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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074313
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】車両のルーフサイド構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/00 20060101AFI20230522BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20230522BHJP
【FI】
B60J3/00 H
B60R21/213
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187198
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 南巳
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA18
3D054CC04
3D054DD13
(57)【要約】
【課題】車両のルーフサイド部にエアバッグモジュールと並走させてサンシェードモジュールを設けるルーフサイド構造において、カーテンエアバッグの膨張展開性能を維持するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】車両のルーフサイド構造101は、車両1のルーフサイド部2に車長方向Xに沿って設けられるエアバッグモジュール10と、ルーフサイド部2にエアバッグモジュール10に対して車幅方向Yの車外側に並走して設けられるサンシェードモジュール20と、エアバッグモジュール10のカーテンエアバッグ11の膨張展開時にサンシェードモジュール20がカーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bから受ける荷重により車幅方向Yの車外側へ動くのをサンシェードモジュール20の車外側から抑制する抑制部30と、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフサイド部に車長方向に沿って設けられるエアバッグモジュールと、
上記ルーフサイド部に上記エアバッグモジュールに対して車幅方向の車外側に並走して設けられるサンシェードモジュールと、
上記エアバッグモジュールのカーテンエアバッグの膨張展開時に上記サンシェードモジュールが上記カーテンエアバッグから受ける荷重により上記車幅方向の車外側へ動くのを上記サンシェードモジュールの車外側から抑制する抑制部と、
を備える、車両のルーフサイド構造。
【請求項2】
上記サンシェードモジュールは、遮光性を有するシート状のサンシェードと、上記サンシェードを車高方向の下方へ引出し可能に収容するケースと、上記ケースの上記車幅方向の車外側に固定されており上記ルーフサイド部に対する位置決めのための位置決め部材と、を備え、上記位置決め部材によって上記抑制部が構成されている、請求項1に記載の、車両のルーフサイド構造。
【請求項3】
上記サンシェードモジュールの上記ケースは、上記車幅方向の車外側に立設する立設壁部を有し、上記位置決め部材は、上記ケースの上記立設壁部に接合される接合壁部を有する、請求項2に記載の、車両のルーフサイド構造。
【請求項4】
上記サンシェードモジュールの上記ケースは、上記カーテンエアバッグを膨張展開時における突出方向にガイドするガイド壁部を有する、請求項2または3に記載の、車両のルーフサイド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフサイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の遮蔽部材の取付け構造が開示されている。この取付け構造において、窓の下方に設けられたトリムに遮蔽部材が内蔵されている。また、窓の上部近傍には、乗員の頭部を保護するためのカーテンエアバッグを備えるカーテンエアバッグ装置が設けられている。遮蔽部材を使用時するとき、乗員は遮蔽部材が窓を覆うようにカーテンフックを所望の位置まで引き上げて保持部で係止する。一方で、カーテンエアバッグの膨張展開時に遮蔽部材に上方から荷重が作用したときは、保持部によるカーテンフックの係止状態が解除される。これにより、カーテンエアバッグの膨張展開動作が遮蔽部材によって妨げられるのを防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-76709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の取付け構造のように、遮蔽部材を窓の下方から引き上げて使用する構造の場合、車外からの日差しの量を調節するのが難しい。また、日差しを遮るために遮蔽部材を引き上げ過ぎると、乗員が車内から車外の景色を望む妨げになり得る。そこで、これらの不具合を解消するためには、サンシェードモジュールをエアバッグモジュールと並走させてルーフサイド部に配置する構造が有効である。
