(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074321
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】商品位置把握システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20230522BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187211
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣戸 健一郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】スマートフォン等が備える一般的なカメラで陳列棚を複数箇所に分けて撮影することで陳列棚に付された値札の位置情報を把握する。
【解決手段】棚板の両端付近に付された第1のコードが撮影範囲に入る状態で携帯情報端末3により撮影された陳列棚4の画像データを取得する画像処理部11と、画像認識処理により第1のコードの画像データ中の位置およびエンコードされた棚情報を識別する棚情報取得部22と、画像認識処理により各棚板に付された値札の位置および値札に付された第2のコードにエンコードされた商品情報を識別する値札情報取得部23と、棚情報と値札の位置の情報とに基づいて商品の陳列位置に係る情報を取得し、商品位置情報27に記録する商品位置取得部24とを有し、商品位置取得部24は、棚板の両端付近に付された第1のコード間の距離を全体とした、一方の第1のコードからの相対位置として値札の位置の情報を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陳列棚に陳列された商品の位置を把握する商品位置把握システムであって、
前記陳列棚が有する1つ以上の棚板および前記各棚板の両端付近に付された一次元もしくは二次元の第1のコードが撮影範囲に入る状態で携帯情報端末のカメラにより撮影された前記陳列棚の陳列面の画像データを取得する画像処理部と、
前記画像データについて画像認識処理により前記第1のコードの前記画像データ中の位置および前記第1のコードにエンコードされた対応する前記棚板の棚情報を識別する棚情報取得部と、
前記画像データについて画像認識処理により前記各棚板に付された値札の位置および前記値札に表示された一次元もしくは二次元の第2のコードにエンコードされた商品情報を識別する値札情報取得部と、
前記棚情報と、前記値札の位置の情報とに基づいて、前記値札に対応して前記棚板に陳列されている前記商品の陳列位置に係る情報を取得し、前記商品情報とあわせて商品位置情報記録部に記録する商品位置取得部と、を有し、
前記商品位置取得部は、前記画像データにおける、前記棚板の両端付近にそれぞれ付された前記第1のコード間の距離を全体とした、前記棚板に付された前記値札の一方の前記第1のコードからの相対位置として、前記値札の位置の情報を取得する、商品位置把握システム。
【請求項2】
請求項1に記載の商品位置把握システムにおいて、
前記第1のコードには、対象の前記棚板を特定する情報および対象の前記棚板の前記陳列棚内における段情報がエンコードされている、商品位置把握システム。
【請求項3】
請求項1に記載の商品位置把握システムにおいて、
前記画像処理部は、前記撮影範囲に前記棚板の両端付近に付された前記第1のコードが同時に含まれていない場合に、前記携帯情報端末に対して通知する、商品位置把握システム。
【請求項4】
請求項2に記載の商品位置把握システムにおいて、
前記棚情報取得部は、前記陳列棚に対して前記画像処理部により取得された複数の前記画像データから識別した前記各棚板に係る前記棚情報に基づいて、前記陳列棚が有するすべての前記棚板が撮影されたかを判別し、すべての前記棚板が撮影されていない場合は、前記携帯情報端末に対して通知する、商品位置把握システム。
【請求項5】
請求項4に記載の商品位置把握システムにおいて、
前記棚情報取得部は、前記陳列棚が有するすべての前記棚板に係る前記棚情報に対して誤り検出を行い、誤りが検出された場合は、前記携帯情報端末に対して通知する、商品位置把握システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小売店等において陳列商品を管理する技術に関し、特に、商品がどの陳列棚のどの位置に陳列されているかを把握する商品位置把握システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストア等(以下これらを「小売店」と総称する場合がある)の店舗では、大量の商品が陳列棚に陳列された状態で販売される。小売店側としては、どこにどの商品が陳列されているのかを把握することは重要であり、例えば、商品の情報を管理する管理システム等においてデータベースに商品の所在位置、陳列位置の情報を保持するための枠を設けている場合も多いが、手作業で入力するのは煩雑すぎて結局情報が入力されず、有効に利用されないケースがほとんどである。
