(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007445
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ブロッコリー雑種SVBL0308
(51)【国際特許分類】
A01H 6/20 20180101AFI20230111BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20230111BHJP
A01H 4/00 20060101ALI20230111BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20230111BHJP
A01H 1/02 20060101ALI20230111BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20230111BHJP
【FI】
A01H6/20
A01H5/10
A01H4/00
A01H5/00 A
A01H1/02
A23L33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022099497
(22)【出願日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】63/216,110
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/549,365
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500195035
【氏名又は名称】セミニス・ベジタブル・シーズ・インコーポレイテツド
【氏名又は名称原語表記】Seminis Vegetable Seeds,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,フランシスクス・ファン・デン
【テーマコード(参考)】
2B030
4B018
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030CA01
2B030CA14
4B018LB03
4B018LE05
4B018MD48
4B018ME02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新しいブロッコリー品種を提供する。
【解決手段】本発明は、ブロッコリー雑種SVBL0308の種子及び植物を提供する。したがって、本発明は、ブロッコリー雑種SVBL0308の植物、種子及び組織培養物、ならびにそのような植物をそれ自体または別の植物、例えば別の遺伝子型のブロッコリー植物と交配することによって生産されるブロッコリー植物を生産する方法に関する。本発明はさらに、そのような交配によって生産された種子及び植物に関する。本発明はさらに、導入された有用なまたは望ましい形質を含むブロッコリー雑種SVBL0308の植物、種子及び組織培養物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロッコリー雑種SVBL0308のブロッコリー植物であって、前記雑種の種子のサンプルがNCMA受託番号202105012の下に寄託されている、前記植物。
【請求項2】
請求項1に記載の植物を産生するブロッコリー種子。
【請求項3】
請求項1に記載の植物の植物部分であって、前記植物の細胞を含む、前記植物部分。
【請求項4】
請求項1に記載の植物の生理学的及び形態学的特徴の全てを有するブロッコリー植物。
【請求項5】
請求項1に記載の植物の再生可能細胞の組織培養物。
【請求項6】
請求項5に記載の組織培養物から再生されたブロッコリー植物であって、ブロッコリー雑種SVBL0308の生理学的及び形態学的特徴の全てを有する、前記植物。
【請求項7】
請求項1に記載の植物を栄養繁殖させる方法であって、
(a)請求項1に記載の植物から、繁殖することができる組織を採取するステップ、及び
(b)前記組織からブロッコリー植物を繁殖させるステップ
を含む、前記方法。
【請求項8】
付加された形質を含むブロッコリー植物を生産する方法であって、請求項1に記載の植物に前記形質を付与する導入遺伝子を導入することを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって生産されたブロッコリー植物。
【請求項10】
ブロッコリー雑種SVBL0308のブロッコリー植物であって、
前記雑種の種子のサンプルがNCMA受託番号202105012の下に寄託されたものであり、
導入遺伝子をさらに含む、
前記植物。
【請求項11】
前記導入遺伝子が、
雄性不稔、除草剤耐性、虫害抵抗性、病虫害抵抗性、病害抵抗性、改変された脂肪酸代謝、環境ストレス耐性、改変された炭水化物代謝、及び改変されたタンパク質代謝
からなる群から選択される形質を付与するものである、請求項10に記載の植物。
【請求項12】
ブロッコリー雑種SVBL0308のブロッコリー植物であって、
前記雑種の種子のサンプルがNCMA受託番号202105012の下に寄託されたものであり、
単一遺伝子座変換をさらに含む、前記植物。
【請求項13】
前記単一遺伝子座変換が、
雄性不稔、除草剤耐性、虫害抵抗性、病虫害抵抗性、病害抵抗性、改変された脂肪酸代謝、環境ストレス耐性、改変された炭水化物代謝、及び改変されたタンパク質代謝
からなる群から選択される形質を付与するものである、請求項12に記載の植物。
【請求項14】
ブロッコリー雑種SVBL0308に由来するブロッコリー植物の種子を生産する方法であって、
(a)請求項1に記載の植物をそれ自体または異なるブロッコリー植物と交配するステップ、及び
(b)ブロッコリー雑種SVBL0308由来ブロッコリー植物の種子を形成させるステップ
