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特開2023-7426基板から接触バンプへの熱抵抗が低減された横方向励起型フィルムバルク音響共振器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007426
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】基板から接触バンプへの熱抵抗が低減された横方向励起型フィルムバルク音響共振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20230111BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20230111BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/25 Z
H03H9/17 F
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092911
(22)【出願日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】63/216,525
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/506,571
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514326649
【氏名又は名称】レゾナント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESONANT INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】カルドナ アルバート
(72)【発明者】
【氏名】オブライアン クリス
(72)【発明者】
【氏名】ダイヤー グレッグ
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097AA19
5J097AA24
5J097BB15
5J097CC05
5J097DD24
5J097EE08
5J097GG07
5J097JJ09
5J097KK09
5J097KK10
5J108AA07
5J108BB01
5J108CC04
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108EE13
5J108FF11
5J108JJ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板から接触バンプへの熱抵抗が低減された音響共振器デバイスを提供する。
【解決手段】熱インピーダンスが低い音響共振器デバイス550は、基板520と、接合酸化物(BOX)層572を介して基板の上面に取り付けられる背面を有する単結晶圧電プレート560と、を有する。圧電プレートの前面に形成されるインターデジタルトランスデューサ(IDT)580は、振動板に配置されるインターリーブされたフィンガー436を有する。インターリーブされたフィンガーの重なりの距離は、共振器デバイスのアパーチャを規定する。接触パッド582及び584は、基板の表面上の選択された位置に形成されて、IDTと接触パッドに取り付けられる接触バンプ480及び481との間の電気的接続を提供する。圧電プレートは、各接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から除去されて、接触バンプと基板との間のより低い熱抵抗を提供する。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板から接触バンプへの熱抵抗が低減された音響共振器デバイスであって、
表面を有する基板と、
前面と、前記基板中のキャビティに跨る振動板を形成する圧電プレートの一部を除いて、前記基板の表面に形成される接合酸化物(BOX)層を介して前記基板の表面に取り付けられる背面とを有する単結晶圧電プレートと、
インターリーブされたIDTフィンガーが前記振動板に配置されるように前記単結晶圧電プレートの前面上に形成されるインターデジタルトランスデューサ(IDT)を含む導体パターンであって、前記インターリーブされたフィンガーの重なりの距離が前記共振器デバイスのアパーチャを規定する導体パターンと、
前記基板の表面の選択された位置に形成されて、前記IDTと接触パッドに取り付けられる前記接触バンプとの間の電気的接続を提供する接触パッドと、を含み、
前記圧電プレートは、前記各接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から除去されて、前記音響共振器デバイス上に形成される前記接触バンプと前記基板との間のより低い熱抵抗を提供する、音響共振器デバイス。
【請求項2】
前記各接触パッドの下の前記デバイスの表面領域の一部は、前記接触パッドと前記基板との間の所定の量の熱抵抗を低減するために、前記BOX層の選択された位置にある前記BOX層の所定の領域である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記接触パッドに取り付けられる前記接触バンプを更に含み、前記接触パッドは、前記導体パターンの上面に取り付けられる金属層を含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記インターリーブされたフィンガーは、2セットのフィンガーであり、前記IDTは、前記2セットのフィンガーのそれぞれに取り付けられるバスバーを更に含み、
前記金属層は、前記バスバーに電気的に接続される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記BOX層は、各接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から除去されて、前記接触バンプと前記基板との間のより低い熱抵抗を提供し、
電気的絶縁層は、前記接触パッドと前記基板の表面との間に形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記各接触パッドの下の前記デバイスの表面領域の一部は、前記接触パッドと前記基板との間の所定の量の熱抵抗を低減するために、前記基板の選択された位置にある前記基板の所定の領域である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記接触パッドに取り付けられる前記接触バンプを更に含み、前記接触パッドは、前記基板に形成される前記電気的絶縁層の上面に取り付けられる金属層を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記インターリーブされたフィンガーは、2セットのフィンガーであり、前記IDTは、前記2セットのフィンガーのそれぞれに取り付けられるバスバーを更に含み、
前記金属層は、前記バスバーに電気的に接続される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記IDTに印加される無線周波数信号は、前記キャビティの上方の前記圧電プレートにおいて一次せん断音響モードを励起し、前記振動板の厚さは、前記圧電プレートにおける前記一次せん断音響モードを調整するように選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
キャビティを有する基板と、
前記基板の上方に形成され前記キャビティに跨り、かつ前記キャビティに跨る振動板を形成する圧電プレートと、
前記圧電プレートと前記基板との間の接合酸化物(BOX)層と、
前記圧電プレートの前面にあり、かつ前記キャビティの上方においてインターリーブされたフィンガーを有するインターデジタルトランスデューサ(IDT)と、を含み、
前記キャビティは外周を有し、
前記圧電プレートは、前記キャビティの外周の長さ及び幅を超えるデバイスの表面領域の一部から除去されて、導体パターンと前記基板との間により低い熱抵抗を提供する、フィルタデバイス。
【請求項11】
前記基板はSiであり、前記接合層はSiOであり、前記IDTは金属であり、前記圧電プレートはニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムのいずれかである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記キャビティは、外周を有し、
各接触パッドの下の前記デバイスの表面領域の少なくとも一部は、前記キャビティの外周の長さ及び幅を超えて5~25%より多く延びる、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記基板の表面の選択された位置に形成されて、前記IDTと接触パッドに取り付けられる接触バンプとの間の電気的接続を提供する、前記接触パッドを更に含み、
前記デバイスの表面領域の一部は、前記各接触パッドの下にある、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記インターリーブされたフィンガーは、2セットのフィンガーであり、前記IDTは、前記2セットのフィンガーのそれぞれに取り付けられるバスバーを更に含み、
前記接触パッドは、前記バスバーに電気的に接続される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記IDTに印加される無線周波数信号は、前記キャビティの上方の前記圧電プレートにおいて一次せん断音響モードを励起し、前記振動板の厚さは、前記圧電プレートにおける前記一次せん断音響モードを調整するように選択される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
熱インピーダンスが低い音響共振器デバイスであって、
表面を有する基板と、
前面と、前記基板中のキャビティに跨る振動板を形成する圧電プレートの一部を除いて、前記基板の表面に形成される接合酸化物(BOX)層を介して前記基板の表面に取り付けられる背面とを有する単結晶圧電プレートと、
インターリーブされたIDTフィンガーが前記振動板上に配置されるように前記単結晶圧電プレートの前面上に形成されるインターデジタルトランスデューサ(IDT)を含む導体パターンであって、前記インターリーブされたフィンガーの重なりの距離が前記共振器デバイスのアパーチャを規定する導体パターンと、
前記基板の表面の上方にある前記導体パターン上の選択された位置に形成される接触パッドと、
前記基板の表面上の選択された位置に形成される電気的絶縁層とを含み、
前記圧電プレートと前記BOX層は、前記各接触パッドと前記電気的絶縁層との間から選択された位置で除去される、音響共振器デバイス。
【請求項17】
前記選択された各位置は、前記各接触パッドの下の前記基板の所定の領域である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記接触パッドに取り付けられる接触バンプを更に含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記インターリーブされたフィンガーは、2セットのフィンガーであり、前記IDTは、前記2セットのフィンガーのそれぞれに取り付けられるバスバーを更に含み、
金属層は、前記バスバーに電気的に接続される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記IDTに印加された無線周波数信号は、前記キャビティの上方の前記圧電プレートにおいて一次せん断音響モードを励起し、前記振動板の厚さは、前記圧電プレートにおける一次せん断音響モードを調整するように選択される、請求項16に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象となる資料を含む。本特許文書は、所有者のトレードドレスである、又は、トレードドレスとなりうる事項を表示、及び/又は、記載し得る。著作権及びトレードドレスの所有者は、特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されている本特許開示がいかなる者によって複製されることにも異議を唱えないが、それ以外の場合は、すべての著作権及びトレードドレスの権利を留保する。
