(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074263
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20230522BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230522BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20230522BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230522BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20230522BHJP
B01D 53/94 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
F01N3/24 L ZAB
F01N3/28 301P
F01N3/20 K
F01N3/28 301Z
B01J35/02 G
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187127
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】折戸 暁則
(72)【発明者】
【氏名】中桐 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】上條 浩道
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真啓
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA02
3G091CA04
3G091GA10
3G091GA16
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB09W
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB02
4D148BA11Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33Y
4D148BA35Y
4D148BB02
4D148CC43
4D148CC53
4D148DA03
4D148DA20
4G169AA01
4G169AA03
4G169BA07B
4G169BB01B
4G169BC31B
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4G169BD05B
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EB12Y
4G169EB14X
4G169EE03
4G169ZA14B
4G169ZA32B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のハニカムセグメントが組み合わされてなるハニカム構造体であって、ハニカム構造体の全体を効率よく加熱できるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】多数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカムセグメントを複数組み合わせてなり、ガスが流入する第1の端面とガスが流出する第2の端面を有するハニカム構造体であって、上記ハニカムセグメントには触媒が担持されており、隣接する上記ハニカムセグメントの間に、電熱線が配置されており、上記セルが伸びる方向である長手方向において、上記ハニカム構造体の上記第1の端面から、上記ハニカム構造体の長手方向の長さの80%未満の範囲が、上記電熱線が配置された電熱線配置領域となっており、上記ハニカム構造体の上記第2の端面から、上記ハニカム構造体の長手方向の長さの少なくとも20%の範囲が、電熱線が配置されていない電熱線非配置領域となっているハニカム構造体である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカムセグメントを複数組み合わせてなり、ガスが流入する第1の端面とガスが流出する第2の端面を有するハニカム構造体であって、
前記ハニカムセグメントには触媒が担持されており、
隣接する前記ハニカムセグメントの間に、電熱線が配置されており、
前記セルが伸びる方向である長手方向において、前記ハニカム構造体の前記第1の端面から、前記ハニカム構造体の長手方向の長さの80%未満の範囲が、前記電熱線が配置された電熱線配置領域となっており、
前記ハニカム構造体の前記第2の端面から、前記ハニカム構造体の長手方向の長さの少なくとも20%の範囲が、電熱線が配置されていない電熱線非配置領域となっていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカムセグメントが接着材層を介して組み合わされてなり、
