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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074423
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】化粧用ナノファイバー吹き付け装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20230522BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20230522BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20230522BHJP
【FI】
A45D34/04 550
A61Q19/00
A61K8/72
D04H1/4382
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187388
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】512057530
【氏名又は名称】株式会社タマル製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】田丸 勝
(72)【発明者】
【氏名】川久保 博
(72)【発明者】
【氏名】田丸 裕
【テーマコード(参考)】
4C083
4L047
【Fターム(参考)】
4C083AD011
4C083CC07
4C083DD08
4C083DD47
4L047AB08
4L047CC03
4L047EA01
(57)【要約】
【課題】皮膚の表面に化粧を施す化粧用ナノファイバー吹き付け装置において、皮膚の表面にナノファイバー積層体を均一に形成できるようにする。
【解決手段】化粧用素材を含有した高分子材料Tを収容する材料収容部3、圧縮空気Hを放出する圧縮空気供給源4、高分子材料Tを吐出する吐出孔5と圧縮空気Hによる噴射気流Sを発生する噴射孔6を備える吹き付け部2を有し、吹き付け部2の噴射孔6で発生する噴射気流Sにより、吐出孔5から高分子材料Tを引き抜いて噴射し、高分子材料Tを延伸して水分を気化しながら人の皮膚に吹き付け、皮膚の表面にナノファイバー積層体を形成する化粧用ナノファイバー吹き付け装置1であって、吹き付け部2の噴射孔6で発生する噴射気流Sは、吐出孔5の周囲において周方向に等間隔で6個から9個であり、発生する噴射気流Sを吐出孔5の中心軸に向かって中心軸に対して15度から30度の角度にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧用素材を含有した高分子材料を収容する材料収容部と、圧縮空気を放出する圧縮空気供給源と、高分子材料を吐出する吐出孔と圧縮空気による噴射気流を発生する噴射孔を備える吹き付け部を有し、吹き付け部の噴射孔で発生する噴射気流により、吐出孔から吐出する高分子材料を引き抜いて噴射し、噴射する高分子材料を延伸して水分を気化しながら人の皮膚に吹き付け、人の皮膚の表面にナノファイバー積層体を形成する化粧用ナノファイバー吹き付け装置であって、
吹き付け部の噴射孔で発生する噴射気流は、吐出孔の周囲において周方向に等間隔で6個から9個であり、発生する噴射気流を吐出孔の中心軸に向かって中心軸に対して15度から30度の角度にすることを特徴とする化粧用ナノファイバー吹き付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載された化粧用ナノファイバー吹き付け装置において、
圧縮空気供給源は、缶に圧縮空気を封入したエアダスター缶であることを特徴とする化粧用ナノファイバー吹き付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用素材を含有する高分子材料を噴射して人の皮膚に吹き付け、皮膚の表面にナノファイバー積層体を形成することにより、人の皮膚に化粧を施す化粧用ナノファイバー吹き付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバーは、一般的に、直径が1マイクロメートル(=1000nm)以下の太さの繊維と定義されている。ナノファイバーの製造法としては、ESD(Electro-Spray Deposition)法、あるいはエレクトロ・スピニング法と呼ばれる技法が注目され、その技術が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
