(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074311
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
F16N 21/02 20060101AFI20230522BHJP
F16C 29/06 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
F16N21/02
F16C29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187196
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】松井 雅士
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA02
3J104AA23
3J104AA24
3J104AA36
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA33
3J104CA23
3J104DA05
(57)【要約】
【課題】グリースニップルや配管継手等、給脂孔を封止する部材に緩みが生じない直動案内ユニットを提供すること。
【解決手段】
直動案内ユニットにおけるスライダの長手方向端面に、前記スライダの長手方向端面に設けられた給脂孔を封止する封止部材と、前記封止部材と接するとともに前記スライダに固定されたアダプタと、が備えられる。前記封止部材は、前記給脂孔に挿入されるねじ部と、前記スライダの長手方向端面から突出し、n角形(ただし、nは4以上8以下)の外周を有する頭部と、を含む。前記アダプタは、前記封止部材の前記頭部のn個の角のうちm個(ただし、m>n/2)と係合する内周壁を有する本体部と、前記スライダに係合する爪部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、
前記レールに対して摺動可能であるスライダと、
前記レールおよび前記スライダの間に形成される転走溝を転走可能である転動体と、
を備える直動案内ユニットであって、
前記スライダの長手方向端面には、
前記スライダの長手方向端面に設けられた給脂孔を封止する封止部材と、
前記封止部材と接するとともに前記スライダに固定されたアダプタと、
が備えられ、
前記封止部材は、
前記給脂孔に挿入されるねじ部と、
前記スライダの長手方向端面から突出し、n角形(ただし、nは4以上8以下)の外周を有する頭部と、を含み、
前記アダプタは、
前記封止部材の前記頭部のn個の角のうちm個(ただし、m>n/2)と係合する内周壁を有する本体部と、
前記スライダに係合する爪部と、を含む、
直動案内ユニット。
【請求項2】
前記アダプタの前記本体部は、
弾性を有し、180°より大きな中心角を有する円弧状の本体部であり、
前記本体部の前記内周壁には、前記本体部の周方向に互いに離間してp個(ただし、p>m)の窪みが形成されており、
前記窪みのうちのm個と、前記封止部材の前記頭部の角のうちのm個とが係合する、
請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記スライダは、
ケーシングと、
前記ケーシングの長手方向の端面に備えられるエンドキャップと、
前記エンドキャップの長手方向端面のうち、前記ケーシングが備えられる端面と逆側の端面に備えられるエンドシールと、
を含み、
前記アダプタの前記爪部は、前記エンドシールに設けられた凹部に係合する、
請求項1または請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記アダプタの前記本体部は、前記エンドシールに当接する面を有する、
請求項3に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記アダプタは、樹脂または金属で構成される、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
レールと、レール上を摺動するスライダと、を備える直動案内ユニットにおいて、スライダが、ケーシングと、ケーシングの長手方向の端面に備えられるエンドキャップと、エンドキャップの長手方向のシールを達成するエンドシールとを含むことが知られている。エンドシールには、直動案内ユニットの内部に潤滑剤を供給するための給脂孔が設けられる。給脂孔を封止する部材として、グリースニップルが取り付けられることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