を含む、前記方法。
【請求項15】
ブロッコリー雑種SVBL0308由来ブロッコリー植物の種子を生産する方法であって、
(a)請求項1に記載の植物をそれ自体または異なるブロッコリー植物と交配することによって生産された種子からブロッコリー雑種SVBL0308由来ブロッコリー植物を生産するステップ、及び
(b)前記ブロッコリー雑種SVBL0308由来ブロッコリー植物をそれ自体または異なるブロッコリー植物と交配してさらなるブロッコリー雑種SVBL0308由来ブロッコリー植物の種子を得るステップを含む、前記方法。
【請求項16】
前記方法が、
前記ステップ(b)からの前記種子を前記ステップ(a)に記載のブロッコリー植物を生産するために使用して前記(a)及び前記(b)の前記生産及び前記交配ステップを少なくとも1世代にわたって繰り返して追加のブロッコリー雑種SVBL0308由来ブロッコリー植物の種子を生産すること
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
食料品または飼料品を製造する方法であって、
(a)請求項1に記載の植物またはその部分を得ること、及び
(b)前記植物またはその部分から前記食料品または前記飼料品を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記食料品または前記飼料品がスープとして規定される、請求項18に記載の方法。
【請求項19】
ブロッコリー雑種SVBL0308の少なくとも1つの細胞を含む可食組成物であって、前記雑種の種子のサンプルがNCMA受託番号202105012の下に寄託されている、前記可食組成物。
【請求項20】
食料品または飼料品として規定される、請求項19に記載の可食組成物。
【請求項21】
スープとして規定される、請求項20に記載の可食組成物。
【請求項22】
ブロッコリー雑種SVBL0308の少なくとも1つの細胞を含む栄養補助食品であって、前記雑種の種子のサンプルがNCMA受託番号202105012の下に寄託されている、前記栄養補助食品。
【請求項23】
可食組成物を製造する方法であって、
(a)請求項1に記載の植物またはその部分を得ること、及び
(b)前記植物またはその部分から前記可食組成物を製造すること
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月29日に出願された米国仮出願第63/216,110号の優先権を主張するものであり、参照によりその開示内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、植物育種の分野に関し、より具体的には、ブロッコリー雑種SVBL0308の開発に関する。
【背景技術】
【0003】
野菜育種の目的は、様々な望ましい形質を単一の品種に結合させることである。そのような望ましい形質は、より多い収穫量、虫害または病害に対する抵抗性、環境ストレスに対する耐性及び栄養価を含めた、育成者または消費者によって有用または望ましいとみなされる任意の形質を含み得る。
【0004】
育種技術は、植物の受粉方法を利用する。2つの一般的受粉方法が存在する:植物は、1つの花からの花粉が同じ植物または植物品種の同じまたは別の花に移された場合、自家受粉する。植物は、そこに花粉が異なる植物品種の花からやってきた場合、他家受粉する。
【0005】
多世代にわたって自家受粉及び種類の選抜が行われた植物は、ほとんど全ての遺伝子座においてホモ接合型となり、真の育種用子孫であるホモ接合植物の均一な集団を産生する。異なる遺伝子型を有する2つのそのようなホモ接合植物の交配は、多くの遺伝子座においてヘテロ接合型である雑種植物の均一な集団を生む。反対に、各々が複数の座位においてヘテロ接合型である2つの植物の交配は、遺伝学的に異なった均一でない雑種植物の集団を生む。結果として生じる不均一性は成績を予測不可能なものにする。
【0006】
均一な品種の開発は、ホモ接合型近交系植物の開発、これらの近交系植物の交配、及び交配種の評価を必要とする。系統育種及び循環選抜は、育種集団から近交系植物を開発するために用いられてきた育種法の例である。それらの育種法は、2つ以上の植物または他の様々な広範囲にわたる供給源からの遺伝的背景を組み合わせて育種用プールとしたものであるが、当該プールからは、それに由来する新しい系統及び雑種が、自殖及び所望の表現型の選択によって開発される。新しい系統及び雑種は、それらのうちのどれが商業的可能性を有しているのかを判定するための評価がなされる。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、本発明は、雑種SVBL0308のブロッコリー植物を提供する。また、そのような植物の全ての生理学的及び形態学的特徴を有するブロッコリー植物も提供される。これらのブロッコリー植物の部分も提供され、これには例えば植物の花粉、胚珠、胚、小花、頭状花、種子及び細胞が含まれる。
【0008】
本発明の別の態様では、付加された遺伝形質を含むブロッコリー雑種SVBL0308の植物が提供される。遺伝形質は、遺伝子座、すなわち例えば優性または劣性アレルを含み得る。本発明の一実施形態では、ブロッコリー雑種SVBL0308の植物は、単一遺伝子座変換を含むものとして規定される。本発明の具体的な実施形態では、付加された遺伝子座は、1つ以上の形質、例えば、除草剤耐性、虫害抵抗性、病害抵抗性及び改変された炭水化物代謝などを付与する。さらなる実施形態では、形質は、戻し交配によって、自然もしくは人為突然変異によって、または植物もしくはその任意の先代の祖先の中に遺伝形質転換技術でもって導入された導入遺伝子によって系統のゲノムの中に導入された天然に存在する遺伝子によって付与され得る。