前記電熱線は前記接着材層の内部に配置されている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造体の端面視において、ハニカムセグメントは縦横に格子状に組み合わされており、全ての前記電熱線は、前記格子状の縦横のうちいずれか一方である第1の方向に沿って、同じ方向で配置されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造体の端面視において、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向として、
前記電熱線が配置されている位置が、ハニカム構造体の中心部からの前記第2の方向に沿った距離が離れているほど、前記第1の端面からの電熱線配置領域の長手方向の長さが長い、請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
隣接するハニカムセグメントの間には、複数本の電熱線が並列つなぎで接続された第1の組電熱線が配置されており、
前記ハニカム構造体の端面視において、前記第1の組電熱線が配置された位置とは異なる位置において隣接するハニカムセグメントの間には、複数本の電熱線が並列つなぎで接続された前記第1の組電熱線とは異なる第2の組電熱線が配置されており、
前記第1の組電熱線と前記第2の組電熱線が、並列つなぎで接続されている請求項1~4のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカム構造体の長手方向の長さが150mm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記ハニカム構造体は円柱形状であり、前記ハニカム構造体の端面の直径に対する前記ハニカム構造体の長手方向の長さの割合(長さ/直径)が0.8以下である請求項1~6のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出された排ガス中に含まれる有害物質を浄化するため、排気管の経路には、排ガス浄化が可能な触媒を担持したハニカム基材を備える排ガス浄化装置が設けられている。
排ガス浄化装置による有害物質の浄化効率を高めるためには、排ガス浄化装置の内部の温度を触媒活性化に適した温度(以下、触媒活性化温度ともいう)に維持する必要がある。
【0003】
特許文献1には、エンジンから排出される排ガスの温度が低下した場合においても、必要な温度を維持することができるハニカム触媒体として、ハニカム部の外周部を取り囲むように配設された発熱部を有する筒状のハニカム基材を備えた構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるススを捕集して排ガスを浄化するフィルタが開示されている。このフィルタでは、フィルタ内部に堆積したススを燃焼させるために、隣接するフィルタ間に発熱体としての電熱線を配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-194323号公報
【特許文献2】特開平7-54643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構成では、発熱部はハニカム部の外周部を取り囲むように配設されている。この場合、ハニカム基材の中心部において温度が充分に高くならないため、触媒活性が不足することがあった。
【0007】
特許文献2に開示された構成では、隣接するフィルタ間に電熱線が配置されているが、電熱線はフィルタの外周面の全体に配置されている(特許文献2の
図1参照)。そして、電熱線が配置されたフィルタを接着材により組み合わせて複数のフィルタからなる排ガス浄化装置を構成している。
この構成であると、隣接するフィルタ間の接着力が低下し、複数のフィルタからなる排ガス浄化装置が破損したり、電熱線が劣化しやすくなるという問題があった。
【0008】
また、電熱線によりフィルタを加熱した場合には、熱が排ガスの流れによって排ガス流入側の端面から排ガス流出側の端面に移動する。そのため、排ガス流出側の端面近傍に配置された電熱線で発生した熱は、フィルタの温度上昇に寄与せずにフィルタの排ガス流出側の端面からすぐに流出してしまうこととなり、特許文献2に開示されたフィルタは熱効率に無駄がある構成となっていた。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、複数のハニカムセグメントが組み合わされてなるハニカム構造体であって、ハニカム構造体の全体を効率よく加熱することができるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハニカム構造体は、多数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカムセグメントを複数組み合わせてなり、ガスが流入する第1の端面とガスが流出する第2の端面を有するハニカム構造体であって、上記ハニカムセグメントには触媒が担持されており、隣接する上記ハニカムセグメントの間に、電熱線が配置されており、上記セルが伸びる方向である長手方向において、上記ハニカム構造体の上記第1の端面から、上記ハニカム構造体の長手方向の長さの80%未満の範囲が、上記電熱線が配置された電熱線配置領域となっており、上記ハニカム構造体の上記第2の端面から、上記ハニカム構造体の長手方向の長さの少なくとも20%の範囲が、電熱線が配置されていない電熱線非配置領域となっていることを特徴とする。
