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特開2023-7429ケイリン酸リチウム粉末及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007429
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ケイリン酸リチウム粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20230111BHJP
   C01D 7/07 20060101ALI20230111BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230111BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20230111BHJP
【FI】
C01B33/12 A
C01D7/07
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093694
(22)【出願日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021108869
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 純也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 基文
【テーマコード(参考)】
4G072
5H029
【Fターム(参考)】
4G072AA35
4G072BB05
4G072BB12
4G072DD05
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH14
4G072JJ07
4G072JJ08
4G072MM02
4G072MM26
4G072MM32
4G072MM36
4G072RR13
4G072RR15
4G072TT01
4G072TT04
4G072TT06
4G072TT19
4G072UU30
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029DJ16
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ10
5H029HJ14
(57)【要約】
【解決課題】一次粒子の粒子径が揃っており、且つ、低温でも焼結が可能な焼結性に優れたケイリン酸リチウム粉末を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):LiSi1-y(1)(式中、xは3.00≦x≦4.00を示す。yは0.00<y≦1.00を示す。)で表されるケイリン酸リチウムであり、走査型電子顕微鏡観察(SEM)における一次粒子の平均粒子径が0.1~1.5μmであり、粒子径の標準偏差σが1.5μm以下であること、を特徴とするケイリン酸リチウム粉末。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
(式中、xは3.00≦x≦4.00を示す。yは0.00<y≦1.00を示す。)
で表されるケイリン酸リチウムであり、
走査型電子顕微鏡観察(SEM)における一次粒子の平均粒子径が0.1~1.5μmであり、粒子径の標準偏差σが1.50μm以下であること、
を特徴とするケイリン酸リチウム粉末。
【請求項2】
BET比表面積が1.0~25.0m/gであることを特徴とする請求項1に記載のケイリン酸リチウム粉末。
【請求項3】
嵩密度が0.20g/ml以上であることを特徴とする請求項1に記載のケイリン酸リチウム粉末。
【請求項4】
更に、B、Mg、Al、Ca、V、Mn、Zn、Ni、Fe、Mo、Ge、Y、Sr、Ba、Ti、Co、Bi、Sn、Te、W、La、Ce及びZrから選ばれる副成分元素(M)を1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項1に記載のケイリン酸リチウム粉末。
【請求項5】
下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
(式中、xは3.00≦x≦4.00を示す。yは0.00<y≦1.00を示す。)
で表されるケイリン酸リチウムの製造方法であって、
水溶媒に、水酸化リチウム及びヒュームドシリカを混合して、Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製する第1工程と、
該混合液に、リン酸を含有する水溶液を添加して、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーを得る第2工程と、
該スラリーを噴霧乾燥処理して、反応前駆体を得る第3工程と、
該反応前駆体を焼成して、焼成物を得る第4工程と、
該焼成物を粉砕又は解砕して、ケイリン酸リチウム粉末を得る第5工程と、
を有することを特徴とするケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項6】
前記Li及びSiの各元素を含有する混合液のpHが10.0以上であることを特徴とする請求項5に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程において、少なくともヒュームドシリカを含有する水溶媒に、水酸化リチウムを添加することにより、前記Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製することを特徴とする請求項5又は6の何れか1項に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項8】
前記第1工程において、水溶媒に、水酸化リチウム及びヒュームドシリカを添加し、次いで、2時間以上放置することにより、前記Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製することを特徴とする請求項5又は6の何れか1項に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項9】
前記ヒュームドシリカのBET比表面積が40m/g以上であることを特徴とする請求項5又は6の何れか1項に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項10】
前記リン酸を含有する水溶液は、リン酸とアニオン系界面活性剤とを含有する水溶液であることを特徴とする請求項5又は6の何れか1項に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項11】
前記アニオン系界面活性剤が、ポリカルボン酸系界面活性剤であることを特徴とする請求項10に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項12】
前記第4工程における焼成温度が500~730℃であることを特徴とする請求項5又は6の何れか1項に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【請求項13】
前記第2工程において、更に、B、Mg、Al、Ca、V、Mn、Zn、Ni、Fe、Mo、Ge、Y、Sr、Ba、Ti、Co、Bi、Sn、Te、W、La、Ce及びZrから選ばれる副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物を1種又は2種以上添加して、固形分としてLi、Si、P及び副成分元素(M)の各元素を含有するスラリーを得ることを特徴とする請求項5又は6の何れか1項に記載のケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質等として有用なケイリン酸リチウム粉末及びその製造方法に関するものである。
【0002】