【0003】
小売店におけるセールやキャンペーン等の際に、数十以上の対象の商品について値札を変更する必要が生じる場合があるが、いわゆる電子値札の場合はともかく、一般的な値札の場合、店員が手作業で変更する必要があり、アルバイト等の店員がどこにどの商品が陳列されているのか把握できておらず、値札を変更できない、もしくは変更に長時間かかってしまう、という事態が生じ得る。一日の営業の中でも、陳列されている商品を整えたり(フェイスアップ)、別の見やすいところに移動させたり等、商品が陳列されている場所が変わってしまい、他の店員では場所が把握できなくなる場合がある。
【0004】
また、近年では、無人店舗においてロボットを利用して自動で商品を配置したりピックアップしたりすることも検討されており、どこにどの商品が陳列されているのかを把握することはロボットをナビゲーションする上で重要である。また、商品の販売数や在庫数に基づいてAI(Artificial Intelligence、人工知能)により需要予測を行って自動的に発注するという仕組みも検討されているが、同じ商品でも陳列場所により売れ行きが異なることは知られており、陳列状況(陳列場所×在庫数)を把握することで需要予測の精度をより向上させることができる。
【0005】
店舗における商品の陳列位置や陳列状況を把握する技術として、例えば、特開2021-157358号公報(特許文献1)には、陳列棚の撮像画像を取得して、撮像画像から商品に対応する位置に設置された棚札とその位置座標を検出し、棚札および位置座標の組合せに基づいて、陳列棚に格納される商品の種別および格納位置を特定する棚割分析システムが記載されている。
【0006】
また、例えば、特開2019-94191号公報(特許文献2)には、値札が取り付けられた棚を撮像した撮像画像に基づいて値札を検出し、検出した値札に基づいて値札の位置を特定して、特定した値札の位置に基づいて商品の陳列範囲を特定するとともに、検出した値札(バーコード)に基づいて、同値札に対応する商品を特定し、特定した値札の位置と、特定した商品とに基づいて、棚割情報を生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-157358号公報
【特許文献2】特開2019-94191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のような従来技術によれば、陳列棚全体を撮影することで、陳列棚全体の中での座標として、どこにどの商品があるかを示す棚割情報を生成することができる。ここで、陳列棚を撮影するカメラが高解像度で広範囲を撮影することができる性能を有するものであれば、陳列棚全体を一括で読み取って、陳列棚や値札に表示された二次元コードを正確に読み取ることが可能である。
【0009】
一方で、上記のような高性能のカメラではなくスマートフォン等が備える一般的なカメラを用いる場合、レンズの制約から広範囲の値札を読み取ることが困難な場合がある。また、広範囲を撮影するために陳列棚から距離をとると、解像度等の制約で値札等に表示する二次元コードを正しく読み取れないケースが生じる上に、コンビニエンスストアなどではそもそも陳列棚に面した通路の幅が90センチメートル程度しかなく、陳列棚全体を撮影するのに十分な距離がとれない場合がある。
【0010】
一方、特許文献2のような従来技術によれば、陳列棚を部分的に撮影して、撮影した画像から値札の位置を特定するとされる。しかしながら、部分的に撮影した画像が棚全体におけるどの部分を撮影したものかをどのように把握し、ひいては部分的に撮影した画像内における値札の座標から棚全体の画像内における座標にどのように変換するか、すなわち、撮影した画像から特定した値札が陳列棚のどの位置に付されているかをどのように特定するかについては特に明示されていない。
【0011】
そこで本発明の目的は、スマートフォン等が備える一般的なカメラで陳列棚を複数箇所に分けて撮影することで陳列棚に付された値札の位置情報を把握する商品位置把握システムを提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
