(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074267
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】ウェアラブル装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/263 20210101AFI20230522BHJP
A61B 5/28 20210101ALI20230522BHJP
A61B 5/266 20210101ALI20230522BHJP
A61B 5/276 20210101ALI20230522BHJP
【FI】
A61B5/263
A61B5/28
A61B5/266
A61B5/276 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187134
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢代 優一
(72)【発明者】
【氏名】中村 和洋
(72)【発明者】
【氏名】若泉 裕明
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127LL03
4C127LL13
4C127LL15
4C127LL22
(57)【要約】
【課題】連続的な生体情報を安定的に取得することが可能なウェアラブル装置及び検出方法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係るウェアラブル装置は、検出部と、可撓性基板とを備える。検出部は、対象者の生体情報を検出する。可撓性基板は、前記検出部の第1の方向に配置され、前記検出部と電気的に接続される電子部品を有し、可撓性を有する。前記検出部は、前記電子部品と電気的に接続される電極を有する電極部と、前記電極部の第1の方向とは反対の第2の方向に配置され、金を含む第1めっき層と、前記第1めっき層の前記第2の方向に配置され、金以外の金属を含む第2めっき層とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生体情報を取得するウェアラブル装置であって、
前記生体情報を検出する検出部と、
前記検出部の第1の方向に配置され、前記検出部と電気的に接続される電子部品を有し、可撓性を有する可撓性基板とを備え、
前記検出部は、
前記電子部品と電気的に接続される電極を有する電極部と、
前記電極部の第1の方向とは反対の第2の方向に配置され、金を含む第1めっき層と、
前記第1めっき層の前記第2の方向に配置され、金以外の金属を含む第2めっき層と
を有する、
ウェアラブル装置。
【請求項2】
前記可撓性基板は、
前記検出部と電気的に接続される導体と、
前記可撓性基板の前記第1の方向に配置され、前記可撓性基板より硬い硬質基板と、
前記硬質基板の前記第1の方向に配置され、前記導体と電気的に接続される前記電子部品とを含む、
請求項1に記載のウェアラブル装置。
【請求項3】
前記検出部は、
前記対象者の肌に接触可能であって、前記電極と電気的に接続される導電ゲル部を含み、
前記生体情報として心電信号を検出する、
請求項2に記載のウェアラブル装置。
【請求項4】
前記検出部の前記第2の方向に配置され、防水性を有する防水層と、
前記防水層の前記第2の方向に配置され、吸水性を有する吸水層と
を更に備える、
請求項3に記載のウェアラブル装置。
【請求項5】
前記防水層及び前記吸水層は、前記導電ゲル部と前記対象者の肌とを接触させるための開口部を有する、
請求項4に記載のウェアラブル装置。
【請求項6】
前記吸水層の開口部は、前記防水層の開口部よりも大きい、
請求項5に記載のウェアラブル装置。
【請求項7】
前記吸水層は、不織布を含む層である、
請求項4~6のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項8】
前記硬質基板は、前記可撓性基板の端部に配置される、
請求項2~7のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項9】
前記硬質基板は、前記可撓性基板の前記電極に対応する位置に配置される、
請求項2~7のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項10】
前記第2めっき層は、パラジウムを含む、
請求項1~9のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項11】
前記第2めっき層の前記第2の方向に配置され、金を含む第3めっき層を更に備える、
請求項1~10のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項12】
前記第1めっき層の厚みは、0.1nm以上1μm未満である、
請求項1~11のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項13】
前記第2めっき層の厚みは、1nm以上10μm未満である、
請求項1~12のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項14】
前記第3めっき層の厚みは、1nm以上10μm未満である、
請求項11に記載のウェアラブル装置。
【請求項15】
前記第1の方向は、前記ウェアラブル装置が前記対象者の肌に貼付された場合に、前記肌から離れる方向に対応する、
請求項1~14のいずれか一つに記載のウェアラブル装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一つに記載のウェアラブル装置を用いて取得した前記生体情報に基づいて、前記対象者の異常を検出することを含む検出方法。
【請求項17】
72時間以上の前記生体情報に基づいて、前記対象者の異常を検出する、
請求項16に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ウェアラブル装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間が装着可能なウェアラブル装置を用いて、人間の生体情報を検出する技術が種々提案されている。例えば、小型・軽量の心電センサを粘着テープ等で肌(皮膚)に貼り付けて、連続的な心電信号を取得する技術が提案されている。このようなウェアラブル装置を利用することで、日常生活における連続的な生体情報を取得することが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6539827号公報
【特許文献2】特許第6718183号公報
【特許文献3】特許第6795003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウェアラブル装置は、日常生活における様々な要因によって生体情報を取得できなくなる可能性がある。例えば、ウェアラブル装置は、人体の動きによって撓み、破損する可能性がある。また、ウェアラブル装置は、汗(水分)によって装着者に不快感を生じさせたり、装着者の肌から剥がれたりする可能性が考えられる。そこで、本発明は、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能なウェアラブル装置及び検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対象者の生体情報を取得するウェアラブル装置であって、前記生体情報を検出する検出部と、前記検出部の第1の方向に配置され、前記検出部と電気的に接続される電子部品を有し、可撓性を有する可撓性基板とを備え、前記検出部は、前記電子部品と電気的に接続される電極を有する電極部と、前記電極部の第1の方向とは反対の第2の方向に配置され、金を含む第1めっき層と、前記第1めっき層の前記第2の方向に配置され、金以外の金属を含む第2めっき層とを有する、ウェアラブル装置である。
【0006】
