(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074376
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】脱細胞化組織の製造方法及び脱細胞化組織
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
A61L27/36 410
A61L27/36 400
A61L27/36 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187307
(22)【出願日】2021-11-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療分野研究成果展開事業 戦略的イノベーション創出推進プログラム」「細胞の三次元配置技術に基づいた小口径脱細胞血管等組織再生材料の創成」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】山岡 哲二
(72)【発明者】
【氏名】馬原 淳
(72)【発明者】
【氏名】森本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 浩気
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬史
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081AB13
4C081AB17
4C081CD34
4C081EA02
(57)【要約】
【課題】血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性に優れる脱細胞化組織を製造できる脱細胞化組織の製造方法、及び、脱細胞化組織を提供すること。
【解決手段】生体組織を、脱細胞処理する脱細胞処理工程と、脱細胞処理工程後の生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬した後、凍結乾燥する凍結乾燥工程と、凍結乾燥工程後の生体組織を、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後、減圧乾燥するアルコール処理工程とを有する、抗血栓性脱細胞化組織の製造方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を脱細胞処理する脱細胞処理工程と、
前記脱細胞処理工程後の前記生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬した後、凍結乾燥する凍結乾燥工程と、
前記凍結乾燥工程後の前記生体組織を、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後、減圧乾燥するアルコール処理工程とを有する、脱細胞化組織の製造方法。
【請求項2】
前記脱細胞処理は、加圧による脱細胞処理を含む、請求項1に記載の脱細胞化組織の製造方法。
【請求項3】
前記処理液の前記アルコールの濃度は、50質量%以上である、請求項1又は2に記載の脱細胞化組織の製造方法。
【請求項4】
前記生体組織は、血管又は弁である、請求項1~3のいずれか1項に記載の脱細胞化組織の製造方法。
【請求項5】
前記アルコール処理工程の後に、エタノールを含む処理液に浸漬した後、リン酸緩衝液に浸漬する浸漬工程を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の脱細胞化組織の製造方法。
【請求項6】
生体組織が、脱細胞処理と、凍結乾燥可能な有機溶媒への浸漬後の凍結乾燥と、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールへの浸漬後の減圧乾燥とを、この順に経ることにより作製される、脱細胞化組織。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工血管や人工弁等の循環器系医療デバイスに使用し得る脱細胞化組織の製造方法、及び当該製造方法により製造された脱細胞化組織に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の元々の組織に代わって生体内で機能し得る人工細胞外マトリックスの開発が進められている。人工細胞外マトリックスは、合成材料や生体組織から製造することができる。生体適合性が高く拒絶反応が低い人工細胞外マトリックスとして、生体組織を脱細胞化処理することにより細胞成分が除去された脱細胞化組織が好ましい。
このように生体組織から細胞成分が除去された脱細胞化組織は、欧米を中心に軟組織補綴、腱、乳房、歯科領域、尿道、心膜、眼科領域、骨、心臓組織の治療や、血管外科領域の医療デバイス(移植グラフト)として応用されている。