近時、このナノファイバーの技術を利用して製造される化粧用品が知られている。例えば、特許文献2には、エレクトロ・スピニング法によって製造される化粧用のナノファイバーシートが開示されている。このナノファイバーシートは、化粧用の素材を基材シート上に積層したもので、その使用例としては、例えば、顔などの皮膚の表面に化粧用のナノファイバーシートを貼り付け、所定時間が経過した後、貼り付けたナノファイバーシートを剥がして取り除くことで、皮膚の表面にナノファイバーを転写して化粧を施すことができる。
【0004】
ところが、化粧用のナノファイバーシートを使用して化粧を施す場合、化粧用のナノファイバーシートが予め決まった大きさであるため、そのままでは顔などの皮膚の表面の必要な部分に、必要な大きさのものを貼り付けることができない。使用する際には、貼り付ける部分に合わせて、ナノファイバーシートを切って、その大きさや形を整えてから、貼り付けるようにしている。そのため、化粧に手間がかかり使用が面倒である。
【0005】
この問題に対しては、化粧用のナノファイバーシートを皮膚の必要な部分に貼り付けるのに代えて、皮膚の必要な部分に化粧用素材を含有する高分子材料を直接吹き付けることが考えられる。こうすることで、ナノファイバーシートを使用する場合のような化粧に手間がかかり面倒であるという問題は解決できる。
【0006】
高分子材料を直接吹き付けるためには化粧用ナノファイバー吹き付け装置が必要であるが、化粧用ナノファイバー吹き付け装置は、具体的には、化粧用素材を含有した高分子材料を収容する材料収容部、圧縮空気を放出する圧縮空気供給源、高分子材料を吐出する吐出孔と圧縮空気による噴射気流を発生する噴射孔を備える吹き付け部を有し、噴射孔の噴射気流により、吐出孔から吐出する高分子材料を引き抜いて噴射し、人の皮膚の表面に吹き付けてナノファイバー積層体を形成する。
【0007】
しかしながら、この化粧用ナノファイバー吹き付け装置では、圧縮空気の噴射気流を用いて化粧用素材を含有した高分子材料を噴射するとき、噴射気流に乱れが生じたり、あるいは噴射気流が流れたり流れなかったりという噴射気流の流れのムラが起こったりして、化粧を施す皮膚の表面において、形成するナノファイバー積層体が均一にできず、ムラができる等の問題が起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-127234号公報
【特許文献2】特許第6137857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、圧縮空気の噴射気流を用いて化粧用素材を含有する高分子材料を噴射して、皮膚の表面にナノファイバー積層体を形成して化粧を施す化粧用ナノファイバー吹き付け装置において、皮膚の表面にナノファイバー積層体を均一に形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、化粧用素材を含有した高分子材料を収容する材料収容部と、圧縮空気を放出する圧縮空気供給源と、高分子材料を吐出する吐出孔と圧縮空気による噴射気流を発生する噴射孔を備える吹き付け部を有し、吹き付け部の噴射孔で発生する噴射気流により、吐出孔から吐出する高分子材料を引き抜いて噴射し、噴射する高分子材料を延伸して水分を気化しながら人の皮膚に吹き付け、人の皮膚の表面にナノファイバー積層体を形成する化粧用ナノファイバー吹き付け装置であって、吹き付け部の噴射孔で発生する噴射気流は、吐出孔の周囲において周方向に等間隔で6個から9個であり、発生する噴射気流を吐出孔の中心軸に向かって中心軸に対して15度から30度の角度にする化粧用ナノファイバー吹き付け装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、皮膚の表面に化粧用素材を含有した高分子材料のナノファイバー積層体を均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】化粧用ナノファイバー吹き付け装置の全体の側面図である。