【0002】
〔関連出願情報〕
本特許文書は、2021年6月30日に出願された「METHOD TO IMPROVE BUMP THERMAL RESISTANCE」と題する同時係属中の米国仮特許出願第63/216,525号の優先権を主張するものである。
【0003】
本開示は、音響波共振器を使用する無線周波数フィルタ、特に通信機器用のフィルタに関する。
【背景技術】
【0004】
無線周波数(RF)フィルタは、一部の周波数を通過させ、他の周波数を阻止するように構成された2ポートデバイスであり、ここで、「通過」とは、比較的低い信号損失で伝送することを意味し、「阻止」とは、遮断するか又は大幅に減衰することを意味する。フィルタを通過する周波数の範囲は、フィルタの「通過帯域」と呼ばれる。このようなフィルタにより阻止される周波数の範囲は、フィルタの「阻止帯域」と呼ばれる。典型的なRFフィルタは、少なくとも1つの通過帯域及び少なくとも1つの阻止帯域を有する。通過帯域又は阻止帯域の特定の要件は、特定の用途に依存する。例えば、「通過帯域」は、フィルタの挿入損失が1dB、2dB又は3dBなど、規定値より優れた周波数範囲として規定されてもよい。「阻止帯域」は、用途に応じて、フィルタの除去が20dB、30dB、40dB又はそれ以上など、規定値より大きい周波数範囲として規定されてもよい。
【0005】
RFフィルタは、情報が無線リンクを介して伝送される通信システムに使用される。例えば、RFフィルタは、セルラ基地局、携帯電話及びコンピューティングデバイス、衛星トランシーバ及び地上局、IoT(モノのインターネット)デバイス、ラップトップコンピュータ及びタブレット、固定点無線リンク、並びに他の通信システムのRFフロントエンドに見られる。RFフィルタは、レーダー、電子戦及び情報戦システムにも使用される。
【0006】
RFフィルタは、典型的には、特定の用途ごとに、挿入損失、除去、分離、電力処理、直線性、サイズ及びコストなどの性能パラメータ間の最良の妥協点を実現するために、多くの設計トレードオフを必要とする。特定の設計、製造方法及び機能強化は、これらの要件の1つ以上を同時に満たすことができる。
【0007】
無線システムにおけるRFフィルタの性能強化は、システム性能に幅広い影響を与える可能性がある。RFフィルタの改良を活用して、セルサイズの拡大、電池寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、コストの削減、セキュリティの強化、信頼性の向上などのシステム性能の改善を実現することができる。これらの改善は、RFモジュール、RFトランシーバ、モバイル又は固定サブシステムなどの無線システムの様々なレベルで個別に又は組み合わせて実現することができるか又はネットワークレベルで実現することができる。
【0008】
現在の通信システム用の高性能RFフィルタには、通常、表面弾性波(SAW)共振器、バルク音響波(BAW)共振器、フィルムバルク音響波共振器(FBAR)及び他のタイプの音響共振器を含む音響波共振器が組み込まれる。しかしながら、従来技術は、将来の通信ネットワークのために提案されているより高い周波数及び帯域幅での使用には適さない。
【0009】
より広い通信チャネルの帯域幅への要望は、必然的に、より高い周波数の通信帯域の使用につながる。携帯電話ネットワーク用の無線アクセス技術は、3GPP(登録商標)(第3世代パートナーシッププロジェクト)により標準化されている。第5世代モバイルネットワーク用の無線アクセス技術は、5G NR(新しい無線)規格で規定されている。5G NR規格は、いくつかの新規な通信帯域を規定する。これらの新しい通信帯域の2つは、3300MHz~4200MHzの周波数範囲を使用するn77と、4400MHz~5000MHzの周波数範囲を使用するn79である。帯域n77及び帯域n79の両方が時分割複信(TDD)を使用するため、帯域n77及び/又は帯域n79で動作する通信デバイスは、アップリンク送信及びダウンリンク送信の両方に同じ周波数を使用する。帯域n77及び帯域n79のバンドパスフィルタは、通信デバイスの送信電力に対応できるものでなければならない。5GHzと6GHzのWiFi帯域にも、高周波数及び広帯域幅が必要である。また、5G NR規格は、周波数が24.25GHz~40GHzのミリ波通信帯域を規定する。
【発明の概要】
【0010】
横方向励起型フィルムバルク音響共振器(XBAR)は、マイクロ波フィルタ用の音響共振器構造である。XBARは、「TRANSVERSELY EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR」と題する特許US10,491,291号に記載されている。XBAR共振器は、単結晶圧電材料の薄いフローティング層又は振動板に形成されたインターデジタルトランスデューサ(IDT)を含む。IDTは、第1のバスバーから延びる第1セットの平行フィンガーと、第2のバスバーから延びる第2セットの平行フィンガーとを含む。第1及び第2のセットの平行フィンガーは、インターリーブされる。IDTに印加されたマイクロ波信号は、圧電振動板においてせん断一次音響波を励起する。XBAR共振器は、非常に高い電気機械結合及び高い周波数能力を提供する。XBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、マルチプレクサを含む様々なRFフィルタで使用されてもよい。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタにおける使用によく適する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】横方向励起型フィルムバルク音響共振器(XBAR)の概略平面図及び2つの概略断面図を含む。
図2図1のXBARの一部の拡大概略断面図である。
図3A】XBARの代替の概略断面図である。
図3B】XBARにおける目的の一次音響モードの説明図である。
図3C】XBARを使用した高周波バンドパスフィルタの概略回路図及びレイアウトである。
図4】接触パッドの下のデバイスの表面領域に圧電プレートがあるXBARの概略断面図である。
図5A】接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレートが除去された、改良されたXBARの概略断面図である。
図5B】接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート及び接合酸化物(BOX)層が除去された、改良されたXBARの概略断面図である。
図6】接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレートが除去された場合と除去されない場合のXBARデバイスのバンプの熱抵抗分析を示す表である。
図7A】(「図7」と総称される)接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレートが除去されたXBARを製造するプロセスのフローチャートである。
図7B】(「図7」と総称される)接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレートが除去されたXBARを製造するプロセスのフローチャートである。
図8A】(「図8」と総称される)接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート及び接合酸化物(BOX)層が除去されたXBARを製造するプロセスのフローチャートである。
図8B】(「図8」と総称される)接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート及び接合酸化物(BOX)層が除去されたXBARを製造するプロセスのフローチャートである。
図8C】(「図8」と総称される)接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート及び接合酸化物(BOX)層が除去されたXBARを製造するプロセスのフローチャートである。
図9】接触パッド及びサーマルビアの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレートが除去された改良されたXBARの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この説明全体を通して、図面に現れる要素には、3桁又は4桁の参照番号が割り当てられ、ここで、下2桁は、要素に特有のものであり、上1桁又は上2桁は、要素が最初に導入された図面番号である。図面と組み合わせて説明されていない要素は、同じ参照番号又は同じ下2桁を有する前述の要素と同じ特性及び機能を有すると仮定してもよい。
【0013】
デバイスの説明
横方向励起型フィルムバルク音響共振器(XBAR)は、マイクロ波フィルタ用の新規な共振器構造である。XBARは、全ての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、「TRANSVERSELY EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR」と題する米国特許第10491291号に記載されている。XBAR共振器は、圧電材料の薄いフローティング層又は振動板に形成されたインターデジタルトランスデューサ(IDT)を有する導体パターンを含む。IDTは、それぞれ1セットのフィンガーに取り付けられた2つのバスバーを有し、2セットのフィンガーは、共振器が装着された基板に形成されたキャビティの上方にある振動板にインターリーブされる。振動板は、キャビティに跨って、前側及び/又は後側の誘電体層を含んでもよい。IDTに印加されたマイクロ波信号は、音響エネルギーがIDTにより生成された電界の方向に直交するか又は横断する層の表面に実質的に垂直に流れるように、圧電振動板においてせん断一次音響波を励起する。XBAR共振器は、非常に高い電気機械結合及び高い周波数能力を提供する。
【0014】
圧電膜は、基板のキャビティに跨る単結晶圧電材料のプレートの一部であってもよい。圧電振動板は、膜であってもよく、前側及び/又は後側の誘電体層を含んでもよい。XBAR共振器は、振動板又は膜に形成されたインターデジタルトランスデューサ(IDT)を有するこのような振動板又は膜であってもよい。接触パッドは、基板の表面上の選択された位置に形成されて、IDTと接触パッドに取り付けられるか又は形成される接触バンプとの間の電気的接続を提供することができる。
【0015】
XBAR振動板から熱を除去するための主なメカニズムは、IDTフィンガーを介して基板へ伝導し、次に基板から接触パッド及び接触バンプを介してXBARを収容するパッケージへ伝導することである。しかしながら、接触パッドと導体パターンの他の導体は、圧電層及び一般的に接合酸化物(BOX)層により基板から分離される。圧電層及びBOX層の低い熱伝導率は、基板から接触パッド及びバンプを介して熱を効率的に除去することに対して実質的なバリアとなる。
【0016】
以下では、各接触パッドの下のデバイス又は基板の表面領域の少なくとも一部から圧電プレートを除去して接触バンプと基板との間のより低い熱抵抗を提供することにより、基板から接触パッドを介して熱を効率的に伝導する改良されたXBAR共振器、フィルタ、及びXBAR共振器の製造技術について説明する。プレートを除去すると、接触パッドの下に、基板と接触する接合酸化物層又は電気的絶縁層へのサーマルビアを作成することにより、XBAR共振器の基板からバンプへの熱抵抗を低減することができる。