本発明の代表的な実施の形態である商品位置把握システムは、陳列棚に陳列された商品の位置を把握する商品位置把握システムであって、前記陳列棚が有する1つ以上の棚板および前記各棚板の両端付近に付された一次元もしくは二次元の第1のコードが撮影範囲に入る状態で携帯情報端末のカメラにより撮影された前記陳列棚の陳列面の画像データを取得する画像処理部と、前記画像データについて画像認識処理により前記第1のコードの前記画像データ中の位置および前記第1のコードにエンコードされた対応する前記棚板の棚情報を識別する棚情報取得部と、前記画像データについて画像認識処理により前記各棚板に付された値札の位置および前記値札に表示された一次元もしくは二次元の第2のコードにエンコードされた商品情報を識別する値札情報取得部と、前記棚情報と、前記値札の位置の情報とに基づいて、前記値札に対応して前記棚板に陳列されている前記商品の陳列位置に係る情報を取得し、前記商品情報とあわせて商品位置情報記録部に記録する商品位置取得部と、を有する。
【0015】
そして、前記商品位置取得部は、前記画像データにおける、前記棚板の両端付近にそれぞれ付された前記第1のコード間の距離を全体とした、前記棚板に付された前記値札の一方の前記第1のコードからの相対位置として、前記値札の位置の情報を取得する。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0017】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、スマートフォン等が備える一般的なカメラで陳列棚を複数回に分けて撮影することで陳列棚に付された値札の位置情報を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態である商品位置把握システムの構成例について概要を示した図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における携帯情報端末により陳列棚を撮影する際の例について概要を示した図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における棚情報を取得するための陳列棚の構成例について概要を示した図である。
【
図4】本発明の一実施の形態における棚情報を取得するための陳列棚の他の構成例について概要を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態における商品が陳列された陳列棚の例について概要を示した図である。
【
図6】本発明の一実施の形態における値札が棚板のどの位置に付されているかを特定する例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0020】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である商品位置把握システムの構成例について概要を示した図である。商品位置把握システム1は、例えば、店舗管理サーバ2に対して、カメラ機能を備えたスマートフォン等の携帯情報端末3が、図示しない店舗内の無線LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークを介して接続する構成を有する。店舗管理サーバ2は、小売店の店舗に設置されていてもよいし、フランチャイズチェーン等の場合には本部やデータセンター等に設置されていてもよい。
【0021】
店舗管理サーバ2は、例えば、サーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により構成され、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、小売店の管理に係る各種機能を実現する。
【0022】
この店舗管理サーバ2は、例えば、ソフトウェアとして実装された画像処理部21、棚情報取得部22、値札情報取得部23および商品位置取得部24等の各部を有する。また、データベースやファイルテーブルなどにより実装された棚マスタ25、商品マスタ26および商品位置情報27などの各データストアを有する。
【0023】
画像処理部21は、携帯情報端末3のカメラ機能により撮影された陳列棚4の画像データを取得し、後述する棚情報取得部22や値札情報取得部23による画像認識処理を行う機能を有する。画像データを取得する都度画像認識処理を行ってもよいし、複数の画像データを保持して一括で画像認識処理を行うようにしてもよい。なお、携帯情報端末3は、小売店の店員等の操作により、店舗に設置された1つ以上の陳列棚4に対して、その前面や側面(商品の陳列面)を複数箇所に分けて撮影する。本実施の形態における撮影には、1つ以上の静止画像の撮影に限らず動画像の撮影も含まれる。
【0024】
