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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074351
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】重機の遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20230522BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230522BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
E02F9/20 N
E02F9/26 A
E02F9/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187269
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】520284551
【氏名又は名称】株式会社加藤組
(71)【出願人】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】原田 英司
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】西尾 慧太
(72)【発明者】
【氏名】笠原 伸正
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
5K048
【Fターム(参考)】
2D003BA01
2D003BA04
2D003BA06
2D003DA04
2D015HA03
5K048AA04
5K048AA09
5K048BA21
5K048EB12
5K048EB13
5K048FB05
5K048FB15
5K048HA01
(57)【要約】
【課題】 各重機が作業可能な状態であるか否かを遠隔操作室において、オペレータが把握することができる重機の遠隔操作装置を提供する。
【解決手段】 複数の重機30とネットワーク20を介して接続され、重機30を遠隔操作室10から遠隔操作する重機の遠隔操作装置であって、重機30は、車両用通信装置310と、車両制御装置と300、車両制御装置300からの制御信号により動作する操作機器301とを備え、遠隔操作室10内に、車両用通信装置310と、ネットワーク通信装置110と、遠隔操作制御装置100と、遠隔操作制御装置100と接続され、遠隔操作制御信号を入力する入力装置130と、遠隔操作制御装置100と接続される表示装置120とを備え、遠隔操作制御装置100は、ネットワーク20に接続された複数の重機30の状態を判別し、作業可能な状態の重機30を表示装置120に表示させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の重機とネットワークを介して接続され、遠隔操作対象となる少なくとも一つの重機を遠隔操作室から遠隔操作する重機の遠隔操作装置であって、
前記重機は、車両用通信装置と、この通信装置と接続される車両制御装置と、この車両制御装置からの制御信号により動作する操作機器と、を搭載機器として備え、
前記遠隔操作室内に、前記車両用通信装置とネットワークを介して接続されるネットワーク通信装置と、このネットワーク通信装置と接続される遠隔操作制御装置と、この遠隔操作制御装置と接続され、遠隔操作制御信号を入力する入力装置と、前記遠隔操作制御装置と接続される表示装置と、を備え、
前記遠隔操作制御装置は、ネットワークに接続された複数の重機の状態を判別し、作業可能な状態の重機を前記表示装置に表示させる、重機の遠隔操作装置。
【請求項2】
前記各重機は、駆動用エンジンを有し、前記車両制御装置は、前記駆動用エンジンの状態を検出し、前記駆動用エンジンの状態を示す状態信号が前記通信装置から前記ネットワーク及び前記ネットワーク通信装置を介して前記遠隔操作制御装置に与えられ、前記遠隔操作制御装置は、前記状態信号に基づいて、複数の重機の状態を判別し、作業可能な状態の重機を前記表示装置に表示させる、請求項1に記載の重機の遠隔操作装置。
【請求項3】
作業領域を撮影する俯瞰カメラを有し、前記各重機は、駆動用エンジンを有し、前記各重機は、前記駆動用エンジンが動作している状態を示すライトを有し、前記遠隔操作制御装置は、前記俯瞰カメラからの画像に基づき、前記各重機の前記ライトを認識し、複数の重機の状態を判別し、作業可能な状態の重機を前記表示装置に表示させる、請求項1に記載の重機の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記遠隔操作制御装置は、複数の重機を同時に遠隔操作する、請求項1~3のいずれか1項に記載の重機の遠隔操作装置。
【請求項5】
