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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074295
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】船舶用ステアリング装置および船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/02 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
B63H25/02 B
B63H25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187171
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】村山 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】玉城 俊
(57)【要約】
【課題】スイッチの操作性を向上させる。
【解決手段】ステアリング装置14は、中央部44と、ホイール部43と、3つのスポーク部(45、46、47)と、を有する。第1のスポーク部45に、互いに近接して配置された、左横移動スイッチ53および左押付スイッチ63を有し、さらに左パドル部57を有する。左横移動スイッチ53は、操船者がパドル部57を操作している手の指で操作可能な位置に配置される。スイッチ53、63は、互いに異なるモード船体2を制御するよう指示するスイッチであり、押される方向の高さが互いに異なる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に対し、回転支点を中心に回転可能に支持された中央部と、
ホイール部と、
前記中央部と前記ホイール部とを接続するスポーク部と、
第1のスイッチと、
前記第1のスイッチに近接して配置された第2のスイッチと、
前記船体に対し前後方向の推力を与えるよう指示するためのパドル部と、を有し、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、互いに異なるモードで前記船体を制御するよう指示するためのスイッチであり、
前記第1のスイッチは、操船者が前記パドル部を操作しながら前記パドル部を操作している手の指で操作可能な位置に配置され、
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは前記スポーク部に配置され、且つ、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、押される方向の高さが互いに異なる、船舶用ステアリング装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは、前記船体に対し横方向への推力を与えるよう指示するためのスイッチである、請求項1に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項3】
前記第1のスイッチの使用頻度は前記第2のスイッチの使用頻度よりも高い、請求項1または2に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項4】
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、互いに重複する第1の機能を有すると共に互いに異なる第2の機能を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項5】
前記第1のスイッチは、押されている期間中に前記船体に対し横方向への推力を発生させ続けるためのスイッチであり、前記第2のスイッチは、押されたことに応じて前記船体に対し横方向への推力を発生させるためのスイッチである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項6】
前記第1のスイッチが押されている期間中に発生する横方向への推力よりも、前記第2のスイッチが押されたことに応じて発生する横方向への推力の方が小さい、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項7】
前記ホイール部が中立位置にある状態において、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは、前記回転支点を中心とする円周方向における前記パドル部が配置された角度範囲内に位置する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項8】
前記ホイール部が前記中立位置にある状態において、操船者から前記ホイール部を眺めたときに前記スポーク部と前記パドル部との少なくとも一部同士が重なる、請求項7に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項9】
前記スポーク部における基準面に対して、前記第1のスイッチは突出し、前記第2のスイッチは凹んでいる、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項10】
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは、前記回転支点を通り左右方向に平行な仮想面より上に位置し且つ、前記回転支点を中心とする円周方向において前記仮想面に対し20°以上40°以下の角度を成す範囲に位置する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項11】
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは、前記回転支点を通る半径方向の共通する仮想直線上に位置する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項12】
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの機能の有効/無効を切り替える第3のスイッチを有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項13】
前記回転支点を中心とする半径方向において、前記回転支点に対して前記第1のスイッチの外縁位置は前記第2のスイッチの外縁位置よりも遠い、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項14】
前記スポーク部は、前記中央部から左上に延びる左スポーク部と、前記中央部から右上に延びる右スポーク部と、を含み、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの組が前記左スポーク部と前記右スポーク部とに配置される、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項15】
前記第1のスイッチの被操作面の高さは、第1の位置の高さと比べて、前記回転支点を通る半径方向における前記第1の位置より外方の第2の位置の高さの方が高い、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置。
【請求項16】
船体に対し、回転支点を中心に回転可能に支持された中央部と、
ホイール部と、
前記中央部と前記ホイール部とを接続するスポーク部と、
第1のスイッチと、
前記第1のスイッチに近接して配置された第2のスイッチと、を有し、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、互いに異なるモードで前記船体を制御するよう指示するためのスイッチであり、
