(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074354
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】メタリック層及び接着剤層を含む装飾用積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20230522BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230522BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230522BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230522BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230522BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230522BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230522BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230522BHJP
C09D 171/00 20060101ALI20230522BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20230522BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B32B27/00 E
C09J7/30
C09J201/00
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/63
C09D175/04
C09D171/00
C09J7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187274
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】三上 治幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 新
(72)【発明者】
【氏名】川崎 彩子
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AH06B
4F100AK01B
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4J004DB02
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(57)【要約】
【課題】金属光沢性に優れ、外観不良を低減又は防止し得る、メタリック層及び接着剤層を含む装飾用積層体の提供。
【解決手段】本開示の一実施態様の装飾用積層体は、接着剤層、及び金属顔料粒子を含むメタリック層を順に含み、このメタリック層における接着剤層側の面に対して反対側に位置する最表面の鮮明度が、約0.5以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層、及び、
金属顔料粒子を含むメタリック層
を順に含み、
前記メタリック層における接着剤層側の面に対して反対側に位置する最表面の鮮明度が、0.5以上である、
装飾用積層体。
【請求項2】
前記金属顔料粒子の形状が、鱗片状である、請求項1に記載の装飾用積層体。
【請求項3】
前記メタリック層の厚みが、0.07マイクロメートル以上1.1マイクロメートル以下である、請求項1又は2に記載の装飾用積層体。
【請求項4】
前記メタリック層中の前記金属顔料粒子の含有量が、20.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾用積層体。
【請求項5】
前記メタリック層が、バインダー及びシランカップリング剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装飾用積層体。
【請求項6】
前記メタリック層中の前記バインダーの含有量が、0.1質量%以上10.0質量%以下であり、かつ、前記メタリック層中の前記シランカップリング剤の含有量が、50.0質量%以上79.9質量%以下である、請求項5に記載の装飾用積層体。
【請求項7】
前記シランカップリング剤が、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項5又は6に記載の装飾用積層体。
【請求項8】
前記バインダーが、ウレタン結合を有する樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の装飾用積層体。
【請求項9】
前記接着剤層が、白色顔料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の装飾用積層体。
【請求項10】
表面層、装飾層、接合層、及び剥離ライナーからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の装飾用積層体。
【請求項11】
真空成型用又は真空圧空成型用として使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の装飾用積層体。
【請求項12】
金属顔料粒子を含むメタリックコーティング組成物を、表面が略平滑な支持体に適用してメタリック層を形成することと、
前記メタリック層に対して接着剤層を適用することと、
を含む、装飾用積層体の製造方法。
【請求項13】
前記支持体が、前記装飾用積層体の表面層又は剥離ライナーを構成する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記支持体の表面の粗さ(Sa)が、0.5マイクロメートル以下である、請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の装飾用積層体が、支持部材に接着されている、物品。
【請求項16】
三次元形状を有する、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
乗物の内装品又は外装品である、請求項15又は16に記載の物品。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の装飾用積層体を、三次元形状を有する支持部材に適用することを含む、三次元形状を有する物品の製造方法。
【請求項19】
前記支持部材への前記フィルムの適用が、真空成型又は真空圧空成型によって行われる、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
金属顔料粒子、バインダー前駆体及びシランカップリング剤を含むメタリックコーティング組成物であって、
固形分換算で、前記金属顔料粒子の含有量が、20.0質量%以上40.0質量%以下であり、前記バインダー前駆体の含有量が、0.1質量%以上10.0質量%以下であり、かつ、前記シランカップリング剤の含有量が、50.0質量%以上79.9質量%以下である、
メタリックコーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メタリック層及び接着剤層を含む装飾用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、メタリックな意匠感を呈する化粧シートが開発されており、内装品又は外装品など幅広い分野で使用されている。
【0003】
特許文献1(特開2010-100051号公報)には、基材上に、少なくとも隠蔽層、メタリック層及び表面保護層を順に積層してなる化粧シートであって、メタリック層に含まれる光輝性顔料の含有比率が、該メタリック層の樹脂固形分100質量部に対して15~45質量部の範囲であり、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、かつ該電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布量が3~8g/m2である、化粧シートが記載されている。
【0004】
特許文献2(特開平05-111991号公報)には、下地層の上に、鱗片状でかつ表面が平滑なアルミニウム粒子を含有するアクリレート系エマルジョン層を設けてなる、化粧シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-100051号公報
【特許文献2】特開平05-111991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載される化粧シートは、アルミニウム粒子などの金属顔料粒子を用いてメタリック層を形成している。このような化粧シートに形成されている従来のメタリック層は、典型的には、ラメのようなキラキラした意匠性を呈するものであり、金属自体が呈し得る金属光沢(例えば金属メッキのような光沢)を発現するものではなかった。
【0007】
金属光沢に関し、例えば、基材上に金属蒸着層を形成することによって、金属自体が呈し得る金属光沢を発現させることができる。しかし、金属蒸着層は、光輝性顔料を用いて形成するメタリック層に比べ、延伸又は屈曲させたときにクラックが生じて金属光沢が低下しやすいため、外観不良を引き起こすおそれがあった。
【0008】
例えば、装飾フィルムの分野では、接着剤層を介して装飾フィルムを被着体に貼り合わせる技術が知られている。しかし、このような接着剤層に対して金属顔料粒子を含むメタリック層を適用して、金属自体が呈し得る金属光沢を発現させることは困難であった。
【0009】
本開示は、金属光沢性に優れ、外観不良を低減又は防止し得る、メタリック層及び接着剤層を含む装飾用積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施態様によれば、接着剤層、及び金属顔料粒子を含むメタリック層を順に含み、このメタリック層における接着剤層側の面に対して反対側に位置する最表面の鮮明度が、約0.5以上である、装飾用積層体が提供される。
【0011】