【0011】
本発明のハニカム構造体では、ガスが流入する第1の端面から所定の範囲に電熱線配置領域が設けられており、ガスが流出する第2の端面から所定の範囲に電熱線非配置領域が設けられている。
第1の端面に近い電熱線配置領域で発生した熱は、ガスの流れに沿ってハニカム構造体の第2の端面に向けて移動する。そのため、第2の端面に近い領域に電熱線が配置されていなくても、ハニカム構造体全体を加熱することができる。
第2の端面に近い領域は電熱線非配置領域となっており、特許文献2における電熱線の配置とは異なり、ハニカム構造体の温度上昇に寄与しない熱の発生が防止される。
また、電熱線はハニカムセグメントの間に設けられているので、特許文献1の構成とは異なり、ハニカム構造体の中心部においても充分に温度を高くすることができる。
以上のことから、本発明の構成であると、ハニカム構造体の全体を効率よく加熱することができる。
【0012】
本発明のハニカム構造体においては、上記ハニカムセグメントが接着材層を介して組み合わされてなり、上記電熱線は上記接着材層の内部に配置されていることが好ましい。
【0013】
ハニカムセグメントが接着材層を介して組み合わされている場合に、電熱線非配置領域には電熱線が存在せず接着材だけが存在する。そのため、電熱線非配置領域において接着材層によるハニカムセグメント間の接着力が高く、ハニカム構造体が破損したり、ハニカムセグメント間の電熱線が劣化しやすくなることを抑えることができる。
【0014】
本発明のハニカム構造体においては、上記ハニカム構造体の端面視において、ハニカムセグメントは縦横に格子状に組み合わされており、全ての上記電熱線は、上記格子状の縦横のうちいずれか一方である第1の方向に沿って、同じ方向で配置されていることが好ましい。このような構成であると、局所的な発熱を抑えることができる。また、第1の方向と直交する方向には電熱線が配置されていないため、接着材層によるハニカムセグメント間の接着力を高くすることができる。
【0015】
また、上記ハニカム構造体の端面視において、上記第1の方向と直交する方向を第2の方向として、上記電熱線が配置されている位置が、ハニカム構造体の中心部からの上記第2の方向に沿った距離が離れているほど、上記第1の端面からの電熱線配置領域の長手方向の長さが長いことが好ましい。
【0016】
このような構成であると、ガス流速が速く、ガスによる熱の移動が大きいハニカム構造体の中心部に近い位置と、ガス流速が遅く、ガスによる熱の移動が小さいハニカム構造体の外周部に近い位置の両方で、ハニカム構造体の全体を効率よく加熱することができる。
【0017】
本発明のハニカム構造体においては、隣接するハニカムセグメントの間には、複数本の電熱線が並列つなぎで接続された第1の組電熱線が配置されており、上記ハニカム構造体の端面視において、上記第1の組電熱線が配置された位置とは異なる位置において隣接するハニカムセグメントの間には、複数本の電熱線が並列つなぎで接続された上記第1の組電熱線とは異なる第2の組電熱線が配置されており、上記第1の組電熱線と上記第2の組電熱線が、並列つなぎで接続されていることが好ましい。
【0018】
電熱線及び組電熱線が並列つなぎで接続されていると、電熱線の一部が断線したとしてもハニカム構造体に設けられた電熱線により構成される回路の全体が断線することがないので、加熱性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0019】
本発明のハニカム構造体においては、上記ハニカム構造体の長手方向の長さが150mm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明のハニカム構造体においては、上記ハニカム構造体は円柱形状であり、上記ハニカム構造体の端面の直径に対する上記ハニカム構造体の長手方向の長さの割合(長さ/直径)が0.8以下であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ハニカムセグメントの長手方向に垂直な方向の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すハニカム構造体の部分断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すハニカム構造体を第1の端面側から見た端面視図である。