図2は、本発明の一実施の形態における携帯情報端末3により陳列棚4を撮影する際の例について概要を示した図である。上述したように、コンビニエンスストアなどでは陳列棚4に面した通路の幅が90センチメートル程度しかなく、陳列棚4(一般的には、図示するように、高さ約120~160センチメートル、幅約90センチメートル)の陳列面全体を適切な解像度で撮影するのに十分な距離がとれない場合がある。そこで本実施の形態では、スマートフォンなどの広く普及して容易に調達できる携帯情報端末3のカメラ機能を用いて、陳列棚4の陳列面から約60~70センチメートル離れた距離から陳列面全体を複数箇所に分けて撮影する。
図2の例では上段、中段、下段の3箇所に分けて撮影している状況を示している。
【0025】
なお、陳列棚4の陳列面を複数回に分けて撮影するという観点からは、デジタルカメラ等の単機能のカメラでもよいが、スマートフォン等の携帯情報端末3を用いることで、例えば、単なるカメラ機能だけではなく陳列棚4の撮影用のアプリケーションを実装し、店舗管理サーバ2とネットワークを介して連携して画像データを送信したり、店舗管理サーバ2での画像処理結果を表示したりすることができる。また、店舗管理サーバ2と連携して、店舗管理に係る各種機能を利用するための店員用端末として活用することも容易である。
【0026】
図1に戻り、棚情報取得部22は、画像処理部21により取得した陳列棚4の画像に対する画像処理の結果と、棚マスタ25に登録された陳列棚4のマスタ情報に基づいて、陳列棚4の位置や各段などの棚情報を取得する機能を有する。
【0027】
図3、
図4は、本発明の一実施の形態における棚情報を取得するための陳列棚4の構成例について概要を示した図である。
図3の例では、商品が陳列されていない陳列棚4を前面(正面)側から見た状態を示しており、陳列棚4は棚板41を5段備えている。図中の点線の枠は、携帯情報端末3のカメラ機能で撮影する範囲を示している。
図3の例では、上から1段目と2段目の棚板41が含まれる範囲と、3段目と4段目の棚板41が含まれる範囲と、5段目の棚板41が含まれる範囲に分けてそれぞれ撮影することを示している。なお、本実施の形態では、後述するように、棚板41に付された値札44により値札および商品の位置を特定することから、各撮影範囲により陳列棚4が備える棚板41をすべて網羅して撮影できていればよく、陳列棚4の陳列面全体を漏れなく網羅している必要はない。
【0028】
図3の例では、各棚板41の両端に、各棚板41とその位置や所在の情報を示すARマーカー42が付されている。一方、
図4の例では、陳列棚4が左右の側板43を有し、この側板43に各棚板41が取り付けられた構成となっている。この場合、
図3の例と同様に、各棚板41の両端にARマーカー42を付してもよいが、
図4の例に示すように、側板43の棚板41が取り付けられた部分にARマーカー42を付してもよい。すなわち、ARマーカー42は、棚板41の両端付近に付されていればよい。
【0029】
ARマーカー42には、一般的に利用可能な各種のものを適宜利用することができるが、本実施の形態では、例えば、QRコード(登録商標、以下同じ)のようにパターン数が多く複雑で認識に時間を要するものではなく、パターン数が少なく1回の撮影で数百個同時に認識することができるArUcoなどを用いる。各ARマーカー42は、携帯情報端末3のカメラ機能により約60~70センチメートルの距離から読取り可能な大きさとして、例えば、1辺が1センチメートル以上程度の正方形の白黒画像で、周囲に幅3ミリメートル以上の白色の余白を有するのが望ましい。
【0030】
例えばARマーカー42としてArUcoを用いる場合、各マーカーの画像パターンに対して3桁の数字が紐付けられている(エンコードされている)。この数字に基づいて、対象のARマーカー42が付された棚板41の位置や所在等の棚情報を識別することが可能である。例えば、棚板41の向かって左側に付されたARマーカー42では、3桁の数字のうち上2桁(01~99)が店舗内で対象の陳列棚4を一意に特定することができるIDやシーケンス番号を示し、下1桁(1~9)が陳列棚4における段情報(上から何段目の棚板41か)を示すような画像とする。また、棚板41の向かって右側に付されたARマーカー42では、上1桁(1~9)が陳列棚4における段情報(上から何段目の棚板41か)を示し、下1桁(1~9)が陳列棚4が有する棚板41の全体の数を示すような画像とする。
【0031】
上記のような情報を示すARマーカー42を各棚板41の両端付近に付することで、
図3の点線の枠で示すように、ある棚板41の両端付近のARマーカー42が同時に含まれるように撮影範囲を設定すれば、陳列棚4全体を撮影せずに撮影範囲を複数に分けても、取得した画像に映っている各棚板41がどの陳列棚4の何段目の棚板41であるか、および各棚板41の両端付近の位置(例えば、画像内におけるARマーカー42の中心部分のXY座標)を特定することができる。また、棚マスタ25に各陳列棚4の店舗内での設置場所の情報を登録しておけば、これを参照することで対象の陳列棚4が店舗内のどこに設置されているかを把握することもできる。