本開示の別の実施態様によれば、金属顔料粒子を含むメタリックコーティング組成物を、表面が略平滑な支持体に適用してメタリック層を形成することと、このメタリック層に対して接着剤層を適用することと、を含む、装飾用積層体の製造方法が提供される。
【0012】
本開示の別の実施態様によれば、上記の装飾用積層体が、支持部材に接着されている、物品が提供される。
【0013】
本開示の別の実施態様によれば、上記の装飾用積層体を、三次元形状を有する支持部材に適用することを含む、三次元形状を有する物品の製造方法が提供される。
【0014】
本開示の別の実施態様によれば、金属顔料粒子、バインダー前駆体及びシランカップリング剤を含むメタリックコーティング組成物であって、固形分換算で、金属顔料粒子の含有量が、約20.0質量%以上約40.0質量%以下であり、バインダー前駆体の含有量が、約0.1質量%以上約10.0質量%以下であり、かつ、シランカップリング剤の含有量が、約50.0質量%以上約79.9質量%以下である、メタリックコーティング組成物が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、金属光沢性に優れ、外観不良を低減又は防止し得る、メタリック層及び接着剤層を含む装飾用積層体を提供することができる。
【0016】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本開示の一実施態様の装飾用積層体の断面を模した図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施態様の装飾用積層体の製造方法に関する図である。
【
図3】
図3は、本開示の別の実施態様の装飾用積層体の製造方法に関する図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施態様の装飾用積層体を備える物品の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、必要に応じて図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
【0019】
本開示において、例えば、「接着剤層、及び金属顔料粒子を含むメタリック層を順に含む装飾用積層体」における「順に」とは、接着剤層とメタリック層の2つの構成要素に着目したときに、装飾用積層体がこれらの構成要素をこの順番で含んでいることを意図し、これらの構成要素の間には印刷層などの他の層が介在してもよい。
【0020】
本開示において、例えば、「メタリック層が接着剤層の上に配置される」における「上」とは、メタリック層が接着剤層の上側に直接的に配置されること、又は、メタリック層が他の層を介して基材の上側に間接的に配置されることを意図している。
【0021】
本開示において、例えば、「接合層がメタリック層の下に配置される」における「下」とは、接合層がメタリック層の下側に直接的に配置されること、又は、接合層が他の層を介してメタリック層の下側に間接的に配置されることを意図している。
【0022】
本開示において「金属顔料粒子」とは、メタリック層において金属調の意匠性を付与し得る粒子を意図する。ここで、「金属調の意匠性」とは、ラメのようなキラキラした意匠性、及び見る角度によって色相が変化するフリップフロップ性と称するような意匠性ではなく、金属自体が呈し得る金属光沢(例えば金属メッキのような鏡面光沢)のような意匠性を意図する。
【0023】
本開示において「メタリック層」とは、金属調の意匠性(例えば金属メッキのような鏡面光沢)を呈し得る層を意図する。
【0024】
本開示において「略」とは、製造誤差などによって生じるバラつきを含むことを意味し、±約20%程度の変動が許容されることを意図する。
【0025】
本開示において「透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%以上をいい、望ましくは約85%以上、又は約90%以上であってよい。平均透過率の上限値については特に制限はないが、例えば、約100%未満、約99%以下、又は約98%以下とすることができる。
【0026】
本開示において「半透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%未満をいい、望ましくは約75%以下であってよく、下地を完全に隠蔽しないことを意図する。
【0027】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0028】
本開示において「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も包含される。
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照し、本開示の装飾用積層体について説明する。
【0030】
図1における装飾用積層体100は、剥離ライナー101、接着剤層103及びメタリック層105を含む。ここで、剥離ライナーは任意の構成要素であり、本開示の装飾用積層体は、剥離ライナーを含んでいてもよく、又は含まなくてもよい。
【0031】
以下、本開示の代表的な実施態様を例示する目的で、各構成要素の詳細について一部符号を省略して説明する。
【0032】
本開示の装飾用積層体(単に「積層体」と称する場合がある。)は、接着剤層と、金属顔料粒子を含むメタリック層とを順に含んでおり、メタリック層における接着剤層側の面に対して反対側に位置する最表面の鮮明度が、約0.5以上を呈する。ここで、「メタリック層における接着剤層側の面に対して反対側に位置する最表面」とは、例えば、
図1では、装飾用積層体100を上方(符号100が位置する方向)から見たときのメタリック層105の表面を意図する。
【0033】
接着剤層に対してメタリック層を適用する場合には、例えば、剥離ライナーに接着剤を適用して接着剤層を形成し、次いで、この接着剤層に対してメタリックコーティング組成物を適用することが一般的である。しかしながら、かかる方法でメタリックコーティング組成物を接着剤層に適用すると、メタリック層に筋状の欠陥が生じたり、メタリック層のヘイズが上昇したりする結果、良好な金属光沢を呈するメタリック層が得られなかった。原理は定かではないが、この原因は、接着剤層が、剥離ライナー等で使用される基材(例えばPET基材)に比べて柔軟であるため、コーティング組成物の塗工時に使用されるマイヤーバーの影響を受け易く、その結果、筋模様が発生したり、又は、コーティング組成物中の溶剤によって、接着剤層が膨潤したり、若しくは接着剤成分がメタリック層へ移行したりする結果、メタリック層のヘイズが上昇したと考えている。
【0034】
本発明者は、後述するように、金属顔料粒子を含むメタリックコーティング組成物を、表面が略平滑な支持体に適用してメタリック層を形成し、次いで、かかるメタリック層に対して接着剤層を適用すると、
図4の写真に示されるような良好な金属光沢(金属メッキのような鏡面光沢)を呈するメタリック層が得られることを見出した。
【0035】
また、本開示のメタリック層は、金属顔料粒子を用いて形成されるため、蒸着によって形成された金属蒸着層に比べてクラックに伴う外観不良を低減又は防止することができる。
【0036】
メタリック層の金属光沢は、例えば、後述する鮮明度試験で評価することができる。この鮮明度は、メタリック層の金属光沢に反映されるパラメータであるため、例えば、
図1に示されるように、装飾用積層体100の最表面にメタリック層105が位置する場合に限らず、例えば、メタリック層105上に透明な表面層が適用された場合においても、装飾用積層体の最表面における鮮明度を測定することで、メタリック層の金属光沢を評価することができる。本開示の装飾用積層体は、約0.5以上、約0.6以上、又は約0.7以上の鮮明度を達成することができる。かかる鮮明度の上限値としては特に制限はなく、例えば、約2.0以下、約1.8以下、又は約1.5以下とすることができる。
【0037】
本開示のメタリック層は、少なくとも金属顔料粒子を含んでいる。メタリック層は、単層構成であってもよく、又は複層構成であってもよい。メタリック層は、装飾用積層体の全面に形成されてよく、又は部分的に形成されてもよい。
【0038】
金属顔料粒子の形状としては特に制限はなく、例えば、鱗片状、扁平状、及び板状が挙げられる。そのなかでも、良好な金属光沢性を得る観点から、鱗片状が好ましい。
【0039】
金属顔料粒子の大きさは、メタリック層において金属調の意匠性を発現させ得る限り特に制限はない。金属顔料粒子の粒子径は、例えば、D50で評価することができる。D50としては、良好な金属光沢性を得る観点から、約1マイクロメートル以上、約2マイクロメートル以上、約3マイクロメートル以上、約4マイクロメートル以上、又は約5マイクロメートル以上であることが好ましく、約20マイクロメートル以下、約17マイクロメートル以下、約15マイクロメートル以下、約12マイクロメートル以下、又は約10マイクロメートル以下であることが好ましい。金属顔料粒子の粒子径(D50)は、JIS Z 8825:2013に準拠した測定条件により、マイクロトラック・ベル社製のレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX IIシリーズ」を使用して計測することができる。
【0040】
金属顔料粒子の材料としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、インジウム、銅、金、銀、及び真鍮等の金属、並びにかかる金属を含む合金又は化合物を挙げることができる。なかでも、金属光沢性の観点から、金属顔料粒子は、アルミニウムを含むことが好ましい。メタリック層及びメタリックコーティング組成物中に配合する金属顔料粒子は、一種又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
メタリック層は、金属顔料粒子のみから構成されてもよいが、後述するバインダー等の任意成分が含まれていてもよい。任意成分(なかでもバインダー及びシランカップリング剤)を含む場合、金属顔料粒子の含有量としては、例えば、メタリック層の総重量に基づき、約20.0質量%以上、約22.0質量%以上、約25.0質量%以上、約27.0質量%以上、又は約30.0質量%以上とすることができ、約40.0質量%以下、約38.0質量%以下、又は約35.0質量%以下とすることができる。金属顔料粒子の含有量がこのような範囲であると、金属光沢性等の性能に優れたメタリック層を得ることができる。
【0042】
