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  • 特開-排水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074332
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20230101AFI20230522BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20230522BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20230522BHJP
【FI】
C02F1/50 531L
C02F1/461 Z
C02F1/50 531P
C02F1/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187231
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D050AA12
4D050BB03
4D050BB06
4D050BC10
4D050CA10
4D061DA08
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB04
4D061ED03
4D061ED13
4D061FA10
4D061FA11
(57)【要約】
【課題】従来よりも腐食の弊害を軽減することができる排水処理方法を提供しようとするもの。
【解決手段】次亜塩素酸を含有する被処理水に臭化物イオンを添加し、前記次亜塩素酸の少なくとも一部を次亜臭素酸に変化させ、中性領域で処理するようにした。中性領域で処理するようにしており、中性領域では酸化力が激減する次亜塩素酸(HClO)の一部を次亜臭素酸(HBrO)に変化させて強い酸化力を発現させることができ、また中性領域での処理であるので設備に対する腐食性を軽減することが出来る。前記被処理水をオゾンの共存下で電気分解する電解工程を有するようにしてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸を含有する被処理水に臭化物イオンを添加し、前記次亜塩素酸の少なくとも一部を次亜臭素酸に変化させ、中性領域で処理するようにしたことを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記被処理水をオゾンの共存下で電気分解する電解工程を有するようにした請求項1記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、設備の腐食の弊害を軽減することができる排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有効塩素を含有した殺菌水の製造装置、製造方法に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、有効塩素を含有する水は、微酸性次亜塩素酸水をはじめ、塩素ガス溶液、次亜塩素酸ナトリウム溶液、二酸化塩素溶液、強酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム溶液に酸を混合した液などがあり、何れも殺菌、脱臭、漂白などの目的に利用されている。
そして、この従来技術では、希塩酸を無隔膜法により電気分解し、生成した次亜塩素酸を希釈水で希釈して有効塩素を含有するpH5.0~6.5程度の水溶液とした後、生成した水溶液に対して気泡を分散させる処理を適用し、微酸性電解水とする、というものである。
しかし、微酸性電解水では金属設備等を腐食させる傾向があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-17963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来よりも腐食の弊害を軽減することができる排水処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の排水処理方法は、次亜塩素酸を含有する被処理水に臭化物イオンを添加し、前記次亜塩素酸の少なくとも一部を次亜臭素酸に変化させ、中性領域で処理するようにしたことを特徴とする。
この排水処理方法は、次亜塩素酸(HClO)を含有する被処理水に臭化物イオン(Br-)を添加し、前記次亜塩素酸の少なくとも一部を次亜臭素酸(HBrO)に変化させるようにしている。次亜塩素酸(HClO)には、塩素(Cl2)と次亜塩素酸イオン(ClO-)を含むものとする。また、臭化物イオン(Br-)の供給源として臭化ナトリウム(NaBr)を例示することが出来る。
【0006】
そして、中性領域で処理するようにしており、中性領域では酸化力が激減する次亜塩素酸(HClO)の一部を次亜臭素酸(HBrO)に変化させて強い酸化力を発現させることができ、また中性領域での処理であるので設備に対する腐食性を軽減することが出来る。前記中性領域として、pH約6~約8.5を例示することが出来る。
【0007】
この排水処理方法では、「臭化物イオンの共存下でpHを中性領域に調整して電気分解することにより、次亜臭素酸と活性酸素とが生成せしめるようにする」という、臭化物イオンを共存させpHを中性領域に調整して電解する構成とは、もともと含有されていた次亜塩素酸の塩素を(比較的少量の)臭化物イオンと置換して次亜臭素酸とし、中性領域で強い酸化力を発現させることができる点で異なると共に優位性を有するものである。
【0008】
(2)前記被処理水をオゾンの共存下で電気分解する電解工程を有することとしてもよい。
このように、被処理水をオゾン(O3)の共存下で電気分解する電解工程を有するようにすると、常温で気体であり液面から離脱し易いオゾンを、より活性な酸素ラジカル(・O)として液体中に留置することが出来る。
【0009】
つまり、本来的に液面から離脱しようとする性質を有するオゾン(O3)を電気分解して、3個の酸素ラジカル(・O)に変化させることにより、オゾンの液面からの離脱を阻止して、より活性度が高い酸素ラジカル(・O)に変換することが出来る。
ここで、前記次亜塩素酸(HClO)は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)自体を用いて生成させることができ、また電解工程において食塩水(NaCl)や次亜塩素酸ナトリウム溶液(NaClO)の電気分解で生成させることも出来る。
【0010】
前記オゾン(O3)は、スタティックミキサーやエジェクターなどによって被処理水に混入・圧入させることにより共存させることが出来る。