形質転換によって導入された場合、遺伝子座は、1つの染色体位置において組み込まれた1つ以上の遺伝子を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、単一遺伝子座変換は、植物ゲノムに対する1つ以上の部位特異的な変更、例えば、限定されないが、1つ以上のヌクレオチド修飾、欠失または挿入などを含む。単座位は、単一の染色体位置において組み込まれたかまたは変異した1つ以上の遺伝子またはヌクレオチドを含み得る。一実施形態では、単一遺伝子座変換は遺伝子工学技術によって導入され得るが、その方法としては、例えば、操作型ヌクレアーゼによるゲノム編集(GEEN)が挙げられる。操作型ヌクレアーゼとしては、限定されないが、Casエンドヌクレアーゼ;亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN);転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN);ホーミングエンドヌクレアーゼとして知られる操作型メガヌクレアーゼ;及び当業者によく知られているDNAまたはRNA依存性ゲノム編集のための他のエンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0010】
本発明は、ブロッコリー雑種SVBL0308の種子にも関する。本発明のブロッコリー種子は、特定の実施形態では、ブロッコリー雑種SVBL0308のブロッコリー種子の本質的に均質な集団として提供され得る。種子の本質的に均質な集団は概して、相当数の他の種子を含まない。したがって、ブロッコリー雑種SVBL0308の種子は、全種子の少なくとも約97%、例えば種子の少なくとも約98%、99%またはそれよりも多くを形成するものとして定義され得る。種子集団は、別個に成長してSVBL0308と呼称されるブロッコリー植物の本質的に均質な集団をもたらし得る。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、雑種SVBL0308のブロッコリー植物の再生可能細胞の組織培養物が提供される。組織培養物は、好ましくは、出発植物の生理学的及び形態学的特徴の全てを発現することができるブロッコリー植物を再生することができるもの、ならびに出発植物と実質的に同じ遺伝子型を有する植物を再生することができるものである。雑種SVBL0308のいくつかの生理学的及び形態学的特徴の例には、本明細書において表中に示される形質が含まれる。そのような組織培養物の中の再生可能細胞は、例えば、胚、分裂組織、子葉、花粉、葉、葯、根、根端、雌しべ、花、種子及び茎から得られたものであり得る。さらには、本発明は、本発明の組織培養物から再生されたブロッコリー植物であって雑種SVBL0308の全ての生理学的及び形態学的特徴を有する当該植物を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、ブロッコリー種子、植物及びその部分を生産するためのプロセスが提供され、当該プロセスは概して、第1親ブロッコリー植物を第2親ブロッコリー植物と交配することを含み、第1または第2親ブロッコリー植物の少なくとも一方は、ブロッコリー系統BRM8Z14-4006、またはブロッコリー系統BRM8Z13-3998の植物である。これらのプロセスは、雑種ブロッコリー種子または植物を作製するためのプロセスであって第1ブロッコリー植物が異なる別個な遺伝子型の第2ブロッコリー植物と交配されてブロッコリー系統BRM8Z14-4006またはブロッコリー系統BRM8Z13-3998の植物を片親として有する雑種をもたらす当該プロセスとしてさらに例示され得る。これらのプロセスにおいて、交配することは、種子の産生をもたらすことになる。種子産生は、種子が採集されるか否かにかかわらず起こる。
【0013】
本発明の一実施形態では、「交配すること」の第1ステップは、しばしば例えば媒介昆虫を媒介として受粉が起こるように近隣において、第1及び第2親ブロッコリー植物の種子を播種することを含む。あるいは、人為的に花粉が移され得る。植物が自家受粉する場合、受粉は、直接的な人間の介入を植物栽培以外には必要とすることなく起こり得る。
【0014】
第2ステップは、第1及び第2親ブロッコリー植物の種子を栽培するかまたは成長させて着花した植物にすることを含み得る。第3ステップは、植物の自家受粉を例えば花の除雄(すなわち花粉の殺滅または除去)によって妨害することを含み得る。
【0015】
雑種交配のための第4ステップは、第1及び第2親ブロッコリー植物の間での他家受粉を含み得る。さらに別のステップは、親ブロッコリー植物の少なくとも一方から種子を収穫することを含む。収穫した種を成長させてブロッコリー植物または雑種ブロッコリー植物が生産され得る。
【0016】
本発明は、第1親ブロッコリー植物を第2親ブロッコリー植物と交配することを含むプロセスであって第1または第2親ブロッコリー植物の少なくとも片方がブロッコリー雑種SVBL0308、ブロッコリー系統BRM8Z14-4006またはブロッコリー系統BRM8Z13-3998の植物である当該プロセスによって生産される、ブロッコリー種子及び植物も提供する。本発明の一実施形態では、プロセスによって生産されるブロッコリー種子及び植物は、本発明に従って植物を別の別個な植物と交配することによって生産される第1世代(F1)雑種ブロッコリー種子及び植物である。本発明はさらに、そのようなF1雑種ブロッコリー植物の植物部分、及びその使用方法を企図する。したがって、本発明の特定の例示的な実施形態は、F1雑種ブロッコリー植物及びその種子を提供する。
【0017】