グリースニップルを備える直動案内ユニットにおいて、グリースニップルにグリースガンを接続してグリース等の潤滑剤を供給することが知られている(例えば特許文献2参照)。また、グリースニップルに代えて、ポンプなどの給油装置に接続可能である配管継手を給脂孔に装着することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-351251号公報
【特許文献2】特開2007-270856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直動案内ユニットを長時間稼働させた場合等でも、グリースニップルや配管継手等、給脂孔を封止する部材が緩まないことが望ましい。そこで、本発明は、グリースニップルや配管継手等、給脂孔を封止する部材の緩みが抑制される直動案内ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、前記レールに対して摺動可能であるスライダと、前記レールおよび前記スライダの間に形成される転走溝を転走可能である転動体と、を備える。前記スライダの長手方向端面には、前記スライダの長手方向端面に設けられた給脂孔を封止する封止部材と、前記封止部材と接するとともに前記スライダに固定されたアダプタと、が備えられる。前記封止部材は、前記給脂孔に挿入されるねじ部と、前記スライダの長手方向端面から突出し、n角形(ただし、nは4以上8以下)の外周を有する頭部と、を含む。前記アダプタは、前記封止部材の前記頭部のn個の角のうち、m個(ただし、m>n/2)と係合する内周壁を有する本体部と、前記スライダに係合する爪部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記直動案内ユニットによれば、直動案内ユニットに備えられたグリースニップルや配管継手等、給脂孔を封止する部材の緩みが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1における直動案内ユニットの構造を示す一部断面斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す直動案内ユニットから一部の部材を省略し、一部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における直動案内ユニットのアダプタを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すアダプタを別の角度からみる平面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2における直動案内ユニットの構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6から一部の部材を省略し、一部を拡大して示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6から一部の部材を省略し、一部を拡大して示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図6から一部の部材を省略し、一部を拡大して示す平面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2における直動案内ユニットのアダプタを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3における直動案内ユニットの一部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、前記レールに対して摺動可能であるスライダと、前記レールおよび前記スライダの間に形成される転走溝を転走可能である転動体と、を備える。前記スライダの長手方向端面には、前記スライダの長手方向端面に設けられた給脂孔を封止する封止部材と、前記封止部材と接するとともに前記スライダに固定されたアダプタと、が備えられる。前記封止部材は、前記給脂孔に挿入されるねじ部と、前記スライダの長手方向端面から突出し、n角形(ただし、nは4以上8以下)の外周を有する頭部と、を含む。前記アダプタは、前記封止部材の前記頭部のn個の角のうち、m個(ただし、m>n/2)と係合する内周壁を有する本体部と、前記スライダに係合する爪部と、を含む。
【0010】