【0003】
ここで、人工血管や人工弁(生体弁)といった循環器系医療デバイスは、血液環境下で使用される。このため、循環器系医療デバイスの脱細胞化組織には、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性が必須である。
【0004】
しかし、脱細胞化組織は、血液凝固を促進するコラーゲンやエラスチンが主成分であるため、血液の接触により血小板粘着やタンパク質吸着を介して血液凝固反応を誘発し、血栓を形成する。このため、脱細胞化組織は、そのままでは人工血管や人工弁といった循環器系医療デバイスとしての使用は制限される。
この血液凝固反応を抑制することにより、血栓を形成し難い脱細胞化組織とすることが、脱細胞化組織からなる人工血管や人工弁といった循環器系医療デバイスの治療成績向上や、患者のQOL向上につながる。
【0005】
特許文献1では、内皮細胞接着性ペプチドであるアミノ酸配列(POG)n-X-(REDV)mを含むペプチドを、人工血管の内腔に固定化(表面修飾)することにより、血栓の形成を防いでいる。
【0006】
また、特許文献2では、抗血栓性であることを含む生体適合性を有する生物由来の移植用スキャフォールドの作製方法において、生体軟組織を凍結乾燥後、含まれるタンパク質を部分的に架橋固定化するため真空下100℃以上200℃以下の温度において加熱するステップと、部分的に架橋固定化した組織をエラスターゼと共にインキュベートし、選択的にエラスチンを除去するステップを含むことにより、移植用スキャフォールドの耐久性の向上と石灰化の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/065017号
【特許文献2】特許第5050197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、高価な合成ペプチドを用い、これを均ーにむらなくコーティングする必要がある。このため、特許文献1に記載される方法によらず、低コストで血栓の形成を防ぐ技術が求められている。
また、特許文献2の移植用スキャフォールドでは、スキャフォールドの表面で血小板粘着が生じ血栓が形成されるという問題がある。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性に優れる脱細胞化組織を製造できる脱細胞化組織の製造方法、及び、脱細胞化組織を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、生体組織を脱細胞処理する脱細胞処理工程と、脱細胞処理工程後の生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬した後、凍結乾燥する凍結乾燥工程と、凍結乾燥工程後の生体組織を、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後、減圧乾燥するアルコール処理工程とを有する製造方法により、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性に優れる脱細胞化組織が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下を提供する。
【0011】
(1) 生体組織を、脱細胞処理する脱細胞処理工程と、
前記脱細胞処理工程後の前記生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬した後、凍結乾燥する凍結乾燥工程と、
前記凍結乾燥工程後の前記生体組織を、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後、減圧乾燥するアルコール処理工程とを有する、脱細胞化組織の製造方法。
【0012】
(2) 前記脱細胞処理は、加圧による脱細胞処理を含む、(1)に記載の脱細胞化組織の製造方法。
【0013】
(3) 前記処理液の前記アルコールの濃度は、50質量%以上である、(1)又は(2)に記載の脱細胞化組織の製造方法。
【0014】
(4) 前記生体組織は、血管又は弁である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の脱細胞化組織の製造方法。
【0015】
(5) 前記アルコール処理工程の後に、エタノールを含む処理液に浸漬した後、リン酸緩衝液に浸漬する浸漬工程を有する、(1)~(4)のいずれか1つに記載の脱細胞化組織の製造方法。
【0016】