さらに別の態様において、本発明は、雑種SVBL0308に由来する植物を生産する方法を提供し、当該方法は、(a)雑種SVBL0308に由来する子孫植物を作製するステップを含み、上記作製することが、雑種SVBL0308の植物を第2植物と交配することを含み、さらに、(b)子孫植物をそれ自体または第2植物と交配して次世代の子孫植物の種子を生産するステップを含む。さらなる実施形態では、方法は、(c)次世代の子孫植物の上記種子から次世代の子孫植物を成長させること、及び次世代の子孫植物をそれ自体または第2植物と交配すること;ならびにステップをもう3~10世代にわたって繰り返して雑種SVBL0308に由来する植物を生産することをさらに含み得る。雑種SVBL0308に由来する植物は近交系であり得、上記繰り返される交配ステップは、近交系を生産するのに十分な近親交配を含むものとして定義され得る。方法においては、ステップ(c)から得られた特定の植物を、ステップ(b)及び(c)による継続的交配のために選抜することが望ましい場合がある。1つ以上の所望の形質を有する植物を選抜することによって、系統/雑種の所望の形質のいくつか及び場合によっては他の選択された形質を有する雑種SVBL0308に由来する植物が得られる。
【0018】
ある実施形態では、本発明は、食料品または飼料品を製造する方法であって、(a)ブロッコリー雑種SVBL0308の植物またはその部分を得ること、及び(b)植物またはその部分から食料品または飼料品を製造することを含む、当該方法を提供する。一実施形態では、食料品または飼料品はスープである。別の実施形態では、植物は、成熟するまで栽培されたものである。
【0019】
一態様において、本発明は、ブロッコリー雑種SVBL0308の少なくとも1つの細胞を含む可食組成物を提供する。一実施形態では、可食組成物は食料品または飼料品として規定される。別の実施形態では、可食組成物はスープとして規定される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、可食組成物を製造する方法であって、(a)ブロッコリー雑種SVBL0308の植物またはその部分を得ること、及び(b)植物またはその部分から可食組成物を製造することを含む、当該方法を提供する。一実施形態では、可食組成物は食料品または飼料品として規定される。別の実施形態では、可食組成物はスープとして規定される。さらに別の実施形態では、植物は、成熟するまで栽培されたものである。
【0021】
本発明の別の態様では、ブロッコリー雑種SVBL0308の遺伝的相補が提供される。「遺伝的相補」という語句は、ヌクレオチド配列の集合体であって、当該配列の発現が、本発明の場合にはブロッコリー植物、またはその植物の細胞もしくは組織の表現型を規定するものである、当該集合体を意味して使用される。したがって、遺伝的相補は、細胞、組織または植物の遺伝的埋め合わせを意味し、雑種遺伝的相補は、雑種細胞、組織または植物の遺伝子埋め合わせを意味する。したがって、本発明は、本明細書に開示されるブロッコリー植物細胞による遺伝的相補を有するブロッコリー植物細胞、ならびにそのような細胞を含有する種子及び植物を提供する。
【0022】
植物の遺伝的相補は、遺伝子マーカープロファイルによって、及び遺伝的相補の発現に特徴的な表現型形質の発現、例えばアイソザイム分類プロファイルによって評価され得る。多くのよく知られている技術、例えば、単純配列長多型(SSLP)(Williams et al.,Nucleic Acids Res.,1 8:6531-6535,1990)、任意増幅断片多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性増幅領域(SCAR)、任意配列プライムポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、増幅断片長多型(AFLP)(参照により全体が本明細書に具体的に援用されるEP534858)、及び一塩基多型(SNP)(Wang et al.,Science,280:1077-1082,1998)などのいずれかによって雑種SVBL0308が同定され得ることは理解される。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、本発明のブロッコリー植物の半数体遺伝的相補と第2ブロッコリー植物、好ましくは別の別個なブロッコリー植物の半数体遺伝的相補との組合せによって形成されたブロッコリー植物細胞、組織、植物及び種子に代表される雑種遺伝的相補を提供する。別の態様において、本発明は、本発明の雑種遺伝的相補を含む組織培養物から再生されたブロッコリー植物を提供する。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、ブロッコリー雑種SVBL0308の植物の遺伝子型を決定する方法であって、植物のゲノムにおいて少なくとも第1の多型を検出することを含む、当該方法を提供する。方法は、特定の実施形態では、植物のゲノムにおいて複数の多型を検出することを含み得る。方法は、複数の多型を検出するステップの結果をコンピュータ可読媒体上に保存することをさらに含み得る。本発明はさらに、そのような方法によって生成されたコンピュータ可読媒体を提供する。
【0025】
本発明の一態様に関して本明細書において論述される任意の実施形態は、特に記されていない限り、本発明の他の態様にも当てはまる。
【0026】