【0017】
図1は、横方向励起型フィルムバルク音響共振器(XBAR)100の簡略化された概略上面図及び直交断面図を示す。共振器100などのXBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、マルチプレクサを含む様々なRFフィルタで使用されてもよい。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタにおける使用に特に適する。
【0018】
XBAR100は、それぞれ平行な前面112及び背面114を有する圧電プレート110の表面に形成された薄膜導体パターンで構成される。圧電プレートは、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ランタムガリウムシリケート、窒化ガリウム又は窒化アルミニウムなどの圧電材料の薄い単結晶層である。圧電プレートは、前面及び背面に対するX、Y及びZ結晶軸の方位が既知で一貫しているようにカットされる。提示された例において、圧電プレートは、Zカットされてもよく、つまり、Z軸は、表面に垂直である。しかしながら、XBARは、他の結晶方位を有する圧電プレートに製造されてもよい。
【0019】
圧電プレート110の背面114は、圧電プレート110に機械的支持を提供する基板120に取り付けられる。基板120は、例えば、シリコン、サファイア、石英又は他のいくつかの材料であってもよい。基板は、熱酸化シリコン(TOX)、SiO、多結晶シリコン、及び/又は他の誘電体材料などの電気的絶縁材料の層又は所定の領域を有してもよい。圧電プレート110の背面114又はプレートを含む振動板115は、ウェハ接合プロセスを使用して基板120に接合されるか、又は基板120に成長されるか、又は他のいくつかの方法で基板に取り付けられてもよい。圧電プレートは、基板に直接的に取り付けられてもよく、SiO、又はAlなどの他の酸化物の接合酸化物(BOX)層などの接合酸化物層122を介して基板に取り付けられてもよい。
【0020】
XBAR100の導体パターンは、インターデジタルトランスデューサ(IDT)130を含む。IDT130は、第1のバスバー132から延びるフィンガー136などの第1の複数の平行フィンガーと、第2のバスバー134から延びる第2の複数のフィンガーとを含む。第1の複数の平行フィンガー及び第2の複数の平行フィンガーは、インターリーブされる。インターリーブされたフィンガー136は、通常、IDTの「アパーチャ」と呼ばれる距離APだけ重なっている。IDT130の最も外側のフィンガー間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。
【0021】
第1のバスバー132及び第2のバスバー134は、XBAR100の端子又は電極として機能する。IDT130の2つのバスバー132、134の間に印加される無線周波数又はマイクロ波信号は、圧電プレート110において一次音響モードを励起する。更に詳細に議論されるように、励起された一次音響モードは、音響エネルギーが、圧電プレート110の表面に実質的に直交する方向に沿って伝播するバルクせん断モードであり、該方向は、IDTフィンガーが生成する電界の方向にも垂直又は横断する。したがって、XBARは、横方向励起型フィルムバルク波共振器と考えられる。
【0022】
キャビティ140は、IDT130を含む圧電プレート110の一部115が、基板120又はキャビティ140の底部に接触せずにキャビティ140の上方に懸吊されるように、基板120内に形成される。「キャビティ」は、「固体内の空いた空間」という従来の意味を有する。キャビティ140には、ガス、空気又は真空が含まれてもよい。キャビティ140は、(図1の断面A-A及び断面B-Bに示すように)基板120を完全に貫通する穴又は(続いて図3Aに示すように)基板120内の凹部であってもよい。キャビティ140は、例えば、圧電プレート110及び基板120の取り付け前又は取り付け後に基板120を選択的にエッチングすることにより形成されてもよい。図1に示すように、キャビティ140は、IDT130のアパーチャAP及び長さLより大きい範囲を有する長方形の形状を有する。XBARのキャビティは、規則的な多角形又は不規則的な多角形などの様々な形状を有してもよい。XBARのキャビティは、直線又は曲線の4辺より多くてもよく、少なくてもよい。
【0023】
キャビティ140の上方に懸架された圧電プレートの一部115は、マイクロフォンの振動板に物理的に類似しているため、本明細書において「振動板」115(より良い用語がないため)と呼ばれる。図1に示すように、振動板115は、キャビティ140の外周145全体の周りの圧電プレート110の残りの部分と隣接する。振動板は、キャビティ140の外周全体又はほぼ全体の周りの圧電プレート110の残りの部分に連続的かつシームレスに接続されてもよい。この文脈において、「隣接する」とは、「任意の介在するアイテムなしで連続的に接続される」ことを意味する。いくつかの場合には、BOX層は、プレート110を外周の周りの基板120に接合してもよい。BOX層は、外周145の周りのプレートと基板との間に存在してもよく、外周内だけでなく、キャビティから更に離れて延びてもよい。BOX層を除去するプロセス(すなわち、本発明)がない場合、BOX層は、圧電プレートと基板との間のどこにもある。BOX層は、典型的に、キャビティを形成する一部としての振動板115の背面から除去される。IDT130は、少なくともIDT130のフィンガー136が、キャビティ140に跨るか又はその上方に懸吊される圧電プレートの振動板115に配置されるように、圧電プレート110に配置される。
【0024】
図1では、図面を見やすくするために、IDTフィンガーの幾何学的ピッチ及び幅は、XBARの長さ(寸法L)及びアパーチャ(寸法AP)に対して大幅に拡大される。典型的なXBARは、IDT110に10本以上の平行フィンガーを有する。XBARは、IDT110に数百、場合によっては数千の平行フィンガーを有してもよい。同様に、断面図におけるフィンガーの厚さは大幅に拡大される。
【0025】
図2は、図1のXBAR100の詳細な概略断面図を示す。断面図は、IDTのフィンガーを含むXBAR100の一部であってもよい。圧電プレート110は、厚さtsを有する圧電材料の単結晶層である。tsは、例えば、100nm~1500nmであってもよい。3.4GHz~6GHzのLTE(登録商標)帯域(例えば、帯域n77、n79)のフィルタに使用される場合、厚さtsは、例えば200nm~1000nmであってもよい。
【0026】
前側誘電体層214は、圧電プレート110の前側に任意に形成されてもよい。XBARの「前側」は、定義上に基板とは反対側を向いている表面である。前側誘電体層214は、厚さtfdを有する。前側誘電体層214は、IDTフィンガー236の間に形成される。図2に示されないが、前側誘電体層214はまた、IDTフィンガー236の上方に堆積(deposited、蒸着)されてもよい。後側誘電体層216は、圧電プレート110の後側に任意に形成されてもよい。後側誘電体層は、BOX層であるか又はBOX層を含んでもよい。後側誘電体層216は、厚さtbdを有する。前側誘電体層214及び後側誘電体層216は、二酸化シリコン又は窒化シリコンなどの非圧電誘電体材料であってもよい。tfd及びtbdは、例えば、0~500nmであってもよい。tfd及びtbdは、典型的には、圧電プレートの厚さts未満である。tfd及びtbdは、必ずしも等しくなく、前側誘電体層214及び後側誘電体層216は、必ずしも同じ材料ではない。前側誘電体層214及び後側誘電体層216のいずれか又は両方は、2種以上の材料からなる複数の層で形成されてもよい。
【0027】
前側誘電体層214は、フィルタ内のいくつかの(例えば、選択された)XBARデバイスのIDTの上方に形成されてもよい。前側誘電体214は、いくつかのXBARデバイスのIDTフィンガーの間に形成され、これらのフィンガーを被覆してもよいが、他のXBARデバイスに形成されない。例えば、前側周波数設定誘電体層は、シャント共振器のIDTの上方に形成されて、前側誘電体がより薄いか又は全くない直列共振器の共振周波数に対してシャント共振器の共振周波数を低減してもよい。いくつかのフィルタは、様々な共振器の上方に2つ以上の異なる厚さの前側誘電体を含んでもよい。共振器の共振周波数は、前側誘電体層の厚さを選択することにより少なくとも部分的に共振器を「調整(tuning、同調)」するように設定されてもよい。
【0028】
更に、パッシベーション層は、XBARデバイスの外部の回路に電気的接続が行われる接触パッドを除いて、XBARデバイス100の表面全体にわたって形成されてもよい。パッシベーション層は、XBARデバイスがパッケージに組み込まれている間、XBARデバイスの表面をシールして保護することを目的とする薄い誘電体層である。前側誘電体層及び/又はパッシベーション層は、SiO、Si、Al、他のいくつかの誘電体材料、又はこれらの材料の組み合わせであってもよい。
【0029】
パッシベーション層の厚さは、圧電プレートと金属導体を水及び化学腐食から保護するために、特に耐電力性の目的で選択されてもよい。パッシベーション層の厚さは、10~100nmの範囲であってもよい。パッシベーション材料は、SiO及びSi材料などの、複数の酸化物及び/又は窒化物コーティングで構成されてもよい。
【0030】
IDTフィンガー236は、アルミニウム又は実質的にアルミニウム合金、銅又は実質的に銅合金、ベリリウム、タングステン、モリブデン、金又はいくつかの他の導電性材料の1層以上であってもよい。クロム又はチタンなどの他の金属の薄い(導体の総厚さに対して)層は、フィンガーと圧電プレート110との間の接着を改善し、及び/又は、フィンガーをパッシベートするか又はカプセル化するために、フィンガーの下方及び/又は上方に形成されてもよい。IDTのバスバー(図1の132、134)は、フィンガーと同じであるか又は異なる材料で製造されてもよい。
【0031】
寸法pは、IDTフィンガーの中心間の間隔又は「ピッチ」であり、IDTのピッチ及び/又はXBARのピッチと呼ばれてもよい。寸法wは、IDTフィンガーの幅又は「マーク」である。XBARのIDTは、表面弾性波(SAW)共振器に使用されるIDTと実質的に異なる。SAW共振器では、IDTのピッチは、共振周波数での音響波長の半分である。追加的に、SAW共振器のIDTのマークとピッチとの比率は、典型的には、0.5に近い(すなわち、マーク又はフィンガーの幅は、共振時の音響波長の約4分の1である)。XBARでは、IDTのピッチpは、典型的には、フィンガーの幅wの2~20倍である。更に、IDTのピッチpは、典型的には、圧電スラブ212(圧電プレート110)の厚さtsの2~20倍である。XBARのIDTフィンガーの幅は、共振時の音響波長の4分の1に制限されない。例えば、XBARのIDTフィンガーの幅は、500nm以上であってもよいため、IDTは、光リソグラフィーを使用して製造することができる。IDTフィンガーの厚さtmは、100nmから幅wにほぼ等しくてもよい。IDTのバスバー(図1の132、134)の厚さは、IDTフィンガーの厚さtmと同じであるか又はそれより大きくてもよい。
【0032】
図3Aは、図1で規定された切断面A-Aに沿うXBARデバイス300の代替の断面図である。図3Aでは、圧電プレート310は、基板320に取り付けられる。圧電プレート310の一部は、基板のキャビティ340に跨る振動板315を形成する。キャビティ340は、基板320を完全に貫通せず、XBARのIDTを含む圧電プレート310の一部分の下方にある基板に形成される。IDTのフィンガー336などのフィンガーは、振動板315に配置される。プレート310、振動板315及びフィンガー336は、プレート110、振動板115及びフィンガー136であってもよい。
【0033】