【0005】
ところが、このような配置構造において、ルーフサイド部の限られた収容空間にエアバッグモジュールとサンシェードモジュールを隣接させて配置すると、サンシェードモジュールが邪魔になって、カーテンエアバッグに膨張展開時の反力を付与するためのリブ等の補強部材を設けるスペースを確保するのが難しくなる。このような補強部材が無い場合には、カーテンエアバッグが膨張展開時に車幅方向の車外側に動きやすくなり、その膨張展開動作が不安定になるため、カーテンエアバッグが乗員の頭部の本来の保護性能を発揮できないという問題が生じ得る。このため、サンシェードモジュールをエアバッグモジュールと並走させる構造を採用するときには、カーテンエアバッグの膨張展開性能を維持するための工夫が必要になる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、車両のルーフサイド部にエアバッグモジュールと並走させてサンシェードモジュールを設けるルーフサイド構造において、カーテンエアバッグの膨張展開性能を維持するのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
車両のルーフサイド部に車長方向に沿って設けられるエアバッグモジュールと、
上記ルーフサイド部に上記エアバッグモジュールに対して車幅方向の車外側に並走して設けられるサンシェードモジュールと、
上記エアバッグモジュールのカーテンエアバッグの膨張展開時に上記サンシェードモジュールが上記カーテンエアバッグから受ける荷重により上記車幅方向の車外側へ動くのを上記サンシェードモジュールの車外側から抑制する抑制部と、
を備える、車両のルーフサイド構造、
にある。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様の、車両のルーフサイド構造において、エアバッグモジュールは、車両のルーフサイド部に車長方向に沿って設けられる。また、サンシェードモジュールは、ルーフサイド部にエアバッグモジュールに対して車幅方向の車外側に並走して設けられる。すなわち、サンシェードモジュールは、エアバッグモジュールと概ね平行に延びた状態でルーフサイド部に収容される。
【0009】
ここで、ルーフサイド構造を構成する抑制部は、カーテンエアバッグの膨張展開時にサンシェードモジュールがカーテンエアバッグから受ける荷重により車幅方向の車外側へ動くのをサンシェードモジュールの車外側から抑制する機能を有する。この抑制部によれば、カーテンエアバッグが膨張展開するとき、カーテンエアバッグとサンシェードモジュールとの間にリブ等の補強部材を設けることなく、カーテンエアバッグから受ける荷重と逆向きの反力を抑制部によってカーテンエアバッグに付与することが可能になる。
【0010】
これにより、車両のルーフサイド部にエアバッグモジュールとサンシェードモジュールを並走させて設ける構造を採用するとき、エアバッグモジュールとサンシェードモジュールとの間に補強部材を設けるスペースを確保できない場合であっても、カーテンエアバッグが膨張展開時に車幅方向の車外側に動くのを抑制部で抑制することで、カーテンエアバッグの膨張展開動作を安定させることが可能になる。その結果、カーテンエアバッグが乗員の頭部の本来の保護性能を発揮できるようになる。
【0011】
上述の態様によれば、車両のルーフサイド部にエアバッグモジュールと並走させてサンシェードモジュールを設けるルーフサイド構造において、カーテンエアバッグの膨張展開性能を維持するのに有効な技術を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の、車両のルーフサイド構造を車内側からみた側面図。
図2図1中のエアバッグモジュールをカーテンエアバッグの展開完了状態にて示す側面図。
図3図1中のサンシェードモジュールをサンシェードの引き出し状態にて示す側面図。