また、本発明は、上記のウェアラブル装置を用いて取得した前記生体情報に基づいて、前記対象者の異常を検出することを含む検出方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能なウェアラブル装置及び検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るウェアラブル装置100の構造の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るフレキシブル基板110及び電子部品部120の構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るフレキシブル基板110及び硬質基板121上の配線の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る粘着部130の構造の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るめっき層150の層構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るウェアラブル装置100の貼付方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る粘着部130の構造の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例2に係るめっき層150の層構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係るウェアラブル装置及び検出方法について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、以下の説明に限定されるものではない。以下に説明する実施形態は、構成に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下に説明する実施形態は、特許第6539827号公報に記載された構成を含むことが可能である。
【0010】
なお、以下に図示した構成は、図示の内容に限定されるものではない。例えば、以下に図示した各部の寸法や角度については、ウェアラブル装置の機能が損なわれない範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
(実施形態)
図1を用いて、実施形態に係るウェアラブル装置100の構造の一例を説明する。
図1は、実施形態に係るウェアラブル装置100の構造の一例を示す図である。
図1には、ウェアラブル装置100の斜視図を例示する。
【0012】
ウェアラブル装置100は、対象者の生体情報を取得する装置(センサデバイス、ウェアラブルデバイス)である。例えば、ウェアラブル装置100は、略長方形(短冊状)に形成され、対象者の肌(皮膚)に貼り付けて利用される。なお、対象者とは、生体情報の取得対象となる者であり、ウェアラブル装置100を装着する者(装着者)に対応する。なお、「略長方形」とは、4つの角(頂点)を有し、向かい合う辺が互いに平行な長方形のみならず、例えば、
図1に示したように、4つの角が丸く加工された形状や、各辺が若干の曲率を有するような形状を含む。
【0013】
例えば、ウェアラブル装置100は、生体情報として心電信号を検出する。なお、以下の説明では、心電信号を取得するウェアラブル装置100について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ウェアラブル装置100は、体温や血圧など、心電信号以外の生体情報を取得するセンサデバイスであっても良い。また、ウェアラブル装置100は、一種類の生体情報に限らず、複数種類の生体情報を取得することも可能である。
【0014】
図1に示すように、ウェアラブル装置100は、フレキシブル基板110、電子部品部120、及び粘着部130を有する。フレキシブル基板110、電子部品部120、及び粘着部130については後に詳述する。
【0015】
なお、
図1にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、
図1では、ウェアラブル装置100が略長方形である場合を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。ウェアラブル装置100は、正方形、円形、楕円形など、任意の形状に形成可能である。また、これらの形状の中でも、ウェアラブル装置100は略長方形または楕円形の形状が好ましく、アスペクト比(短径に対する長径の比)が1.1以上である略長方形または楕円形の形状が特に好ましい。このような形状のウェアラブル装置100であれば、同一面積において、電極間距離を広く設けることができるため、連続的な生体情報をより感度よく取得することが可能になる。また、ウェアラブル装置100の端部形状は角張っていない形状であることが望ましい。このような形状であることで、対象者の肌から剥がれにくく、不快感を与えないようになる。
【0016】
また、本実施形態において、ウェアラブル装置100が対象者の肌に貼付された場合に、その肌から離れる方向(第1の方向)を「上」と記載する場合がある。また、「第1の方向」とは反対の方向(第2の方向)を「下」と記載する場合がある。
【0017】
図2を用いて、実施形態に係るフレキシブル基板110及び電子部品部120の構造の一例を説明する。
図2は、実施形態に係るフレキシブル基板110及び電子部品部120の構造の一例を示す図である。
図2の上段には、フレキシブル基板110及び電子部品部120の上面図を例示する。
図2の中段には、フレキシブル基板110及び電子部品部120の正面図を例示する。
図2の下段には、フレキシブル基板110及び電子部品部120の底面図を例示する。
【0018】
フレキシブル基板110は、ウェアラブル装置100を装着する者の動きに柔軟に追従することができるよう可撓性を有し、導体が配線された基板である。フレキシブル基板110は、例えば、略長方形に形成されたFPC(Flexible Printed Circuits)である。フレキシブル基板110は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、およびアクリル樹脂など、任意の材料を用いることによって形成可能である。また、フレキシブル基板110は、好ましくは、0.10mm以上0.80mm未満の厚みを有し、更に好ましくは、0.15mm以上0.60mm未満の厚みを有する。なお、フレキシブル基板110を有する層は、「フレキシブル層」とも呼ばれる。また、フレキシブル基板110は、「可撓性基板」とも呼ばれる。
【0019】
例えば、フレキシブル基板110は、第1面(上面)に、ウェアラブル装置100に搭載される各電子部品を電気的に接続する導体を備える。また、フレキシブル基板110は、第1面の反対側の第2面(底面)に、3つの電極111,112,113を備える。ここで、電極111、112を正極および負極とし、正極と負極の間に位置する電極113を基準電極とすることで、より生体情報を安定的に取得することが可能になる。
【0020】
電極111,112,113は、対象者の心電信号(Electrocardiogram;ECG)を検出するための電極である。各電極111,112,113は、スルーホール(貫通孔)を介して、フレキシブル基板110の上面に配線された導体と電気的に接続される。なお、3つの電極111,112,113を有する層は、「電極層」とも呼ばれる。電極層は、生体情報を検出する「検出部」の一例である。
【0021】
なお、
図2では、心電信号検出用の電極が3つである場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。心電信号検出用の電極の数は、必要に応じて設定可能である。
【0022】
電子部品部120は、フレキシブル基板110の上面に配線された導体と電気的に接続され、ウェアラブル装置100における処理を制御する各種の電子部品を含む。例えば、電子部品部120は、ウェアラブル装置100内の各部への給電や、電極111,112,113により検出された心電信号の増幅、および収集、さらに収集した心電信号の出力などを制御する。なお、電子部品部120を有する層は、「電子部品層」とも呼ばれる。
【0023】