リチウム二次電池の安全性を高める1つの方法として、動作温度範囲が広く、大気中で安定な酸化物系固体電解質を用いる方法が検討されている。
【0003】
酸化物系固体電解質としては、例えば、ガーネット型酸化物、NASICON型酸化物、ペロブスカイト型酸化物、LISICON型酸化物等が検討されている。
【0004】
LISICON型の結晶構造を有するリン酸塩系の酸化物は、電子の伝導性が小さく、リチウムイオンの伝導性が高い材料であり、特に、Li3.5Si0.50.5、Li3.6Si0.60.4等のケイリン酸リチウムはリチウムイオン伝導性が高いことから、固体電解質として注目されている材料の一つである(例えば、特許文献1~5参照)。
【0005】
ケイリン酸リチウムの製造方法として、例えば、炭酸リチウム、シリカ及びリン酸リチウムを出発原料として、湿式粉砕処理した後、950℃で空気中で焼成する方法(例えば、特許文献1~2参照)、また、リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物を含む原料混合物を水熱反応して前駆体混合物を得、次いで400~1000℃で焼成する方法(特許文献3~4)が開示されている。また、特許文献5には、リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物を含むpHが0.5~3の混合液を、600~1000℃で噴霧熱分解する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2019/181909号パンフレット、0060段落、0151段落、0134段落
【特許文献2】特許第4762353号公報、請求項4、0011段落
【特許文献3】特開2020-102375号公報
【特許文献4】特開2020-102374号公報
【特許文献5】特開2020-102376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
全固体電池において、固体電解質は、通常は固体電解質粉末を含むペーストを調製し、これをシート状に成型した後、900~1000℃の高温で焼結させる焼結工程(例えば、特許文献1の0134段落、特許文献2の0011段落等参照)を経て用いられている。この際に、リチウムイオン伝導性を高めるため、緻密な固体電解質とする必要があり、固体電解質粉末として、一次粒子の粒径が揃い、また、900℃以下の低温でも焼結するような焼結性にも優れたものが要望されている。
【0008】
特許文献1~2及び特許文献5の方法では、一次粒子の粒径が揃ったものを得ることが難しく、また、特許文献3~4の方法では、水熱合成を行う必要があるため、省エネルギー・省コスト等の問題があり工業的に有利でない。
【0009】
従って、本発明の目的は、一次粒子の粒子径が揃っており、且つ、低温でも焼結が可能な焼結性に優れたケイリン酸リチウム粉末及び工業的に有利な方法で、一次粒子の粒子径が揃っており、且つ、低温でも焼結が可能な焼結性に優れたケイリン酸リチウム粉末を得ることができるケイリン酸リチウム粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
(式中、xは3.0≦x≦4.0を示す。yは0<y≦1.0を示す。)で表されるケイリン酸リチウム粉末の製造において、
(1)沈降性シリカ等の非晶質シリカは、水酸化リチウムのアルカリ水溶液中では、凝集した状態で固形分として存在するため、沈降性シリカ等の非晶質シリカと水酸化リチウムを混合した混合液を用いた場合には、反応性に優れた反応前駆体を得ることが難しいこと、
(2)一方、ヒュームドシリカは、水酸化リチウムのアルカリ水溶液中では、水溶液中に高分散して存在する混合液となることから、反応性に優れた反応前駆体が得られ易くなり、また、固形分として残存するヒュームドシリカは、反応核となるため、得られるケイリン酸リチウムは、高分散したヒュームドシリカに起因して生成し、粒度が揃ったものになること、
(3)また、固形分のヒュームドシリカが高分散で存在している混合液に、リン酸を含有する水溶液を添加することにより、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有し、且つ、固形分中にLi、Si及びPの各元素が均一混合されたスラリーが得られ、このスラリーを噴霧乾燥することで、反応性に優れた反応前駆体が得られること、
(4)また、該反応前駆体を焼成することにより、X線回折的に高純度のケイリン酸リチウムが得られ、次いで、得られるケイリン酸リチウムの焼成物を粉砕又は解砕処理することにより、一次粒子の粒子径が揃ったケイリン酸リチウム粉末となること、
(5)また、該ケイリン酸リチウム粉末は900℃以下の低温でも焼結が可能な焼結性にも優れたものであること、
等を知見し、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明が提供しようとする発明は、下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
(式中、xは3.00≦x≦4.00を示す。yは0.00<y≦1.00を示す。)
で表されるケイリン酸リチウムであり、
走査型電子顕微鏡観察(SEM)における一次粒子の平均粒子径が0.1~1.5μmであり、粒子径の標準偏差σが1.50μm以下であること、
を特徴とするケイリン酸リチウム粉末である。
【0012】
また、本発明が提供しようとする発明は、下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
(式中、xは3.00≦x≦4.00を示す。yは0.00<y≦1.00を示す。)で表されるケイリン酸リチウムの製造方法であって、
水溶媒に、水酸化リチウム及びヒュームドシリカを混合して、Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製する第1工程と、
該混合液に、リン酸を含有する水溶液を添加して、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーを得る第2工程と、
該スラリーを噴霧乾燥処理して、反応前駆体を得る第3工程と、
該反応前駆体を焼成して、焼成物を得る第4工程と、
該焼成物を粉砕又は解砕して、ケイリン酸リチウム粉末を得る第5工程と、
を有することを特徴とするケイリン酸リチウム粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一次粒子の粒子径が揃っており、且つ、低温でも焼結が可能な焼結性に優れたケイリン酸リチウム粉末及び工業的に有利な方法で、一次粒子の粒子径が揃っており、且つ、低温でも焼結が可能な焼結性に優れたケイリン酸リチウム粉末を得ることができるケイリン酸リチウム粉末の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られた反応前駆体のX線回折図。
図2】実施例1で得られたケイリン酸リチウムのX線回折図。
図3】比較例1で得られたケイリン酸リチウムのX線回折図。
図4】実施例1で得られたケイリン酸リチウムのSEM写真。
図5】比較例1で得られたケイリン酸リチウムのSEM写真。
図6】実施例1のケイリン酸リチウム試料を用いて調製した焼結品のX線回折図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
(式中、xは3.00≦x≦4.00を示す。yは0.00<y≦1.00を示す。)
で表されるケイリン酸リチウムであり、
走査型電子顕微鏡観察(SEM)における一次粒子の平均粒子径が0.1~1.5μmであり、粒子径の標準偏差σが1.50μm以下であること、
を特徴とするケイリン酸リチウム粉末である。
【0016】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、LISICON構造を有する下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