図4図1のIV-IV線矢視断面図。
図5図4においてカーテンエアバッグの膨張展開初期の第1作動状態の様子を示す断面図。
図6図4においてカーテンエアバッグの第2作動状態の様子を示す断面図。
図7図3においてサンシェードが未使用位置にあるときの様子を示す側面図。
図8図3においてサンシェードが第1使用位置と第2使用位置のそれぞれに設定されたときの様子を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
なお、本明細書において、「膨張」とは、カーテンエアバッグの内部空間へのガス供給によって当該カーテンエアバッグが膨れて大きくなる態様をいい、「展開」とは、予め所定の形態に折り畳まれたカーテンエアバッグが膨張する過程で折り畳まれた状態を解除するように拡張する態様をいう。このように、カーテンエアバッグの展開は実質的に膨張を伴うものであり、このときの態様を「膨張展開」ということができる。
【0015】
上述の態様の、車両のルーフサイド構造において、上記サンシェードモジュールは、遮光性を有するシート状のサンシェードと、上記サンシェードを車高方向の下方へ引出し可能に収容するケースと、上記ケースの上記車幅方向の車外側に固定されており上記ルーフサイド部に対する位置決めのための位置決め部材と、を備え、上記位置決め部材によって上記抑制部が構成されているのが好ましい。
【0016】
このルーフサイド構造によれば、サンシェードモジュールをルーフサイド部に対して位置決めするのに用いる位置決め部材は、ケースの車幅方向の車外側に固定されている。したがって、この位置決め部材をカーテンエアバッグが膨張展開時に車幅方向の車外側に動くのを抑制する抑制部として兼用することができる。これより、専用の抑制部を設ける必要がなく、サンシェードモジュールの部品点数を少なく抑えることが可能になる。また、ケースと位置決め部材を固定して予め一体化することにより、ルーフサイド部に対してケースと位置決め部材を別々に組み付ける必要がなく、サンシェードモジュールの組付け作業に要する工数を少なく抑えることが可能になる。
【0017】
上述の態様の、車両のルーフサイド構造において、上記サンシェードモジュールの上記ケースは、上記車幅方向の車外側に立設する立設壁部を有し、上記位置決め部材は、上記ケースの上記立設壁部に接合される接合壁部を有するのが好ましい。
【0018】
このルーフサイド構造によれば、ケースの立設壁部と位置決め部材の接合壁部とを接合することによって、位置決め部材の剛性が高まる。したがって、カーテンエアバッグから受ける荷重と逆向きの反力をカーテンエアバッグに付与するための構造を強化することが可能なる。
ことが可能
【0019】
上述の態様の、車両のルーフサイド構造において、上記サンシェードモジュールの上記ケースは、上記カーテンエアバッグを膨張展開時における突出方向にガイドするガイド壁部を有するのが好ましい。
【0020】
このルーフサイド構造によれば、カーテンエアバッグは膨張展開時にケースのガイド壁部を介して突出方向にガイドされる。このとき、ケースの一部の形状変更のみの簡単な工夫によってガイド壁部を構築することが可能になる。また、エアバッグモジュール側にガイド壁部に相当する部位を設ける必要がなく、エアバッグモジュールの構造を簡素化できる。
【0021】
以下、車両のルーフサイド構造の実施形態の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
なお、この説明で用いる図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示している。また、特に断わらない限り、車長方向を矢印Xで示し、車幅方向を矢印Yで示し、車高方向を矢印Zで示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の、車両のルーフサイド構造(以下、単に「ルーフサイド構造」という。)101は、車両1の上部左右のルーフサイド部2のそれぞれに搭載される構造である。左右のルーフサイド構造101は同一であるため、図1では車両右側のルーフサイド構造101のみを例示的に示している。
【0024】
ルーフサイド構造101は、エアバッグモジュール10及びサンシェードモジュール20を備えている。これらのエアバッグモジュール10及びサンシェードモジュール20は、いずれも組付け状態でルーフサイド部2の収容空間2aに車長方向Xに沿って設けられる。ルーフサイド部2の収容空間2aは、内装材3によって車室空間5側から覆われている。内装材3は、いずれも合成樹脂材料からなるルーフヘッドライニング(図4中のルーフヘッドライニング3a)及びルーフガーニッシュ(図4中のルーフガーニッシュ3b)によって構成されている。