ここで、電子部品部120は、硬質基板121に積層される。硬質基板121は、フレキシブル基板110に積層され、電子部品部120を支持する基板である。例えば、硬質基板121は、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、ガラスポリイミド基板などの硬質基板を任意に適用可能である。また、このような硬質基板の中でも、紙エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、ガラスポリイミド基板が好ましく、ガラスエポキシ基板が特に好ましい。また、硬質基板121は、好ましくは、0.30mm以上3.0mm未満の厚みを有し、更に好ましくは、0.50mm以上2.0mm未満の厚みを有する。このような硬質基板であれば、電子部品部120を支持しやすくなるため、より生体情報を安定的に取得することが可能になる。
【0024】
硬質基板121に積層されることにより、電子部品部120は、フレキシブル基板110上に直接積層された場合やフレキシブル基板110の内部に設置された場合と比較して、撓み(折り曲げ)に対して耐久性が向上する。この結果、ウェアラブル装置100は、撓みによって電子部品部120の半田が外れて断線するといった破損リスクを低減するので、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能となる。
【0025】
また、硬質基板121は、フレキシブル基板110の端部に配置される。これにより、フレキシブル基板110上の配線の数が電子部品部120(硬質基板121)に向かう数本と少なくなるため、配線を簡略化することができる。この結果、ウェアラブル装置100は、配線の断線リスクを低減できるので、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能となる。
【0026】
また、硬質基板121は、フレキシブル基板110の電極112に対応する位置に配置され、より好ましくは電極112,113に対応する位置に配置される。これにより、電極112等が撓みに対して頑健になる。この結果、ウェアラブル装置100は、撓みによる電極112等の破損リスクを低減するので、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能となる。
【0027】
また、硬質基板121の面積は、フレキシブル基板110の面積に対して5~50%が好適であり、フレキシブル基板110の面積に対して20~40%が更に好適である。硬質基板121の面積がこのような範囲であれば、ウェアラブル装置100の破損が生じにくく、また電子部品部120を支持しやすくなるため、より生体情報を安定的に取得することが可能になる。なお、硬質基板121の面積は、硬質基板121のうちフレキシブル基板110と対向する面の面積である。また、フレキシブル基板110の面積は、フレキシブル基板110のうち硬質基板121と対向する面の面積である。
【0028】
なお、
図2にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、
図2では、電子部品部120が硬質基板121に積層される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。電子部品部120は、フレキシブル基板110より硬い(撓み難い)部材であれば、任意の部材に積層可能である。つまり、電子部品部120は、フレキシブル基板110の撓みから隔離するための「隔離層」に積層される。隔離層としては、例えば、フレキシブル基板110より硬い材料で構成されたフレキシブル基板や、フレキシブル基板110より厚く構成されたフレキシブル基板などが任意に適用可能である。なお、隔離層は、電子部品部120を支持する「支持層」とも呼ばれる。
【0029】
また、電子部品部120は、必ずしも硬質基板121上に設けられなくてもよい。例えば、電子部品部120は、硬質基板121を介さず、フレキシブル基板110上に直接的に設けられてもよい。言い換えると、フレキシブル基板110は、検出部と電気的に接続される電子部品部120を有していてもよい。
【0030】
また、
図2にて説明した各部の材料は、上述した材料に限定されるものではない。例えば、フレキシブル基板110、電極111,112,113、電子部品部120、及び硬質基板121の材料は、上述した各部の機能を損なわない範囲内で公知の材料を任意に適用可能である。
【0031】
図3を用いて、実施形態に係るフレキシブル基板110及び硬質基板121上の配線の一例を説明する。
図3は、実施形態に係るフレキシブル基板110及び硬質基板121上の配線の一例を示す図である。
図3の上段には、硬質基板121の上面図における配線を例示する。
図3の中段には、フレキシブル基板110の上面図における配線を例示する。
図3の下段には、フレキシブル基板110及び硬質基板121の正面図における配線を例示する。
【0032】
図3に示すように、硬質基板121の上面には、複数のリード線140が配置される。このリード線140は、電子部品部120に含まれる各種の電子部品を電気的に接続する。なお、
図3の上段に示した3本に分岐した配線はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。硬質基板121上のリード線140は、適宜絶縁され、フレキシブル基板110上のリード線140に接続される。
【0033】
フレキシブル基板110の上面には、3つの電極111,112,113と電子部品部120とを接続するためのリード線140がそれぞれ配置される。また、フレキシブル基板110の位置110A,110B,110Cにはそれぞれスルーホールが形成される。リード線140は、各位置に形成されたスルーホールを介して、3つの電極111,112,113に接続される。各電極111,112,113から伸びるリード線140は、それぞれ絶縁された状態で個別に硬質基板121上のリード線140に接続される。
【0034】
なお、
図3にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、
図3の下段(正面図)では、各基板の上面に配置されたリード線140を各基板から離間して図示したが、これはリード線140を明示する意図であり、実際には両者は離間していない。
【0035】
また、
図3では、硬質基板121上のリード線140が「1箇所」で束ねられる場合を説明したが、数カ所で束ねられてフレキシブル基板110に接続されても良い。ただし、配線の簡略化のためには、束ねられる箇所の数が少ないのが好適である。
【0036】
図4を用いて、実施形態に係る粘着部130の構造の一例を説明する。
図4は、実施形態に係る粘着部130の構造の一例を示す図である。
図4の上段には、粘着部130の正面図を例示する。
図4の下段には、粘着部130の底面図を例示する。
【0037】
粘着部130は、フレキシブル基板110の底面に配置され、フレキシブル基板110及び電子部品部120を対象者の肌に貼り付けるための粘着力を有する部材である。粘着部130は、防水層131、導電ゲル層132、防水層133、吸水層134、及び肌接着層135の5つの層を有する。
【0038】
防水層131は、フレキシブル基板110(電極層)の底面に配置され、防水性及び絶縁性を有する層である。例えば、防水層131は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびナイロン樹脂などの防水性に優れる材質を含む。防水層131は、各電極111,112,113と、後述する各導電ゲル132A,132B,132Cとを接触させるための孔を有する。
図4の例では、防水層131は、直径15mmの円形状の孔を有する。
【0039】
導電ゲル層132は、防水層131の底面に配置され、対象者の肌に接触可能であって、各電極111,112,113と電気的に接続する層である。例えば、導電ゲル層132は、3つの導電ゲル132A,132B,132Cを有する。なお、導電ゲル層132は、生体情報を検出する「検出部」の一例である。
【0040】
各導電ゲル132A,132B,132Cは、導電性を有するハイドロゲル(含水ゲル)である。
図4の例では、各導電ゲル132A,132B,132Cは、直径17mmの円形状である。このうち、導電ゲル132Aは、電極111の底面に配置され、電極111と電気的に接続する。導電ゲル132Bは、電極112の底面に配置され、電極112と電気的に接続する。導電ゲル132Cは、電極113の底面に配置され、電極113と電気的に接続する。