いくつかの実施態様では、本開示のメタリック層は、バインダーを含んでいる。バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ウレタン結合を有する樹脂、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、及び酢酸ビニル樹脂が挙げられる。バインダーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。本開示において「ウレタン結合を有する樹脂」とは、ウレタン樹脂の他、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選択される少なくとも一種を用いて調製した樹脂なども包含することができ、ウレタン樹脂には、(メタ)アクリルウレタン樹脂なども包含することができる。なかでも、金属光沢性、及び金属顔料粒子間の密着性等の観点から、ウレタン結合を有する樹脂及びフェノキシ樹脂が好ましい。
【0043】
バインダーの含有量としては、例えば、メタリック層の総重量に基づき、約0.1質量%以上、約0.3質量%以上、約0.6質量%以上、約0.8質量%以上、約1.0質量%以上、約1.5質量%以上、約2.0質量%以上、約2.5質量%以上、又は約3.0質量%以上とすることができ、約10.0質量%以下、約9.0質量%以下、約8.0質量%以下、約7.0質量%以下、約6.0質量%以下、又は約5.5質量%以下とすることができる。バインダーは、例えば、金属顔料粒子間の密着性を向上させることができる一方で、場合によってはメタリック層のヘイズを上昇させるおそれがある。バインダーの含有量がこのような範囲であると、金属光沢性等の性能に優れたメタリック層を得ることができる。
【0044】
いくつかの実施態様では、本開示のメタリック層は、シランカップリング剤を含んでいる。シランカップリング剤としては、末端にアルコキシシランを有する化合物であれば特に制限されないが、同時にビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミン基、メルカプト基、及びイソシアネート基、からなる群から選択される少なくとも一種を有するものが好ましく、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも一種を有するものがより好ましく、エポキシ基及びアミン基からなる群から選択される少なくとも一種を有するものが特に好ましい。シランカップリング剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
ビニル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランを挙げることができる。
【0046】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0047】
(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。ここで、「(メタ)アクリロキシ」とは、アクリロキシ又はメタクロキシを意味する。
【0048】
アミン基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0049】
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びγ-メルカプトプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0050】
イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、及びγ-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0051】
シランカップリング剤の含有量としては、例えば、メタリック層の総重量に基づき、約50.0質量%以上、約55.0質量%以上、約60.0質量%以上、約63.0質量%以上、又は約65.0質量%以上とすることができ、約79.9質量%以下、約79.7質量%以下、約79.4質量%以下、約79.2質量%以下、約79.0質量%以下、約78.5質量%以下、約78.0質量%以下、約77.5質量%以下、又は約77.0質量%以下とすることができる。シランカップリング剤は、例えば、金属顔料粒子間の密着性を向上させることができる。シランカップリング剤の含有量がこのような範囲であると、金属光沢性等の性能に優れたメタリック層を得ることができる。シランカップリング剤は、上述したバインダーと併用すると、バインダーとシランカップリング剤とが結合すると同時に、金属顔料粒子とシランカップリング剤も結合し得ることから、金属顔料粒子間の密着性をより向上させることができる。その結果、装飾用積層体が、例えば真空成型又は真空圧空成型のような加熱及び/又は圧力に付される成型法に適用されたとしても、メタリック層の金属光沢の低下を低減又は抑制することができる。シランカップリング剤及びバインダーを併用するときの各含有量は、上述した含有量をそれぞれ採用することができる。
【0052】
本開示のメタリック層は、任意成分として、例えば、金属顔料粒子以外のフィラー、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、レベリング剤、金属顔料粒子以外の顔料、染料、及び香料などの添加剤を含んでもよい。任意成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。任意成分の個々の及び合計の配合量は、メタリック層に必要な特性を損なわない範囲で決定することができる。
【0053】
メタリック層を形成するための本開示のメタリックコーティング組成物は、上述したメタリック層で用い得る各種材料を含むことができ、少なくとも金属顔料粒子を含有する。なかでも、金属顔料粒子に加えて、バインダー前駆体及びシランカップリング剤を含み、かつ、固形分換算で、金属顔料粒子の含有量が、約20.0質量%以上約40.0質量%以下であり、バインダー前駆体の含有量が、約0.1質量%以上約10.0質量%以下であり、シランカップリング剤の含有量が、約50.0質量%以上約79.9質量%以下である、メタリックコーティング組成物が好ましい。かかる組成物によって形成されたメタリック層は、金属光沢性に加え、金属顔料粒子間の密着性にも優れるため、加熱及び/又は圧力が付される成型法(例えば真空成型法、真空圧空成型法)に適用されたとしても、メタリック層の金属光沢の低下を低減又は抑制することができる。
【0054】
ここで、「バインダー前駆体」とは、メタリック層において最終的にバインダーとなる成分を意味し、例えば、硬化性若しくは架橋性モノマー及び/又は硬化性若しくは架橋性オリゴマー、これらを予め硬化させた若しくは架橋させた樹脂、熱可塑性樹脂などの非硬化性又は非架橋性の樹脂を挙げることができる。したがって、メタリックコーティング組成物は、任意成分として、架橋剤、硬化剤などの添加剤を配合することができる。架橋剤を含むメタリックコーティング組成物は架橋性組成物と称することができ、硬化剤を含むメタリックコーティング組成物は硬化性組成物と称することができる。
【0055】
メタリックコーティング組成物における、金属顔料粒子、バインダー前駆体、及びシランカップリング剤のそれぞれの含有量は、上述した、メタリック層中の各成分の含有量を同様に採用することができる。ここで、「メタリック層の総重量に基づき」及び「バインダー」は、「固形分換算で」及び「バインダー前駆体」と読み替えることができる。
【0056】
上述した任意成分の各種添加剤は、メタリックコーティング組成物によって得られるメタリック層に悪影響を及ぼさない範囲で適宜配合することができる。メタリックコーティング組成物は、作業性及び塗工性などを改善するために、任意に、トルエン等の有機溶剤、又は水性分散媒などを配合することができる。水性分散媒としては、例えば、蒸留水、精製水、イオン交換水、及び水道水等の水を使用することができる。本発明の効果に影響を及ぼさない範囲において、このような水とともに、エタノール等の水溶性アルコールなどを併用しても構わない。
【0057】
本開示の装飾用積層体のメタリック層は、メタリックコーティング組成物を、接着剤層に適用して形成するのではなく、表面が略平滑な支持体(単に「支持体」と称する場合がある。)に適用して形成される。ここで、「表面が略平滑な支持体」には、メタリックコーティング組成物が適用され得る接着剤層を有している支持体は包含しない。
【0058】
メタリックコーティング組成物は、金属顔料粒子(例えば鱗片状の金属顔料粒子)を含んでおり、かかる粒子が支持体に対して略平行方向に略均一に配向される結果、得られるメタリック層は良好な金属光沢を得ることができる。本開示の装飾用積層体の製造方法によれば、金属顔料粒子は、メタリック層の厚さが薄い方が略均一に配向されやすい。したがって、良好な金属光沢を得る観点から、メタリック層の厚みは、例えば、約0.07マイクロメートル以上、約0.10マイクロメートル以上、約0.15マイクロメートル以上、約0.20マイクロメートル以上、約0.25マイクロメートル以上、約0.30マイクロメートル以上、約0.35マイクロメートル以上、約0.40マイクロメートル以上、約0.45マイクロメートル以上、又は約0.50マイクロメートル以上であることが好ましく、約1.1マイクロメートル以下、約1.0マイクロメートル以下、約0.90マイクロメートル以下、約0.85マイクロメートル以下、又は約0.80マイクロメートル以下であることが好ましい。ここで、本開示におけるメタリック層の厚みは、JIS K 5600-1-7 第7節:膜厚、5乾燥膜厚の測定、5.2.1 b)塗装法(非破壊的試験法)に準拠して測定した。具体的には、最初にメタリック層適用前の素地の厚さを測定し、次いで、メタリック層を塗布及び乾燥した後に同じ測定範囲の全体の厚さを測定し、その差をメタリック層の厚みとした。かかる厚みは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーター(型番:VL-50S)を用い、任意の3箇所において測定した値の平均値である。
【0059】
本開示の装飾用積層体は、接着剤層を含んでいる。接着剤層は、典型的には、被着体、例えば、後述する物品の支持部材に適用される層である。
【0060】