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは前記スポーク部に配置され、且つ、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、押される方向の高さが互いに異なる、船舶用ステアリング装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の船舶用ステアリング装置を備える、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ステアリング装置および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶用ステアリング装置において、各種のスイッチ類を設け、操船をアシストできるようにしたものが知られている。例えば、特許文献1では、船体を横方向に移動させるための左右の横移動スイッチがステアリング装置に配置されている。このほか、船体をその場で回頭させるためのスイッチや、横移動のモードを解除するためのスイッチなど、複数種類のスイッチが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-158628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアリング装置に配置されたスイッチ類には、船体を桟橋等に横付けする際に用いられるものもある。桟橋への横付けの際には、桟橋への船体の接近状態に注意を払いながら、スイッチを操作する必要がある。意図とは異なるスイッチを誤って操作しないためには、状況に応じた頻度でスイッチ類を短時間、目視することが必要であるが、操作性向上の観点からは改善の余地がある。
【0005】
本発明は、スイッチの操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様による船舶用ステアリング装置は、船体に対し、回転支点を中心に回転可能に支持された中央部と、ホイール部と、前記中央部と前記ホイール部とを接続するスポーク部と、第1のスイッチと、前記第1のスイッチに近接して配置された第2のスイッチと、前記船体に対し前後方向の推力を与えるよう指示するためのパドル部と、を有し、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、互いに異なるモードで前記船体を制御するよう指示するためのスイッチであり、前記第1のスイッチは、操船者が前記パドル部を操作しながら前記パドル部を操作している手の指で操作可能な位置に配置され、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチは前記スポーク部に配置され、且つ、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、押される方向の高さが互いに異なる。
【0007】
この構成によれば、船舶用ステアリング装置は、船体に対し、回転支点を中心に回転可能に支持された中央部と、ホイール部と、中央部とホイール部とを接続するスポーク部と、第1のスイッチと、第1のスイッチに近接して配置された第2のスイッチと、船体に対し前後方向の推力を与えるよう指示するためのパドル部と、を有する。第1のスイッチと第2のスイッチとは、互いに異なるモードで船体を制御するよう指示するためのスイッチであり、第1のスイッチは、操船者がパドル部を操作しながらパドル部を操作している手の指で操作可能な位置に配置され、第1のスイッチおよび第2のスイッチはスポーク部に配置され、且つ、第1のスイッチと前記第2のスイッチとは、押される方向の高さが互いに異なる。
【0008】
これにより、第1のスイッチは、操船者がパドル部を操作しながら操作可能である。また、互いに近接するスイッチの誤操作が、高さの違いにより抑制される。従って、パドル部を含めたスイッチの操作性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スイッチの操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】船舶の平面図である。
図2】船舶の側面図である。
図3】第1船舶推進機の構成を示す模式的側面図である。
図4】操船支援システムを含む船舶の制御系のブロック図である。
図5】ステアリング装置をほぼ上方からみた図である。
図6】ステアリング装置をほぼ正面から見た図である。
図7図6のA-A線に沿う模式的な部分断面図である。
図8】ドライブモード処理を示すフローチャートである。
図9】横移動モードまたは押し付けモードで船体に作用する推力を示す模式図である。
図10】パドル対応処理を示す図である。
図11】他の船舶の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る船舶の平面図である。この船舶1に、一実施の形態に係る船舶用ステアリング装置および操船支援システムが適用される。図1では、船舶1の内部の構成の一部が示されている。図2は、船舶1の側面図である。船舶1は、一例としてジェット推進艇であり、ジェットボートまたはスポーツボートと呼ばれるタイプの船である。
【0013】
船舶1は、船体2と、エンジン3L,3Rと、船舶推進機4L,4Rとを含む。船体2は、デッキ11とハル12とを含む。ハル12は、デッキ11の下方に配置されている。デッキ11には、操船席13が配置されている。また、操船席13には、船舶用ステアリング装置としてのステアリング装置14と、リモコンユニット15とが配置されている。
【0014】
船舶1は、第1エンジン3Lと第2エンジン3Rとを含んでいる。船舶1は、第1船舶推進機4Lと第2船舶推進機4Rとを含んでいる。ただし、エンジンの数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。船舶推進機の数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0015】
第1エンジン3Lおよび第2エンジン3Rは船体2に収容される。第1エンジン3Lの出力軸は第1船舶推進機4Lに接続されている。第2エンジン3Rの出力軸は第2船舶推進機4Rに接続されている。第1船舶推進機4Lは、第1エンジン3Lによって駆動され、船体2を移動させる推進力を発生させる。第2船舶推進機4Rは、第2エンジン3Rによって駆動され、船体2を移動させる推進力を発生させる。第1船舶推進機4Lと第2船舶推進機4Rは左右に並んで配置されている。
【0016】
図3は、第1船舶推進機4Lの構成を示す模式的側面図である。図3においては第1船舶推進機4Lの一部が断面で示されている。第1船舶推進機4Lは、船体2のまわりの水を吸い込んで噴射するジェット推進機である。
【0017】
図3に示すように、第1船舶推進機4Lは、第1インペラシャフト21Lと、第1インペラ22Lと、第1インペラハウジング23Lと、第1ノズル24Lと、第1デフレクタ25Lと、第1リバースバケット26Lとを含む。第1インペラシャフト21Lは、前後方向に延びるように配置されている。第1インペラシャフト21Lの前部は、カップリング28Lを介してエンジン3Lの出力軸に接続されている。第1インペラシャフト21Lの後部は、第1インペラハウジング23L内に配置されている。第1インペラハウジング23Lは、水吸引部27Lの後方に配置されている。第1ノズル24Lは、第1インペラハウジング23Lの後方に配置されている。
【0018】
第1インペラ22Lは、第1インペラシャフト21Lの後部に取り付けられている。第1インペラ22Lは、第1インペラハウジング23L内に配置されている。第1インペラ22Lは、第1インペラシャフト21Lとともに回転して、水吸引部27Lから水を吸引する。第1インペラ22Lは、吸引した水を第1ノズル24Lから後方に噴射させる。
【0019】
第1デフレクタ25Lは、第1ノズル24Lの後方に配置されている。第1リバースバケット26Lは、第1デフレクタ25Lの後方に配置されている。第1デフレクタ25Lは、第1ノズル24Lからの水の噴射方向を左右方向に転換するように構成されている。すなわち、第1デフレクタ25Lの向きが左右方向に変更されることにより、船舶1の進行方向が左右に変更される。
【0020】