(6) 生体組織が、脱細胞処理と、凍結乾燥可能な有機溶媒への浸漬後の凍結乾燥と、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールへの浸漬後の減圧乾燥とを、この順に経ることにより作製される、脱細胞化組織。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性に優れる脱細胞化組織を製造できる脱細胞化組織の製造方法及び脱細胞化組織を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)の定量結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明する。
【0020】
≪脱細胞化組織の製造方法、及び、脱細胞化組織≫
脱細胞化組織の製造方法は、生体組織を、脱細胞処理する脱細胞処理工程と、脱細胞処理工程後の生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬した後、凍結乾燥する凍結乾燥工程と、凍結乾燥工程後の生体組織を、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後、減圧乾燥するアルコール処理工程とを有する。アルコール処理工程の後に、エタノールを含む処理液に浸漬した後、リン酸緩衝液に浸漬する、浸漬工程を有していてもよい。
以下、脱細胞化組織の製造方法の各工程について説明する。
【0021】
<脱細胞処理工程>
脱細胞処理工程では、生体組織を、脱細胞処理する。脱細胞処理により生体組織から細胞成分を除去する。細胞成分を除去することにより、移植後の異物反応を軽減させ、得られる脱細胞化組織の生体適合性を高くし拒絶反応を低くすることができる。
【0022】
生体組織としては、生体に由来する血管や弁が挙げられる。血管は、動脈であっても静脈であってもよいが、強度の観点から、動脈が好ましい。
生体組織として血管や弁を用いると、抗血栓性脱細胞化組織として、人工血管、人工弁(生体弁)や人工心筋パッチが製造できる。
生体組織は、外科的な手術によって生体から摘出して入手することが可能である。また、市販されている既に摘出されている生体組織を購入することによって入手することも可能である。
生体としては、走鳥類等の鳥類や、哺乳類等の非ヒト動物が挙げられる。ただし、生体は、ヒトであってもよい。
哺乳類としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、サル、ブタ、ウシやウマ等が挙げられる。
走鳥類としては、エミュー、キーウィ、ダチョウ、ヒクイドリや、レア等が挙げられる。
生体組織が血管である場合、上述した生体の中では、走鳥類が好ましい。走鳥類の首は一般的に長く、当該首に存在する頚動脈などの血管は、細く、長く、かつ、分岐が少ない。それ故に、走鳥類の血管を用いて人工血管を作製すれば、内腔の断面がより小さく、より長く、かつ、より分岐の少ない人工血管を実現することができる。また、走鳥類などは飼育が容易であるために、多量の生体組織を安定的に供給することもできる。
【0023】
生体組織の大きさや形状は、所望の脱細胞化組織に応じて適宜選択すればよい。
生体組織が血管の場合、内径は、例えば5mm以下であり、4mm以下や3mm以下でもよい。また、血管の内径は、例えば1mm以上である。
生体組織が血管の場合、その断面における内腔の面積は、例えばπ×22mm2以下であり、π×1.52mm2以下、π×12mm2以下、π×0.752mm2以下や、π×0.52mm2でもよい。なお、この場合には、血管の断面における内腔の形状は、真円に限らない。
生体組織が血管の場合、長さは、例えば、10cm以上であり、20cm以上、30cm以上、40cm以上、50cm以上、60cm以上、70cm以上や、80cm以上でもよい。
本実施形態の脱細胞化組織は血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性(例えば抗血栓性)に優れるため、生体組織として内径及び断面積の小さい血管や、長い血管を用い、内径及び断面積の小さい人工血管や、長い人工血管を形成してもよい。なお、本実施形態で製造される脱細胞化組織の内径、内腔の面積や長さ等は、用いた生体組織と実質的に同じである。
【0024】
脱細胞処理の方法は、特に限定されず、生体組織から細胞成分(細胞や細胞の構成成分)が除去さればよい。脱細胞処理としては、加圧による脱細胞処理、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、トリトンX-100(登録商標)、ソルビタン)による脱細胞処理や、高塩濃度の溶媒による脱細胞処理が挙げられる。加圧による脱細胞処理が好ましい。
【0025】
加圧による脱細胞処理の具体的な方法は、特に限定されず、生体組織から細胞成分(細胞や細胞の構成成分)が除去される程度に、生体組織に対して圧力を加えられる方法であればよく、周知の加圧装置を用いることができる。
【0026】
