軸と、駆動軸に設けられ、かつ駆動軸に対して水平移動する弁体駆動体と、弁体駆動体の両側の一面にボデーの開口内壁面を弁座シールする弾性部材のパッキンを設けた横長で長尺形状の弁体と、弁体駆動体の両側の他面にボデーの壁面に押圧接触する弾性部材のクッションを設けた横長で短尺形状のテンションプレートと、を備え、弁体駆動体による弁体の締付荷重によりパッキンとクッションが略同等の変形量になる形状に形成した高温用ゲートバルブである。
【0013】
請求項2に係る発明は、テンションプレートは、パッキンとクッションは、高温時における弁締め切り時の変形量を同程度になるような接地面積に形成した高温用ゲートバルブである。
【0014】
請求項3に係る発明は、ボデーは、厚み幅方向に横長の第1開口部と横長の第2開口部を形成し、このボデー内におけるテンションプレートの水平移動領域と上下動領域のボデー内壁には、凹部が形成され、凹部以外のボデーの厚み幅を変えないようにした高温用ゲートバルブである。
【0015】
請求項4に係る発明は、テンションプレート面の上下位置に設けられたクッションは、ボデーの第2開口部内壁の上下面で突っ張る構造とした高温用ゲートバルブである。
【0016】
請求項5に係る発明は、弁体駆動体は、駆動軸に取付けられたリンクブロックと、このリンクブロックに取付けられたリンク機構と、駆動軸が上下動する際に作動するリンク機構に設けたピストンとを備えた構造である高温用ゲートバルブである。
【0017】
請求項6に係る発明は、複数の駆動軸の下端に設けられた駆動軸プレートにアクチュエータにより上下動する出力軸を取付け、この出力軸に定荷重スプリングを有する定荷重ユニットを設け、高温時に、パッキンとクッションの膨張により駆動軸を押下げて定荷重スプリングを圧縮し、過大な荷重が加わるのを防ぐ構造とした高温用ゲートバルブである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、高温用ゲートバルブは、ボデー内を上下動する駆動軸と、この駆動軸に対して水平移動する弁体駆動体と、弁体駆動体の両側の一面にボデーの開口内壁面を弁座シールする弾性部材のパッキンを設けた横長で長尺形状の弁体と、弁体駆動体の両側の他面にボデーの壁面に押圧接触する弾性部材のクッションを設けた横長で短尺形状のテンションプレートと、を備え、弁体駆動体によって、ボデーの内壁を弁座シールする際に、弁体の締付荷重により弁体のパッキンとテンションプレートのクッションが略同等の変形量になる形状にしたことにより、弁体を傾斜動作させることなく安定状態に弁開閉動作させて、かつ、弁閉状態では弁体のパッキンの変形量とクッションの変形量が同じになり左右の両側での押圧力が略同じになるから、弁締付時の偏りが生じ難くなり、弁閉状態を安定させることができる。
【0019】
そして、弁体駆動体は水平方向に駆動可能な両開きの構造であるから、弁体駆動体が偏心したり傾斜することがないので、弁開閉動作において、弁体やテンションプレートがボデーの内壁面にぶつかったりするのを防止して、高温下での弁開閉動作における振動や音の発生をなくすことができる。
【0020】
加えて、高温による熱膨張が生じた場合、例えば、チャンバーからの高温により弁体のパッキンが熱膨張したときには、テンションプレートのクッションが弁体の熱膨張による変位を吸収して、熱膨張による負荷を逃がすことができ、熱膨張による弁体のパッキンの過荷重の発生をなくして、パッキンの消耗を減らし、かつ耐久性を高めることができる。
【0021】
また、弁体駆動体に取付けた弁体を長尺形状に形成し、弁体駆動体に取付けたテンションプレートを短尺形状に形成して、テンションプレートは、弁体よりも小さくしているから、弁体駆動体の大型化を回避して、従来のバルブボデーの幅と同程度のボデー幅でも使用可能にして、ボデーのコンパクト化を図ることができる。
【0022】
請求項2に係る発明によると、パッキンとクッションは、高温時における弁締め切り時の変形量を同程度になるような接地面積にしているから、ボデー両側の開口部の内壁を押圧する押圧力が、両側の開口部で均等になり、弁閉状態が安定化しやすくなる。
【0023】
請求項3に係る発明によると、ボデーは、厚み幅方向に横長の第1開口部と横長の第2開口部を形成し、このボデー内において、テンションプレートの水平移動領域と上下動領域のボデー内壁には凹部を形成し、かつ、凹部以外のボデーの厚み幅を変えないようにしてバルブボデーの強度を確保しているので、ボデーの開口部を封止しないテンションプレートに押圧されるボデーの内壁側に凹部を形成して、薄肉厚化しつつ、ボデーの他の部分では肉厚を変えないようにして、ボデーの強度を維持すると共に、コンパクト化を図ることができる。
【0024】