第1ステアリングアクチュエータ32Lは、第1船舶推進機4Lの第1デフレクタ25Lに接続されている。第1リバースバケット26Lは、前進位置と後進位置と中立位置とに切換可能に設けられている。第1リバースバケット26Lが前進位置にある状態では、第1ノズル24Lからの水は後方へ向けて噴射される。これにより船舶1が前進する。第1リバースバケット26Lが後進位置にある状態では、第1ノズル24Lからの水の噴射方向が前方に転換される。これにより船舶1が後進する。
【0021】
ここで、第1リバースバケット26Lの中立位置は、前進位置と後進位置との間の位置である。第1リバースバケット26Lは、中立位置において、第1ノズル24Lからの噴流の向きを船体2の左方または右方へ変更する。従って、第1リバースバケット26Lは、中立位置において、船体2を前進させる推進力を低減させる。これにより、船体2が減速されるか、あるいは船体2が停止位置に保持される。なお、図示を省略するが、第2船舶推進機4Rは、第1船舶推進機4Lと同様に構成される。
【0022】
次に、船舶1の制御系について説明する。図4は、本実施の形態における操船支援システムを含む船舶1の制御系のブロック図である。
【0023】
操船支援システムは、コントローラ40(制御部)およびステアリング装置14を含む。コントローラ40は、CPUなどの演算装置と、RAM,ROMなどの記憶装置とを含んでおり(図示せず)、船舶1を制御するようにプログラムされている。
【0024】
船舶1は、第1ステアリングアクチュエータ32Lと第1シフトアクチュエータ34Lとを含んでいる。コントローラ40は、第1エンジン3L、第1ステアリングアクチュエータ32L、及び第1シフトアクチュエータ34Lと通信可能に接続されている。
【0025】
第1ステアリングアクチュエータ32Lは、第1デフレクタ25Lの舵角を変更する。第1ステアリングアクチュエータ32Lは、例えば電動モータである。あるいは、第1ステアリングアクチュエータ32Lは、油圧シリンダ等の他のアクチュエータであってもよい。
【0026】
第1シフトアクチュエータ34Lは、第1船舶推進機4Lの第1リバースバケット26Lに接続されている。第1シフトアクチュエータ34Lは、第1リバースバケット26Lの位置を前進位置と後進位置と中立位置とに切り換える。第1シフトアクチュエータ34Lは、例えば電動モータである。あるいは、第1シフトアクチュエータ34Lは、油圧シリンダ等の他のアクチュエータであってもよい。
【0027】
船舶1は、第2ステアリングアクチュエータ32Rと第2シフトアクチュエータ34Rとを含んでいる。第2ステアリングアクチュエータ32Rは、第2船舶推進機4Rの第2デフレクタ25Rに接続されている。第2シフトアクチュエータ34Rは、第2船舶推進機4Rの第2リバースバケット26Rに接続されている。これらの構成は、第2船舶推進機4Rを制御するための装置であり、上述した第1ステアリングアクチュエータ32L及び第1シフトアクチュエータ34Lと同様の構成である。コントローラ40は、第2ステアリングアクチュエータ32R、及び第2シフトアクチュエータ34Rと通信可能に接続されている。
【0028】
なお、コントローラ40は、単一の装置であってもよいし、互いに別体の複数のコントロールユニットによって構成されてもよい。コントローラ40は、ステアリング装置14及びリモコンユニット15と通信可能に接続されている。
【0029】
リモコンユニット15は、エンジン3L,3Rの出力の調整、及び前後進の切換のために操作される。リモコンユニット15は、第1スロットルレバー15Lと第2スロットルレバー15Rとを含む。第1スロットルレバー15Lと第2スロットルレバー15Rとは、それぞれゼロ操作位置から前進方向と後進方向とに操作可能である。
【0030】
リモコンユニット15は、第1,第2スロットルレバー15L,15Rの操作量及び操作方向を示す信号を出力する。通常操船モード(後述)において、コントローラ40は、第1スロットルレバー15Lの操作量に応じて、第1エンジン3Lの回転速度を制御する。コントローラ40は、第2スロットルレバー15Rの操作量に応じて、第2エンジン3Rの回転速度を制御する。コントローラ40は、第1スロットルレバー15Lの操作方向に応じて、第1シフトアクチュエータ34Lを制御する。コントローラ40は、第2スロットルレバー15Rの操作方向に応じて、第2シフトアクチュエータ34Rを制御する。これにより、船舶1の前後進が切り換えられる。
【0031】
船舶1は、表示部39および設定操作部38を含む。表示部39はディスプレイを備え、コントローラ40からの指示に基づき各種情報を表示する。設定操作部38は、操船に関する操作をするための操作子のほか、各種設定を行うための設定操作子、各種指示を入力するための入力操作子を含む(いずれも図示せず)。設定操作部38で入力された信号はコントローラ40に供給される。
【0032】
ステアリング装置14は、左横移動スイッチ53、右横移動スイッチ54、その場回頭スイッチ55、RPM調整スイッチ56、左パドル部57、右パドル部58、有効/無効切替スイッチ59、左押付スイッチ63および右押付スイッチ64を備える。これらは操船者によって操作され、操作信号がコントローラ40に供給される。各スイッチおよびパドル部の機能および配置については後述する。
【0033】
ここで、各種の操船モードについて説明する。操船モードには、大別して「通常操船モード」と「ドライブモード」とがある。ドライブモードには、「横推力発生モード」と「その場回頭モード」とが含まれる。横推力発生モードには、「横移動モード」(第1のモード)と「押し付けモード」(第2のモード)とがある。詳細には、横移動モードには、左横移動モードと右横移動モードとがあり、押し付けモードには、左押し付けモードと右押し付けモードとがある。
【0034】
通常操船モードでは、コントローラ40は、ホイール部43の操作に応じて、船体2のバウ方向を制御する。ステアリング装置14は、ホイール部43の操作位置を示す操作信号をコントローラ40に出力する。コントローラ40は、ホイール部43の操作に応じてステアリングアクチュエータ32L,32Rを制御する。これにより、船体2のバウ方向が左右に変更される。また、通常操船モードでは、コントローラ40は、リモコンユニット15の操作に応じて船舶推進機4L,4Rを制御する。
【0035】
ドライブモードでは、コントローラ40は、ステアリング装置14のスイッチおよびパドルの操作に応じて、船舶推進機4L,4Rを制御する。すなわち、ステアリング装置14の各スイッチおよびパドル部の機能はドライブモードで有効となる。
【0036】
有効/無効切替スイッチ59は、操船モードを通常操船モードとドライブモードとに切り替えるためのスイッチであり、押される度に操船モードが切り替わる。
【0037】
横推力発生モード(横移動モード、押し付けモード)は、船体2を横方向へ平行移動させる推力を発生させるモードである。横移動モードのうち、左横移動モード、右横移動モードはそれぞれ、船体2を左方、右方へ横移動させるように船舶推進機4L,4Rを制御するモードである。また、押し付けモードのうち、左押し付けモード、右押し付けモードはそれぞれ、船体2が桟橋等の着岸場所に横付けで押し付けられた状態が維持されるように、船舶推進機4L,4Rを制御するモードである。横移動モードと押し付けモードとでは、船体2を横方向へ平行移動させるための推力が船体2に作用する点で共通する。ただし、横移動モード時よりも押し付けモード時の方が、船体2に作用する横方向の推力は小さい。
【0038】
ここで、平行移動は、船体2が重心G(図1)を中心にヨー方向に回転することなく水平方向に移動することを意味する。例えば、回頭を伴わない横移動モードでは、船体2の重心Gが左方または右方に移動する。なお、横推力発生モード(横移動モードまたは押し付けモード)において、前後方向の推力を加えることで、船体2を斜め方向(斜め左右前後)に平行移動させることも可能である(図9図10で後述)。その場回頭モードは、重心Gを中心に船体2をヨー方向に回転させるモードである。
【0039】
図5は、ステアリング装置14をほぼ上方からみた図である。図6は、ステアリング装置14をほぼ正面から見た図である。
【0040】
