(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074286
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用負極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20230522BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230522BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230522BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/36 C
H01M4/587
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187158
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慎也
(72)【発明者】
【氏名】山村 英行
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB08
5H050DA03
5H050FA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA01
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA05
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】電池特性を向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用負極を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池用負極1は、負極集電体10と、負極集電体10上に形成された、負極活物質12を含む負極合材層11と、を備える。負極活物質12は、黒鉛粒子13の表面に金属材料14が付着した構造を備える。金属材料14は黒鉛粒子13よりも磁化しやすい材料を用いて構成されており、黒鉛粒子13は、負極合材層11の厚さ方向に配向している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体上に形成された、負極活物質を含む負極合材層と、を備え、
前記負極活物質は、黒鉛粒子の表面に金属材料が付着した構造を備え、
前記金属材料は前記黒鉛粒子よりも磁化しやすい材料を用いて構成されており、
前記黒鉛粒子は、前記負極合材層の厚さ方向に配向している、
リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項2】
前記黒鉛粒子は所定のアスペクト比を有する材料であり、
前記金属材料は、前記黒鉛粒子の長手方向側面に付着している、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項3】
前記黒鉛粒子の表面全体に対する前記金属材料の被覆率が50%以下である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項4】
前記金属材料がFeまたはNiである、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極を有するリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
基材上に配置されている黒鉛粒子をプレスし、当該プレス後の黒鉛粒子の表面に金属材料を付着させ、金属材料が表面に付着した黒鉛粒子を含む負極活物質を形成する工程と、
少なくとも前記負極活物質と溶媒とを含む負極ペーストを形成する工程と、
前記負極ペーストを負極集電体上に塗工して負極合材層を形成する工程と、を備え、
前記負極ペーストを前記負極集電体上に塗工しながら、及び/又は前記負極ペーストを前記負極集電体上に塗工した後に、前記負極集電体と略垂直な方向に磁場を印加する、
リチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項7】
前記負極活物質を形成する工程において、
前記基材上に配置されている黒鉛粒子をプレスして、前記基材の表面に対して略平行なグラフェン構造を有する黒鉛粒子を形成し、
前記グラフェン構造を有する黒鉛粒子の表面に前記金属材料を付着させる、
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
前記負極集電体と略垂直な方向に磁場を印加することで、前記負極ペーストに含まれる前記黒鉛粒子を前記負極合材層の厚さ方向に配向させる、請求項6または7に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
前記黒鉛粒子は所定のアスペクト比を有し、
前記金属材料は、前記黒鉛粒子の長手方向側面に付着している、
請求項6~8のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
前記黒鉛粒子の表面全体に対する前記金属材料の被覆率を50%以下とする、請求項6~9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項11】
前記金属材料がFeまたはNiである、請求項6~10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出する正極および負極の間を、電解質中のリチウムイオンが移動することで充放電可能な二次電池である。特許文献1には、負極集電体上に形成された黒鉛系負極活物質層が粘性状態にある間に、負極活物質層に磁界を付与してリチウムイオン二次電池用負極を製造方法する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、リチウムイオン二次電池用負極を製造方法する際に、負極活物質層に磁界を印加し、負極活物質層中の黒鉛が磁束線の方向に配向するようにしている。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、負極活物質層中(負極合材層中)の黒鉛の一部に磁場がかからない領域が存在するため、負極合材層中の黒鉛を十分に配向させることができない。このため、リチウムイオン二次電池の特性(サイクル特性など)が悪化するという問題があった。