請求項4に係る発明によると、クッションは、テンションプレート面の上下位置に設け、ボデーの第2開口部内壁の上下面で突っ張る構造としており、テンションプレートが当接する凹部の内壁を最薄にして、ボデー全体の厚さを薄くして必要最小限の厚さにして、ボデーの大型化を回避して、コンパクト化を図ることができる。
【0025】
請求項5に係る発明によると、駆動軸の上下動により、駆動軸に取付けられたリンクブロックを上下動させて、リンクブロックに取付けたリンク機構を作動させてピストンを水平方向に可動して、弁体駆動体を駆動軸に対して水平移動させることにより、弁体の垂直方向の姿勢を保持した安定状態で水平移動させることができる。よって、高温用ゲートバルブは、弁体を傾斜動作させる必要がなく、安定状態で弁開閉動作することができる。
【0026】
請求項6に係る発明によると、定荷重スプリングを有する定荷重ユニットと駆動軸プレートをアクチュエータの出力軸に取付け、かつ、駆動軸の下端は、出力軸に取付けられた駆動軸プレートに連結しているので、高温時にパッキンやクッションが熱膨張した場合には、弁体駆動体のリンク機構を介して駆動軸を押し下げて、定荷重ユニットの定荷重スプリングを圧縮するから、この定荷重スプリングの圧縮によって、パッキンやクッションに過荷重が発生するのを防止することができる。そして、高温時におけるパッキンやクッションの摩耗を低減して、耐久性を向上させてかつ、パッキンやクッションからパーティクルが発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る高温用ゲートバルブの弁閉状態を示した、縦断正面図である。
【
図2】同高温用ゲートバルブの弁開状態を示した、縦断正面図である。
【
図3】(a)は、同ゲートバルブの一部省略した、平面図であり、(b)は、同ゲートバルブの弁閉状態における一部切欠き背面図である。
【
図4】(a)は、定荷重ユニットと駆動軸プレートの説明図であり、(b)は、弁開状態又は弁閉状態における定荷重ユニットの説明図である。
【
図5】本発明に係る高温用ゲートバルブの弁体駆動体の説明図である。
【
図6】(a)は、弁体駆動体のリンク機構の説明図であり、(b)は、
図5のA部の要部を拡大した弁体駆動体の弁開位置での説明図であり、(c)は、
図5のA部の要部を拡大した弁体駆動体の弁閉位置での説明図である。
【
図7】(a)弁体締切り時におけるパッキンの変形量を説明する図であり、(b)弁体締切り時におけるクッションの変形量を説明する図である。
【
図8】本発明に係る高温用ゲートバルブの弁開閉動作の説明図であり、(a)弁閉状態の説明図であり、(b)弁開状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る高温用ゲートバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、弁閉状態の縦断正面図である。
図2は、弁開状態の縦断正面図である。
【0029】
本発明に係る高温用ゲートバルブは、半導体製造装置において、真空チャンバーに通じるウェハの搬送通路を開閉する仕切弁として使用され、高温下でも耐久性に優れ、安定した弁開閉動作を確保すると共に、コンパクト化が可能な高温用ゲートバルブである。
【0030】
本例の高温用ゲートバルブは、弁体駆動体3を駆動軸21に対して水平移動させることにより、弁体5を傾斜動作させることなく、水平方向に弁閉シールできるように構成している。
本例では、ボデー2内を上下動する駆動軸21に連結した弁体駆動体3のリンク機構4を作動させて、弁体5をボデー2の開口のシール面(又は弁座)に当接または離間させて、高温用ゲートバルブが弁閉状態又は弁開状態となる。
【0031】
図5に示すように、弁体駆動体3は、ボデー2の内壁面を弁座シールする弁体5と、弁体5を取付けるための弁体取付板6と、弁体5の反対側のボデー2の内壁を押圧するテンションプレート7と、弁体駆動体3を水平方向に移動させる一対のリンク機構4と、弁体駆動体3の内部と外部を遮断するベローズ10と、リンク機構4のピストン13の可動を補助するベアリング11より構成される。
【0032】
弁体駆動体3の下端側は駆動軸21に連結しており、アクチュエータ40を介した駆動軸21の上下動により、弁体駆動体3がボデー2内で上下動作可能に構成している。
本例の弁体駆動体3は、駆動軸21を所定の位置まで上昇させるとリンク機構4が作動しリンク機構4のピストン13によって、水平方向に移動可能となり弁体駆動体3が水平移動するように構成している。
【0033】
リンク機構4が作動するときには、弁体駆動体3が水平方向のみに移動する両開きの構造であるから、弁体駆動体3が偏心したり傾斜することがないので、弁開閉動作において、弁体5やテンションプレート7がボデー2の内壁面にぶつかったりするのを防止して、高温下での弁開閉動作における振動や音の発生を抑制することができる。
【0034】