接着剤層は、メタリック層に対し、直接的に適用されてもよく、又は他の層(例えば接合層)を介して間接的に適用されてもよい。
【0061】
接着剤層の材料としては特に制限はなく、例えば、一般に使用される、(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。
【0062】
かかる材料のなかでも、被着体への貼り合わせの容易性等の観点から、感圧型接着剤及び感熱型接着剤が好ましく、また、例えば真空成型又は真空圧空成型時の赤外線ヒーターなどの熱を利用できる観点から感熱型接着剤がより好ましい。本開示において「感圧型接着剤」とは、室温(例えば約20℃)で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない接着剤を指す。また「感熱型接着剤」とは、加熱により接着性(タック性)を発現し得る接着剤である。本開示における感熱型の接着剤層は、室温(例えば約20℃)では接着性を示さず、例えば、約100℃以上、約120℃以上、又は約140℃以上の成形時において、接着性を発揮することができる。感圧型接着剤及び感熱型接着剤も、架橋剤によって熱架橋又は放射線(例えば電子線ビーム又は紫外線)で架橋されたものでもよい。
【0063】
感圧型接着剤の材料としては特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、天然ゴム、合成ゴム、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、又は他のポリマーを使用することができる。なかでも、(メタ)アクリル系ポリマーの感圧型接着剤は、透明性、耐候性、接着性に優れているので好ましい。
【0064】
感熱型接着剤の材料としては特に制限はない。例えば、下記成分:(A)ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が約4.0~約25%である、約25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマー、及び(B)ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が約3.5~約15%である、約75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーを含み、成分(A)と成分(B)の配合比が質量比で約62:約38~約75:約25である、材料を挙げることができる。ここで、(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリル系モノマー以外の他の非(メタ)アクリレートモノマー、例えばビニル不飽和モノマーと任意に組み合わせたコポリマーであってもよい。
【0065】
(メタ)アクリルポリマーを構成するモノエチレン性不飽和モノマーは、一般には式CH2=CR1COOR2(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖又は分岐又は環状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基である。)で表されるものを主成分として使用するが、その他、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル類も含まれ得る。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。例えば、所望のガラス転移温度、接着性、熱間接着性・熱間保持力を得るために、その目的に応じ、これらのモノマーを適宜1種又は2種以上を使用することができる。モノエチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、ここで、アルキル基の炭素原子数は1~12が好ましい。
【0066】
成分(A)は、約25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリルポリマーであり、軟らかい成分である。この軟らかい成分(A)自体は、常温で粘着性を有しているが、成分(B)と上記の量で混合された組成物は、常温では殆ど粘着性を示さない。しかし、成分(A)と成分(B)を上記の量で混合した接着剤は、被着体に加熱圧着すると良好な接着性を呈することができる。
【0067】
ガラス転移温度(Tg)が約25℃以下の(メタ)アクリルポリマーは、そのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が約25℃以下となるモノマーを主成分とすることにより、容易に提供できる。そのようなモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。室温での接着性、高温時での凝集力を考慮すると、(メタ)アクリルポリマーのTgは、約0℃~約-50℃であることが好ましい。
【0068】
ここで本開示におけるポリマーのガラス転移温度(℃)は、以下のようにして測定して得られた値である:
〈Tg(ガラス転移温度)の測定(30℃未満)〉
Rheometric Scientific社製、ARESを用い、Mode:Shear、Frequency:1.0Hz、温度:-60℃~30℃(5.0℃/min)における、損失正接(tanδ)(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’)のピーク温度を測定した。
〈Tg(ガラス転移温度)の測定(30℃以上)〉
Rheometric Scientific社製、RSA-IIIを用い、Mode:Tension、Frequency:10.0Hz、温度:30℃~150℃((5.0℃/min)における、損失正接(tanδ)(損失弾性率E’’/貯蔵弾性率E’)のピーク温度を測定した。
【0069】
成分(A)はカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルポリマーである。成分(A)がカルボキシル基を含有するとともに、成分(B)がアミノ基を含有することで、成分(A)と成分(B)との相溶性が向上し、接着剤組成物における成分(A)と成分(B)の相分離を回避でき、良好な性能(例えば加熱接着性、熱間接着性、熱間保持力)を呈することができる。良好な相溶性を発現させる観点から、成分(A)の(メタ)アクリルポリマーに含まれるカルボキシル基は、ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が約4.0~約25%(カルボキシ基量mol%とも表示する。)になる量で含まれていることが好ましい。
【0070】
カルボキシル基を含有した不飽和モノマーを上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合することで、(メタ)アクリルポリマーにカルボキシル基を含有させることができる。このようなモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。カルボキシル基を含有した不飽和モノマーは、耐黄変性を考慮すると、(メタ)アクリル酸、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0071】
成分(A)のカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマーの分子量は特に限定されないが、一般的には、重量平均分子量で約10万~約100万が好ましく、約20万~約80万がより好ましい。重量平均分子量が小さいと凝集性が低下し、大きいと相溶性が低下する傾向があるが、ポリマーが成分(A)の条件を満たせば特には限定されない。ここで、本開示において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定における、ポリスチレン換算の重量平均分子量を意図する。
【0072】
成分(B)は、約75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリルポリマーであり、硬い成分である。この硬い成分(B)が含まれないか少ないと、成分(A)だけでは接着剤は常温下において粘着剤となる。約75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する成分(B)を含むことで、加熱接着時に接着剤が粘着性を発現する。その結果、例えば、三次元形状の被着体に延伸されて貼着された装飾用積層体が、高温に曝されて、残留応力により伸縮しても、接着剤層がその伸縮力に耐えることができるため、装飾用積層体のエッジからのズレ又は剥がれを防止することができる。成分(B)のガラス転移温度(Tg)は約75℃以上であることが好ましい。成分(B)のTgの上限値としては、例えば、高温接着力と室温接着力のバランス、及び加熱圧着時の適用温度等の観点から、約250℃以下が好ましい。成分(B)のTgは、約80~約120℃の範囲であることがより好ましい。
【0073】
ガラス転移温度(Tg)が約75℃以上の(メタ)アクリルポリマーは、そのホモポリマーのTgが約75℃以上となるモノマーを主成分とすることで容易に提供できる。そのようなモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0074】
成分(B)はアミノ基を含有する(メタ)アクリルポリマーである。成分(A)がカルボキシル基を含有するとともに、成分(B)がアミノ基を含有することで、成分(A)と成分(B)との相溶性が向上する。接着剤組成物における成分(A)と成分(B)の相分離を回避できる結果、良好な性能(例えば加熱接着性、熱間接着性、熱間保持力)を呈することができる。良好な相溶性を発現させる観点から、成分(B)の(メタ)アクリルポリマーに含まれるアミノ基は、ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が約3.5~約15%(アミノ基量mol%とも表示する。)になる量で含まれていることが好ましい。
【0075】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーを構成する、アミノ基を含有した不飽和モノマーとしては、具体的には、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、及びビニルイミダゾールなどの含窒素複素環を有するビニルモノマーに代表される3級アミノ基を有するモノマーを挙げることができる。
