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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074323
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】ラッチ装置及び建具
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/00 20060101AFI20230522BHJP
   E05B 15/02 20060101ALI20230522BHJP
   E05C 1/08 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
E05C1/00 B
E05B15/02 B
E05C1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187213
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
(72)【発明者】
【氏名】菊野 亘
(57)【要約】
【課題】外形寸法が大型化する事態を抑えて障子を開閉する際の操作力を調整する。
【解決手段】枠体10の縦枠11に設けられるローラ37と、障子20の縦框24に設けられる受部材40とを備え、受部材40には障子20の開閉に伴ってローラ37と当接可能となる係合突部43が設けられ、障子20が閉じられた際にローラ37が受部材40の係合突部43を乗り越えて当接することにより枠体10に対する障子20の開き方向への移動を制限するラッチ装置27であって、係合突部43は、ローラ37の通過経路が変更可能となる長さを有し、かつ長さ方向において突出高さが連続的に変化する傾斜状に構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び障子のいずれか一方に設けられる押圧部材と、いずれか他方に設けられる受部材とを備え、前記受部材には前記障子の開閉に伴って前記押圧部材と当接可能となる係合突部が設けられ、前記障子が閉じられた際に前記押圧部材が前記受部材の前記係合突部を乗り越えた後に前記係合突部に当接することにより前記枠体に対する前記障子の開き方向への移動を制限する建具用のラッチ装置であって、
前記係合突部は、前記押圧部材の通過経路が変更可能となる長さを有し、かつ長さ方向において突出高さが連続的に変化する傾斜状に構成されていることを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
枠体及び障子のいずれか一方に設けられる押圧部材と、いずれか他方に設けられる受部材とを備え、前記受部材には前記障子の開閉に伴って前記押圧部材と当接可能となる係合突部が設けられ、前記障子が閉じられた際に前記押圧部材が前記受部材の前記係合突部を乗り越えた後に前記係合突部に当接することにより前記枠体に対する前記障子の開き方向への移動を制限する建具用のラッチ装置であって、
前記係合突部は、前記押圧部材の通過経路が変更可能となる長さを有し、かつ長さ方向において突出高さが段階的に変化する階段状に構成されていることを特徴とするラッチ装置。
【請求項3】
前記押圧部材及び前記受部材の少なくとも一方は、前記係合突部の長さ方向に沿って長孔状となる取付孔を介して前記枠体及び前記障子のいずれか一方に固定部材を螺合することによって取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
枠体及び障子を備え、前記障子はパネルの戸先となる部分に縦框を装着したものであり、請求項1~請求項3のいずれか一つに記載したラッチ装置の前記押圧部材を前記枠体の縦枠に設けるとともに、前記受部材を前記縦框に設けたことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に対して障子の開き方向の移動を制限する建具用のラッチ装置及び建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のラッチ装置としては、障子の縦框にローララッチを設けるとともに、枠体に縦枠ラッチ受けを設けたものがある。ローララッチは、ケースに対して移動可能に支持させたローラと、ケースとローラとの間に介在してローラを突出する方向に押圧するバネとを備えて構成されたものである。このラッチ装置では、障子を閉じた際にローララッチのローラがバネによってラッチ受けの凹部に押しつけられることになり、枠体に対する障子の開き方向の移動が制限された状態となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-113221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のラッチ装置には、バネを支持するバネ受けがケースに対して移動可能に配設されるとともに、バネ受けとケースとの間に調整用ボルトを配設されている。