弁体駆動体3の両側の一面には、横長の長尺形状で金属製の弁体5を設けており、弁体5は、ボデー2の開口内壁面を弁座シールする弾性部材のパッキン8を有し、このパッキン8をボデー2の開口内壁面に密着させて第1開口部16を弁閉シールし、高温用ゲートバルブを弁閉状態にする。
【0035】
本例のパッキン8は、例えば、パーフロロエラストマー(FFKM)やフッ素ゴム(PTFEなど)等の樹脂材料の弾性部材よりなり、高温下で使用しても一定の耐久性、耐熱性を備えていれば特に限定はない。
【0036】
また、弁体駆動体3には、弁体5を取付けるために金属製の弁体取付板6が設けられ、図示しない加熱用ヒーターを任意に取付可能である。
【0037】
弁体駆動体3の両側の他面には(弁体5の反対側)、横長の短尺形状で金属製のテンションプレート7を設けており、テンションプレート7は、対向するボデー2の第2開口部17全体を密閉しない程度の大きさに構成されている。
【0038】
弁体5の反対側に設けたテンションプレート7は、テンションプレート7の横方向の長さが、弁体5の横方向の長さ方向より短くなっており、
図3(a)及び(b)に示すように、本例では半分程度になっている。
【0039】
本例では、テンションプレート7が、弁体5よりも小さくしているから、両開き構造の弁体駆動体3が大型化するのを回避している。このため、従来のバルブボデーの幅と同程度のボデー幅でも使用可能にして、ボデーのコンパクト化を図ることができる。
【0040】
テンションプレート7は、ボデー2の壁面に押圧接触する弾性部材のクッション9を有しており、本例のクッション9は、例えば、パーフロロエラストマー(FFKM)やフッ素ゴム(PTFEなど)等の樹脂材料の弾性部材よりなり、高温下で使用しても一定の耐久性、耐熱性を備えていれば特に限定はない。
【0041】
図3及び
図5に示すように、クッション9は、テンションプレート7の上下位置に設け、クッション9は、ボデー2のボンネット取付穴を避けた第2開口部17側の後述するボデー2の凹部19の内壁の上下面に突っ張るような構造に設けており、上下のクッション9のみがボデー2の凹部19の内壁面を押圧するようにして、テンションプレート7のクッション9が当接する凹部19の内壁を最薄にしている。ボデー全体の厚さを薄くして必要最小限の厚さにして、ボデーの大型化を回避し高温用ゲートバルブのコンパクト化を図ることができる。
【0042】
クッション9は、高温用ゲートバルブが弁閉状態となるときにボデー2の壁面を押圧接触するように構成しているが、ボデー2の第2開口部17を完全に密閉しない構造であるから、リンク機構4によって弁体駆動体3が水平移動したときテンションプレート7のクッション9が第2開口部17の内壁を押圧しても、第2開口部17は、開口状態のままである。
【0043】
ここで、
図7(a)、(b)に示すように弁体5のパッキン8の断面形状とテンションプレート7のクッション9の断面形状は異なっており、本例では、弁体5の締付け時において弁体5のパッキン8の変形量V1とテンションプレート7のクッション9の変形量V2は同程度になるようにしている。
【0044】
リンク機構4による弁体5とテンションプレート7の水平方向の移動量は同じであるから、
図7に示す変形部分a1とa2の幅は同じである。前述より弁体5の横方向の長さとテンションプレート7の横方向の長さは異なっており、弁体5は長尺形状であるのに対しテンションプレート7は短尺形状であるから、弁体5のパッキン8の変形部分b1よりもクッション9の変形部分b2を大きくして、弁体の締付け時において変形量V1と変形量V2が同じになるようにしている。
【0045】
すなわち、本例では、パッキンとクッションは、高温時における弁締め切り時の変形量を同程度になるような接地面積に形成している。
ここで、接地面積とは、弁締め切り時において弁体5のパッキン8が第1開口部16の内壁を押圧接触するときのパッキン8が内壁に接触する面積を意味しており、また、弁締め切り時においてテンションプレート7のクッション9が第2開口部17の内壁を押圧接触するときのクッション9が内壁に接触する面積を意味する。
【0046】
なお、接地面積(接触面積)の大きさは、変形量V1と変形量V2が同じになるように適宜設定可能であり、パッキン8やクッション9の弾性力や弁閉性能を考慮して、適時、設定すればよい。
また、パッキン8とクッション9を同種同一の材料により構成すれば、同一の弾性力となるので、断面形状や接地面積の設定がしやすくなり好ましい。
【0047】
このように、リンク機構4によって弁体5とテンションプレート7がボデー2の両側の開口部に当接したとき、変形量V1と変形量V2が同じであるから、水平方向の移動量も同量で、両側で弁体5とテンションプレート7の移動量を略同じにすることができる