【0041】
なお、導電ゲル層132のうち、3つの導電ゲル132A,132B,132Cが存在しない領域には、何も配置されなくても良いし、任意の部材が配置されても良い。何も配置されない場合には、防水層131と防水層133とが直接接着することとなる。また、任意の部材を配置する場合には、絶縁性及び防水性を有する部材を配置するのが好適である。
【0042】
防水層133は、導電ゲル層132の底面に配置され、防水性及び絶縁性を有する層である。例えば、防水層133は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびナイロン樹脂などの防水性に優れる材質を含む。防水層133は、各導電ゲル132A,132B,132Cと対象者の肌とを接触させるための孔を有する。
図4の例では、防水層133は、直径15mmの円形状の孔を有する。なお、導電ゲル層132の底面とは、導電ゲル層132のうち電極層が隣接する面の反対側の面に対応する。
【0043】
吸水層134は、防水層133の底面に配置され、吸水性を有する層である。例えば、吸水層134は、不織布を含む。なお、吸水層134は、不織布に限らず、例えば吸水性を有する繊維によって構成されていれば良い。このような繊維としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂などを材質として用いることが好ましく、ポリウレタン樹脂またはポリプロピレン樹脂を材質で用いることが特に好ましい。このような材質の繊維であれば、通気性や伸縮性に優れるため、後述する吸水層134の効果が発揮されやすくなる。また、防水層133の底面とは、防水層133のうち導電ゲル層132が隣接する面の反対側の面に対応する。
【0044】
吸水層134は、各導電ゲル132A,132B,132Cと対象者の肌とを接触させるための孔を有する。
図4の例では、吸水層134は、直径22mmの円形状の孔を有する。
【0045】
吸水層134は、対象者の肌で生じた汗(水分)を吸収し、ウェアラブル装置100の外部へ発散させる作用を有する。このため、吸水層134は、ハイドロゲル(導電ゲル層132)が水分を吸収して膨張することを防ぐので、膨張による不快感を低減させることができる。また、吸水層134は、ハイドロゲルの膨張を防ぐことにより、ハイドロゲルが隣接する層から剥離する可能性を低減させる。これにより、ウェアラブル装置100は、汗によって装着者の肌から剥がれる可能性を低減することができ、更に、最長2週間程度の連続貼り付けが可能となる。
【0046】
また、吸水層134を備えることにより、ウェアラブル装置100は、細胞毒性、感作性(アレルギー反応)、及び刺激性など、人体(肌)への影響を低減することができる。特に、吸水層134として不織布を採用した場合、人体への影響をより低減することができる。
【0047】
また、吸水層134の孔は、防水層133の孔よりも大きい。このため、吸水層134の孔の端部(縁)と各導電ゲル132A,132B,132Cとが離間するので、吸水層134により吸収された水分が孔の端部を経て各導電ゲル132A,132B,132Cに吸収される可能性を低減させることができる。
【0048】
肌接着層135は、吸水層134の底面に配置され、対象者の肌に接着可能な層である。例えば、肌接着層135は、アクリル系接着剤又はハイドロコロイドを含む。肌接着層135は、各導電ゲル132A,132B,132Cと対象者の肌とを接触させるための孔を有する。
図4の例では、防水層133は、直径22mmの円形状の孔を有する。
【0049】
なお、
図4にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、導電ゲル層132の形状及び大きさは、図示の内容に限定されるものではなく、任意に変更可能である。導電ゲル層132の形状及び大きさの変更に応じて、防水層131、防水層133、吸水層134、及び肌接着層135の孔(又は溝)の形状及び大きさも変更される。なお、防水層131、防水層133、吸水層134、及び肌接着層135の孔(又は溝)は、開口部の一例である。
【0050】
また、
図4には図示しないが、粘着部130は、上記の5つの層の他に、各層を接着するための接着層を有していても良い。接着層は、液体状やシート状など、任意の接着剤により構成可能である。ただし、上記の各層が隣接する層との接着機能を有する場合には、接着層は省くことも可能である。例えば、肌接着層135が吸水層134との接着機能を有する場合には、吸水層134及び肌接着層135の間には接着層は省くことも可能である。また、防水層133が吸水層134との接着機能を有する場合には、防水層133及び吸水層134の間には接着層は省くことも可能である。
【0051】
また、
図4にて説明した各部の材料は、上述した材料に限定されるものではない。例えば、防水層131、導電ゲル層132、防水層133、吸水層134、及び肌接着層135の材料は、上述した各部の機能を損なわない範囲内で公知の材料を任意に適用可能である。
【0052】
ここで、
図5を用いて、電極111の表面に形成されるめっき層150について説明する。
図5は、実施形態に係るめっき層150の層構成の一例を示す図である。なお、電極112,113の表面に形成されるめっき層は、電極111の表面に形成されるめっき層と同様であるので説明を省略する。
【0053】
なお、
図5における「上方向」は、ウェアラブル装置100が対象者の肌に貼付された場合に、その肌に近づく方向(第2の方向)に対応し、「下方向」は、その肌から離れる方向(第1の方向)に対応する。つまり、
図5において、めっき層150の上方向(第2の方向)には、導電ゲル132Aが配置される。
【0054】
図5に示すように、めっき層150は、電極111の上方向(第2の方向)に配置される。めっき層150は、第1めっき層151、第2めっき層152、第3めっき層153を含む。
【0055】
ここで、電極111は、めっき層150と接触する最外層111Aとして銅を含む層を有する。最外層111Aの厚みは、例えば、33μmである。また、最外層111Aは、ポリイミド(Polyimide:PI)を含む接着層111Bにより接着される。接着層111Bの厚みは、例えば、26μmである。
【0056】
第1めっき層151は、電極111の上方向に配置され、金を含む層である。例えば、第1めっき層151は、金(Au)ストライクである。金ストライクとは、他のめっき層を形成する前に極めて薄く形成されるめっきである。ストライクめっきは、一般的に高電流密度で短時間にめっきされることで形成され、高い耐久性と他のめっき層との高い接着性を有する。このような第1めっき層151であれば、電極部に含まれる銅やニッケルなどの金属イオンが導電ゲル部に溶出するイオンマイグレーションを特に低減することができる。
【0057】
なお、第1めっき層151の厚みは、例えば、0.1nm以上1μm未満が好ましく、更に好ましくは、0.1nm以上100nm未満であり、特に好ましくは、1nm以上50nm未満である。
【0058】
第2めっき層152は、第1めっき層151の上方向に配置され、金以外の金属を含む層である。例えば、第2めっき層152は、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ロジウム(Rh)、または白金(Pt)等により形成される薄膜(めっき)であり、0.1μmの厚みを有する。第2めっき層152は、第1めっき層との接着性やイオンマイグレーションを低減することができるため、パラジウム(Pd)であることが好ましい。
【0059】
なお、第2めっき層152の厚みは、例えば、1nm以上10μm未満が好ましく、更に好ましくは、1nm以上1μm未満であり、特に好ましくは、10nm以上500nm未満である。
【0060】
第3めっき層153は、第2めっき層152の上方向に配置され、金を含む層である。例えば、第3めっき層153は、金(Au)、銀(Ag)、または白金(Pt)等により形成される薄膜であり、0.05μmの厚みを有する。第3めっき層153は、第2めっき層との接着性やイオンマイグレーションを低減することができるため、金(Au)であることが好ましい。
【0061】