キャビティ340は、例えば、圧電プレート310を取り付ける前に基板320をエッチングすることにより形成されてもよい。或いは、キャビティ340は、圧電プレート310に設置された1つ以上の開口342を通って基板に到達する選択的なエッチング液を使用して基板320をエッチングすることにより形成されてもよい。振動板315は、キャビティ340の外周345の大部分の周りの圧電プレート310の残りの部分と隣接してもよい。例えば、振動板315は、キャビティ340の少なくとも50%の外周の周りの圧電プレート310の残りの部分と隣接してもよい。
【0034】
1つ以上の中間材料層322は、プレート310と基板320との間に取り付けられてもよい。中間層は、接合層、BOX層、エッチストップ層(etch stop layer)、シール層、接着剤層、又はプレート310及び基板320に取り付けられるか又は接合される他の材料の層であってもよいか、又はそれらを含んでもよい。層322は、これらの層のいずれか1つ以上の層、又はこれらの層の組み合わせであってもよい。他の実施形態において、圧電プレート310は、基板320に直接的に取り付けられ、中間層は存在しない。
【0035】
キャビティ340は断面で示されているが、キャビティの横方向の範囲は、図面の平面に垂直な方向にキャビティ340を取り囲み、そのサイズを規定する基板320の連続した閉帯域であることを理解されたい。キャビティ340の横方向(すなわち、図に示される左右)の範囲は、基板320の横方向の縁部により規定される。キャビティ340の垂直方向(すなわち、図に示すようにプレート310から下向き)の範囲又は深さは、基板320内に延びる。この場合、キャビティ340は、長方形又は長方形に近い断面である側面断面を有する。
【0036】
図3Aに示されるXBAR300は、(圧電プレート310の取り付け前又は取り付け後に)キャビティ340が基板320の前側からエッチングされるため、本明細書において「前側エッチング」構成と呼ばれる。図1のXBAR100は、圧電プレート110が取り付けられた後にキャビティ140が基板120の後側からエッチングされるため、本明細書において「後側エッチング」構成と呼ばれる。XBAR300は、キャビティ340の左側及び右側にある圧電プレート310の1つ以上の開口342を示す。しかしながら、いくつかの場合には、圧電プレート310の開口342は、キャビティ340の左側又は右側のみにある。
【0037】
図3Bは、XBARにおける目的の一次音響モードの説明図である。図3Bは、圧電プレート310及び3つのインターリーブされたIDTフィンガー336を含むXBAR350の小さい一部を示す。XBAR350は、本明細書において任意のXBARの一部であってもよい。RF電圧はインターリーブされたフィンガー336に印加される。この電圧は、フィンガーの間に時間的に変化する電界を生成する。電界の方向は、「電界」とラベル付けされた矢印により示されるように、主に横方向であるか又は圧電プレート310の表面に平行である。圧電プレートの誘電率が高いため、電界は、空気に比べて圧電プレート内に高度に集中する。横方向の電界は、せん断変形を導入するため、圧電プレート310において、一次せん断音響モードを強く励起する。この文脈において、「せん断変形」は、材料内の平行な平面が平行のままであり、相互に平行移動しながら一定の距離を維持する変形として規定される。「せん断音響モード」は、媒体のせん断変形をもたらす媒体の音響振動モードとして規定される。XBAR350のせん断変形は、曲線360で表され、隣接する小さい矢印は、原子運動の方向及び大きさを概略的に示す。原子運動の程度及び圧電プレート310の厚さは、視覚化を容易にするために大幅に拡大される。原子運動は主に横方向(すなわち、図3Bに示される水平方向)であるが、励起された一次せん断音響モードの音響エネルギーの流れの方向は、矢印365で示されるように、圧電プレートの前面及び背面に実質的に直交する。
【0038】
せん断音響波共振に基づく音響共振器は、電界が厚さ方向に印加される、現在の最新技術のフィルムバルク音響共振器(FBAR)及び固体実装共振器バルク音響波(solidly-mounted-resonator bulk-acoustic-wave)(SMRBAW)デバイスより優れた性能を達成することができる。せん断波XBAR共振の圧電結合は、他の音響共振器に比べて高くなる(>20%)可能性がある。高い圧電結合により、相当の帯域幅を有するマイクロ波フィルタ及びミリ波フィルタの設計及び実装を可能にする。
【0039】
図3Cは、XBARを使用した高周波バンドパスフィルタ370の概略回路図及びレイアウトである。フィルタ370は、3つの直列共振器380A、380B、380Cと、2つのシャント共振器390A、390Bとを含む従来のはしご形フィルタ構造を有する。これらの3つの直列共振器380A、380B、380Cは、第1のポートと第2のポートとの間に直列接続されている。図3Cでは、第1のポートと第2のポートは、それぞれ「イン(In)」及び「アウト(Out)」とラベル付けされる。しかしながら、フィルタ370は、双方向であり、いずれのポートがフィルタの入力又は出力として機能してもよい。これらの2つのシャント共振器390A、390Bは、直列共振器間のノードからグランドに接続される。全てのシャント共振器及び直列共振器は、単一ダイでのXBARである。
【0040】
フィルタ370の3つの直列共振器380A、380B、380Cと、2つのシャント共振器390A、390Bとは、シリコン基板(見えない)に接合された1枚の圧電材料のプレート310に形成される。各共振器は、それぞれ少なくともフィンガーが基板のキャビティの上方に配置されるIDT(図示せず)を含む。この文脈及びこれと同様の文脈において、「それぞれ」という用語は、「それぞれをそれぞれに関連付ける」ことを意味し、つまり、1対1の対応を意味する。図3Cでは、キャビティは、破線の長方形(例えば、長方形345)として概略的に示される。この例において、各IDTは、それぞれのキャビティの上方に配置される。他のフィルタでは、2つ以上の共振器のIDTは、単一のキャビティの上方に配置されてもよい。
【0041】
図4は、接触パッド432及び434の下のデバイスの表面領域に圧電プレートがあるXBAR400の概略断面図である。XBAR400は、キャビティ440を有する基板420を有する。XBAR400は、XBAR100、300及び/又は350のいずれかのバージョンであってもよい。基板420は、基板上面450を有し、接合酸化物(BOX)層422は、BOX上面452を有し、プレート410は、プレート上面454を有し、IDT430は、上面456を有する。キャビティ440の外周445において、プレート410は、BOX上面452に装着されたプレート背面を有し、BOX層422は、基板上面450に装着される背面を有する。BOX層422は、キャビティがプレート410の底面まで上方に延びるように、キャビティ440の領域においてプレートから除去されてもよい。
【0042】
外周445の周りの(場合によってはそれを超える)、基板420上のBOX層422に取り付けられない圧電プレート410の一部は、キャビティ440に跨る振動板415を形成する。振動板415は、シャント共振器又は直列共振器に対して所望の厚さを有する。いくつかの場合には、厚さにはシャント共振器を形成するための前側誘電体(図示せず)がある。インターデジタルトランスデューサ(IDT)430は、IDTのインターリーブされたフィンガー436が振動板415に配置されるように、圧電プレート410の前面454に形成される。キャビティ440は、スイミング・プールキャビティであってもよい。キャビティは、プレートを通って後側からエッチングされるか又は前側からエッチングされてもよい。
【0043】
XBAR400は、基板420の表面450の上方に配置された、接触パッドを形成するための選択された位置又は所定の領域WR1及びWR2にそれぞれ形成された接触パッド432、434を有する。接触パッド432及び434は、領域WR1及びWR2にわたって、基板420の上方に、BOX層422に形成されたプレート410に形成されたIDT430に形成される。接触バンプ480及び481は、図示するように、領域WR1及びWR2にわたって、それぞれ、接触パッド432及び434の上面に形成されるか、又は接合されるか、又は取り付けられる。
【0044】
本明細書の接触バンプ480及び481と接触パッドは、金(Au)などの金属又は導体で形成されてもよい。それらは、同じ材料で形成されてもよい。本明細書のIDT及びフィンガー436は、アルミニウム(Al)などの金属又は導体で形成されてもよい。それらは、同じ材料で形成されてもよい。本明細書の圧電プレートは、ニオブ酸リチウム(LN)、タンタル酸リチウム(LT)、又は他の圧電材料で形成されてもよく、本明細書のBOX層は、SiO又は多結晶Siで形成されてもよく、本明細書の基板は、Siで形成されてもよい。
【0045】
本明細書のいくつかのXBARデバイスについて、XBAR400、500、550及び900などのチップスケールデバイスからセラミックパッケージ(図示せず)への相互接続は、金スタッドバンプ481及び482からなる金から金へのプロセスと、金スタッドバンプに対向し、かつ金スタッドバンプに取り付けられる接触パッドを有するパッケージへのフリップチップ技術とを含む。いくつかの場合には、金バンプは、直径が65μmであり、面積が10000μmの円形又は正方形のXBARデバイスの接触パッド(例えば、パッド432、532、582)に取り付けられる。次に、XBARを有するデバイスダイは、熱圧着又は超音波熱圧着接合を使用して、パッケージ(例えば、対向する接触パッド)にフリップチップ装着される。
【0046】
この金から金への相互接続は、パッケージとXBARと間の電気信号経路と熱経路の両方として機能する。RF動作中に、無線周波数信号がIDTに印加され、例えば、パッケージからバンプを介してIDTに印加される場合、XBARデバイス内で熱が発生し、これらの経路は、この熱をXBARからバンプを介してパッケージへ伝導する。しかしながら、相互接続は、XBARとパッケージとの間に、XBARのバンプ及び接触パッドを含む経路の材料特性により決定された熱抵抗を有する。また、XBARの接触パッドの厚さ、又はXBARの接触パッドでの材料の積み重ねの厚さ(例えば、図2~5及び図7~9の紙面上における上下方向)が0.5μmの金(Au)の接触バンプ、厚さが0.3~0.5μmのアルミニウム(Al)の接触パッド、厚さが0.2~1.0μmのニオブ酸リチウム(LiNbO)の圧電プレート、厚さが1~2μmの酸化シリコン(SiO)の接合酸化物層(例えば、BOX層422、572又は絶縁層551)、及び厚さが250~500μmのシリコン(Si)のベース基板であってもよい。総熱抵抗は、各材料の固有抵抗の総計である。或いは、SiO接合層は、厚さが1μm~10μmの多結晶シリコン(ポリシリコン)接合層(例えば、BOX層422、572)に置き換えられてもよい。
【0047】
XBAR400について、キャビティ440の上方のIDT及びプレートにより生成された熱などの熱をXBARの振動板415から除去するための主なメカニズムは、IDTフィンガー436を介して基板420へ伝導し、次に、基板から接触パッド432、434及び接触バンプ480、481を介してXBARのパッケージ(図示されないが、接触バンプに取り付けられ、かつXBARを収容する)へ伝導することである。しかしながら、接触パッド432、434及び導体パターンの他の導体又はIDT430は、圧電プレート410及びBOX層422により基板420から分離される。圧電層及びBOX層の低い熱伝導率は、基板から接触パッド及びバンプを介してパッケージへ熱を効率的に除去することに対して実質的なバリアとなる。プレート410及びBOX層422の大きな熱抵抗は、熱が基板420からXBAR400の接触パッド及び接触バンプを介してパッケージへ効率的に逃げ、XBAR400のXBAR振動板を冷却することをブロックする。