【0032】
携帯情報端末3により陳列棚4を撮影する際の撮影範囲として、1つ以上の棚板41についてそれぞれ両端付近のARマーカー42が同時に含まれるように設定する必要があるが、撮影者による調整に任せると撮影範囲が適切ではなくなる可能性がある。そこで、例えば、携帯情報端末3に実装した撮影用のアプリケーションが上述した画像処理部21と連携することにより、カメラ機能による撮影範囲に含まれるARマーカー42をリアルタイムで認識して、棚板41の両端付近のARマーカー42が同時に含まれる適切な撮影範囲となるようガイド、支援する(例えば、棚板41の両端付近のARマーカー42が同時に含まれていない場合は携帯情報端末3に通知・警告する)ように構成してもよい。
【0033】
この場合、認識した各ARマーカー42について棚情報取得部22により読み取った棚情報に基づいて、陳列棚4のすべての棚板41を撮影範囲に含めたか否かを判別し、すべての棚板41を撮影していない場合には携帯情報端末3に対して通知・警告する等により、棚板41の撮影漏れを防止する構成としてもよい。例えば、ある陳列棚4について、ARマーカー42にエンコードされた情報により、当該陳列棚4が何段の棚板41を有するか、および撮影した棚板41の段情報(上から何段目の棚板41か)が分かるため、これに基づいて撮影が漏れている棚板41の有無を判断することができる。また、撮影者はすべての陳列棚4のすべての棚板41を撮影したと認識していても、撮影者が撮影した陳列棚4の棚情報および段情報と、棚マスタ25に登録されている棚情報および段情報とを対比することで、未撮影の陳列棚4の棚板41を特定することもできる。
【0034】
また、常にすべての陳列棚4を撮影しなければならないとは限らず、例えば、新たな商品が入荷して、その商品を陳列する陳列棚4や棚板41が特定されている場合や、撮影者もしくは管理者等が対象の陳列棚4や棚板41を指定するような場合には、特定もしくは指定されている陳列棚4や棚板41の中で未撮影のものを特定して携帯情報端末3に対して撮影範囲に含めるよう指示するようにしてもよい。また、撮影者が撮影した陳列棚4の棚情報および段情報と、棚マスタ25に登録されている棚情報および段情報とを対比して、撮影者が撮影した陳列棚4や棚板41が撮影不要のものであった場合には、その旨を携帯情報端末3に対して通知・警告する等の構成とすることもできる。
【0035】
また、陳列棚4のすべての棚板41について認識した棚情報に基づいてパリティチェック等の誤り検出を実施することで、各棚板41の棚情報を正しく認識できたか否かを判別し、正しく認識できていない場合には携帯情報端末3に対して通知・警告する等により、再撮影を促す構成としてもよい。
【0036】
図1に戻り、値札情報取得部23は、画像処理部21により取得した陳列棚4の画像に対する画像処理の結果に基づいて、陳列棚4の棚板41に付された値札の情報を取得する機能を有する。取得した値札の情報と、商品マスタ26に登録された商品のマスタ情報に基づいて、値札に対応して陳列されている商品の情報を取得する機能を有していてもよい。
【0037】
図4は、本発明の一実施の形態における商品が陳列された陳列棚4の例について概要を示した図である。
図4の例では、陳列棚4の各棚板41に商品を陳列するとともに、棚板41の対応する位置に各商品に係る値札44を付している状態を示している。値札44には、対応する商品に係る情報を示す文字列が埋め込まれた二次元コード(本実施の形態ではQRコード45)が表示されている。各QRコード45に埋め込まれた商品の情報は、例えば、商品名やJANコード、価格、生産地、特売情報等である。なお、本実施の形態では、表示内容をリモートで自由に設定できる電子値札の場合はもちろん、電子値札ではない紙や樹脂などの一般的な値札を用いることができる。
【0038】
各QRコード45は、携帯情報端末3のカメラ機能により約60~70センチメートルの距離から読み取り可能な大きさとして、例えば、1辺が2センチメートル以上程度の正方形の白黒画像で、周囲に幅3ミリメートル以上の白色の余白を有するのが望ましい。さらに、商品名や価格等を実際に表示する余白を有していてもよい。
【0039】
図1に戻り、上述したように、値札情報取得部23は、画像処理部21により取得した陳列棚4の画像から各値札の情報を取得するが、その際、例えば、陳列棚4の画像からAIによる画像認識により値札44の形状の部分を特定し、値札44が棚板41のどの位置に付されているかを特定するとともに、値札44の形状の部分からQRコード45の部分をさらに特定して、QRコード45に埋め込まれた文字列を読み取る。
【0040】