このラッチ装置では、調整ボルトを操作してバネ受けとケースとの間の距離を変更するとバネによる押圧部材の押圧力が変化するため、障子を開閉する際の操作力を調整することが可能となる。しかしながら、バネ受け及び調整用ボルトを収容するケースとしては、外形寸法が大型化することになり、例えば縦枠や縦框として見付け寸法の小さいものを適用した建具に対して取り付けることが困難になる等の問題を招来する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、外形寸法が大型化する事態を抑えて障子を開閉する際の操作力を調整することのできるラッチ装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るラッチ装置は、枠体及び障子のいずれか一方に設けられる押圧部材と、いずれか他方に設けられる受部材とを備え、前記受部材には前記障子の開閉に伴って前記押圧部材と当接可能となる係合突部が設けられ、前記障子が閉じられた際に前記押圧部材が前記受部材の前記係合突部を乗り越えた後に前記係合突部に当接することにより前記枠体に対する前記障子の開き方向への移動を制限する建具用のラッチ装置であって、前記係合突部は、前記押圧部材の通過経路が変更可能となる長さを有し、かつ長さ方向において突出高さが連続的に変化する傾斜状に構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るラッチ装置は、枠体及び障子のいずれか一方に設けられる押圧部材と、いずれか他方に設けられる受部材とを備え、前記受部材には前記障子の開閉に伴って前記押圧部材と当接可能となる係合突部が設けられ、前記障子が閉じられた際に前記押圧部材が前記受部材の前記係合突部を乗り越えた後に前記係合突部に当接することにより前記枠体に対する前記障子の開き方向への移動を制限する建具用のラッチ装置であって、前記係合突部は、前記押圧部材の通過経路が変更可能となる長さを有し、かつ長さ方向において突出高さが段階的に変化する階段状に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、係合突部に対する押圧部材の通過経路を変更することで障子を開閉する際の操作力を調整することが可能であり、押圧部材に調整機構を設ける必要がない。従って、外形寸法が大型化する事態を抑えることができ、縦枠や縦框として見付け寸法の小さいものを適用した建具に対しても取り付けることが可能になる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態である建具の姿図である。
図2図1に示した建具を示すもので、(a)は障子が閉じた状態の横断面図、(b)は障子が開いた状態の横断面図である。
図3図1に示した建具のラッチ装置に適用するローララッチを示すもので、(a)は縦断面図、(b)は(a)における右側面図である。
図4図1に示した建具のラッチ装置に適用する受部材を示すもので、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図5図1に示した建具のラッチ装置に適用する受部材を示すもので、(a)は係合突部の上方部分で破断した断面斜視図、(b)は係合突部の下方部分で破断した断面斜視図である。
図6図1に示した建具の要部を拡大して示すもので、(a)は押圧部材が係合突部の上方部分を通過する途中の横断面図、(b)は押圧部材が係合突部の下方部分を通過する途中の横断面図である。
図7図1に示した建具に適用する受部材の変形例1を示すもので、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図8図1に示した建具に適用する受部材の変形例2を示すもので、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図9図1に示した建具に適用する受部材の変形例3を示すもので、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るラッチ装置及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、上枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0011】