直動案内ユニットを円滑に動作させるために、潤滑剤が用いられる。潤滑剤は直動案内ユニットの稼働に従って消費されるため、必要に応じて機器の外部から内部へ潤滑剤を供給できることが望まれる。従来、直動案内ユニットにおいて、スライダの長手方向における端面に給脂孔を設けること、給脂孔にグリースニップル等を取り付けることが知られている。グリースニップルを設けると、スライダを分解することなく給脂が可能となる。また、グリースニップルに代えて給脂孔に配管継手を接続し、配管継手を経由して潤滑剤を供給することもできる。グリースニップルや配管継手等、給脂孔を封止する部材を封止部材と称する。
【0011】
直動案内ユニットは、動作に伴う振動やスタート・ストップ時の衝撃が避け難いことがある。これらの振動や衝撃によって、給脂孔に取り付けられた封止部材に緩みが生じるおそれがあった。例えば、グリース注入口が斜めに延びるタイプのグリースニップル(B型グリースニップル)に緩みが生じて注入口が回転すると、注入口の先端がレールと接触し、トラブルの原因になるおそれがあった。また、緩みが大きくなってグリースニップルが脱落すると、潤滑剤の漏洩や機器の破損等のトラブルの原因になる。
【0012】
このため、直動案内ユニットにおける封止部材は、緩みが抑止されることが好ましい。そこで、封止部材の緩みを抑制するための構成が検討され、封止部材に対して、回り止めとなるアダプタを設けることが着想された。検討の結果、多角形状である封止部材の頭部を利用し、封止部材の頭部と係合する形状を有するアダプタを構成することが見出された。具体的に、アダプタと、封止部材の頭部の角の過半数とを係合させることによって、緩み止めの効果が充分得られることが見出された。さらに、アダプタがスライダに対して固定されるように構成することが見出された。これらの構成によって、既存のスライダの設計変更を最小限に留めながらも、封止部材の緩みが抑止された直動案内ユニットが得られることが確認された。
【0013】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記アダプタの前記本体部は、弾性を有し、180°より大きな中心角を有する円弧状の本体部であり、前記本体部の内周壁には、前記本体部分の周方向に互いに離間してp個(ただし、p>m)の窪みが形成されており、前記窪みのうちのm個と、前記封止部材の前記頭部の角のうちのm個とが係合するものとできる。
【0014】
アダプタの本体部が弾性を有する場合、アダプタの脱着が容易であるとともに、弾性を利用してアダプタと封止部材との当接を確実なものとできる。また、アダプタが、180°より大きな中心角を有する円弧状の本体部を有することで、封止部材の頭部を確実に保持することができ、緩み抑制の効果がより確実になる。さらに、アダプタの本体部分の内周壁に窪みが形成され、封止部材の頭部の角と窪みとが係合されることで、緩み抑制の効果がより確実になる。さらに、内周壁に設けられた窪みの数(p個)を、封止部材の角が係合する窪みの数(m個)よりも多くすることによって、封止部材が当初位置から回転した場合であっても隣の窪みにただちに係合し、封止部材の緩みを最小限に留めることができる。
【0015】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記スライダは、ケーシングと、前記ケーシングの長手方向の端面に備えられるエンドキャップと、前記エンドキャップの長手方向端面のうち、前記ケーシングが備えられる端面と逆側の端面に備えられるエンドシールと、を含み、前記アダプタの前記爪部は前記エンドシールに設けられた凹部に係合するものとしてもよい。かかる構成とすることによって、従来のスライダの設計の変更を最小限に留めながら、確実に封止部材の緩みを抑制する効果が得られる。
【0016】
前記アダプタの本体部は、前記エンドシールに当接する面を有するものとできる。アダプタの爪部がエンドシールの凹部に係合するとともに、アダプタの本体部がエンドシールに当接することによって、封止部材の回転を抑制する効果がより確実になる。
【0017】
前記アダプタは、樹脂または金属で構成されるものとできる。アダプタが樹脂または金属で構成される場合、弾性変形が可能で、取り付けが容易であるとともに、取り付け後には取り付け部材を確実に保持する効果が得られる。また、樹脂または金属で構成されるアダプタとする場合、形状の設計の自由度が高く、所望の形状を有するアダプタを実用的なコストで作製できる。
【0018】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の直動案内ユニットの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、本開示にかかる実施の形態1である直動案内ユニット1の構造を、一部を切り開いて示す一部断面斜視図である。まず直動案内ユニット1の全体について概略的に説明する。