なお、第3めっき層153の厚みは、例えば、1nm以上10μmが好ましく、更に好ましくは、1nm以上1μm未満であり、特に好ましくは、10nm以上500nm未満である。
【0062】
なお、めっき層150に含まれる各層は、例えば電解めっき法や無電解めっき法により成膜可能であるが、これに限らず、任意の方法により成膜されてもよい。各層の形成方法としては、公知の如何なる技術も適用可能である。
【0063】
また、
図5には図示しないが、めっき層150の上方向に、印刷層が設けられてもよい。印刷層は、印刷によって形成される層である。印刷層を形成する材質としては金属フィラーや硬化性樹脂等が挙げられる。また、印刷層は1層であってもよいし、2層以上であってもよい。例えば、印刷層としては、第3めっき層の第2の方向に配置され、銀と硬化性樹脂を含む第1印刷層と、第1印刷層の第2の方向に配置され、銀、塩化銀(AgCl)及び硬化性樹脂を含む第2印刷層とが形成される。印刷層を設けることにより、耐久性や耐傷性が向上させることができる。
【0064】
なお、
図5にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、
図5に示した各層の厚みは図示の値に限定されるものではなく、任意に設定可能である。また、例えば、めっき層150は、3つの電極111,112,113のうち少なくとも一つの電極が有していればよい。また、例えば、
図5に示した第2めっき層及び第3めっき層の材料はあくまで一例であり、他の材料に変更されてもよい。また、第3めっき層は必ずしも設けられなくてもよい。めっき層の他の構成については、変形例2にて説明する。
【0065】
図6を用いて、実施形態に係るウェアラブル装置100の貼付方法を説明する。
図6は、実施形態に係るウェアラブル装置100の貼付方法を説明するための図である。
【0066】
例えば、ウェアラブル装置100は、フレキシブル基板110、電子部品部120、及び粘着部130が一体となった状態で流通される。つまり、
図6に示すように、フレキシブル基板110及び電子部品部120は、粘着部130の上面に予め接着されている。なお、粘着部130の上面とは、防水層131の上面に対応し、防水層131のうち導電ゲル層132が隣接する面の反対側の面に対応する。
【0067】
また、
図6では記載されていないが、ウェアラブル装置100の底面(つまり、肌接着層135の底面)は剥離紙で覆われている。ウェアラブル装置100の利用者は、剥離紙を剥離して肌接着層135の底面を露出させる。そして、利用者は、肌接着層135の底面を対象者の肌の任意の位置に貼付する。なお、粘着部130の底面とは、肌接着層135の底面に対応し、肌接着層135のうち吸水層134が隣接する面の反対側の面に対応する。また、ウェアラブル装置100の利用者は、医師等の医療従事者、対象者、対象者を医療面或いは生活面で支援する者などに対応する。
【0068】
すなわち、ウェアラブル装置100は、人体(肌)に近い側から順に、肌接着層135、吸水層134、防水層133、導電ゲル層132、防水層131、電極層(電極111,112,113)、フレキシブル層(フレキシブル基板110)、隔離層(硬質基板121)、及び電子部品層(電子部品部120)を有する層構成である。そして、肌の任意の位置に貼付されたウェアラブル装置100の電極部(電極111,112,113)は導電ゲル部(132)を介して人体から生体情報を検出する。
【0069】
なお、
図6にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、
図6では、代表例として、フレキシブル基板110、電子部品部120、及び粘着部130が一体となった状態で流通される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ウェアラブル装置100に含まれる各部は、個別の業者により製造・流通されても良い。
【0070】
また、
図6では、図示の都合上、各層が同一の厚みを有するかのように示したが、各層の厚みは任意に設定可能である。また、肌接着層135、吸水層134、及び防水層133の厚みは、肌接着層135、吸水層134、及び防水層133の孔の大きさ(直径)と比較して極めて薄いので、ウェアラブル装置100が対象者の肌に貼付された場合には、導電ゲル層132は対象者の肌に容易に接触される。
【0071】
なお、上記の実施形態では、3つの電極111,112,113を有する層を「電極層」と記載したが、各電極111,112,113は、フレキシブル層や隔離層と比較して小さく、点状に存在しているため、必ずしも「層」と称されなくても良い。例えば、3つの電極111,112,113は、「電極部」と称されても良い。
【0072】
また、上記の実施形態では、3つの導電ゲル132A,132B,132Cを有する層を「導電ゲル層」と記載したが、各導電ゲル132A,132B,132Cは、フレキシブル層や隔離層と比較して小さく、点状に存在しているため、必ずしも「層」と称されなくても良い。例えば、3つの導電ゲル132A,132B,132Cは、「導電ゲル部」と称されても良い。
【0073】
上述してきたように、ウェアラブル装置100は、検出部(電極層及び導電ゲル層132)と、フレキシブル層(フレキシブル基板110)と、隔離層(硬質基板121)と、電子部品層(電子部品部120)とを備える。検出部は、生体情報を検出する。フレキシブル層は、検出部と電気的に接続される導体を有する。隔離層は、フレキシブル層に積層され、フレキシブル層より硬い。電子部品層は、隔離層に積層され、導体と電気的に接続される電子部品を含む。これによれば、ウェアラブル装置100は、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能である。例えば、ウェアラブル装置100は、フレキシブル層の撓みから電子部品層を隔離するための隔離層を有するので、撓みによる電子部品層の破損リスクを低減するので、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能となる。
【0074】
言い換えると、ウェアラブル装置100は、検出部と、第1の層と、第2の層と、第3の層とを備える。検出部は、生体情報を検出する。第1の層は、検出部の第1の方向に配置され、検出部と電気的に接続される導体を有し、可撓性を有する。第2の層は、第1の層の第1の方向に配置され、第1の層より硬い。第3の層は、第2の層の第1の方向に配置され、導体と電気的に接続される電子部品を含む。また、ウェアラブル装置100は、第4の層と、第5の層とを備える。第4の層は、検出部の第1の方向とは反対の第2の方向に配置され、防水性を有する。第5の層は、第4の層の第2の方向に配置され、吸水性を有する。なお、上記の「第1」~「第5」の記載は、各層を区別するために用いたものであり、順序などを意味するものではない。
【0075】
また、ウェアラブル装置100は、導電ゲル層132と、電極層(電極111,112,113)と、電子部品層(電子部品部120)と、フレキシブル層(フレキシブル基板110)と、防水層133と、吸水層134とを備える。導電ゲル層132は、対象者の肌に接触可能である。電極層は、導電ゲル層132と電気的に接続される電極を有する。電子部品層は、電子部品を含む。フレキシブル層は、第1面に電極層が配置され、第1面の反対側の第2面に電子部品層が配置され、電極層と電子部品層とを電気的に接続する導体を有する。防水層133は、導電ゲル層132のうち電極層が隣接する面の反対側の面に配置される。吸水層134は、防水層133のうち導電ゲル層132が隣接する面の反対側の面に配置される。これによれば、ウェアラブル装置100は、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能である。例えば、ウェアラブル装置100は、汗を吸収してウェアラブル装置100の外部へ発散させる吸水層134を有するので、ハイドロゲル(導電ゲル層132)が水分を吸収して膨張し、隣接する層から剥離する可能性を低減させる。この結果、ウェアラブル装置100は、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能である。
【0076】