生体組織に対して加える圧力の大きさは特に限定されないが、例えば、200MPa以上1000MPa以下であることが好ましく、300MPa以上1000MPa以下であることがより好ましく、500MPa以上1000MPa以下であることがさらに好ましい。
【0027】
生体組織に対して圧力を加える具体的な方法は特に限定されないが、例えば、液体中の生体組織に対して圧力を加えればよい。
液体として、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、PBS(phosphate buffered saline)等を用いることができる。
【0028】
加圧温度は、特に限定されないが、例えば、生体組織の温度を25℃以上100℃以下に制御してもよい。
加圧時間は、特に限定されないが、例えば、5分以上20分以下である。
【0029】
上記加圧による脱細胞処理等の後、DNase処理を行ってもよい。
DNase処理により、残存している細胞や、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く破壊および除去することができる。
【0030】
DNase処理は、DNase(例えば、市販されている各種DNase)が機能し得る液体中に、DNase及び生体組織を加えることによって行うことができる。
液体として、例えば、PBS(phosphate buffered saline)や生理食塩水等に、必要に応じて、PenicillinやStreptomycin等の抗生物質や、MgCl2及び/又はCaCl2などの2価イオンの供給源を加えたDNase処理溶液を用いることができる。
【0031】
DNase処理溶液中のDNaseの濃度は、特に限定されないが、例えば、1U/mL以上1000U/mL以下であり、10U/mL以上500U/mL以下でもよく、40U/mL以上100U/mL以下でもよい。
【0032】
DNaseは、その活性を発現するために2価イオン(例えば、マグネシウムイオン及び/又はカルシウムイオン等)を必要とするので、DNase処理溶液はMgCl2及び/又はCaCl2等の2価イオンの供給源を含んでいることが好ましい。
【0033】
DNase処理溶液中のMgCl2及びCaCl2の濃度は、特に限定されず、用いるDNaseの特性に応じて適宜設定することができる。DNase処理溶液中のMgCl2及びCaCl2の濃度は、例えば、10mM以上50mM以下であり、20mM以上40mM以下でもよい。
【0034】
DNase処理の温度は、特に限定されないが、例えば、35℃以上40℃以下であると好ましい。
【0035】
DNase処理の処理時間は、特に限定されないが、例えば6日間以下であり、5日間以下であることが好ましく、4日間以下であることがより好ましく、3日間以下であることがさらに好ましい。DNase処理の処理時間は、例えば0.5日間以上であり、1日間以上でもよい。
【0036】
DNase処理の処理時間は、後述する洗浄処理の処理時間に応じて設定することもできる。例えば、DNase処理の処理時間と洗浄処理の処理時間との合計が、6日間以下であることが好ましい。
【0037】
DNase処理前の生体組織に残存している細胞成分(細胞や細胞の構成成分)の量を100(100%)とした場合、DNase処理で、当該量を、90(90%)以下にすることが好ましく、80(80%)以下、70(70%)以下、60(60%)以下、50(50%)以下、40(40%)以下、30(30%)以下、20(20%)以下、10(10%)以下、5(5%)以下や、1(1%)以下にすることがより好ましい。
【0038】
生体組織を、加圧による脱細胞処理等した後に、洗浄処理を行ってもよい。
洗浄処理により、残存している細胞や、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く除去することができる。
【0039】
洗浄処理は、洗浄液にて生体組織を洗浄することによって行うことができる。さらに具体的には、洗浄液中に生体組織を浸漬し、場合によってはさらに振とうすることによって、生体組織を洗浄すればよい。
【0040】
洗浄液として、例えば、PBSや、生理食塩水を用いることができる。
洗浄液は、PenicillinやStreptomycin等の抗生物質を含んでいてもよい。
また、洗浄液は、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)を含んでいることが好ましい。EDTAによって2価イオン(例えば、マグネシウムイオンなど)をキレート化することができ、これによって、DNase(例えば、生体組織に由来するDNaseや、DNase処理に用いたDNase処理)等の酵素の活性を抑制することができる。DNase等の酵素の活性を抑制することにより、より強度の高い脱細胞化組織を実現することができる。
【0041】
洗浄液中のEDTAの濃度は、特に限定されないが、例えば1mg/L以上1g/L以下であり、10mg/L以上1g/L以下でもよく、100mg/L以上500mg/L以下でもよい。