前記遠隔操作制御装置は、前記各重機のうちで駆動用エンジンが停止している重機の前記駆動用エンジンを動作させるように制御する、請求項2~4のいずれか1項に記載の重機の遠隔操作装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重機の遠隔操作装置に関し、複数の重機を遠隔操作室から遠隔操作が可能な重機の遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作室において、ブルドーザ、パワーショベル(バックホウ)、ロードローラなど複数台の重機をオペレータが操縦制御装置を用いて無線により遠隔操作する遠隔操作システムが知られている。特許文献1においては、簡易無線と中継車を用いて複数台の重機を遠距離の遠隔操作室から遠隔制御できる遠隔操作制御装置が提案されている。
【0003】
また、重機の遠隔操作においては、カメラによって撮影された撮影画像を見ながら、遠隔操作室にある入力装置からオペレータが重機を無線によって遠隔操作する遠隔操作システムが種々提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
重機の遠隔操作により、建設作業現場などの無人化を図ることが可能となる。これにより、作業現場の省力化並び危険な建設作業現場での作業を行うことができる。
【0005】
複数台の重機をオペレータが遠隔操作を行う場合、遠隔操作の対象となる重機が作業可能な状態にあることが前提となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-117391号公報
【特許文献2】特開2010-53609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1及び2においては、複数台の重機が作業可能な状態であることを前提としており、エンジンストップなど作業不能な重機については考慮されていない。
【0008】
作業効率を考えると、各重機が作業可能な状態であるか否かを遠隔操作室において、オペレータが把握することが望まれる。
【0009】
この発明は、各重機が作業可能な状態であるか否かを遠隔操作室において、オペレータが把握することができる重機の遠隔操作装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、複数台の重機を遠隔操作する場合、作業効率などから作業を開始する重機の順序等は、作業現場により異なることがあることがわかった。その際、作業を開始しようとする重機のエンジンが停止状態である場合には、エンジンを起動するのに時間がかかり、待機時間が必要である。予め、作業可能状態な重機を遠隔操作室でオペレータが把握できると、作業可能な他の重機で作業を行える場合もあり、待機時間を必要とせずに、作業効率を向上させることができる。
【0011】
そこで、本発明者は、遠隔操作室で、各重機が作業可能な状態であるか否かを遠隔操作室において、オペレータが把握する構成を考えた。
【0012】
この発明者は、鋭意検討の結果、以下のような構成に想到した。
【0013】
この発明の一実施形態にかかる重機の遠隔操作装置は、複数の重機とネットワークを介して接続され、遠隔操作対象となる少なくとも一つの重機を遠隔操作室から遠隔操作する重機の遠隔操作装置であって、前記重機は、車両用通信装置と、この通信装置と接続される車両制御装置と、この車両制御装置からの制御信号により動作する操作機器と、を搭載機器として備え、前記遠隔操作室内に、前記車両用通信装置とネットワークを介して接続されるネットワーク通信装置と、このネットワーク通信装置と接続される遠隔操作制御装置と、この遠隔操作制御装置と接続され、遠隔操作制御信号を入力する入力装置と、前記遠隔操作制御装置と接続される表示装置と、を備え、前記遠隔操作制御装置は、ネットワークに接続された複数の重機の状態を判別し、作業可能な状態の重機を前記表示装置に表示させる。
【0014】
この発明の一実施形態にかかる重機の遠隔操作装置によれば、作業可能な状態の重機を表示装置に表示させることで、直ちに作業が行える重機をオペレータが把握することができる。これにより、オペレータは、待機時間をなくすか少なくして作業を行うことが可能となり、作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
他の観点によれば、この発明の一実施形態にかかる重機の遠隔操作装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記各重機は、駆動用エンジンを有し、前記車両制御装置は、前記駆動用エンジンの状態を検出し、前記駆動用エンジンの状態を示す状態信号が前記通信装置から前記ネットワーク及び前記ネットワーク通信装置を介して前記遠隔操作制御装置に与えられ、前記遠隔操作制御装置は、前記状態信号に基づいて、複数の重機の状態を判別し、作業可能な状態の重機を前記表示装置に表示させる。
【0016】
重機が駆動用エンジンを有する場合、前記駆動用エンジンの状態を示す状態信号が前記通信装置から前記ネットワーク及び前記ネットワーク通信装置を介して前記遠隔操作制御装置に与えることにより、前記遠隔操作制御装置が前記状態信号に基づいて、複数の重機の状態を判別することができる。これにより、表示装置に、作業可能な状態の重機を表示させることができる。