そして、弁体5のパッキン8がボデー2の第1開口部16の内壁面に当接して弁体5を締付けて弁閉状態となるときに、同時にテンションプレート7のクッション9もボデー2の第2開口部17の内壁を押圧するので、リンク機構4で弁体駆動体3が水平移動して両側で突っ張るように弁開閉動作させて、両側の左右の移動量が同量になり、左右の両側での押圧力も略同じになるので、偏りがなくなり高温下においても安定した弁開閉動作となる。
【0048】
本例では、リンク機構4によって弁体駆動体3を水平移動させているが、弁体を水平方向に移動させるための駆動機構は、リンク機構以外の他の機構であってもよく、例えばシリンダ機構により弁体を水平移動させてもよい。
本例のリンク機構は、一例である。以下、リンク機構は、実施形態の一例として説明する。
【0049】
本例の弁体駆動体3のリンク機構4は、一対のV字型のリンク機構であり一対の駆動軸21の上下動によって一対のリンク機構4を同時に作動させて、弁体駆動体3が水平移動して、弁開閉動作する。
図5、
図6(a)に示すようにリンク機構4は、駆動軸21に連結したリンクブロック15と、軸14を介してリンクブロック15に接続した一対のリンク12と、リンク12を介して水平移動するピストン13とベアリング11により構成されている。
【0050】
リンク機構4のリンクブロック15の下端は駆動軸21に連結しており、駆動軸21が上下動することにより、リンク機構4が作動して、リンクブロック15の上下動の変位をリンク12により水平移動に変換してピストン13が水平移動することで、弁体駆動体3が水平移動可能になり、弁体5は第1開口部16側に水平移動し、また同時にテンションプレート7は第2開口部17側に水平移動可能になる。
すなわち、弁体5は、リンク機構4のリンク12に接続したピストン13の水平移動により第1開口部16に接触及び離間して、テンションプレート7は、リンク機構4のリンク12に接続したピストン13の水平移動により第2開口部17に接触及び離間して、高温用ゲートバルブを弁閉状態又は弁開状態にすることができる。
【0051】
リンクブロック15の下端は、弁体駆動体3が弁開位置でセンターガイド22の係止部23と係止可能に設けられている。
後述する
図6(b)の弁開位置では、センターガイド22の係止部23がリンクブロック15に係合し、
図6(c)の弁閉位置では、センターガイド22の係止部23とリンクブロック15の係合が解除される。
【0052】
ベアリング11の内周側ではピストン13が水平移動し、ベアリング11の外周側にはベローズ10を設けて、弁体駆動体3のリンク機構4とボデー2の間の異物侵入を遮断している。
【0053】
ボデー2は、厚み幅方向に横長の第1開口部16と横長の第2開口部17を形成しており、ボデー2の第1開口部16の内壁を弁体5のパッキン8が当接すると弁閉シールとなり、ボデー2の第2開口部17の内壁をテンションプレート7のクッション9が押圧しても、第2開口部は、開口状態を保持するように構成されている。
【0054】
ここで、両開き構造では弁体駆動体が大きくなり、ボデーの厚みも大きくなる問題があるが、本例では、テンションプレートを押し付けるボデーの内壁を極力薄くしてボデーの大型化を回避している。
【0055】
図3(a)に示すように、中央のボデー2の第2開口部17側にボンネット18の取付穴を避けて凹形状の凹部を形成し、テンションプレート7の水平移動領域と上下動領域に相当するボデー2の内壁側に、凹部19を設けている。
ここで、テンションプレート7の水平移動領域とは、テンションプレート7がリンク機構4によって水平移動する範囲の領域を意味する。テンションプレート7の上下動領域とは、駆動軸21が上下動するときに弁体駆動体3の上下動によってテンションプレート7が上下動する範囲の領域を意味する。
【0056】
凹部19には薄板状の分割ボデー壁20を設け、分割ボデー壁20にクッション9が当接できるような最小の厚みにして、テンションプレート7のクッション9が当接するボデー2の凹部19の内壁を最薄にしている。これにより、ボデー全体の厚さを薄くして必要最小限の厚さにして、ボデーの大型化を回避して、高温用ゲートバルブのコンパクト化を図ることができる。
【0057】
また、
図3(a)に示すように、中央のボデー2の凹部以外のボデー幅の厚みを変えないようにして肉厚を保持して、一定の強度を確保している。
【0058】
図5に示すように、第1開口部16側のボデー2内壁と弁体5の間には、所定の隙間D1を有し、第2開口部17側のボデー2内壁とテンションプレート7の間には、所定の隙間D1を有するように構成している。所定の隙間D1により、ボデー2内で弁体駆動体3が垂直方向に上下動するときに、弁体5のパッキン8、テンションプレート7のクッション9がボデー2の内壁に接触しないようにしている。
【0059】
なお、隙間D1は、特に限定はないが、例えば、1mm程度とすれば、ボデー2をコンパクト化しつつ、弁体駆動体3の上下動時にボデー2の内壁に対するパッキン8、クッション9の摺動を回避できる。