【0042】
洗浄処理の処理時間は特に限定されないが、例えば6日間以下であり、5日間以下であることが好ましく、4日間以下であることがより好ましく、3日間以下であることがさらに好ましい。なお、洗浄処理の処理時間は、例えば0.5日間以上であり、1日間以上でもよい。
【0043】
洗浄処理の温度は特に限定されないが、例えば4℃以上37℃以下である。
【0044】
洗浄処理を行うタイミングは特に限定されず、DNase処理の前に行ってもよいが、DNase処理の後に行われることが好ましい。
【0045】
DNase処理及び洗浄処理前の生体組織に残存している細胞成分(細胞や細胞の構成成分)の量を100(100%)とした場合、DNase処理で、当該量を、90(90%)以下にすることが好ましく、80(80%)以下、70(70%)以下、60(60%)以下、50(50%)以下、40(40%)以下、30(30%)以下、20(20%)以下、10(10%)以下、5(5%)以下や、1(1%)以下にすることがより好ましい。
【0046】
<凍結乾燥工程>
凍結乾燥工程では、脱細胞処理工程後の生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬した後、凍結乾燥する。
【0047】
脱細胞処理工程後の生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬する前に、脱水することが好ましい。例えば、生体組織を、エタノールを含む溶液に浸漬することにより、脱水する。
【0048】
エタノールを含む溶液は、エタノールの他に、水を含んでいてもよい。
【0049】
生体組織のエタノールを含む溶液への浸漬は、エタノール濃度が低い(例えば50質量%)のものへの浸漬の後、エタノール濃度が高い(例えば実質的に100質量%)のものへの浸漬をすることが好ましい。これにより、生体組織の水分を、エタノールに十分置換することができる。エタノール濃度が実質的に100質量%とは、例えば、エタノール濃度が98.0質量%以上であり、好ましくはエタノール濃度が99.0質量%以上であり、より好ましくはエタノール濃度が99.5質量%以上である。
【0050】
生体組織のエタノールを含む溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、各濃度の、エタノールを含む溶液それぞれに対して、10分間以上30分間以下であることが好ましい。
【0051】
生体組織のエタノールを含む溶液への浸漬温度は、特に限定されないが、室温(例えば10℃以上35℃以下)であることが好ましい。
【0052】
好ましくは脱水した、脱細胞処理工程後の生体組織を浸漬する凍結乾燥可能な有機溶媒としては、tert-ブチルアルコール、1,4-ジオキサン、炭酸ジメチル、ベンゼン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、2-キシレン(o-キシレン)、4-キシレン(p-キシレン)、tert-アミルアルコールや、これらの混合溶媒が挙げられる。凍結乾燥可能な有機溶媒として、tert-ブチルアルコールのみを用いることが好ましい。
【0053】
脱細胞処理工程後の生体組織を浸漬するtert-ブチルアルコールは、濃度が実質的に100質量%のtert-ブチルアルコールが好ましい。tert-ブチルアルコール濃度が実質的に100質量%とは、例えば、tert-ブチルアルコール濃度が98.0質量%以上であり、好ましくはtert-ブチルアルコール濃度が99.0質量%以上である。濃度が実質的に100質量%のtert-ブチルアルコールに浸漬し、冷却(例えば5℃以下)してtert-ブチルアルコールを凍結することにより、脱細胞処理工程後の生体組織を、十分凍結乾燥することができる。
【0054】
生体組織の凍結乾燥可能な有機溶媒への浸漬時間は、特に限定されないが、10分間以上30分間以下であることが好ましい。
【0055】
生体組織の凍結乾燥可能な有機溶媒への浸漬温度は、特に限定されないが、室温(例えば10℃以上35℃以下、好ましくは25℃以上)であることが好ましい。
【0056】
凍結乾燥は、減圧下で行う。凍結乾燥の圧力は、例えば、50Pa以下であり、30Pa以下が好ましい。
【0057】
凍結乾燥時間は、生体組織が十分に乾燥する時間であればよく、特に限定されないが例えば、5時間以上20時間以下であり、8時間以上15時間以下が好ましい。
【0058】
<アルコール処理工程>
アルコール処理工程では、凍結乾燥工程後の生体組織を、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後、減圧乾燥する。
【0059】