【0076】
成分(B)のアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーの分子量は特に限定されないが、一般的には、熱間接着性、熱間保持力、相溶性等の観点から、重量平均分子量で約1万~約20万が好ましく、約4万~約15万がより好ましい。
【0077】
室温接着性、加熱接着性、熱間接着性、熱間保持力等の観点から、成分(A)と成分(B)は、成分(A)と成分(B)の配合比が質量比で約62:約38~約75:約25となるような量で含まれていることが好ましく、約65:約35~約70:約30がより好ましい。
【0078】
(メタ)アクリルポリマーは、ラジカル重合法により生成でき、その製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法など公知の方法を採用することができる。
【0079】
重合における開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4-ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4’-アゾビスー4-シアノバレリアン酸、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4-ジメチルバレロ二トリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤を使用することができる。開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、約0.05~約5質量部とすることができる。
【0080】
本開示の接着剤及び該接着剤から得られる接着剤層は、任意成分として、例えば、粘着付与樹脂、架橋剤、導電性フィラー、熱伝導性フィラー等のフィラー(充填剤)、シランカップリング剤、可塑剤、増粘剤、顔料、染料、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤等を配合することができる。かかる任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0081】
一実施態様では接着剤は、粘着性を調整する目的で粘着付与樹脂を含む。配合される粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂、石炭系粘着付与樹脂、その他の公知の粘着付与樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂は単独であるいは複数組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、ゴム及び/又はポリマー100質量部に対して、約0.5質量部以上又は約1質量部以上、約100質量部以下又は約50質量部以下の範囲で使用することができる。
【0082】
一実施態様では接着剤は架橋剤として多官能性化合物を含有する。多官能性化合物は、一般的には、一分子中に官能基を少なくとも2個、好ましくは2~4個有している。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物などを挙げることができる。ポリマー、例えば(メタ)アクリル系ポリマーにカルボキシル基が含まれる場合、これらの架橋剤のなかでも、エポキシ系化合物を用いると耐熱性を特に向上させることができる。
【0083】
架橋剤は、ポリマー100質量部に対して、約0.05質量部以上、約10質量部以下の範囲で使用される。このような量で架橋剤を使用することにより、ポリマー(例えば(メタ)アクリル系ポリマー)には好適な三次元架橋が形成され、優れた耐熱性を発現することができる。上記架橋剤は、単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0084】
一実施態様では接着剤層は白色顔料を含む。白色顔料は単体で又は二種以上を混合して用いることができる。白色度が高いことから白色顔料として二酸化チタンを用いることが有利である。白色顔料と併用する添加剤としてタルク、カオリン、アルミペースト、カーボンブラック又は炭酸カルシウムを用いてもよい。白色顔料は、球状、針状、平板状又はフレーク状などの様々な形状の粒子であってよく、分散性が良好であることから球状粒子であることが望ましい。白色顔料は、分散性をより高めるために、シラン、チタネートなどのカップリング剤で表面処理されていてもよい。白色顔料は、接着剤を構成するゴム及び/又はポリマー100質量部に対して、約1質量部以上、約3質量部以上、約5質量部以上、又は約8質量部以上、約60質量部以下、約50質量部以下、約40質量部以下、約30質量部以下、約20質量部以下、又は約10質量部以下とすることができる。
【0085】
本開示の接着剤層の厚さとしては特に制限はなく、例えば、約5マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、又は約20マイクロメートル以上とすることができ、約100マイクロメートル以下、約80マイクロメートル以下、又は約50マイクロメートル以下とすることができる。
【0086】
いくつかの実施態様では、本開示の装飾用積層体は、任意に追加の層を含む。かかる追加の層としては、例えば、表面層、装飾層(例えばカラー層、パターン層、レリーフ層)、接合層、及び剥離ライナーからなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。追加の層は、例えば、メタリック層上に、メタリック層と接着剤層との間に、又はメタリック層が位置する面に対して反対側の接着剤層面に適用することができる。追加の層は、メタリック層の金属光沢を完全に隠蔽しない範囲で、積層体の全面に又は一部に適用することができる。追加の層は、その表面にエンボスパターンなどの3次元形状を有してもよい。
【0087】
表面層の材料としては特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及び(メタ)アクリル共重合体を含む(メタ)アクリル樹脂、ウレタン結合を有する樹脂(例えばポリウレタン)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、メチルメタクリレート-フッ化ビニリデン共重合体(PMMA/PVDF)などのフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン等のポリアミド、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)及びそのアイオノマー、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの共重合体を、単独で又は二種以上ブレンドして使用することができる。表面層は多層構造であってもよい。例えば、表面層は、上記樹脂から形成されたフィルムの積層体であってもよく、上記樹脂の多層コーティングであってもよい。表面層はその表面の全面又は一部にエンボスパターンなどの3次元凹凸形状を有してもよい。
【0088】
表面層は、直接又は接合層等を介してメタリック層に樹脂組成物をコーティングして形成することができる。表面層のコーティングは、装飾用積層体を被着体(例えば後述する支持部材)に適用する前又は適用した後に実施することができる。あるいは、剥離ライナーに樹脂組成物をコーティングして表面層フィルムを形成し、接合層を介してメタリック層にそのフィルムをラミネートすることもできる。例えば、メタリック層が、表面層フィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さずに表面層フィルムをメタリック層に直接ラミネートすることもできる。表面層フィルムは、例えば、硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物、反応性ポリウレタン組成物などの樹脂材料を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによって剥離ライナーなどにコーティングし、必要に応じて光又は加熱硬化することによって、形成することができる。
【0089】
表面層として、押出、延伸などによってあらかじめフィルム状に形成されたものを使用してもよい。このようなフィルムは接合層を介してメタリック層にラミネートすることができる。あるいは、メタリック層がこのようなフィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さずにメタリック層にフィルムを直接ラミネートすることもできる。かかるフィルムとして、平坦性の高いフィルムを使用することで、より表面平坦性の高い外観を物品(構造物)に与えることができる。表面層は、他の層と多層押し出しすることによって形成することもできる。他の層として、例えば、(メタ)アクリルフィルムを使用することができる。(メタ)アクリルフィルムとして、例えば、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸ブチル、(メタ)アクリル共重合体、エチレン/アクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル/アクリル共重合体などを含む樹脂をフィルム状にして用いることができる。(メタ)アクリルフィルムは、透明性及び/又は耐擦傷性に優れ、熱及び/又は光に強く、退色及び/又は光沢変化が生じにくい。加えて、可塑剤を使用せずとも成形加工性に優れており、また、可塑剤を使用しなくてもよいため、耐汚染性にも優れている。なかでもPMMAを主成分とするものが好ましい。例えば、他の層として耐擦傷性等に優れる(メタ)アクリル樹脂を用い、表面層として耐薬品性等に優れるETFE、PVDF、PMMA/PVDFなどのフッ素樹脂を用いた場合には、形成される表面層は、両層の性能を兼ね備えたものとなり得る。
【0090】