図1を参照して、直動案内ユニット1は、レール10と、スライダ20と、転動体であるころ200と、を備える。スライダ20はレール10に跨架されており、レール10に対して摺動自在である。
【0020】
レール10は、長手方向に沿う両側面にそれぞれ、上下の軌道面10a、10bを有する。ケーシング21における、軌道面10a、10bに対向する位置に、一対の軌道面が形成されている。軌道面10a、10bと、ケーシングに形成される一対の軌道面とによって、負荷領域である転走溝としての2列の軌道路が形成される。すなわち、直動案内ユニット1は上下2列の転走溝を有する。2列の軌道路内にそれぞれ、ころ200a、200bが挿入されている。スライダ20の移動に従って、ころ200a、200bが軌道路を転走する。
【0021】
なお、実施の形態1にかかる直動案内ユニットは、転動体がころであり、2列の軌道路を備えているが、これに制限されない。例えば、本開示にかかる直動案内ユニットの転動体はボールであってもよく、軌道路は1列であってもよい。転動体や転走溝の具体的な形状は、特に制限されない。
【0022】
スライダ20は、上面である台状部と、台状部の両側端から垂下する袖部とを有する。スライダ20は、ケーシング21と、エンドキャップ22と、エンドシール23と、を含む。エンドキャップ22は、ケーシング21の長手方向の両端面のそれぞれに接して備えられている。エンドシール23は、エンドキャップ22のケーシング21と接する側と逆側の端面に接して、備えられている。エンドシール23とエンドキャップ22は、4箇所のねじ15によってケーシング21に固定されている。エンドシール23およびエンドキャップ22の幅方向の中央部に、給脂孔55が形成されている。給脂孔55は、封止部材としてのグリースニップル51で封止されている。
【0023】
ケーシング21の上面には、ワークや機器等の外部部材を取り付けるための取り付け穴28が複数、形成されている。ケーシング21の内部には、方向転換路を介して軌道路と連続する循環路103a、103bが形成される。エンドキャップ22に、軌道路と循循環路との間をそれぞれ連結する無負荷領域である2つの方向転換路が形成される。また、エンドキャップ22には、給脂孔55と方向転換路との間をつなぐ給脂溝が設けられている。この構成によって、給脂孔55から注入されたグリース等の潤滑剤が、方向転換路を通過する転動体に供給される。
【0024】
図2は、
図1に示す直動案内ユニット1からレール10等の一部の部材を省略し、一部を拡大して示す斜視図である。
図2を参照して、グリースニップル51は、エンドシール23から外方に突出する部分である頭部52と、給脂孔55に挿入されたねじ部53(
図1)と、を含む。グリースニップル51は給脂孔55に挿入され、ねじ固定されている。頭部52は、六角形の外周形状を有する。なお、六角形とは、数学的に正確な六角形であることのみを意味するものではなく、
図2に示されるとおり六角形の各頂点が面取りされた形状であってもよく、実用上許容可能な範囲において正六角形から逸脱した形状であってよい。
【0025】
グリースニップル51に当接して、アダプタ81が取り付けられている。アダプタ81は、円弧状の本体部82と、エンドシール23に対する係合部である爪部84と、本体部82と爪部84との間を接続する接続部83と、を含む。アダプタ81は、一体に形成された樹脂製または金属製の部品である。アダプタ81の本体部82の内周が、グリースニップル51の頭部52の外周に当接し、グリースニップル51が回転しないよう保持している。エンドシール23の上端辺の中央部に凹部24が形成されている。アダプタ81の爪部84がエンドシール23の凹部24に係合することによって、アダプタ81はエンドシール23に対して固定されている。このようにして、アダプタ81は、スライダ20に対して固定されている。
【0026】
図3は、
図2の一部を拡大して示す平面図である。
図3を参照して、グリースニップル51の頭部52の外周は、アダプタ81の本体部82の内周壁822に当接し、保持されている。本体部82の内周壁822は、円弧状の壁面に複数の窪みが形成された形状である。内周壁822は、本体部82の径方向外方に向かって窪んだ部分である、9箇所の窪み82a~82e、窪み82p~82sを有する。グリースニップル51の頭部52は、その外周に6つの角52a~52fを有する。頭部52の6つの角52a~52fのうち5つの角52a、52b、52c、52d、52eが、窪み82a、82b、82c、82d、82eとそれぞれ圧接し、保持されている。この構成により、頭部52の回転が止められ、グリースニップル51の緩みが防止される。