で表されるケイリン酸リチウムである。
【0017】
一般式(1)中、xは、3.00≦x≦4.00、好ましくは3.10≦x≦3.90である。また、一般式(1)中、yは、0.00<y≦1.00、好ましくは0.10≦y≦0.90である。xが上記範囲にあることにより、リチウムイオン伝導率等の性能が高くなる。また、yが上記範囲にあることにより、リチウムイオン伝導率等の性能が高くなる。
【0018】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、走査型電子顕微鏡写真観察(SEM)から求められる一次粒子の平均粒子径が、0.1~1.5μm、好ましくは0.1~1.2μm、特に好ましくは0.1~1.0μmである。ケイリン酸リチウム粉末の一次粒子の平均粒子径が上記範囲にあることにより、シート成型後に焼成して得られる焼結体が緻密になり、また焼結体にクラックが入る等の不具合が無い固体電解質として好適な焼結体が得られる。一方、ケイリン酸リチウム粉末の一次粒子の平均粒子径が、上記範囲未満だとシート成型したときに、成形密度が不足し、焼成後に緻密な焼結体を得ることが難しくなり、また、上記範囲を超えると焼結体にクラックが入るなどの不具合が起こり易くなる傾向がある。
【0019】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、走査型電子顕微鏡写真観察(SEM)から求められる一次粒子の粒子径の標準偏差σが、1.50μm以下、特に好ましくは1.00μm以下である。ケイリン酸リチウム粉末の一次粒子の粒子径の標準偏差σが上記範囲にあることにより、シート成型後に焼成することで固体電解質として好適な緻密な焼結体を得ることができる。一方、ケイリン酸リチウム粉末の一次粒子の粒子径の標準偏差σが、上記範囲を超えるとシート成型したときに、成形密度が不足し、焼成後に緻密な焼結体を得ることが難しくなる。
【0020】
本発明のケイリン酸リチウム粉末のBET比表面積は、好ましくは1.0~25.0m/g、より好ましくは2.0~20.0m/g、特に好ましくは2.0~15.0m/gである。ケイリン酸リチウム粉末のBET比表面積が上記範囲にあることにより、シート成型後に焼成して得られる焼結体が緻密になり、また焼結体にクラックが入る等の不具合が無い固体電解質として好適な焼結体が得られる。一方、ケイリン酸リチウム粉末のBET比表面積が、上記範囲未満だと焼結体にクラックが入るなどの不具合が起こり易くなる傾向があり、また、上記範囲を超えるとシート成型したときに、成形密度が不足し、焼成後に緻密な焼結体を得ることが難しくなり易い。
【0021】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、一次粒子表面が丸みを帯びた形状を有する。本発明のケイリン酸リチウム粉末の粒子表面が丸みを帯びていることは、走査型電子顕微鏡写真観察(SEM)により確認される。
【0022】
また、本発明のケイリン酸リチウム粉末の嵩密度は、0.20g/ml以上、好ましくは0.30~0.60g/mlである。ケイリン酸リチウム粉末の嵩密度が上記範囲にあることにより、充填性に優れるためシート成型後に焼成して得られる焼結体が緻密になり、また焼結体にクラックが入る等の不具合が無い固体電解質として好適な焼結体が得られる。
【0023】
本発明において、嵩密度は、かさ比重測定器の受容器容量100mLに試料を、ふるいを通して受容器から溢れるまで受ける。過剰分をへらですり切り、受容器に溜まった試料の重量を測定して嵩密度(g/mL)を算出する。
【0024】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、ケイリン酸リチウム粉末を、線源としてCuKα線を用いてX線回折分析したときに、ケイリン酸リチウムに起因する2θ=22.0~22.5°に現れるメインの回析ピーク(a)に対する炭酸リチウムに起因する2θ=21.0~21.5°に現れるメインの回折ピーク(b)のピーク強度比(b/a)が0.15以下である量であれば、炭酸リチウムを含有していてもよい。なお、前記ピーク強度比は回折ピークの高さの比を示す。
【0025】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、ケイリン酸リチウム粉末を、線源としてCuKα線を用いてX線回折分析したときに、ケイリン酸リチウムに起因する2θ=22.0~22.5°に現れるメインの回析ピーク(a)に対するLiSiOに起因する2θ=19.5~20.0°に現れるメインの回折ピーク(c)のピーク強度比(c/a)で0.15以下である量であれば、LiSiOを含有していてもよい。なお、前記ピーク強度比は回折ピークの高さの比を示す。
【0026】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、ケイリン酸リチウムの組成が一般式(1)に規定の範囲にあり、且つ、一次粒子の平均粒子径及び標準偏差σが上記範囲にあることにより、900℃以下、好ましくは700~800℃の低温でも焼結可能であり、焼結性に優れたものであり、且つ、一次粒子径が小さく、粒子径が揃ったものなので、シート成型後に焼成することで緻密な焼結体が得られる。
【0027】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、リチウムイオン伝導性、焼結性を向上させることを目的として、更に、B、Mg、Al、Ca、V、Mn、Zn、Ni、Fe、Mo、Ge、Y、Sr、Ba、Ti、Co、Bi、Sn、Te、W、La、Ce及びZrから選ばれる1種又は2種以上の副成分元素(M)を固溶させて含有させることができる。本発明において副成分元素(M)はAl、Mn、Co、Geが好ましい。
本発明のケイリン酸リチウム粉末が、副成分元素(M)を含有する場合、副成分元素(M)の含有量は、ケイリン酸リチウム中のSiとPの合計モル数に対する副成分元素(M)のモル比(M/(Si+P))で0.0010~0.20、好ましくは0.0030~0.10である。
【0028】
本発明のケイリン酸リチウム粉末は、全固体電池の固体電解質等として好適に利用される。
【0029】
本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法は制限されず、如何なる製造方法により製造されたものであってもよい。本発明のケイリン酸リチウム粉末は、以下に述べる本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法により、好適に製造される。
【0030】
本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法は、下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
(式中、xは3.00≦x≦4.00を示す。yは0.00<y≦1.00を示す。)で表されるケイリン酸リチウム粉末の製造方法であって、
水溶媒に、水酸化リチウム及びヒュームドシリカを混合して、Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製する第1工程と、
該混合液に、リン酸を含有する水溶液を添加して、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーを得る第2工程と、
該スラリーを噴霧乾燥処理して、反応前駆体を得る第3工程と、
該反応前駆体を焼成して、焼成物を得る第4工程と、
該焼成物を粉砕又は解砕して、ケイリン酸リチウム粉末を得る第5工程と、
を有することを特徴とするケイリン酸リチウム粉末の製造方法。
【0031】
本発明のケイリン酸リチウムの製造方法により得られるケイリン酸リチウム粉末は、LISICON構造を有する下記一般式(1):
LiSi1-y(1)
で表されるケイリン酸リチウムである。
【0032】
一般式(1)中、xは、3.00≦x≦4.00、好ましくは3.10≦x≦3.90である。また、一般式(1)中、yは、0.00<y≦1.00、好ましくは0.10≦y≦0.90である。