【0060】
駆動軸21は、アクチュエータ40の出力軸43の上下動を介してステム部材24内を上下動可能に設けている。本例では、2つの駆動軸21の上下動により、ボデー2内で弁体駆動体3を上下動可能に構成しており、弁体駆動体3の一対のリンク機構4を作動可能に設けている。
また、ステム部材24の下端と支持部材26は、ベローズ25により外部遮断している。
【0061】
図6(b)、(c)に示すように、駆動軸21の先端側には、センターガイド22を設け、センターガイド22と駆動軸21との間には所定の隙間D2を形成している。
センターガイド22により、駆動軸21の上下動を調芯するように案内して、駆動軸21が上下動する際の偏心状態や歪み、ガタつきなどを防止しており、弁体駆動体3の垂直方向の上下動が安定するから、安定状態でリンク機構4による弁開閉動作が可能になる。また、安定した垂直方向の駆動軸21の上下動により、弁体5のパッキン8やテンションプレート7のクッション9がボデー2の内壁に接触するのを回避している。
【0062】
センターガイド22の先端部には、リンクブロック15の下端に係合可能な係止部23を設けている。
図6(b)の弁体駆動体3の弁開位置では、センターガイド22の係止部23がリンクブロック15の下端に係合し、
図6(c)の弁体駆動体3の弁閉位置では、センターガイド22の係止部23とリンクブロック15の係合が解除される。
これにより、
図6(b)の弁体駆動体3の弁開位置では、駆動軸21の動きを制限し位置固定し、
図6(c)の弁体駆動体3の弁閉位置では、駆動軸21が僅かに移動可能で、隙間D2の分だけ僅かに撓むことができる。
【0063】
なお、本例ではセンターガイド22の係止部23をテーパ形状に形成し、リンクブロック15の下端もテーパ形状にして係合するようにしたが、特に限定はなく、例えば、センターガイド22の係止部23を段差形状などにして係合するようにしてもよい。
【0064】
駆動軸21の下端は、アクチュエータ40の出力軸43に連結した駆動軸プレート33に接続しており、駆動軸プレート33とガイドプレート32との間には弁開用スプリング34を設けている。
ガイドプレート32は、所定の位置まで上昇したとき、ストッパー部材31に当接して上昇が制限されて、さらに出力軸43が上昇すると、弁開用スプリング34が圧縮される。
定荷重ユニット35と駆動軸プレート33は、アクチュエータ40の出力軸43に装着されている。
【0065】
また、ガイドプレート32と駆動軸プレート33と定荷重ユニット35と駆動軸21の上下動を一体化するガイド部材37を設け、ガイドプレート32、駆動軸プレート33、定荷重ユニット35、駆動軸21の一体的な上下動作により、駆動軸21の上下動が安定して、安定状態での弁開閉動作を可能にしている。
【0066】
図4(a)及び(b)に示すように、定荷重ユニット35と駆動軸プレート33の間に、4つの定荷重スプリング36を収容している。定荷重ユニット35の定荷重スプリング36は、弁閉に必要な荷重を付加できるように設けており、高温用ゲートバルブが弁閉状態のとき、駆動軸21に連結した弁体駆動体3を介して弁体5に、リンク機構4を介した定荷重スプリング36の付勢力を弁閉方向に伝達して弁閉状態を保持する。
【0067】
また、弁体5が高温に加熱されてパッキン8に熱膨張が生じると、熱膨張でクッション9が圧縮されて、弁体駆動体3のリンク機構4により駆動軸21を押し下げて、駆動軸21方向からの負荷により定荷重スプリング36が圧縮されて、定荷重スプリング36の圧縮αにより弁体5のパッキン8の過荷重を吸収する。
【0068】
なお、本例では、定荷重スプリング36に渦巻バネを使用しているが、板バネ等のバネ部材でもよい。また、定荷重スプリング36の数や弾発力は上記の機能を発揮できれば特に限定はなく、任意に設定できる。
【0069】
駆動軸21を上下動させるアクチュエータ40は、本例では、空気式アクチュエータにより構成しており、エアシリンダ41には、ロックピンによるラッチロック機構のロック手段46を設けている。
外部のエア供給手段でエア給排気路45からシリンダ室44にエア供給して、ピストン42が上昇すると出力軸43の上昇により、駆動軸21が上昇する。
【0070】
また、ピストン42が所定の位置になるとロック手段46により、ピストン42の位置を固定する。弁閉位置にあるときにピストン42が固定されるので、外部によるエア供給排気を停止しても、弁閉状態を維持することができる。
なお、本例のロック手段46は、ラッチロック機構であるが、他の方法であってもよい。例えば、ロック手段46は、アクチュエータの出力軸43の上下動を規制する方法により構成してもよい。
【0071】
次に、本発明に係る高温用ゲートバルブの弁開閉動作及び作用について説明する。