【0017】
他の観点によれば、この発明の一実施形態にかかる重機の遠隔操作装置は、以下の構成を含むことが好ましい。作業領域を撮影する俯瞰カメラを有し、前記各重機は、駆動用エンジンを有し、前記各重機は、前記駆動用エンジンが動作している状態を示すライトを有し、前記遠隔操作制御装置は、前記俯瞰カメラからの画像に基づき、前記各重機の前記ライトを認識し、複数の重機の状態を判別し、作業可能な状態の重機を前記表示装置に表示させる。
【0018】
上記の構成によれば、重機に設けられたパトライト(登録商標)などのライトの状態により、前記遠隔操作制御装置が前記状態信号に基づいて、複数の重機の状態を判別することができる。これにより、表示装置に、作業可能な状態の重機を表示させることができる。
【0019】
他の観点によれば、この発明の一実施形態にかかる重機の遠隔操作装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記遠隔操作制御装置は、複数の重機を同時に遠隔操作する。
【0020】
上記の構成によれば、同一作業などの場合には、複数の重機を同時に遠隔操作することにより、作業の短縮化が図れる。
【0021】
他の観点によれば、この発明の一実施形態にかかる重機の遠隔操作装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記遠隔操作制御装置は、前記各重機のうちで駆動用エンジンが停止している重機の前記駆動用エンジンを動作させるように制御する。
【0022】
上記の構成によれば、作業現場にある重機を全てスタンバイ状態にすることができ、待機時間を無くすことができる。
【0023】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0024】
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0025】
この発明の説明においては、いくつもの技術および工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
【0026】
したがって、明確にするために、この発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0027】
本明細書では、この発明に係る重機の遠隔操作装置の実施形態について説明する。
【0028】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくてもこの発明を実施できることが明らかである。
【0029】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0030】
[重機]
この明細書において、重機は、建設機械を含み、例えば、油圧ショベル、バックホウ、ミニ油圧ショベル、ホイールローダ、ロードローラ、ブルドーザ、ダンプトラック、スキッドステアローダ、土工用振動ローダ、履帯式ローダ、コンパクタ、モータグレーダー、クレーン車などを含む。
【発明の効果】
【0031】
この発明の重機の遠隔操作装置によれば、各重機が作業可能な状態であるか否かを遠隔操作室において、オペレータが把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、この発明の実施形態にかかる重機の遠隔操作装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、この発明の実施形態にかかる重機の構成を示すブロック図である。
図3図3は、この発明の実施形態にかかる遠隔操作室の構成を示すブロック図である。
図4図4は、この発明の実施形態にかかる遠隔操作室の構成を示す模式図である。
図5図5は、重機の状態を示す表示装置120の表示例を示す模式図である。
図6図6は、選択した重機の操作入力とスイッチ状態を表示装置に表示させた例を示す模式図である。
図7図7は、3台の重機を遠隔操作した状態を示すタイムチャートであり、(a)は、手動操作のみ行った時のタイムチャート、(b)は、手動操作と自動操作により作業を行った時のタイムチャートである。
図8図8は、2台の重機を遠隔操作した状態を示すタイムチャートであり、(a)は、手動操作のみ行った時のタイムチャート、(b)は、手動操作と自動操作により作業を行った時のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下で、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0034】
図1に示されているこの発明の実施形態にかかる重機の遠隔操作装置は、遠隔操作室10と、遠隔操作対象となる複数の重機30(30a、30b、30c)と、遠隔操作室10と複数の重機30とを接続するネットワーク20と、を有する。
【0035】