【
図5A】
図5Aは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の例を模式的に示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の例を模式的に示す断面図である。
【
図5C】
図5Cは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の例を模式的に示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の別の例を模式的に示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の別の例を模式的に示す断面図である。
【
図6C】
図6Cは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の別の例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、電熱線の配置を模式的に示す説明図である。
【0022】
(発明の詳細な説明)
[ハニカム構造体]
以下、本発明のハニカム構造体について説明する。
本発明のハニカム構造体は、多数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカムセグメントを複数組み合わせてなり、ガスが流入する第1の端面とガスが流出する第2の端面を有するハニカム構造体であって、上記ハニカムセグメントには触媒が担持されており、隣接する上記ハニカムセグメントの間に、電熱線が配置されており、上記セルが伸びる方向である長手方向において、上記ハニカム構造体の上記第1の端面から、上記ハニカム構造体の長手方向の長さの80%未満の範囲が、上記電熱線が配置された電熱線配置領域となっており、上記ハニカム構造体の上記第2の端面から、上記ハニカム構造体の長手方向の長さの少なくとも20%の範囲が、電熱線が配置されていない電熱線非配置領域となっていることを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すハニカム構造体1は、多数のセル21を区画形成する隔壁22を有するハニカムセグメント20を複数組み合わせてなり、ガスが流入する第1の端面11とガスが流出する第2の端面12を有する。
ハニカムセグメント20のセル21が伸びる方向を長手方向(
図1に両矢印Lで示す方向)とする。
複数のハニカムセグメントは接着材層30を介して組み合わされている。
また、電極端子40が第1の端面11から突出している。
【0024】
ハニカムセグメント(隔壁)を構成する材料としては、SiC、Si含浸SiC等の熱伝導率が高いものであることが望ましい。
【0025】
隔壁の厚さは、均一であることが好ましい。具体的には、隔壁の厚さは、0.30mm未満であることが好ましい。また、0.05mm以上であることが好ましい。
【0026】
セルの形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
セルの形状はそれぞれ異なっていてもよいが、全て同じであることが好ましい。すなわち、ハニカムセグメントの長手方向に垂直な断面において、隔壁に囲まれたセルのサイズが同じであることが好ましい。
【0027】
隔壁の気孔率は、50%以下であることが望ましい。
隔壁の気孔率が50%以下であると、高い機械的強度と排ガス浄化性能を両立させることができる。
【0028】
隔壁の気孔率が50%を超えると、気孔率が高くなりすぎるため、ハニカムセグメントの機械的特性が低下し、ハニカム構造体を使用中、クラックや破壊等が発生し易くなる。
【0029】
ハニカム構造体の形状は特に限定されるものではなく、円柱形状に限られず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0030】
ハニカム構造体の形状が円柱形状である場合、ハニカム構造体の端面の直径に対するハニカム構造体の長手方向の長さの割合(長さ/直径)が0.8以下であることが好ましい。
【0031】
ハニカム構造体の長手方向の長さは150mm以下であることが好ましく、また、50mm以上であることが好ましい。
【0032】
図2は、ハニカムセグメントの長手方向に垂直な方向の断面図である。
内燃機関から排出された排ガス(
図2中、排ガスの流れを矢印Gで示す)が、ハニカムセグメント20に到達すると、排ガスは、ハニカムセグメント20の第1の端面11からセル21に流入する。さらに、排ガスは、隔壁22に担持された触媒23に接触しながらセル21の中を通過する。この際、排ガス中のCOやHC、NO
X等の有害なガス成分が隔壁22に担持された触媒23により浄化される。そして、排ガスは、ハニカムセグメント20の第2の端面12においてセル21から流出する。
