(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074446
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20230522BHJP
B62M 7/00 20100101ALI20230522BHJP
B62J 45/41 20200101ALI20230522BHJP
B62J 50/25 20200101ALI20230522BHJP
【FI】
B62M6/45
B62M7/00
B62J45/41
B62J50/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】51
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187442
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 将史
(72)【発明者】
【氏名】澤田 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】角木 信仁
(72)【発明者】
【氏名】萩原 安衣子
(57)【要約】
【課題】モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両において、走行モードの切り替えに起因して発生し得る問題を解決する。
【解決手段】実施形態の一例である車両1は、モータ12を備え、複数の走行モードで走行可能な車両である。車両1は、モータ12の出力を調整するためのスロットル80と、人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、走行モードに対応する表示を行うための表示部81と、制御部20とを備える。制御部20は、走行モードの切り替えに係る制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記人力駆動力伝達体の状態に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行する、車両。
【請求項2】
前記人力駆動力伝達体はクランクであり、前記制御部は、前記クランクの回転数が20rpm以下であるとき、又は前記クランクが逆回転しているときに、前記第1の走行モードへの前記走行モードの切り替えを可能とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記人力駆動力伝達体はクランクであり、前記制御部は、前記クランクに取り付けられたペダルが折り畳まれているときに、前記第1の走行モードへの前記走行モードの切り替えを可能とする、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記人力駆動力伝達体の回転が制限されているときに、前記第1の走行モードへの前記走行モードの切り替えを可能とする、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記人力駆動力伝達体は、少なくとも正方向の回転が固定される一対のクランクアームを含み、
前記制御部は、前記一対のクランクアームが固定されているときに、前記第1の走行モードへの前記走行モードの切り替えを可能とする、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記一対のクランクアームは、車両の前後方向に延びる水平位置で回転が固定される、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記一対のクランクアームは、各々が同じ方向に向いた状態で回転が固定される、請求項5に記載の車両。
【請求項8】
前記制御部は、前記走行モードが前記第1の走行モードに切り替えられると、前記人力駆動力伝達体の回転を制限可能とする、請求項4に記載の車両。
【請求項9】
前記人力駆動力伝達体の回転を固定する固定機構を備え、
前記固定機構は、前記モータを含むモータユニット内に設けられている、請求項4に記載の車両。
【請求項10】
前記人力駆動力伝達体はスプロケットであり、
前記スプロケットの回転を固定する固定機構を備える、請求項4に記載の車両。
【請求項11】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、車速に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行する、車両。
【請求項12】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
乗車の有無に関する情報を検知する乗車検知部と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記乗車検知部により取得される情報に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行する、車両。
【請求項13】
前記制御部は、前記モータの出力に基づいて、乗車の有無を判断する、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記制御部は、タイヤの空気圧に基づいて、乗車の有無を判断する、請求項12に記載の車両。
【請求項15】
前記乗車検知部は、車体に設置された歪みセンサ、又は圧力センサである、請求項12に記載の車両。
【請求項16】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記表示部は、複数の前記表示が個別に設けられた複数の表示面を含み、前記表示面の移動により前記表示が切り替わるように構成されている、車両。
【請求項17】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
スプロケットの回転に対し、車輪の回転を一定の不変な増速比で増速させる増速機構と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備える、車両。
【請求項18】
車輪径が20インチ以下の車輪を備える、請求項17に記載の車両。
【請求項19】
前記第1の走行モードでは、前記増速機構を介さずに前記モータの出力が前記車輪に伝達される、請求項17又は18に記載の車両。
【請求項20】
前記モータは、車輪のハブに内蔵され、
前記ハブには、さらに、前記モータの回転を減速させる歯車と、前記車輪に固定されるハブシェルと前記歯車の間に設けられたワンウェイクラッチとが内蔵されている、請求項17又は18に記載の車両。
【請求項21】
前記増速機構は、遊星歯車部を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の車両。
【請求項22】
前記遊星歯車部は、サンギア、キャリア、およびリングギアを含み、
前記サンギアがハブ軸に回転固定され、前記キャリアが前記スプロケットに接続され、前記リングギアが前記車輪のハブシェルと共に回転可能に設けられている、請求項21に記載の車両。
【請求項23】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
後輪スプロケットの回転に対し、後輪の回転を増速させる増速機構と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記増速機構には、外装変速機および内装変速機が含まれる、車両。
【請求項24】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転するクランクと、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記モータを含むモータユニットに内蔵され、前記クランクの回転に対し、フロントスプロケットの回転を少なくとも増速させる機構と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備える、車両。
【請求項25】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記走行モードを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記走行モードを切り替えるときに、前記モータの出力、前記人力駆動力、および前記操作部の操作量に基づき、当該切り替えの前後における合算出力の変化量が±50%以内になるように前記モータの出力を制御する、車両。
【請求項26】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記表示部は、前記表示が設けられた本体部と、前記本体部が着脱自在に取り付けられる固定部とを有し、
前記制御部は、前記固定部からの前記本体部の取り外しの可否を判断する、車両。
【請求項27】
モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、
前記モータの出力を調整するための操作部と、
人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、
前記走行モードに対応する表示を行うための表示部と、
前記操作部の操作に基づいて前記モータの出力を制御する第1の走行モードと、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部と、
を備え、
前記表示部は、前記表示が設けられた本体部と、前記本体部が着脱自在に取り付けられる固定部と、前記本体部に設けられた電子タグと、前記電子タグの情報を読み取る読取部とを有し、
前記制御部は、前記電子タグの情報に基づいて、前記表示部の前記表示に関する情報を取得する、車両。
【請求項28】
前記本体部は、
走行モードAに対応する第1の表示、および走行モードBに関する情報が記憶された第1の電子タグを含む第1の表示面と、
走行モードBに対応する第2の表示、および前記走行モードAに関する情報が記憶された第2の電子タグを含む第2の表示面と、
を有する、請求項27に記載の車両。
【請求項29】
前記固定部から取り外された前記本体部を保持する保持部をさらに備え、
前記保持部には、前記電子タグの情報を読み取る第2の読取部が設置されている、請求項27又は28に記載の車両。
【請求項30】
前記制御部は、前記第1の走行モードにおいて前記操作部が操作され、かつ車速が所定速度を超える場合に、前記クランクの正方向の回転を制限する、請求項8に記載の車両。
【請求項31】
前記人力駆動力に関する情報を取得するための検知部を備え、
前記制御部は、前記検知部により所定の前記人力駆動力が検知されたときに、前記走行モードを、前記人力駆動力により走行する第2の走行モードに切り替える、請求項1~30のいずれか一項に記載の車両。
【請求項32】
前記人力駆動力により走行する第2の走行モードは、前記人力駆動力を前記モータの駆動力でアシストする走行モードである、請求項1~31のいずれか一項に記載の車両。
【請求項33】
車両の外側に位置する第1の位置と、車両の内側に位置する第2の位置との間で移動可能に構成されたバックミラーを備える、請求項1~32のいずれか一項に記載の車両。
【請求項34】
前記バックミラーは、ミラー本体と、前記ミラー本体を支持する支持軸とを含み、
前記支持軸は、車両の上下方向に沿うように配置されている、請求項1~33のいずれか一項に記載の車両。
【請求項35】
前記制御部は、前記バックミラーの状態に基づいて、前記走行モードの切り替えに係る制御を実行する、請求項33又は34に記載の車両。
【請求項36】
前記制御部は、車両の走行中における前記表示の切り替えを可能とする、請求項1~35のいずれか一項に記載の車両。
【請求項37】