【0033】
なお、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末には、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に起因して炭酸リチウムやLiSiO等の副生物が含有される場合がある。炭酸リチウムは、得られるケイリン酸リチウムを焼結させて固体電解質を製造する際に熱分解するため、また、LiSiOは、リチウム二次電池の性能に与える影響が少ないため、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法では、リチウム二次電池の性能に影響を与えない程度であれば、得られるケイリン酸リチウムが、炭酸リチウムやLiSiOを含有していてもよい。
【0034】
本発明のケイリン酸リチウムの製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末中、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に起因する副生物の炭酸リチウムの含有量は、出来るだけ少ないことが望ましいが、副生物として含有される炭酸リチウムは、固体電解質を製造する際に、700℃以上で焼成する焼結工程で必然的に除去される。このため、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末は、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に起因した副生物の炭酸リチウムを、リチウム二次電池の性能に影響を与えない程度であれば、含有していても差し支えない。本発明のケイリン酸リチウムの製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末が、副生物として炭酸リチウムを含有する場合は、ケイリン酸リチウム粉末を、線源としてCuKα線を用いてX線回折分析したときに、ケイリン酸リチウムに起因する2θ=22.0~22.5°に現れるメインの回析ピーク(a)に対する炭酸リチウムに起因する2θ=21.0~21.5°に現れるメインの回折ピーク(b)のピーク強度比(b/a)が0.15以下であれば、特に問題なく用いることができる。なお、前記ピーク強度比は回折ピークの高さの比を示す。
【0035】
本発明のケイリン酸リチウムの製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末中、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に起因する副生物のLiSiOは、固体電解質を製造する際のケイリン酸リチウム粉末の焼結工程後においても残存する場合がある。しかしながら、LiSiOは、固体電解質なので(例えば、特開2018-125286号公報の請求項1、請求項13、WO2018/069492号パンフレットの請求項5、固体イオニクス討論会講演要旨集、Vol.35th、Page82-83等参照)、焼結工程後に残存していても、固体電解質の性能にほとんど影響しない。このため、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末は、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に起因した副生物のLiSiOを、リチウム二次電池の性能に影響を与えない程度であれば、含有していても差し支えない。本発明のケイリン酸リチウムの製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末が、副生物としてLiSiOを含有する場合は、ケイリン酸リチウム粉末を、線源としてCuKα線を用いてX線回折分析したときに、ケイリン酸リチウムに起因する2θ=22.0~22.5°に現れるメインの回析ピーク(a)に対するLiSiOに起因する2θ=19.5~20.0°に現れるメインの回折ピーク(c)のピーク強度比(c/a)で0.15以下であれば、特に問題なく用いることができる。なお、前記ピーク強度比は回折ピークの高さの比を示す。
【0036】
本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に係る第1工程は、水溶媒に、水酸化リチウム及びヒュームドシリカを混合して、Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製する工程である。
【0037】
第1工程において得られるLi及びSiの各元素を含有する混合液は、溶解分として水酸化リチウムのリチウム分及びアルカリと、ヒュームドシリカがアルカリにより溶解したシリカ分を含有し、更に固形分として溶解せずに残存するヒュームドシリカを含有する。
【0038】
本発明者らは、沈降性シリカ等の非晶質シリカは、水酸化リチウムのアルカリ水溶液中では、凝集した状態で存在するため、沈降性シリカ等の非晶質シリカ及び水酸化リチウムを混合した混合液を用いた場合には、反応性に優れた反応前駆体を得ることが難しい一方で、ヒュームドシリカは、水酸化リチウムのアルカリ水溶液中では、水溶媒中に高分散して存在し、また、第1工程に次いで、後述する第2工程、第3工程を行うことにより反応性に優れた反応前駆体が得易くなること、また、固形分として残存するヒュームドシリカは、反応核となるため、得られるケイリン酸リチウムは、高分散で分散しているヒュームドシリカに起因して、粒度が揃ったものになることを見出した。
このため、第1工程では、少なくとも固形分としてヒュームドシリカが高分散で存在するLi及びSiの各元素を含有する混合液を得ることが、一次粒子の粒子径が揃ったケイリン酸リチウム粉末を得る観点から重要である。
【0039】
第1工程に係る水酸化リチウムは、工業的に入手できるものであれば、特に制限されない。また、水酸化リチウムは、含水塩であっても無水塩であってもよい。なお、水酸化リチウムは、粉体として水溶媒に添加しても良いが、水酸化リチウム水溶液として添加することがバッチ間のバラツキがなく安定した品質のものを得ることができる点で好ましい。水酸化リチウム水溶液の濃度は、無水塩換算で3~6質量%、好ましくは4~5質量%とすることが水酸化リチウムの溶け残りが無い水溶液が得られる観点から好ましい。
【0040】
ヒュームドシリカは、一般に、四塩化珪素を酸水素炎中で燃焼させて製造され、比表面積がおよそ40~500m/gのものが市販されている。第1工程に係るヒュームドシリカの比表面積は、Li及びSiの各元素を含有する混合液の粘度の上昇を抑えつつ、水酸化リチウムとの反応性にも優れる点で、好ましくは40m/g以上、特に好ましくは40~250m/gである。また、本発明においてヒュームドシリカは、親水性であることが、Li及びSiの各元素を含有する混合液に、ヒュームドシリカを一層高分散させることができる点で好ましい。また、ヒュームドシリカの市販品としては、日本アエロジ
ル社のAEROSIL、東新化成社のアエロジル、Degussa社のAEROSIL、Cabot社のCAB-O-SILやエポニック・ジャパン社のAersil等が挙げられる。
【0041】
また、第1工程に係る水溶媒は、水単独でも、水と親水性溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0042】
第1工程におけるLi及びSiの各元素を含有する混合液の調製方法としては、1)ヒュームドシリカを含有する水溶媒に、水酸化リチウムを添加する方法、2)水酸化リチウムを含有する水溶媒に、ヒュームドシリカを添加する方法、3)水溶媒にヒュームドシリカと水酸化リチウムを同時添加する方法、4)水溶媒にヒュームドシリカと水酸化リチウムを数回に分けて添加する方法等が挙げられる。Li及びSiの各元素を含有する混合液の調製方法としては、ヒュームドシリカが、より一層高分散したLi及びSiの各元素を含有する混合液を得ることが出来る点で、前記1)のヒュームドシリカを含有する水溶媒に、水酸化リチウムを添加する方法が好ましい。