【0048】
これにより、バンプ接触パッドからXBARの基板への熱抵抗は、接触パッドの下のLiNbO板材料の関連する熱抵抗を除去することにより改善(例えば、低減)することができる(例えば、図5A及び図7Bを参照)。この除去により、LiNbO板の基板にビアホール又は開口が形成されて、Au接触バンプ及びAl接触パッド層がSiOのBOX層に直接的に接触して、接触バンプと基板との間のより低い熱抵抗を提供することができる。
【0049】
厚さが1~2μm以上のBOX層について、接触パッドの下のBOX層材料を除去するか又は薄くすることにより、この熱抵抗を更に改善することができる(例えば、図5B及び図8A~Cを参照)。BOX層及びプレート層を除去することにより、接触パッドから電気的絶縁層又は基板に延びるサーマルビアが形成されて、接触バンプと基板との間のより低い熱抵抗を提供する。
【0050】
図5Aは、接触パッド532及び534の下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート410が除去されて接触バンプと基板との間のより低い熱抵抗を提供する改良されたXBAR500の概略断面図である。XBAR500は、キャビティ440を有する基板420を有する。XBAR500は、XBAR100、300及び/又は350のいずれかのバージョンであってもよい。基板420は、基板上面450を有し、接合酸化物(BOX)層422は、BOX上面452を有し、プレート510は、プレート上面454を有し、IDT530は、上面456を有する。キャビティ440の外周445において、プレート510は、BOX上面452に装着されたプレート背面を有し、BOX層422は、基板上面450に装着された背面を有する。BOX層422は、キャビティ440の領域においてプレート510の底面から除去され、キャビティがキャビティ440の領域においてのみプレート510の底面まで上方に延びるようにすることができる。
【0051】
外周445の周りの(場合によってはそれを超える)、基板420上のBOX層422に取り付けられない圧電プレート510の一部は、キャビティ440に跨る振動板415を形成する。インターデジタルトランスデューサ(IDT)530は、IDTのインターリーブされたフィンガー436が振動板415に配置されるように、圧電プレート510の前面454に形成される。キャビティ440は、XBAR500の他の構成要素のいずれかの前、中又は後、例えば、図7に示されるステップのいずれかにおいて形成されてもよい。
【0052】
BOX層422は、層122又は322であってもよい。BOX層422は、熱酸化シリコン(TOX)、SiO、Si、Si及び/又は他の誘電体酸化物材料であってもよい。BOX層422は、厚さが1~10μmの多結晶シリコン(ポリシリコン)接合層であってもよい。基板420は、厚さが250~500μmの多形又は結晶シリコン(Si)であってもよい。
【0053】
XBAR500において、圧電プレート510は、接触パッド532及び534の下のBOX層422の上面452の表面領域WR1及びWR2のそれぞれの少なくとも一部から除去されて、接触バンプと基板との間により低い熱抵抗を提供する。いくつかの場合には、各接触パッドの下の領域WR1及びWR2は、接触パッド532及び534と基板420との間の所定の量の熱抵抗を低減するために、BOX層422の上面452の選択された位置に該上面の所定の領域WR21及びWR22を含む。選択された位置及び所定の領域は、IDT530とパッケージとの間の適切な電気的接触を提供するために、及び/又は、接触パッド532及び534と基板420との間の所定の量の熱抵抗を低減するために選択されてもよい。
【0054】
したがって、接触パッド532及び534は、図示するように、領域WR21及びWR22にわたってBOX層422に形成されるか又は直接的に取り付けられるIDT530に形成される。圧電プレート510は、接触パッド532及び534の下のBOX層422の上面452の表面領域の少なくとも領域WR21及びWR22からそれぞれ除去されて、接触バンプと基板との間のより低い熱抵抗を提供する。接触バンプ480及び481は、図示するように、領域WR21及びWR22にわたって、それぞれ、接触パッド532及び534の上面に形成されるか、又は接合されるか、又は取り付けられる。
【0055】
接触パッド532及び534のそれぞれの直径又は幅は、50μm~300μmの範囲であってもよい。それらの断面は、円形、正方形、楕円形又は長方形であってもよい。接触パッド532及び534は、パッド432及び434について記載されているように金属又は導体で形成される。
【0056】
接触パッド532及び534は、それぞれ、接合層422、圧電層510の側面及び上面の一部に取り付けられるIDT530の領域WR1、WR2に取り付けられる金属層であるか又はそれを含む。金属層はIDTの上面456及び側面に取り付けられ、かつIDTのバスバーに電気的に接続される。
【0057】
BOX層422は、基板420と接触パッド432、434との間の電気的絶縁を提供する。例えば、BOX層422は、基板420と接触パッドとの間の電気的絶縁経路を確保するのに十分である、領域WR1及びびWR2において基板420の表面上に形成された電気抵抗が高いトラップリッチ層であってもよい。
【0058】
XBAR500について、キャビティ440の上方のIDT及びプレートにより生成された熱などの熱をXBARの振動板415から除去するための主なメカニズムは、IDTフィンガー436を介して基板420へ伝導し、次に、基板から接触パッド532、534及び接触バンプ480、481を介してXBARのパッケージ(図示されないが、接触バンプに取り付けられ、かつXBARを収容する)へ伝導することである。ここで、接触パッド532、534及び導体パターンの他の導体又はIDT530は、圧電プレート410により基板420から分離されない。したがって、圧電層の低い熱伝導率が、基板から接触パッド及びバンプを介してパッケージへ熱を効率的に除去することを実質的に妨げない。この場合、プレート410の大きな熱抵抗が、XBAR500のXBAR振動板415を冷却するために熱が基板420からXBAR500の接触パッド及び接触バンプを介してパッケージへ効率的に逃げることを阻止しない。これにより、所定の入力熱負荷のための所定のプレート共振器の温度上昇を抑制することができる。
【0059】
図5Bは、接触バンプと基板との間により低い熱抵抗を提供するために、接触パッド582及び584の下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート560及び接合酸化物(BOX)層572が除去された、改良されたXBAR550の概略断面図である。基板520は、基板上面450を有し、接合酸化物(BOX)層572は、BOX上面452を有し、プレート560は、プレート上面454を有し、IDT580は、上面456を有する。キャビティ440の外周445において、プレート560は、BOX上面452に装着されたプレート背面を有し、BOX層572は、基板上面450に装着される背面を有する。BOX層572は、キャビティがキャビティ440の領域においてのみプレート560の底面まで上方に延びるように、キャビティ440の領域においてプレート560の底面から除去されてもよい。
【0060】
外周445の周りの(場合によってはそれを超える)、基板520上のBOX層572に取り付けられない圧電プレート560の一部は、キャビティ440に跨る振動板415を形成する。インターデジタルトランスデューサ(IDT)580は、IDTのインターリーブされたフィンガー436が振動板415に配置されるように、圧電プレート560の前面454に形成される。BOX層572は、電気的絶縁材料551及び552を有するBOX層422であってもよい。キャビティ440は、XBAR550の他の構成要素のいずれかの前、中又は後、例えば、図8に示されるステップのいずれかにおいて形成されてもよい。
【0061】
XBAR550において、圧電プレート560及びBOX層572は、接触パッド582及び584の下のBOX層472の上面452の表面領域WR1及びWR2のそれぞれの少なくとも一部から除去されて、接触バンプと基板との間により低い熱抵抗を提供する。いくつかの場合には、各接触パッドの下の領域WR1及びWR2は、接触パッド582及び584と基板520との間の所定の量の熱抵抗を低減するために、BOX層572の上面452の選択された位置での該上面の所定の領域WR31及びWR32を含む。
【0062】
電気的絶縁層551及び552(例えばSiO)は、基板上面450とIDT580の底面との間に領域WR31、WR32において装着される。IDT580の底面は、絶縁層551及び552の上面561及び562に形成され、かつ取り付けられ、絶縁層551及び552の底面は、領域WR31及びWR32において基板520に取り付けられる。いくつかの場合には、絶縁層551及び552は、上面450の下方に数μm~十数μmだけ延びる。絶縁層551及び552は、接触パッド582及び584を基板520から電気的に絶縁する。また、絶縁層551及び552は、BOX層572及びプレート560を基板520から電気的に絶縁することができる。
【0063】
電気的絶縁層551及び552は、熱酸化シリコン(TOX)、SiO、Si、Si及び/又は他の誘電体酸化物材料であってもよい。これらは、基板に堆積された厚さが1~2μmの酸化シリコン(SiO)などの誘電体材料で形成されてもよい。基板520は、例えば、厚さが250~500μmの多形又は結晶シリコン(Si)などの基板420であってもよい。
【0064】
したがって、接触パッド582及び584は、図示するように、領域WR31及びWR32にわたって絶縁層551及び552に直接的に形成されるか又は直接的に取り付けられるIDT580に形成される。圧電プレート560及びBOX層572は、接触パッド582及び584の下の基板520の上面450の表面領域の少なくとも領域WR31及びWR32からそれぞれ除去されて、接触バンプと基板との間により低い熱抵抗を提供する。接触バンプ480及び481は、図示するように、領域WR31及びWR32にわたって、それぞれ、接触パッド582及び584の上面に形成されるか、又は接合されるか、又は取り付けられる。
【0065】
接触パッド582及び584のそれぞれ、絶縁層551及び552のそれぞれの直径又は幅は、50μm~300μmの範囲であってもよい。それらの断面は、円形、正方形、楕円形又は長方形であってもよい。基板520への絶縁層551、552の深さは、基板の厚さの0.1%~2%の範囲であってもよい。接触パッド582及び584は、パッド432及び434について記載されているように金属又は導体で形成される。
【0066】
接触パッド582及び584は、それぞれ、絶縁層551及び552の上面、圧電層560の側面及び上面の一部に取り付けられるIDT580の領域WR1、WR2に取り付けられる金属層であるか又はそれを含む。パッドの金属層は、IDT580の上面456及び側面に取り付けられるため、IDTのバスバーに電気的に接続される。
【0067】
いくつかの場合には、各接触パッドの下のデバイスの領域WR1及びWR2は、キャビティ440の外周445の長さ及び幅から離れて、又はそれらを5~25%を超えて延在する。例えば、接触パッド532及び534(582及び584)は、キャビティ440の外周445の長さ及び幅を超えて、全長及び幅の5~25%を超えて延在する。誘電体又は絶縁層551及び552(例えばSiO)は、キャビティ440の外周445を超える全長及び幅の5~25%の長さ及び幅の基板上面450に装着されてもよい。
【0068】
領域WR31及びWR32にわたる絶縁層551及び552は、基板520と接触パッド582及び584との間に電気的絶縁を提供する。例えば、絶縁層551及び552は、基板520と接触パッド582及び584との間の電気的絶縁経路を確保するのに十分である、領域WR31及びWR32において基板520の表面との間の電気抵抗が高くてもよい。