【0033】
触媒23としては、排ガスを処理できれば特に限定されないが、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属からなる触媒、ゼオライト等が挙げられる。ゼオライトとしてはCHAゼオライトであってもよく、ゼオライトはCu等でイオン交換されていてもよい。
これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの触媒が担持されていると、COやHC、NOX等の有毒な排ガスを好適に浄化することができる。
とくに、ゼオライトを触媒としてNOxを還元するSCR触媒としてハニカム構造体を使用することが好ましい。
【0034】
図3は、
図1に示すハニカム構造体の部分断面図である。
図3は、ハニカム構造体に電熱線が配置される領域を模式的に示している。
隣接するハニカムセグメント20の間には電熱線50が配置されている。そして、電熱線50の両端には電極端子40が設けられていて、電極端子40が第1の端面11から突出している。
【0035】
電熱線50は、ハニカムセグメント20の長手方向において、ハニカム構造体1の第1の端面11から所定の範囲に配置されている。電熱線が配置されている領域を電熱線配置領域とする。
図3では両矢印Bで示す領域である。
電熱線配置領域は、ハニカム構造体の第1の端面から、ハニカム構造体の長手方向の長さの80%未満の範囲となっている。
【0036】
一方、電熱線50は、ハニカムセグメント20の長手方向において、ハニカム構造体1の第2の端面12から所定の範囲には配置されない。電熱線が配置されていない領域を電熱線非配置領域とする。
図3では両矢印Cで示す領域である。
電熱線非配置領域は、ハニカム構造体の第2の端面から、ハニカム構造体の長手方向の長さの少なくとも20%の範囲となっている。
【0037】
電熱線配置領域と電熱線非配置領域の配置を言い換えると、ハニカム構造体の第2の端面からハニカム構造体の長手方向の長さ20%までの領域は必ず電熱線非配置領域となる。
また、ハニカム構造体の第1の端面から所定の領域(最大で、第1の端面からハニカム構造体の長手方向の長さ80%未満まで)が電熱線配置領域となる。
【0038】
ここで、ハニカム構造体の第1の端面を起点として、ハニカム構造体の長手方向の長さの所定の位置までの領域には電熱線非配置領域が設けられていてもよい。この場合、電熱線配置領域の起点がハニカム構造体の第1の端面から少し離れた位置になる。
この場合、ハニカム構造体の第1の端面を起点として、ハニカム構造体の長手方向の長さの0%以上、10%以下までの領域に電熱線非配置領域が設けられていてもよい。
【0039】
電熱線配置領域と電熱線非配置領域の割合の好ましい範囲は、電熱線配置領域:電熱線非配置領域=80:20~50:50であり、より好ましくは75:25~60:40である。
【0040】
このように、本発明のハニカム構造体では、ガスが流入する第1の端面から所定の範囲に電熱線配置領域が設けられており、ガスが流出する第2の端面から所定の範囲に電熱線非配置領域が設けられている。
第1の端面に近い電熱線配置領域で発生した熱は、ガスの流れに沿ってハニカム構造体の第2の端面に向けて移動する。そのため、第2の端面に近い領域に電熱線が配置されていなくても、ハニカム構造体全体を加熱することができる。
第2の端面に近い領域は電熱線非配置領域となっており、特許文献2における電熱線の配置とは異なり、ハニカム構造体の温度上昇に寄与しない熱の発生が防止される。
また、電熱線はハニカムセグメントの間に設けられているので、特許文献1の構成とは異なり、ハニカム構造体の中心部においても充分に温度を高くすることができる。
以上のことから、本発明の構成であると、ハニカム構造体の全体を効率よく加熱することができる。
【0041】
電熱線50は接着材層30の内部に配置されている。
ハニカムセグメントが接着材層を介して組み合わされている場合に、電熱線非配置領域には電熱線が存在せず接着材だけが存在する。そのため、電熱線非配置領域において接着材層によるハニカムセグメント間の接着力が高く、ハニカム構造体が破損したり、ハニカムセグメント間の電熱線が劣化しやすくなることを抑えることができる。
【0042】
電熱線の材料としては、ニッケルクロム合金、ニッケルクロム鉄合金、クロム鉄アルミニウム合金等を使用することができる。また、電熱線は線状でも板状でも使用することができる。
電熱線が線状の場合、その直径は特に限定されるものではないが、0.1~1mmであることが好ましく、板状の場合、その厚さは限定されるものではないが、0.1~0.5mmであり、その幅は1~10mmであることが好ましい。
【0043】
接着材層は、無機バインダと無機粒子とを含む接着材ペーストを塗布、乾燥させたものである。上記接着材層は、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