図8は、本発明に係る高温用ゲートバルブの弁開閉動作の説明図であり、(a)は弁閉状態の説明図であり、(b)は弁開状態の説明図である。
【0072】
本例の高温用ゲートバルブを弁閉状態にするためには、図示しない外部のエア供給手段によりエア給排気路45からエアシリンダ41のシリンダ室44にエア供給して、エアシリンダ41のピストン42を上昇させる。ピストン42の上昇によりアクチュエータ40の出力軸43が上昇し、これにより駆動軸プレート33に連結した駆動軸21も上昇する。
【0073】
本例では、駆動軸21が上昇する際に、駆動軸21はセンターガイド22により調芯されながら案内されるので、駆動軸21の偏心状態や歪み等が防止され、駆動軸21に連結した弁体駆動体3は垂直姿勢を保持した状態で弁閉位置まで上昇することができる。
【0074】
ガイドプレート32が所定の位置まで上昇するとストッパー部材31に当接して、ガイドプレート32の上昇は規制される。この状態から、さらに出力軸43が上昇すると、駆動軸プレート33の上昇により弁開用スプリング34が圧縮される。
また、出力軸43の上昇により、駆動軸21が所定の弁閉位置まで上昇すると弁体駆動体3のリンク機構4が作動する。このとき、エアシリンダ41のピストン42はロック手段46によりピストン42が位置固定される。
【0075】
駆動軸21が弁閉位置まで上昇すると、弁体駆動体3のリンク機構4のリンクブロック15の上昇方向の変位をリンク12を介して水平方向に変換して、ピストン13が水平方向に移動して、ピストン13に連結している弁体取付板6は水平移動し、弁体取付板6に取付けられた弁体5は第1開口部16に向かって水平移動する。弁体5のパッキン8がボデー2の内壁面に当接するまで水平移動すると、高温用ゲートバルブの第1開口部16が封止されて、高温用ゲートバルブは弁閉状態となる。
【0076】
このとき、同時にリンク機構4のリンクブロック15の上昇方向の変位を第2開口部17側のリンク12を介して水平方向に変換して、第2開口部17側のピストン13が水平方向に移動して、ピストン13に連結しているテンションプレート7は第2開口部17に向かって水平移動し、テンションプレート7のクッション9がボデー2の内壁に当接して、クッション9が第2開口部17側のボデー2の内壁を押圧する。クッション9が当接したとき第2開口部17は完全には封止されないので、第2開口部17は開口状態が保持されたままである。
【0077】
本例の高温用ゲートバルブは、駆動軸やステムを傾斜動作させることなく、弁体駆動体3のリンク機構4によって弁体5を水平方向に移動させるので、弁体5の垂直方向の姿勢を保った状態で、弁体5のパッキン8を水平方向に均一にボデー2の内壁に密着させて第1開口部16を封止することができる。
【0078】
本例では、第1開口部16側では弁体5のパッキン8が弁閉シールを形成し、反対側では、テンションプレート7のクッション9が第2開口部17側のボデー2内壁を押圧し、弁体5の弁締切り時には、ボデー開口の両側は、弁体5とテンションプレート9がそれぞれボデー2の内壁面に当接する構造となっており、弁体駆動体は水平方向に駆動可能な両開きの構造であるから、弁体駆動体が偏心したり傾斜することがないので、弁開閉動作において、弁体やテンションプレートがボデーの内壁面にぶつかったりするのを防止して、高温下での弁開閉動作における振動や音の発生をなくすことができる。
また、本例の高温用ゲートバルブは、弁閉状態のとき弁体5とテンションプレート7が突っ張る構造により、弁閉状態が安定して弁閉状態を保持しやすくなる。
【0079】
加えて、定荷重ユニット35の定荷重スプリング36によって弁閉に必要な荷重を付加できるように構成しているので、定荷重ユニット35の定荷重スプリング36の弾発力がリンク機構4を介して水平方向の弁閉シール方向に伝達されて、リンク機構4による押圧力と定荷重スプリング36の弾発力によって、弁閉する押圧力が増強されるため、弁体やステムを傾斜動作させる必要がなく、弁閉状態を保持するのに十分な押圧力を付加して高温下においても安定した弁閉状態を保持することができる。
また、駆動軸やステムは、ある程度の剛性があればよく、押圧力を付加させるために駆動軸やステムなどに過度な剛性を持った材料を使用する必要がない。
【0080】
さらに、本例は、弁体5のパッキン8の断面形状とテンションプレート7のクッション9の断面形状が異なっており、弁閉状態において弁体5のパッキン8の変形量V1とテンションプレート7のクッション9の変形量V2は同程度になるようにしている。
弁体5のパッキン8では、弁閉性能を十分に発揮することができるように、面圧を高めることができるような断面形状とし、一方のテンションプレート7のクッション9では、必要最小限の大きさで十分な弾性機能を発揮できような断面形状としている。
【0081】