ネットワーク20は、高速無線通信LANで構成され、遠隔操作室10と複数の重機30(30a、30b、30c)と間を接続する。高速無線通信は、例えば、第5世代移動通信システム(5G)規格のネットワークが用いられ、遠隔操作室10と複数の重機30(30a、30b、30c)は、例えば、5G規格に沿って、ネットワーク20を介してデータの送受信が行われる。図1に示す実施形態に示す遠隔操作対象の重機30は、バックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cである。重機30は、バックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cに限らず、他の建設機械なども遠隔操作対象にできる。
【0036】
図1に示す実施形態においては、バックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cがネットワーク20を介して遠隔操作室10と接続されている。バックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cは、遠隔操作室10からの操作により、操作機器など各種機器の動作が行われる。さらに、この実施形態のバックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cは、自動制御により所定の動作の自動運転が可能であり、遠隔操作室10から自動制御コマンドを送信することにより、自動運転制御動作に移行する。自動運転は、例えば、所定の動作を繰り返して行うなど、予め、動作手順などのプログラムをメモリに格納し、メモリからプログラムを読み出し、重機30の車両制御装置300が所定の動作を行うように重機30の各機器を制御する。
【0037】
図2に従い、この発明の実施形態にかかる重機30の構成を説明する。重機30は、この実施形態においては、バックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cである。遠隔操作により、それぞれの重機30の操作が行われる。重機の種類に応じて動作は異なるが、操作機器301の動作により、それぞれの重機の動作が行われる。例えば、バックホウ30aであれば、遠隔操作により操作機器301の動作が制御され、クローラの動作、旋回体の旋回動作、ブームなどの動作が行われる。ブルドーザ30b、ロードローラ30cも同様に遠隔操作により操作機器301の動作が制御され、各重機特有の動作が行われる。
【0038】
この実施形態においては、バックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cも遠隔操作における制御構成は、基本的には同じである。これらのバックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cを含めた重機30の構成を説明する。
【0039】
図2に示すように、重機30のそれぞれは、車両制御装置300と、車両用通信装置310と、操作機器301と、駆動用エンジン302とを搭載機器として備えている。車両制御装置300は、演算処理装置により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータ及びソフトウェアを読み取り、当該データを対象としてソフトウェアに従った演算処理を実行し、各種機器の動作を制御する。
【0040】
車両制御装置300は、車両用通信装置310と接続される。車両用通信装置310は、ネットワーク20を介して遠隔操作室10のネットワーク通信装置110に接続される。
【0041】
車両制御装置300は、車両用通信装置310との間でデータの送受信が行われる。車両用通信装置310は、ネットワーク20を介して遠隔操作室10のネットワーク通信装置110との間でデータの送受信が行われる。
【0042】
車両制御装置300は、操作機器301と、エンジン302と、カメラ303と、ライト304と接続され、これら機器の動作を制御する。
【0043】
車両制御装置300は、遠隔操作室10からネットワーク20を介して送られ、車両用通信装置310に受信された重機の動作を制御する制御データに基づき、操作機器301、駆動用エンジン302等の動作を制御する。
【0044】
駆動用エンジン302は、例えば、図示しない油圧装置等を駆動し、重機30の各種機器、例えば、ショベル、ブーム等の駆動、旋回体の旋回駆動を行う駆動源として機能する。また、駆動用エンジン302は、クローラを駆動させて重機30を移動させる駆動源として機能する。さらに、駆動用エンジン302は、発電機を駆動する。発電機により発電された電力の出力電圧、出力電流を所定の値に変換して車両制御装置300、車両用通信装置310、操作機器301など電力を必要とする機器に与える。この実施形態の重機30は、駆動用エンジン302が駆動している状態では、駆動用エンジン302で駆動される発電機により発電された電力により、重機30が必要とする電力をまかなうように構成されている。
【0045】