「約」という用語は、値を決定するために採用されている装置または方法に関して値が平均の標準偏差を含むことを表すために使用される。特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すことまたは選択肢が相互に排他的であることが特にはっきりと示されていない限り、「及び/または」を意味するために使用されている。特許請求の範囲の中で「含む」という単語または他の開放表現と一緒に使用されている場合、「a」及び「an」という単語は、別段のことが特に記されていない限り、「1つ以上」を表す。「含む」、「有する」及び「含む(comprise)」という用語は、開放型の結合動詞である。これらの動詞の1つ以上の任意の形または時制、例えば、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「有する」、「有している」、「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」も開放型である。例えば、1つ以上のステップを「含む(comprises)」、「有する」または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1つ以上のステップのみを有することに限定されず、列挙されていない他のステップも対象範囲に含む。同様に、1つ以上の形質を「含む(comprises)」、「有する」または「含む(includes)」任意の植物は、それらの1つ以上の形質のみを有することに限定されず、列挙されていない他の形質を対象範囲に含む。
【0027】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び提供される任意の具体例が、本発明の具体的実施形態を示してはいるが例示のためだけに与えられていることは理解されるべきである、というのも、当業者にとっては本発明の趣旨及び範囲に含まれる様々な変更及び改変がこの詳細な説明から明らかとなろうからである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、ブロッコリー雑種SVBL0308、ブロッコリー系統BRM8Z14-4006またはブロッコリー系統BRM8Z13-3998の植物、種子及び派生物に関する方法及び組成物を提供する。
【0029】
ブロッコリー雑種SVBL0308は、19-8Z-BRO-0308としても知られるが、参照により本明細書に具体的に援用される米国特許第9,617,554号に記載される増加したグルコシノレートを付与するMyb28アレルを含む。
【0030】
A.ブロッコリー雑種SVBL0308の由来及び育種履歴
ブロッコリー雑種SVBL0308の親はブロッコリー系統BRM8Z14-4006及びブロッコリー系統BRM8Z13-3998である。親系統は、それから産生される雑種がそうであるように、均一であり安定している。繁殖を繰り返すうちに、ほとんどいかなる特徴に関しても、商業的に許容可能な限度内で多様体がわずかな割合で現れることがある。しかしながら、多様体は予期されるものではない。
【0031】
B.ブロッコリー雑種SVBL0308の生理学的及び形態学的特徴
本発明の一態様によれば、ブロッコリー雑種SVBL0308の生理学的及び形態学的特徴を有する植物が提供される。そのような植物の生理学的及び形態学的特徴の解説を以下の表に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0032】
C.ブロッコリー植物の育種
本発明の1つの態様は、ブロッコリー系統BRM8Z14-4006とブロッコリー系統BRM8Z13-3998とを交配することを含む、ブロッコリー雑種SVBL0308の種子を生産するための方法に関する。あるいは、本発明の他の実施形態では、ブロッコリー雑種SVBL0308はそれ自体または任意の第2植物と交配し得る。そのような方法は、ブロッコリー雑種SVBL0308の繁殖のために用いられ得るか、またはブロッコリー雑種SVBL0308に由来する植物を生産するために用いられ得る。ブロッコリー雑種SVBL0308に由来する植物は、ある実施形態では、新しいブロッコリー品種の開発のために用いられ得る。
【0033】
1つ以上の出発品種を用いる新しい品種の開発は当技術分野でよく知られている。本発明によれば、ブロッコリー雑種SVBL0308を交配すること及びそれに続いて複数世代にわたって育種をそのようなよく知られた方法に従って行うことによって、新規な品種が作出され得る。新しい品種は、任意の第2植物との交配によって作出され得る。新規系統を開発する目的のために交配させるそのような第2植物を選択する際、1つ以上の選択された所望の特徴を自身で発揮するかあるいは雑種として組み合わされたときに所望の特徴(複数可)を発揮する植物を選ぶことが望まれ得る。初回交配が行われた時点で近親交配及び選抜が行われて新しい品種が生まれる。均一な系統の開発のためには、5世代以上の自殖及び選抜を必要とすることが多い。
【0034】
新しい品種の均一な系統は、倍加半数体によっても開発され得る。この技術は、複数世代にわたる自殖及び選抜を必要とすることなく真の育種系統の作出を可能にする。このようにして真の育種系統はわずか1世代で生産され得る。半数体胚は花粉粒、花粉、葯培養物または胚珠培養物から生産され得る。半数体胚は、その後、自動的に、または化学処理(例えばコルヒチン処理)によって倍加され得る。あるいは、半数体胚を半数体植物に成長させ、染色体倍加を誘発する処理を行ってもよい。どちらの場合にも、稔性のホモ接合型植物が得られる。本発明によれば、そのような技術のいずれかを本発明の植物及びその子孫と結合させて用いてホモ接合型系統が得られ得る。
【0035】
戻し交配を用いて近交系植物を改良してもよい。戻し交配は、特定の望ましい形質を1つの近交系または被近交系供給源から、その形質を欠く近交系へと移す。これは、例えば、最初に上位近交系(A)(反復性親)を、問題となっている形質のための適切な座位または複数の座位を保有するドナー近交系(非反復性親)に交配することによって成し遂げられ得る。この交配の子孫をその後、上位反復性親(A)と繁殖させ直し、続いて、得られた子孫を、非反復性親から移されているべき所望の形質について選抜する。所望の形質の選抜を伴う5世代以上の戻し交配の後、子孫は、移された特徴を有するが、他の大部分またはほとんど全ての遺伝子座については上位親と類似している。最後の戻し交配世代を自殖させて、移された形質のための純粋な育種子孫が得られるであろう。
【0036】