【0043】
第1工程において、ヒュームドシリカの混合量は、水溶媒100質量部に対し、好ましくは2.0~10.0質量部、特に好ましくは3.0~8.0質量部である。ヒュームドシリカの混合量が上記範囲にあることにより、Li及びSiの各元素を含有する混合液の粘度の上昇を抑えることができ、また、生産性が高くなる。
【0044】
第1工程において、水酸化リチウムの混合量は、ヒュームドシリカ中のSi原子に対する水酸化リチウム中のLi原子のモル比(Si/Li)で、好ましくは0.01~0.25、特に好ましくは0.05~0.23である。水酸化リチウムの混合量が上記範囲にあることにより、固体電解質の伝導度が高くなる。
【0045】
第1工程において、ヒュームドシリカを、水溶媒に混合する温度は、特に制限されないが、多くの場合、10~40℃、好ましくは15~35℃である。
【0046】
第1工程において、水酸化リチウムを、水溶媒に混合する温度は、特に制限されないが、多くの場合、10~40℃、好ましくは15~35℃である。
【0047】
第1工程において調製されるLi及びSiの各元素を含有する混合液のpHは、好ましくは10以上、特に好ましくは11~13である。Li及びSiの各元素を含有する混合液のpHが上記範囲にあることにより、ヒュームドシリカの反応性を向上させることができる。
【0048】
第1工程では、水溶媒に水酸化リチウム及びヒュームドシリカを混合して、Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製した直後は、粘性が高い白濁したものであるが、固形分のヒュームドシリカを、一層高分散させるために、Li及びSiの各元素を含有する混合液が半透明になるまで、Li及びSiの各元素を含有する混合液を放置してから、第2工程を行うことが好ましい。第1工程において、Li及びSiの各元素を含有する混合液が半透明になるまで、Li及びSiの各元素を含有する混合液を放置することにより、一次粒子の粒子径が揃ったケイリン酸リチウム粉末が得られ易くなる。
【0049】
第1工程において、水溶媒に水酸化リチウム及びヒュームドシリカを混合して、Li及びSiの各元素を含有する混合液を調製した後、40℃以下、好ましくは10~40℃で、2時間以上、好ましくは4~24時間、攪拌下にLi及びSiの各元素を含有する混合液を放置することが、粘性が低く半透明なLi及びSiの各元素を含有する混合液にすることができる点で好ましい。なお、本発明において、第1工程に係る半透明な混合液は、好ましくは攪拌を止めても、容器の底部に沈降物が観察されない。一方、例えば、シリカとしてヒュームドシリカ以外の非晶質シリカを用いた場合には、攪拌を止めると、直ぐに容器の底部に沈降物が観察される。
【0050】
本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に係る第2工程は、第1工程で調製したLi及びSiの各元素を含有する混合液に、リン酸を含有する水溶液を添加して、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーを得る工程である。第2工程を行い得られるスラリーでは、Li及びSiの各元素を含有する混合液に、リン酸を含有する水溶液を添加することにより生じる固形分が、水溶媒に分散しており、該固形分は、Li元素、Si元素及びP元素を含有している。なお、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するとは、スラリー中に存在している各粒子が、いずれもLi、Si及びPの全元素を含
有しているということではなく、個々の粒子は、Li、Si及びPのうちの1種以上を含有しており、且つ、スラリー中の固形分全体として見たときに、Li、Si及びPを含有していることを指す。
【0051】
前記第1工程で調製したLi及びSiの各元素を含有する混合液に、第2工程においてリン酸を含有する水溶液を添加することにより、Li及びSiの各元素を含有する混合液中の溶解成分のリチウムとリン酸が反応し、微細なリン酸リチウムが析出する。また、その他の析出反応の機構やリン酸を含有する水溶液の添加により起こる反応機構については、明らかではないが、溶解成分のシリカは、pHの関係で微細なケイ酸リチウムとして析出する。一方、Li及びSiの各元素を含有する混合液中の固形分のヒュームドシリカは、水酸化リチウムと反応し、微細なケイ酸リチウムとなる。更に微細なケイ酸リチウムはリン酸と反応し、微細なケイリン酸リチウム前駆体となる。これらのことから、第2工程を行い得られるスラリーは、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有し、Li、Si及びPの各元素が均一に混合された固形分を含有するスラリーが得られるものと考えられる。
【0052】
第2工程に係るリン酸は、工業的に入手できるものであれば、特に制限されない。また、リン酸を含有する水溶液は、リン酸が水に溶解している水溶液である。リン酸を含有する水溶液のリン酸の濃度は、リン酸を含有する水溶液の添加により混合液から析出する析出物を高分散させながら、リン酸を含む水溶液を添加できる点で、好ましくは10~40質量%、特に好ましくは15~30質量%である。
【0053】
第2工程において、リン酸を含有する水溶液の添加量は、第1工程のヒュームドシリカ中のSi原子に対するリン酸中のP原子のモル比(P/Si)で、好ましくは0.10~0.90、特に好ましくは0.20~0.80である。リン酸を含有する水溶液の添加量が上記範囲にあることにより、固体電解質の伝導度を高くすることができる。
【0054】
第2工程において、Li及びSiの各元素を含有する混合液へのリン酸を含有する水溶液の添加温度は、特に制限されないが、多くの場合、10~40℃、好ましくは15~35℃である。
【0055】
第2工程において、Li及びSiの各元素を含有する混合液へのリン酸を含有する水溶液の添加速度は、特に制限されないが、安定した品質のものが得られ易くなる点で、一定速度で添加することが好ましい。
【0056】
第2工程において、リン酸を含有する水溶液を添加した後のLi及びSiの各元素を含有する混合液のpH、すなわち、第2工程を行い得られるスラリーのpHは、スラリー中の固形分となる粒子が高分散したものが得られ易くなる点で、好ましくは10以上、より好ましくは10~13、特に好ましくは11~13である。
【0057】
第2工程では、リン酸を含有する水溶液を添加した後、必要により、スラリー中の各粒子の大きさや形状等の特性を均一化するために、熟成反応を行うことができる。熟成温度は、スラリー中に、固形分の粒子が高分散した状態で、Li、Si及びPの元素を均一化させることができる点で、好ましくは10~60℃、特に好ましくは15~40℃であり、また、熟成時間は、好ましくは2時間以上、特に好ましくは4~24時間である。
【0058】
第2工程において、リン酸を含有する水溶液に、アニオン系界面活性剤を含有させることができる。リン酸を含有する水溶液にアニオン系界面活性剤を含有させて、第2工程を行うことにより、Li、Si及びPの各元素が一層均一に混合された状態のスラリーを得ることができる。
【0059】
アニオン系界面活性剤は、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種のアニオン性界面活性剤であることが、Li、Si及びPの各元素を含有するスラリーの粘度を低くし、また反応性に優れた反応前駆体が得られる点で好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ポリカルボン酸系界面活性剤又はポリアクリル酸系界面活性剤が好ましく、ポリカルボン酸系界面活性剤が特に好ましい。ポリカルボン酸系界面活性剤としては、ポリカルボン酸のアンモニウム塩が好ましい。
【0060】