本開示の表面層は、用途に応じた性能(例えば保護性能、金属光沢性)等を阻害しない範囲において、任意成分として、例えば、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、ハードコート材、光沢付与剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料などを含むことができる。なかでも、ベンゾトリアゾール、Tinuvin(商標)400(BASF社製)などの紫外線吸収剤、Tinuvin(商標)292(BASF社製)などのヒンダードアミン光安定化剤(HALS)などを用いることによって、下層に位置するメタリック層の、変色、退色、劣化などを有効に防止することができる。ハードコート材は、表面層中に含まれていてもよく、表面層上に別途コーティングしてハードコート層として適用されていてもよい。
【0091】
表面層は、部分的に半透明又は不透明であってもよいが、金属光沢の視認性等の観点から、透明であることが好ましい。表面層の透明性及び耐薬品性等の保護性能の観点から、光散乱性に寄与するような大きさの、顔料、充填剤又は上述した光拡散性粒子等は、表面層中に含まれないことが好ましい。
【0092】
表面層の厚さは様々であってよいが、例えば、約1マイクロメートル以上、約5マイクロメートル以上、又は約10マイクロメートル以上であってもよく、約200マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、又は約80マイクロメートル以下であってもよい。複雑な形状の支持部材に対して装飾用積層体を適用する場合、表面層は薄い方が形状追従性の観点から有利であり、例えば、約100マイクロメートル以下、又は約80マイクロメートル以下であることが好ましい。一方、物品に対して高い耐薬品性、耐候性、耐擦傷性等の性能を付与する場合、表面層は厚い方が有利であり、例えば、約5マイクロメートル以上、又は約10マイクロメートル以上であることが好ましい。
【0093】
追加の層としての装飾層は、メタリック層による装飾以外の装飾を付与し得る層を意図する。このような装飾層としては、次のものに限定されないが、塗装色、例えば、白、黄等の淡色、赤、茶、緑、青、グレー、黒などの濃色を呈するカラー層、木目、石目、幾何学模様、皮革模様などの模様、ロゴ、絵柄などを物品に付与するパターン層、表面に凹凸形状が設けられたレリーフ(浮き彫り模様)層、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0094】
装飾層は、次のものに限定されないが、装飾用積層体を構成する層、例えば、表面層、メタリック層、接着剤層等の全面又は一部に、直接又は接合層等を介して適用することができる。
【0095】
カラー層の材料としては、次のものに限定されないが、例えば、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料などの顔料が、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン結合を有する樹脂などのバインダー樹脂に分散された材料を使用することができる。なかでも、耐衝撃性等の観点から、ウレタン結合を有する樹脂が好ましい。
【0096】
カラー層は、このような材料を用い、例えば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング法により形成することができる。
【0097】
パターン層としては、次のものに限定されないが、例えば、模様、ロゴ、絵柄などのパターンを、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷法を用いて、表面層、メタリック層、接着剤層等に直接適用したものを採用してもよく、或いは、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング、打ち抜き、エッチングなどにより形成された模様、ロゴ、絵柄などを有するフィルム、シートなどを使用することもできる。パターン層の材料としては、例えば、カラー層で使用した材料と同様の材料を使用することができる。
【0098】
レリーフ層として、従来公知の方法、例えば、エンボス加工、スクラッチ加工、レーザー加工、ドライエッチング加工、又は熱プレス加工などによる凹凸形状を表面に有する熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。凹凸形状を有する剥離ライナーに硬化性(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化性又は放射線硬化性樹脂を塗布し、加熱又は放射線照射により硬化させて、剥離ライナーを取り除くことによりレリーフ層を形成することもできる。
【0099】
レリーフ層に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系樹脂、PET、PENなどのポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ポリスチレン、塩化ビニル、ウレタン結合を有する樹脂などを使用することができる。なかでも、耐衝撃性等の観点から、ウレタン結合を有する樹脂が好ましい。レリーフ層は、カラー層で使用される顔料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0100】
本開示の装飾層は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、任意成分として、例えば、充填剤、補強剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒などを含むことができる。
【0101】
装飾層の厚さとしては、要する装飾性等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、約1.0マイクロメートル以上、約3.0マイクロメートル以上、又は約5.0マイクロメートル以上とすることができ、約50マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、又は約30マイクロメートル以下とすることができる。
【0102】
本開示の装飾用積層体は、積層体における追加の層を接合するために接合層(「プライマー層」などと呼ばれる場合もある。)を用いることができる。接合層として、一般に使用される(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。接合層は、公知のコーティング法などによって適用することができる。上述した接着剤層と区別するために、上述した接着剤層を第1の接着剤層、接合層を第2の接着剤層などと称することもできる。
【0103】
本開示の装飾用積層体は、典型的には、接着剤層に対して剥離ライナーが適用され得る。剥離ライナーとして、例えば、紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(例えばPET)、及び酢酸セルロースなどのプラスチック材料;このようなプラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどの剥離剤により剥離処理した表面を有してもよい。剥離ライナーの厚さは、一般に、約5マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、又は約25マイクロメートル以上とすることができ、約500マイクロメートル以下、約300マイクロメートル以下、又は約250マイクロメートル以下とすることができる。
【0104】
本開示の装飾用積層体は、例えば、枚葉品であってもよく、ロール状に巻かれたロール体であってもよく、或いは、3次元形状物であってもよい。
【0105】
本開示の装飾用積層体は、金属顔料粒子を含むメタリックコーティング組成物を、表面が略平滑な支持体に適用してメタリック層を形成し、次いで、このメタリック層に対して接着剤層を適用して形成される。以下に、本開示の装飾用積層体の製造方法について、
図2及び3を参照しながら例示的に説明するが、装飾用積層体の製造方法はこれらに限定されない。
【0106】
図2は、接着剤層をメタリック層に積層し貼り合わせることによって装飾用積層体を製造する方法である。かかる方法は、表面が略平滑な支持体207を用意し(工程(a))、この支持体207の略平滑な表面に対してメタリックコーティング組成物を適用してメタリック層205を形成する(工程(b))。ここで、工程(b)におけるメタリックコーティング組成物の適用手段としては、例えば、ナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、キャストコーター、ノッチバーコーター、グラビアコーター、及びロッドコーター等の公知の方法を使用することができる。これらの方法は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。メタリック層の形成においては、必要に応じて、乾燥工程、熱硬化工程、及び電離放射線硬化工程などの追加の工程を適宜適用することができる。このような追加工程は、1種以上又は2種以上組み合わせて採用することができる。
【0107】
メタリックコーティング組成物の粘度は、例えば、25℃において、約140mPa・s以下、約130mPa・s以下、又は約120mPa・s以下であることが好ましい。粘度がこのような範囲であると、金属顔料粒子が、支持体表面において略均一に配向しやすくなり、その結果、良好な金属光沢を得ることができる。粘度の下限値としては特に制限はなく、例えば、約4mPa・s以上、約5mPa・s以上、又は約6mPa・s以上とすることができる。ここで規定する粘度とは、東機産業株式会社(日本国東京都港区)により製造されたB型粘度計(TVB-15型)を用いて測定される値であり、測定は、M2又はM3ローターを用いて25℃で実施し(回転数:100rpm)、測定開始後1分の値を測定値とする。
【0108】
工程(b)に続き、剥離ライナー201に対して接着剤層203を適用して調製した接着フィルムを、接着剤層203を介してメタリック層205に適用し(工程(c))、装飾用積層体を得ることができる(工程(d))。ここで、支持体207は、装飾用積層体の表面層又は剥離ライナーを構成することができる。支持体が剥離ライナーを構成する場合には、工程(d)の装飾用積層体は、装飾用積層体の中間体と称することができる。接着フィルムの剥離ライナーと区別するために、支持体である剥離ライナーを第1の剥離ライナー、接着フィルムの剥離ライナーを第2の剥離ライナーと称することもできる。これらの剥離ライナーは、上述した剥離ライナーを同様に使用することができる。支持体が表面層を構成する場合には、上述した表面層のうちのフィルム形態の表面層を同様に使用することができる。