アルコールを含む処理液が含む炭素原子数2以上4以下のアルコールとしては、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノールや、tert-ブタノールが挙げられる。アルコールを含む処理液は、エタノールを含むことが好ましい。
【0060】
アルコールを含む処理液のアルコールの濃度は、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性に特に優れる観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%が特に好ましい。アルコール濃度が実質的に100質量%とは、例えば、アルコール濃度が98.0質量%以上であり、好ましくはアルコール濃度が99.0質量%以上であり、より好ましくはアルコール濃度が99.5質量%以上である。
【0061】
生体組織のアルコールを含む処理液への浸漬時間は、特に限定されないが、3分間以上30分間以下が好ましい。
【0062】
生体組織のアルコールを含む処理液への浸漬温度は、特に限定されないが、室温(例えば10℃以上35℃以下)が好ましい。
【0063】
アルコールを含む処理液へ浸漬することで、凍結乾燥後の生体組織内に処理液中のアルコールを浸透させた後に、減圧乾燥する。
減圧乾燥の圧力は、例えば、50Pa以下であり、30Pa以下が好ましい。
【0064】
減圧乾燥時間は、生体組織が十分に乾燥する時間であればよく、特に限定されないが例えば、3分以上24時間以下であり、30分以上12時間以下が好ましい。
【0065】
減圧乾燥温度は、特に限定されないが、室温(例えば10℃以上35℃以下)が好ましい。
【0066】
このように、生体組織が、脱細胞処理と、凍結乾燥可能な有機溶媒への浸漬後の凍結乾燥と、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールへの浸漬後の減圧乾燥とを、この順に経ることにより作製される、脱細胞化組織は、後述する実施例に示されるように、血液凝固を誘導しにくく、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性に優れる。
【0067】
生体適合性が高く拒絶反応が低い人工組織とするために、生体組織を脱細胞処理するが、これにより血液凝固反応が誘発され血栓が形成されやすくなる。これは、脱細胞処理により生体組織のコラーゲンが露出し、露出したコラーゲンに血小板が粘着するためである。
しかしながら、本実施形態の製造方法で製造される脱細胞化組織は、脱細胞処理後に、凍結乾燥した後、炭素原子数2以上4以下のアルコールへの浸漬及び減圧乾燥を行っているため、血小板の粘着が抑制され、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性を向上できる。
アルコール処理工程において、炭素原子数2以上4以下のアルコール及び減圧乾燥により、凍結乾燥後の生体組織が変性(例えば、コラーゲン三重らせん構造の崩壊等)し、その結果、コラーゲンへの血小板の粘着が抑制されると推測される。
【0068】
上記製造方法により得られた脱細胞化組織は、後述する実施例の<血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)の定量>に示すように、ミニブタから動脈血液を採取して調製した濃厚血小板溶液(PRP(多血小板血漿)溶液、8.0×107個/ml)を、エタノール及びリン酸緩衝液で水和した脱細胞化組織(グラフト)内腔面に0.25mL滴下して、37℃で1時間静置し、生理食塩水で洗浄後、ローダミン染色して、付着した血小板を、共焦点レーザー顕微鏡で3箇所観察した時の、各観察箇所における付着した血小板の面積の平均値(血小板粘着範囲)が、例えば、7万μm2/mm2以下であり、6万μm2/mm2以下、5万μm2/mm2以下、4万μm2/mm2以下、3万μm2/mm2以下や2万5千μm2/mm2以下にすることもできる。なお、この「血小板粘着範囲」は、その単位から分かるように、1mm2あたりの、付着した血小板の面積である。
【0069】
また、上記製造方法は、脱細胞処理工程後の生体組織を、凍結乾燥可能な有機溶媒に浸漬した後、凍結乾燥し、炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後、減圧乾燥するという簡便な方法である。このため、容易に脱細胞化組織を製造することができる。
【0070】
また、上記製造方法によれば、高価な合成ペプチド等の化学処理剤を用いなくてもよい。このため、高価な化学処理剤や、当該化学的処理剤の洗浄工程は不要である。また、化学処理剤の生体組織への均ーなコーティングも不要である。
【0071】