車両制御装置300は、無停電電源装置(UPS)305が接続されている。上記したように、車両制御装置300は、駆動用エンジン302が駆動している場合には、駆動用エンジン302で駆動された発電機により発電された電力が供給されるが、駆動用エンジン302が停止している状態では、UPS305より電力が供給される。駆動用エンジン302が停止している状態では、UPS305は、車両用通信装置310など遠隔操作室10からの制御データの送受信ができる機器などにも電力を供給し、遠隔操作室10からの指示により駆動用エンジン302を起動させることができるように構成されている。
【0046】
車両制御装置300は、カメラ303を制御し、カメラ303で撮像した画像データを車両用通信装置310からネットワーク20を介して遠隔操作室10に与える。
【0047】
車両制御装置300は、駆動用エンジン302を制御する。車両制御装置300は、駆動用エンジン302の状態を検出する。車両制御装置300は、検出した駆動用エンジン302の状態、例えば、駆動用エンジン302が駆動している状態、駆動用エンジン302がアイドリングストップ状態、駆動用エンジン302が停止している状態などを検出する。車両制御装置300は、検出した駆動用エンジン302の状態に応じた状態信号を生成し、生成した状態信号を車両用通信装置310からネットワーク20を介して遠隔操作室10のネットワーク通信装置110に送信する。
【0048】
重機30は、カメラ303を備え、カメラ303により、作業現場、作業動作を撮像することができる。カメラ303からの撮像データは、車両制御装置300に与えられる。カメラ303からの撮像データは、車両用通信装置310からネットワーク20を介して遠隔操作室10のネットワーク通信装置110に送られる。遠隔操作室10の表示装置120にカメラ303からの撮像データが表示される。これにより、遠隔操作室10内のオペレータは、重機30周辺の状態、作業状況等を目視することができる。カメラ303は、複数台搭載し、重機30の周囲を撮像するように構成してもよい。
【0049】
カメラ303は、カメラ303の動作、例えば、パン(左右回転)、チルト(上下回転)、ズームなどの機能を有し、車両制御装置300は、カメラ303のこの機能の操作を制御する。遠隔操作室10からのカメラ操作信号は、ネットワーク通信装置110、ネットワーク20、車両用通信装置310を介して車両制御装置300に与えられる。これにより、カメラ303は、遠隔操作室10にて、撮影の開始、停止、パン(左右回転)、チルト(上下回転)、ズームなどの機能をオペレータが操作することができる。
【0050】
重機30は、駆動用エンジンが動作している状態を示すライト304を有し、車両制御装置300は、検出した駆動用エンジン302の状態に応じて、ライト304の点灯制御を行う。
【0051】
重機30は、遠隔操作が可能ものであれば、その形式、制御方式は問わない。例えば、特許第6641211号に記載の重機の遠隔操作装置を適用しても良い。
【0052】
重機30は、図示しないメインスイッチが備えられ、メインスイッチをオフにすると、重機30の車両制御装置300がオフになり、ネットワーク20との接続が遮断されるとともに、駆動用エンジン302を含め操作機器301の動作を遮断し、重機30が停止状態となる。例えば、作業が終了した重機30などは、メインスイッチをオフにし、重機30の停止状態を維持させる。メインスイッチをオンにすると、車両制御装置300がオンとなり、ネットワーク20が接続され、重機30の待機状態となる。
【0053】
図3に従い、この発明の実施形態にかかる遠隔操作室10の構成を説明する。遠隔操作室10は、内部に、遠隔操作制御装置100と、ネットワーク通信装置110と、液晶パネルなどからなる複数の表示装置(モニタ)120と、遠隔操作用の入力装置としての操作部130とを備える。
【0054】
遠隔操作制御装置100は、演算処理装置により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータ及びソフトウェアを読み取り、当該データを対象としてソフトウェアに従った演算処理を実行し、各種機器の動作を制御する。遠隔操作制御装置100は、例えば、パーソナルコンピュータにより構成することができる。
【0055】
遠隔操作制御装置100は、ネットワーク通信装置110と接続される。ネットワーク通信装置110は、ネットワーク20を介して重機30の車両用通信装置310に接続される。
【0056】
遠隔操作制御装置100は、ネットワーク通信装置110との間でデータの送受信が行われる。ネットワーク通信装置110は、ネットワーク20を介して重機30の車両用通信装置310との間でデータの送受信が行われる。
【0057】
操作部130は、操作用タッチパネル、左右のジョイスティック形式の操作レバーなどからなり、操作部130により、対応する遠隔操作対象の重機30の作業動作の操作を行い、その操作に基づく制御信号を遠隔操作制御装置100に与える。遠隔操作制御装置100は、作業動作の制御信号をネットワーク通信装置110に与える。ネットワーク通信装置110からネットワーク20を介して重機30に制御信号が送信される。
【0058】