【0025】
(エアバッグモジュールの構造)
エアバッグモジュール10は、車両1の窓部4aの上方領域から窓部4cの上方領域までの間に車長方向Xに沿って延びるように設けられている。このエアバッグモジュール10は、車室空間5を車高方向Zの下向きに膨張展開可能なカーテンエアバッグ11を備えている。
【0026】
カーテンエアバッグ11は、膨張展開が完了した状態で車両1の側方の複数の窓部4を覆うように配置されるエアバッグであり、車両1の乗員の頭部を保護するのに使用される。このカーテンエアバッグ11は、車両前側の第1エアバッグ部11aと、第1エアバッグ部11aよりも車長方向Xの後方側に配置される車両後側の第2エアバッグ部11bと、を有する。第1エアバッグ部11aは、膨張展開が完了した状態で複数の窓部4のうちの前席に対応した1つの窓部4aをカーテン状に覆うように構成されている。これに対して、第2エアバッグ部11bは、膨張展開が完了した状態で複数の窓部4のうちの後席に対応した2つの窓部4b,4cをカーテン状に覆うように構成されている。
【0027】
図2に示されるように、エアバッグモジュール10は、衝撃発生時にカーテンエアバッグ11に膨張展開用のガスGを供給するガス供給部としてのインフレータ12を備えている。インフレータ12は、カーテンエアバッグ11とともにルーフサイド部2の収容空間2aに収容されている。
【0028】
カーテンエアバッグ11は、シート状の複数のエアバッグ基布を重ね合わせて縫合や接着等の接合を利用して袋状に形成されてなるエアバッグ形成体である。カーテンエアバッグ11は、複数の取付部11cを有し、これら複数の取付部11cにおいてルーフサイド部2の固定部に固定されている。
【0029】
カーテンエアバッグ11は、予め定められた手順によって折り畳まれた状態でケース13(図4を参照)に収容されている。このカーテンエアバッグ11は、インフレータ12から袋内に供給されるガスGによって膨張しつつ折り畳みを解除するように展開していく。このとき、カーテンエアバッグ11は、ケース13から車室空間5に向けて突出する。最終的に、カーテンエアバッグ11は、図2に示されるような展開完了状態になる。
【0030】
(サンシェードモジュールの構造)
図3に示されるように、サンシェードモジュール20は、エアバッグモジュール10に並走しており、且つ、窓部4cの上方領域のみに設けられている。図4に示されるように、このサンシェードモジュール20は、エアバッグモジュール10に対して車幅方向Yの車外側に配置されている。
【0031】
図3及び図4に示されるように、サンシェードモジュール20は、サンシェード21と、巻き取り軸部22と、ケース23と、複数の位置決め部材25と、を備えている。
【0032】
サンシェード21は、遮光性及び可撓性を有するシート状の遮蔽部材であり、ルーフガーニッシュ3bに設けられた開口3cを通じて車室空間5に引き出されるように構成されている。このサンシェード21は、その遮光性により車外からの日差しを遮ることができる日除けとして使用される。また、このサンシェード21は、その可撓性により巻き取り軸部22の外周面への巻き取りが可能とされている。
【0033】
巻き取り軸部22は、サンシェード21を外周面にロール状に巻き取るために設けられている。この巻き取り軸部22は、車長方向Xに延びる支持軸22aを中心に回転可能であり、且つ、バネ部材のような付勢手段(図示省略)によってサンシェード21の巻き取り方向に常時に付勢されるように構成されている。
【0034】
本構成によれば、サンシェード21は、付勢手段の付勢力に抗して車高方向Zの下向きに引き出されて後述の保持構造によって適宜の位置に保持されることで、窓部4cの全部或いは一部を車内側から被覆することができる。これに対して、サンシェード21は、保持構造による保持が解除されると、付勢手段の付勢力にしたがって巻き取り軸部22に巻き取られて、窓部4cの被覆を解除する。
【0035】
特に図示しないものの、サンシェードモジュール20は、窓部4cに対するサンシェード21の車高方向Zの引き出し長さを調節可能な保持構造を備えている。この保持構造は、既知のものであるためその詳細な説明については省略するが、典型的には、以下のような2つの保持構造(第1の保持構造及び第2の保持構造)のいずれかを採用することができる。
【0036】