弁体5の弁締切り時(弁閉状態)、パッキン8の変形量V1とクッション9の変形量V2が同じであるから、リンク機構4による弁体5とテンションプレート7の水平方向の移動量が同じになり、駆動軸は撓まないので弁体が傾斜することがなく、封止機能を発揮する際の水平方向の押圧力(弁閉シール力)が安定して、高温下であっても安定した弁閉状状態を保持しやすい。
【0082】
従来の弁体を傾斜させて弁体のシール部材をボデーのシール面に当接させて、弁閉状態にする構造と比較すると、本例の高温用ゲートバルブでは、弁体5が水平方向に移動して弁閉状態にするから弁体5のパッキン8に係るシール面圧を均一にしやいので、弁閉状態で弁体5のパッキン8に不均一な面圧が生じ難く、高温下での使用において弁閉状態の封止性能の安定性が向上しパッキン8の耐久性に優れている。
【0083】
そして、弁閉状態において弁体5のパッキン8の変形量V1とテンションプレート7のクッション9の変形量V2は同程度になるような、断面形状とすることで、パッキン8が熱膨張したとき、反対側のクッション9がリンク機構4を介して圧縮されて、熱膨張の弾性変位差を吸収することができ、パッキン8に過荷重が生じるのを抑制できる。
また、接地面積を調整することにより、パッキン8の変形量V1とクッション9の変形量V2を同程度に調整しやすい。
【0084】
図6(c)に示すように、弁体駆動体3の弁閉位置ではセンターガイド22とリンクブロック15の係合が解除される。弁閉位置では、駆動軸21が僅かに水平方向(黒矢印)に移動可能で、駆動軸21を僅かに撓ませることができる。
【0085】
さらに、本例では、弁閉状態において駆動軸21が僅かに上下動(黒矢印)可能であるから、弁体5のパッキン8に係る過荷重を反対側のクッション9で吸収するときに、リンク機構4を介して駆動軸21を押し下げることができる。よって、例えば弁体5が高温よって加熱されてパッキン8に熱膨張が生じたときには、熱膨張によるパッキン8の変形量はリンク機構4を介して駆動軸21方向の移動量に伝達させることができる。
【0086】
すなわち、弁体5が高温に加熱されてパッキン8に熱膨張が生じると、パッキン8の熱膨張の変位がリンク機構4に伝達されてクッション9で移動量を吸収する。そして、クッション9の弾性力よりも過度な荷重であると、リンク機構4により垂直方向に駆動軸21を押し下げて、駆動軸21方向からの負荷により定荷重スプリング36が圧縮αされる。
これにより、弁体5のパッキン8の熱膨張による過荷重は、定荷重スプリング36の圧縮αにより吸収することができるので、弁閉状態においての弁体5のパッキン8に過荷重が生じるのを抑制することができる。本例は、弁体5のパッキン8に過荷重が発生するのを抑制するので、パッキン8の消耗を低減することができる。
【0087】
また、駆動軸21が上昇した弁閉位置においては、駆動軸21はセンターガイド22から離れてフリー状態となりパッキン8とクッション9の弾性変位差を駆動軸21が撓むことでリンク12がピストン13往復動方向に移動可能となるので、弁体5が高温に加熱されパッキン8が膨張した場合に駆動軸21が撓んでリンク12がピストン13方向(クッション9の方向)に移動しクッションを圧縮する。例えばクッション9をPTFEとした場合には、クッション9が接地するとパッキン8のみが圧縮されるためパッキン8圧縮移動量の半分はリンクブロック15がステム中心からずれることになるが剛性の高いステム部材には曲げ荷重は加わらなく弁体5は垂直を保った状態で弁体を平行に均一に締め切ることができる。
このように、高温下で熱膨張が発生しても、弁体5の垂直姿勢は保持されるため、安定した弁閉性能を保持できる。
【0088】
本例の高温用ゲートバルブは、高温下で弁体5のパッキン8やテンションプレート7のクッション9に熱膨張が発生しても熱膨張の変形量を逃がすことができるので、従来よりも高温対策に優れ、パッキン8やクッション9の消耗が抑制されて、高温下においても使用しても弁体5のパッキン8やテンションプレート7のクッション9の耐久性を高めることができる。加えて、パッキン8とクッション9の消耗が低減されるから、パッキン8やクッション9からパーティクルが発生するのを抑制でき、かつ、安定した弁閉性能を保持できる。
【0089】
また、本例では、エアシリンダ41にロック手段46を設けているので、弁閉位置まで上昇させたピストン42をロックピン46により位置固定して、仮に外部のエア供給手段などが停止したときでも弁閉状態を保持できる。
定荷重ユニット35の定荷重スプリング36による弁閉方向への付勢力による押圧力の付加と、ロック手段46によって、高温下においても、より安定した弁閉性能を発揮できる。
【0090】
また、テンションプレート7の上下位置に設けられたクッション9は、ボデー2の第2開口部17内壁の上下面で突っ張る構造としているので、シール機能がないテンションプレート7を可能な限り小さくして弁体駆動体3の大型化を回避しつつ、高温用ゲートバルブのコンパクト化を図ることができる。