図2】化粧用ナノファイバー吹き付け装置の全体の正面図である。
図3】吹き付け部の全体の側面図である。
図4】吹き付け部のケース本体の側面断面図である。
図5図5Aは、エア分配器の正面図、図5Bは、図5AのA-A断面図、図5Cは、図5AのB-B断面図である。
図6図6Aは、ノズルの正面図、図6Bは、ノズルの側面図である。
図7図7Aは、エアキャップの正面図、図7Bは、エアキャップの側面断面図である。
図8図8Aは、ノズルストッパの正面図、図8Bは、ノズルストッパの側面図である。
図9図9Aは、シール部材の正面図、図9Bは、シール部材の側面図である。
図10図10Aは、エアスイッチの平面図、図10Bは、エアスイッチの側面図、図10Cは、エアスイッチの正面図である
図11】ノズルとエアキャップを取り付けたときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化粧用ナノファイバー吹き付け装置の一実施形態について説明する。
本実施形態の化粧用ナノファイバー吹き付け装置は、化粧用素材を含有する高分子材料を用いるもので、この化粧用素材を含有する高分子材料を噴射して人の皮膚に吹き付け、皮膚の表面にナノファイバー積層体を形成することにより、人の皮膚に化粧を施す。
【0014】
高分子材料は、ポリビニルブチラール(PVB樹脂:パウダー)、ポリエチレングリコール(PEG樹脂:パウダー)、ポリビニルアルコール(PVA樹脂:パウダー)、ポリエチレンオキサイド(PEO樹脂:パウダー)などで、これらを単体あるいは適宜組み合わせて用いる。ただし、高分子材料は、これらに限られるものではない。
【0015】
また、高分子材料に含有する化粧用素材は、人の皮膚に化粧を、あるいは皮膚のケアを行うためのもので、美容液及び保湿液などの化粧材料、又は人工皮膚を形成する人工皮膚材料などである。
【0016】
美容液及び保湿液などの化粧材料は、皮膚に潤いを与えて保湿し、あるいは肌のキメを整える(整肌)などの化粧を施すものである。例えば、プリテオグリカン、グリセリン、コラーゲン、プラセンタ、ヒアルロン酸、セラミド、ビタミンC誘導体、フラーレン、グリチルリチン酸、アロエベラエキス、EGF、エタノール、メチルパラベン、ローズマリーエキス、トコフェロール、BG、プロパンジオール、フェノキシエタノールなどで、これらを単体あるいは組み合わせたものである。ただし、化粧材料は、これらに限られるものではない。
【0017】
人工皮膚を形成する人工皮膚材料は、皮膚の表面に人工皮膚を形成することで、皮膚のケアを行うものである。例えば、コラーゲンなどであり、具体的にはビーマトリックスコラーゲンFD(beMatrix(登録商標)コラーゲンFD)などである。ただし、これに限られるものではなく、その他の人工皮膚材料でもよい。
【0018】
次に、化粧用ナノファイバー吹き付け装置について、図面を参照して説明する。
図1は、化粧用ナノファイバー吹き付け装置の全体の側面図である。図2は、化粧用ナノファイバー吹き付け装置の全体の正面図である。
化粧用ナノファイバー吹き付け装置1は、図1図2に示すように、吹き付け部2を有し、吹き付け部2の上部に材料収容部3を、吹き付け部2の下部に圧縮空気供給源4をそれぞれ有する。この化粧用ナノファイバー吹き付け装置1は、持ち運び自在となるものである。
なお、本明細書において、上下方向は、化粧用ナノファイバー吹き付け装置1の縦方向であり、図1図2の図面中に矢印Aで示す。
【0019】
材料収容部3は、上下細長の円筒状の容器、例えば、内部にシリンジピストン31を備えるシリンジ型容器(例えば収容量が5ccのシリンジ型容器)で、内部に化粧用素材を含有した高分子材料Tを収容する。材料収容部3は、その下部を吹き付け部2に容器用アダプタ32を介して接続し、内部に収容した高分子材料Tを吹き付け部2に供給する。
【0020】