図1図2は、本発明の実施の形態である建具を示すものである。ここで例示する建具は、片開き戸と称されるもので、枠体10及び障子20を備えている。枠体10は、左右の縦枠11の上端部間に上枠12を設けることによって構成したものである。障子20は、長方形状を成すガラス板等のパネル21の四周に上框22、下框23及び左右の縦框24を装着することによって構成したものである。この障子20は、一方の縦框24と枠体10の一方の縦枠11との間に設けたヒンジ1によって枠体10に支持してあり、上下に沿ったヒンジ軸回りに回転することによって枠体10の開口を開閉することが可能である。また、図には明示していないが、この建具では、ヒンジ1の取付位置を適宜変更することにより、枠体10の縦枠11と障子20の縦框24との間の隙間を調整することが可能である。パネル21の戸先となる部分には、両面にハンドル25が取り付けてある。枠体10を構成する縦枠11、上枠12、障子20を構成する上框22、下框23、縦框24は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれが長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。以下、枠体10の縦枠11及び障子20の縦框24の構成について詳述し、併せて本願の特徴部分について説明する。なお、以下においては便宜上、上述の建具がa室とb室との間を仕切る位置に設けてあり、障子20が開いた場合にb室側に突出するように構成されているものとして説明を行う。
【0012】
枠体10の縦枠11は、左右で互いに対称形状を成すもので、枠本体部11a及び見付け壁部11bが一体に成形してある。枠本体部11aは、断面が略長方形状の中空筒状を成すものである。見付け壁部11bは、枠体10の内周側においてa室側の隅部から見付け方向に沿って内周側に突出したものである。この見付け壁部11bは、障子20を閉じた場合に内周側の縁部が縦框24のa室に臨む見付け面に対向するように突出寸法が設定してある。見付け壁部11bの突出縁部においてb室に臨む部分には、障子20との間の気密性を確保するためのシール部材11cが縦枠11のほぼ全長にわたって装着してある。
【0013】
障子20の縦框24は、左右で互いに対称形状を成すもので、框本体部24a、2つのパネル保持片部24b及び2つのカバー保持片部24cが一体に成形してある。框本体部24aは、略長方形状の中空筒状を成すものである。図示の例では、見込み方向の寸法に対して見付け方向の寸法が小さい(ほぼ1/4)框本体部24aを有した縦框24を適用している。パネル保持片部24bは、框本体部24aの内周側となる見込み面から見付け方向に沿って内周側に突出したもので、互いの間にパネル21を保持している。カバー保持片部24cは、框本体部24aの外周側となる両側縁部から外周に向けて互いに漸次近接する方向に突出したもので、互いの間にカバー部材26を着脱可能に保持している。カバー部材26は、縦框24と同様、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、縦框24とほぼ同じ長手寸法となるように形成してある。
【0014】
上記のように構成した縦枠11と縦框24との間には、戸先側となる部分の相互間にラッチ装置27が設けてある。ラッチ装置27は、枠体10に対する障子20の開き方向の移動を制限するためのもので、縦枠11に設けたローララッチ30と縦框24に設けた受部材40とを備えて構成してある。
【0015】
ローララッチ30は、図2図3に示すように、ケース31、支持ブラケット32、押圧バネ33、カバープレート34を備えて構成してある。ケース31は、一面が開口した直方体状を成すものである。ケース31の内底面には、バネ座31aが突出するように設けてある。ケース31において開口の両側となる部分には、それぞれ互いに離反する方向に向けてフランジ35が延在している。フランジ35は、同一の平面上に位置するように設けたもので、個々の延在端部にそれぞれネジ孔35aを有している。支持ブラケット32は、ケース31の内部に収容可能となる大きさを有したもので、互いに対向する支持板部32aの相互間に支持軸36が設けてある。支持軸36は、上下方向に沿って延在するもので、その軸心を中心としてローラ(押圧部材)37を回転可能に支持している。支持ブラケット32においてケース31のバネ座31aに対応する部分には、バネ当接座32bが突出するように設けてある。押圧バネ33は、ケース31のバネ座31aと支持ブラケット32のバネ当接座32bの間に介在することにより、ケース31に対して支持ブラケット32を常時突出する方向に押圧するコイル状のものである。カバープレート34は、ケース31及び両側のフランジ35を覆う大きさを有した平板状を成すものである。カバープレート34には、ローラ突出孔34a及び2つのネジ挿通孔34bが設けてある。ローラ突出孔34aは、ケース31の開口に対向する部分に形成した貫通孔である。このローラ突出孔34aは、支持ブラケット32に支持した状態のローラ37を挿通可能、かつ支持ブラケット32の基端部分を挿通不可とする大きさに形成してある。ネジ挿通孔34bは、ローラ突出孔34aをケース31の開口に合致させた際にフランジ35のネジ孔35aに対応する部分に設けた貫通孔である。