第1の保持構造は、窓部4cの前後に車高方向Zの異なる高さに対応した複数の係止部を設ける一方で、サンシェード21の引き出し先端部に各係止部に引っ掛け可能な係合部材を設ける保持構造である。この第1の保持構造によれば、サンシェード21を巻き取り軸部22から引き出して乗員が選択した係止部に係合部材を引っ掛けることにより、サンシェード21の引き出し位置を段階的に調節することができる。これにより、サンシェード21を窓部4cに対する所望の被覆状態に保持することができる。
【0037】
第2の保持構造は、例えば、建物の窓などに設置されるカーテンやプロジェクタのスクリーンに使用されているロールスクリーン等で使用される保持構造である。この第2の保持構造によれば、サンシェード21の引き出し時の任意の位置で乗員がサンシェード21から手を離すことによって、その位置でサンシェード21を止めることができる。また、その後、乗員がサンシェード21を軽く引っ張ることによってサンシェード21の保持を解除することができる。これにより、サンシェード21の引き出し位置を連続的に調節することができ、第1の保持構造の場合と同様に、サンシェード21を窓部4cに対する所望の被覆状態に保持することができる。
【0038】
図3に示されるように、ケース23は、サンシェード21を車高方向Zの下方へ引出し可能に収容するとともに、巻き取り軸部22を収容する収容部材として構成されている。このケース23は、車長方向Xの両端部がボルト部材24によって、ルーフサイド部2の骨格部分に締結固定される。図4に示されるように、このケース23は、ガイド壁部23aと立設壁部23bを有する。
【0039】
ケース23のガイド壁部23aは、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bの車外側に対向配置される。このガイド壁部23aは、巻き取り軸部22に沿って車長方向Xに延びている。このガイド壁部23aは、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bを膨張展開時における突出方向Dにガイドすることによって第2エアバッグ部11bの突出動作をコントロールする機能を有する。本実施形態では、ガイド壁部23aは、ケース13内から車室空間5に向かう突出方向Dと概ね平行となるように、車高方向Zに対して傾斜して設けられた傾斜壁部として構成されている。
【0040】
なお、本実施形態では、ガイド壁部23aの機能を得るために、折り畳み状態の第2エアバッグ部11bとガイド壁部23aとの間に、エアバッグモジュール10のケース13をはじめ他の部材が介在しないようになっている。これにより、第2エアバッグ部11bの膨張展開時にこの第2エアバッグ部11bをガイド壁部23aに直に接触させて突出方向Dにガイドすることができる。
【0041】
ケース23の立設壁部23bは、ケース23の各部位のうち車幅方向Yの車外側に設けられている。より具体的には、この立設壁部23bは、巻き取り軸部22を間に挟んでガイド壁部23aとは反対側に設けられている。この立設壁部23bは、車幅方向Yを板厚方向としてガイド壁部23aに沿って車長方向Xに延びている。
【0042】
図3に示されるように、複数の位置決め部材25は、ケース23とは別部材として構成されている。複数の位置決め部材25は、車長方向Xの互いに離間した位置にケース23に対して部分的に配置されており、ビスや接着剤などの手段を使用してケース23に固定されている。すなわち、ケース23と複数の位置決め部材25は、予め一体化されたアセンブリとされている。なお、図3では2つの位置決め部材25を記載しているが、この位置決め部材25の数は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更が可能である。
【0043】
図4に示されるように、位置決め部材25は、上板部25aと、ボス25bと、接合壁部25cと、リブ25dと、を有する。この位置決め部材25は、ルーフサイド部2に対するサンシェードモジュール20の位置決めを行うためのものである。
【0044】
位置決め部材25の上板部25aは、ケース23の上壁部に沿って延びている。位置決め部材25のボス25bは、上板部25aにその上面から車高方向Zの上向きに突出するように設けられている。このボス25bは、ルーフサイド部2の骨格部分に設けられたボス孔2bに挿入可能な軸状部として構成されている。
【0045】