前記制御部は、車両の走行中において、上位走行モードから下位走行モードへの切り替えを可能とする、請求項1~36のいずれか一項に記載の車両。
【請求項38】
前記制御部は、車両が停車中であることを条件として、前記表示の切り替えを可能とする、請求項1~37のいずれか一項に記載の車両。
【請求項39】
前記制御部は、スタンドが立っていることを条件として、前記走行モード表示の切り替えを可能とする、請求項38に記載の車両。
【請求項40】
前記表示部は、後輪の回転軸よりも車両後方に設置されている、請求項1~39のいずれか一項に記載の車両。
【請求項41】
前記表示部は、車輪を施錠するロック装置に固定されている、請求項1~40のいずれか一項に記載の車両。
【請求項42】
前記表示部は、後輪の泥除けに設置されている、請求項1~41のいずれか一項に記載の車両。
【請求項43】
前記表示部は、リアキャリアに設置されている、請求項1~42のいずれか一項に記載の車両。
【請求項44】
前記表示部は、前記表示が車両後方に向いた第1の状態と、前記表示が車両上方に向いた第2の状態との間で移動可能に構成されている、請求項1~43のいずれか一項に記載の車両。
【請求項45】
前記表示部は、前記表示がそれぞれ設けられた複数の本体部を有し、前記複数の本体部の各々が、前記第1の状態と前記第2の状態との間で移動可能に構成されている、請求項44に記載の車両。
【請求項46】
前記表示部は、前記表示を覆うように設けられ、前記表示の透過状態と遮蔽状態とを切り替え可能な調光フィルムを有する、請求項1~45のいずれか一項に記載の車両。
【請求項47】
前記表示には、前記走行モードを示すピクトグラムが含まれる、請求項1~46のいずれか一項に記載の車両。
【請求項48】
前記ピクトグラムは、最高速度が規定された走行モードを示し、
前記ピクトグラム内に、又は前記ピクトグラムと共に、前記最高速度の情報が含まれる、請求項47に記載の車両。
【請求項49】
前記表示部には、前記走行モードに対応する前記表示と共に、又は前記表示に代えて、駐車状態を示すピクトグラムが表示される、請求項1~48のいずれか一項に記載の車両。
【請求項50】
前記制御部は、前記モータの電源がオフであり、かつスタンドが立てられたときに、前記表示部に前記駐車状態を示すピクトグラムを表示させる、請求項49に記載の車両。
【請求項51】
前記ピクトグラムの少なくとも一部は、反射材で構成されている、請求項47~50のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、より詳しくは、モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペダルをこぐ人力駆動力をモータの動力によりアシストする電動アシスト自転車が広く知られている。人力駆動力に対するモータのアシスト率が法規制で定められた所定値以下に制限される電動アシスト自転車は、一般的な自転車と同様に、軽車両に分類されるため、ナンバープレートを取り付ける必要はない。一方、モータの動力のみで走行する車両(車いす等の法律上歩行者に分類されるものを除く)や、モータのアシスト率が所定値以上である電動アシスト自転車は、例えば、原動機付自転車又は自動車に該当し、公道を走行する際にはナンバープレートが必要になる。
【0003】
近年、モータの動力のみで走行する走行モードと、ペダルをこぐ人力駆動力のみで走行する走行モードとを切り替えることが可能な車両が提案されている。例えば、特許文献1には、電動バイクとして使用でき、かつモータの動力を遮断することで自転車としても使用できる車両が開示されている。この車両はモータの動力のみで走行可能であるため、ナンバープレートが取り付けられているが、ナンバープレートを遮蔽することで、自転車としての使用を可能としている。即ち、ナンバープレートを隠した状態では、軽車両と同じ法規制が適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両において、周囲の通行人や車に対し、走行時の使用状態を容易に認識可能にすることは重要な課題である。即ち、車両の走行モードに対応した適切な表示を行う必要がある。また、ユーザビリティを向上させるためには、走行モードのスムーズな切り替えを実現することが望ましい。加えて、走行モード切り替え時の安全性が十分に確保されている必要がある。
【0006】
本発明の目的は、モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両において、走行モードの切り替えに起因して発生し得る問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である車両は、モータを備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、モータの出力を調整するための操作部と、人力駆動力により回転する人力駆動力伝達体と、走行モードに対応する表示を行うための表示部と、操作部の操作に基づいてモータの出力を制御する第1の走行モードと、少なくとも人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部とを備える。制御部は、走行モードの切り替えに係る制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両によれば、走行モードの切り替えに起因して発生し得る問題を解決できる。本発明に係る車両によれば、例えば、走行モードのスムーズな切り替えが可能であり、また周囲の通行人や車が、車両の走行モードを容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3A】複数の走行モードの一例を説明するための図である。
【
図3B】複数の走行モードの他の一例を説明するための図である。
【
図3C】複数の走行モードの他の一例を説明するための図である。
【
図4】車両の制御部および制御部に接続された機器の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】走行モードの切り替えに係る制御の概要を説明するための図である。
【
図6】走行モードの切り替えに係る制御の概要を説明するための図である。
【
図8】表示部に表示されるピクトグラムの一例である。
【
図9】走行モードの切り替え制御の一例を説明するための図である。
【
図10】走行モードの切り替え制御の他の一例を説明するための図である。
【
図11】車両の側面図であって、クランクの回転が固定された状態の一例を示す。
【
図12A】モータユニットの断面図であって、クランクの固定機構(クランクのロック状態)の一例を示す図である。
【
図12B】クランクの固定機構の一例を示す図であって、クランクのロックを解除した状態を示す。
【
図13A】クランクの固定機構の他の一例を示す図であって、クランクのロック状態を示す。
【
図13B】クランクの固定機構の他の一例を示す図であって、クランクのロックを解除した状態を示す。
【
図14】折り畳み式バックミラーの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る車両の実施形態について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0011】
図1は、実施形態の一例である車両1の外観を示す斜視図である。
図2は、車両1の側面図である。以下では、説明の便宜上、上下左右等の方向を示す用語を使用するが、車両1および各構成要素の上下左右は通常の使用状態における上下左右を意味する。
【0012】
図1に示すように、車両1は、バッテリ10と、バッテリ10から供給される電力で駆動するモータ12(後述の
図4参照)を含むモータユニット11とを備える。車両1は、モータ12を備え、複数の走行モードで走行可能な車両である。車両1の走行モードには、モータ12の出力を調整するための操作部の操作に基づいてモータ12の出力を制御する第1の走行モード(以下、「自走モード」という場合がある)と、人力駆動力により走行する第2の走行モードとが含まれる。第2の走行モードには、例えば、人力駆動力のみにより走行する自転車モード、および人力駆動力をモータ12の動力でアシストする電動アシストモードが含まれる。走行モードの詳細については後述する。
【0013】
車両1は、一般的な自転車と同様に、フレーム2、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5、クランクアーム6、ペダル7、チェーン8、および原動機付自転車と同様の保安部品(ウィンカー、ブレーキランプ、警報装置など)を備える。車両1には、保安部品として、前方保安部品9aと後方保安部品9bが設けられている。前方保安部品9aには、前照灯が含まれていてもよく、後方保安部品9bには、ブレーキランプやウィンカーが含まれていてもよい。本実施形態では、後方保安部品9bが後述のリアキャリア92の後端部において表示部81の上に設けられている。クランクアーム6およびその一端部に取り付けられたペダル7は、車両1の左右に1つずつ設けられ、一対のクランクアーム6の他端部同士は、クランク軸30(後述の
図12等参照)で連結されている。本実施形態では、車両の形態として自転車の形態を例示するが、車両はこれに限定されず、電動車椅子、車輪内部にモータを内蔵する車椅子、電動キックボードのような形態であってもよい。
【0014】
車両1は、ユーザーがペダル7をこぐ力(踏力)をモータ12によりアシストする電動アシスト自転車として使用できる。本実施形態では、ペダル7の踏力およびモータ12の出力が、チェーン8を介して後輪3bに伝達される。車両1は、ペダル7の回転に伴って回転するフロントスプロケット32(後述の
図12A)と、後輪3bに設けられた後輪スプロケット61とを備え、フロントスプロケット32と後輪スプロケット61がチェーン8を介して連結されている。
【0015】
なお、モータユニット11は、モータ12の回転力が減速歯車等を介してフロントスプロケット32に伝達される一軸式であってもよく、モータ12の回転力が減速歯車等を介して、チェーン8が掛けられた補助動力出力用のスプロケットに伝達される二軸式であってもよい。
【0016】
フレーム2は、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5等を連結する骨組みである。バッテリ10およびモータユニット11は、フレーム2によって支持される。フレーム2は、複数のパイプで構成される。本実施形態では、複数のパイプとして、ヘッドパイプ2a、フロントフォーク2b、トップパイプ2c、シートパイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2f、およびボトムブラケット(図示せず)が設けられている。ボトムブラケットは、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、およびチェーンステー2eを繋ぐパイプである。
【0017】
ヘッドパイプ2aは、フロントフォーク2bおよびハンドル4を、当該パイプの中心軸の回りに回転可能な状態で支持する。フロントフォーク2bは、前輪3aを回転可能に支持する一対のレッグと、レッグの上端部から上方に延びてヘッドパイプ2aの筒内に挿し込まれるステアリングコラムとを有する。そして、ステアリングコラムの上端部に、ハンドル4が取り付けられている。
【0018】
トップパイプ2cは、ヘッドパイプ2aとシートパイプ2dを繋ぐパイプである。車両1は、折り畳み可能な構造を有していてもよく、本実施形態ではトップパイプ2cが折り曲げ可能な構造を有している。トップパイプ2cは、2つの部分に分断されており、当該2つの部分がジョイント2gにより結合されている。シートパイプ2dは、サドル5を支持するパイプである。本実施形態では、バッテリ10がシートパイプ2dに取り付けられ、モータユニット11がボトムブラケットに取り付けられている。