【0005】
上記課題に鑑み本発明の目的は、電池特性を向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用負極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池用負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成された、負極活物質を含む負極合材層と、を備える。前記負極活物質は、黒鉛粒子の表面に金属材料が付着した構造を備え、前記金属材料は前記黒鉛粒子よりも磁化しやすい材料を用いて構成されており、前記黒鉛粒子は、前記負極合材層の厚さ方向に配向している。
【0007】
本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池は、上述のリチウムイオン二次電池用負極を有するリチウムイオン二次電池である。
【0008】
本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、基材上に配置されている黒鉛粒子をプレスし、当該プレス後の黒鉛粒子の表面に金属材料を付着させ、金属材料が表面に付着した黒鉛粒子を含む負極活物質を形成する工程と、少なくとも前記負極活物質と溶媒とを含む負極ペーストを形成する工程と、前記負極ペーストを負極集電体上に塗工して負極合材層を形成する工程と、を備え、前記負極ペーストを前記負極集電体上に塗工しながら、及び/又は前記負極ペーストを前記負極集電体上に塗工した後に、前記負極集電体と略垂直な方向に磁場を印加する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、電池特性を向上させることが可能なリチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用負極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の構成例を説明するための断面図である。
【
図2】実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の負極合材層の構成例を説明するための断面図である。
【
図3】従来技術にかかるリチウムイオン二次電池用負極の負極合材層の構成例を説明するための断面図である。
【
図4】実施の形態にかかる負極活物質の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施の形態にかかる負極活物質の製造方法を説明するための断面図である。
【
図6】実施の形態にかかる負極活物質の製造方法を説明するための断面図である。
【
図7】実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極1は、負極集電体10と、負極集電体10上に形成された負極合材層11と、を備える。
図1では、負極集電体10の片面に負極合材層11が形成されている例を示しているが、負極合材層11は負極集電体10の両面に形成されていてもよい。
【0012】
負極集電体10は、金属箔や金属板で構成されている。本実施の形態では、リチウムイオン二次電池用負極を製造する際に磁場を印加するので、負極集電体10には、強磁性体以外の金属材料を用いることが好ましい。具体的には負極集電体10として銅を用いることが好ましい。負極集電体10の厚さは、例えば5μm~50μm程度とすることができる。負極集電体10上には負極合材層11が形成されている。負極合材層11の厚さは、例えば10μm~200μm程度とすることができる。なお、負極集電体10および負極合材層11の厚さは一例であり、本実施の形態では負極集電体10および負極合材層11の厚さはこれ以外の厚さとしてもよい。
【0013】
図2は、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の負極合材層の構成例を説明するための断面図である。
図2に示すように、負極合材層11は、リチウムを吸蔵・放出可能な負極活物質12を含む。
図2に示すように、負極活物質12は、黒鉛粒子13の表面に金属材料14が付着した構造を備える。金属材料14は黒鉛粒子13よりも磁化しやすい材料を用いて構成されている。また、黒鉛粒子13は、負極合材層11の厚さ方向に配向している。
【0014】
図2に示すように、黒鉛粒子13は、所定のアスペクト比を有する材料であってもよい。この場合、黒鉛粒子13の長手方向側面に金属材料14を付着させる。また、黒鉛粒子13の表面全体に対する金属材料14の被覆率は50%以下とすることが好ましい。黒鉛粒子13の表面に金属材料14を多く被覆させると、黒鉛粒子13の反応面を阻害させるからである。また、本実施の形態のように、電子伝導性の高い金属材料14が黒鉛粒子13の表面に存在することで、負極活物質12間の電子抵抗を低減できる。本実施の形態において黒鉛粒子13は、層状のグラフェン構造15が複数積層されて形成されていてもよい。
【0015】
また、本実施の形態では、後述するように磁場を印加して黒鉛粒子13を配向させるので、金属材料14は事前に黒鉛粒子13の表面に被覆させる。例えば、金属材料14には、Fe、Niなどを用いることができる。ここで、金属材料14は黒鉛粒子13よりも磁化しやすい材料である。一例を挙げると、黒鉛粒子13(グラファイト)の体積磁化率は-6.1×104であるのに対して、Feの体積磁化率は200000である。
【0016】
負極活物質12の粒径は、例えば5μm~15μm程度とすることができる。なお、本発明において各々の材料の粒径はメジアン径D50であり、レーザー回折・散乱法を用いて測定した値である。
【0017】
なお、
図1、