図5は、本発明の一実施の形態における値札44が棚板41のどの位置に付されているかを特定する例について概要を示した図である。
図5の例では、説明の便宜のため、陳列棚4の画像から棚板41一段と値札44一つ(および対応する商品)に係る部分のみを抽出した状態を示している。本実施の形態では、値札44の位置を、棚板41における端部(本実施の形態では左端とするが、右端であってもよい)付近のARマーカー42からの相対位置によって特定する。画像中における棚板41の両端の位置(画像中のXY座標)は、端部付近に付されたARマーカー42の位置(例えば、ARマーカー42の中心部分の座標)として特定することができ、これに基づいて両端の間の距離(図中の「a」)を把握することができる。
【0041】
そして、値札44の位置(例えば、値札44の中心部分の座標)を特定すると、そのY座標は棚板41の端部付近のARマーカー42のY座標に対して一定の範囲内にある(ほぼ同じ高さである)はずである。したがって、棚板41の端部付近のARマーカー42のY座標に対して、Y座標が所定の範囲内にある値札44は、当該棚板41に付されたものとして、そのX座標と、棚板41の左端のARマーカー42のX座標とに基づいて、値札44の棚板41左端からの距離(図中の「b」)を把握する。そして、棚板41の両端の間の距離aに対する値札44の棚板41の左端からの距離bの比により、棚板41の左端からの相対位置として値札44の位置を特定する。
【0042】
図1に戻り、商品位置取得部24は、棚情報取得部22により特定された棚板41の情報と、値札情報取得部23により特定された値札の情報とに基づいて、各値札44(およびこれに対応する商品)がどの陳列棚4のどの棚板41のどの位置に付されているか(棚割情報)を特定する機能を有する。特定した商品の位置に係る情報は、商品位置情報27に記録するようにしてもよい。商品位置取得部24は、商品(値札44)の位置に係る情報として、例えば、以下のようなデータを出力する。
[[11,1,0.6198,’BEER_1’],
[11,1,0.2554,’BEER_2’],
[11,2,0.4353,’ONIGIRI_1’],
[11,2,0.0975,’ONIGIRI_2’],
…]
【0043】
上記のデータでは、商品(値札44)毎に、陳列棚4のIDやシーケンス番号、棚板41の番号(上から何段目か)、棚板41の左端からの相対位置、QRコード45に埋め込まれた文字列が含まれている。上記のデータのフォーマットは一例であり、データ項目や順序等のフォーマットは適宜のものとすることができる。
【0044】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態における商品位置把握システム1によれば、各棚板41の端部付近にARマーカー42を付して、棚板41の端部の位置を識別可能とするとともに、ARマーカー42に棚情報を埋め込むことで、陳列棚4の陳列面全体を撮影範囲とせず、携帯情報端末3のカメラ機能により複数の範囲に分割して撮影した場合でも、各棚板41の陳列棚4内での位置を把握することができる。そして、棚板41に付された値札44についての棚板41端部からの相対位置として商品(値札44)の陳列位置を把握することができる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態では、各棚板41の端部付近にARマーカー42を付するとともに、各棚板41に付した値札44毎にQRコード45を付する構成としているが、各棚板41の端部付近に付するものとしては、広範囲に付された複数のものを高速に読み取ることができる一次元もしくは二次元のコードであれば適宜利用することができる。また、各値札44に付するコードについても、QRコード45に限らず一次元のバーコードを用いてもよいし、ArUcoなどのARマーカーを用いてもよい。また、これらの構成を適宜組合せて用いるようにしてもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0047】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0048】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、商品がどの陳列棚のどの位置に陳列されているかを把握する商品位置把握システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…商品位置把握システム、2…店舗管理サーバ、3…携帯情報端末、4…陳列棚、
21…画像処理部、22…棚情報取得部、23…値札情報取得部、24…商品位置取得部、25…棚マスタ、26…商品マスタ、27…商品位置情報、
41…棚板、42…ARマーカー、43…側板、44…値札、45…QRコード