【0109】
図2では、支持体は剥離ライナーを構成している。この場合、中間体から剥離ライナーの支持体207を剥がして(工程(e))、装飾用積層体を得ることができる(工程(f))。
【0110】
工程(f)に続いて、メタリック層205に対し、例えば、表面層等の追加の層を直接的に又は接合層を介して間接的に適用することもできる。
【0111】
図3は、メタリック層に対して接着剤をコーティングすることによって装飾用積層体を製造する方法である。かかる方法は、表面が略平滑な支持体307を用意し(工程(a))、この支持体307の略平滑な表面に対してメタリックコーティング組成物を適用してメタリック層305を形成した後、メタリック層305に対して接着剤を適用して接着剤層303を形成する(工程(b))。ここで、工程(b)におけるメタリックコーティング組成物及び接着剤の適用手段としては、上述した公知の方法を同様に使用することができる。メタリック層及び接着剤層の形成においては、必要に応じて、乾燥工程、熱硬化工程、及び電離放射線硬化工程などの追加の工程を適宜適用することができる。このような追加工程は、1種以上又は2種以上組み合わせて採用することができる。
【0112】
工程(b)に続き、接着剤層303に対して剥離ライナー301を適用し(工程(c))、装飾用積層体を得ることができる(工程(d))。ここで、支持体307は、装飾用積層体の表面層又は剥離ライナーを構成することができる。支持体が剥離ライナーを構成する場合には、工程(d)の装飾用積層体は、装飾用積層体の中間体と称することができる。接着剤層に適用した剥離ライナーと区別するために、支持体である剥離ライナーを第1の剥離ライナー、接着剤層に適用した剥離ライナーを第2の剥離ライナーと称することもできる。これらの剥離ライナーは、上述した剥離ライナーを同様に使用することができる。支持体が表面層を構成する場合には、上述した表面層のうちのフィルムの形態の表面層を同様に使用することができる。
【0113】
図3では、支持体は剥離ライナーを構成している。この場合、中間体から剥離ライナーの支持体307を剥がして(工程(e))、装飾用積層体を得ることができる(工程(f))。
【0114】
工程(f)に続いて、メタリック層305に対し、例えば、表面層等の追加の層を直接的に又は接合層を介して間接的に適用することもできる。
【0115】
本開示の装飾用積層体の製造方法で使用する支持体は、メタリックコーティング組成物を適用する面が略平滑な面で構成されている。支持体の略平滑な面の平滑度は、後述する表面粗さ試験で評価することができる。かかる粗さ(Sa)としては、約3.0マイクロメートル以下、約0.5マイクロメートル以下、約0.3マイクロメートル以下、約0.2マイクロメートル以下、約0.15マイクロメートル以下、約0.1マイクロメートル以下、又は約0.08マイクロメートル以下にすることができる。粗さの下限値については特に制限はなく、例えば、約0.01マイクロメートル以上、約0.03マイクロメートル以上、約0.05マイクロメートル以上、又は約0.07マイクロメートル以上にすることができる。このような粗さを呈する支持体を使用すると、金属顔料粒子が、支持体表面において略均一に配向しやすくなり、その結果、良好な金属光沢を得ることができる。
【0116】
本開示の製造方法で調製したメタリック層の表面は、支持体の平滑面が転写される結果、メタリック層の表面も、典型的には、上記の粗さ(Sa)を同様に呈し得る。メタリック層の表面粗さも上記と同様にして測定及び算出することができる。
【0117】
本開示の一実施態様によれば、上述した装飾用積層体を支持部材に接着した物品が提供される。かかる物品としては、例えば、装飾用積層体をポリカーボネート板等の支持部材に貼り合わせた成形加工前の略平坦な物品、若しくはこのような略平坦な物品をさらに成形加工して得られる三次元形状を有する物品、又は、曲面等の形状を有する支持部材に対して装飾用積層体を貼り合わせて得られる三次元形状を有する物品などを挙げることができる。本開示において「三次元形状」とは、典型的には、二次元形状(X軸、Y軸だけの平面形状)に対し、Z軸を加えた立体形状を意図する。
【0118】
三次元形状を有する物品は、生産性等の観点から、上述した装飾用積層体を、三次元形状を有する支持部材に適用することによって製造することが好ましい。この支持部材への装飾用積層体の適用は、精度の高い物品を得る観点から、真空成型又は真空圧空成形によって実施することが好ましい。本開示の装飾用積層体は、延伸を伴う真空成型用又は真空圧空成型用として使用することができる。なかでも、金属顔料粒子、バインダー前駆体及びシランカップリング剤を含むメタリックコーティング組成物を用いて調製したメタリック層を備える装飾用積層体は、金属顔料粒子間の密着性に優れ、延伸後においても優れた金属光沢性を維持することができるため、真空成型用又は真空圧空成型用としてより好適に使用することができる。
【0119】
真空成型法及び真空圧空成型法では、装飾用積層体は一般に、加熱及び真空に晒される。加熱温度は一般に約50℃以上、約80℃以上、約100℃以上、約120℃以上、又は約130℃以上とすることができ、約180℃以下、約170℃以下、又は約160℃以下とすることができる。減圧雰囲気の真空度は、大気圧を1atmとして、約0.10atm以下、約0.05atm以下、又は約0.01atm以下とすることができる。真空度の下限値については特に制限はなく、例えば、約0.0001atm以上、約0.0005atm以上、約0.001atm以上、又は約0.005atm以上とすることができる。真空圧空成型法では、装飾用積層体はさらに圧力に晒される。かかる圧力としては、例えば、大気圧を1atmとして、約3atm超、約4atm以上、又は約5atm以上とすることができる。圧力の上限値としては特に制限はないが、例えば、約20atm以下、約15atm以下、又は約10atm以下とすることができる。
【0120】
成形後の装飾用積層体の最大面積伸び率は、約0%以上、約5%以上、約10%以上、約30%以上、約50%以上、約100%以上、約200%以上、又は約300%以上、約1,000%以下、約700%以下、約500%以下、又は約450%以下となり得る。
【0121】
面積伸び率は、面積伸び率(%)=(B-A)×100/A(A:装飾用積層体のある部分の成形前の面積、B:装飾用積層体のAに対応する部分の成形後の面積)で定義される。例えば、装飾用積層体のある部分の面積が成形前に100cm2であって、その部分が成形後に支持部材の表面で250cm2となった場合は150%である。最大面積伸び率は、物品表面全ての装飾用積層体のなかで最も高い面積伸び率の箇所の値をいう。
【0122】
例えば、3次元形状を有する支持部材に平らな装飾用積層体を真空成型法により貼り付けると、例えば最初にフィルムが支持部材に当たる部分はほとんど延伸されず面積伸び率はほぼ0%であり、最後に貼り付けられる端部では大きく延伸されて面積伸び率が200%以上になる。このように、貼り付けられる場所によって装飾用積層体の面積伸び率は大きく異なる。フィルムが最も大きく延伸された部分で、支持部材に対する未追従又はフィルムの破れといった不具合が起きるか否かが成形の合否を決めることになる。したがって、物品全体の平均面積伸び率ではなく、最も大きく延伸された部分の面積伸び率、すなわち最大面積伸び率が、最終的に得られる物品の合否の実質的な指標となる。
【0123】
最大面積伸び率は、例えば成形前の装飾用積層体の表面全体に1mm四方のマス目を印刷しておき、成形後にその面積変化を測定する、あるいは成形前後の装飾用積層体の厚さを測定することにより確認できる。
【0124】
支持部材の材料としては特に制限はなく、例えば、ウレタン結合を有する樹脂(例えばポリウレタン樹脂)、ポリオレフィン樹脂(例えばポリエチレン及びポリプロピレン)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET-G)、(メタ)アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート樹脂)、ポリカーボネート樹脂、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0125】
支持部材は、目的とする外観を提供するために、全体又は部分的に可視域において、透明、半透明、又は不透明であってもよい。
【0126】
支持部材の厚さとしては特に制限はなく、例えば、約0.2mm以上、約0.5mm以上、約1.0mm以上、又は約1.5mm以上とすることができ、約3.0mm以下、約2.5mm以下、又は約2.0mm以下とすることができる。
【0127】
本開示の装飾用積層体を適用した物品は、種々の用途で使用することができる。このような用途として、例えば、看板(例えば内照式看板及び外照式看板);標識(例えば内照式標識及び外照式標識);各種の内装品又は外装品、例えば、自動車、鉄道、航空機、及び船などの乗物の内装品又は外装品(例えば、ルーフ部材、ピラー部材、ドアトリム部材、インストルメントパネル部材、ボンネット等のフロント部材、バンパー部材、フェンダー部材、サイドシル部材、及びインテリアパネル部材);建築部材(例えばドア);パソコン、スマートフォン、携帯電話、冷蔵庫、及びエアコンなどの電化製品;文具;家具;机;缶等の各種容器などが挙げられる。なかでも、本開示の装飾用積層体を適用した物品は、乗物の内装品又は外装品に好適に使用することができる。
【実施例0128】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
【0129】
本実施例で使用した商品などを以下の表1に示す。
【0130】
【0131】
《試験例1》
試験例1では、略平滑な表面を有する支持体の使用の有無に伴うメタリック層の金属光沢性について評価を行った。
【0132】
(メタリックコーティング組成物1の調製)
金属顔料粒子であるトーヤルシャイン(商標)TS-408PMを20質量部及びMEKを80質量部、均一に混合してメタリックコーティング組成物1を調製した。
【0133】
(メタリックコーティング組成物2の調製)
金属顔料粒子であるトーヤルシャイン(商標)TS-710PMを20質量部及びMEKを80質量部、均一に混合してメタリックコーティング組成物2を調製した。
【0134】
(メタリックコーティング組成物3の調製)