【0027】
アダプタ81の接続部83は、本体部82がなす円弧の両端から、直線的に延びる一対の板状の部分である。接続部83を構成する一対の板状部分は、互いに一定の幅を保って延びる。接続部83を構成する板状部分の間隔w1は、グリースニップル51の頭部52の径w2よりも小さい。また、エンドシール23に形成された凹部24の幅は、w1に等しい。このため、エンドシール23に取り付けられたアダプタ81は、外方に開くように変形し難い。このため、仮に頭部52が回転しようとした場合であってもアダプタ81によって回転が抑えられる。
【0028】
図4は、直動案内ユニット1におけるアダプタ81を取り出して示す斜視図である。
図4を参照して、アダプタ81の本体部82は全体が円弧状に形成されており、外周壁821は円弧状に形成されている。一方、本体部82の内周壁822には複数の窪みが形成されている。本体部82および接続部83におけるエンドシール23(
図3)と接する面である背面823は、平面に形成されている。この構成によって、背面823の全体とエンドシール23とが当接し、グリースニップル51(
図3)の回転防止効果がより確実になる。接続部83は、本体部82を形成する円弧の両端から延びる。接続部83の上端は爪部84に接続している。爪部84は、本体部82および接続部83に対して垂直方向に延びる第1部分と、第1部分の先端から下方に延びる第2部分と、を含む鈎型の部分である。爪部84は、エンドシール23の上端辺を跨いで、エンドシール23に引掛けられる。
【0029】
図5は、アダプタ81の平面図である。アダプタ81の本体部82は、中心角θ
1が約260°である円弧状の部分である。本体部82の内周壁822には、窪み82a~82eおよび窪み82p~82sの9箇所の窪みが形成されている。9箇所の窪みは、互いに周方向に等間隔に離間して設けられている。前述のとおり、窪み82a~82eには、グリースニップル51の角52a~52eがそれぞれ係合する。グリースニップル51の角のうちアダプタ81によって保持される角の数(5箇所)よりも、アダプタ81に設けられた窪みの数(9箇所)が多くなるよう、窪みが設けられている。この構成によって、仮にグリースニップル51に回転が生じた場合であっても、例えば、窪み82aに係合していた角52aは、ただちに隣の窪み82pに係合することになる。すなわち、この構成によって、グリースニップルに回転が生じた場合であっても、その回転を最小限に留めることができる。また、給脂孔やグリースニップルの個体差等によって、グリースニップルを給脂孔に取り付けた時にグリースニップルの頭部が止まる角度は一様ではない。この点、アダプタ81は、係合する角の数よりも多数の窪みを有しているため、グリースニップルが止まった角度に応じて、その近傍の窪みにグリースニップルの頭部を係合させることが可能である。このようにして、グリースニップルの頭部の角度に関わらず、グリースニップルに実用上問題となる緩みがない状態を維持できる。
【0030】
[実施の形態2]
図6は、本開示にかかる直動案内ユニットの第2の実施の形態(実施の形態2)である直動案内ユニット101の構造を示す斜視図である。直動案内ユニット101は、グリースニップル61、アダプタ91、アダプタ91のエンドシール23に対する取り付け構造を除く大部分の構成が直動案内ユニット1と共通している。共通する構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0031】
図6を参照して、直動案内ユニット101に取り付けられるグリースニップル61は、JIS規格においてB型グリースニップルと称される、給脂孔からスライダの長手方向に突出する頭部の先端に、頭部に対して斜めに突出する注入口が設けられた形状のグリースニップルである。グリースニップル61は、エンドシール23から外方に突出する部分である頭部62と、エンドシール23の給脂孔25(
図7)に挿入されるねじ部(不図示)と、頭部62に対して斜めに突出する注入口64と、を含む。頭部62は、外周が六角形に形成されたナット部621を含む。ナット部621の外周に接してアダプタ91が取り付けられている。アダプタ91の内周壁922とナット部621の外周とが当接し、グリースニップル61が回転しないよう保持されている。
【0032】
図7は、
図6からグリースニップル61、アダプタ91を含む一部の部材を省略し、一部を拡大して示す斜視図である。