【0069】
XBAR550について、キャビティ440の上方のIDT及びプレートにより生成された熱などの熱をXBARの振動板415から除去するための主なメカニズムは、IDTフィンガー436を介して基板520へ伝導し、次に、基板から接触パッド582、584及び接触バンプ480、481を介してXBARのパッケージ(図示されないが、接触バンプに取り付けられ、かつXBARを収容する)へ伝導することである。ここで、接触パッド582、584及び導体パターンの他の導体又はIDT580は、圧電プレート560及びBOX層572により基板520から分離されない。したがって、圧電層及びBOX層の低い熱伝導率が、基板から接触パッド及びバンプを介してパッケージへ熱を効率的に除去することに対して実質的なバリアとならない。この場合、プレート560及びBOX層572の大きな熱抵抗が、熱を基板520からXBAR550の接触パッド及び接触バンプを介してパッケージへ効率的に逃がし、XBAR550のXBAR振動板415を冷却することを妨げない。これにより、所定の入力熱負荷のための所定のプレート共振器の温度上昇を抑制することができる。
【0070】
上述したように、XBAR400、500及び550の接触バンプ480及び481は、例えば、これらのバンプの上方かつ上部に装着されるXBARのパッケージに取り付けられてもよい。パッケージは、PCB基板及び金属配線を含むプリント回路基板(PCB)であるか又はそれを含んでもよい。それは、信号経路(例えば、ビア、配線、接触パッド)を有する高温同時焼成セラミック(HTCC)で形成されてもよい。いくつかの場合には、パッケージは、銅(Cu)信号経路を有するPCB積層体である。それは、周知のPCBプロセスにより形成され、周知の信号経路を有してもよい。
【0071】
BOX層及び/又はプレートの除去は、薄いボックス表面エッチングを使用して実行されてもよい。例えば、BOX層及びプレートのいずれかに対して湿式エッチング又は乾式エッチングを使用することにより、BOX層に対してプレートと異なるエッチング剤を使用してもよい。エッチングには、複数のフォトリソグラフィ処理ステップを必要とする場合がある。
【0072】
図6は、接触バンプと基板との間のより低い熱抵抗を提供するために、接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート及び接合酸化物(BOX)層が除去された場合と除去されない場合のXBARデバイスのバンプから基板への熱抵抗分析を示す表600である。表600は、XBAR熱伝導に影響を与えるBOX層及びLN圧電層板のスプレッドシートの推定値であってもよい。XBARデバイスの接点、バンプ、IDT、共振器振動板、回路基板又はその他の構成要素の熱抵抗は、C/Wでシミュレーションされるか又は測定されてもよい。
【0073】
表600の1行目は、表の列ごとのデータラベルの凡例を示す。2行目~6行目は、図4のように、接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部において、様々な厚さの接合酸化物(BOX)層から圧電プレートを除去せずに、XBARデバイスをシミュレーションした場合の欄の値を示す。2行目~6行目では、厚さが0.5μmのLN材料を有するプレート410の下の様々なSiOの厚さを有するBOX層422と、100μm×100μmの表面領域の接触パッド432及び434とを使用してバンプから基板への熱抵抗分析が実行される。表における「バンプ」とは、接合パッド、金バンプ、又は半田バンプ、又はデバイス(例えば、導体層又はバスバー)と外部回路との間の接続を行うための他の手段であってもよい。
【0074】
表600の7行目~11行目は、図5Aのように、接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部において様々な厚さの接合酸化物(BOX)層から圧電プレートが除去されたXBARデバイスのシミュレーションの欄の値を示す。7行目~11行目では、厚いLN材料のプレート510がなく、様々なSiOの厚さを有するBOX層422と、100μm×100μmの表面領域の接触パッド532及び534とを使用してバンプから基板への熱抵抗分析が実行される。
【0075】
最下欄に見られるように、バンプから基板への熱抵抗の「相対的変化」について、8行目では、BOX層422のSiOが1μmである場合、接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレートを除去することにより、バンプから基板への熱抵抗を改善するか又は15%低減する。また、9行目~11行目のBOX層422の他の厚さである場合、バンプから基板への熱抵抗を示す。したがって、XBAR500及び550は、XBAR400より望ましい。この理由として、図6の7行目~11行目に示すように、プレートが接触パッドの下から除去されるため、圧電プレート510及び560の大きな熱抵抗が、熱が基板420及び520からXBAR500及び550の接触パッド及び接触バンプを介してパッケージへ効率的に逃げ、XBARのXBAR振動板415を冷却することを妨げない。一方、図6の2行目~6行目に示すように、プレートが除去されない場合、プレート410は、XBAR400の熱をブロックする。
【0076】
方法の説明
図7A及び図7B(「図7」と総称される)は、接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレートが除去されたXBARを製造するプロセスのフローチャートである。プロセス700は、プレートの上にマスク又はフォトレジストを使用し、プレートの下に垂直エッチストップを使用する。LN板には、フォトリソグラフィを使用して穴をパターン化することができる。フローチャートの各動作の右側には、各動作の終了を表す模式的な断面図である。
【0077】
プロセス700は、基板420と、接合酸化物(BOX)層422を使用して基板420に接合される圧電材料716のプレートとを有するデバイスでステップ705から開始し、完成したXBAR又はフィルタでステップ795で終了する。圧電プレートは、圧電材料のウェハの一部であってもよい。圧電プレートと基板とは、BOX層422を使用するウェハ接合プロセスにより接合されてもよい。図7のフローチャートは、主要なステップのみを含む。様々な従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、化学的機械的処理(CMP)、洗浄、検査、堆積、フォトリソグラフィ、焼成、アニーリング、監視、試験など)は、図7に示されるステップの前、間、後及び中において実行されてもよい。
【0078】
ステップ705の後、プロセス700はステップ710に進み、デバイス701において、ステップ705のデバイスのプレート716上にマスク712を形成する。マスク712は、プレートの上面に堆積して接合されたフォトレジストであってもよい。マスク712は、領域WR71及びWR72において、マスクを通ってプレートの上面まで延びる開口713及び714を有する。開口は、領域WR71及びWR72においてフォトレジスト712に穴をパターン化するために、フォトリソグラフィにより形成される、マスクを通る穴であってもよい。領域WR71及びWR72は、領域WR21及びWR22と等しいか又はそれより大きく、かつ、領域WR1及びWR2と等しいか又はそれより小さいものである。
【0079】
ステップ710の後、ステップ720で、デバイス702において、マスク712の開口713及び714でプレート716をエッチングして、ステップ710のデバイス701のプレート716を通ってBOX層422まで開口723及び724を形成する。エッチングされたプレート510は、領域WR71及びWR72において、所定の位置でプレートを通ってBOX層の上面まで延び、かつ領域WR21及びWR22に予め設定される開口723及び724を有する。開口は、マスク712に対して領域WR21及びWR22においてプレートを湿式又は乾式エッチングして除去することにより形成されるプレートを通る穴であってもよい。エッチングは、イオンミリング、反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合プラズマ(ICP)、及び/又は、レーザーミリングプロセスにより実行されてもよい。BOX層422は、プレートの下の垂直エッチストップとして機能して、BOX層の上面又はその直下(例えば、層の厚さの1~5%)でエッチングを停止することができる。領域WR71及びWR72又は領域WR21及びWR22は、ステップ730で形成される接触パッド532及び534のそれぞれの位置にあってもよい。
【0080】
ステップ720の後、ステップ730で、デバイス703において、ステップ720のデバイス702のBOX層422までプレート510を通る開口723及び724の中にそれらを通って、IDT530と接触パッド532及び534を形成する。ステップ730は、マスク712の除去を含んでもよい。他の場合には、マスク712を更にパターン化して、IDT530を形成してもよい。IDT530は、図示するように、所定の位置でプレートを通ってBOX層の上面まで延び、かつ領域WR21及びWR22に予め設定される開口(図示せず)を通って、プレート510に形成される。これらの開口は、領域WR71及びWR72の開口723及び724に類似するが、マスク712が除去された後に形成されてもよい。
【0081】
次に、IDT530の上面の所定の位置、所定の領域WR21及びWR22上の領域WR2及びWR1に接触パッド532及び534を形成する。IDT530は、フィンガー536、バスバー、及びフィンガーからバスバーを介して接触パッドへの電気的接続部を含む。キャビティ440を基板420内に形成する。キャビティの外周445内のキャビティに跨るプレート510の一部は、振動板415を形成する。
【0082】
ステップ730でIDT530を形成することは、圧電プレート510の表面に1つ以上のXBARデバイスを規定する導体パターン及び誘電体層を形成することを含んでもよい。典型的には、フィルタデバイスは、順次堆積され、パターン化される2つ以上の導体層の第1の導体層としてのIDTを有する。IDT530層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、モリブデン、タングステン、ベリリウム、金、又はいくつかの他の導電性金属であってもよい。任意に、他の材料の1層以上を、IDTの下(すなわち、IDT層と圧電プレートとの間)及び/又はIDTの上に配置してもよい。例えば、IDT層と圧電プレートとの間の接着を改善するために、チタン、クロム又は他の金属の薄膜を使用してもよい。
【0083】
ステップ730で、導体層を圧電プレート及びBOX層の表面上に堆積させ、IDT530の領域WR1及びWR2とその他の領域をカバーするパターン化されたフォトレジストを介してエッチングすることにより余分な金属を除去することにより、IDT530を形成してもよい。或いは、ステップ730で、リフトオフプロセスを使用してIDT530を形成してもよい。フォトレジストを圧電プレート及びBOX層上に堆積させ、パターン化して、IDT530を規定する領域を除去してもよい。IDT材料をフォトレジスト、圧電プレート及びBOX層の表面上に順次堆積させてもよい。次に、領域WR21及びWR22において、フォトレジストを除去して、余分な材料を除去し、IDT530を残してもよい。
【0084】