アニオン系界面活性剤は、市販のものであってもよい。市販のポリカルボン酸型界面活性剤の一例としては、サンノプコ社製のSNディスパーサント5020、SNディスパーサント5023、SNディスパーサント5027、SNディスパーサント5468、ノプコスパース5600、KAO社製のポイズ532A等が挙げられる。
【0061】
リン酸を含有する水溶液中のアニオン系界面活性剤の含有量は、0.5~10質量%、好ましくは1~5質量%である。
【0062】
第2工程を行うことにより、固形分としてLi、Si及びPを含有し、Li、Si及びPの各元素が均一に混合されたスラリーを得ることができるが、本発明のケイリン酸リチウムの製造方法では、必要により、第3工程を行う前に、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーを、更にメディアミル等により湿式粉砕又は解砕処理してもよい。
【0063】
なお、第1工程に係る水酸化リチウム、ヒュームドシリカ及び第2工程に係るリン酸は、高純度のケイリン酸リチウムが得られる点で、高純度品であることが好ましい。
【0064】
本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法に係る第3工程は、第2工程を行い得られる、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーを、噴霧乾燥法により、噴霧乾燥処理して、反応前駆体を得る工程である。
【0065】
なお、第3工程を行い得られる反応前駆体は、X線回折的には、少なくともリン酸リチウムと、ケイリン酸リチウムを主成分として含有する。また、反応前駆体は、その他の成分として、ケイ酸リチウム、水酸化リチウム等を含有していても差し支えない。
【0066】
スラリーの乾燥方法には噴霧乾燥法以外の方法も知られているが、本発明においては噴霧乾燥法を選択することが有利であるとの知見に基づき、この乾燥方法を採用している。詳細には、噴霧乾燥法を用いると、粒子が詰まった状態の造粒粒子を得ることができるので、得られる造粒粒子を反応前駆体として用いて、後述する第4工程で焼成することにより、X線回折的に高純度のケイリン酸リチウム粉末を得ることができる。
【0067】
噴霧乾燥処理においては、所定手段によってスラリーを霧化し、それによって生じる微細な液滴を乾燥させることで反応前駆体を得る。スラリーの霧化には、例えば回転円盤を用いる方法と、圧力ノズルを用いる方法がある。第3工程では、いずれの方法も用いることができる。
【0068】
噴霧乾燥処理においては、霧化されたスラリーの液滴の大きさと、それに含まれる粒子の大きさとの関係が、安定した乾燥や、得られる反応前駆体の性状に影響を与える。詳細には、液滴の大きさに対して粒子の大きさが小さすぎると、液滴が不安定になり、乾燥を首尾よく行いづらくなる。また、反応前駆体の比表面積や密度を大きくし難くなる。この観点から、スラリー中の粒子の大きさ(二次粒子の大きさ)が前述の範囲であることを条件として、霧化された液滴の大きさは、5~50μm、特に10~40μmであることが好ましい。噴霧乾燥装置へのスラリーの供給量は、この観点を考慮して決定することが望ましい。
【0069】
第3工程の噴霧乾燥処理において、乾燥温度は、熱風入口温度を170~320℃、好ましくは190~300℃に調整して、熱風出口温度が80~140℃となるように調整することが、粉体の吸湿を防ぎ粉体の回収が容易になることから好ましい。
【0070】
本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法に係る第4工程は、第3工程を行い得られる反応前駆体を焼成して、焼成物を得る工程である。
【0071】
第4工程での焼成温度は、500~730℃、好ましくは550~680℃である。焼成温度が上記範囲未満だと、ケイリン酸リチウムの生成までの焼成時間が長くなり工業的に不利となり、一方、焼成温度が上記範囲を超えると、ケイリン酸リチウムが硬い焼結体となるため好ましくない。
【0072】
第4工程での焼成雰囲気は、大気雰囲気又は不活性ガス雰囲気である。
【0073】
第4工程における焼成時間は、特に制限されず、1時間以上、好ましくは2~10時間焼成を行えば、X線回折的に高純度のケイリン酸リチウムを得ることができる。
【0074】
第4工程では、一旦焼成を行い得られたケイリン酸リチウムを必要に応じて、複数回焼成してもよい。
【0075】
本発明のケイリン酸リチウムの製造方法に係る第5工程は、第4工程を行い得られる焼成物を粉砕又は解砕処理し、ケイリン酸リチウム粉末を得る工程である。
【0076】
第5工程における粉砕又は解砕処理は、乾式の粉砕又は解砕処理であっても、湿式の粉砕又は解砕処理であってもよい。湿式の粉砕又は解砕装置としては、例えば、ボールミル、ビーズミル等が挙げられる。乾式の粉砕又は解砕装置としては、例えば、ジェットミル、ピンミル、ロールミル、ボールミル、ビーズミル等の公知の粉砕又は解砕装置が挙げられる。また、実験室レベルでは、乳鉢での粉砕又は解砕処理でも十分である。
【0077】
第5工程を行った後は、必要により、ケイリン酸リチウム粉末の解砕、分級等を行うことができる。
【0078】
また、前記第2工程において、更に、B、Mg、Al、Ca、V、Mn、Zn、Ni、Fe、Mo、Ge、Y、Sr、Ba、Ti、Co、Bi、Sn、Te、W、La、Ce及びZrから選ばれる副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物の1種又は2種以上を添加して、固形分としてLi、Si、P及び副成分元素(M)の各元素を含有するスラリーを得、次いで、前記第3工程~第5工程を行うことにより、副成分元素(M)を含有するケイリン酸リチウム粉末を得ることができる。
【0079】
副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物としては、例えば、副成分元素(M)の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩等が挙げられる。本製造方法において、副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物は、水に対して不溶性或いは難溶性のものであってもよいが、水溶性のものが組成の均一な粉末を得る観点から好ましい。
第2工程において、副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物の添加量は、得られるケイリン酸リチウム中のSiとPの合計モル数に対する副成分元素(M)のモル比(M/(Si+P))で0.0010~0.20、好ましくは0.0030~0.10である。
副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物の第2工程での添加は、リン酸を含有する水溶液を添加する前であっても、リン酸を含有する水溶液を添加した後であってもよい。また、リン酸を含有する水溶液に副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物を含有させ、リン酸及び副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物を含有する水溶液として、第1工程で得られた混合液に、副成分元素(M)を含有する副成分含有化合物を添加してもよい。
【0080】
このようにして本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末は、一次粒子の粒子径が揃っていることに加えて、走査型電子顕微鏡写真観察(SEM)から求められる一次粒子の平均粒子径が、好ましくは0.1~1.5μm、より好ましくは0.1~1.2μm、特に好ましくは0.1~1.0μmである。また、本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末は、走査型電子顕微鏡写真観察(SEM)から求められる一次粒子の粒子径の標準偏差σが、好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。また、本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末のBET比表面積は、好ましくは1.0~25.0m/g、より好ましくは2.0~20.0m/g、特に好ましくは2.0~15.0m/gである。また、本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末の嵩密度は、好ましくは0.20g/ml以上、より好ましくは0.30~0.60g/mlである。