また、接着材層の厚さは0.5~3mmであることが好ましい。
【0044】
電熱線50の両端には電極端子40が接続されていて、電極端子40が第1の端面11から突出しており、電極端子40から電熱線50に給電して電熱線を発熱させることができる。電極端子40は板状であり、電熱線50と溶接されている。
電極端子40同士は、電極端子間を接続する配線60により接続されている。
【0045】
図3に示す電熱線50は、複数の電熱線(51、52、53)が並列つなぎで接続された組電熱線である。各電熱線の両端に電極端子40が接続されている。
電熱線が組電熱線であると、複数の電熱線のうちの1本が断線したとしても組電熱線全体としては断線しないため、加熱性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0046】
図4は、
図1に示すハニカム構造体を第1の端面側から見た端面視図である。
図4に示すハニカム構造体1の端面視において、ハニカムセグメント20は縦横に格子状に組み合わされている。この格子状の一方の方向を第1の方向とし、第1の方向と直交する方向を第2の方向とする。
図4では横方向を第1の方向、縦方向を第2の方向とする。
【0047】
全ての電熱線50は、第1の方向に沿って同じ方向で配置されている。
図4では、電熱線が配置されている、第1の方向に沿った接着材層30aを濃いハッチングで示しており、電熱線が配置されていない、第2の方向に沿った接着材層30bを薄いハッチングで示している。
このような構成であると、局所的な発熱を抑えることができる。また、第1の方向と直交する第2の方向には電熱線が配置されていないため、接着材層によるハニカムセグメント間の接着力を高くすることができる。
【0048】
図4に示す、第1の方向に沿った接着材層30aに配置された電熱線はそれぞれ組電熱線となっている。そして、組電熱線同士が並列つなぎで接続されている。
このことを詳細に説明する。
ハニカムセグメントの間にある、第1の方向に沿った接着材層30a1に配置された組電熱線を第1の組電熱線50a1とする。
第1の組電熱線50a1が配置された位置とは異なる位置において隣接するハニカムセグメントの間には、第1の方向に沿った別の接着材層30a2がある。接着材層30a2に配置された組電熱線を第2の組電熱線50a2とする。
そして、第1の組電熱線50a1、第2の組電熱線50a2が、電極端子間を接続する配線60により並列つなぎで接続されている。
図4には第1の方向に沿った接着材層30aが6本あり、各接着材層30aに組電熱線が配置されている。6本の組電熱線が配線60により並列つなぎで接続されている。
【0049】
組電熱線が並列つなぎで接続されていると、一部の組電熱線が断線したとしてもハニカム構造体に設けられた電熱線により構成される回路の全体が断線することがないので、加熱性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0050】
本発明のハニカム構造体では、第1の方向と直交する方向を第2の方向として、電熱線が配置されている位置が、ハニカム構造体の中心部からの第2の方向に沿った距離が離れているほど、第1の端面からの電熱線配置領域の長手方向の長さが長いことが好ましい。
このことについて図面を参照して説明する。
【0051】
図5A、
図5B及び
図5Cは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の例を模式的に示す断面図である。
図5Aには、ハニカム構造体の中心部における断面を示し、
図5Bには第2の方向に沿ってハニカム構造体の中心部から離れた位置における断面を示し、
図5Cには第2の方向に沿ってハニカム構造体の中心部からさらに離れた位置における断面を示している。
図5Aに示す断面は、
図4においてD-D線で示す断面であり、
図5Bに示す断面は、
図4においてE-E線で示す断面であり、
図5Cに示す断面は、
図4においてF-F線で示す断面である。
【0052】
図5Aに示すハニカム構造体の中心部における断面では、電熱線配置領域は、両矢印B1で示す領域である。
図5Bに示すハニカム構造体の中心部から離れた位置における断面では、電熱線配置領域は、両矢印B2で示す領域である。
図5Cに示すハニカム構造体の中心部からさらに離れた位置における断面では、電熱線配置領域は、両矢印B3で示す領域である。
これらの電熱線配置領域の長さの関係は、B1<B2<B3となっており、ハニカム構造体の中心部からの第2の方向に沿った距離が離れているほど、第1の端面からの電熱線配置領域の長手方向の長さが長いといえる。
このような構成であると、ガス流速が速く、ガスによる熱の移動が大きいハニカム構造体の中心部に近い位置と、ガス流速が遅く、ガスによる熱の移動が小さいハニカム構造体の外周部に近い位置の両方で、ハニカム構造体の全体を効率よく加熱することができる。
【0053】