ステップ730で接触パッド532及び534を形成することは、IDT530の表面に導体パターン及び誘電体層を形成することを含んでもよい。典型的には、フィルタデバイスは、順次堆積され、パターン化される2つ以上の導体層の第1の導体層(例えば、IDT)が形成された後に接触パッドを有する。接触パッドは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、モリブデン、タングステン、ベリリウム、金、又はいくつかの他の導電性金属であってもよい。任意に、他の材料の1層以上を、接触パッドの下(すなわち、パッドとIDT層との間)及び/又は接触パッドの上に配置してもよい。例えば、接触パッドとIDTとの間の接着を改善するために、チタン、クロム又は他の金属の薄膜を使用してもよい。
【0085】
ステップ730で、導体層をIDT530の表面上に堆積させ、領域WR1及びWR2をカバーするパターン化されたフォトレジストを介してエッチングすることにより余分な金属を除去し、接触パッド532及び534を形成してもよい。或いは、ステップ730で、リフトオフプロセスを使用して接触パッド532及び534を形成してもよい。フォトレジストを圧電プレート及びIDT上に堆積させ、パターン化して、接触パッド532及び534を規定する領域を除去してもよい。接触パッド材料をプレート及びIDT530の表面上に順次堆積させてもよい。次に、領域WR1及びWR2において、フォトレジストを除去して、余分な材料を除去し、接触パッド532及び534を残してもよい。
【0086】
ステップ730での形成は、本明細書に記載されているように、プレート及び/又はIDTに1つ以上の誘電体層、例えば、前側誘電体、後側誘電体及び/又はパッシベーション層を形成することを含んでもよい。1つ以上の誘電体層は、例えば、米国特許第10491192号に記載されているように、直列共振器の共振周波数に対してシャント共振器の共振周波数をシフトするためにシャント共振器のIDT上に選択的に形成された誘電体層を含んでもよい。1つ以上の誘電体層は、デバイスの全体又は実質的な一部に堆積されたカプセル化/パッシベーション層を含んでもよい。
【0087】
選択されたXBARは、他のXBARに比べて、これらの誘電体層の異なる厚さにより、異なる周波数に同調される。例えば、いくつかのXBARで異なる前側誘電体層の厚さを使用してフィルタ内のXBARの共振周波数を調整してもよい。
【0088】
また、1つ以上の誘電体層は、例えば、デバイスの全部又は一部上に堆積させたSiO又はSiなどのカプセル化/パッシベーション層を含んでもよい。
【0089】
キャビティ440をステップ730で形成して示す。しかしながら、キャビティをプロセス700のステップのいずれかの前、中又は後に形成してもよい。キャビティは、スイミング・プールキャビティであってもよい。キャビティを、プレートを通って後側からエッチングするか又は前側からエッチングしてもよい。フィルタデバイス内の共振器ごとに別個のキャビティを形成してもよい。
【0090】
ステップ730の後、ステップ740で、デバイス500において、ステップ730のデバイス703の接触パッド532及び534に接触バンプ480及び481を形成する。ステップ730のデバイス上にマスク、スクリーン又は他の層をパターン化して、領域WR1及びWR2に開口を形成し、次に、バンプ材料を、マスクを通ってマスクに堆積させることにより、バンプを形成してもよい。次に、バンプ材料を加熱するか又は流動させてパッドに接合させ、マスクを除去してもよい。いくつかの場合には、加熱と除去の順序が逆になってもよい。
【0091】
接触バンプ480及び481は、半田バンプ、金バンプ、又はXBARデバイス500と外部回路との間の電気的接続を行うための他の手段である。それらは、接触パッド532及び534を、XBARをパッケージ化するパッケージデバイスの対向する接触パッドに電気的及び熱的に接続するためのものであってもよい。
【0092】
図5Aに記載されているように、XBAR500について、プレート410の大きな熱抵抗が、熱を基板420からXBAR500の接触パッド及び接触バンプ480、481を介してパッケージへ効率的に逃がし、XBAR500のXBAR振動板415を冷却することを妨げない。
【0093】
ステップ740での形成は、また、複数のデバイスを含むウェハからの個々のデバイスの切除と、他のパッケージ化ステップと、試験とを含んでもよい。ステップ740で行われてもよい別の動作は、デバイスの前側から金属又は誘電体材料を追加するか又は除去することにより、フィルタデバイス内の共振器の共振周波数を同調することである。
【0094】
プロセス700は、完成したXBAR又はフィルタ500を伴いステップ795で終了する。
【0095】
図8A図8B及び図8C(「図8」と総称される)は、接触パッドの下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート及び接合酸化物(BOX)層が除去されたXBARを製造するプロセスのフローチャートである。プロセス800は、プレートの上にマスク又はフォトレジストを使用し、BOX層の下に犠牲材料の垂直エッチストップを使用する。LN板及び犠牲材料には、フォトリソグラフィを使用して穴をパターン化することができる。フローチャートの各動作の右側には、各動作の終了を表す模式的な断面図を示す。
【0096】
プロセス800は、基板520と、接合酸化物(BOX)層822を使用して基板520に接合される圧電材料716のプレートとを有するデバイスでステップ805から開始し、完成したXBAR又はフィルタを伴いステップ895で終了する。圧電プレートと基板とは、BOX層822を使用するウェハ接合プロセスにより接合されてもよい。図8のフローチャートは、主要なプロセスステップのみを含む。様々な従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、化学的機械的処理(CMP)、洗浄、検査、堆積、フォトリソグラフィ、焼成、アニーリング、監視、試験など)は、図8に示されるステップの前、間、後及び中において実行されてもよい。
【0097】
ステップ805の後、プロセス800はステップ810に進み、デバイス801において、ステップ805のデバイスのプレート716上にマスク712を形成する。マスク712は、フォトレジストであってもよく、図7について記載されているように、領域WR71及びWR72に開口713及び714を有する。
【0098】
図示するように、デバイス801、及びプレート716上にマスク712を形成する前のステップ805でのデバイスについて同様に、BOX層822は、電気的絶縁層551及び552の所定の領域WR31及びWR32と、領域WR31及びWR32の上方にある、電気的絶縁材料の上面及びプレートの下の犠牲材料851及び852の領域とを有する。プレートの底面は、犠牲材料851及び852の上面に接合されるか又は接触する。したがって、領域WR31及びWR32においてプレートと基板との間にBOX層材料822又は572がなく、基板520の上部に電気的絶縁層551及び552、並びに絶縁材料とプレートとの間に犠牲材料851及び852のみがある。ステップ810で、マスク712をプレート716上に形成する。
【0099】
電気的絶縁層551及び552は、熱酸化シリコン(TOX)、SiO、Si、Si及び/又は他の誘電体酸化物材料であってもよい。犠牲材料851及び852は、多結晶シリコン及び/又は他の多結晶材料であってもよい。他の犠牲材料は、チタン酸リチウム(LTO)、Si、SiCを含む。
【0100】
ステップ810の後、ステップ820で、デバイス802において、マスク712の開口713及び714でプレート716をエッチングして、ステップ810のデバイス801のプレート716を通って犠牲層851及び852まで開口823及び824を形成する。
【0101】
エッチングされたプレート560は、領域WR71及びWR72において、所定の位置でプレートを通って犠牲層851及び852の上面まで延び、かつ領域WR31及びWR32に予め設定される開口823及び824を有する。開口は、マスク712に対して領域WR31及びWR32においてプレートを湿式又は乾式エッチングして除去することにより形成される、プレートを通る穴であってもよい。エッチングは、イオンミリング、反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合プラズマ(ICP)、及び/又は、レーザーミリングプロセスにより実行されてもよい。犠牲層851及び852(必要に応じて電気的絶縁層551及び552の一部)は、プレートの下の垂直エッチストップとして機能して、層851及び852の上面又はその直下(例えば、層の厚さの1~5%)でエッチングを停止することができる。
【0102】
ステップ820の後、ステップ825で、デバイス803において、マスク712の開口823及び824で犠牲層851及び852をエッチングして、ステップ820のデバイス802のプレート716、犠牲層851及び852を通って電気的材料層551及び552の上面まで開口部833及び834を形成する。
【0103】
エッチングされた犠牲層851及び852は、領域WR71及びWR72において、所定の位置でプレート、犠牲層851及び852を通って電気的材料層551及び552の上面まで延び、かつ領域WR31及びWR32に予め設定される開口833及び834を有する。開口は、マスク712に対して領域WR31及びWR32においてプレート、犠牲層851及び852を湿式又は乾式エッチングして除去することにより形成される、プレート、犠牲層851及び852を通る穴であってもよい。エッチングは、イオンミリング、反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合プラズマ(ICP)、及び/又は、レーザーミリングプロセスにより実行されてもよい。いくつかの場合には、ステップ825でのエッチングは、XeFなどの高度に選択的な乾式気体エッチング液を使用して層851及び852の犠牲ポリシリコン材料を選択的に除去するプロセスである前側膜除去(FSMR)技術により実行される。このプロセスは、犠牲材料にアクセスするためにSi基板に貫通孔を形成する必要がある後側除去に反対して、デバイス層側(例えば、領域WR71及びWR72を通る前側エッチング)で実行される。電気的絶縁層551及び552は、犠牲層851及び852の下の垂直エッチストップとして機能して、絶縁層551及び552の上面又はその直下(例えば、層の厚さの1~5%)でエッチングを停止することができる。
【0104】
領域WR71及びWR72又は領域WR31及びWR32は、ステップ730で形成される接触パッド532及び534のそれぞれの位置にあってもよい。
【0105】
ステップ820の後、ステップ830で、デバイス804において、ステップ825のデバイス803のプレート560を通って電気的絶縁層551及び552まで犠牲層851及び852を通る開口833及び834の中にそれらを通って、IDT580と接触パッド582及び584を形成する。ステップ830は、マスク712の除去を含んでもよい。他の場合には、マスク712を更にパターン化して、IDT580を形成してもよい。IDT580は、図示するように、所定の位置でプレート、犠牲材料851及び852を通って電気的絶縁層551及び552の上面561及び562まで延び、かつ領域WR31及びWR32に予め設定される開口(図示せず)を通って、電気的絶縁層551及び552に形成される。これらの開口は、領域WR71及びWR72の開口823及び824に類似するが、マスク712が除去された後に形成されてもよい。
【0106】
次に、接触パッド582及び584を、領域WR2及びWR1において、電気的絶縁層551及び552の上面に、所定の領域WR31及びWR32にわたって所定の位置上に形成する。IDT580は、フィンガー536、バスバー、及びフィンガーからバスバーを介して接触パッドへの電気的接続部を含む。キャビティ440を基板520に形成する。キャビティの外周445内のキャビティに跨るプレート560の一部は、振動板415を形成する。
【0107】
ステップ830でIDT580を形成することは、ステップ730でのIDT530の形成について記載されているように、導体パターン及び誘電体層を形成することを含んでもよい。
【0108】