この材料収容部3は、円筒状の容器に限られるものではなく、高分子材料Tを収容できる容器であれば、その他の形状でもよい。また、材料収容部3は、吹き付け部2に容器用アダプタ32を介して接続しているが、これに限らず、管路(チューブ)などを経て吹き付け部に接続するようにしてもよい。
材料収容部3は、内部に収容する高分子材料Tを詰め替えて、材料収容部3の容器を繰り返し使用する詰め替えタイプの材料収容部3としてもよいし、あるいは材料収容部3を吹き付け部2に対して着脱自在にし、材料収容部3の容器ごとすべてを取り換えて使用する使い切りタイプの材料収容部3としてもよい。
【0021】
圧縮空気供給源4は、例えば、缶に圧縮空気を封入したエアダスター缶41である。エアダスター缶41は、上下細長の円筒状の缶で、その上部に放出口411を備えるアクチュエーター412を取り付けて、アクチュエーター412を押すことで、内部に封入した圧縮空気Hを放出口411より放出する。なお、エアダスター缶41は、人が容易に持つことのできる大きさ及び重さである。また、エアダスター缶41は、円筒状に限られるものではない。エアダスター缶41(圧縮空気供給源4)は、その上部を吹き付け部2に供給源用アダプタ42を介して接続し、放出する圧縮空気Hを吹き付け部2に供給する。このエアダスター缶41において、アクチュエーター412の放出口411より圧縮空気Hを放出するときの圧力は、0.05MPa~0.5MPaである。
【0022】
この圧縮空気供給源4は、エアダスター缶41に限られるものではなく、他のもの、例えば、小型のコンプレッサーでもよい。コンプレッサーは、エアーポンプ(例えばダイヤフラムポンプ)や動力源のバッテリーなどを内蔵し、エアーポンプによって作られた圧縮空気Hを放出し、吹き付け部2に圧縮空気Hを供給する。コンプレッサーも、上下細長の円筒状で、使用者が手で容易に持つことのできる小型のものである。
【0023】
ただし、圧縮空気供給源4おいては、エアダスター缶41にすることで、圧縮空気供給源4を安価に提供することができ、これにより、化粧用ナノファイバー吹き付け装置1として消費者に安価に提供することができる。また、エアダスター缶41では、故障などの問題がほとんど起こらない。
【0024】
吹き付け部2は、化粧用素材を含有する高分子材料Tを吐出する吐出孔5と、圧縮空気Hによる噴射気流Sを発生する噴射孔6を備え、噴射孔6で発生する噴射気流Sにより、吐出孔5から吐出する高分子材料Tを引き抜いて噴射する。この高分子材料Tを引き抜いて噴射するとは、噴射孔6から相対的に高圧な圧縮空気Hによる噴射気流Sを発生することにより、吐出孔5から吐出した高分子材料Tが噴射気流Sにより押されて加速し、その結果、吐出孔5から吐出した高分子材料Tが引き抜かれて噴射することである。
【0025】
以上のように、噴射孔6で発生する噴射気流Sにより、吐出孔5から吐出する高分子材料Tを引き抜いて噴射することで、高分子材料Tは、延伸して水分を気化しながら噴射し、吹き付けた人の皮膚の表面において高分子材料Tのナノファイバー積層体を形成する。
すなわち、高分子材料Tに圧縮空気Hによる噴射気流Sを当てることで、高分子材料T自体が細く伸びて延伸し、これとともに、噴射した高分子材料Tから水分が気化する。これにより、噴射した高分子材料Tは、吹き付けた人の皮膚の表面において、高分子材料Tのナノファイバー積層体を形成するようになる。
【0026】
この化粧用ナノファイバー吹き付け装置1における吹き付け部2について、詳細に説明する。
図3は、吹き付け部の全体の側面図である。図4は、吹き付け部のケース本体の側面断面図である。図5Aは、エア分配器の正面図、図5Bは、図5AのA-A断面図、図5Cは、図5AのB-B断面図である。図6Aは、ノズルの正面図、図6Bは、ノズルの側面図である。図7Aは、エアキャップの正面図、図7Bは、エアキャップの側面断面図である。図8Aは、ノズルストッパの正面図、図8Bは、ノズルストッパの側面図である。図9Aは、シール部材の正面図、図9Bは、シール部材の側面図である。図10Aは、エアスイッチの平面図、図10Bは、エアスイッチの側面図、図10Cは、エアスイッチの正面図である。図11は、ノズルとエアキャップを取り付けたときの状態を示す側面図である。