重機30は、送られてきた制御信号に基づき、車両制御装置300が操作機器301の動作を制御し、重機30が遠隔操作により、作業を行う。
【0059】
遠隔操作制御装置100は、重機30の車両制御装置300から送信された駆動用エンジンの状態を示す状態信号をネットワーク20及びネットワーク通信装置110を介して受け取る。遠隔操作制御装置100は、状態信号に応じて複数の重機の状態を判別する状態判別部100aの機能を備える。状態判別部100aは、送られてきた状態信号に基づいて、複数の重機の状態を判別する。そして、その判別結果に基づき、遠隔操作制御装置100は、表示装置120に作業可能な重機30を表示させる。
【0060】
図1に示すように、この実施形態においては、作業現場全体を俯瞰して撮像する俯瞰カメラ40を備える。俯瞰カメラ40により、作業現場全体、各重機30の状態を撮像する。撮像したデータはネットワーク20を介して遠隔操作室10に与えられる。遠隔操作室10の遠隔操作制御装置100は、ネットワーク通信装置110から俯瞰カメラの画像データを受け取り、対応する表示装置120に俯瞰画像を表示させる。
【0061】
また、遠隔操作制御装置100は、俯瞰カメラ40からの画像に基づき、各重機30のライト304を認識し、複数の重機30の状態を判別し、作業可能な状態の重機30を表示装置120に表示させるように構成できる。
【0062】
図4は、遠隔操作室内部の一例を示す斜視図である。図4に示すように、オペレータが着座するシート130aの左右前方に、操作部130のレバー130L,130Rが配置されている。レバー130L,130Rを操作することにより、重機30の動作を遠隔操作することができる。オペレータの正面及び左右に複数の表示装置120が配置されている。
【0063】
正面の表示装置120は、例えば、マルチウィンドウに構成され、複数のウィンドウ120a、120b、120c、120dに各種画像が表示される。例えば、ウィンドウ120aには、俯瞰カメラ40の画像、ウィンドウ120bには、重機30に搭載されたカメラ303の画像、ウィンドウ120dには、重機30のアクションに応じた画像、ウィンドウ120cは、重機30の前方の画像などを表示させる。また、オペレータの左側の表示装置120のウィンドウ120eには、重機30の左側の画像、オペレータの右側の表示装置120のウィンドウ120fには、重機30の右側の画像を表示させる。これにより、オペレータは、あたかも重機30に乗車して運転操作を行っている感覚で遠隔操作を行うことができる。
【0064】
また、オペレータの右側近傍には、操作用タッチパネル120gが設けられている。このタッチパネル120gにより、作業を行う重機30の選択などを行う。
【0065】
上記した遠隔操作室10内の表示装置120の数、表示態様などは、必要に応じて適宜選択される。
【0066】
図1に示すように、この実施形態の重機の遠隔操作装置は、複数の重機30と遠隔操作室10がネットワーク20を介して接続される。遠隔操作室10とネットワーク20と複数の重機30は、例えば、VPN接続で接続することにより、遠隔操作対象となる複数の重機30と遠隔操作室10のみ通信制御できるように構成している。
【0067】
遠隔操作室10の遠隔操作制御装置100は、各重機30から送信された駆動用エンジン302の状態信号に基づいて、表示装置120に作業可能な状態の重機30を表示させる。
【0068】
図5に重機の状態を示す表示装置120の表示画面の表示例を示す。図5に示す例においては、バックホウ30a、ブルドーザ30b、ロードローラ30cがONLINE状態である。バックホウ30a、ロードローラ30cの駆動用エンジン302が動作している状態、ブルドーザ30bの駆動用エンジン302が停止している状態を示している。また、重機30がOFFLINEの場合には、図5におけるONLINEの表示がOFFLINEの表示に切り替わり、オペレータにOFFLINE状態であることを知らせる。図5の例では、バックホウ30aがONLINE状態で現在遠隔操作対象である。遠隔操作対象として選択中の重機は、例えば,図5に示すように、枠で囲いその対象であることをオペレータ認識できるように構成している。オペレータが遠隔操作対象として認識できれば、枠表示に限らず、文字色を変化させるなど種々の表示態様を採ることができる。この状態においては、切り替えて直ちに作業可能な状態の重機30は、ロードローラ30cである。ブルドーザ30bは、駆動用エンジン302が停止状態である。ブルドーザ30bに切り替える場合には、駆動用エンジン302を駆動させ、その後ブルドーザ30bの遠隔操作動作になる。また、自動運転中の重機30がある場合には、自動運転中であることを表示装置120の表示画面に表示させるように構成することができる。
【0069】
図5に示す「切替」を押すことにより、使用する重機30を選択することができる。カメラが複数ある場合には、カメラの「切替」を押すことにより、カメラの切り替えが行える。
【0070】