ステップ830で、導体層を圧電プレート及び電気的絶縁層551及び552の表面上に堆積させ、IDT580の領域WR1及びWR2とその他の領域をカバーするパターン化されたフォトレジストを介してエッチングすることにより余分な金属を除去することにより、IDT580を形成してもよい。或いは、ステップ830で、リフトオフプロセスを使用してIDT580を形成してもよい。フォトレジストを圧電プレートと電気的絶縁層551及び552上に堆積させ、パターン化して、IDT580を規定する領域を除去してもよい。IDT材料をフォトレジスト、圧電プレート及び電気的絶縁層551及び552の表面上に順次堆積させてもよい。次に、領域WR31及びWR32において、フォトレジストを除去して、余分な材料を除去し、IDT580を残してもよい。
【0109】
ステップ830で接触パッド582及び584を形成することは、IDT560にパッド532及び534を形成することと同様に、IDT580の表面に導体パターン及び誘電体層を形成することを含んでもよい。ステップ830でIDT及び接触パッドを形成した後、BOX層822はBOX層572になる。
【0110】
ステップ830で接触パッド582及び584を形成することは、導体層をIDT580の表面上に堆積させ、領域WR1及びWR2をカバーするパターン化されたフォトレジストを介してエッチングすることにより余分な金属を除去することを含んでもよい。或いは、IDT530上の接触パッド532及び534の形成について記載されているように、ステップ830で、リフトオフプロセスを使用して接触パッド582及び584を形成してもよい。
【0111】
いくつかの場合には、ステップ830で最初に形成された接触パッド582及び584の上に追加の金属充填物を追加する。この追加の充填は、導体層を接触パッド582及び584上に堆積させ、エッチング又は、IDT530上の接触パッド532及び534の形成について記載されているように、リフトオフプロセスを使用することにより、余分な金属を除去する。
【0112】
ステップ830での形成は、ステップ730に記載されているように、プレート及び/又はIDTに1つ以上の誘電体層、例えば、前側誘電体、後側誘電体及び/又はカプセル化/パッシベーション層を形成することを含んでもよい。選択されたXBARは、ステップ730に記載されているように、これらの誘電体層の異なる厚さにより、異なる周波数に調整される。
【0113】
キャビティ440をステップ830で形成して示す。しかしながら、キャビティをプロセス800のステップのいずれかの前、中又は後に形成してもよい。
【0114】
ステップ830の後、ステップ840で、デバイス550において、ステップ830のデバイス804の接触パッド582及び584に接触バンプ480及び481を形成する。バンプは、ステップ740について記載されているようなプロセスを使用して材料から形成されてもよい。
【0115】
接触バンプ480及び481は、デバイス500及びステップ740について記載されているように、XBARデバイス550と外部回路との間の電気的接続を行う。
【0116】
なお、図5Bに記載されているように、XBAR550について、プレート410及びBOX層822の大きな熱抵抗が、熱を基板520からXBAR550の接触パッド及び接触バンプ480、481を通じてパッケージへ効率的に逃がし、XBAR550のXBAR振動板415を冷却することを妨げない。
【0117】
ステップ840でバンプを成形することは、また、複数のデバイスを含むウェハからの個々のデバイスの切除(excising)と、他のパッケージ化ステップと、試験と、ステップ740に記載されているような調整とを含んでもよい。
【0118】
プロセス800は、完成したXBAR又はフィルタ550でステップ895で終了する。
【0119】
表600に示すように、厚さが数μmを超えるBOX層422などの埋め込み酸化物(BOX)層の場合、接触パッドの下のLN板を除去するだけで、バンプから基板への熱抵抗を低減することにわずかな影響を与える。それは、BOX層422の材料がSi基板とLN板との間の接合層として使用されるポリシリコンである場合、BOX層の材料がバルクSi基板の熱伝導率の10%~50%の範囲にある熱伝導率を有するからである。したがって、ポリシリコンのBOX層422は、基板420の同じ厚さのバルクSiよりも大きな熱抵抗を有する。この状況を改善するために、BOX層572に延びるサーマルビアを有するXBAR550を作成することができ(例えば、プロセス800を使用する)、膜と同じ事前パターン化プロセス(例えば、ステップ820でのプレート716の除去又はエッチング)を使用して、事前にパターン化されたビア、前側膜除去(例えば、ステップ825での犠牲材料851及び852の除去又はエッチング)を使用して、XBAR550を形成することができる。
【0120】
このプロセス800は、高い熱輸送特性を備えたポリシリコンBOX層422には必要でなくてもよい。他の場合には、BOX層又は電気的絶縁層は、表600の1行目~2行目及び5行目~6行目に記載されているように十分に薄い。例えば、電気的絶縁層551及び552は、BOX層422の代わりに使用して、接触バンプと基板との間の熱抵抗を低減し、接触パッドを基板520から電気的に絶縁することができる。純粋なSi基板520からのサーマルビアの電気的絶縁を提供するために、電気的絶縁層551及び552は、薄い、典型的には厚さが50~100nmの酸化膜であってもよい。
【0121】
いくつかの場合には、接触パッド532及び534と基板420との間の所定の量の熱抵抗を低減するために、各接触パッドの下の領域WR1及びWR2は、BOX層422の上面452の選択された位置での該上面の所定の領域WR21及びWR22を含む。選択された位置及び所定の領域は、IDT530とパッケージとの間の適切な電気的接触を提供するために、及び/又は、接触パッド532及び534と基板420との間の所定の量の熱抵抗を低減するために選択されてもよい。
【0122】
図9は、接触パッド532及び534とサーマルビア915の下のデバイスの表面領域の少なくとも一部から圧電プレート910が除去されて、空気と基板との間のより低い熱抵抗を提供する改良されたXBAR900の概略断面図である。
【0123】
XBAR900は、キャビティ440がない基板420を有する。XBAR900は、例えば、共振器振動板の側面に配置されることにより、XBAR100、300、350、500及び/又は550のいずれかに追加されてもよい。例えば、接触パッド532及び534に加えて、XBAR900は、また、サーマルビア915を有することにより、ビアの上の空気からBOX層422を介して基板420までの熱抵抗を低減する。
【0124】
プレート910はプレート上面454を有し、IDT930は、上面456を有する。プレート910は、BOX上面452に装着されたプレート背面を有する。サーマルビア915は、選択された位置でプレート910を通ってBOX層422まで延びるIDT930の部分932と、所定の領域W9とを含む。接触パッド532及び534の接触パッド層の部分936は、部分932の上面に、領域W9にも形成され、取り付けられる。
【0125】
部分932は、前の実施形態のいずれかのIDTの形成について記載されているように、形成することができる。部分936は、前の実施形態のいずれかの接触パッドの形成について記載されるように、形成することができる。
【0126】
幅W9は、直径又は幅が10μm~200μmの範囲であってもよい。それらの断面は、円形、正方形、楕円形又は長方形であってもよい。それらの数は、4つより少ないか又は多くてもよい。それらの数は、4~100であってもよい。
【0127】
プレート910は、基板上のBOX層に取り付けられ、かつXBAR900の他の位置でキャビティ440(図示せず)に跨る振動板415を形成する外周445を有する圧電プレートの一部であってもよい。IDT930は、XBARの一部であり、かつインターリーブされたフィンガー、バスバー及び他の電子接続部を有するIDT510又は560などのIDTの一部であってもよい。具体的には、図9は、ビア915が接触パッド532の右側及びパッド534の左側に位置することを示すため、ビア915は、XBAR500及び550の振動板415の近傍、かつ振動板415と異なる位置にある。ビア915は、XBARS500と550の2つの振動板415の間にあってもよい。
【0128】
サーマルビア915は、IDTの他の部分、接触パッドから、BOX層422により基板420から電気的に絶縁される。サーマルビア915は、基板上面450とプレート910及びIDT930の底面との間にあるBOX422により電気的に絶縁される。
【0129】
サーマルビア915は、BOX層422の上面452の所定の位置及び領域W9を選択することにより、熱管理のために使用され、ビア915の上の空気と基板420との間の所定の量の熱抵抗を低減することができる。サーマルビア915は、金属配線(例えば、IDT及び接触パッド層の金属)により熱を拡散させることを可能にするが、例えば、BOX層を介してSi基板420への放熱を改善するビア領域を備える。ビア915は、熱が基板に入るためのより多くの接触領域を提供する。ビア915を使用することの1つの利点は、プレートをエッチングし、IDTを形成し、接触パッドを形成する前述のプロセスに加えて、空気と基板の間の熱抵抗を低減するために追加の金属を流動させるなどの追加のフォトリソグラフィー処理ステップを行う場合に比べて、前述のプロセス中にサーマルビア915を規定することがより容易であるということである。
【0130】
結びのコメント
この説明全体を通して、示されている実施形態及び例は、開示又は特許請求されたデバイス及び手順を限定するものではなく、例示的なものと見なされるべきである。本明細書に提示される例の多くは、方法動作又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、これらの動作及び要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わされてもよいことを理解されたい。フローチャートにおいて、ステップの追加及び減少を行ってもよく、示されているステップを組み合わせるか又は更に改良して、本明細書に記載される方法を達成してもよい。一実施形態に関連して論じる動作、要素及び特徴は、他の実施形態における同様の役割を除外することを意図するものではない。
【0131】
本明細書で使用される場合、「複数」とは、2つ以上を意味する。本明細書で使用する場合の項目「セット」は、かかる項目の1つ以上を含んでもよい。本明細書で使用される場合、明細書又は特許請求の範囲における、「備える」、「含む」、「運ぶ」、「有する」、「含有する」、「関与する」などの用語は、オープンエンドであると理解されるべきであり、すなわち、制限されることなく、含むと、理解されるべきである。特許請求の範囲において、「からなる」及び「実質的にからなる」という移行句に限っては、それぞれ限定的又は半限定的な移行句である。請求項要素を変更する請求項における「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、ある一つの請求項要素が他の請求項要素に対して優先される何らかの優先度、優先順位、もしくは順序、または方法の動作が実施される時間的順序、を含意するものではなく、ある特定の名称を有する一つの請求項要素を(請求項要素の区別のために序数詞を使用しなければ)同じ名称を有する他の要素と区別するための単なるラベルとして使用されるものである。本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、列挙されたアイテムが選択肢であることを意味するが、それらの選択肢には、列挙されるアイテムの任意の組み合わせも含まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
【外国語明細書】