【0027】
吹き付け部2は、図3に示すように、材料収容部3から供給される高分子材料Tを流す材料用管路21と、エアダスター缶41(圧縮空気供給源4)から供給される圧縮空気Hを流す空気用管路22とを内部に備える横長の断面円形状のケース本体7を有する。ここで、横とは、化粧用ナノファイバー吹き付け装置1の上下方向(縦方向)に直交する方向で、図3の図面における左右方向である。
【0028】
また、吹き付け部2は、ケース本体7の横方向の一方(図3における左側で、先端側という)に、ケース本体7の材料用管路21と接続して高分子材料Tを吐出する吐出孔5を備えるノズル8を取り付けるとともに、ノズル8の外周に配置し、ケース本体7の空気用管路22と接続して圧縮空気Hによる噴射気流Sを発生する噴射孔6を備えるエアキャップ9を取り付ける。
【0029】
この吹き付け部2において、ケース本体7の下部には、エアダスター缶41の上部に接続する供給源用アダプタ42を固着する。供給源用アダプタ42には、圧縮空気Hが流れる空気供給路421を設け、この空気供給路421がケース本体7の空気用管路22に接続して、エアダスター缶41より放出された圧縮空気Hを吹き付け部2の内部に供給する。また、ケース本体7の上部には、材料収容部3の下部に接続する容器用アダプタ32を固着する。容器用アダプタ32には、高分子材料Tが流れる材料供給路321を設け、この材料供給路321がケース本体7の材料用管路21に接続して、材料収容部3の高分子材料Tを吹き付け部2の内部に供給する。
【0030】
ケース本体7は、図4に示すように、その中心に横方向(図面中の左右方向)に向かう貫通孔71を有する。この貫通孔71は、ケース本体7の左右中央付近を小径孔部711にし、この小径孔部711の右側を小径孔部711より大きな径の大径孔部712にする。また、小径孔部711の左側の先端側を小径孔部711より大きな径にして、ここを高分子材料Tが流れる材料用管路21にする。この貫通孔71において、大径孔部712の内面にネジ部713を設けるとともに、材料用管路21の先端側の内面にもネジ部714を設ける。また、ケース本体7は、その先端側(図4における左側)の外周にネジ部72を設ける。
【0031】
また、ケース本体7に備える空気用管路22は、ケース本体7の下部に固着した供給源用アダプタ42の空気供給路421に接続し、ここからケース本体7の先端側に向かい、その先端側において、環状の空間部73に接続する。この環状の空間部73には、環状のエア分配器74が嵌め込まれる。
【0032】
エア分配器74は、図5A、B、Cに示すように、中心に貫通孔741を有する環状形状となり、その背面側(図5Bにおける右側、図5Cにおける下側)に、環状の溝742を有するとともに、正面側(図5Cにおける上側)に、6個の孔743を周方向おいて等間隔に設け、この6個の孔743は溝742と連通する。これにより、空気用管路22を流れてきた圧縮空気Hは、エア分配器74で分配されて6個の孔743から噴射する。この6個の孔743から噴射する圧縮空気Hにより、噴射孔6では6個の噴射気流Sが発生する。
【0033】
ノズル8は、図6A、Bに示すように、その中心に横方向(図6Bにおける左右方向)に向かう管路81を有し、その一端の先端側(図6Bにおける左側)に吐出孔5を備える。ノズル8の外形は、吐出孔5を備える先端側に向かって尖った、つまり先端側に向かって縮径する円錐状である。また、吐出孔5を備えた先端側の反対側の外周には、ネジ部82を設け、このネジ部82がケース本体7の材料用管路21の内面に設けたネジ部714と螺合することで、ノズル8をケース本体7に取り付けている。このノズル8の材質は、セラミック、ルビー、ステンレス、合成樹脂などであり、長期間にわたって最適な状態で高分子材料Tを噴射することができるという耐摩耗性の点ではセラミックやルビーがよいが、ノズル8を安価に製造できる点では合成樹脂がよい。
【0034】