このとき、ボス孔2bは、ボス孔2bの車長方向Xへの移動を阻止する一方で、ボス孔2bの車幅方向Yの移動を許容するような長孔形状を有する。このため、位置決め部材25は、そのボス25bがルーフサイド部2のボス孔2bに挿入されることで、ルーフサイド部2に対して車長方向Xの位置決めがなされる。これにより、サンシェードモジュール20は、位置決め部材25を利用してルーフサイド部2に一時的に組付けられる。
【0046】
その後、ケース23がボルト部材24で締結固定されることによって、サンシェードモジュール20の組付けが完了する。このとき、ボス孔2bは、位置決め部材25の車幅方向Yへの移動を許容することで、この位置決め部材25と一体化されているケース23がボルト部材24で締結固定されるときに車幅方向Yに動くことを可能としている。これにより、ケース23の締結固定時の動きが邪魔されないようになっている。
【0047】
位置決め部材25の接合壁部25cは、上板部25aと概ね直角となるように延びており、ケース23の立設壁部23bに予め接合されている。上板部25aと接合壁部25cとによって区画される空間に車長方向Xを板厚方向とする補強用のリブ25dが設けられている。このリブ25dにより、ケース23に比べて位置決め部材25の剛性が高められている。
【0048】
上記構成の位置決め部材25は、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bの膨張展開時にサンシェードモジュール20が第2エアバッグ部11bから受ける荷重により車幅方向Yの車外側へ動くのをサンシェードモジュール20の車外側から抑制する抑制部30として利用される。すなわち、この位置決め部材25は、ルーフサイド部2に対するサンシェードモジュール20の位置決め機能に加えて、サンシェードモジュール20の動きを抑制する抑制機能をも備えている。
【0049】
上記抑制機能を得るために、位置決め部材25は、接合壁部25cにおいてケース23の立設壁部23bに接合されている。この位置決め部材25は、前述のようにリブ25dを設けることによってケース23よりも剛性が高められている。これにより、第2エアバッグ部11bからケース23に車幅方向Yの車外側に向かう荷重が作用したとき、このケース23を位置決め部材25が車外側から受けて支持することができる。
【0050】
(カーテンエアバッグの膨張展開動作)
次に、図2図5および図6を参照しながら、衝撃発生時にカーテンエアバッグ11が膨張展開するときの膨張展開動作について説明する。
【0051】
図2に示されるように、車両1の衝突等の発生時に、車両1に配置されているセンサ(図示省略)に大きな衝撃が加わると、2つのインフレータ12が作動してほぼ同じタイミングでガスGが生成する。2つのインフレータ12で発生したガスGは、カーテンエアバッグ11の第1エアバッグ部11aと第2エアバッグ部11bのそれぞれの内部空間に供給される。
【0052】
図5に示されるように、第2エアバッグ部11bは、インフレータ12の作動に伴って、作動前状態C0(二点鎖線で示される状態)から膨張展開初期の第1作動状態C1(実線で示される状態)へと変化する。ルーフヘッドライニング3aは、第2エアバッグ部11bが第1作動状態C1に変化する過程で、この第2エアバッグ部11bから受ける荷重によって車室空間5側へ押し開かれる。これにより、ルーフサイド部2の収容空間2aのルーフヘッドライニング3aによる被覆が部分的に解除され、第2エアバッグ部11bが車室空間5に向けて突出可能な状態になる。
【0053】
第2エアバッグ部11bが第1作動状態C1においてケース23のガイド壁部23aに当接することにより、ケース23は第2エアバッグ部11bから荷重Fを受ける。このとき、ケース23の車幅方向Yの車外側に位置決め部材25が接合されているため、ケース23が荷重Fのうち車幅方向Yの車外側に向かう荷重成分によって車外側へ動くのがこの位置決め部材25によって抑制される。すなわち、位置決め部材25は、ケース23を車幅方向Yの車外側から支持する支持部材となる。
【0054】
位置決め部材25がケース23から受けた荷重は、その逆向きの反力となってケース23を介して第2エアバッグ部11bに伝達される。これにより、第2エアバッグ部11bは、車室空間5の予定の領域に膨張展開するのに有効な反力を得ることが可能になる。このため、位置決め部材25を第2エアバッグ部11bに膨張展開時に反力を付与する「反力付与部」ということもできる。
【0055】