ステアリング装置14は、ステアリングマスタ41と、左パドル部57および右パドル部58が設けられたパドルカバー49とを有する(図5)。また、ステアリング装置14は、中央部44と、環状のホイール部43と、3つのスポーク部(第1のスポーク部45、第2のスポーク部46、第3のスポーク部47)と、を有する(図6)。スポーク部45、46、47は中央部44とホイール部43とを接続し、これらにより、一体に回転するステアリングホイールが構成される。なお、さらに左パドル部57、右パドル部58およびパドルカバー49を含めたものをステアリングホイールと称してもよい。ホイール部43は、操船者によって把持される部分である。
【0041】
中央部44は、ステアリング軸42の軸線である回転支点C0回りに回転可能に船体2に支持されている。図6では、ステアリング装置14を回転支点C0の軸線方向前方から見ている。
【0042】
以下、回転支点C0を中心とする円周方向における位置関係や角度関係については、ステアリングホイールが図6に示す中立位置にある状態で特定する。ここでいう中立位置は、船体2を直進させるときのホイール部43の回転位置である。回転支点C0の軸線方向からみて、スポーク部45、46、47の各幅方向中心位置と回転支点C0とを通る仮想直線を、それぞれ仮想直線L1、L2、L3とする。仮想直線L1は回転支点C0から斜め左上に延び、仮想直線L2は回転支点C0から斜め右上に延びる。従って、第1のスポーク部45は、中央部44から左上に延びる左スポーク部であり、第2のスポーク部46は、中央部44から右上に延びる右スポーク部である。
【0043】
回転支点C0を中心とする円周方向において、仮想直線L1と仮想直線L2と仮想直線L3とは、互いに120°を成す。すなわち、スポーク部45、46、47は、120°の角度間隔で配置されている。
【0044】
スポーク部45、46、47および中央部44の表面48は連続した基準面である。スイッチ53、54、55、56、59、63、64は、表面48に配置されている。スイッチ53、54、55、56、59、63、64はいずれも、表面48に直交する方向に移動可能な押しボタン式のスイッチである。
【0045】
第1のスポーク部45に、回転支点C0を中心とする半径方向における遠い側から順に、左横移動スイッチ53、左押付スイッチ63、その場回頭スイッチ55が配置されている。左横移動スイッチ53と左押付スイッチ63とは互いに近接して隣り合っている。左横移動スイッチ53および左押付スイッチ63は、共通する仮想直線L1上に位置している。
【0046】
第2のスポーク部46に、回転支点C0を中心とする半径方向における遠い側から順に、右横移動スイッチ54、右押付スイッチ64、RPM調整スイッチ56が配置されている。右横移動スイッチ54と右押付スイッチ64とは互いに近接して隣り合っている。右横移動スイッチ54および右押付スイッチ64は、共通する仮想直線L2上に位置している。
【0047】
回転支点C0を中心とする半径方向において、回転支点C0に対して左横移動スイッチ53の外縁位置は左押付スイッチ63の外縁位置よりも遠い。同様に、半径方向において、回転支点C0に対して右横移動スイッチ54の外縁位置は右押付スイッチ64の外縁位置よりも遠い。
【0048】
スイッチ53、63の組とスイッチ54、64の組とは、左右一対に設けられる。回転支点C0の軸線方向からみて、スイッチ53、63の組とスイッチ54、64の組とは、仮想直線L3を延長した直線に対して線対称の位置に配置されている。同様に、その場回頭スイッチ55とRPM調整スイッチ56とは、仮想直線L3を延長した直線に対して線対称の位置に配置されている。第3のスポーク部47に、有効/無効切替スイッチ59(第3のスイッチ)が配置されている。
【0049】
左パドル部57および右パドル部58は、パドルカバー49から突出するよう設けられている(図5)。左パドル部57および右パドル部58は、前後方向に回動自在である。パドル部57、58は、操船者が操作することで、初期位置に対して前方に回動し、操作する手を離すと初期位置に復帰する。パドル部57、58は、初期位置から最大操作位置までの間の任意の位置に操作可能である。ステアリングマスタ41に対して、パドルカバー49、左パドル部57および右パドル部58は、回転支点C0を中心にホイール部43と一体に回転する。
【0050】
図6に示すように、回転支点C0の軸線方向からみて、左パドル部57と右パドル部58とは、仮想直線L3を延長した直線に対して線対称の位置に配置されている。左横移動スイッチ53は、操船者が左パドル部57を操作しながら、左パドル部57を操作している手の指で操作可能な位置に配置されている。右横移動スイッチ54は、操船者が右パドル部58を操作しながら、右パドル部58を操作している手の指で操作可能な位置に配置されている。
【0051】
左パドル部57は、回転支点C0を中心とする円周方向における角度範囲θLに存在する。右パドル部58は、円周方向における角度範囲θRに存在する。従って、ホイール部43が中立位置にある状態において、スイッチ53、63は、円周方向における左パドル部57が配置された角度範囲θL内に位置し、スイッチ54、64は、円周方向における右パドル部58が配置された角度範囲θR内に位置する。
【0052】
回転支点C0を通り左右方向に平行な仮想面を仮想面50(図6)とする。ホイール部43が中立位置にある状態において、スイッチ53、63は、仮想面50より上に位置し且つ、回転支点C0を中心とする円周方向において、仮想面50に対し20°以上40°以下の角度を成す範囲に位置する。スイッチ54、64についても同様であり、角度を図示していないが、仮想面50に対し20°以上40°以下の角度を成す範囲に位置する。なお、角度範囲θL、θRも、仮想面50に対し20°以上40°以下の角度を成す範囲に包含されている。
【0053】
また、ホイール部43が中立位置にある状態において、回転支点C0の軸線方向において操船者からホイール部43を眺めたとき、第1のスポーク部45と左パドル部57との少なくとも一部同士が重なり、第2のスポーク部46と右パドル部58との少なくとも一部同士が重なる。
【0054】
図7は、図6のA-A線に沿う模式的な部分断面図である。なお、A-A線は仮想直線L1を通る。左横移動スイッチ53と左押付スイッチ63とは、押される方向の高さ(被操作面の位置)が互いに異なる。すなわち、左横移動スイッチ53は表面48よりも突出しており、左押付スイッチ63は表面48よりも凹んでいる。スイッチ54、64の高さ関係は、スイッチ53、63の高さ関係と同様である。なお、有効/無効切替スイッチ59、その場回頭スイッチ55およびRPM調整スイッチ56も左押付スイッチ63と同様に、表面48よりも凹んでいてもよい。
【0055】
また、左横移動スイッチ53の被操作面53aは、回転支点C0を中心とする半径方向における外方に向かうにつれて高くなっている。これにより、パドル操作をしながらであっても被操作面53aを触覚により認識しやすくなる。なお、半径方向において被操作面53aの高さが一様に変化してもよい。しかし、被操作面53aを認識しやすくする観点からは、半径方向において被操作面53aの高さが一様に変化することは必須でなく、一部に高さが変化しない領域が存在してもよい。従って、被操作面53aの高さは、第1の位置(例えば、半径方向で回転支点C0に最も近い位置)の高さと比べて、第1の位置より外方の第2の位置(例えば、半径方向で回転支点C0から最も遠い位置)の高さの方が高くてもよい。
【0056】
また、図7に点線で示すように、被操作面53aの形状を、半径方向における外方に近い位置にリップ部53bが形成される形状としてもよい。リップ部53bを設けることで、被操作面53aを触覚によりさらに認識しやすくなるだけでなく、指が滑りにくく操作しやすくなる。なお、右横移動スイッチ54の被操作面も被操作面53aと同様に構成されてもよい。
【0057】
次に、ステアリング装置14の各スイッチおよびパドル部の機能について説明する。併せてコントローラ40による制御を説明する。
【0058】