エアキャップ9は、図7A、Bに示すように、内部に横方向(図7Bにおける左右方向)に向かう送風路91を有し、その一端の先端側(図7Bにおける左側)に噴射孔6を備える。エアキャップ9の外形は、噴射孔6を備える先端側に向かって縮径する円錐状であり、その内部の送風路91も、内面が噴射孔6を備える先端側に向かって縮径する円錐状である。また、送風路91において、噴射孔6を備えた反対側の内周には、ネジ部92を設け、このネジ部92がケース本体7の先端側の外周に設けたネジ部72と螺合することで、エアキャップ9をケース本体7に取り付けている。このエアキャップ9の材質は、ステンレス、合成樹脂などであり、エアキャップ9を安価に製造できる点では合成樹脂がよい。
【0035】
また、吹き付け部2には、図3に示すように、ケース本体7の貫通孔71内に挿入する横に向かって細長のストッパーピン100を備え、ストッパーピン100は、貫通孔71内において横方向に移動自在になる。
ストッパーピン100は、図8A、Bに示すように、先端が尖った針部101と、針部101の横(図8Bにおける右側)のネジ部102と、ネジ部102の横(図8Bにおける右側)のつまみ部103から構成し、針部101の先端がノズル8の吐出孔5内に挿入可能になる。
【0036】
また、吹き付け部2のケース本体7の貫通孔71内には、図3に示すように、シール部材50を取り付ける。シール部材50は、図9A、Bに示すように、横長円柱状で、中心に横方向(図9Bにおける左右方向)に向かう孔51を有し、この孔51にはストッパーピン100の針部101が挿入される。また、シール部材50の外周にはネジ部52を設け、このネジ部52がケース本体7の貫通孔71の大径孔部712のネジ部713に螺合することで、シール部材50をケース本体7の貫通孔71内に取り付ける。これにより、ケース本体7の貫通孔71の材料用管路21を流れる高分子材料Tが貫通孔71の大径孔部712側に流れるのを防止し、ケース本体7の先端側に取り付けたノズル8の吐出孔5に高分子材料Tを流すようにしている。
【0037】
このストッパーピン100においては、次のような作用がある。
ストッパーピン100は、つまみ部103を回転させることで、ケース本体7の貫通孔71内において横方向に移動する。これにより、つまみ部103を回転させて、ストッパーピン100の針部101の先端をノズル8の吐出孔5内に移動させることで、ノズル8の吐出孔5を塞ぐことができ、化粧用ナノファイバー吹き付け装置1を使用しないときに、ノズル8の吐出孔5から高分子材料Tが流れ出ないようにすることができる。
【0038】
また、ストッパーピン100は、ケース本体7の貫通孔71内において横方向に移動自在になることで、つまみ部103を回転(正転・逆転)させて、ストッパーピン100の針部101の先端をノズル8の吐出孔5内に出し入れすることにより、ノズル8の吐出孔5内で高分子材料Tが詰まったりしたときなど、これを除去でき、常に最適な状態で吐出孔5より高分子材料Tを吐出することができる。
【0039】
また、吹き付け部2のケース本体7には、図3に示すように、供給源用アダプタ42を固着する箇所の上部に縦方向(図面中の上下方向)に向かう貫通孔75を設ける。この貫通孔75の内部には、縦に向かう棒状のエアスイッチ110を取り付ける。
エアスイッチ110は、図10A、B、Cに示すように、下に位置する第一棒部111、第一棒部111の上に位置する第二棒部112、第二棒部112の上に位置する円板状のスイッチ部113から構成し、第一棒部111の下端がエアダスター缶41のアクチュエーター412に当接する。これにより、エアスイッチ110のスイッチ部113を押すことで、エアダスター缶41のアクチュエーター412が押され、エアダスター缶41の内部の圧縮空気Hが放出されるようになる。
【0040】
また、第二棒部112は、その径を第一棒部111の径より大きくするとともに、ここに縦向きの長孔114を設けている。この長孔114にはストッパーピン100の針部101が貫通する。これにより、エアスイッチ110とストッパーピン100とにおいては、交差するようになっているが、それぞれの動きを互いに干渉しないようにしている。
【0041】
次に、吹き付け部2におけるノズル8とエアキャップ9をケース本体7に取り付けたときの状態について説明する。