例えば、ハニカム構造体の長手方向の長さを125mmとしたときに、B1をハニカム構造体の第1の端面から10~69mmまでの領域とし、B2をハニカム構造体の第1の端面から10~75mmまでの領域とし、B3をハニカム構造体の第1の端面から10~98mmまでの領域とすることができる。
また、ハニカム構造体の長手方向の長さを150mmとしたときに、B1をハニカム構造体の第1の端面から10~72mmまでの領域とし、B2をハニカム構造体の第1の端面から10~102mmまでの領域とし、B3をハニカム構造体の第1の端面から10~120mmまでの領域とすることができる。
このように、電熱線配置領域の長さが異なる場合には、長手方向の長さが最も長い電熱線配置領域が形成された箇所であっても、第2の端面から、ハニカム構造体の長手方向の長さの少なくとも20%の範囲が、電熱線が配置されていない電熱線非配置領域となるようにする。
【0054】
また、第1の方向と直交する方向を第2の方向として、ハニカム構造体の中心部からの第2の方向に沿った距離に関わらず、第1の端面からの電熱線配置領域の長手方向の長さが同じであってもよい。
【0055】
図6A、
図6B及び
図6Cは、ハニカム構造体の断面における電熱線配置領域と電熱線非配置領域の別の例を模式的に示す断面図である。
図6Aには、ハニカム構造体の中心部における断面を示し、
図6Bには第2の方向に沿ってハニカム構造体の中心部から離れた位置における断面を示し、
図6Cには第2の方向に沿ってハニカム構造体の中心部からさらに離れた位置における断面を示している。
図6Aに示す断面は、
図4においてD-D線で示す断面であり、
図6Bに示す断面は、
図4においてE-E線で示す断面であり、
図6Cに示す断面は、
図4においてF-F線で示す断面である。
【0056】
図6Aに示すハニカム構造体の中心部における断面では、電熱線配置領域は、両矢印B4で示す領域である。
図6Bに示すハニカム構造体の中心部から離れた位置における断面では、電熱線配置領域は、両矢印B5で示す領域である。
図6Cに示すハニカム構造体の中心部からさらに離れた位置における断面では、電熱線配置領域は、両矢印B6で示す領域である。
これらの電熱線配置領域の長さの関係は、B4=B5=B6となっており、ハニカム構造体の中心部からの第2の方向に沿った距離に関わらず、第1の端面からの電熱線配置領域の長手方向の長さが同じであるといえる。
【0057】
本発明のハニカム構造体の製造方法の一例について説明する。
上記ハニカム構造体は、例えば、公知の製造方法でセラミックからなるハニカムセグメントを作製した後、ハニカムセグメントを接着材層を介して接着することにより製造することができる。
接着材層をハニカムセグメントの側面に形成する際に、ハニカムセグメントの間に電熱線を配置して、電熱線の端部に電極端子を接続して、電極端子がハニカム構造体の第1の端面から突出するようにする。
【0058】
ハニカムセグメントを接着する際に、ハニカム構造体において第1の方向となる方向に平行な面が露出するようにハニカムセグメントを複数個並べ、接着材層となる接着材ペーストを塗布し、電熱線を接着材ペーストの上に載置する。
また、複数本の電熱線を並列つなぎで接続して組電熱線としておき、電極端子をハニカム構造体において第1の端面となる方向から露出させる。
また、電熱線を、ハニカム構造体において第2の端面となる位置からハニカム構造体の長手方向の少なくとも20%までの位置には配置しないようにする。
【0059】
接着材ペーストをさらに電熱線の上に塗布してから、接着材ペーストの上にハニカムセグメントを並べる。
この工程を繰り返してハニカムセグメントを組み合わせて、ハニカム集合体とする。
ハニカム集合体を加熱することにより接着材ペーストを加熱固化して接着材層とし、ハニカム構造体を作製する。
ハニカム集合体は、狙いの形状にするために、外周を加工してもよく、加工後に接着材ペーストと同様のペーストを用いて外周を塗布してもよい。
ハニカム構造体の第1の端面には電極端子が露出する。
組電熱線が並列つなぎで接続されるように、電極端子同士を接続する。
以上の工程により、ハニカム構造体を製造することができる。
【0060】
また、製造したハニカム構造体を、触媒を含むスラリーに浸漬し、乾燥することによりハニカム構造体の隔壁に触媒を担持させることが好ましい。
【実施例0061】
(実施例1)
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)0.8重量%、グリセリン1.3重量%、オレイン酸2.8重量%、及び、水15.1重量%を加えて混練して原料組成物を得た後、金型を用いて押出成形する成形工程を行い、ハニカム成形体を得た。
【0062】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記ハニカム成形体を乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製した。