言い換えると、ウェアラブル装置100は、第1の層と、第2の層と、導電ゲル部と、電極部と、第3の層と、第4の層とを備える。第1の層は、吸水性を有する。第2の層は、第1の層の第1の方向に配置され、防水性を有する。導電ゲル部は、第2の層の第1の方向に配置され、対象者の肌に接触可能である。電極部は、導電ゲル部の第1の方向に配置され、導電ゲル部と電気的に接続される。第3の層は、電極部の第1の方向に配置され、電極部と電気的に接続される導体を有し、可撓性を有する。第4の層は、第3の層の第1の方向に配置され、導体によって電気的に接続される電子部品を含む。なお、上記の「第1」~「第4」の記載は、各層を区別するために用いたものであり、順序などを意味するものではない。
【0077】
言い換えると、ウェアラブル装置100は、検出部(電極)と、可撓性基板と、第1めっき層と、第2めっき層とを有する。可撓性基板は、検出部の第1の方向に配置され、検出部と電気的に接続される電子部品を有し、可撓性を有する。第1めっき層は、電極部の第2の方向に配置され、金を含む。第2めっき層は、第1めっき層の第2の方向に配置され、金以外の金属を含む。これによれば、ウェアラブル装置100は、電極部に含まれる銅やニッケルなどの金属イオンが導電ゲル部に溶出するイオンマイグレーションを低減することができる。これにより、ウェアラブル装置100は、導電ゲル部への金属イオンの溶出に起因する痒みや肌荒れなどを低減することができるので、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能となる。
【0078】
(変形例1)
上記の実施形態では、吸水層134の孔が防水層133の孔よりも大きい場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、吸水層134の孔は、防水層133の孔と同じ大きさであっても良い。
【0079】
図7を用いて、変形例1に係る粘着部130の構造の一例を説明する。
図7は、変形例1に係る粘着部130の構造の一例を示す図である。
図4の上段には、粘着部130の正面図を例示する。
図4の下段には、粘着部130の底面図を例示する。
【0080】
図4に示すように、吸水層134の孔は、直径15mmであり、防水層133の孔と同じ大きさである。この場合、吸水層134の孔の端部(縁)と各導電ゲル132A,132B,132Cとが近接するので、吸水層134により吸収された水分が孔の端部を経て各導電ゲル132A,132B,132Cに吸収される可能性がある。
【0081】
そこで、防水層133は、30μm以上150μm未満の厚みを有し、更に好ましくは、75μm以上120μm未満の厚みを有する。このように、防水層133に一定以上の厚みを持たせることにより、吸水層134の孔の端部(縁)と各導電ゲル132A,132B,132Cとが離間するので、吸水層134により吸収された水分が孔の端部を経て各導電ゲル132A,132B,132Cに吸収される可能性を低減させることができる。また、防水層133の厚みを一定未満とすることにより、ウェアラブル装置100が装着者の動きに追随しやすくなるため、より生体情報を安定的に取得することが可能になる。
【0082】
また、
図7の例では、肌接着層135の孔は、直径15mmであり、防水層133の孔及び吸水層134の孔と同じ大きさである。これにより、防水層133、吸水層134、及び肌接着層135を重畳した後に孔を形成させることができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0083】
(変形例2)
また、めっき層150の層構成は、
図5の層構成に限定されるものではない。
図8を用いて、他の層構成について説明する。
図8は、変形例2に係るめっき層150の層構成の一例を示す図である。
【0084】
図8に示すように、変形例2に係るめっき層150は、電極111の上方向(第2の方向)に配置され、第1めっき層151及び第2めっき層154を含む。ここで、
図8に示す電極111及び第1めっき層151は、
図5に示した電極111及び第1めっき層151と同様であるので説明を省略する。
【0085】
第2めっき層154は、第1めっき層151の上方向に配置され、銀(Ag)を含む層である。例えば、第2めっき層154は、銀により形成される薄膜(めっき)であり、0.2μmの厚みを有する。また、第2めっき層154の表面は、耐久性や耐傷性が向上させるために酸化防止処理が施されてもよい。
【0086】
なお、第2めっき層154の厚みは、例えば、1nm以上10μmが好ましく、更に好ましくは、1nm以上1μm未満であり、特に好ましくは、10nm以上500nm未満である。
【0087】
これによれば、変形例2に係るめっき層150は、電極部に含まれる金属イオンが導電ゲル部に溶出するイオンマイグレーションを低減することができる。これにより、変形例2に係るめっき層150は、導電ゲル部への金属イオンの溶出に起因する痒みや肌荒れなどを低減することができるので、連続的な生体情報を安定的に取得することが可能となる。
【0088】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0089】
(検出方法)
本実施形態は、ウェアラブル装置100を用いて取得した生体情報に基づいて、対象者の異常(心房細動などの心臓疾患)を検出することを含む検出方法として提供可能である。例えば、検出方法は、72時間以上の生体情報に基づいて、対象者の異常を検出する。また、このような検出時間は、長時間であればより高い精度で対象者の異常の検出を行うことが可能であり、好ましくは120時間以上、更に好ましくは、168時間以上の検出時間に基づいて、対象者の異常の検出を行うことが好ましい。なお、生体情報に基づいて異常を検出する方法は、公知の方法を任意に適用可能である。
【0090】
上述の実施形態は、以上の変形例と任意に組み合わせることができるし、以上の変形例同士を任意に組み合わせても良い。
【0091】
[実施例]
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0092】
[実施例A]
実施例Aにより、屈曲に対する耐久性と長期利用における不快性について検討した。上述した実施形態にて説明した構成に基づいて、表1に示す実施例A1~A7、比較例A1~A2にそれぞれ対応するウェアラブル装置をそれぞれ作成した。なお、表1には、各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置のデバイス構成及び評価結果を示す。
【0093】
【0094】
表1の例では、各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置のデバイス構成をそれぞれ変更することにより作成した。変更対象としたデバイス構成は、層構成、隔離層面積、隔離層材質、及び隔離層位置の4項目である。
【0095】
層構成は、上述した実施形態にて説明した層構成である。つまり、表1に示す層構成は、人体(肌)に近い側から順に、肌接着層135、吸水層134、防水層133、導電ゲル層132、防水層131、電極層(電極111,112,113)、フレキシブル層(フレキシブル基板110)、隔離層(硬質基板121)、及び電子部品層(電子部品部120)の各層を有するか否かを示す。表1において、「○」印は、その層を有することを示し、「‐」印は、その層を有しないことを示す。
【0096】
各層の詳細な構成(材質)としては、肌接着層135としてアクリル系接着剤およびハイドロコロイドを含む層を用い、吸水層134としてポリウレタン樹脂を材質とする不織布を用い、防水層133および防水層131にはポリエステル樹脂を材質とする層を用い、フレキシブル基板110にはポリイミド樹脂を材質とする厚み0.18mmの基板を用いた。また、電極層は、
図2及び
図6と同様に、ウェアラブル装置の長手方向における両端部に電極111および電極112を配置し、それら2つの電極の間のうち電極112に近い位置に電極113を配置した。また、電極111および電極112を正極および負極とし、電極113を基準電極とした。なお、隔離層の材質は表1の「隔離層材質」にて後述するものであり、それぞれ厚みは0.8mmである。
【0097】
隔離層面積は、フレキシブル層の面積に対する隔離層の面積の割合[%]を示す。なお、「‐」印は、該当データが無い(隔離層を有しない)ことを示す。
【0098】