図2に示す負極合材層11は、負極活物質12以外にバインダーや増粘剤等を含んでいてもよい。バインダーには、例えばポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系のバインダー、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。また、増粘剤には、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0018】
図3は、従来技術にかかるリチウムイオン二次電池用負極の負極合材層の構成例を説明するための断面図である。
図3に示すように、従来技術にかかるリチウムイオン二次電池用負極101は、負極集電体110と、負極集電体110上に形成された負極合材層111と、を備える。従来技術では、リチウムイオン二次電池用負極101を作製する際に、負極合材層111中の黒鉛の一部に磁場がかからない領域が存在するため、負極合材層中の黒鉛を十分に配向させることができないという問題があった。このため、リチウムイオン二次電池の特性(サイクル特性など)が悪化するという問題があった。
【0019】
これに対して本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極1では、負極活物質12を構成する黒鉛粒子13の表面に、黒鉛粒子13よりも磁化しやすい金属材料14を付着させ、黒鉛粒子13が負極合材層11の厚さ方向に配向するように構成している。したがって、本実施の形態にかかる発明により、負極合材層11中の黒鉛粒子13が十分に配向しているリチウムイオン二次電池用負極を提供することができる。
【0020】
このように、負極合材層11中の黒鉛粒子13が十分に配向している場合は、負極合材層11中をリチウムイオンが通過する際に、リチウムイオンが黒鉛粒子13の層間を通過する距離を短くでき、リチウムイオンの挿入・離脱を容易にできる。したがって、本実施の形態に発明により、リチウムイオン二次電池の電池特性(サイクル特性など)を向上させることができる。
【0021】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の製造方法について説明する。まず、本実施の形態にかかる負極活物質の製造方法について、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0022】
負極活物質12を製造する際は、まず、基材上に配置されている黒鉛粒子をプレスする(ステップS1)。具体的には
図5に示すように、基材20上に黒鉛粒子13を配置する。そして、基材20上に配置されている黒鉛粒子13をプレスして、基材20の表面に対して略平行なグラフェン構造15を有する黒鉛粒子を形成する。例えば、黒鉛粒子13をプレスする際の圧力は1.5g/cc以上とすることが好ましい。
【0023】
次に、プレス後の黒鉛粒子の表面に金属材料を付着させる(ステップS2)。具体的には、
図6に示すように、グラフェン構造15を有する黒鉛粒子13の表面に金属材料14を付着させる。例えば、スパッタ装置を用いて黒鉛粒子13の表面に金属材料14を被覆することができる。
【0024】
その後、金属材料14が付着した黒鉛粒子13を基材20から剥離することで、本実施の形態にかかる負極活物質12を形成できる(ステップS3)。
【0025】
本実施の形態にかかる負極活物質の製造方法では、基材20上に配置されている黒鉛粒子13をプレスし、当該プレス後の黒鉛粒子13の表面に金属材料14を付着させているので、所定のアスペクト比を有する黒鉛粒子13の長手方向側面に金属材料14を付着させることができる。また、ステップS2では、プレス後の黒鉛粒子13の片面に金属材料14を付着させているので(
図6参照)、黒鉛粒子13の表面全体に対する金属材料14の被覆率を50%以下とすることができる。金属材料14は黒鉛粒子13よりも磁化しやすい材料であり、例えばFe、Niなどを用いることができる。
【0026】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池用負極の製造方法について、
図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0027】
リチウムイオン二次電池用負極を製造する際は、まず、負極ペーストを作製する(ステップS11)。具体的には、上述のようにして作製した負極活物質とバインダーとを含む混合物を溶媒と混合し、これらの混合物を混練することで負極ペーストを作製する。なお、バインダーについては、上述した材料を用いることができる。溶媒には、例えばイソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン、水等を用いることができる。なお、負極ペーストに増粘剤を加えてもよい。増粘剤には上述の材料を用いることができる。
【0028】
次に、ステップS11で準備した負極ペーストを負極集電体に塗工して、負極集電体10上に負極合材層11を形成する(ステップS12)。本実施の形態では、負極集電体10として、強磁性体以外の金属材料(例えば、銅)を用いる。また、負極集電体10と略垂直な方向に磁場を印加する(
図8参照)。
【0029】
本実施の形態では、負極ペーストを負極集電体10上に塗工しながら、負極集電体10と略垂直な方向に磁場を印加してもよい。また、本実施の形態では、負極ペーストを負極集電体10上に塗工した後(負極ペーストの流動性が残っている状態の間)に、負極集電体10と略垂直な方向に磁場を印加してもよい。また、本実施の形態では、負極ペーストを負極集電体10上に塗工しながら磁場を印加し、さらに負極ペーストを負極集電体10上に塗工した後も継続して磁場を印加し続けてもよい。
【0030】
また、磁場を印加しながら負極ペーストを負極集電体10上に塗工する工程を繰り返してもよい。また、負極ペーストを負極集電体10上に塗工する工程と磁場を印加する工程とを交互に繰り返すようにしてもよい。
【0031】
その後、負極集電体10に塗工された負極合材層11を乾燥する(ステップS13)。乾燥温度は、例えば60℃~100℃とすることができる。そして、乾燥後の負極合材層11をプレスする(ステップS14)。