【0016】
このローララッチ30は、縦枠11の枠本体部11aにおいて障子20のハンドル25に対応する高さ位置に取り付けてある。より具体的に説明すると、縦枠11の枠本体部11aには、内周側となる見込み面において縦框24に対向する部分に予めラッチ用開口11dが設けてあるとともに、ラッチ用開口11dの上下となる部分にネジ挿通用取付孔(取付孔)11eが形成してある。ラッチ用開口11dは、支持ブラケット32及びローラ37を挿通させることのできる大きさに形成した切欠である。本実施の形態では、ローラ37の挿通位置を上下方向に沿って移動させることが可能となるように、縦枠11の延在方向に沿った長孔状に形成してある。ネジ挿通用取付孔11eは、縦枠11の延在方向に沿って上下に長孔となるように形成した切欠であり、後述する取付ネジSの挿通位置を上下方向に沿って移動させることが可能である。この枠本体部11aにローララッチ30を取り付けるには、まずケース31を枠本体部11aの内部に収容させる。このとき、予めケース31の内部に押圧バネ33及び支持ブラケット32を収容し、ケース31の開口が枠本体部11aのラッチ用開口11dに合致した状態に配置する。この状態から枠本体部11aの内周側となる見込み面にカバープレート34を配置し、カバープレート34のネジ挿通孔34b及び枠本体部11aのネジ挿通用取付孔11eを介してフランジ35のネジ孔35aに取付ネジSを螺合すれば、ローララッチ30を縦枠11に取り付けることができる。縦枠11に取り付けたローララッチ30においては、押圧バネ33によってローラ37が枠本体部11aの見込み面から外部に突出した状態に保持される。ローラ37の最大突出量は、支持ブラケット32の基端部分がカバープレート34に当接することによって規定される。この状態からローラ37に押圧力を加えると、支持ブラケット32を介して押圧バネ33が圧縮されることにより、枠本体部11aの見込み面からのローラ37の突出量が減少する。ローラ37に対する押圧力を除去すれば、押圧バネ33の復元力によって再びローラ37が突出した状態に復帰する。また、枠本体部11aに設けたネジ挿通用取付孔11eに対する取付ネジSの挿通位置を調整することにより、縦枠11に対するローララッチ30の位置を上下に変更することが可能である。
【0017】
受部材40は、図4図5に示すように、縦框24の延在方向に沿って長手となるプレート状を成すもので、長手に沿った一方の縁部、本実施の形態では図4(c)において左側となる縁部にガイド面41を有しているとともに、上下左右方向のほぼ中央となる部分に凹部42を有している。ガイド面41は、中央部分から縁部に向けて漸次板厚を小さくすることによって形成した傾斜面である。凹部42は、軸心が上下方向に沿った円筒の凹状を成すもので、軸心方向に沿った寸法がローララッチ30のローラ37よりも大きな寸法となるように形成してある。図からも明らかなように、受部材40において凹部42とガイド面41との間に位置する部分には係合突部43が構成される。係合突部43は、凹部42の内底面よりも突出高さが大きく、かつ下方に向けて漸次突出高さが小さくなるように傾斜面状に構成したものである。凹部42の上下となる部分には、左右方向に沿って長孔状となるネジ挿通孔44が形成してある。この受部材40は、障子20を閉じる際にガイド面41が先行する姿勢で、換言すればガイド面41がa室側に位置する姿勢で縦框24の外周側となる見込み面に配置し、ネジ挿通孔44を介して取付ネジ(図示せず)を螺合することにより縦框24に取り付けてある。縦框24に対して受部材40を取り付ける左右方向(見込み方向)の位置は、ネジ挿通孔44に対する取付ネジの位置を変更することによって調整可能である。図示の例では、障子20を閉じた場合にローララッチ30のローラ37が係合突部43を乗り越えて凹部42に配置されるように受部材40の位置が設定してある。
【0018】
上記のようにしてラッチ装置27を設けた建具においては、枠体10に対して開いた状態の障子20を閉じる方向に移動させると、まず、図2(b)に示すように、受部材40のガイド面41に対してローララッチ30のローラ37が当接することになる。受部材40のガイド面41に当接したローラ37は、障子20がさらに閉じる方向に移動すると、その傾斜面の作用により、押圧バネ33の押圧力に抗してケース31の内部に収容される方向に移動することになる。枠体10に対して障子20が完全に閉じた位置まで移動すると、ローラ37が係合突部43を乗り越えて受部材40の凹部42に収容されるため、図2(a)に示すように、押圧バネ33の弾性復元力によって突出方向に移動し、ローラ37が凹部42の内底面に押圧された状態になる。この状態においては、ローラ37が係合突部43においてb室側の側面に当接するため、枠体10に対する障子20の開く方向への移動が制限されることになり、障子20が不用意に開く事態を防止することができる。枠体10に対して障子20を開くには、押圧バネ33の押圧力に抗してローラ37をケース31に収容させ、係合突部43を乗り越えるだけの外力を障子20に加えれば良い。