【0081】
また、本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末は、900℃以下、好ましくは700~800℃の低温でも焼結可能であり、焼結性に優れたものである。
【0082】
また、本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末は、一次粒子表面が丸みを帯びた形状となる。このため、充填密度を高くすることができる。
【0083】
本発明のケイリン酸リチウム粉末の製造方法を行い得られるケイリン酸リチウム粉末は、全固体電池の固体電解質等として好適に利用される。
【実施例0084】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0085】
(実施例1)
<第1工程>
純水6510mlに親水性ヒュームドシリカ(エボニック・ジャパン社製、Aerosil 130、BET比表面積140m/g)130gを添加し、室温(25℃)で3時間攪拌し、分散液を調製した。次いで、得られた分散液に、水酸化リチウム一水和物を624.8g添加し、白濁した混合液を得た(pH12)。次いで、この白濁した混合液を、室温(25℃)で6時間攪拌下に放置すると、半透明になった。更に混合液を10時間室温(25℃)で攪拌し、Li及びSiの各元素を含有する混合液Aを調製した。
なお、攪拌を終了後、5分経っても混合液Aには、容器の底に沈降物は目視で観察されなかった。
【0086】
<第2工程>
別途、リン酸の20.4質量%水溶液1024.5gにアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム、サンノプロ社製SNディスパーサント5468)13gを添加し、アニオン性界面活性剤を含有するリン酸水溶液1037.5gを調製した。
上記で調製したLi及びSiの各元素を含有する混合液Aに、上記で調製したアニオン系界面活性剤を含むリン酸水溶液を全量40分間かけて室温(25℃)で添加した。アニオン性界面活性剤を含有するリン酸水溶液を添加後、室温(25℃)で18時間攪拌下に熟成を行い、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーBを得た。
【0087】
<第3工程>
熱風入口の温度を250℃に設定したスプレードライヤーに、4.7L/hの供給速度で、上記で得たスラリーBを供給し、反応前駆体480gを得た。
得られた反応前駆体をX線回折分析したところ、Li3.75Si0.750.25
、LiPOが確認された(図1)。
【0088】
<第4工程及び第5工程>
上記で得られた反応前駆体を620℃で6時間、大気雰囲気中で焼成し、焼成品を得た。次いで、焼成品をジェットミルで粉砕を行い、粉砕物を得た。
得られた粉砕物をX線回折分析したところ、粉砕物はLi3.75Si0.750.25を主成分とし、その他に僅かにLiSiOとLiCOの回折ピークが確認された。これをケイリン酸リチウム試料とした。また、得られたケイリン酸リチウム試料のX線回折図を図2に示す。
【0089】
(比較例1)
<第1工程>
純水6510mlに沈降性シリカ(東ソー・シリカ社製、Nipsil-AQ、BET比表面積210m/g)145gを添加し、室温(25℃)で3時間攪拌し分散液を調製した。次いで、得られた分散液に、水酸化リチウム一水和物を633.3g添加し、白濁した混合液を得た(pH12)。この白濁した混合液を室温(25℃)で6時間攪拌下に放置すると僅かに半透明になった。更に混合液を10時間室温(25℃)で攪拌し、Li及びSiの各元素を含有する混合液aを調製した。
なお、攪拌を終了後、5分経つと混合液aには、容器の底に多量の沈降物が目視で観察された。
【0090】
<第2工程>
別途、リン酸の20.4質量%水溶液1037.8gにアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム、サンノプロ社製SNディスパーサント5468)14.5gを添加し、アニオン性界面活性剤を含有するリン酸水溶液1052.3gを調製した。
上記で調製したLi及びSiの各元素を含有する混合液aに、上記で調製したアニオン系界面活性剤を含有するリン酸水溶液を全量40分間かけて室温(25℃)で添加した。アニオン性界面活性剤を含有するリン酸水溶液を添加後、室温(25℃)で18時間攪拌下に熟成を行い、固形分としてLi、Si及びPの各元素を含有するスラリーBを得た。
【0091】
<第3工程、第4工程及び第5工程>
実施例1と同様にして第3工程、第4工程及び第5工程を実施し、粉砕物を得た。
得られた粉砕物をX線回折分析したところ、粉砕物はLi3.75Si0.750.25を主成分とし、その他に僅かにLiSiOとLiCOの回折ピークが確認された。これをケイリン酸リチウム試料とした。また、得られたケイリン酸リチウム試料のX線回折図を図3に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
<諸物性の評価>
実施例及び比較例で得られたケイリン酸リチウム試料について、一次粒子の平均粒子径、比表面積、炭酸リチウムの含有量、LiSiOの含有量及び嵩密度を測定した。
なお、一次粒子の平均粒子径の測定については、走査型電子顕微鏡において倍率1万倍で観察し、任意に抽出した粒子50個以上の平均値を、一次粒子の平均粒子径として求めた。また、その際に一次粒子の粒径のバラツキについて標準偏差σで評価した。この標準偏差σが小さい方が一次粒子の粒径のバラツキが少ないことを表す。
また、炭酸リチウム、LiSiO及び嵩密度ついて下記のようにして評価した。また、実施例1及び比較例1で得られたケイリン酸リチウム試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4図5にそれぞれ示す。図4より、実施例1で得られたケイリン酸リチウム試料は、一次粒子表面が丸みを帯びた形状を有するものであることが分かった。
【0094】
(炭酸リチウムの含有量)
実施例及び比較例で得られたケイリン酸リチウム試料を線源としてCuKα線を用いてX線回折分析し、ケイリン酸リチウムに起因する2θ=22.2°付近の回折ピークの強度(a)に対する炭酸リチウムに起因する2θ=21.3°付近の回折ピークの強度(b)の比(b/a)を求めた。なお、前記ピーク強度比は回折ピークの高さの比である。
(LiSiOの含有量)
実施例及び比較例で得られたケイリン酸リチウム試料を線源としてCuKα線を用いてX線回折分析し、ケイリン酸リチウムに起因する2θ=22.2°付近の回折ピークの強度(a)に対するLiSiOに起因する2θ=19.5°付近の回折ピークの強度(c)の比(c/a)を求めた。なお、前記ピーク強度比は回折ピークの高さの比である。
(嵩密度の評価)
嵩比重測定器の受容器(容量30mL)に試料を、ふるいを通して受容器から溢れるまで受ける。過剰分をへらですり切り、受容器に溜まった試料の重量を測定して嵩密度(g/mL)を算出した。
【0095】
【表2】
注)表中の「-」は未測定を示す。
【0096】
図4図5及び表2から、実施例1で得られたケイリン酸リチウム試料は、比較例1で得られたケイリン酸リチウム試料に比べて一次粒子の粒子が、よく揃ったものであることが分かる。
【0097】
<焼結性の評価>
実施例で得られたケイリン酸リチウム試料0.1gを、500kg/10φで30秒間プレスして圧粉体ディスクを作製した。次いで、得られた圧紛体ディスクを、表3に示す温度で4時間、大気雰囲気中で焼成して焼結させ、相対密度を測定した。