【0019】
チェーンステー2eは、シートステー2fとボトムブラケットを繋ぐパイプであって、ボトムブラケットの後方端部から自転車の後方に延び、後輪3bを両側から挟むように左右に1本ずつ設けられている。また、シートステー2fは、チェーンステー2eと同様に、後輪3bを両側から挟むように左右に1本ずつ設けられている。左右のシートステー2fは、シートパイプ2dの上部から後輪3bの径方向中央部まで延び、当該中央部で左右のチェーンステー2eと一対一で連結されている。チェーンステー2eの後方端部には、後輪3bが回転可能に固定されている。
【0020】
車両1は、さらに、バックミラー90と、スタンド91と、リアキャリア92と、後輪3bを覆う泥除け93とを備える。バックミラー90は、ハンドル4に取り付けられており、例えば、モータ12の動力のみにより走行する自走モードにおいて使用される。バックミラー90は、自走モードにおいて、ハンドル4の端から車体の外側に延びた状態となっていることが好ましい。他方、車両1が自転車又は電動アシスト自転車として使用される際には、バックミラー90は法規制上不要であるから、バックミラー90が邪魔にならないように、ハンドル4の端より車体の内側に収容されることが好ましい。バックミラー90の構造については後述する。
【0021】
図2(b)は、スタンド91が立っている状態を示している。スタンド91は、車両1に取り付けられ、駐車時において車両1を支持する機能を有するものであればよい。スタンド91の形態は特に限定されないが、
図2(b)では、後輪3bのハブ又はチェーンステー2eに取り付けられた金属製のキックスタンドを例示している。
【0022】
リアキャリア92は、荷物を搭載可能な金属製の荷台であって、後輪3bの上に設けられている。リアキャリア92は、例えば、シートステー2fおよび後輪3bのハブに取り付けられる。詳しくは後述するが、リアキャリア92には表示部81が設置されていてもよい。
【0023】
車両1において、車輪径は特に限定されないが、好適な車輪径の一例は、20インチ以下である。車両1は、例えば、車輪径が20インチ以下の前輪3aおよび後輪3bを有する。特に、車輪径が20インチ以下と小さく、また35km/h以上の速度で走行することが想定される場合、車両1には、後述する増速機構を設けてもよい。
【0024】
車両1は、モータ12の動力のみで走行可能に構成されているため、モータ12の出力を調整するための操作部としてスロットル80を備えている。スロットル80は、ハンドル4に取り付けられていることが好ましい。スロットル80は、例えば、ハンドル4に対して回転可能に軸支されたレバーであって、押圧操作可能に構成されている。車両1は、スロットル80の操作量に基づいてモータ12の出力を増減する。なお、操作部の構成はレバー式のスロットル80に限定されず、例えば、ハンドル4のグリップと一体化された所謂アクセルグリップ、単にモータ12による自走走行をオンオフするスイッチであってもよい。
【0025】
車両1は、さらに、走行モードに対応する表示を行うための表示部81を備える。車両1は、例えば、モータ12の動力のみで走行する場合であって、法規制で定められた所定速度を超える速度で走行する場合には原動機付自転車に該当するため、車両1にはナンバープレートを設ける必要がある。即ち、走行モードに対応する表示の一例は、ナンバープレートである。他方、ペダル7をこぐ人力駆動力のみで走行する場合、又は人力駆動力に対するモータ12のアシスト率が法規制で定められた所定値以下である電動アシストモードで走行する場合には、ナンバープレートを設ける必要はない。寧ろ周囲の通行人や車が原動機付自転車として走行していると勘違いしないように、ナンバープレートを隠すことが望ましい。
【0026】
表示部81には、走行モードに対応する表示(以下、「走行モード表示」という場合がある)として、ナンバープレート以外の表示が設けられてもよい。走行モード表示の例としては、ピクトグラムが挙げられる。表示部81の表示形態の詳細については後述する。表示部81は、車両1の走行モードに応じて、走行モード表示を切り替え可能に構成されている。走行モード表示は、ユーザーにより手動で切り替えられてもよく、車両1の走行状態等に基づいて自動で切り替えられてもよい。
【0027】
車両1は、上述の通り、モータ12を備え、複数の走行モードで走行可能な車両であって、モータ12の出力を調整するためのスロットル80と、走行モードに対応する表示を行うための表示部81とを備える。また、車両1は、スロットル80の操作に基づいてモータ12の出力を制御する第1の走行モードと、少なくとも人力駆動力により走行する第2の走行モードとを切り替え可能に構成された制御部20(後述の
図4参照)を備える。制御部20は、例えば、車速に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行する。
【0028】
図3A~
図3Cは、車両1の走行モードについて説明するための図である。車両1は、制御部20の制御の下、
図3A~
図3Cに例示する複数の走行モードを切り替えて走行できるように構成されている。そして、この走行モードの切り替えに伴い、表示部81の走行モード表示が手動又は自動で切り替えられる。
【0029】
図3Aおよび
図3Bは、車両1の走行モードとして、スロットル80の操作に基づいてモータ12の出力を制御する第1の走行モードと、少なくとも人力駆動力により走行する第2の走行モードとが含まれる場合を示している。第1の走行モードでは、スロットル80の操作量に応じて出力が制御されたモータ12の動力により車両1が走行する。第2の走行モードは、ペダル7をこぐ人力駆動力のみで走行する状態、および人力駆動力を法規制で定められた所定値以下のアシスト率でモータ12がアシストして走行する状態(電動アシストモード)が想定される。
【0030】
図3Aは、縦軸に車両1の合算トルクを、横軸に車速をそれぞれプロットしている。合算トルクとは、人力駆動力とモータ12のトルクを足し合わせたトルクである。本願出願時の日本の法規制では、モータ12によるアシスト率は人力駆動力の2倍以下に制限される。また、アシスト率は、車速によっても制限される。具体的には、車速が10km/hを超えると、車速の増加に従ってアシスト率を一定の割合で減じる必要があり、車速が24km/hを超えると、モータ12の出力を停止する必要がある。言い換えると、車速が10km/h以下である場合、人力駆動力に対して2倍以下のモータトルクが出力される。
【0031】
図3Aに例示する第1の走行モードは、最高速度が15km/hに制限され、車道および歩道の少なくとも一方を走行可能なモード(自走モードA)である。車両1は、第1の走行モードにおいて、スロットル80の操作量に基づき、車速が15km/hを超えない範囲でモータ12の出力が制御される。なお、スロットル80が操作される第1の走行モードにおいて、ペダル7をこぐ人力駆動力を追加可能としてもよい。
【0032】
第1の走行モードにおける最高速度(制限速度)は、15km/h、30km/h、又は30km/h以上であってもよく、車両1が使用される国、地域等の法規制に従って適宜変更可能である。また、電動アシストモードにおけるモータ12のアシスト率についても、車両1が使用される国、地域等の法規制に従って適宜変更でき、2倍を超える値に設定することも可能である。
【0033】
図3Bに示す例では、最高速度が第1の走行モードの最高速度未満に制限された自走モード(以下、「自走モードB」とする)が設定されている。自走モードBは、例えば、最高速度が6km/hに制限され、歩道を走行可能なモードである。車両1は、自走モードBにおいて、スロットル80の操作量に基づき、車速が6km/hを超えない範囲でモータ12の出力が制御される。自走モードBは、スロットル80の操作に基づいてモータ12の動力のみで走行するモードであるから、本明細書では第1の走行モードに大別される。
【0034】
図3Cに示す例では、電動アシストモードが存在せず、モータ12の動力のみにより走行する自走モードと、人力駆動力のみにより走行する自転車モードとを有し、自走モードと自転車モードの切り替えが行われる。自走モードの最高速度は30km/hに制限されているが、30km/hを超える速度に設定されてもよく、車両1が使用される国、地域等の法規制、或いは車両1の用途等に従って適宜変更可能である。
【0035】
車両1では、制御部20の機能により走行モードの切り替えに係る制御が実行される。当該制御の具体例としては、人力駆動力、車速、表示部81における走行モード表示等に基づくモータ12の出力制限、走行モードの切り替えに伴う走行モード表示の切り替えなどが挙げられる。制御部20は、例えば、所定の条件が成立した場合に、走行モード表示を自動で切り替えてもよく、ユーザーに走行モード表示の切り替えを許可してもよい。
【0036】
以下、
図4~
図6を参照しながら、車両1の走行モードの切り替えに係る制御を実行する制御部20の機能について詳説する。また、車両1には、当該制御を実行するために必要な情報が制御部20に送信される。
図4は、制御部20、制御部20に接続される検知装置、および制御部20の制御対象であるモータ12等を図示している。
【0037】
図4に示すように、車両1は、制御部20を備える。本実施形態において、制御部20は、モータユニット11に内蔵されている。モータユニット11は、モータ12、駆動回路13、およびモータ12の出力を制御する制御部20を含む。モータユニット11は、車両1の自走および電動アシスト走行を実現する駆動ユニットである。制御部20は、例えば、スロットル80の操作量、クランクに加わる人力駆動力、および車速に基づきモータ12の出力を制御する。モータ12は、バッテリ10から供給される電力で駆動して車両1を走行させることが可能な電動機であればよいが、好適な一例は3相ブラシレスDCモータである。車両1は、走行状態(走行モード)を示す第2表示部810を有していてもよい。第2表示部810は、例えば、ハンドル4又はその近傍に設置され、LED等により走行状態を示す。また、第2表示部810は表示部81に連動して表示を切り替える。
【0038】
制御部20は、第1の走行モードにおいて、例えば、スロットル80の操作量と車速に基づきモータ12の出力を制御する。また、制御部20は、第2の走行モード(電動アシストモード)において、一対のクランクアーム6を連結するクランク軸30に作用するトルク(踏力)と車速に基づきモータ12の出力を制御する。なお、モータユニット11は、車速の代わりにクランク軸30の回転数を用いてモータ12の出力を制御してもよい。
【0039】
車両1は、例えば、クランク軸30に作用する踏力負荷を検知するトルクセンサ14と、車輪の回転数から車速を検知する車速センサ15とを備える。車両1は、クランク軸30の回転数を検知する回転センサ16を備えていてもよい。これらのセンサの検知情報は、制御部20に送信され、モータ12の出力制御に使用される。本実施形態では、制御部20の制御信号に基づいて駆動回路13がスイッチング動作することでモータ12に供給される電流量が変化し、これによりモータ12の出力が制御される。なお、トルクセンサ14など各センサから制御部への入力は、有線で行っても無線で行ってもよい。
【0040】
車両1は、電源をオンオフするための電源スイッチ17を備える。制御部20は、電源スイッチ17の操作信号を取得した場合に、車両1の電源をオンにしてバッテリ10からモータ12に電力を供給し、スロットル80の操作量又はトルクセンサ14により検知される踏力負荷に基づいてモータ12を駆動させる。また、車両1は、走行モードを切り替えるための切り替えスイッチ18を備えていてもよい。走行モードは、ユーザーによる切り替えスイッチ18等の操作に基づいて変更されてもよく、車速および人力駆動力等に基づいて自動的に変更されてもよい。車両1には、電源スイッチ17、切り替えスイッチ18、また前照灯、ウィンカー等を点灯させるスイッチ等を含むスイッチユニットが設けられていてもよい。