【0019】
ここで、上述したように、ローララッチ30のローラ37が当接する受部材40の係合突部43は、下方に向けて漸次突出高さが小さくなるように傾斜面状に構成してある。このため、係合突部43に対するローラ37の通過する部分を変更すれば、障子20を開閉する際の操作力を調整することができるようになる。つまり、図4(c)中の矢印R1に示すように、係合突部43の上方部分を通過経路R1としてローラ37が通過する場合には、図5(a)に示すように、係合突部43の突出高さh1が大きいため、図6(a)に示すように、押圧バネ33を大きく撓ませる必要がある。これに対して図4(c)中の矢印R2に示すように、係合突部43の下方部分を通過経路R2としてローラ37が通過する場合には、図5(b)に示すように、係合突部43の突出高さh2が小さいため、図6(b)に示すように、押圧バネ33の撓み量が小さくてすむ。従って、ローララッチ30と受部材40との相対位置を調整し、係合突部43の上方部分を乗り越えるようにローラ37の通過経路R1を選択した場合には、障子20を開閉する際の操作力を大きく設定した建具を構成することができる。これに対して、係合突部43の下方部分を乗り越えるようにローラ37の通過経路R2を選択した場合には、小さい操作力で障子20を開閉することが可能な建具となる。しかも、操作力の設定を調整する構成としては、上下の位置で突出高さが異なるように係合突部43を構成しているだけであり、ローララッチ30に調整機構を要しない。従って、受部材40やローララッチ30の外形寸法が大型化する事態を抑えることができ、縦框24や縦枠11として見付け寸法の小さいものを適用したものに対しても取り付けることが可能となり、外観品質の点で有利となる。
【0020】
なお、上述した実施の形態では、係合突部43として受部材40の表面が最大突出高さとなり、下方に向けて漸次突出高さが小さくなるものを例示しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、図7に示す変形例1のように、受部材140の表面140aよりも突出高さが大きくなるように係合突部143を構成することも可能である。上述した変形例1において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0021】
また、実施の形態及び変形例1では、突出高さが連続的に変化する傾斜状の係合突部43,143を設けた受部材40,140を例示しているため、ローララッチ30のローラ37と受部材40,140との相対位置を変化させることで障子20を開閉する際の操作力を微調整することが可能となる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、図8に示す変形例2のように、突出高さが段階的に変化する階段状の係合突部243を有した受部材240であっても、障子20を開閉する際の操作力を調整することは可能である。すなわち、変形例2では、互いに突出高さが異なり、かつ受部材240の表面240aと平行となる複数の経路面243a,243b,243cを有した係合突部243を設けるようにしている。従って、ローラ37が当接する経路面243a,243b,243cを変更すれば、障子20を開閉する際の操作力を変更することが可能となる。この場合においても、図9に示す変形例3のように、受部材340の表面340aよりも突出高さが大きくなる経路面343a,343b,343cを有した係合突部343を構成しても良い。なお、変形例2及び変形例3においては、必ずしも経路面が突出高さの順に並んでいる必要はない。また、経路面の数も3つに限らない。上述した変形例2、変形例3において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0022】
なお、上述した実施の形態では、押圧部材としてローラ37を例示しているが、必ずしもローラ37である必要はなく、また必ずしも回転したり転動したりする必要はない。また、コイル状の押圧バネ33によって押圧部材を受部材に当接させるようにしているが、必ずしもコイル状の押圧バネを適用する必要はない。さらに、枠体10に対して障子20がヒンジ1を介して支持されたものを例示しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば枠体に対して障子がスライド可能に配設された引き戸等にも適用することは可能である。
【0023】