第2エアバッグ部11bは、その第1作動状態C1においてガイド壁部23aの表面を摺動しながら膨張展開する。このとき、位置決め部材25がケース23の車外側への動きを抑制しているため、第2エアバッグ部11bは、その先端側壁部がルーフヘッドライニング3aからの反力を受けつつ、その側方壁部がガイド壁部23aによって突出方向Dにガイドされる。
【0056】
図6に示されるように、第2エアバッグ部11bは、第1作動状態C1からさらに膨張展開動作が進行することによって第2作動状態C2になる。このとき、第2エアバッグ部11bは、その先端側壁部がルーフヘッドライニング3aからの反力を受けつつその側方壁部がガイド壁部23aによって突出方向Dにガイドされた状態で、車室空間5に突出する。
【0057】
ガイド壁部23aが第2エアバッグ部11bとルーフガーニッシュ3bとの間に介在しているため、第2エアバッグ部11bが第1作動状態C1から第2作動状態C2に至るまでの間にルーフガーニッシュ3bに引っ掛かって、膨張展開動作が邪魔されるのを防ぐことが可能になる。
【0058】
(サンシェードの使用形態)
次に、図7および図8を参照しながら、サンシェードモジュール20のサンシェード21の使用形態について説明する。
【0059】
図7に示されるように、サンシェード21がケース23から車高方向Zの下方へ引き出されることなく未使用位置P0に設定されたとき、窓部4cをサンシェード21によって車内側から覆うことができず、車外からの日差しをサンシェード21で遮ることができない。このとき、車両1の乗員が窓部4cの全体を通じて車外の景色を見ることができる状態になる。
【0060】
図8中の実線で示されるように、サンシェード21は、図7中の未使用位置P0から車高方向Zの下方へ引き下げられることによって第1使用位置P1に設定される。この第1使用位置P1では、窓部4cの上側領域がサンシェード21によって車内側から覆われ、車外からの日差しの一部が遮光性を有するサンシェード21で遮られる。このとき、車両1の乗員が窓部4cの下側領域のみを通じて車外の景色を見ることができる状態になる。
【0061】
図8中の二点鎖線で示されるように、サンシェード21は、第1使用位置P1からさらに車高方向Zの下方へ引き下げられることによって第2使用位置P2に設定される。この第2使用位置P2では、窓部4cの全体がサンシェード21によって車内側から覆われ、車外からの日差しの全部が遮光性を有するサンシェード21で遮られる。このとき、車両1の乗員が窓部4cを通じて車外の景色を見ることができない状態になる。
【0062】
上記構成のサンシェードモジュール20は、サンシェードモジュール20を窓部4cの上方領域に設けてサンシェード21を引き下げて使用する構造であるため、乗員は車外からの日差しの量に応じてサンシェード21を途中で止めつつ景色を楽しむことが可能になるという利点がある。これに対して、窓部4cの下方領域からサンシェードを引き上げて使用するような構造は、サンシェードによって日差しの量を調節するのが難しく、例えば、サンシェードを引き上げ過ぎると車外の景色を見ることが犠牲になる点で不利である。
【0063】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0064】
実施形態1の、車両のルーフサイド構造101において、エアバッグモジュール10は、車両1のルーフサイド部2に車長方向Xに沿って設けられる。また、サンシェードモジュール20は、ルーフサイド部2にエアバッグモジュール10に対して車幅方向Yの車外側に並走して設けられる。すなわち、サンシェードモジュール20は、エアバッグモジュール10と概ね平行に延びた状態でルーフサイド部2に収容される。
【0065】
ここで、ルーフサイド構造101を構成する抑制部30は、カーテンエアバッグ11の膨張展開時にサンシェードモジュール20がカーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bから受ける荷重Fにより車幅方向Yの車外側へ動くのをサンシェードモジュール20の車外側から抑制する機能を有する。この抑制部30によれば、カーテンエアバッグ11が膨張展開するとき、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bとサンシェードモジュール20との間にリブ等の補強部材を設けることなく、第2エアバッグ部11bから受ける荷重Fと逆向きの反力を抑制部30によって第2エアバッグ部11bに付与することが可能になる。
【0066】