主として通常操船モードにおいて、コントローラ40は、ホイール部43の操作に応じて、船体2のバウ方向を制御する。ステアリング装置14は、ホイール部43の操作位置を示す操作信号をコントローラ40に出力する。コントローラ40は、ホイール部43の操作に応じてステアリングアクチュエータ32L,32Rを制御する。これにより、船体2のバウ方向が左右に変更される。
【0059】
主としてドライブモードにおいて、コントローラ40は、スイッチ53、54、55、56、59、63、64、パドル部57、58の操作信号に基づいて、2つの船舶推進機4L,4Rを制御する。
【0060】
左パドル部57(後進用パドル部)、右パドル部58(前進用パドル部)はそれぞれ、後方、前方への推力を船体2に対して与えるよう指示するための操作部である。コントローラ40は、主としてドライブモードにおいて、パドル部57、58の操作量に応じた推力を船体2に作用させるよう制御する。パドル部57、58は通常、ホイール部43を握りながら操作される。
【0061】
表面48に配置されたスイッチ53、54、55、56、63、64の機能は、ドライブモードにおいて有効になる。従って、有効/無効切替スイッチ59は、スイッチ53、54、55、56、63、64の機能の有効/無効を切り替えるスイッチである。
【0062】
左横移動スイッチ53、右横移動スイッチ54、左押付スイッチ63および右押付スイッチ64は、横推力発生モードの実施を指示するためのモードスイッチである。
【0063】
左横移動スイッチ53および右横移動スイッチ54は、横移動モードの実施を指示するための第1のスイッチであり、押されている期間中に船体2に対し横方向への推力を発生させ続けるためのスイッチである。コントローラ40は、スイッチ53、54による指示に応じて船舶推進機4L,4Rを制御し、横移動モードを実施する。コントローラ40は、スイッチ53、54の操作期間中、横移動モードを維持する。
【0064】
左押付スイッチ63および右押付スイッチ64は、押し付けモードの実施を指示するための第2のスイッチであり、押されたことに応じて船体2に対し横方向への推力を発生させるためのスイッチである。コントローラ40は、スイッチ63、64による指示に応じて船舶推進機4L,4Rを制御し、押し付けモードを実施する。コントローラ40は、スイッチ63、64が操作された後、解除操作がされるまでの期間中、押し付けモードを維持する。
【0065】
従って、スイッチ53、54とスイッチ63、64とは、互いに異なるモード(横移動モードと押し付けモード)で船体2を制御するよう指示するためのスイッチでもある。言い換えると、スイッチ53、54、63、64はいずれも、船体2に対し横方向への推力を与えるよう指示するためのスイッチである点で共通する。ただし、これらは主として船体横付け時に使用され、スイッチ53、54の使用頻度は、スイッチ63、64の使用頻度よりも高い。また、スイッチ53、54とスイッチ63、64とは、船体2に対し横方向への推力を与えることを指示する機能(第1の機能)を有する点で、互いに重複する機能を有していると言える。一方、スイッチ53、54は、押されている期間中に船体2に対し横方向への推力を発生させ続け、スイッチ63、64は、押されたことに応じて船体2に対し横方向への推力を発生させるためのスイッチである。この観点では、スイッチ53、54とスイッチ63、64とは、互いに異なる第2の機能を有する。
【0066】
その場回頭スイッチ55は、その場回頭モードの開始を指示するためのスイッチである。その場回頭モードでは、コントローラ40は、ホイール部43の回転操作に応じて、船舶推進機4L,4Rを制御して船体2をその場で左方または右方に回転させる。
【0067】
RPM調整スイッチ56は、エンジン3L,3Rの回転数を少なくとも2段階(例えば、ローとハイ)に切り替える。エンジン3L,3Rの回転数の切り替えは、ドライブモードにおける各モードに適用される。切り替え可能なエンジン3L,3Rの回転数の段階は、モードごとに予め設定されている。
【0068】
図8は、ドライブモード処理を示すフローチャートである。この処理は、コントローラ40において、ROMに格納されたプログラムをCPUがRAMに展開して実行することにより実現される。この処理は、通常操船モードにおいて有効/無効切替スイッチ59が押下操作されたことに応じて開始される。
【0069】
なお、この処理において、左横移動モード、右横移動モード、左押し付けモード、右押し付けモード、その場回頭モードは、排他的に実施される。従って、これらのうちあるモードから別のモードへ移行する際には、実施中であったモードが解除される。
【0070】
ステップS101では、コントローラ40は、操船モードをドライブモードへ移行させる。ステップS102では、コントローラ40は、ステアリング装置14の操作(スイッチ53~56、59、63、64、パドル部57、58、ホイール部43のいずれかの操作)が検出されたか否かを判別する。ここでいうステアリング装置14の操作には、スイッチ53~56、59、63、64の押下操作または離操作、パドル部57、58の押し込み深さの変更、ホイール部43の回転操作が含まれる。
【0071】
そして、ステアリング装置14の操作が検出されない場合は、コントローラ40は、ステップS115に進み、ドライブモードの解除操作が検出されたか否かを判別する。ここで、ドライブモードの解除操作には、ドライブモード中における有効/無効切替スイッチ59の新たな押下操作が該当する。なお、このほかに、ドライブモードの解除操作が割り当てられたスイッチの操作があったことで解除操作が検出されたと判別してもよい。
【0072】
コントローラ40は、ドライブモードの解除操作が検出されない場合は、ステップS102に戻り、ドライブモードの解除操作が検出された場合は、ステップS116に進む。ステップS116では、コントローラ40は、操船モードを通常操船モードへ移行させ、図8に示す処理を終了する。
【0073】
ステップS102で、ステアリング装置14の操作が検出された場合は、コントローラ40は、操作されたスイッチやパドル部等および操作態様に応じた処理へ移行する。
【0074】
まず、検出された操作が、左横移動スイッチ53または右横移動スイッチ54の操作である場合(S103)は、コントローラ40は、ステップS109を実行してからステップS115に進む。
【0075】
ステップS109では、コントローラ40は、横移動モードでない場合において、左横移動スイッチ53が新たに押下操作された場合は左横移動モードへ移行し、右横移動スイッチ54が新たに押下操作された場合は右横移動モードへ移行する。ここで、「新たに押下操作された」とは、非操作状態から押下状態へ移行したことを意味する(以下同様)。一方、コントローラ40は、横移動モード中において、左横移動スイッチ53または右横移動スイッチ54が離操作された場合は、横移動モードを解除する。ここで、「離操作」は、操作状態から非押下状態へ移行したことを意味する(以下同様)。
【0076】
なお、左横移動モード中に右横移動スイッチ54が新たに押下操作された場合は、横移動モードを解除してもよいし、右横移動モードへ移行してもよい。右横移動モード中に左横移動スイッチ53が新たに押下操作された場合は、横移動モードを解除してもよいし、左横移動モードへ移行してもよい。
【0077】
ステップS109で左横移動モードまたは右横移動モードへ移行した場合は、コントローラ40は、船舶推進機4L,4Rを制御し、船体2を左または右へ平行移動させる推力を作用させる。従って、桟橋に接触していない場合は、船体2は左または右へ横移動する。これについて図9で説明する。
【0078】
図9(a)~(e)は、横移動モードまたは押し付けモードで船体2に作用する推力を示す模式図である。便宜上、船体2が回頭するときの回転中心位置は重心Gと一致するとする。また、第1船舶推進機4Lと第2船舶推進機4Rとは、前後方向における船体2の中心線に対して左右対称位置に配置されているとする。
【0079】