図7を参照して、エンドシール23には、幅方向における中央部に給脂孔25が形成されている。給脂孔25は、エンドキャップ22に形成された給脂孔225と連通している。給脂孔25から注入された潤滑剤は、給脂孔225を経て、エンドキャップ内に形成される油溝を通り、直動案内ユニットの転動体に供給される。また、給脂孔25の両側に、凹部としての一対の貫通孔26が形成されている。貫通孔26はエンドシール23の厚み方向に貫通する孔である。貫通孔26に、アダプタ91の爪部94(
図8)が差し込まれて、アダプタ91がエンドシール23に対して固定される。
【0033】
図8は、
図6からエンドシール23を含む一部の部材を省略し、一部を拡大して示す斜視図である。
図8を参照して、アダプタ91は、本体部92と、爪部94とを含む。爪部94は、本体部92から長手方向に延び、エンドシール23の貫通孔26(
図7)に挿入される。爪部94の先端には鍔部941が形成されている。鍔部941がエンドシール23に引っ掛かることによって、アダプタ91がエンドシール23から脱落しないよう保持される。
【0034】
図9は、
図6から一部の部材を省略し、一部を拡大して示す平面図である。
図9を参照して、グリースニップル61の頭部62は、アダプタ91の本体部92の内周壁922に当接し、保持されている。本体部92の内周壁922は、円弧状の壁面に連続する窪みが形成されており、規則的な凹凸形状を有する。
図9、
図11を参照して、内周壁922は、径方向外方に向かって窪んだ部分である9箇所の窪み92a~92eおよび窪み92p~92sを有する。グリースニップル61の頭部62のナット部621は、6つの角62a~62fを有する六角形の外形を有する。6つの角62a~62fのうち、角62a、62b、62cを含む5つの角が、窪み92a、92b、92c、92d、92eとそれぞれ圧接し、保持されている。この構成により、頭部62の回転が止められ、グリースニップル61の緩みが防止される。また、グリースニップル61に回転が生じた場合であっても、ナット部621の角がただちに隣の窪みに係合するため、グリースニップル61の回転が最小限に抑えられうる。
【0035】
図10は、直動案内ユニット101におけるアダプタ91を取り出して示す斜視図である。
図10を参照して、アダプタ91の本体部92は全体が円弧状に形成されており、外周壁921は円弧状に形成されている。一方、本体部92の内周壁922には複数の窪みが形成されている。本体部92におけるエンドシール23(
図6)と接する面である背面923は、平面に形成されている。この構成によって、アダプタ91とエンドシール23との当接面積が大きくなり、グリースニップル61(
図6)の回転防止効果がより確実になる。爪部94は、本体部92から長手方向に突出する一対の部材である。爪部94の先端には、スライダの幅方向に外方に突出する鍔部941が形成されている。
【0036】
アダプタ91は、一体に形成された樹脂製または金属製の部材である。アダプタ91は弾性変形可能である。アダプタ91をグリースニップル61およびエンドシール23に取り付ける際には、爪部94を押し縮めるようにしながら、エンドシール23の貫通孔26(
図7)に挿入する。挿入した後には、爪部94が自然状態の形状に戻り、鍔部941がエンドシール23の裏面に引っ掛かる。このようにして、アダプタ91がエンドシール23に対して固定される。また、アダプタ91の本体部92は、下方(直動案内ユニットのレールに近接する側)が開いた円弧状に形成されている。このため、グリースニップル61の上方からアダプタ91を取り付けることができる。本体部92を外側に開くように弾性変形させながらグリースニップル61のナット部621に嵌め込んだ後、本体部92が自然状態の形状に戻ることによって、ナット部621が本体部92によって保持される。
【0037】
図11は、アダプタ91の平面図である。
図11を参照して、アダプタ91の本体部92は、中心角θ
2が約270°である、円弧状の部分である。本体部92の外周壁921は、円弧状の外形を有する。本体部92の内周壁922には、窪み92a~92eおよび窪み92p~92sの合計9箇所の窪みが形成されている。9箇所の窪みは、互いに周方向に等間隔に離間して設けられている。前述のとおり、窪み92a~92eには、グリースニップル61の角62a~62eがそれぞれ係合する。グリースニップル61の角のうちアダプタ91によって保持される角の数(5箇所)よりも、アダプタ91に設けられた窪みの数(9箇所)が多くなるよう、窪みが設けられている。給脂孔やグリースニップルの個体差等によって、グリースニップルを給脂孔に取り付けた時にグリースニップルの頭部が止まる角度は一様ではない。この点、アダプタ91は、係合する角の数(5箇所)よりも多数の窪み(9箇所)を有しているため、グリースニップルが止まった角度に応じて、その近傍の窪みにグリースニップルの頭部を係合させることが可能である。このようにして、グリースニップルの頭部の角度に関わらず、グリースニップルに実用上問題となる緩みがない状態を維持できる。