【0041】
制御部20は、例えば、第1の走行モードを実行する第1処理部23と、第2の走行モードを実行する第2処理部24と、走行モードの切り替えに係る制御を実行する第3処理部25とを含む。制御部20は、プロセッサ21、メモリ22、および入出力インターフェイス等を備えるマイコンで構成される。プロセッサ21は、制御プログラムを読み出して実行することにより上記各処理部の機能を実現する。メモリ22は、制御プログラム、種々の設定情報等を記憶する、ROM、HDD、SSD等の不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとを含む。
【0042】
図5は、制御部20による車両1の走行状態の制御、走行モードの切り替えに係る制御の概念図である。
図5に示すように、制御部20は、例えば、ペダリング操作量、自走入力操作量、および走行情報に基づいて、現在の走行モードを判定し、走行モードに適合した出力制御を行う。ここで、ペダリング操作量としては、トルクセンサ14により検知される踏力負荷、クランク等の人力駆動力伝達体の回転数等が挙げられる。
【0043】
自走入力操作量は、スロットル80の操作量を意味する。スロットル80の操作量が増えると、即ちスロットル80のレバーの押し込み量が増えると、制限速度内においてモータ12の出力レベルは高くなる。走行情報には、モータ12の出力、車速、加速度、変速段数等の情報が含まれる。制御部20は、車重、傾斜、路面状態、タイヤ空気圧、バッテリ残量、操舵角等を走行情報として取得してもよい。
【0044】
図6は、走行モードの切り替えに係る制御の概要を示すフローチャートである。制御部20は、上述の通り、ペダリング操作量、自走入力操作量、および走行情報等に基づき、車両1の走行モードを認識している(ステップS1)。そして、制御部20は、走行モードの切り替え条件が成立したか否かを判定する(ステップS2)。走行モードの切り替え条件が成立した場合(ステップS2のYes)、その条件に基づいて走行モードの切り替えを実行する(ステップS3)。他方、走行モードの切り替え条件が成立していない場合は(ステップS2のNo)、現在の走行モードを継続し、当該走行モードに適合する出力制御を行う。
【0045】
制御部20は、ステップS3で車両1の走行モードが切り替わると、表示部81の走行モード表示を新たな走行モードに対応する表示に切り替える(ステップS4)。ステップS3,S4の手順は、同時に実行されてもよく、ステップS4→ステップS3の順で実行されてもよい。ステップS3の走行モードの切り替え制御には、新たな走行モードに適合するように、また切り替え時の走行状態がスムーズなものとなるように、モータ12の出力を制御することだけに限定されず、例えば、クランクの回転を固定すること等が含まれる。なお、表示部81の走行モード表示の切り替えを、走行モードを切り替えるトリガーとするとすることも可能である。
【0046】
以下、走行モードの切り替えに係る制御について、具体例を挙げて説明する。なお、以下で示す複数の制御形態を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0047】
制御部20は、車両1の走行中における走行モード表示の切り替えを可能としてもよい。この場合、走行モードを切り替える際にユーザーは車両1を停止させる必要がなく、ユーザビリティが向上する。表示部81には、例えば、電動式の駆動装置が搭載されており、自動的に又はユーザーによる切り替えスイッチ18等の操作に基づいて、車両1の走行中に表示部81の走行モード表示を切り替えることができる。
【0048】
制御部20は、車両1が停車中であることを条件として、走行モード表示の切り替えを可能としてもよい。言い換えると、制御部20は、車両1の走行中における走行モードの表示の切り替えを禁止するように構成されている。この場合、ユーザーは車両1を停車させてから走行モード表示を切り替えることになるため、走行中に表示を切り替える場合に発生し得る不具合をより確実に防止できる。
【0049】
制御部20は、スタンド91が立っていることを条件として、走行モード表示の切り替えを可能としてもよい。この場合、スタンド91により車両1が支持された安定した状態での走行モード表示の切り替えを促すことができる。スタンド91又はその近傍には、スタンド91の状態を検知するセンサが設置され、当該センサの検知情報が制御部20に送信される。制御部20は、この検知情報に基づいて走行モード表示の切り替えを許可する。例えば、走行モード表示を手動で切り替える場合、或いは表示部81又はその近傍に設置された操作部の操作により走行モード表示を切り替える場合には、スタンド91を立てた状態で走行モード表示の切り替えを行うことが好ましい。
【0050】
制御部20は、車両1の走行中において、上位走行モードから下位走行モードへの切り替えを可能としてもよい。ここで、上位、下位とは、2つの走行モードの相対的な関係における上位、下位を意味する。上位走行モードの具体例としては、走行モードに制限速度が設定されている場合は制限速度がより速い走行モード、モータ12の出力レベルがより高い走行モード等を意味する。下位走行モードでは、例えば、車両1が歩道を走行していることが想定されるので、車両1の走行中には上位走行モード→下位走行モードの切り替えのみを許可することで、走行モードの切り替えに伴う問題の発生を防止しつつ、ユーザビリティを高めることができる。なお、走行モードの上位、下位は、速度(例えば、速いほど上位)だけで決定してもよく、交通区分(例えば、車道が上位、歩道が下位)により決定してもよい。また、走行モードには並列関係にある走行モードがあってもよく、並列関係にある走行モードは走行中でも切り替え可能とする。例えば、交通区分で決定される走行モードの場合は、電動アシストモードと上記自走モードBとが並列関係である。
【0051】
制御部20は、走行モード表示の切り替え制御と共に、走行モードの切り替えを実行してもよい。制御部20は、例えば、切り替えられた新たな走行モードに適合するようにモータ12の出力を制限する。上述のように、走行モードの切り替えは、走行モード表示の切り替えと同時に実行されてもよく、走行モード表示の切り替えをトリガーとして実行されてもよく、或いは走行モードの切り替えをトリガーとして走行モード表示を切り替えてもよい。
【0052】
制御部20は、人力駆動力伝達体の状態に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。人力駆動力伝達体は、人力駆動力により回転して人力駆動力を車輪に伝える部品であり、具体例としては、クランク、フロントスプロケット、チェーン、後輪スプロケット等が挙げられる。クランクは、クランク軸30と、クランク軸30の両端部に取り付けられたクランクアーム6とを含む。クランクは、クランクアーム6に取り付けられたペダル7を介して入力される人力駆動力により回転する。
【0053】
制御部20は、クランクの回転数が20rpm以下であるとき、又はクランクが逆回転しているときに、第1の走行モード(自走モード)への走行モードの切り替えを可能としてもよい。言い換えると、制御部20は、クランクが20rpmを超える回転数で正方向に回転している場合に、第1の走行モードへの切り替えを禁止する。制御部20は、例えば、車両1の走行中にスロットル80が操作された場合、クランクの回転数が20rpm以下であることを条件として、第2の走行モードから第1の走行モードへの切り替え、および走行モード表示の切り替えを実行する。
【0054】
制御部20は、クランクの回転が停止していること、即ちクランクの回転数が0rpmであることを条件として、第1の走行モードへの走行モードの切り替えを可能としてもよい。例えば、表示部81に第2の走行モードに対応する表示がなされている場合に、制限速度15km/hの自走モードに切り替える場合、ペダル7がこがれてクランクが正方向に高速で回転していると、車速が制限速度を超過し、走行状態と表示のミスマッチが容易に生じ得る。また、制限速度が異なる自走モード間で切り替えを行う際にも同様の問題が想定される。クランクの回転を考慮した上述の切り替え制御によれば、かかる問題の発生を効果的に抑制できる。
【0055】
クランクの回転数および回転方向は、クランク軸30の回転を検知する回転センサ16を用いて検知される。また、クランク以外の回転体、例えば、後輪スプロケット等のクランク以外の人力駆動力伝達体の回転数から、クランクの回転数を推定してもよい。クランクの回転に関する情報は、制御部20に送信され、走行モードの切り替えに係る制御に使用される。
【0056】
制御部20は、クランクアーム6に取り付けられたペダルが折り畳まれているときに、自走走行モードへの走行モードの切り替えを可能としてもよい。この場合、ペダルをこげないことが周囲の通行人や車から容易に認識されるため、表示部81の表示を自走モードに対応する表示に切り替えても、自走状態と表示のミスマッチが生じない。折り畳み式のペダル100の構造、およびペダルの状態を利用した制御の詳細については、さらに後述する。
【0057】
制御部20は、人力駆動力伝達体の回転が制限されているときに、第1の走行モードへの走行モードの切り替えを可能としてもよい。人力駆動力伝達体の回転が制限された状態とは、回転が制限されていない状態と比較して人力駆動力伝達体を回転させるのにより大きな力が必要な状態、或いは回転が固定された状態の両方を意味する。制御部20は、人力駆動力伝達体の回転が制限されていることを条件として、走行モードを第2の走行モードから第1の走行モードに切り替え、表示部81の表示を第1の走行モードに対応する表示に切り替える。
【0058】
制御部20は、一対のクランクアーム6の少なくとも正方向への回転が制限されているときに、第1の走行モードへの走行モードの切り替えを可能としてもよい。第1の走行モードに移行する際、クランクアーム6は、回転が完全に固定されていてもよく、正方向への回転のみが固定され、逆方向への回転は固定されていない状態であってもよい。この場合、クランクアーム6の回転が固定された後、又はクランクアーム6の回転が固定されると同時に、走行モードが第1の走行モードに切り替えられる。
【0059】
詳しくは後述するが、第1の走行モードにおいて、一対のクランクアーム6は、車両1の前後方向に延びる水平位置で回転が固定されてもよい。或いは、一対のクランクアーム6は、各々が同じ方向に向いた状態で回転を固定することが可能な構成としてもよい。車両1は、クランク等の人力駆動力伝達体の回転を固定する固定機構を備える。固定機構は、例えば、モータユニット11内に設けられている。この場合、固定機構の容易な改造を防止できる。
【0060】
制御部20は、走行モードが第1の走行モードに切り替えられると、人力駆動力伝達体の回転を制限可能としてもよい。即ち、制御部20は、走行モードが第1の走行モードに切り替えられたことを条件として、クランク等の人力駆動力伝達体の回転を制限する。制御部20は、例えば、車両1の走行中に走行モードを切り替える場合、切り替えから所定時間経過後に人力駆動力伝達体の回転を制限してもよい。また、経時的に人力駆動力伝達体の回転負荷を大きくしてもよく、最終的に回転を固定してもよい。人力駆動力伝達体はスプロケットであってもよく、車両1は、スプロケットの回転を固定する固定機構を備えていてもよい。
【0061】