図9(a)では、右横移動モードまたは右押し付けモードのときに作用する推力を示している。図9(a)に示すように、右横移動モードまたは右押し付けモードにおいては、第1船舶推進機4Lの第1推力作用線4L-Pと第2船舶推進機4Rの第2推力作用線4R-Pとは、重心Gで交わる。この場合、第1船舶推進機4Lの第1推力FLは右前方のベクトルであり、第2船舶推進機4Rの第2推力FRは右後方のベクトルである。第1推力FLと第2推力FRとの合力が合力FSとなる。合力FSは右方向を向くベクトルとなる。従って、船体2に対しては、重心Gを作用点F0として、右方向の合力FSが推力として作用する。従って、船体2に回転モーメントが作用しないため、船体2は回頭することなく右方向に平行横移動する。
【0080】
なお、左横移動モードまたは左押し付けモードの場合は、図9(a)に示す例に対し、左右方向を反転させたものとして理解できる。なお、横移動モードと比べて押し付けモードでは、合力FSの方向はそのままで、合力FSの大きさが小さくなるように制御される。なお、横移動モードと押し付けモードとで合力FSが同じであってもよい。図9(b)~(d)については図10の説明と併せて後述する。
【0081】
ステップS102での判別の結果、検出された操作が、左押付スイッチ63または右押付スイッチ64の操作である場合(S104)は、コントローラ40は、ステップS110を実行してからステップS115に進む。
【0082】
ステップS110では、コントローラ40は、押し付けモードでない場合において、左押付スイッチ63が押下操作された場合は左押し付けモードへ移行し、右押付スイッチ64が押下操作された場合は右押し付けモードへ移行する。また、コントローラ40は、右押し付けモード中に左押付スイッチ63が押下操作された場合は左押し付けモードへ移行し、左押し付けモード中に右押付スイッチ64が押下操作された場合は右押し付けモードへ移行する。一方、コントローラ40は、左押し付けモード中に左押付スイッチ63が押下操作された場合は左押し付けモードを解除し、右押し付けモード中に右押付スイッチ64が押下操作された場合は右押し付けモードを解除する。
【0083】
ステップS110で左押し付けモードまたは右押し付けモードへ移行した場合は、コントローラ40は、船舶推進機4L,4Rを制御し、船体2を左または右へ平行移動させる推力(横移動モード時より小さい合力FS)を作用させる。このとき、船体2が桟橋等に接触または十分に近づいていれば、桟橋等に押し付けられた状態が維持される。
【0084】
ステップS102での判別の結果、検出された操作が、その場回頭スイッチ55の操作である場合(S105)は、コントローラ40は、ステップS111を実行してからステップS115に進む。
【0085】
ステップS111では、コントローラ40は、その場回頭モードでない場合において、その場回頭スイッチ55が新たに押下操作された場合は、その場回頭モードへ移行する。一方、その場回頭モード中にその場回頭スイッチ55が新たに押下操作された場合は、その場回頭モードを解除する。
【0086】
ステップS102での判別の結果、検出された操作が、RPM調整スイッチ56の操作である場合(S106)は、コントローラ40は、ステップS112を実行してからステップS115に進む。
【0087】
ステップS112では、コントローラ40は、RPM調整スイッチ56が新たに押下操作された場合は、現在のモードに対応した段階に従ってエンジン3L,3Rの回転数を段階的に切り替える。段階数が2であるモードの場合は、RPM調整スイッチ56が操作される度に、エンジン回転数が第1の値と第2の値とで交互に切り替わる。段階数が3以上である場合は、RPM調整スイッチ56が操作される度に、設定されるエンジン回転数を循環させるか、または往復させてもよい。
【0088】
ステップS102での判別の結果、検出された操作が、その他の操作である場合(S107)は、コントローラ40は、ステップS113で、その他の処理を実行してからステップS115に進む。
【0089】
ステップS113では、例えば、その場回頭モード中に、その他の操作としてホイール部43の回転操作があった場合は、ホイール部43の回転量に応じた速度で船体2を回頭させるよう制御する。船体2を回頭させるためには、第1推力作用線4L-Pまたは第2推力作用線4R-Pのいずれかまたは双方の角度を変更することで、合力FSのベクトルの延長線が重心Gを通らないようにすればよい。作用点F0と重心Gとは一致しなくなる。このほか、ステップS113では、不図示のスイッチの操作があれば、それに対応する処理も実行してもよい。
【0090】
ステップS102での判別の結果、検出された操作が、左パドル部57または右パドル部58である場合(S108)は、コントローラ40は、ステップS114で、後述するパドル対応処理(図10)を実行してからステップS115に進む。
【0091】
図10は、図8のステップS114で実行されるパドル対応処理を示す図である。
【0092】
ステップS201では、コントローラ40は、現在、横移動モードの実施中であるか否かを判別する。コントローラ40は、横移動モードの実施中である場合はステップS202に進み、横移動モードの実施中でない場合はステップS203に進む。
【0093】
ステップS202では、コントローラ40は、船体2に作用する前後方向の推力の大きさを、パドル部の操作量に応じて制御する。つまり、コントローラ40は、操作されたパドル部に対応する方向に、操作量に応じた大きさの推力を発生させるよう、船舶推進機4L,4Rの少なくとも1つを制御する。具体的には、コントローラ40は、左パドル部57が操作された場合は、左パドル部57の操作量に応じて前後方向への推力の大きさを変化させ、右パドル部58が操作された場合は、右パドル部58の操作量に応じて前後方向への推力の大きさを変化させる。コントローラ40は、パドル部の操作量が大きいほど前後方向の推力の大きさを大きくするよう制御する。
【0094】
本実施の形態では、推力変化の効率を高める観点で、コントローラ40は、前進成分の推力を発揮している推進機の推力だけを変化させる。前進成分の推力を発揮している推進機には、右横移動モード中または右押し付けモード中においては船舶推進機4Lが該当し、左横移動モード中または左押し付けモード中においては船舶推進機4Rが該当する。なお、船舶推進機4L,4Rの双方の推力を変化させてもよいし、後進成分の推力を発揮している推進機の推力だけを変化させてもよい。
【0095】
一例を挙げる。例えば、図9(a)に示す右横移動モード中に、右パドル部58が新たに操作されたとする。すると、操作後の右パドル部58の操作量(操作深さ)に応じた前方への推力を発生させる。そのためにコントローラ40は、船舶推進機4Lの推力を上昇させるか、または船舶推進機4Rの推力を減少させるか、の少なくともいずれかを行う。ここでは、コントローラ40は、推力変化の効率を高める観点で、前進成分の推力を発揮している船舶推進機4Lの推力だけを上昇させる。
【0096】
船舶推進機4Lの推力だけを変化(上昇)させることで、図9(b)に示す状態となる。なお、第1推力作用線4L-P、第2推力作用線4R-Pの角度は変更されない。図9(b)では、図9(a)の状態に対し、第2推力FRを変化させずに第1推力FLだけを上昇させた場合に作用する推力を示している。船舶推進機4Lの推力だけを上昇させることで、作用点F0と重心Gとが一致したまま、合力FSのベクトル方向が斜め右前方を向く。これにより、船体2は斜め右前方に平行移動する。
【0097】
一方、図9(a)に示す右横移動モード中に、左パドル部57が新たに操作されたとする。この場合、コントローラ40は、船舶推進機4Lの推力だけを減少させる。すると、図9(c)に示す状態となる。第2推力FRを変化させずに第1推力FLだけを減少させることで、作用点F0と重心Gとが一致したまま、合力FSのベクトルが斜め右後方を向く。これにより、船体2は斜め右後方に平行移動する。
【0098】
一方、左横移動モード中におけるパドル操作による前後方向の推力制御は、右横移動モード中の場合と左右対称に考えればよい。
【0099】
例えば、左横移動モード中に右パドル部58が新たに操作されると、コントローラ40は、前進成分の推力を発揮している船舶推進機4Rの推力だけを上昇させる。すると、図9(d)に示す状態となる。合力FSのベクトル方向が斜め左前方を向き、船体2は斜め左前方に平行移動する。一方、左横移動モード中に左パドル部57が新たに操作されると、コントローラ40は、船舶推進機4Rの推力だけを減少させる。すると、図9(e)に示す状態となる。合力FSのベクトルが斜め左後方を向き、船体2は斜め左後方に平行移動する。