【0038】
[実施の形態3]
図12は、本開示にかかる直動案内ユニットの第3の実施の形態(実施の形態3)である直動案内ユニット201の構造の一部を示す平面図である。直動案内ユニット201は、グリースニップル151、アダプタ191を除く大部分の構成が直動案内ユニット1と共通している。また、アダプタ191のエンドシール23に対する取り付け構造は、直動案内ユニット101と共通している。直動案内ユニット1、101と共通する構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0039】
図12を参照して、直動案内ユニット201に取り付けられるグリースニップル151は、頭部152の外形が四角形に形成されている。頭部152の4つの角のうち角152a、152b、152cの3箇所が、アダプタ191の内周壁194に設けられた窪み192a、192b、192cにそれぞれ係合している。このようにしてグリースニップル151はアダプタ191に保持され、回転が抑制されている。
【0040】
アダプタ191は、本体部192と、エンドシール23に挿入固定された爪部(不図示)と、を有する。本体部192は全体が円弧状に形成されている。本体部192の外周壁193は、円弧状に形成されている。一方、本体部192の内周壁194には、複数の窪みが形成されている。本体部192におけるエンドシール23と接する面である背面は、平面に形成されている。この構成によって、アダプタ191とエンドシール23との当接面積が大きくなり、グリースニップル151の回転防止効果がより確実になる。
【0041】
アダプタ191の本体部192は、中心角θ3が約270°である、円弧状の部分である。本体部192の内周壁194には、窪み192a~192cおよび窪み192p~192rの6箇所の窪みが形成されている。6箇所の窪みは、互いに周方向に等間隔に離間して設けられている。前述のとおり、窪み192a~192cには、グリースニップル151の角152a~152cがそれぞれ係合する。グリースニップル151の角のうちアダプタ191によって保持される角の数(3箇所)よりも、アダプタ191に設けられた窪みの数(6箇所)が多くなるよう、窪みが設けられている。この構成によって、仮にグリースニップル151が緩む方向に回転が生じた場合であっても、例えば、窪み192aに係合していた角152aは、大きく回転する前に、隣の窪み192pに係合することになる。すなわち、これらの構成によって、グリースニップルを保持し、グリースニップルに回転を抑えられる。さらに、グリースニップルに回転が生じた場合であっても、その回転を小さなものに留めることができる。
【0042】
(変形例)
本開示にかかる直動案内ユニットにおいて、給脂孔を封止する部材はグリースニップルに限定されず、多角形の頭部を有する継手部材であってもよい。多角形の頭部は四角形、六角形のほか、4~8の角を有する形状であってよい。封止部材の角の数の過半数をアダプタと当接させることによって、封止部材の回転が抑制される。また、アダプタの具体的な形状は前述の実施形態に限定されない。アダプタの本体部は、たとえば、220°より大きな中心角を有する円弧状であってもよく、250°より大きな中心角を有する円弧状であってもよい。また例えば、アダプタはエンドシールに対して固定されるものに限定されない。アダプタは、スライダの何らかの構造に対して固定されればよい。アダプタの爪部は一対(2箇所)に形成されたものに限られず、スライダに対する固定箇所は1箇所、あるいは3箇所以上であってもよい。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1、101、201 直動案内ユニット、10 レール、10a、10b 軌道面、15 ねじ、20 スライダ、21 ケーシング、22 エンドキャップ、23 エンドシール、24 凹部、25、55、225 給脂孔、26 貫通孔、28 取り付け穴、51、61、151 グリースニップル、52、62、152 頭部、52a~52f、62a~62f、152a~152c 角、53 ねじ部、64 注入口、81、91、191 アダプタ、82、92、192 本体部、82a~82e、82p~82s、92a~92e、92p~92s、192a~192c、192p~192r 窪み、83 接続部、84、94 爪部、193、821、921 外周壁、194、822、922 内周壁、621 ナット部、823、923 背面、941 鍔部、
103a、103b 循環路。