制御部20は、車速に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。制御部20は、例えば、車速が下がったときに、上位走行モードから下位走行モードに切り替える制御を実行してもよい。具体例としては、最高速度が15km/hの上位走行モードで車道を走行中に、車速を6km/hまで低下させた場合、最高速度が6km/hの歩道を走行可能な下位走行モードに切り替え、表示部81の表示を下位走行モードに対応する表示に切り替えることが挙げられる。
【0062】
制御部20は、車速が所定速度以下である場合に限定して、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。制御部20は、例えば、車両1が停車中である場合(車速が0km/h)又は低速走行時に限定して、走行モードの切り替え、および走行モード表示の切り替えを実行してもよい。或いは、自走モードで車道を走行中に、当該走行モードの最高速度を超える速度まで車速が上がった場合、走行モードをより上位の自走モードに切り替え、表示部81の表示を当該走行モードに対応する表示に切り替え可能としてもよい。
【0063】
車速は、車速センサ15を用いて検知される。車速センサ15は、上述の通り、車輪の回転数から車速を検知する。なお、モータ12の回転数、クランクの回転数等を計測して車速を推定してもよく、またGPSを用いて車速を検知してもよい。車速に関する情報は、制御部20に送信され、走行モードの切り替えに係る制御に使用される。
【0064】
制御部20は、第1の走行モードにおいてスロットル80が操作され、かつ車速が所定速度を超える場合に、クランクの正方向の回転を制限してもよい。この場合、モータ12の動力に加えて大きな人力駆動力が入力されることで、車両1が非常に高速な走行状態に至ることを抑制できる。制御部20は、例えば、車速が所定速度を超える場合に、クランクに対して一定の回転負荷を付与してもよく、速度の上昇に伴ってクランクの回転負荷を次第に大きくしてもよい。下り坂等で車速が所定速度を超える場合、クランクを固定していると、人力によって加速されることを抑制できる。また、クランクが固定され足場が安定することで、高速走行時にもより安定した走行が可能となる。
【0065】
制御部20は、乗車の有無に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。車両1は、乗車の有無に関する情報を検知する乗車検知部を備え、制御部20は、乗車検知部により取得される情報に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行する。制御部20は、例えば、乗車検知部の情報に基づいて乗車状態であると判定した場合に、走行モードの切り替えを実行する。これにより、例えば、非乗車状態で走行モードが自走モードに切り替わり、非乗車状態の車両1が走り出すといった問題をより確実に防止できる。
【0066】
或いは、制御部20は、乗車検知部の情報に基づいて乗車状態であると判定した場合に、走行モードの切り替えを禁止してもよい。この場合、例えば、電動アシストモードで歩道を走行中に自走モードに切り替えられ、車両1が歩道を自走するような問題が発生することをより確実に防止できる。制御部20は、例えば、乗車検知部の情報に基づいて非乗車状態であると判定した場合に、走行モードの切り替えを可能とする。
【0067】
乗車検知部の一例は、車体に設置された歪みセンサ、又は圧力センサである。歪みセンサは、例えば、クランク軸30等のモータユニット11の構成部材、車輪のハブ軸等に設置される。制御部20は、タイヤの空気圧に基づいて乗車の有無を判断してもよい。この場合、車輪のホイール等に歪みセンサ、圧力センサ等が設置され、乗車の有無によりタイヤの空気圧の変化することを利用してユーザーの乗車判定を行う。
【0068】
また、制御部20は、モータ12の出力に基づいて乗車の有無を判断することも可能である。乗車の有無により発進時のモータトルクが変化するため、ユーザーの乗車判定を行うことができる。その他、ユーザーの乗車判定は、サドル5の着座センサ等を用いる方法、サドル5等を乗車できない状態にできる自転車において、その状態を検知する方法など、従来公知の方法で実行できる。
【0069】
制御部20は、所定の前記人力駆動力が検知されたときに、走行モードを人力駆動力により走行する第2の走行モードに切り替えてもよい。車両1には、人力駆動力に関する情報を取得するためのトルクセンサ14等の検知部が設けられている。トルクセンサ14は、例えば、クランク軸30に設置された磁歪式センサであって、クランク軸30に作用する踏力負荷を検知する。制御部20は、例えば、トルクセンサ14によりペダル7をこぐ所定の人力駆動力が検知されたときに、走行モードを自走モードから電動アシストモードに切り替え、表示部81の表示を電動アシストモードに対応する表示に切り替える。
【0070】
以下、
図7A~
図7Dを参照しながら、表示部81の構成について詳説する。
【0071】
図7Aは、表示部81の拡大図である。表示部81は、走行モードに対応する表示が設けられるプレート状の本体部82と、本体部82を支持する支持部83とを有する。表示部81は、例えば、リアキャリア92の下部に設置されている。この場合、リアキャリア92の機能を損なうことなく、表示部81を車両1に対して安定に固定できる。表示部81の支持部83は、締結部材を用いてリアキャリア92に固定されていてもよく、溶接等によりリアキャリア92と一体化されていてもよい。
【0072】
表示部81は、走行モード表示が車両1の後方から確認し易いように、リアキャリア92の後端部に設置されている。表示部81の本体部82は、支持部83により回転可能に支持されていてもよい。支持部83は、車両1の左右方向に長いプレート状の本体部82を左右両側から挟持し、回転可能に支持している。表示部81は、長手方向と短手方向が存在する場合、長手方向が車両1の左右方向に沿うように配置されることが好ましい。この場合、後輪3bとリアキャリア92の間隔を広げる必要がないので、重心が高くなることが抑制され良好な走行安定性を確保できる。
【0073】
表示部81は、例えば、複数の走行モード表示が個別に設けられた複数の表示面を含み、表示面の移動により走行モード表示が切り替わるように構成されていてもよい。
図7Aの(a)では、走行モードに対応する表示として、自走モードを示すピクトグラムが設けられた本体部82の表示面82aが車両1の後方を向き、上下方向に沿って配置されている。なお、自走モードに対応する表示は、ナンバープレートであってもよい。
【0074】
図7Aの(b)は、表示面82aが上方を向いた状態を示す。表示部81は、走行モード表示が車両1の後方に向いた第1の状態と、走行モード表示が車両1の上方に向いた第2の状態との間で移動可能に構成されている。本体部82は支持部83により回転可能に支持されているため、本体部82を回転させることで表示面82aの向きを容易に変更することができる。表示部81は、表示面82aが車両1の下方に向くように回転可能に構成されていてもよい。自走モードに対応する表示が車両1の後方を向いていない状態は、例えば、車両1の走行モードが第2の走行モードであることを示す。
【0075】
図7Aの(c)は、(a)で示す状態から本体部82を反転させて表示面82bを車両1の後方に向けた状態を示す。本体部82は、互いに異なる走行モード表示が設けられた2つの表示面82a,82bを有し、表示部81は、本体部82を反転させることで走行モード表示を切り替え可能に構成されていてもよい。
【0076】
表示部81には、例えば、本体部82を回転させる電動式の駆動装置が設けられている。制御部20は、駆動装置の動作を制御して本体部82を回転させ、表示部81の表示を走行モードに対応する表示に切り替えることができる。なお、表示部81に駆動装置を設けず、本体部82を手動で回転させる構成とすることも可能である。
【0077】
図7Bに示すように、表示部81は、後輪3bの泥除け93に設置されていてもよい。表示部81は、走行モード表示が車両1の後方から確認し易いように、泥除け93の後端側に設置されることが好ましい。表示部81は、リアキャリア92、泥除け93など、車体を構成するいずれの部材に設置される場合も、後輪3bの回転軸より車両1の後方に設置されることが好ましい。この場合、ユーザーの衣服などにより表示部81が覆われて遮蔽されることを抑制できる。また、後輪3bが跳ね上げる泥などで表示部81が意図せず遮蔽されることを抑制できる。
【0078】
表示部81は、車輪を施錠するロック装置に設置されていてもよい。後輪3bを施錠するロック装置が設けられている場合、当該ロック装置に表示部81を固定してもよい。ロック装置は、一般的に、リアキャリア92の下に設けられるが、この部分は車両1が転倒したときにも損傷を受け難い場所であるから、ロック装置に表示部81を設置することで表示部81の損傷リスクが下がる。リアキャリア92の下部、泥除け93等に表示部81を設置する場合も同様に、表示部81の損傷リスクを下げることができる。
【0079】
表示部81をリアキャリア92、泥除け93、およびロック装置のいずれに設置する場合も、表示部81を取り外す際には工具が必要である。このため、シートポストのように工具を使用しなくても取り外し可能な部分に表示部81を設置する場合と比較して、容易に取り外しができないので、例えば、表示部81のいたずらによる取り外しリスク、盗難のリスク等を下げることができる。
【0080】
図7Cに示すように、表示部81は、複数の走行モード表示が個別に設けられた複数の表示面を含み、当該表示面の移動により走行モード表示が切り替わるように構成されていてもよい。
図7Aに示す表示部81は、例えば、2つの表示面82a,82bを有するが、
図7Cの(a)に示す表示部81は3つの表示面82a,82b,82cを有し、
図7Cの(b)に示す表示部81は4つの表示面82a,82b,82c,82dを有する。
図7Cに示す例では、支持部83により回転可能に支持される本体部82が多面体で構成されている。
【0081】
図7Cの(a)に示す表示部81は、三角柱形状の本体部82を有し、本体部82の2つの底面に接続された支持部83により本体部82が回転可能に支持された構造を有する。制御部20は、例えば、表示部81の駆動装置を制御して本体部82を回転させ、車両1の後方に向ける表示面を変更することで走行モード表示を切り替える。
図7Cの(b)に示す表示部81は、四角柱形状の本体部82を有し、制御部20の制御の下、駆動装置により本体部82が回転可能に構成されている。多面体からなる本体部82を用いることにより、例えば、部品点数を抑えながら多くの走行モード表示を表示することが可能であり、また改ざんされ難く、故障も発生し難い。
【0082】
表示部81は、走行モード表示がそれぞれ設けられた複数の本体部82を有し、複数の本体部82の各々が、第1の状態と第2の状態との間で移動可能に構成されていてもよい。本体部82を多面体構造とすることで表示部81に表示可能な走行モード表示の数は増えるが、1つの本体部82で表示面の数を増やすと、各表示面の面積は小さくなる。このため、本体部82を構成する多面体は三角柱又は四角柱が好ましい。表示部81に表示可能な走行モード表示の数を増やし、各表示の面積を大きくするための手段として、複数の本体部82を設けることは有効である。
【0083】
なお、表示部81には、走行モード表示を遮蔽する装置が設けられていてもよい。例えば、走行モード表示が設けられた表示面は車両1の後方を向いた状態で動かず、表示面が遮蔽部材により覆われることで、第1の走行モードに対応するナンバープレート等の表示が遮蔽されてもよい。遮蔽部材には、第2の走行モードに対応するピクトグラム等の表示が描かれていてもよい。
【0084】
表示部81は、走行モード表示を覆うように設けられ、表示の透過状態と遮蔽状態とを切り替え可能な調光フィルムを有していてもよい。調光フィルムは、例えば、印加する電圧に応じて透明度が変化する液晶層を含むフィルムである。制御部20は、調光フィルムに印加する電圧を制御することにより、走行モード表示の表示状態と非表示状態を切り替えることができる。