【0100】
なお、パドル部の操作が、操作方向の途中位置から操作量を増加させる操作であった場合は、コントローラ40は、生じさせていた前後方向の推力を、操作量に応じて増加させるよう制御する。
【0101】
一方、パドル部の操作が、操作量を減少させる操作であった場合は、コントローラ40は、生じさせていた前後方向の推力を、現在の操作量に応じて減少させるよう制御する。例えば、右横移動モード中で且つ斜め右前方への平行移動中に、右パドル部58の操作量が減少した場合は、コントローラ40は、船舶推進機4Lの推力を減少させる。これにより、合力FSのベクトル方向がより右向きに近くなる。また、右横移動モード中で且つ斜め右後方への平行移動中に、左パドル部57の操作量が減少した場合は、コントローラ40は、船舶推進機4Lの推力を増加させる。これにより、合力FSのベクトル方向がより右向きに近くなる。
【0102】
また、左横移動モード中で且つ斜め左方への平行移動中に、右パドル部58の操作量が減少した場合は、コントローラ40は、船舶推進機4Rの推力を減少させる。これにより、合力FSのベクトル方向がより左向きに近くなる。また、左横移動モード中で且つ斜め左後方への平行移動中に、左パドル部57の操作量が減少した場合は、コントローラ40は、船舶推進機4Rの推力を増加させる。これにより、合力FSのベクトル方向がより左向きに近くなる。
【0103】
操船者は、横移動モード中はスイッチ53、54のいずれかを操作している。この状態でパドル部57、58のいずれかを操作する必要がある。しかし、スイッチ53は角度範囲θL内に位置し、スイッチ54は角度範囲θR内に位置する(図6)。従って、横移動スイッチ53、54を押しながらパドル部57、58を容易に操作可能であるので、操作性が高い。
【0104】
ステップS203では、コントローラ40は、現在、押し付けモードの実施中であるか否かを判別する。コントローラ40は、押し付けモードの実施中である場合はステップS204に進み、押し付けモードの実施中でない場合はステップS205に進む。
【0105】
ステップS204では、コントローラ40は、船体2に作用する前後方向の推力の大きさを、パドル部の操作回数に応じて制御する。つまり、コントローラ40は、操作されたパドル部に対応する方向(前方または後方)に、操作回数に応じた大きさの推力を発生させるよう、船舶推進機4L,4Rの少なくとも1つを制御する。なお、前後方向の推力変化の制御に限れば、左押し付けモードと右押し付けモードとの区別はない。
【0106】
コントローラ40は、パドル部の操作回数が増える度に前後方向の推力の大きさを段階的に(1段階ずつ)変化させるよう制御する。具体的には、前後方向の推力段階は複数段階、予め定められている。+方向が前進、-方向が後進とする。コントローラ40は、左パドル部57が操作される度に、推力段階を後進方向に1段階(前進方向に-1段階)変位させ、右パドル部58が操作される度に、推力段階を前進方向に1段階(前進方向に+1段階)変位させる。
【0107】
推力変化の効率を高める観点で、コントローラ40は、前進成分の推力を発揮している推進機の推力だけを段階的に変化させる。なお、船舶推進機4L,4Rの双方の推力を変化させてもよいし、後進成分の推力を発揮している推進機の推力だけを段階的に変化させてもよい。前後方向の推力を変化させるための船舶推進機4L,4Rの制御は、横移動モードでの制御(S202)と同様である。
【0108】
図9(a)を、仮に右押し付けモード中で、しかも船体2が横付けの接岸状態であるとする。この状態で右パドル部58が1回操作されると、前進方向への推力が1段階増加するので、図9(b)に示すように、船体2には斜め右前方への推力が作用する。既に接岸状態にあるので、船体2は前方へ移動する。従って、接岸状態で船体2の前後方向の位置を微調整するのに便利である。なお、押し付けモード中であるが接岸状態でない場合は、右パドル部58が1回操作される度に、斜め移動の方向がより前方に近くなる。
【0109】
ステップS205では、コントローラ40は、パドル操作に対応するその他の処理を実行する。ステップS202、S204、S205の後、コントローラ40は、図10に示す処理を終了する。
【0110】
このように、横推力発生モードの実施中のパドル操作に応じて、コントローラ40は、船体2に作用する前後方向の推力を発生または変化させるよう制御する。すなわちコントローラ40は、右パドル部58が操作された場合は、前方への推力を発生させるか、前方への推力を大きくするか、あるいは後方への推力を小さくする。コントローラ40は、左パドル部57が操作された場合は、後方への推力を発生させるか、後方への推力を大きくするか、あるいは前方への推力を小さくする。従って、斜め移動の方向の調整や、前後方向の位置調整ができる。
【0111】
なお、横移動モードまたは押し付けモードにおいて、回頭を生じさせることなく船体2を横移動または斜め移動させるためには、合力FSのベクトルの延長線が重心Gを通るようにすればよい。作用点F0と重心Gとが必ずしも一致する必要はない。
【0112】
本実施の形態によれば、左横移動スイッチ53と左押付スイッチ63とは、押される方向の高さ(被操作面の位置)が互いに異なる(図7)。また、右横移動スイッチ54と右押付スイッチ64とは、押される方向の高さが互いに異なる。ここで、スイッチ53、54とスイッチ63、64とは、船体2の横方向への平行移動を開始させる点で共通する機能を有し、しかも互いに近接・隣接している。
【0113】
そのため、本実施の形態によれば、しっかりと目視確認しながら操作しないと、適切なスイッチを操作することが容易でない場合もある。しかも、スイッチ53、54とスイッチ63、64とは、機能の一部が重複するため、観念的に類似するスイッチであると認識されやすい。そこで、上記のように高さに違いを設けたことで、触感でもスイッチが認識しやすくなり、十分に目視しなくても適切なスイッチを操作できる。よって、スイッチ(スイッチ53、54、63、64)の操作性を向上させることができる。
【0114】
しかも、スイッチ53、54はそれぞれ、操船者がパドル部57、58を操作しながらパドル部57、58を操作している手の指で操作可能な位置に配置されたので、パドル部57、58の操作を含めて操作性を向上させることができる。
【0115】
特に、図6に示すように、スイッチ53、63は、回転支点C0を中心とする円周方向における左パドル部57が配置された角度範囲θL内に位置し、スイッチ54、64は、円周方向における右パドル部58が配置された角度範囲θR内に位置する。さらに、回転支点C0の軸線方向からみて、第1のスポーク部45と左パドル部57との少なくとも一部同士が重なり、第2のスポーク部46と右パドル部58との少なくとも一部同士が重なる。これらにより、スイッチ54、64と左パドル部57との並行操作、スイッチ53、54と右パドル部58との並行操作が容易となっている。
【0116】
また、押されている期間中に船体2に対し横方向への推力を発生させ続けるためのスイッチ53、54と、押されたことに応じて船体2に対し横方向への推力を発生させるためのスイッチ63、64とを分けて設けた。これにより、特に横移動や横付けの際の操作性を高めることができる。
【0117】
また、スイッチ53、54が押されている期間中(横移動モード時)に発生する横方向への推力よりも、スイッチ63、64が押されたことに応じて(押し付けモード時に)発生する横方向への推力の方が、船体2に作用する横方向の推力は小さい。これにより、速く横付けたい場合と横付け状態を維持したい場合とに適切に対応することができる。
【0118】
また、スイッチ53、63は、仮想面50より上に位置し且つ、回転支点C0を中心とする円周方向において、仮想面50に対し20°以上40°以下の角度を成す範囲に位置する(図6)。これにより、操船者が起立しながらスイッチ53、63を操作しやすい。なお、操作をしやすくする観点からは、スイッチ53、63は、仮想面50に対し0°以上60°以下の角度を成す範囲に位置してもよい。
【0119】