なお、特許文献2には、生体組織を凍結乾燥する工程が記載されている。しかし、特許文献2の凍結乾燥は、コラーゲンを脱水縮合して架橋する加熱の前処理として実施されている。特許文献2では、凍結乾燥後に炭素原子数2以上4以下のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコールを含む処理液に浸漬した後減圧乾燥をすることにより、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性(例えば、抗血栓性)を向上させることについては、考慮されていない。
【0072】
また、アルコール処理工程後の脱細胞化組織は、乾燥された状態である。このため、軽量で、保存安定性に優れた形態(乾燥状態)で、脱細胞化組織を提供することができ、製品の流通が容易でかつ治療成績に優れた循環器系医療デバイス、例えば人工血管や人工弁グラフトの実現化を可能にし、医療産業への波及効果は極めて大きい。
【0073】
<浸漬工程>
本実施形態の脱細胞化組織の製造方法は、アルコール処理工程の後に、アルコール処理工程を経た脱細胞化組織を、エタノールを含む処理液に浸漬した後、さらにリン酸緩衝液に浸漬する、浸漬工程を有していてもよい。
この浸漬工程により、アルコール処理工程の後の脱細胞化組織を水和して、移植に使用できる状態にする。
なお、この浸漬工程は、任意の工程である。
【0074】
浸漬工程で用いるエタノールを含む処理液は、エタノールの他に、水を含んでいてもよい。
エタノールを含む処理液は、エタノール濃度が高い(例えば実質的に100質量%)処理液への浸漬の後、エタノール濃度が低い(例えば50質量%)処理液へ浸漬することが好ましい。これにより、後段のリン酸緩衝液への浸漬を経て、十分水和することができる。
浸漬工程で用いるリン酸緩衝液のpHは、6.0~8.0が好ましく、6.8~7.6がより好ましい。
【0075】
リン酸緩衝液への浸漬後、必要に応じて生理食塩水やヘパリン生食等の、リン酸緩衝液以外の移植に適した溶液に浸漬してもよい。
【0076】
≪脱細胞化組織の使用方法≫
上記製造方法により得られた脱細胞化組織は、血液凝固反応を誘発し難い性能等の血液適合性に優れるため、ヒト等の動物に移植される移植グラフト、例えば、人工血管や人工弁といった循環器系医療デバイスとして、有用である。
移植は、生体組織の供給源の生体(例えば走鳥類)とは異なる生体(例えば哺乳類)に対して行ってもよく、生体組織の供給源の生体と同じ種の生体に対して行ってもよい。
【0077】
アルコール処理工程の後に浸漬工程を行わずに製造された脱細胞化組織は、脱細胞化組織の使用時に、浸漬工程と同様の処理を行うことにより再水和し、移植に適した溶液に脱細胞化組織を浸漬して使用する。
【0078】
アルコール処理工程の後に浸漬工程を行わずに製造された脱細胞化組織は、アルコール処理工程の後に浸漬工程を行わずに製造された脱細胞化組織単独で提供してもよいが、アルコール処理工程の後に浸漬工程を行わずに製造された脱細胞化組織と、浸漬工程で用いるエタノールを含む処理液と、浸漬工程で用いるリン酸緩衝液とを含む脱細胞化組織の移植用キットとして、提供することもできる。
【0079】
アルコール処理工程の後に浸漬工程を行って製造された脱細胞化組織は、そのまま移植に供することができる。
【実施例0080】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
<グラフトの作製>
(比較例1)
ダチョウの首から採取した頸動脈(内径:2~4mm、断面における内腔の面積:3.14~12.56mm2、長さ:80cm)を生理食塩水で洗浄した後、ポリ袋に生理食塩水でパックした。得られたパックに対して、コベルコ社製の超高圧処理装置を用いて980MPa、30℃、10分間の条件で加圧脱細胞処理を施した。
加圧脱細胞処理後の血管(すなわち、頸動脈を構成する細胞外マトリックス)を、DNase 40U/ml、Penicillin 100units/ml、Streptomycin 0.1mg/ml、MgCl2 20mM、を含む生理食塩水に、37℃、72時間浸漬させて、細胞外マトリックスに残存している細胞構成成分を分解した。
次に、血管を、EDTA 500mg/ml、Penicillin 100units/ml、Streptomycin 0.1mg/mlを含む生理食塩水液ですすいだ。すすぎに用いた生理食塩水液と同組成の生理食塩水液に37℃、72時間浸漬することにより、比較例1のグラフト(脱細胞グラフト)を作製した。
【0082】
(比較例2)
比較例1と同様にして作製した脱細胞グラフトを、50質量%エタノール水溶液、65質量%エタノール水溶液、80質量%エタノール水溶液、90質量%エタノール水溶液、95質量%エタノール水溶液、及び実質的に100質量%のエタノールに、この順で、室温(25℃)、20分間ずつ浸漬して、脱細胞グラフトを脱水した。なお、実質的に100質量%のエタノールとして、エタノール(富士フィルム和光純薬製、99.5%)を用い、これを水で希釈して、50質量%エタノール水溶液、65質量%エタノール水溶液、80質量%エタノール水溶液、90質量%エタノール水溶液、95質量%エタノール水溶液をそれぞれ調製した。