【0098】
【表3】
【0099】
表3より、実施例1のケイリン酸リチウム試料は、焼成温度が高くなっても相対密度がほとんど変化していないことから、750℃で焼結が可能であることが分かる。
また、実施例1のケイリン酸リチウム試料を用いた圧粉体ディスクを、750℃で4時間、大気雰囲気中で焼成した焼結品について上記と同様にしてX線回折分析を行った(図6)。その結果、炭酸リチウムに起因する2θ=21.3°付近の回折ピークは検出されなかった。また、ケイリン酸リチウムに起因する2θ=22.2°付近の回折ピークの強度(a)に対するLiSiOに起因する2θ=19.5°付近の回折ピークの強度(c)との比(c/a)は0.06であった。
【0100】
(実施例2)
第4工程において、反応前駆体の焼成条件を620℃で4時間として焼成品を得、次いで、第5工程で得られた焼成品を乳鉢で粉砕して粉砕物を得た以外は、実施例1と同様にして粉砕物を得た。
得られた粉砕物をX線回折分析したところ、粉砕物はLi3.75Si0.750.25を主成分とし、その他に僅かにLiSiOとLiCOの回折ピークが確認された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)写真より、得られたケイリン酸リチウム試料は一次粒子表面が丸みを帯びた形状を有するものであることを確認した。これをケイリン酸リチウム試料とした。
【0101】
(実施例3)
第4工程において、反応前駆体の焼成条件を650℃で4時間として焼成品を得、次いで、第5工程で得られた焼成品を乳鉢で粉砕して粉砕物を得た以外は、実施例1と同様にして粉砕物を得た。
得られた粉砕物をX線回折分析したところ、粉砕物はLi3.75Si0.750.25を主成分とし、その他に僅かにLiSiOとLiCOの回折ピークが確認された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)写真より、得られたケイリン酸リチウム試料は一次粒子表面が丸みを帯びた形状を有するものであることを確認した。これをケイリン酸リチウム試料とした。
【0102】
(実施例4)
<第1工程・第2工程>
第1工程を実施例1と同様に実施してLi及びSiの各元素を含有する混合液Aを得た。
別途、リン酸の20.4質量%水溶液1024.5gにアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム、サンノプロ社製SNディスパーサント5468)13gを添加し、アニオン性界面活性剤を含有するリン酸水溶液1037.5gを調製した。このリン酸水溶液に対して硝酸アルミニウム9水和物16.1gを純水100gに溶解した溶液を加え、アニオン系界面活性剤及び硝酸アルミニウムを含むリン酸水溶液を調製した。
次いで、上記で調製したLi及びSiの各元素を含有する混合液Aに、上記で調製したアニオン系界面活性剤及び硝酸アルミニウムを含むリン酸水溶液を全量40分間かけて室温(25℃)で添加した。アニオン性界面活性剤及び硝酸アルミニウムを含有するリン酸水溶液を添加後、室温(25℃)で18時間攪拌下に熟成を行い、固形分としてLi、Si、P及びAlの各元素を含有するスラリーBを得た。
<第3工程、第4工程及び第5工程>
次いで、実施例1と同様にして第3工程、第4工程及び第5工程を実施し、粉砕物を得た。
得られた粉砕物をX線回折分析したところ、実施例1の試料と回析ピークのパターンが一致していることから、粉砕物はAlが固溶して含有されたLi3.75Al0.01Si0.750.25を主成分とし、その他に僅かにLiSiOとLiCOの回折ピークが確認された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)写真より、得られたケイリン酸リチウム試料は一次粒子表面が丸みを帯びた形状を有するものであることを確認した。これを副成分元素(M)としてAlを含有するケイリン酸リチウム試料とした。
【0103】
(実施例5)
<第1工程・第2工程>
第1工程を実施例1と同様に実施してLi及びSiの各元素を含有する混合液Aを得た。
別途、リン酸の20.4質量%水溶液1024.5gにアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム、サンノプロ社製SNディスパーサント5468)13gを添加し、アニオン性界面活性剤を含有するリン酸水溶液1037.5gを調製した。このリン酸水溶液に対して酢酸マンガン4水和物10.5gを純水100gに溶解した溶液を加え、アニオン系界面活性剤及び酢酸マンガンを含むリン酸水溶液を調製した。
次いで、上記で調製したLi及びSiの各元素を含有する混合液Aに、上記で調製したアニオン系界面活性剤及び酢酸マンガンを含むリン酸水溶液を全量40分間かけて室温(25℃)で添加した。アニオン性界面活性剤及び酢酸マンガンを含有するリン酸水溶液を添加後、室温(25℃)で18時間攪拌下に熟成を行い、固形分としてLi、Si、P及びMnの各元素を含有するスラリーBを得た。
<第3工程、第4工程及び第5工程>
次いで、実施例1と同様にして第3工程、第4工程及び第5工程を実施し、粉砕物を得た。
得られた粉砕物をX線回折分析したところ、実施例1の試料と回析ピークのパターンが一致していることから、粉砕物はMnが固溶して含有されたLi3.75Mn0.01Si0.750.25を主成分とし、その他に僅かにLiSiOとLiCOの回折ピークが確認された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)写真より、得られたケイリン酸リチウム試料は一次粒子表面が丸みを帯びた形状を有するものであることを確認した。これを副成分元素(M)としてMnを含有するケイリン酸リチウム試料とした。
【0104】
(実施例6)
<第1工程・第2工程>
第1工程を実施例1と同様に実施してLi及びSiの各元素を含有する混合液Aを得た。
別途、リン酸の20.4質量%水溶液1024.5gにアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム、サンノプロ社製SNディスパーサント5468)13gを添加し、アニオン性界面活性剤を含有するリン酸水溶液1037.5gを調製した。このリン酸水溶液に対して酢酸コバルト4水和物11.2gを純水100gに溶解した溶液を加え、アニオン系界面活性剤及び酢酸コバルトを含むリン酸水溶液を調製した。
次いで、上記で調製したLi及びSiの各元素を含有する混合液Aに、上記で調製したアニオン系界面活性剤及び酢酸コバルトを含むリン酸水溶液を全量40分間かけて室温(25℃)で添加した。アニオン性界面活性剤及び酢酸コバルトを含有するリン酸水溶液を添加後、室温(25℃)で18時間攪拌下に熟成を行い、固形分としてLi、Si、P及びCoの各元素を含有するスラリーBを得た。
<第3工程、第4工程及び第5工程>
次いで、実施例1と同様にして第3工程、第4工程及び第5工程を実施し、粉砕物を得た。
得られた粉砕物をX線回折分析したところ、実施例1の試料と回析ピークのパターンが一致していることから、粉砕物はCoが固溶して含有されたLi3.75Co0.01Si0.750.25を主成分とし、その他に僅かにLiSiOとLiCOの回折ピークが確認された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)写真より、得られたケイリン酸リチウム試料は一次粒子表面が丸みを帯びた形状を有するものであることを確認した。これを副成分元素(M)としてCoを含有するケイリン酸リチウム試料とした。
【0105】
<諸物性の評価>
実施例2~6で得られたケイリン酸リチウム試料について、一次粒子の平均粒子径、比表面積、炭酸リチウムの含有量、LiSiOの含有量、タップ密度及び焼結温度を実施例1と同様にして測定した。
【0106】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6