【0085】
表示部81は、走行モード表示が設けられた本体部と、本体部が着脱自在に取り付けられた固定部とを有していてもよい。表示部81は、例えば、工具を使用することなく本体部を固定部に取り付け、固定部から取り外し可能に構成されている。走行モード表示が不要な場合には、ユーザーは固定部から本体部を取り外してもよいが、例えば、第1の走行モードでは、表示部81に走行モード表示を設ける必要がある。このため、制御部20は、車両1の走行モード等に基づいて、固定部からの本体部の取り外しの可否を判断してもよい。この場合、ユーザーは取り外しが許可された場合にのみ、本体部を取り外すことができる。
【0086】
図7Dに示すように、表示部81は、本体部82と、固定部84と、本体部82に設けられた電子タグ85とを有していてもよい。走行モード表示が設けられた本体部82は、固定部84に対して着脱自在である。なお、本体部82の脱落、盗難等を防止するために、固定部84には本体部82のロック機構が設けられていてもよい。固定部84は、例えば、リアキャリア92、泥除け93、後輪3bを施錠するロック装置等に設置される。また、固定部84には、電子タグ85の情報を読み取る読取部86が設けられている。
【0087】
電子タグ85は、内蔵されたメモリにより、走行モードに関する情報を記憶している。電子タグ85は、例えば、読取部86から発信される電波に応答して記憶した情報を送信する。電子タグ85は、一般的に、RFタグ、又は無線タグとも呼ばれ、読取部86には、RFIDリーダーが用いられる。電子タグ85には、走行モードに対応する識別情報が記憶されていてもよく、制御部20が当該識別情報に基づいて、表示部81の走行モード表示に対応する走行モードを認識する。また、電子タグ85には、走行モードに関する情報と共に、車両1の識別情報が記憶されていてもよい。
【0088】
図7Dでは、プレート型の本体部82の表裏面を図示している。本体部82は、例えば、第1の自走モード(走行モードA)に対応する第1の表示、および第1の電子タグ85aを含む第1の表示面82aと、第2の自走モード(走行モードB)に対応する第2の表示、および第2の電子タグ85bを含む第2の表示面82bとを有する。
図7Dに示す例では、第1の表示として、バイクのナンバープレートが設けられ、第2の表示として、最高速度が15km/hに制限される車両のピクトグラムが設けられている。このピクトグラムの詳細については後述する。
【0089】
本体部82は、例えば、固定部84側に表示面82a又は表示面82bを向けた状態で、固定部84に取り付けられ、固定部84と反対側に向いた表示面が車両1の後方に向かって表示されることになる。そして、固定部84と反対方向を向いた表示面の表示に対応する走行モードで車両1が走行するように制御される。なお、本体部には3つ以上の表示面が設けられていてもよい。
【0090】
図7Dに示す例では、固定部84の左右に1つずつ読取部86a,86bが設置されている。そして、電子タグ85aは表示面82aの右側に、電子タグ82bは表示面82bの左側にそれぞれ配置されている。このため、表示面82aが車両1の後方に向かって表示される場合は、電子タグ85bが読取部86bにより読み取られ、表示面82bが車両1の後方に向かって表示される場合は、電子タグ85aが読取部86aにより読み取られる。
【0091】
この場合、例えば、電子タグ85aには第2の自走モードに関する情報(識別情報)が記憶され、電子タグ85bには第1の自走モードに関する情報が記憶されている。ゆえに、第1の表示を含む表示面82aが表示された状態において、表示面82bの電子タグ85bに記憶された第1の自走モードに関する情報が読取部86bにより読み取られる。なお、各表示面において電子タグを同じ位置に配置し、1つの読取部により各電子タグの情報を読み取る構成とすることも可能である。
【0092】
制御部20は、電子タグ85の情報に基づいて、表示部81に表示されている走行モード表示に関する情報を取得してもよい。制御部20は、例えば、読取部86により読み取られた電子タグ85の情報から、表示部81に表示中の走行モード表示を認識し、当該表示に対応する走行モードに従ってモータ12を制御する。制御部20は、本体部82の表示面が切り替えられて走行モード表示が変更されたときに、車両1の走行モードを切り替えてもよい。なお、本体部82に1つの電子タグ85を設け、読取部86を複数箇所に設置して、電子タグ85が検知される読取部86が変化することで、走行モードを変更する構成とすることも可能である。
【0093】
制御部20は、電子タグ85から車両の識別情報を取得し、取得された識別情報が車両1の識別情報と一致する場合に、走行モードの切り替えに係る制御を含む種々の制御を実行してもよい。制御部20は、取得された識別情報が車両1の識別情報と一致しない場合、電源をオフにする、又は車輪を施錠するなど、車両1の走行に係る動作を禁止してもよい。この場合、他の車両の本体部を固定部に取り付けても、車両1は動かない。
【0094】
車両1は、固定部84から取り外された本体部82を保持する保持部87を備えていてもよい。また、保持部87には、電子タグ85の情報を読み取る読取部86cが設置されていてもよい。保持部87は、ハンドル4の近傍に設けられてもよい。車両1に前カゴが設置される場合は、保持部87を前カゴに設けてもよい。表示部81に走行モード表示を設ける必要がない場合は、本体部82を固定部84から取り外し、保持部87に収容することができる。なお、保持部87には、電子タグ85の読取部86cの代わりに、本体部87の存在を検知可能なセンサを設置してもよい。
【0095】
制御部20は、例えば、読取部86cにより取得された電子タグ85の情報に基づき、本願出願時の日本の法規制上、走行モードを表示する義務がない電動アシストモード等の制御を実行する。また、制御部20は、本体部82が固定部84又は保持部87に配置され、電源スイッチ17がオンされたときに、車輪のロック装置を解錠してもよい。この場合、本体部82(プレート)を鍵として使用できる。本体部82を車体から取り外したときに、ロック装置が作動して車輪が施錠されてもよい。
【0096】
図8は、表示部81に表示されるピクトグラムの一例を示す。表示部81には、走行モードを示す表示として、ピクトグラムを用いることができる。ピクトグラムは、伝えたい内容が直感的に理解できるように簡単な記号、絵柄等を用いて図案化されたものであって、絵文字とも呼ばれる。走行モードを示すピクトグラムを用いることにより、周囲の通行人や車が車両1の走行状態を容易に把握できる。また、ピクトグラムの少なくとも一部は、反射材で構成されていてもよい。この場合、夜間においてもピクトグラムを認識することが容易になる。表示部81は、ライト等によって照らしてもよい。
【0097】
図8(a)は、自走モードに対応するピクトグラムを示す。このピクトグラムは、車輪、サドル、ハンドル、ペダル、クランクアーム、バックミラー、バッテリ、およびモータ等を示す記号、絵柄を含み、モータの動力のみにより走行する自走モードを示すものとなっている。また、ペダルが付いた一対のクランクアームが水平方向に延びた状態となっていることからも、このピクトグラムが自走モードを示すことが容易に理解される。
【0098】
図8(b)は、電動アシストモードに対応するピクトグラムを示す。このピクトグラムは、
図8(a)のピクトグラムと同様に、車輪、サドル、ハンドル、ペダル、クランクアーム、バッテリ、およびモータ等を示す記号、絵柄を含むが、バックミラーの絵柄を含まない。また、一対のクランクアームは水平方向に延びた状態ではなく、回転するイメージを抱かせる。このため、
図8(b)のピクトグラムは、ペダル7をこぐ人力駆動力をモータ12の動力でアシストする電動アシストモードを示すものと理解される。
【0099】
ピクトグラムは、最高速度が規定された走行モードを示すものであってもよく、表示部81には、ピクトグラム内、又はピクトグラムと共に、法規制等により定められた最高速度の情報が含まれていてもよい。
図8(a)に示す例では、自走モードを示すピクトグラムと共に、モータで自走可能な最高速度が15km/hであることを示す数字と記号が設けられている。
図8(b)に示す例では、電動アシストモードを示すピクトグラムと共に、アシスト可能な最高速度が24km/hであることを示す数字と記号が設けられている。また、各走行モード表示においてピクトグラムの背景色を変更してもよい。即ち、異なる走行モードを示す各ピクトグラムには、互いに異なる背景色を用いる。この場合、車両1の走行状態の違いが周囲からより認識され易くなる。
【0100】
図8(c)は、駐車状態に対応するピクトグラムを示す。表示部81には、走行モードに対応する表示と共に、又は当該表示に代えて、駐車状態を示すピクトグラムが表示されてもよい。
図8(c)のピクトグラムが表示部81に表示されている場合、大きなPの文字により車両1が駐車状態であることが容易に理解される。制御部20は、例えば、モータ12の電源がオフであり、かつスタンド91が立てられたときに、表示部81に駐車状態を示すピクトグラムを表示させてもよい。
【0101】
以下、
図9および
図10を参照しながら、車両1の走行中に走行モードを切り替える場合の制御の一例について説明する。
【0102】
図9は、車両1が自走モードで走行中にユーザーがペダル7をこぎ始め、走行モードが電動アシストモードに切り切り替わる場合を示している。
図9(a)は、走行状態のスムーズな変化を実現するための制御を行わない場合の時間とトルクの関係を示し、
図9(b,c)は、走行状態のスムーズな変化を実現するための制御を行う場合の時間とトルクの関係を示す。
【0103】
制御部20は、例えば、人力駆動力が検知されたときに、車両1の走行モードを、人力駆動力により走行する第2の走行モードに切り替える。具体的には、ペダル7から入力される人力駆動力(人のトルク)の検知をトリガーとしてモータ12を制御し、人のトルクの2倍のトルクをモータ12から出力させる。そして、車両1の総出力として、人のトルクとモータトルクが1:2で合算されたトルクが出力される。車両1には、人力駆動力に関する情報を取得するための検知部として、トルクセンサ14が設けられている。なお、回転センサ16等が当該検知部として使用されてもよい。検知部は、人力駆動力に関する情報を取得できるものであればよく、その種類、設置場所等は特に限定されない。
【0104】
図9(a)では、走行モードが自走モードから電動アシストモードに切り替わった際に、上記1:2のアシスト率でモータ12の出力が制御される場合を示している。この場合、モータトルクを人のトルクの2倍までしか出せないため、合算トルクの急減が想定され、車両1の総出力に谷が生じ得る。
【0105】
制御部20は、走行モードを切り替えるときに、モータ12の出力、人力駆動力、およびスロットル80の操作量に基づき、当該切り替えの前後における合算出力(合算トルク)の変化量が±50%以内になるようにモータ12の出力を制御することが好ましい。この場合、走行状態の変化が滑らかになり、走行安定性が向上する。制御部20は、アシストモードから自走モードに切り替える場合、或いはアシスト率が高いアシストモードからアシスト率が低いアシストモードに切り替える場合、又はその逆の場合についても、走行モードの切り替えの前後における合算出力の変化量を±50%以内に抑えることが好ましい。
【0106】
図9(b)に示す例では、人力駆動力が検知されたときに、その時点におけるモータトルクを同程度のレベルに所定時間維持することにより、予め定められたアシスト率に起因して発生し得るモータトルクの急減を抑制している。即ち、次の出力に滑らかにつながるようにモータ出力を維持することで、車両1の総出力の谷(