被処理水中に硝酸(NO3)、亜硝酸(NO2)が含有されている場合、これを電解工程でアンモニア(NH4)に陰極還元し、次いでこのアンモニアを次亜臭素酸(HBrO)や酸素ラジカル(・O)によって酸化処理して窒素化(N2)することによりT-N(トータル窒素)を低減することが出来る。
【0011】
そして、被処理水の液中オゾン濃度(O3)により、生成した酸素ラジカル(・O)の量を推測することができ、計算できる排水処理方法とすることが出来る。
被処理水をオゾン(O3)の共存下で電気分解して活性酸素(・O)を生成させ、生成した活性酸素(・O)の作用で弱酸性に傾く傾向が見られた場合、電気分解して次亜塩素酸を生成させてアルカリに傾く傾向とで中和して中性領域とし、この中性領域での次亜臭素酸の強い酸化力を発現させることができる。
【0012】
ここで、被処理水をオゾン(O3)の共存下で電気分解することにより、オゾン(O3)に及ぼされる電気エネルギーによって酸素ラジカル(・O)を造成する。
O3→O2+・O
O2→・O+・O
酸素ラジカル(・O)の酸化電位は 2.42V(オゾンから酸素ラジカル3つに造成されると2.42V×3=7.26Vになる)、オゾン(O3)の酸化電位は 2.07Vである。すなわち、オゾン(O3)の酸化電位2.07Vは、3つの酸素ラジカル(・O)に造成されると、酸化電位は2.42V×3=7.26Vと大きなものになる。
【0013】
この酸化電位は、次亜塩素酸(HClO)のもの(1.36V)よりもかなり高いものである。この次亜塩素酸は、活性なラジカル種と比較すると遅効性である。
また、オゾン(O3)は3つの酸素ラジカル(・O)に変化することからおおよその濃度を予測することができるが、水(H2O)の電解で生成する・OH(酸化電位2.80V)は濃度の把握がし難いきらいがある。
【0014】
ところで、紫外線(UV)によるオゾン(O3)の解離エネルギーは253.7nm線で472kJ/mol(O3→O2+・O)であり、184.9nm線で647kJ/mol(O2→・O+・O)であり、電気分解ではこれらと同等かより高いエネルギーを加える。
そして、オゾンの電気分解により造成(生成)した活性ラジカル種(・O)は、即効性の強い酸化性を有しており、例えば液体(排水)中の有機物(汚れ成分)に対して速やかに分解作用を及ぼして浄化していく。
【0015】
また、電気分解の際、併せて活性なヒドロキシラジカル(・OH、酸化電位2.80V)も生成することとなる。さらに、電気分解の際の陽極電極による直接酸化作用により有機物は分解されていく。
このように排水中にオゾン(O3)を共存させて電気分解することにより活性なラジカル種を発生させるようにすると、水への溶解度(0.105 g / 100 mL (0 ℃))がそれほど高くないオゾンの酸化分解性を向上させることが出来る。オゾンの共存とは、排水中に溶解している溶存の上位概念である。
【0016】
紫外線によるオゾンの解離エネルギーは、253.7nm線で472kJ/mol(O3→O2+・O)、184.9nm線で647kJ/mol(O2→・O+・O)であるが、O3→O2+・Oの場合は電圧6V、電流5A、39Wh(交流)の電気分解で解離させることができ(O310g当たり)、O2→・O+・Oの場合は、電圧6V、電流7A、54Wh(交流)の電気分解で解離させることが出来る(O310g当たり)。
また、本来は液中から離脱しようとする性質を有するオゾン(O3)を、排水に圧入して電気分解して活性酸素(・O)に造成させるようにすると、排水中に固定して汚れ成分に接触酸化分解反応させることが出来る。
【0017】
この活性酸素、酸素ラジカル(・O)により、排水、廃液などの脱臭、脱色、殺菌をしたり、有機物やアンモニアその他の汚れ成分の分解をすることが出来る。そして、酸素ラジカル(・O)は、被処理対象物(例えば排水中の汚れ成分など)を最終的に二酸化炭素(CO2)や窒素(N2)などの無害な物質に変化させることとなる。さらに、オゾンの原料となる酸素は地球上に無尽蔵にあるという利点がある。
【発明の効果】
【0018】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
中性領域での処理であるので設備に対する腐食性を軽減することができ、従来よりも腐食の弊害を軽減することができる排水処理方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電解次亜塩素酸ソーダ・電解次亜臭素酸ソーダのpH変化による酸化百分率比較のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を参照して説明する。
この実施形態の排水処理方法は、次亜塩素酸(HClO)を含有する被処理水に臭化物イオン(Br-)を添加し、前記次亜塩素酸の少なくとも一部を次亜臭素酸(HBrO)に変化させ、中性領域(pH約6~約8.5)で処理するようにした。
前記次亜塩素酸(HClO)は、電解工程において次亜塩素酸ナトリウム溶液(NaClO)の電気分解で生成させた。また、臭化物イオン(Br-)の供給源として臭化ナトリウム(NaBr)を用いた。
【0021】
また、前記被処理水をオゾン(O3)の共存下で電気分解する電解工程を有することとした。前記オゾン(O3)は、スタティックミキサーによって被処理水に混入・圧入させることにより共存させた。
このように、被処理水をオゾン(O3)の共存下で電気分解する電解工程を有するようにしたので、常温で気体であり液面から離脱し易いオゾンを、より活性な酸素ラジカル(・O)として液体中に留置することが出来た。
【0022】
つまり、本来的に液面から離脱しようとする性質を有するオゾン(O3)を電気分解して、3個の酸素ラジカル(・O)に変化させることにより、オゾンの液面からの離脱を阻止して、より活性度が高い酸素ラジカル(・O)に変換することが出来た。
【0023】
次に、この実施形態の排水処理方法の使用状態を説明する。
この排水処理方法は、次亜塩素酸(HClO)を含有する被処理水に臭化物イオン(Br-)を添加し、前記次亜塩素酸(電解次亜塩素酸ソーダのグラフ曲線2)の少なくとも一部を次亜臭素酸(HBrO)に変化させるようにし(電解次亜臭素酸ソーダのグラフ曲線1)、中性領域(pH約6~約8.5)で処理するようにしており、中性領域では酸化力が激減する次亜塩素酸(HClO)の一部を次亜臭素酸(HBrO)に変化させて強い酸化力を発現させることができ、また中性領域での処理であるので設備に対する腐食性を軽減することができ、従来よりも腐食の弊害を軽減することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0024】
従来よりも腐食の弊害を軽減することができることによって、種々の排水処理方法の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 電解次亜臭素酸ソーダのグラフ曲線
2 電解次亜塩素酸ソーダのグラフ曲線
図1