隔離層材質は、隔離層の材質(材料)を示す。表1の例では、隔離層材質は、ガラスエポキシ、紙フェノール、及びガラスポリイミドのいずれかが選択された。なお、「‐」印は、該当データが無い(隔離層を有しない)ことを示す。
【0099】
隔離層位置は、フレキシブル層における隔離層の位置を示す。表1の例では、隔離層位置は、端部又は中央が選択された。ここで、端部とは、ウェアラブル装置の長手方向における両端部のうちいずれか一方であり、電極111又は電極112に対応する位置である。また、中央とは、電極111と電極112の間であり、また電極113に対応しない位置である。なお、「‐」印は、該当データが無い(隔離層を有しない)ことを示す。
【0100】
表1に示すように、実施例A1のウェアラブル装置は、肌接着層135、吸水層134、防水層133、導電ゲル層132、防水層131、電極層、フレキシブル層、隔離層、及び電子部品層の9層を有する。また、実施例A1のウェアラブル装置は、隔離層面積が「35%」であり、隔離層材質が「ガラスエポキシ」であり、隔離層位置が「端部」である。
【0101】
実施例A2のウェアラブル装置は、隔離層面積が「15%」である。また、実施例A2のウェアラブル装置の層構成、隔離層材質、及び隔離層位置は、実施例A1の層構成、隔離層材質、及び隔離層位置と同じである。
【0102】
実施例A3のウェアラブル装置は、隔離層面積が「45%」である。また、実施例A3のウェアラブル装置の層構成、隔離層材質、及び隔離層位置は、実施例A1の層構成、隔離層材質、及び隔離層位置と同じである。
【0103】
実施例A4のウェアラブル装置は、隔離層材質が「紙フェノール」である。また、実施例A4のウェアラブル装置の層構成、隔離層面積、及び隔離層位置は、実施例A1の層構成、隔離層面積、及び隔離層位置と同じである。
【0104】
実施例A5のウェアラブル装置は、隔離層材質が「ガラスポリイミド」である。また、実施例A5のウェアラブル装置の層構成、隔離層面積、及び隔離層位置は、実施例A1の層構成、隔離層面積、及び隔離層位置と同じである。
【0105】
実施例A6のウェアラブル装置は、隔離層位置が「中央」である。また、実施例A6のウェアラブル装置の層構成、隔離層面積、及び隔離層材質は、実施例A1の層構成、隔離層面積、及び隔離層材質と同じである。
【0106】
実施例A7のウェアラブル装置は、層構成において吸水層134を有さず、肌接着層135、防水層133、導電ゲル層132、防水層131、電極層、フレキシブル層、隔離層、及び電子部品層の8層を有する。また、実施例A7のウェアラブル装置の隔離層面積、隔離層材質、及び隔離層位置は、実施例A1の隔離層面積、隔離層材質、及び隔離層位置と同じである。
【0107】
比較例A1のウェアラブル装置は、層構成において吸水層134及び隔離層を有さず、肌接着層135、防水層133、導電ゲル層132、防水層131、電極層、フレキシブル層、及び電子部品層の7層を有する。また、比較例A1のウェアラブル装置は、隔離層を有しないので、隔離層面積、隔離層材質、及び隔離層位置の該当データが無い。
【0108】
比較例A2のウェアラブル装置は、層構成において吸水層134、防水層133、及び隔離層を有さず、肌接着層135、導電ゲル層132、防水層131、電極層、フレキシブル層、及び電子部品層の6層を有する。また、比較例A2のウェアラブル装置は、隔離層を有しないので、隔離層面積、隔離層材質、及び隔離層位置の該当データが無い。
【0109】
次に、各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置の評価について説明する。各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置の評価は、屈曲試験1、屈曲試験2、データ精度、防水性、及び不快性の5項目について行った。
【0110】
屈曲試験1は、屈曲試験用の試験装置を用いて、各ウェアラブル装置の曲げ伸ばしを100回行う試験である。ここで、この試験装置は、板状の試験対象物の曲げ伸ばしを自動的に繰り返すことが可能な装置である。試験装置は、相対角度が可変である2枚の板部材を台座として備え、この2枚の板部材に試験対象物の両端をそれぞれ固定することで、試験対象物の曲げ伸ばしを行う。本実施例では、ウェアラブル装置の両端15mmをテープで台座に固定して、屈曲半径17mm、屈曲角度180°となる曲げ伸ばしを繰り返し行った。100回の曲げ伸ばしの後、各ウェアラブル装置を使用して破損状況を評価した。破損状況は、「A」、「B」、及び「C」の3段階で評価した。「A」は、試験前と変わらず利用できること、つまり、破損が見られないことを示す。「B」は、ウェアラブル装置が動作したものの、取得したデータに一部損出が見られたことを示す。「C」は、ウェアラブル装置が動作しなくなったことを示す。
【0111】
屈曲試験2は、屈曲試験1で用いた試験装置を用いて、各ウェアラブル装置の曲げ伸ばしを1000回行う試験である。1000回の曲げ伸ばしの後、各ウェアラブル装置を使用して破損状況を評価した。破損状況の評価基準は、屈曲試験1と同様であるので説明を省略する。
【0112】
データ精度は、各ウェアラブル装置を7日間使用して取得したデータ(心電信号)の精度を、データの損出やノイズの少なさに基づいて評価した。データ精度は、「A」、「B」、及び「C」の3段階で評価した。「A」は、データの損出やノイズが見られないことを示す。「B」は、データの一部に損出やノイズが見られたことを示す。「C」は、ウェアラブル装置が破損し、7日間分のデータが得られなかったことを示す。
【0113】
防水性は、各ウェアラブル装置を、気温30度、湿度95%の環境下で7日間放置した後の導電ゲル層132の膨張率に基づいて評価した。膨張率は、「A」及び「B」の2段階で評価した。「A」は、膨張率が20%未満であることを示す。「B」は、膨張率が20%以上であることを示す。
【0114】
不快性は、各ウェアラブル装置を7日間装着した際の装着者の不快感を評価したものである。不快感は、「A」、「B」、及び「C」の3段階で評価した。「A」は、特に不快とは感じなかったことを示す。「B」は、一部かゆみを感じたことを示す。「C」は、強くかゆみを感じたことを示す。なお、不快性の評価において生じたかゆみは、概ね装着から72時間経過後に見られた。また、強いかゆみは、概ね装着から120時間経過後に見られた。
【0115】
実施例A1のウェアラブル装置では、屈曲試験1、屈曲試験2、データ精度、防水性、及び不快性の5項目において「A」の評価結果が得られた。実施例A1のウェアラブル装置は、他の実施例及び比較例のウェアラブル装置と比較して最も良好な結果となった。
【0116】
実施例A2のウェアラブル装置では、屈曲試験1及び屈曲試験2において「B」の評価結果が得られた。この結果から、隔離層面積を一定以上の大きさにすることで、断線するリスクを低減できることが示唆された。
【0117】
実施例A3のウェアラブル装置では、データ精度及び不快性において「B」の評価結果が得られた。この結果から、隔離層の面積を小さくすることで、ウェアラブル装置の形状が身体の動作に追従し易くなり、剥離を防ぐことができる可能性が示唆された。
【0118】
実施例A4のウェアラブル装置では、屈曲試験2において「B」の評価結果が得られた。この結果から、隔離層を一定(紙フェノール)以上の硬さにすることで、隔離層自体の屈曲を防ぎ、断線するリスクを低減できることが示唆された。
【0119】
実施例A5のウェアラブル装置では、データ精度及び不快性において「B」の評価結果が得られた。この結果から、隔離層を一定(ガラスポリイミド)以下の硬さにすることで、ウェアラブル装置の形状が身体の動作に追従し易くなり、剥離を防ぐことができる可能性が示唆された。
【0120】
実施例A6のウェアラブル装置では、屈曲試験2、データ精度、及び不快性において「B」の評価結果が得られた。ここで、隔離層が中央部にある場合には、隔離層の両端でフレキシブル層が屈曲するため、隔離層が端部にある場合(屈曲点は1箇所)と比較して屈曲点が2箇所に増加する。この結果から、屈曲点を減少させることで断線するリスクを低減できることが示唆された。また、屈曲点を減少させることで身体の動作に追従し易くなり、剥離を防ぐことができる可能性が示唆された。
【0121】