図11に示すように、ノズル8とエアキャップ9をケース本体7の先端側に取り付けたとき、エアキャップ9の送風路91の内面とノズル8の外周との間には隙間、つまり環状の隙間が形成される。この環状の隙間は、ノズル8の吐出孔5の周囲に形成されたもので、ここがエアキャップ9の噴射孔6になる。また、ノズル8の先端は、エアキャップ9の噴射孔6より突き出すようにしている。
【0042】
これにより、エアキャップ9の噴射孔6では、ケース本体7の先端側の内部に取り付けたエア分配器74の6個の孔743により、吐出孔5の周囲において周方向に等間隔で6個の噴射気流Sが発生する。この噴射孔6で発生する噴射気流Sにより、吐出孔5から吐出する高分子材料Tを引き抜いて噴射するようになる。
【0043】
また、ここでのケース本体7とノズル8とエアキャップ9の所定の箇所の寸法について説明する。これらの寸法は、各種の実験を行った結果、導き出した値である。
図11に示すように、ノズル8の吐出孔5の内径Dは、0.15mmである。ただし、これに限らず、0.1mm~0.2mmの範囲であればよい。吐出孔5の内径Dが、0.2mmより大きくなると、吹き付けて形成するナノファイバーの細さが所定の細さにならず、また、0.1mmより小さいと、吐出孔5に高分子材料Tが詰まり、あるいは高分子材料Tの吐出する速度が遅くなり、そのため、ナノファイバー積層体を形成することができなくなる。
【0044】
また、エアキャップ9では、その内部の送風路91の内面を、噴射孔6を備える先端側に向かって縮径する円錐状にするとともに、ノズル8では、その外周を、吐出孔5を備える先端側に向かって縮径する円錐状にしている。これにより、エアキャップ9の送風路91の内面及びノズル8の外周により、圧縮空気Hにより発生する6個の噴射気流Sの方向は、ノズル8の吐出孔5及びエアキャップ9の噴射孔6の中心軸Cに所定の角度で向かう。
【0045】
エアキャップ9の送風路91の内面の角度K1及びノズル8の外周の角度K2は、ノズル8の吐出孔5及びエアキャップ9の噴射孔6の中心軸Cに対して、19度である。ただし、これに限らず、その角度は、15度~30度の範囲であればよい。つまり、噴射孔6で発生する噴射気流Sは、ノズル8の吐出孔5の中心軸Cに向かって中心軸Cに対して15度から30度の角度(所定の角度)にする。
【0046】
このエアキャップ9の送風路91の内面の角度K1及びノズル8の外周の角度K2において、15度より小さいと、噴射気流Sとノズル8の吐出孔5より吐出する高分子材料Tとの接触力が小さく、そのため、高分子材料Tを延伸する作用が小さくなる。また、30度より大きいと、逆に接触力が大きくなり過ぎ、これによっても、高分子材料Tを延伸する作用が小さくなる。つまり、角度を15度~30度の範囲にすれば、噴射気流Sをノズル8の吐出孔5より吐出する高分子材料Tに最適に接触させることができ、高分子材料Tの延伸する作用を大きくすることができる。
【0047】
また、エアキャップ9とノズル8にあっては、エアキャップ9の噴射孔6よりノズル8が突き出るようにしているが、このノズル8の突き出る寸法(図11においてLで示す)は、5mmである。ただし、これに限らず、4mm~7mmの範囲であればよい。このノズル8の突き出る寸法が4mm~7mmの範囲であれば、前述したエアキャップ9の噴射孔6からの噴射気流Sの方向と相まって整流が発生し、高分子材料Tを良好に噴射することができる。
【0048】
次に、化粧用ナノファイバー吹き付け装置1の使用方法について説明する。
使用者は、吹き付け部2に備えたストッパーピン100のつまみ部103を回転して、ストッパーピン100をノズル8の吐出孔5内より移動させ、ストッパーピン100により塞いでいた吐出孔5を開ける。これにより、吹き付け部2において、材料収容部3から供給された高分子材料Tが、ケース本体7に備えた材料用管路21を流れて、ケース本体7の先端側に取り付けたノズル8の吐出孔5に流れ、ノズル8の吐出孔5から吐出する。
【0049】
続いて、吹き付け部2のケース本体7に取り付けたエアスイッチ110を押すことで、エアダスター缶41の内部の圧縮空気Hを放出し、この放出された圧縮空気Hがケース本体7に備えた空気用管路22を流れて、ケース本体7の先端側に取り付けたエア分配器74に流れる。エア分配器74では、流れてきた圧縮空気Hを分配して6個の孔743に流し、この6個の孔743より圧縮空気Hが噴射する。この噴射した圧縮空気Hが、エアキャップ9の送風路91の内面とノズル8の外周との間の隙間を流れて、エアキャップ9の噴射孔6に向かうことで、エアキャップ9の噴射孔6において6個の噴射気流Sが発生する。