【0032】
以上で説明した工程により、
図2に示したようなリチウムイオン二次電池用負極1を製造することができる。
【0033】
本実施の形態では、負極集電体10と略垂直な方向に磁場を印加することで、負極ペーストに含まれる黒鉛粒子13を負極合材層11の厚さ方向に配向させることができる。つまり、本実施の形態では、黒鉛粒子13の表面に磁化率の高い金属材料14が付着しているので、負極ペーストに磁場を印加した際、印加した磁場の損失を減らし、効率よく黒鉛粒子13を配向させることができる。
【0034】
すなわち、従来技術では磁化率の低い黒鉛粒子13に磁場を印加していた。このため、負極ペーストに磁場を印加した際に、黒鉛由来の渦電流が発生するが、粒子同士で一部打ち消しあうことで、黒鉛粒子13に十分に磁場が印加されなかった。これに対して本実施の形態では、黒鉛粒子13の表面に磁化率の高い金属材料14を付着させているので、負極ペーストに磁場を印加した際、印加した磁場の損失を減らし、効率よく黒鉛粒子13を配向させることができる。
【0035】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池について説明する。
以下では一例として、捲回電極体を備えるリチウムイオン二次電池について説明する。捲回電極体は、長尺状の正極シート(正極)と長尺状の負極シート(負極)とを長尺状のセパレータを介して積層し、この積層体を捲回し、得られた捲回体を側面方向から押しつぶすことで形成する。負極シートには、上述したリチウムイオン二次電池用負極を用いることができる。正極シートも負極シートと同様に、箔状の正極集電体の両面に正極活物質を含む正極合材層が形成された正極を用いることができる。
【0036】
リチウムイオン二次電池の容器は、上端が開放された扁平な直方体状の容器本体と、その開口部を塞ぐ蓋体とを備える。容器を構成する材料としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましい。または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形した容器であってもよい。容器の上面(つまり、蓋体)には、捲回電極体の正極と電気的に接続される正極端子および捲回電極体の負極と電気的に接続される負極端子が設けられている。
【0037】
そして、捲回電極体の両端部の正極シートおよび負極シートが露出した部分(正極合材層および負極合材層がない部分)に、正極リード端子および負極リード端子をそれぞれ設け、上述の正極端子および負極端子とそれぞれ電気的に接続する。このようにして作製した捲回電極体を容器本体に収容し、蓋体を用いて容器本体の開口部を封止する。その後、蓋体に設けられた注液孔から電解液を注液し、注液孔を封止キャップで閉塞することにより、リチウムイオン二次電池を作製することができる。
【実施例0038】
次に本発明の実施例について説明する。
【0039】
<実施例>
以下の方法を用いて実施例にかかるリチウムイオン二次電池を作製した。実施例では、まず、
図4に示した方法を用いて負極活物質を作製した。
【0040】
具体的には、まず、基材上に黒鉛粒子を配置した。そして、基材上に配置されている黒鉛粒子を1.5g/ccの圧力でプレスして、基材の表面に対して略平行なグラフェン構造を有する黒鉛粒子を形成した。
【0041】
次に、プレス後の黒鉛粒子の表面に金属材料として鉄を付着させた。具体的には、スパッタ装置を用いて、黒鉛粒子の表面に鉄を付着させた。その後、鉄が付着した黒鉛粒子を基材から剥離することで、負極活物質を形成した。
【0042】
負極活物質を作製後、
図7に示した方法を用いて負極を作製した。具体的には、まず、上述のようにして作製した負極活物質を98重量%、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を1重量%、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)を1重量%、それぞれ混合し、これらを溶媒である水に加えて混練して負極ペーストを作製した。その後、作製した負極ペーストを負極集電体である銅箔に塗布して、負極集電体上に負極合材層を形成した。負極ペーストを銅箔に塗布する際に、300mTの磁場を30秒間印加した。そして、負極合材層を乾燥温度60℃の条件で60分間乾燥し、その後プレスした。形成した負極合剤層の目付は3.8mg/cm
2、密度は1.2g/ccであった。
【0043】
その後、上述のようにして作製した負極を用いて電池を組み立てた。このとき対極としてLi金属を用いた。また、電解液には、1MのLiPF6を塩とし、溶媒としてEC、DMC、EMC(それぞれ体積比が1:1:1)を含む電解液を用いた。以上の方法を用いて、実施例にかかるリチウムイオン二次電池を作製した。
【0044】
<比較例>
比較例として、黒鉛粒子の表面に金属材料を付着させていない負極活物質を用いてリチウムイオン二次電池を作製した。なお、比較例にかかるリチウムイオン二次電池の作製方法は、黒鉛粒子の表面に金属材料を付着させていない点以外、実施例にかかるリチウムイオン二次電池の作製方法と同様である。
【0045】
<電池特性の測定>
以下の方法を用いて、実施例および比較例にかかるリチウムイオン二次電池のサイクル特性を測定した。まず、0.01V~1.5Vの電圧範囲、0.5CのレートでLi挿入・脱離を30サイクル繰り返した。30サイクル繰り返した後、リチウムイオン二次電池の容量維持率を測定した結果、比較例にかかるリチウムイオン二次電池の容量維持率は85%であった。一方、実施例にかかるリチウムイオン二次電池の容量維持率は86%であった。したがって、実施例にかかる負極のように、黒鉛粒子の表面に鉄を付着させて磁場を印加した場合は、黒鉛粒子の表面に鉄を付着させないで磁場を印加した場合(比較例)よりも、黒鉛粒子が負極合材層の厚さ方向に配向し、これにより容量維持率が向上したといえる。
【0046】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。