これにより、車両1のルーフサイド部2にエアバッグモジュール10とサンシェードモジュール20を並走させて設ける構造を採用するとき、エアバッグモジュール10とサンシェードモジュール20との間に補強部材を設けるスペースを確保できない場合であっても、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bが膨張展開時に車幅方向Yの車外側に動くのを抑制部30で抑制することで、第2エアバッグ部11bの膨張展開動作を安定させることが可能になる。その結果、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bが乗員の頭部の本来の保護性能を発揮できるようになる。
【0067】
従って、上述の実施形態1によれば、車両1のルーフサイド部2にエアバッグモジュール10と並走させてサンシェードモジュール20を設けるルーフサイド構造101において、カーテンエアバッグ11の膨張展開性能を維持するのに有効な技術を提供することが可能になる
【0068】
上記のルーフサイド構造101によれば、サンシェードモジュール20をルーフサイド部2に対して位置決めするのに用いる位置決め部材25は、ケース23の車幅方向Yの車外側に固定されている。したがって、この位置決め部材25をカーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bが膨張展開時に車幅方向の車外側に動くのを抑制する抑制部30として兼用することができる。これより、専用の抑制部を設ける必要がなく、サンシェードモジュール20の部品点数を少なく抑えることが可能になる。また、ケース23と位置決め部材25を固定して予め一体化することにより、ルーフサイド部2に対してケース23と位置決め部材25を別々に組み付ける必要がなく、サンシェードモジュール20の組付け作業に要する工数を少なく抑えることが可能になる。
【0069】
上記構成のルーフサイド構造101によれば、ケース23の立設壁部23bと位置決め部材25の接合壁部25cとを接合することによって、位置決め部材25の剛性が高まる。したがって、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bから受ける荷重Fと逆向きの反力を第2エアバッグ部11bに付与するための構造を強化することが可能なる。
【0070】
上記構成のルーフサイド構造101によれば、カーテンエアバッグ11の第2エアバッグ部11bは膨張展開時にケース23のガイド壁部23aを介して突出方向Dにガイドされる。このとき、ケース23の一部の形状変更のみの簡単な工夫によってガイド壁部23aを構築することが可能になる。また、エアバッグモジュール10側にガイド壁部23aに相当する部位を設ける必要がなく、エアバッグモジュール10の構造を簡素化できる。
【0071】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0072】
上述の実施形態では、サンシェードモジュール20のうちケース23の車幅方向Yの車外側に固定された位置決め部材25を利用して抑制部30を構成する場合について例示したが、これに代えて、位置決め部材25に相当する部位をケース23の一部によって構成することもできる。すなわち、ケース23自体が位置決め部材25に相当する部位を備えるようにしてもよい。また、位置決め部材25とは別の部材を利用して抑制部30を構成するようにしてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、サンシェード21が巻き取り軸部22の外周にロール状に巻き取られてケース23に収容される構造について例示したが、これに代えて、サンシェード21が蛇腹状に折り畳まれてケース23に収容される構造を採用することもできる。
【0074】
上述の実施形態では、窓部4cの上方領域のみにサンシェードモジュール20を設ける構造について例示したが、この構造に加えて或いは代えて、窓部4aの上方領域や窓部4bの上方領域にサンシェードモジュール20と同様の構造のものを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 車両
2 ルーフサイド部
10 エアバッグモジュール
11 カーテンエアバッグ
20 サンシェードモジュール
21 サンシェード
23 ケース
23a ガイド壁部
23b 立設壁部
25 位置決め部材(抑制部)
25c 接合壁部
30 抑制部
101 車両のルーフサイド構造
D 突出方向
X 車長方向
Y 車幅方向
Z 車高方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8