次に、脱細胞グラフトを、濃度が実質的に100質量%のtert-ブタノールに室温で20分間浸漬し、次いで新鮮な濃度が実質的に100質量%のtert-ブタノールに交換して、さらに20分間浸漬した後、4℃に冷却してtert-プタノールを凍結させた。濃度が実質的に100質量%のtert-ブタノールとして、t-ブタノール(富士フィルム和光純薬製、99.0%)を用いた。
その後、20Paの真空で一晩(12時間)の凍結乾燥を施すことにより、比較例2のグラフト(凍結乾燥グラフト)を作製した。
作製した凍結乾燥グラフトは、後述の<血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)の定量>において、エタノールへ浸漬した後、リン酸緩衝液(pH7.2~7.4)で再水和したものを用いた。このエタノールへの浸漬では、実質的に100質量%のエタノール、95質量%エタノール水溶液、90質量%エタノール水溶液、80質量%エタノール水溶液、65質量%エタノール水溶液、及び50質量%エタノール水溶液に、この順で、室温(25℃)、20分間ずつ浸漬した。なお、実質的に100質量%のエタノールとして、エタノール(富士フィルム和光純薬製、99.5%)を用い、これを水で希釈して、50質量%エタノール水溶液、65質量%エタノール水溶液、80質量%エタノール水溶液、90質量%エタノール水溶液、95質量%エタノール水溶液をそれぞれ調製した。
【0083】
(比較例3)
ダチョウの首から採取した頸動脈を生理食塩水で洗浄したものを、比較例3のグラフトとした。
【0084】
(実施例1)
比較例2と同様にして作製した凍結乾燥グラフトの内腔からエタノール水溶液を浸み込ませ、最終的に凍結乾燥グラフト全体をエタノール水溶液に浸漬させた。凍結乾燥グラフト全体のエタノール水溶液への浸漬時間は、20分間とし、浸漬温度(エタノール水溶液の温度)は、25℃とした。この際のエタノール水溶液の濃度は、75質量%とした。エタノール水溶液は、エタノール(富士フィルム和光純薬製、99.5%)を水で希釈して、調製した。
エタノール水溶液に浸漬することによりエタノール水溶液を浸透させたグラフトを、20Paの真空で12時間、減圧乾燥を施すことにより、実施例1のグラフト(エタノール処理グラフト)を作製した。
作製したエタノール処理グラフトは、後述の<血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)の定量>において、比較例2と同様に、エタノールへ浸漬した後リン酸緩衝液で再水和したものを用いた。
【0085】
(実施例2)
エタノール水溶液を、実質的に水を含まないエタノール(富士フィルム和光純薬製、99.5%。実質的に100質量%のエタノール。)に変更したことの他は、実施例1と同様にして、エタノール処理グラフト(実施例2のグラフト)を作製した。
また、作製したエタノール処理グラフトは、後述の<血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)の定量>において、実施例1と同様に、エタノールへ浸漬した後リン酸緩衝液で再水和したものを用いた。
【0086】
<血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)の定量>
比較例1~3及び実施例1~2のグラフトヘの血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)を測定した。具体的には、まず、ミニブタから動脈血液を採取して濃厚血小板溶液(PRP(多血小板血漿)溶液、8.0×10
7個/ml)を調製した。次に、濃厚血小板溶液を、比較例1~2のグラフト、リン酸緩衝液で再水和した比較例2及び実施例1~2のグラフト内腔面(直径8mmの円盤状に切断したもの(面積:50.24mm
2))に0.25mL滴下して、37℃で1時間静置した。生理食塩水で洗浄後、ローダミン染色して、付着した血小板を、共焦点レーザー顕微鏡(倍率:10倍)で観察した。3箇所(観察視野:1.25mm×1.25mm)観察し、各観察箇所における付着した血小板の面積を測定し、3箇所の平均値を求め、これを血小板粘着範囲とした。結果を
図1に示す。
図1の縦軸の単位は、μm
2/mm
2である。なお、
図1に標準偏差も記載した。
【0087】
図1に示すように、脱細胞処理と、凍結乾燥可能な有機溶媒への浸漬後の凍結乾燥と、炭素原子数2以上4以下のアルコールを含む処理液への浸漬後の減圧乾燥とを、この順に経て作製された実施例1~2のグラフトは、比較例1~3のグラフトよりも、血小板粘着挙動(血小板粘着範囲)が極めて少ないため、抗凝固効果が高く血液凝固反応を誘発し難い性能に優れていると言える。