本発明の植物は、植物の遺伝的背景の選良性質に基づく新しい系統の開発のために特によく適している。新規ブロッコリー株を開発する目的のために第2植物を選抜してブロッコリー雑種SVBL0308と交配させる際、典型的には、自身が1つ以上の選択された所望の特徴を発揮するかあるいは雑種として組み合わされたときに所望の特徴(複数可)を発揮する植物を選ぶことが好ましいとされる。具体的な実施形態では、所望の形質の例には、高い種子収量、高い種子発芽率、苗活力、高い収穫量、病害耐性または抵抗性、及び土壌及び気候条件に対する適応性が含まれ得る。消費者指向の形質、例えば頭状花形状、栄養価及び風味は、本発明によって開発されるブロッコリー植物の新しい系統に組み込まれ得る形質の他の例である。
【0037】
D.本発明のさらなる実施形態
本発明の特定の態様では、少なくとも第1の所望の遺伝形質を含むように修飾をして、本明細書に記載した植物を提供する。そのような植物は、ある実施形態では、戻し交配と称する植物育種技術で作出し得るものであり、また、戻し交配技術を介して植物に移入する遺伝子座に加えて、ある品種の本質的にすべての形態学的及び生理学的特徴を正常な状態に戻す。本明細書で使用する単一遺伝子座変換植物の用語は、戻し交配と称する植物育種技術または遺伝子操作で作出するブロッコリー植物のことを指しており、また、ある品種に単一遺伝子座を移入することに加えて、戻し交配技術または遺伝子操作のそれぞれを介して、当該品種の本質的にすべての形態学的及び生理学的特徴を正常な状態に戻す。本質的にすべての形態学的及び生理学的特徴とは、戻し交配、導入遺伝子の導入、または遺伝子操作技術の利用の間に生じ得る偶発的な変異形質以外に、同じ環境で比較した場合とは違った存在の仕方を示す植物の特徴が、正常な状態に戻る、または保存されることを意味する。
【0038】
戻し交配法を、本発明と共に使用して、既存の品種の改良、または既存の品種に特徴を導入することができる。所望の特徴に関する遺伝子座を提供する親ブロッコリー植物は、非反復性親またはドナー親と称する。この専門用語は、非反復性親が、戻し交配プロトコールにおいて一度だけ使用するものである、つまり、繰り返し使用しないことを意味する。非反復性親に由来する1つ以上の遺伝子座の移入を受ける親ブロッコリー植物は、戻し交配プロトコールにおいて数度にわたって使用するので、反復性親として知られている。
【0039】
一般的な戻し交配プロトコールでは、関心を寄せた当初の品種(反復性親)を、関心を寄せた移入をする単一遺伝子座を保有する第二の品種(非反復性親)と交配させる。次いで、そのような交配で得た子孫を、反復性親と改めて交配させ、そして、変換した植物が、非反復性親に由良する単一遺伝子座に加えて、反復性親の本質的にすべての形態学的及び生理学的特徴を備えたブロッコリー植物になるまで、このプロセスを繰り返す。
【0040】
適切な反復性親の選択は、戻し交配の手順を首尾良く進める上で重要な工程である。戻し交配プロトコールの目的は、当初の品種が有する単一の形質または特徴を、変化させる、または置換することである。このことを達成するため、所望の遺伝子以外のすべてを本質的に保持する、それにより、当初の品種の所望の生理学的及び形態学的構成を保持しつつ、反復性品種の単一遺伝子座を改変する、または、非反復性親に由来する所望の遺伝子座と置換する。特定の非反復性親の選択は、戻し交配の目的によって変わる;主な目的の1つは、何らかの商業的に望ましい形質を、植物に付加することである。正確な戻し交配プロトコールは、改変させる特徴または形質、及び反復性親と非反復性親との間の遺伝距離によって変化する。戻し交配法は、移入する特徴が、優性対立遺伝子である場合には単純化するが、劣性対立遺伝子、または付加的対立遺伝子も(劣性及び優性の間で)も移入し得る。この事例では、所望の特徴が首尾良く移入したか否かを決定するために、子孫に関する試験を導入することが必要となり得る。
【0041】
ある実施形態では、本明細書に記載した植物を反復性親とする戻し交配の子孫ブロッコリー植物は、(i)非反復性親に由来する所望の形質と、(ii)反復性親のすべての生理学的及び形態学的特徴とを含んでおり、同じ環境条件下で生育させて認められた5%の有意性レベルで決定する。
【0042】
新規の品種は、3つ以上の親から作出することもできる。修正戻し交配として公知である技術は、戻し交配の間に異なる反復性親を使用する。修正戻し交配は、当初の反復性親を、さらに望ましい特定の特徴を有する品種を置換するために使用することができる、または、複数の親を使用して、それぞれから異なる望ましい特徴を取得し得る。
【0043】
特定の形質に関連する分子マーカーを開発することで、さらなる形質を、例えば、本明細書に記載した確立した生殖系列に付加することが可能となり、最終的には、新規の1つ以上の形質が加えられた実質的に同じ基礎的遺伝資源が得られる。例えば、Moose and Mumm,2008(Plant Physiology,147:969-977)などに記載されている分子育種は、1つ以上の形質またはQTLを、優良株に組み込むためのメカニズムを提供する。この分子育種が促す優良株への1つ以上の形質の移動は、隣接または関連するマーカーのアッセイを使用して、取り込まれたゲノム断片を同定するメカニズムによって、関心を寄せた特定の形質に関連する特定のゲノム断片を、優良株へ組み込みことを含み得る。本明細書に記載した実施形態では、例えば、1つ、2つ、3つ、または4つのゲノムでの遺伝子座を、この方法で優良株に組み込み得る。さらなる遺伝子座を含むこの優良株を、別の親の優良株とさらに交配して雑種子孫を作出する場合に、少なくとも8つの別個のさらなる遺伝子座を、当該雑種に組み込むことができる。これらのさらなる遺伝子座は、例えば、病害抵抗性などの形質、または果実品質の形質を付与し得る。ある実施形態では、それぞれの遺伝子座は、別個の形質を付与し得る。別の実施形態では、遺伝子座を、ホモ接合性とする、そして、それぞれの親株に取り込ませて、雑種に形質を付与する必要もある。なおも別の実施形態では、複数の遺伝子座を組み合わせて、所望の形質の単一の堅実な表現型を付与し得る。