また、上述した実施の形態では、縦枠11に対してローララッチ30の取付位置をネジ挿通用取付孔11e内において上下に変更することにより係合突部に対する押圧部材の通過経路を選択するようにしているが、縦框24に対する受部材40の取付位置を上下に変更することで係合突部に対する押圧部材の通過経路を選択するようにしても構わない。なお、ローララッチの取付位置を上下に変更する場合に上述した実施の形態では縦枠11のネジ挿通用取付孔11eを長孔状に構成しているが、ローララッチ30のフランジ35や受部材40に長孔状の取付孔を設けるようにしても良い。さらに、枠体に押圧部材を設ける一方、障子に受部材を設けるようにしているが、逆であってももちろん良い。
【0024】
以上のように、本発明に係るラッチ装置は、枠体及び障子のいずれか一方に設けられる押圧部材と、いずれか他方に設けられる受部材とを備え、前記受部材には前記障子の開閉に伴って前記押圧部材と当接可能となる係合突部が設けられ、前記障子が閉じられた際に前記押圧部材が前記受部材の前記係合突部を乗り越えた後に前記係合突部に当接することにより前記枠体に対する前記障子の開き方向への移動を制限する建具用のラッチ装置であって、前記係合突部は、前記押圧部材の通過経路が変更可能となる長さを有し、かつ長さ方向において突出高さが連続的に変化する傾斜状に構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、係合突部に対する押圧部材の通過経路を変更することで障子を開閉する際の操作力を調整することが可能であり、押圧部材に調整機構を設ける必要がない。従って、外形寸法が大型化する事態を抑えることができ、縦枠や縦框として見付け寸法の小さいものを適用した建具に対しても取り付けることが可能になる等の利点がある。しかも、係合突部の突出高さが連続的に変化するため、障子を開閉する際の操作力を微調整することができる。
【0025】
また、本発明に係るラッチ装置は、枠体及び障子のいずれか一方に設けられる押圧部材と、いずれか他方に設けられる受部材とを備え、前記受部材には前記障子の開閉に伴って前記押圧部材と当接可能となる係合突部が設けられ、前記障子が閉じられた際に前記押圧部材が前記受部材の前記係合突部を乗り越えた後に前記係合突部に当接することにより前記枠体に対する前記障子の開き方向への移動を制限する建具用のラッチ装置であって、前記係合突部は、前記押圧部材の通過経路が変更可能となる長さを有し、かつ長さ方向において突出高さが段階的に変化する階段状に構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、係合突部に対する押圧部材の通過経路を変更することで障子を開閉する際の操作力を調整することが可能であり、押圧部材に調整機構を設ける必要がない。従って、外形寸法が大型化する事態を抑えることができ、縦枠や縦框として見付け寸法の小さいものを適用した建具に対しても取り付けることが可能になる等の利点がある。しかも、係合突部の突出高さが段階的に変化するため、係合突部に対する押圧部材の通過経路が多少ずれていても障子を開閉する際の操作力が変化しないため、操作力の設定作業が容易となる。
【0026】
また本発明は、上述したラッチ装置において、前記押圧部材及び前記受部材の少なくとも一方は、前記係合突部の長さ方向に沿って長孔状となる取付孔を介して前記枠体及び前記障子のいずれか一方に固定部材を螺合することによって取り付けられることを特徴としている。
この発明によれば、固定部材に対する取付孔の位置を変更すれば障子を開閉する際の操作力を変更することができるため、操作力を調整する際の作業が容易となる。
【0027】
また、本発明に係る建具は、枠体及び障子を備え、前記障子はパネルの戸先となる部分に縦框を装着したものであり、上述したラッチ装置の前記押圧部材を前記枠体の縦枠に設けるとともに、前記受部材を前記縦框に設けたことを特徴としている。
この発明によれば、縦框には受部材を設ければ良いため、見付け方向の寸法を小さく設定することでパネルの面積を大きく確保することができる等、外観品質の点で有利となる。
【符号の説明】
【0028】
10 枠体、11 縦枠、11d ラッチ用開口、11e ネジ挿通用取付孔、20 障子、24 縦框、27 ラッチ装置、30 ローララッチ、31 ケース、32 支持ブラケット、33 押圧バネ、34 カバープレート、34a ローラ突出孔、34b ネジ挿通孔、35 フランジ、35a ネジ孔、36 支持軸、37 ローラ、40,140,240,340 受部材、41 ガイド面、42 凹部、43,143,243,343 係合突部、243a,243b,243c,343a,343b,343c 経路面、R1,R2 通過経路、S 取付ネジ、h1,h2 突出高さ
図1
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図9