図9(a)参照)を無くして乗り心地を向上させている。この場合も、人力駆動力の検知をトリガーとして走行モードが電動アシストモードに切り替わり、人力駆動力の増加と共に合算トルクが上昇する。所定時間経過後、モータトルクの維持が解除され、例えば、上記1:2のアシスト率で人力駆動力に応じてモータ12の出力が制御される。
【0107】
図9(c)に示す例では、所定の閾値以上の人力駆動力(人のトルク)が検知されたときに、車両1の走行モードを自走モードから電動アシストモードに切り替えている。
図9(c)に示す例においても、人力駆動力の検知をトリガーとして走行モードの切り替えを行うが、トリガーとなる人力駆動力の閾値を上げることにより、検知される人力駆動力が小さい場合には自走モードを継続してモータトルクの急減を抑制している。これにより、車両1の総出力の谷を浅くして乗り心地を向上させている。
【0108】
図10は、車両1が電動アシストモードで走行中にスロットル80を操作して自走モードに切り替わる場合を示している。制御部20は、スロットル80が操作されたときに、走行モードを自走モードの切り替え、自走モードに対応するモータ12の制御を行う。
図10(a)は、走行状態のスムーズな変化を実現するための制御を行わない場合の時間とトルクの関係を示し、
図10(b)は、走行状態のスムーズな変化を実現するための制御を行う場合の時間とトルクの関係を示す。
【0109】
図10(a)に示すように、スロットル80の操作量が少なく、アシストモードにおけるモータトルクよりも、自走モードにおけるモータトルクが大幅に小さくなる場合は、自走モードに切り替わった際に合算トルクが急減することが想定される。この場合、ユーザーに大きな減速感を与える可能性がある。
図10(b)に示す例では、アシストモードから自走モードに移行する際に合算トルクを検知し、モータ12の出力を維持又は出力変化量を小さくしている。これにより、合算トルクの急減が抑制されて走行状態の変化が滑らかになる。
【0110】
また、車両1が電動アシストモードで走行中にスロットル80を操作して自走モードに切り替わる場合に、スロットル80が操作された時点(以下、「起算点」とする)から所定時間、起算点におけるモータ出力の±50%の範囲内でモータ出力を制御してもよい。この場合も、走行状態の変化が滑らかになり、走行安定性が向上する。所定時間は特に限定されないが、所定時間を短くするほど、走行モード切り替え時のトルク変化の傾きは大きくなり易く、所定時間を長くするほど、トルク変化の傾きは小さくなり易い。所定時間の一例は、1秒である。
【0111】
なお、所定時間およびモータ出力の変化範囲は、適宜変更可能であってもよく、また当該制御の適用はアシストモードから自走モードへの切り替え時に限定されない。移行する走行モードによって、所定時間およびモータ出力の変化範囲を異ならせてもよい。所定時間とモータ出力の変化範囲の一例を下記する。
第1の走行モード→第2の走行モード:所定時間は1秒、変化範囲は±50%以内
第2の走行モード→第1の走行モード:所定時間は0.5秒、変化範囲は±50%以内
【0112】
図11は、車両1の側面図であって、クランクの回転が固定された状態を示す。上述のように、車両1は、第1の走行モードにおいて、人力駆動力伝達体の回転が制限されてもよく、例えば、一対のクランクアーム6の少なくとも正方向への回転が固定される。制御部20は、クランクアーム6の回転を固定した後、又はクランクアーム6の回転を固定すると同時に、走行モードを第1の走行モードに切り替えてもよく、走行モードを第1の走行モードに切り替えた後、クランクアーム6の回転を固定してもよい。
【0113】
図11に示すように、一対のクランクアーム6は、第1の走行モードにおいて、車両1の前後方向に延びる水平位置で回転が固定されてもよい。この場合、左右のペダル7と地面との距離(車両の転倒角)が大きくなり、自走状態においてペダル7が地面に接触し難く走行安定性が向上する。また、クランクアーム6が水平状態で固定される場合、車両1が自走状態であることが認識され易い。クランクアーム6は、正方向への回転のみが固定され、逆方向への回転は可能な状態とすることもできる。この場合、クランクアーム6の正方向への回転が固定された後、クランクを逆回転させることで、左右のペダル7の位置をユーザーの好みに応じて変更できる。
【0114】
車両1は、クランクの回転を固定する固定機構を備える。
図12Aおよび
図12Bおよび
図13Aおよび
図13Bは、モータユニット11に内蔵された固定機構の一例を示す図である。固定機構は、制御部20の制御の下、クランクの回転をロックし、またロックの解除を行う。
【0115】
図12Aおよび
図12Bに示すように、モータユニット11は、クランク軸30と、クランク軸30と同軸に取り付けられたワンウェイクラッチ31と、クランク軸30に対して回転可能に取り付けられたフロントスプロケット32とを備える。フロントスプロケット32には、ワンウェイクラッチ31を介してクランク軸30の回転力が伝達される。また、モータユニット11は、クランク軸30を回転可能に支持する軸受33が取り付けられたユニットケース19を備える。クランク軸30は、クランクアーム6が軸方向両端部にそれぞれ固定された回転軸であり、軸方向両端部がユニットケース19から左右に突出している。ワンウェイクラッチ31があることで、モータ12の駆動力のみで走行する際にクランク軸30およびクランクアーム6が連れ回ることを防ぐことができる。
【0116】
クランク軸30の一部には、軸方向に沿って溝30aが形成されている。この溝30aを利用して、筒状体34がクランク軸30の外周面を覆うようにクランク軸30に固定されている。筒状体34の周囲には、磁歪式のトルクセンサ14およびクランク軸30の回転を検出するクランク回転センサが配置されている。クランク軸30に固定された筒状体34はペダル7の踏力により捩じれ、その捩じれの程度は踏力により変化するため、磁歪式のトルクセンサ14を用いて踏力負荷を検知できる。なお、クランクアーム6が取り付けられるクランク軸30の軸方向両端部は断面四角形状に形成されている。なおトルクセンサ14は磁歪式に代えて歪ゲージ式やポテンショメータなどでもよいし、クランク軸30以外に後輪のハブ内に設けてもよい。またクランク回転センサはエンコーダ式でもよいし、磁力変化を検出するものでもよい。
【0117】
モータユニット11は、さらに、クランクの回転を固定するための固定機構40を備える。固定機構40は、クランク軸30に対して軸方向にスライド可能に取り付けられたスリーブ41と、ユニットケース19に固定された係止リング42とを有し、スリーブ41の突起41aが係止リング42の溝42aに篏合することでクランク軸30の回転をロックするように構成されている。また、固定機構40には、スリーブ41をクランク軸30の軸方向に沿ってスライドさせるためのアクチュエータ50が設けられている。
【0118】
スリーブ41は、クランク軸30の直径よりも大きな内径を有し、内周面に溝30aと嵌合する溝が形成された筒状ないし円環状の部材であって、スプライン結合により軸方向にスライド可能な状態でクランク軸30に固定されている。スリーブ41の外周面には、径方向に並んで2つの突起41aが形成されている。
図12Aおよび
図12Bに示す例では、クランク軸30(四角軸)の角の位置に合わせてクランク軸30とスリーブ41のスプラインに欠歯箇所を設け、欠歯箇所に合わせて突起41aを形成している。なお、一対のクランクアーム6は、突起41aが並ぶ方向に延びるようにクランク軸30に取り付けられている。
【0119】
アクチュエータ50は、例えば、モータ51、円筒ウォーム52、ウォームホイル53、アーム54、およびロッド55を有する。モータ51の回転力は、円筒ウォーム52およびウォームホイル53を介して、ロッド55に係合するアーム54に伝達される。ロッド55は、クランク軸30の軸方向に沿った車両1の左右方向に移動可能な構造を有し、アーム54に押されて右方向に移動する。また、ロッド55の右側端部には、ロッド55を左方向に付勢するバネ56が設けられている。この場合、バネ56の付勢力でロッド55が左方向に移動し、アーム54がバネ56の付勢力を超える力でロッド55を押すことでロッド55が右方向に移動する。
【0120】
アクチュエータ50は、ロッド55とスリーブ41を連結するアーム57を有する。アーム57はロッド55と連動してクランク軸30の軸方向に沿って左右に動くため、アーム57が連結されたスリーブ41もクランク軸30の軸方向に沿って左右に動く。バネ56の付勢力でロッド55が左方向に移動すると、スリーブ41が左方向に移動し、スリーブ41と係止リング42が係合することでクランク軸30がロックされる。また、アーム54がバネ56の付勢力を超える力でロッド55を右方向に押すことで、スリーブ41が係止リング42から離れてクランク軸30のロックが解除される。
【0121】
係止リング42は、ユニットケース19に固定されている。例えば、係止リング42の外周面には細かいセレーションが形成され、係止リング42はユニットケース19に圧入されて回転不能に強固に固定される。係止リング42には、スリーブ41の2つの突起41aがそれぞれ篏合する2つの溝42aが形成されている。また、係止リング42は、溝42aが車両1の前後方向に並ぶようにユニットケース19に固定されている。このため、スリーブ41がアクチュエータ50に押されて左方向に移動し、突起41aが係止リング42の溝42aに嵌まると、一対のクランクアーム6は車両1の前後方向に延びる水平位置で固定され、正方向、逆方向のいずれにも回転しない状態となる。
【0122】
図13Aおよび
図13Bは、クランクの回転を固定するための固定機構の他の例を示す図である。
図13Aおよび
図13Bに示す固定機構45は、クランク軸30に対して軸方向にスライド可能に取り付けられたスリーブ46と、ユニットケース19に固定された係止リング47と、アクチュエータ50とを備える点で、
図12Aおよび
図12Bに示す固定機構40と共通する。一方、固定機構40ではクランクの両方向の回転が固定されるが、固定機構45は正方向のみの回転を固定するように構成されている点で、固定機構40と異なる。即ち、固定機構45では、クランクの逆方向への回転は固定されない。
【0123】
スリーブ46には、係止リング47の溝47aに嵌まる爪46aと、バネ48とが設けられている。係止リング47は、固定機構40の場合と同様に、溝47aが車両1の前後方向に並ぶようにユニットケース19に固定されている。バネ48は、爪46aを起き上がらせ、スリーブ46の外周面から突出した状態とする。そして、爪46aは、クランクが正方向に回転するときに係止リング47の溝47aに嵌まって引っ掛かるように構成されている。一方、爪46aおよび溝47aは、クランクが逆方向に回転するときには爪46aが溝47aに嵌まっても引っ掛からないような形状となっている。
【0124】
固定機構45によれば、クランクの正方向の回転が固定された状態において、クランクを逆回転させることが可能で、左右のペダル7の位置をユーザーの好みに応じて変更できる。なお、係止リングと篏合するスリーブの代わりに、例えば、ライニングを備えたスリーブを用いて、ライニングをユニットケース19の内面に押し付けて摩擦力を発生させることにより、クランクの回転を制限することも可能である。
【0125】
図14は、バックミラー90およびその近傍の拡大図である。制御部20は、バックミラー90の状態に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。制御部20は、例えば、バックミラー90が車両1の外側に広がった状態で、車両1の走行モードを、法規制上バックミラー90が必要な走行モードに切り替え、バックミラー90が車両1の内側に収容された状態で、法規制上バックミラー90が不要な走行モードに切り替える。制御部20は、バックミラー90の状態をトリガーとして、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。バックミラー90の状態に基づいて走行モードの切り替えに係る制御が実行される場合、バックミラー90又はその近傍に、バックミラー90の状態を検知するセンサが設けられる。