【0044】
数多くの単一遺伝子座形質が同定されており、それらは、新規の近交系の開発では通常は選択されないが、戻し交配技術で改良することができる。単一遺伝子座形質は、導入遺伝子によるものとし得る、または、導入遺伝子によるものとし得ない;これらの形質の例として、除草剤抵抗性、細菌性、真菌性、またはウイルス性病害に対する抵抗性、昆虫抵抗性、修飾脂肪酸または炭水化物代謝、及び変化した栄養価があるが、これらに限定されない。これらは、一般的には、核を介して遺伝する遺伝子を含む。
【0045】
単一遺伝子座が優性形質として機能する場合、直接選択を適用し得る。この選択プロセスのために、戻し交配を行う前に、最初の交配の子孫を、ウイルス抵抗性、または対応する遺伝子の存在についてアッセイする。選択することで、所望の遺伝子と抵抗性形質とを持たないあらゆる植物が排除され、そして、当該形質を有する植物だけを、その後の戻し交配に使用する。次いで、このプロセスを、さらなるすべての戻し交配世代において繰り返す。
【0046】
育種のためのブロッコリー植物の選択は、必ずしも植物の表現型に依存しておらず、代わりに、遺伝子研究に基づいて行うことができる。例えば、関心を寄せた形質に遺伝的に密接に関連している適切な遺伝マーカーを利用することができる。これらのマーカーの1つを、特定の交配の子孫での形質の有無を同定するために使用することができる、また、育種を継続している間に、子孫の選択のために使用することができる。この技術は、一般的には、マーカー支援選抜と称する。植物が有する関心を寄せた形質の相対的有無を同定することが可能なその他のあらゆるタイプの遺伝マーカーまたはその他のアッセイも、育種目的において有用である。マーカー支援選抜の手順は、当該技術分野において周知のものである。このような方法は、劣性形質及び可変性の表現型である事例、あるいは従来のアッセイが高価である、時間を要する、または、その他に不利な点があるような事例では、特に有用である。加えて、マーカー支援選抜を使用して、種子、播種、または植物の段階で所望の遺伝子型を含む植物を同定する、または、栽培品種の純度を同定またはアッセイする、遺伝資源コレクションの遺伝的多様性を分類する、及び、確立した栽培品種内で特異的な対立遺伝子またはハプロタイプをモニタリングし得る。
【0047】
本発明に従って使用する遺伝マーカーのタイプとして、単純配列長多型(Simple Sequence Length Polymorphisms)(SSLP)(Williams et al., Nucleic Acids Res., 1 8:6531 6535, 1990)、ランダム増幅多型DNA(Randomly Amplified Polymorphic DNA)(RAPD)、DNA増幅フィンガープリンティング(DNA Amplification Fingerprinting)(DAF)、配列特性増幅領域(Sequence Characterized Amplified Regions)(SCAR)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(Arbitrary Primed Polymerase Chain Reaction)(AP-PCR)、増幅断片長多型(Amplified Fragment Length Polymorphisms)(AFLP)(参照により、その全内容を本明細書で明示的に援用するEP 534 858)、及び一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphisms)(SNP)(Wang et al., Science, 280:1077-1082, 1998)があるが、必ずしも、これらに限定されない。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、マーカー支援選抜を使用して、所望の形質を含むブロッコリー株を作出する戻し交配育種スキームの効率を高め得る。この技術は、一般的には、マーカー支援戻し交配(MABC)と称している。この技術は、当該技術分野では周知のものであり、また、例えば、所望の遺伝子座の存在を同定するフォアグラウンド選択などの3つ以上の選択レベルの使用に関連しており、フォアグラウンド選択には、表現型スクリーニングプロトコール;薬物との結合を最小ならしめる組換え選択;及び、反復性親ゲノムを最大限に正常な状態に戻すバックグラウンド選択を補完し得る、またはこれらと交換し得る。
【0049】
E.遺伝子操作で得られる植物
様々な遺伝子操作技術が開発されており、そして、当業者であれば、それらを使用して、植物に形質を導入し得る。特許請求した特定の態様では、単一遺伝子座または導入遺伝子を、改変する、または、本明細書に記載した品種の子孫のゲノムに導入して、形質をブロッコリー植物に導入する。関心を寄せた遺伝子及びポリヌクレオチドを、改変する、欠失する、または、植物のゲノムDNAに挿入する遺伝子操作の方法は、当該技術分野では周知のものである。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、植物ゲノムの部位特異的改変を介して、優良なブロッコリー株を作出することができる。遺伝子操作の方法として、例えば、配列特異的なヌクレアーゼ、例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(例えば、米国特許出願公開第2011-0203012号を参照されたい);遺伝子操作したメガヌクレアーゼ、またはネイティブのメガヌクレアーゼ;TALE-エンドヌクレアーゼ(例えば、米国特許第8,586,363号、及び第9,181,535号を参照されたい);及び、RNA-ガイドエンドヌクレアーゼ、例えば、CRISPR/CasシステムでのRNA-ガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、米国特許第8,697,359号、及び第8,771,945号、及び米国特許出願公開第2014-0068797号を参照されたい)がある。