【0091】
そして、ボデー2の第2開口部17側の内壁には、凹部19を形成し、分割ボデー壁20を設けて、非シール側を極限まで薄肉厚化しているので、ボデー2の幅方向の厚みを抑制しながら、高温用ゲートバルブのコンパクト化を図ることができる。
また、凹部以外はボデー2の厚み幅を変えないように肉厚化しており、非シール側を極限まで薄肉厚化してコンパクト化を図りながら、所定の強度を確保することできる。
【0092】
本例の高温用ゲートバルブは、高温下で使用されるゲートバルブをコンパクト化することができるから、チャンバーと搬送室の間を仕切るためのゲートバルブとして使用した際に、半導体装置の装置全体のコンパクト化に寄与する。
【0093】
続けて、弁開状態にする際の動作について説明する。本例の高温用ゲートバルブを弁開状態するためには、図示しない外部のエア供給手段によりエア給排気路45からエアシリンダのシリンダ室44にエア供給をして、エアシリンダ41のピストン42を降下させる。エアシリンダ41の出力軸43が降下し、これにより駆動軸プレート33に連結した駆動軸21も降下する。
【0094】
本例は、圧縮された弁開用スプリング34の弾発力が、駆動軸21が降下する方向に付加されるので、駆動軸21が降下する速度を速めることができる。
【0095】
駆動軸21が所定の弁開位置まで降下すると、弁体駆動体3におけるリンク機構4のリンクブロック15の上下方向の変位はリンク12を介して水平方向に変換されて、ピストン13が水平移動して、ピストン13に連結している弁体取付板6がボデー2内壁の第1開口部16から離間する方向に水平移動して、弁体取付板6に取付けられた弁体5は第1開口部16から離間する方向に水平移動する。弁体5による第1開口部16の弁閉シールが解除されると、高温用ゲートバルブは弁開状態となる。
このとき、同時にリンク機構4のリンクブロック15の上下方向の変位は第2開口部17側のリンク12を介して水平方向に変換されて、リンク機構4の第2開口部17側ピストン13が水平移動して、ピストン13に連結しているテンションプレート7は第2開口部17から離間する方向に水平移動して、クッション9がボデー2の内壁から離間する。
【0096】
本例の高温用ゲートバルブは、弁体駆動体3のリンク機構4によって、弁体5とテンションプレート7が同時に水平移動し、水平方向に移動する移動量は同量であるから、弁開動作時のガタつきや偏りがなく、弁開動作時に振動や音が発生するのを抑制することができる。
【0097】
図6(b)に示すように、駆動軸21が所定の位置まで降下すると、センターガイド22の係止部23がリンクブロック15に係止する。
弁体駆動体3の弁開位置では、センターガイド22の係止部23とリンクブロック15の係合により駆動軸21の移動が規制されて駆動軸21を位置固定し、駆動軸21が撓んだり、ガタついたりするのを防止することができ、弁開動作時に振動や音が発生するのを抑制することができる。
【0098】
弁開位置では、駆動軸21が位置固定されるから、高温用ゲートバルブが弁開状態のとき駆動軸21が移動することなく、駆動軸21の撓みやガタつきを防止して、本例の高温用ゲートバルブは、安定した弁開状態を保持することができる。
【0099】
このように、本例の高温用ゲートバルブは、弁開閉動作時には、弁体駆動体3のリンク機構4によって、弁体5とテンションプレート7を同時に水平移動して、水平方向の移動量を同量にしているので、高温下においても安定した弁開閉動作を確保できる。
そして、弁体駆動体3による弁体5の締付荷重によりパッキン8とクッション7が略同等の変形量になる形状に形成したことにより、弁閉シール時に両側での押圧力がほぼ同じになって、樹脂部材からなるパッキン8やクッション7の接触面では、面圧の不均一や偏りが生じ難くなり、弁開閉作動時の振動や音が生じ難くなる。
さらに、高温下で、摩耗しやすい弁体のパッキン8(シール部材)やクッション9に係る過荷重の発生をなくし、高温用ゲートバルブの耐久性を向上させることができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【0101】
上記の実施の形態では、駆動軸21を上下動させるアクチュエータ40を空気式アクチュエータにより構成したが、電動式アクチュエータにより構成してもよい。また、ロック手段は、カム機構やカム溝などにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
2 ボデー
3 弁体駆動体
4 リンク機構
5 弁体
6 弁体取付板
7 テンションプレート
8 パッキン
9 クッション
15 リンクブロック
16 第1開口部
17 第2開口部
19 凹部
21 駆動軸
32 ガイドプレート
33 駆動軸プレート
35 定荷重ユニット
36 定荷重スプリング
40 アクチュエータ
43 出力軸