図6は、選択した重機の操作入力とスイッチ状態を表示装置に表示させた例を示す。図6は、遠隔操作対象として、バックホウ30aを選択したときの表示装置120のウィンドウ120dの表示例である。このウィンドウ120dの表示を参考にしてバックホウ30aの操作を行うことができる。重機30を切り替えると、切り替えた重機30に対応した操作入力とスイッチ状態が表示装置120に表示される。
【0071】
また、遠隔操作制御装置100は、各重機30のうちで駆動用エンジン302が停止している重機30の駆動用エンジン302を動作させるように制御する。これにより、ネットワーク20に接続されている重機30の駆動用エンジン302を動作させ、ネットワーク20に接続されている重機30であれば、切り替え直後に作業を開始することができる。
【0072】
また、遠隔対象となっている重機30が自動運転可能であれば、自動運転が行われる重機30とオペレータが遠隔操作する重機30とを同時に作業を行える。また、所定動作を繰り返す重機30であれば、オペレータが複数の重機30を遠隔操作することができる。
【0073】
次に、複数の重機の遠隔操作の例につき図7を参照にして説明する。図7に示す例では、3台の重機30を遠隔操作する。重機1は、1の作業、重機2は、2の作業、重機3は、3の作業を行う。1の作業は、オペレータの手動操作が必要な複雑な作業、2の作業、3の作業は、自動制御が可能な単純作業とする。
【0074】
所定の作業エリアAで、重機1~重機3が連携して行う一連の作業を作業Aとする。作業Aは、1の作業から2の作業を経て3の作業の順に行い完了する。作業Aが完了したら作業エリアBに移動して作業Bを順次行う。
【0075】
図7(a)は、手動操作のみ行った時のタイムチャートである。1の作業(A1)を手動操作により行い、操作を切り替え、2の作業(A2)を手動操作により行う。作業と作業の間では操作切り替えの時間を要する。
【0076】
図7(b)は、1の作業を手動操作、2の作業を及び3の作業を自動操作により作業を行った時のタイムチャート例である。(b)に示すように、A1の作業が終了して、B1の作業に切り替る際に2の作業の自動制御コマンドを重機2に送信し自動制御作業を開始する。B1の作業とA2作業が並行して行える。B1の作業が終了して、C1の作業に切り替る際に2の作業の自動制御コマンドを重機2に送信し、3の作業の自動制御コマンドを重機3に送信し、それぞれ自動制御作業を開始する。C1の作業とB2作業、A3作業が並行して行える。このように、作業の手動操作と自動制御の操作を並行して行うことで効率的な作業が行え、作業時間の短縮が図れる。
【0077】
次に、複数の重機の遠隔操作の他の例につき図8を参照にして説明する。図8に示す例では、2台の重機30を遠隔操作する。重機1は、(1)の作業(2)作業、(3)の作業の3つの作業を行う、(2)の作業は自動制御が可能な作業である。重機2は、(1)の作業(2)の作業、(3)の作業の3つの作業を行う、(2)(3)の作業は自動制御が可能な作業である。
【0078】
作業エリアで、重機1、重機2は、それぞれ(1)から(3)の一連の作業を行う
【0079】
図8(a)は、手動操作のみ行った時のタイムチャートである。重機1の(1)の作業、(2)の作業、(3)の作業を手動操作により行い、操作を切り替え、重機2の(1)の作業、(2)の作業、(3)の作業を手動操作により行う。作業と作業の間では操作切り替えの時間を要する。
【0080】
図8(b)は、重機1の(1)の作業と(3)の作業を手動操作、(2)の作業を自動操作による作業、重機2の(1)の作業を手動操作、(2)(3)の作業を自動操作による作業を行った時のタイムチャート例である。
【0081】
(b)に示すように、重機1の(1)の作業を行った後、重機1の(2)の自動操作作業に切り替え、重機2の(1)の作業の手動操作を行う。重機1の(2)の作業の自動制御作業が終えると、重機2の(1)の手動作業が終えるのを待ち、その作業が終えると、重機1の(3)の手動作業に切り替えると共に重機2の(2)の作業の自動制御作業を行う。重機1の(3)の作業が終わると、重機2の(3)の自動制御作業に切り替えると共に、重機1の(1)の作業の手動作業に切り替える。このように手動操作作業と自動制御作業が並行して行うことができる。作業の手動操作と自動制御の操作を並行して行うことで効率的な作業が行え、作業時間の短縮が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、建設作業現場などにおいて、複数の重機を遠隔操作する遠隔装置に利用可能である。これにより、オペレータは、待機時間をなくすか少なくして作業を行うことが可能となり、作業効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 :遠隔操作室
20 :ネットワーク
30 :重機
40 :俯瞰カメラ
100 :遠隔操作制御装置
110 :ネットワーク通信装置
120 :表示装置
300 :車両制御装置
301 :操作機器
302 :駆動用エンジン
302 :エンジン
303 :カメラ
304 :ライト
310 :車両用通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8