続いて、ハニカム成形体の乾燥体を400℃で脱脂する脱脂処理を行い、さらに、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成処理を行った。
これにより、四角柱のハニカムセグメントを作製した。
ハニカムセグメントの寸法は36mm角×長さ150mmであり、隔壁厚さ7mil(0.18mm)、セルの形状は四角柱状、セル密度300cpsi、隔壁の気孔率は38%、平均気孔径は11μmであった。
【0063】
平均繊維長20μmのセラミックファイバ31重量%、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素粒子37重量%、シリカゾル16重量%、及び、水16重量%を含む耐熱性の接着材ペーストを準備した。
【0064】
材質がFe-Cr-Al(クロム鉄アルミニウム合金)である電熱線(線状で直径0.6mm)を準備した。
ハニカムセグメントを並べ、接着剤ペーストを塗布し、電熱線を所定の位置に配置して、電熱線の上にさらに接着剤ペーストを塗布し、別のハニカムセグメントを並べた。
【0065】
この工程を繰り返して、ハニカムセグメントを組み合わせてハニカム集合体を得た。
ハニカム集合体のハニカムセグメントの数は縦7本×横7本(4角なし、45本)である。
【0066】
電熱線の配置は、
図4のD-D線断面図の位置(D位置)、E-E線断面図の位置(E位置)、F-F線線断面図の位置(F位置)においてそれぞれ表1、表2及び表3に示した通りとした。
図4における上下対称の配置であり、D位置が2カ所、E位置が2ヶ所、F位置が2カ所となる。D位置及びE位置では電熱線の本数を3本、F位置では電熱線の本数を2本とした。なお、各位置に配置した複数本の電熱線は並列つなぎとして組電熱線とした。
また、組電熱線を並列つなぎで接続した。
【0067】
各表には、電熱線のピッチ、長さ、並列本数、第1の端面からの距離、電熱線間距離を示している。
図7は、電熱線の配置を模式的に示す説明図である。
電熱線のピッチは、ミアンダ形状となっている電熱線の隣り合う山の間の距離であり、両矢印Pで示す長さである。
電熱線の長さは、ミアンダ形状となっている電熱線の山の高さ(谷の深さ)であり、両矢印Nで示す長さである。
第1の端面からの距離は、第1の端面から最も近接する電熱線までの距離であり、両矢印Qで示す長さである。
電熱線間の距離は、隣り合う電熱線の間の距離であり、両矢印Kで示す長さである。
第1の端面からの配置領域の長さ=[第1の端面からの距離+電熱線の長さ×電熱線の本数+電熱線間の距離×(電熱線の本数-1)]で求められる。
第2の端面からの非配置領域の長さ=[ハニカム構造体の長手方向の長さ-第1の端面からの配置領域の長さ]で求められる。
【0068】
さらに、ハニカム集合体を120℃で加熱して接着材ペーストを乾燥固化させて接着材層を形成して角柱状のハニカム構造体とした。
続いて、角柱状のハニカム構造体の外周をダイヤモンドカッターを用いて切断し、外周にも接着剤ペーストと同じペーストを塗布して乾燥させ、直径266.7mmの略円柱状のハニカム構造体を得た。
【0069】
続いて、Cuイオンでイオン交換された、平均粒子径が2μmのCHAゼオライト(SSZ-13)を分散させたスラリーにハニカム構造体を浸漬し、120℃で乾燥させ、450℃で熱処理することにより、ハニカム構造体にSCR触媒として150g/Lのゼオライトを担持した。
【0070】
(実施例2~4、比較例1)
電熱線の配置を表1~3に示すように変更した他は実施例1と同様にしてハニカム構造体を得た。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
(NOx浄化率の測定)
排気量15LのHD用エンジンにハニカム構造体を備える排ガス浄化装置を接続し、ハニカム構造体に、アンモニア噴射してアンモニアを吸着させた。
出力10kW、印加電圧48Vで電熱線に給電してハニカム構造体を加熱し、電圧の印加開始から90秒後にWHTCモードで運転を開始した。
アンモニアは排ガス温度180℃以上のときに噴射し続けることとした。
運転開始2分後から、排ガスがハニカム構造体に流通する前のNOx濃度N0、および、排ガスがハニカム構造体を通過した後のNOx濃度N1を測定し、以下の式からハニカム構造体のNOx浄化率を、3分間測定した。
NOx浄化率(%)=[(N0-N1)/N0]×100
上記測定によるNOx浄化率の測定結果を表4に示した。
【0075】
【0076】
表4に示す結果から、第2の端面からの非配置領域の範囲が20%以上となっていると、NOx浄化率が高くなることがわかった。
配置領域が最大となる位置での非配置領域の範囲が等しい実施例2と4を比較すると、ハニカム構造体の中心部から第2の方向に沿った距離が遠いF位置において配置領域の長手方向の長さが長い実施例4の方がNOx浄化率が高くなっていた。
一方、比較例1では電熱線非配置領域が設けられていないので、加熱効率に劣り、NOx浄化率が低くなっていた。