また、スイッチ53、63は、共通する仮想直線L1上に位置し、スイッチ54、64は、共通する仮想直線L2上に位置している(図6)。これにより、同じ方向への横移動という点で類似する機能を有するスイッチ同士が並ぶので、感覚的に操作を理解しやすい。
【0120】
また、回転支点C0を中心とする半径方向において、回転支点C0に対してスイッチ53、63の外縁位置はスイッチ54、64の外縁位置よりも遠い。これにより、ホイール部43を握る手の親指でスイッチ53、63の操作が容易である。横付け時には、スイッチ53、63は、押下操作と離操作が何度か繰り返されることが想定される。従って、横付け操作時に使用頻度の高いスイッチ53、63をホイール部43により近い位置に配置したことで操作性向上に寄与する。
【0121】
また、左横移動スイッチ53の被操作面53aは、回転支点C0を中心とする半径方向における外方に向かうにつれて高いので、被操作面53aを触覚により認識しやすく、操作性向上に寄与する。
【0122】
また、有効/無効切替スイッチ59の操作により、操船モードが通常操船モードとドライブモードとに切り替わることで、実質的に、スイッチ53、54、63、64の機能の有効/無効が切り替わる。これにより、使い勝手が向上する。
【0123】
また、スイッチ53、63の組は中央部44から左上に延びる第1のスポーク部45に配置され、スイッチ54、64の組は中央部44から右上に延びる第2のスポーク部46に配置されたので、左右の横推力発生モード時における左右の手による操作性を向上させることができる。
【0124】
本実施の形態によればまた、ホイール部43に、横推力発生モードの実施を指示するためのモードスイッチ(スイッチ53、54、63、64)が設けられ、ステアリング装置14にはさらに、船体2に対し前後方向の推力を与えるよう指示するための左パドル部57、右パドル部58が設けられる。コントローラ40は、船舶推進機4L,4Rの少なくとも1つを制御し、モードスイッチによる指示に応じて横推力発生モードを実施する。コントローラ40は、横推力発生モードの実施中にパドル部57、58が操作されたことに応じて、船体2に作用する前後方向の推力を発生または変化させるよう船舶推進機4L,4Rの少なくとも1つを制御する。例えば、操船者は、ホイール部43近辺での操作によって、横移動モード中には船体2を斜め移動させ、押し付けモード中には船体2の前後位置を調節できる。よって、船体を横付けする際の操作性を高めることができる。
【0125】
また、横推力発生モードの実施中には、パドル操作に応じて、前進成分の推力を発揮している推進機の推力だけを変化させることで、前後方向の推力変化の効率を高めることができる。
【0126】
また、横移動モードの実施中にパドル操作された場合は、船体2に作用する前後方向の推力の大きさがパドル部の操作量に応じて制御される。これにより操船者は、例えば、横移動中の前進または後進の速度(つまり斜め移動速度)を調節することができる。特に、操作量が大きいほど前後方向の推力の大きさを大きくするよう制御されるので、感覚に合致し、操作性が高い。
【0127】
また、押し付けモード中の実施中にパドル操作された場合は、前後方向の推力の大きさがパドル部の操作回数に応じて制御される。これにより、例えば、適切な前後位置で船体2の押し付け状態を維持しやすくすることができる。特に、操作回数が増える度に前後方向の推力の大きさが段階的に変化するので、微調整がしやすく、操作性が高い。
【0128】
また、スイッチ53、54の操作期間中、横移動モードが維持されるので、押下を継続することで船体2の横移動を継続させることができる。これにより、横移動モードの実施と中断の切り替え操作が容易である。一方、スイッチ63、64が操作された後、解除操作がされるまでの期間中、押し付けモードが維持される。例えば、左押し付けモード中に左押付スイッチ63が押下操作された場合や、右押し付けモード中に右押付スイッチ64が押下操作された場合に、右押し付けモードが解除される。従って、押し付けモードの実施を維持したままスイッチ63、64から指を離すことが可能である。これにより、操作性向上に寄与する。
【0129】
また、スイッチ53、63の組とスイッチ54、64の組とは、左右一対に設けられる。横推力発生モードにおいて、左右方向のうち、操作されたモードスイッチに対応する方向への推力が発生するので、左右いずれにも船体2を横付けすることができる。
【0130】
なお、横移動モード中には船体2を斜め移動させ、押し付けモード中には船体2の前後位置を調節することで、船体を横付けする際の操作性を高める効果を得ることに限れば、スイッチ53、63、54、64、パドル部57、58のそれぞれの配置箇所は問わない。また、スイッチ53、63、54、64とパドル部57、58との位置関係も問わない。
【0131】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。例えば、下記のように変形が可能である。
【0132】
例えば、ステアリング装置14のスイッチおよびパドル部のうち一部または全部の機能については、通常操船モードとドライブモードとの両方で有効となってもよい。
【0133】
なお、船体2に3つ以上の船舶推進機を設け、コントローラ40は、3つ以上の推進機を制御して、横移動や斜め移動、回頭の制御を実現してもよい。なお、船舶推進機の一部または全部は電動モータであってもよい。
【0134】
なお、有効/無効切替スイッチ59を設けることは必須でなく、横推力発生モードおよびその場回頭モードが通常操船モード内で実現されてもよい。その場合、スイッチ53、54、55、56、59、63、64およびパドル部57、58の少なくとも一部は常に有効とし、図8のステップSS101、S115、S116は廃止してもよい。有効/無効切替スイッチ59を設けない場合の横推力発生モードまたはその場回頭モードの解除については、リモコンユニット15の操作等、より機能優先度の高い等が操作されることで解除されるとしてもよい。あるいは、モードごとに、所定のボタンを解除用に割り当ててもよい。
【0135】
なお、スイッチ53、63の組とスイッチ54、64の組とは、左右一対に設けられることは必須でなく、片側にだけ設けられてもよい。
【0136】
なお、パドル部57、58はホイール部43に設けられてもよい。なお、パドル部57、58がホイール部43とは一体に回転しない構成も排除されない。
【0137】
なお、操舵のために回転操作されるホイール部43は環状でなくてもよく、「ホイール部」と呼称されることも必須でない。
【0138】
なお、1つのスイッチに、「横移動モード」を指示する機能と「押し付けモード」を指示する機能とを設けてもよい。例えば、スイッチ53、54、63、64の少なくとも1つに、操作態様によって横移動モードまたは押し付けモードを指示できる機能を設けてもよい。一例を挙げれば、スイッチ53またはスイッチ54が短時間操作された場合は横移動モードが指示され、一定時間を超える長時間操作(長押し)された場合は押し付けモードが指示されるようにしてもよい。
【0139】
なお、スイッチ53、54、55、56、59、63、64の少なくとも1つは、押しボタン式のスイッチに限らず、他の方式のスイッチであってもよく、例えば、スライド式のスイッチ、回転式のスイッチ、あるいは、トグル式のスイッチなどであってもよい。
【0140】
本発明が適用される船舶は、ジェット推進艇に限らず、他の種類の船舶であってもよい。例えば、図11に示すように、船舶推進機4L,4Rとして船外機を含む船舶であってもよい。すなわち、船舶推進機4L,4Rは、ジェット推進機に限らず、船外機などの他の船舶推進機であってもよい。
【符号の説明】
【0141】
2 船体、 14 ステアリング装置、 43 ホイール部、 44 中央部、 45 第1のスポーク部、 46 第2のスポーク部、 47 第3のスポーク部、 53 左横移動スイッチ、 54 右横移動スイッチ、 63 左押付スイッチ、 64 右押付スイッチ、 57 左パドル部、 58 右パドル部、 C0 回転支点
図1
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図11