このエアキャップ9の噴射孔6で発生する6個の噴射気流Sにより、ノズル8の吐出孔5から吐出する高分子材料Tを引き抜いて噴射する。
【0050】
この化粧用ナノファイバー吹き付け装置1では、使用者が手で持って、吹き付け部2の吐出孔5及び噴射孔6を人の皮膚、例えば顔などの吹き付け部分に向け、ここに噴射した高分子材料Tを吹き付ける。これにより、顔などの表面に均一なナノファイバー積層体が形成されて、顔の皮膚に、美容液及び保湿液などの化粧材料よる潤いを与えて保湿及び肌のキメを整える(整肌)などの化粧を施し、あるいは人工皮膚材料により皮膚の表面に人工皮膚を形成して皮膚のケアを行うことができる。
【0051】
また、前述の実施形態の化粧用ナノファイバー吹き付け装置1では、吹き付け部2の噴射孔6で発生する噴射気流Sは、吐出孔5の周囲において周方向に等間隔で6個であるが、これに限らない。例えば、エア分配器74に設ける孔743を、7個から9個にすることで、吹き付け部2の噴射孔6で発生する噴射気流Sを、吐出孔5の周囲において周方向に等間隔で7個から9個にしてもよい。すなわち、吹き付け部2の噴射孔6で発生する噴射気流Sは、吐出孔5の周囲において周方向に等間隔で6個から9個である。
【0052】
この噴射孔6で発生する噴射気流Sでは、10個以上であると、隣接する噴射気流Sが互いに干渉し、噴射気流Sに乱れが生じ、そのため、高分子材料Tを良好に噴射することができなくなる。また、5個以下であると、隣接する噴射気流Sの間隙が広すぎて噴射気流Sが流れない部分ができ、噴射気流Sが流れたり流れなかったりという噴射気流Sの流れのムラが起こり、これによっても、高分子材料Tを良好に噴射することができなくなる。つまり、噴射孔6で発生する噴射気流Sを、吐出孔5の周囲において周方向に等間隔で6個から9個にすることで、ノズル8の吐出孔5から吐出する高分子材料Tを良好に噴射することができる。
【0053】
以上説明したように、化粧用ナノファイバー吹き付け装置1において、吹き付け部2の噴射孔6で発生する噴射気流Sにより、吐出孔5から吐出する化粧用素材を含有した高分子材料Tを引き抜いて噴射し、噴射する高分子材料Tを延伸して水分を気化しながら人の皮膚に吹き付けることで、人の皮膚の表面にナノファイバー積層体を形成することができる。
【0054】
また、このとき、吹き付け部2の噴射孔6で発生する噴射気流Sを、吐出孔5の周囲において周方向に等間隔で6個から9個にするとともに、発生する噴射気流Sを吐出孔5の中心軸Cに向かって中心軸Cに対して15度から30度の角度にすることで、噴射気流Sにおいて乱れが生じたり、あるいは噴射気流Sの流れのムラ等が生じるのをなくすことができる。これにより、皮膚の表面に形成するナノファイバー積層体がムラになるのをなくして、化粧をきれいに施すことができる。
【符号の説明】
【0055】
1…化粧用ナノファイバー吹き付け装置、2…吹き付け部、3…材料収容部、4…圧縮空気供給源、5…吐出孔、6…噴射孔、7…ケース本体、8…ノズル、9…エアキャップ、21…材料用管路、22…空気用管路、31…シリンジピストン、32…容器用アダプタ、321…材料供給路、41…エアダスター缶、411…放出口、412…アクチュエーター、42…供給源用アダプタ、421…空気供給路、50…シール部材、51…孔、52…ネジ部、71…貫通孔、711…小径孔部、712…大径孔部、713…ネジ部、714…ネジ部、72…ネジ部、73…空間部、74…エア分配器、741…貫通孔、742…溝、743…孔、75…貫通孔、81…管路、82…ネジ部、91…送風路、92…ネジ部、100…ストッパーピン、101…針部、102…ネジ部、103…つまみ部、110…エアスイッチ、111…第一棒部、112…第二棒部、113…スイッチ部、114…長孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11