金属顔料粒子であるトーヤルシャイン(商標)EMRS-710を20質量部及びMEKを80質量部、均一に混合してメタリックコーティング組成物3を調製した。
【0135】
(接着剤1の調製)
ブチルアクリレート(BA)94質量部、及びアクリル酸(AA)6質量部を、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部の混合溶液に溶解させて、重合開始剤としてアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名V-65)0.2質量部を加えた後、窒素雰囲気下50℃で24時間反応させ、アクリル樹脂1のトルエン/酢酸エチル混合溶液(固形分33%)を作製した。アクリル樹脂1の重量平均分子量は760,000、ガラス転移温度(Tg)は-20℃であった。
【0136】
メチルメタクリレート(MMA)60質量部、n-ブチルメタアクリレート(BMA)34質量部、及びジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)6質量部を酢酸エチル150質量部に溶解させて、重合開始剤としてジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、商品名V-601)0.6質量部を加えた後、窒素雰囲気下65℃で24時間反応させ、アクリル樹脂2の酢酸エチル溶液(固形分39%)を作製した。アクリル樹脂2の重量平均分子量は68,000、ガラス転移温度(Tg)は104℃であった。
【0137】
アクリル樹脂1を49.16質量部、アクリル樹脂2を17.85質量部、SONGNOX(商標)1010を0.23質量部、Ti-Pure(商標)R-960を1.08質量部、E-5XMを0.46質量部、及びMIBKを31.22質量部、均一に混合して白色の接着剤1を調製した。
【0138】
(接着剤2の調製)
Desmocoll(商標)530を16質量部及びMEKを84質量部、均一に混合して白色の接着剤2を調製した。
【0139】
(接着剤3の調製)
感圧接着剤1を75.05質量部、架橋剤を0.94質量部、アクリル樹脂2を0.41質量部、Ti-Pure(商標)R-960を0.83質量部、MIBKを0.26質量部、及びMEKを22.51質量部、均一に混合して白色の接着剤3を調製した。
【0140】
(実施例1)
剥離ライナー1の略平滑面に、No.8のメイヤーバーを用いてメイヤーバーコーターで、メタリックコーティング組成物1をコーティングした後、約100℃のオーブンで約1分間乾燥して約0.4マイクロメートル厚のメタリック層を備える積層体を作製した。
【0141】
別の剥離ライナー1に接着剤1をコーティングした後、約80℃のオーブンで約3分間及び約120℃のオーブンで約5分間乾燥して約40マイクロメートル厚の接着剤層を調製し、次いで、ヒートラミネート法によってこの接着剤層に剥離ライナー2を積層して接着剤転写フィルムを作製した。
【0142】
接着剤転写フィルムのセパレーターを除去した後、ヒートラミネート法によって接着剤層を介して接着剤転写フィルムを積層体のメタリック層に対して貼り合わせた。続いて、メタリック層側の剥離ライナー1を除去して実施例1の装飾用積層体を得た。
【0143】
(実施例2)
実施例1と同様にしてメタリック層を備える積層体を作製し、このメタリック層に対して接着剤2をコーティングした後、約80℃のオーブンで約3分間及び約120℃のオーブンで約5分間乾燥して約40マイクロメートル厚の接着剤層を調製し、次いで、ヒートラミネート法によってこの接着剤層に剥離ライナー1を別途積層した。続いて、メタリック層側の剥離ライナー1を除去して実施例2の装飾用積層体を得た。
【0144】
(実施例3)
剥離ライナー2の略平滑面に、No.5のメイヤーバーを用いてメイヤーバーコーターで、メタリックコーティング組成物1をコーティングした後、約100℃のオーブンで約1分間乾燥して約0.2マイクロメートル厚のメタリック層を備える積層体を作製した。
【0145】
メタリック層に対して接着剤1をコーティングした後、約80℃のオーブンで約3分間及び約120℃のオーブンで約5分間乾燥して約40マイクロメートル厚の接着剤層を調製し、次いで、60℃の条件下、ヒートラミネート法によってこの接着剤層に剥離ライナー1を積層した。続いて、メタリック層側の剥離ライナー2を除去して実施例3の装飾用積層体を得た。
【0146】
(実施例4)
メタリックコーティング組成物2を用いてメタリック層を調製したこと以外は、実施例3と同様にして実施例4の装飾用積層体を得た。
【0147】
(実施例5)
メタリックコーティング組成物3を用いてメタリック層を調製したこと、及び接着剤3を用いて接着剤層を調製し、かつ接着剤層作製時の乾燥条件を約65℃のオーブンで約3分間及び約95℃のオーブンで約5分間に変更したこと以外は、実施例3と同様にして実施例5の装飾用積層体を得た。
【0148】
(比較例1)
剥離ライナー1の略平滑面に接着剤1をコーティングした後、約80℃のオーブンで約3分間及び約120℃のオーブンで約5分間乾燥して約40マイクロメートル厚の接着剤層を調製した。次いで、No.8のメイヤーバーを用いてメイヤーバーコーターで、メタリックコーティング組成物1を接着剤層にコーティングした後、約100℃のオーブンで約1分間乾燥して約0.4マイクロメートル厚のメタリック層を備える、比較例1の装飾用積層体を作製した。
【0149】
(比較例2)
比較例1と同様に接着剤層を作製し、次いで、No.5のメイヤーバーを用いてメイヤーバーコーターで、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むリーフパウダー(商標)49CJ-1120を接着剤層にコーティングした後、約100℃のオーブンで約1分間乾燥して約2.3マイクロメートル厚のメタリック層を備える、比較例2の装飾用積層体を作製した。
【0150】
〈物性評価試験1〉
各装飾用積層体の特性を、以下の試験を実施して評価した。その結果を表2に示す。
【0151】
(金属光沢性試験:鮮明度)
積層体のメタリック層に対して任意に3箇所を選択し、選択した各部分に対して鮮明度(Gd値)を測定し、その平均値を算出した。鮮明度の測定には、財団法人日本色彩研究所製の鮮明度光沢度計(PGD-IV)を用いた。
【0152】
(外観試験)
メタリック層の表面部を400ルクスの白色蛍光灯の下で自身の顔の反射を目視観察した。ここで、メタリック層と顔の距離は約50cm程度とした。金属光沢を呈し、顔の輪郭がはっきりする場合を「良」、良好な金属光沢を呈しているが、輪郭が不鮮明な場合を「可」、良好な金属光沢を呈しておらず、外観不良部が視認された場合を「不良」と評価した。ここで「外観不良部」とは、例えば、筋状に見える部分、ヘイズが上昇している部分などを意図し、金属光沢が明らかに低下している箇所を意図する。
【0153】
(表面粗さ試験:Sa値)
測定対象物(例えば支持体又は装飾用積層体)の測定対象面が上側になるように測定対象物を略平滑なアルミニウム板上に固定した。3D測定レーザー顕微鏡(LEXT(商標)OLS4100、オリンパス株式会社製)を用い、20倍の対物レンズでメタリック層の表面粗さ(Sa)を任意に5箇所測定し、その平均値を算出した。表2には、メタリック層の最表面の表面粗さを記載した。
【0154】
【0155】
《試験例2》
試験例2では、メタリック層におけるバインダー及びシランカップリング剤の影響について評価を行った。
【0156】
(メタリックコーティング組成物(MC1~12)の調製)
表3に示す配合割合で各成分を混合して、メタリックコーティング組成物(MC1~12)を各々調製した。ここで、表3に示す各成分における数値は、各成分の固形分に基づく含有量(質量%)を意味する。
【0157】
【0158】
(実施例6)
剥離ライナー2の略平滑面に、No.5のメイヤーバーを用いてメイヤーバーコーターで、メタリックコーティング組成物MC1をコーティングした後、約100℃のオーブンで約1分間乾燥して約0.2マイクロメートル厚のメタリック層を備える積層体を作製した。続いて、このメタリック層に対して接着剤1をコーティングした後、約80℃のオーブンで約3分間及び約120℃のオーブンで約5分間乾燥して約40マイクロメートル厚の接着剤層を調製し、次いで、ヒートラミネート法によってこの接着剤層に剥離ライナー1を積層した。続いて、メタリック層側の剥離ライナー2を除去してメタリック層及び接着剤層を備える積層体を得た。
【0159】
DX14S、S014G、約0.5マイクロメートル厚のフェノキシ樹脂からなる接合層、及び転写シートをこの順で積層して調製した多層フィルム(表面層)を、積層体のメタリック層と多層フィルムの転写シートが接するように配置した後、ヒートラミネート法によって貼り合わせて実施例6の装飾用積層体を得た。
【0160】
装飾用積層体から剥離ライナー1を除去し、かかる積層体を、真空圧空成型法(TOM成形法)を用いて成形温度145℃で支持部材(PC/ABS板(CK43黒色、テクノポリマー株式会社製、日本国東京都港区))の上に貼り合わせて物品を形成した。
【0161】
(実施例7~17)
表4に示すメタリックコーティング組成物に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、実施例7~17の物品を各々作製した。
【0162】
〈物性評価試験2〉
各物品の特性を、上記の鮮明度及び外観試験、並びに以下の密着性試験を実施して評価した。その結果を表4に示す。なお、本開示の装飾用積層体は、真空圧空成型で適用されるような加熱及び/又は圧力を伴わずに使用される場合もある。このような場合には、以下で実施されるような密着性の要件は必ずしも要しない。つまり、良好な金属光沢性が得られていれば、それは実施例に該当する。そして、さらに密着性にも優れていれば、それは加熱及び/又は圧力を伴う成型用として好適に使用し得るといえる。
【0163】
(密着性試験)
物品における装飾用積層体の密着性能を、JIS K 5600に従ってクロスカット法により、以下の基準で評価した。ここでは、グリッド間隔が2mmの10×10グリッドと、スコッチ(商標)フィラメントテープ 898(スリーエムジャパン株式会社製)を採用した。また、テープ剥離後のメタリック層の残存マス数は目視で確認した。
【0164】
【0165】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。