【0126】
図14に示すように、バックミラー90は、ミラー本体90aと、ミラー本体90aを支持する支持軸90bとを含む。支持軸90bは、ハンドル4に固定され、車両1の上下方向に沿うように配置されている。この場合、ミラー本体90aが通行人や他の車両に接触するようなことがあっても、支持軸90bを中心にミラー本体90aが回転し、通行人や他の車両に対する衝撃を和らげることができる。また、ミラー本体90aが何らかの物に接触した場合に、ハンドル4に伝わる衝撃が低減され、ハンドル4が振られることを抑制できる。
【0127】
バックミラー90は、車両1の外側に位置する第1の位置と、車両1の内側に位置する第2の位置との間で移動可能に構成されている。バックミラー90は、不使用時においてミラー本体90aを車体の内側に位置させ車幅を小さくすることが可能な折り畳み構造を有している。本実施形態では、支持軸90bを中心としてミラー本体90aが回転するように構成されている。バックミラー90には、ミラー本体90aの回転を固定する固定機構が設けられていてもよい。また、2本の軸がジョイントで連結されて支持軸90bが構成され、ジョイントよりも先端側部分にミラー本体90aが固定されていてもよく、ジョイント部分で支持軸90bが屈曲することでミラー本体90aが移動する構造としてもよい。
【0128】
図15は、折り畳み式のペダル100の斜視図である。車両1には、折り畳みができないペダル7に代えて、折り畳み式のペダル100が設けられてもよく、制御部20は、ペダル100の状態に基づいて、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。制御部20は、例えば、ペダル100が折り畳まれているときに、第1の走行モードへの走行モードの切り替えを可能とする。制御部20は、ペダル100の状態をトリガーとして、走行モードの切り替えに係る制御を実行してもよい。ペダル100の状態に基づいて走行モードの切り替えに係る制御を行う場合、ペダル100又はその近傍に、ペダル100の状態を検知するセンサが設けられる。
【0129】
図15に示すように、ペダル100は、折り畳み機構を有するペダル本体101と、回転軸となるペダル軸104とを有する。ペダル本体101は、ユーザーの足がのせられる部分である。ペダル100は、ペダル軸104の一端部に形成されたネジにより、クランクアーム6の先端部に対して回転可能に固定されている。ペダル本体101は、ペダル軸104に対して回転可能に取り付けられたベース部102と、ベース部102に連結された可動部103とを有する。
【0130】
ベース部102は、ペダル軸104が挿通される筒部を有し、筒部内には軸受が設けられている。ベース部102は、ブロック状に形成され、ペダル軸104を回転軸として回転する。可動部103は、折り畳まれていない状態において、ペダル軸104の軸方向に長い略U字状に形成されている。可動部103は、ベース部102と共にペダル軸104を回転軸として回転する。可動部103は、ベース部102を両側から挟むように、支持軸105を用いてベース部102に連結されている。可動部103は、ペダル軸104に直交する支持軸105を回転軸としてクランクアーム6の方向に回転可能である。
【0131】
可動部103は、自転車の走行時に折り畳まれないように、図示しないロック機構によりベース部102に固定されている。ペダル100は、可動部103のロックを解除するための操作部106を有し、操作部106を外側に押すことでロックが解除され、支持軸105を回転軸とする可動部103の回転が可能となる。折り畳み式のペダル100は、支持軸105を回転軸として可動部103をクランクアーム6の方向に回転させることで、クランクアーム6に沿うようにペダル100を折り畳むことができる。
【0132】
図16A、
図16B、および
図17は、後輪3bに設けられる増速機構の一例を示す図である。
図16Aおよび
図16Bに例示する増速機構60は、後輪スプロケット61の回転に対し、後輪3bの回転を一定の不変な増速比で増速させる機構である。
【0133】
図16Aに示す例では、後輪3bのハブ62内に、モータ120が内蔵されている。モータ120は、ステータ120aとロータ120bを有し、モータ12の代わりに、又はモータ12と共に、車両1を駆動させる電動機として使用できる。増速機構60には遊星歯車部63が含まれ、遊星歯車部63はハブ62内においてモータ120と隣接配置されている。また、ハブ62内には、モータ120の回転を減速させる歯車として遊星歯車部64が設けられている。
図16Aおよび
図16Bでは、複数の歯車を含む後輪スプロケット61を示しているが、後輪スプロケットは1つの歯車で構成されていてもよい。
【0134】
増速機構60を構成する遊星歯車部63は、サンギア63aと、遊星ギア63bと、リングギア63cと、キャリア63dとを含む。キャリア63dは、後輪スプロケット61と一体回転又は相対回転する。サンギア63aとモータ120のステータ120aは、ハブ軸62aと共にフレーム2に回転固定されている。リングギア63cは、圧入、セレーション結合等によりハブシェル62bに回転固定されていてもよく、ワンウェイクラッチを介してハブシェル62bに接続されていてもよい。
図16Bに示すように、後輪3bには、モータ120が設けられていなくてもよい。この場合も、増速機構60には、
図16Aに示す遊星歯車部63を適用できる。
【0135】
上述の構造を有する増速機構60を用いることにより、複数の走行モードを切り替えて走行する車両1において、例えば、車速が35km/h以上となるような高速走行も容易になる。
【0136】
図16Aに示す増速機構60を用いる場合、モータ120の動力のみで走行する自走モードでは、増速機構60を介さずにモータ120の出力が後輪3bに伝達される。なお、ハブ62には、モータ120、遊星歯車部64と共に、後輪3bに固定されるハブシェル62bと遊星歯車部64(減速歯車)との間に設けられたワンウェイクラッチが内蔵されていてもよい。当該ワンウェイクラッチを設けた場合、自転車モードで走行する際にモータ120が回転しないため、負荷が低減され、より快適な走行性能を実現できる。
【0137】
図17に例示する増速機構70は、外装変速機71および内装変速機72を含む機構である。内装変速機72は、3段変速可能な構造を有するが、2段変速構造であってもよく、またモータを利用した電動変速機構を有していてもよい。内装変速機72は、遊星歯車部73と、コントローラ74と、リヤスプロケット動力入力体75と、プッシュロッド76とを含む。遊星歯車部73は、ハブ軸77aに固定されたサンギア73aと、遊星ギア73bと、リングギア73cと、キャリア73dとを含む。リングギア73cとキャリア73dは、それぞれワンウェイクラッチを介してハブシェル77bに接続されている。
【0138】
図17は、内装変速機72が3速の状態を示している。この場合、ハブ軸77aに内挿されたプッシュロッド76によりコントローラ74が押し込まれて、コントローラ74、リヤスプロケット動力入力体75、および遊星歯車部73のキャリア73dが直結状態となり、遊星ギア73bにより増速される。なお、リングギア73c(ハブシェル77b)の回転角速度がキャリア73dよりも速くなるため、キャリア73dに接続されたワンウェイクラッチはフリー状態となる。2速の場合は、コントローラ74がキャリア73dから外れ、リヤスプロケット動力入力体75とリングギア73cの回転角速度は同じとなる。1速の場合は、2速の場合よりも、コントローラ74がリヤスプロケット動力入力体75側に移動し、リングギア73cに接続されたワンウェイクラッチがハブシェル77bから外れた状態となる。
【0139】
なお、増速機構は、後輪3bに設けられる機構に限定されず、例えば、モータユニットに内蔵されていてもよい。モータユニットに内蔵される増速機構は、クランクの回転に対し、フロントスプロケットの回転を少なくとも増速させるように構成されている。この場合、高速走行時においてもクランクを高速回転させなくてもよいため、ユーザビリティが向上する。
【0140】
以上のように、上述の構成を備えた車両1によれば、複数の走行モードにおいて快適な走行性能を実現できると共に、走行モードの切り替えに起因して発生し得る様々な問題を解決できる。車両1によれば、例えば、走行安定性に優れ、かつ走行モード表示の切り替えが容易で、ユーザビリティにも優れる。
【0141】
なお、上述の実施形態は、上述の変形例の他にも、本発明の目的を損なわない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、制御部は、車両の走行モードを自走モードに切り替える際に、人力駆動力伝達体であるスプロケットの回転を固定してもよい。固定されるスプロケットはフロントスプロケット、後輪スプロケットのいずれであってもよい。また、スプロケットには、チェーンに連動して回転するプーリーも含まれる。スプロケットの回転は、例えば、フレームに取り付けられた固定機構(固定棒)が差し込まれることで固定される。固定機構は、クランクアーム6に差し込んでもよい。
【0142】
また、自走モードにおいて車速が所定速度を超えた場合、制御部は車輪にブレーキを作動させて速度を抑えてもよい。制御部により自動制御されるブレーキの例としては、モータの回生駆動によるブレーキが挙げられるが、ユーザーが操作するブレーキであってもよく、ハブダイナモのブレーキであってもよい。
【符号の説明】
【0143】
1 車両、2 フレーム、2a ヘッドパイプ、2b フロントフォーク、2c トップパイプ、2d シートパイプ、2e チェーンステー、2f シートステー、2g ジョイント、3a 前輪、3b 後輪、4 ハンドル、5 サドル、6 クランクアーム、7 ペダル、8 チェーン、9a 前方保安部品、9b 後方保安部品、10 バッテリ、11 モータユニット、12 モータ、13 駆動回路、14 トルクセンサ、15 車速センサ、16 回転センサ、17 電源スイッチ、18 切り替えスイッチ、19 ユニットケース、20 制御部、21 、22 メモリ、23 第1処理部、24 第2処理部、25 第3処理部、30 クランク軸、30a 溝、31 ワンウェイクラッチ、32 フロントスプロケット、33 軸受、34 筒状体、40,45 固定機構、41,46 スリーブ、41a 突起、42,47 係止リング、42a,47a 溝、46a 爪、48 バネ、50 アクチュエータ、51 モータ、52 円筒ウォーム、53 ウォームホイル、54,57 アーム、55 ロッド、56 バネ、60 増速機構、61 後輪スプロケット、62,77 ハブ、62a,77a ハブ軸、62b,77b ハブシェル、63,64,73 遊星歯車部、63a,73a サンギア、63b,73b 遊星ギア、63c,73c リングギア、63d,73d キャリア、70 増速機構、71 外装変速機、72 内装変速機、74 コントローラ、75 リヤスプロケット動力入力体、76 プッシュロッド、80 スロットル、81 表示部、82 本体部、82a,82b,82c,82d 表示面、83 支持部、84 固定部、85,85a,85b 電子タグ、86,86a,86b,86c 読取部、87 保持部、90 バックミラー、90a ミラー本体、90b 支持軸、91 スタンド、92 リアキャリア、93 泥除け、100 折り畳み式ペダル、101 ペダル本体、102 ベース部、103 可動部、104 ペダル軸、105 支持軸、106 操作部、120 モータ、120a ステータ、120b ロータ、810 第2表示部