実施例A7のウェアラブル装置では、不快性において「B」の評価結果が得られた。この結果から、吸水層が有ることで、汗がウェアラブル装置の外部へ発散し易くなり、かゆみを低減できる可能性が示唆された。
【0122】
比較例A1のウェアラブル装置では、屈曲試験1及び不快性において「B」の評価結果が得られ、屈曲試験2において「C」の評価結果が得られた。この結果から、隔離層が無い場合には、フレキシブル層に装置としての重要な配線が全て配置されることとなり、断線するリスクが上昇することが示唆された。また、吸水層が無い場合には、汗がウェアラブル装置の外部へ発散し難くなり、かゆみに繋がる可能性が示唆された。
【0123】
比較例A2のウェアラブル装置では、屈曲試験1、データ精度、及び防水性において「B」の評価結果が得られ、屈曲試験2及び不快性において「C」の評価結果が得られた。この結果から、隔離層が無い場合には、フレキシブル層に装置としての重要な配線が全て配置されることとなり、断線するリスクが上昇することが示唆された。また、吸水層134が無い場合には、汗がウェアラブル装置の外部へ発散し難くなり、かゆみに繋がる可能性が示唆された。また、吸水層134及び防水層133が無い場合には、ウェアラブル装置の肌接着面で生じた汗の多くがハイドロゲル(導電ゲル層132)に吸収されて大きく膨張し、剥離するリスクが上昇することが示唆された。
【0124】
[実施例B]
次に、実施例Bにより、イオンマイグレーションについて検討した。上述した実施例A1にて説明した構成に基づいて、表2に示す実施例B1~B2、比較例B1~B4にそれぞれ対応するウェアラブル装置をそれぞれ作成した。なお、表2には、各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置のめっき構成及び評価結果を示す。
【0125】
【0126】
表2の例では、各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置のフレキシブル基板上の電極部表面に形成されるめっき層の層構成をそれぞれ変更することにより作成した。変更対象としためっき層の層構成は、第1めっき層、第2めっき層、及び第3めっき層とした。
【0127】
めっき層の層構成は、上述した実施形態にて説明した層構成に対応する。つまり、表2に示すめっき層の層構成は、フレキシブル基板に近い側から順に、第1めっき層、第2めっき層、及び第3めっき層の各層を有するか否かを示す。なお、表2において、めっき層中の主成分として、金をAu、パラジウムをPd、銀をAg、ニッケルをNiと表記した。また、「‐」印は、その層を有しないことを示す。
【0128】
めっき層の詳細な構成としては、第1めっき層のうち、Auストライク層の厚みは10nm、Ni層の厚みは3μmとした。また、第2めっき層及び第3めっき層のうち、Pd層の厚みは100nmとし、Ag層の厚みは150nmとし、Au層の厚みは100nmとした。
【0129】
なお、Auストライク層を形成する際のめっき液としては、無電解金めっき液(例えば、奥野製薬工業株式会社製のフラッシュゴールドNB(登録商標)又はフラッシュゴールドV(登録商標))や、電解液めっき液(例えば、日本高純度化学社製のアシドストライク(登録商標))等を用いて形成することができる。これらの中でも緻密かつ均一なめっきを行い得ることから、無電解液めっき液を用いてAuストライク層を形成することが好ましい。
【0130】
なお、実施例Bの各実施例及び比較例について、表2には示さないが、以下の構成とした。つまり、印刷層の詳細な構成(材質)としては、第1印刷層として銀及び熱硬化性樹脂を材質とする厚み10μmの層を用い、第2印刷層として銀、塩化銀、及び熱硬化性樹脂を材質とする厚み10μmの層を用いた。また、電極層は、
図2及び
図5と同様に、ウェアラブル装置の長手方向における両端部に電極111および電極112を配置し、それら2つの電極の間のうち電極112に近い位置に電極113を配置した。また、電極111および電極112を正極および負極とし、電極113を基準電極とした。
【0131】
次に、各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置の評価について説明する。各実施例及び比較例に係るウェアラブル装置の評価は、銅(Cu)溶出量、ニッケル(Ni)溶出量、不快性、外観評価1、及び外観評価2の5項目について行った。
【0132】
Cu、Ni溶出量試験は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)を用いて、ウェアラブル装置に貼付した導電ゲルに溶出したCuとNiを検出する試験である。ウェアラブル装置を作動させ、導電ゲルを7日間貼り付けた後、導電ゲルに中の金属溶出状況を評価した。溶出状況は、「A」、「B」、及び「C」の3段階で評価した。「A」は、100ppm未満、つまり、溶出がほぼ見られないことを示す。「B」は、100ppm以上300ppm未満、取得したデータに一部溶出が見られたことを示す。「C」は、300ppm以上を示す。
【0133】
外観変化1は、各ウェアラブル装置を7日間装着した後の導電ゲルの変色を評価したものである。外観変化1は、「A」、「B」、及び「C」の3段階で評価した。「A」は、変色が見られなかったことを示す。「B」は、一部変色したことを示す。「C」は、強く変色したことを示す。
【0134】
外観変化2は、各ウェアラブル装置の7日間装着を20回繰り返した後の導電ゲルの着色変化を評価したものである。外観変化2は、「A」、「B」、及び「C」の3段階で評価した。「A」は、変色が見られなかったことを示す。「B」は、一部変色したことを示す。「C」は、強く変色したことを示す。
【0135】
実施例B1のウェアラブル装置では、Cu溶出量、Ni溶出量、外観変化1、及び外観変化2の4項目において「A」の評価結果が得られた。実施例B1のウェアラブル装置は、他の実施例及び比較例のウェアラブル装置と比較して最も良好な結果となった。
【0136】
実施例B2のウェアラブル装置では、Cu溶出量、Ni溶出量、及び外観変化1において「A」の評価結果が得られ、外観変化2において「B」の評価結果が得られた。この結果から、第2めっき層として銀を用い、第3めっき層を設けない場合においては、長期利用の場合に導電ゲルに一部変色が見られたものの、その他の評価項目では実施例B1と同等の評価結果が得られた。
【0137】
比較例B1のウェアラブル装置では、Ni溶出量において「A」の評価結果が得られ、外観変化1において「B」の評価結果が得られ、Cu溶出量及び外観変化2において「C」の評価結果が得られた。この結果から、めっき層として金ストライク層のみを用いた場合には、Cuの100ppm以上の溶出が見られ、一部に痒みや導電ゲルの変色が見られた。
【0138】
比較例B2のウェアラブル装置では、Ni溶出量、及び外観変化1において「B」の評価結果が得られ、Cu溶出量及び外観変化2において「C」の評価結果が得られた。この結果から、第1めっき層として金ストライク層を用いずに、他の3層のめっき層を用いた場合には、Cu、Niの100ppm以上の溶出が見られ、一部に痒みや導電ゲルの変色が見られた。
【0139】
比較例B3のウェアラブル装置では、Cu溶出量、Ni溶出量、外観変化1、及び外観変化2の4項目において「C」の評価結果が得られた。比較例B3のウェアラブル装置は、他の実施例及び比較例のウェアラブル装置と比較して最も悪い結果となった。
【0140】
比較例B4のウェアラブル装置では、Cu溶出量、外観変化1、及び外観変化2の4項目において「C」の評価結果が得られ、Ni溶出量において「A」の評価結果が得られた。この結果から、比較例B4のウェアラブル装置は、Ni溶出量が100ppm未満であったものの、比較例B3のウェアラブル装置に次いで悪い結果となった。
【0141】
以上、実施例Bにより、電極部の表面に金ストライクのめっき層を設けることと、金ストライクの表面に金以外の金属を含むめっき層を設けることによる有効性が確認された。
【符号の説明】
【0142】
100 ウェアラブル装置
110 フレキシブル基板
111,112,113 電極
120 電子部品部
121 硬質基板
130 粘着部
131,133 防水層
132 導電ゲル層
134 吸水層
135 肌接着層
140 リード線
150 めっき層
151 第1めっき層
152 第2めっき層
153 第3めっき層