したがって、本発明のある実施形態は、ヌクレアーゼ、または関連するあらゆるタンパク質を利用して、ゲノム修飾を実施することに関する。このヌクレアーゼは、テンプレート化したゲノム編集のためのドナーテンプレートDNA内に、または、別個の分子またはベクターに対して、非相同的に提供することができる。組換えDNA構築物は、ヌクレアーゼに対して、修飾を受ける植物ゲノム内の部位に向かうように指令をする1つ以上のガイドRNAも含み得る。さらに、単一遺伝子座を改変する、または導入する方法は、例えば、一本鎖オリゴヌクレオチドを利用して、ブロッコリー植物ゲノムに塩基対修飾を導入する(例えば、Sauer et al., Plant Physiol, 170(4):1917-1928, 2016を参照されたい)。
【0051】
単一遺伝子座の部位特異的な改変または導入の方法は、当該技術分野では周知のものであり、そして、配列特異的ヌクレアーゼ、例えば、上記したもの、または、タンパク質とガイドRNAとの複合体、すなわち、ゲノムDNAを切断して、二本鎖切断(DSB)をする、または遺伝子座に切れ目を入れる当該複合体の利用を含む。当該技術分野で周知の通り、ヌクレアーゼ酵素に起因するDSBまたは切れ目を修復するプロセスの間に、ドナーテンプレート、導入遺伝子、または、発現カセットポリヌクレオチドを、ゲノムのDSBまたは切れ目の部位に取り込ませ得る。組み込むDNAでの相同アームの存在は、相同組み換え、または非相同末端結合(NHEJ)を介した修復プロセスの間に、植物ゲノムへの挿入配列の受け入れと標的化を促し得る。
【0052】
本発明の別の実施形態では、形質転換は、選択した導入遺伝子を、本発明の植物に挿入するために使用し得る、あるいは戻し交配で導入することができる導入遺伝子の調製のために使用し得る。当業者に周知のものであり、かつ数多くの作物種に利用可能な植物の形質転換方法として、エレクトロポレーション、微粒子銃、Agrobacterium媒介形質転換、及びプロトプラストによる直接DNA取り込みがあるが、これらに限定されない。
【0053】
エレクトロポレーションで効率よく形質転換を行うために、細胞の懸濁培養液などの脆い組織、または胚形成カルスを使用し得る、あるいは、未成熟な胚、またはその他の組織化した組織を直接に形質転換し得る。この技術では、選択した細胞の細胞壁を、ペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ)に曝露して部分的に分解する、または制御した方法で組織に機械的損傷を与える。
【0054】
形質転換DNAセグメントを植物細胞へ送達するための効率的な方法は、微粒子銃である。この方法では、粒子を核酸で被覆し、そして、推進力で細胞内に送達する。代表的な粒子として、タングステン、白金、及び、好ましくは、金で構成したものがある。銃に使用するために、細胞を含む懸濁液を、フィルターまたは固形培地で濃縮する、あるいは、未成熟な胚またはその他の標的細胞は、固形培養培地に配置し得る。銃に使用する細胞を、適切な距離をあけて、マクロ発射体停止プレートの下に置く。
【0055】
加速させて植物細胞にDNAを送達する方法の例示的実施形態として、DNAで被覆した粒子または細胞を、スクリーン、例えば、ステンレス鋼またはNytexスクリーンを利用して、標的細胞で被覆した表面へ推進させるために使用することができるBiolistics Particle Delivery Systemがある。このスクリーンは、粒子を分散させて、大きな粒子の凝集塊がレシピエント細胞に送達しないようにする。微粒子銃の技術は、広範に利用可能であり、事実上、あらゆる植物種を形質転換するために使用し得る。
【0056】
Agrobacterium媒介移入は、植物細胞に遺伝子座を導入するために広範に利用可能な別のシステムである。この技術の利点は、DNAを植物組織全体に導入することができる、それにより、プロトプラストからインタクトな植物を再生させる必要がなくなることにある。現代のAgrobacterium形質転換ベクターは、E.coliならびにAgrobacteriumで複製可能であり、操作が容易である(Klee et al.,Nat. Biotechnol., 3(7):637-642, 1985)。さらに、Agrobacterium媒介遺伝子導入用ベクターに関する近年の技術進歩によって、ベクターでの遺伝子及び制限部位の配置が見直されており、様々なポリペプチドをコードする遺伝子を発現することができるベクターの構築が容易になっている。本明細書に記載したベクターは、挿入するポリペプチドコード遺伝子の直接発現のためのプロモーターとポリアデニル化部位とが隣接している便利なマルチリンカー領域を有している。加えて、改変したTi遺伝子、及び未改変のTi遺伝子の双方を含むAgrobacteriumを、形質転換のために使用することができる。
【0057】
Agrobacterium媒介形質転換が効率的である植物株では、遺伝子座移入の容易さと、定義した性質が故に、これが選択法となる。DNAを植物細胞へ導入するためのAgrobacterium媒介植物組込みベクターの使用は、当該技術分野において周知のものである(Fraley et al.,Nat. Biotechnol., 3:629-635, 1985;米国特許第5,563,055号)。
【0058】
リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、及びこれらの処理の組み合わせに基づいた方法を使用して、植物プロトプラストの形質転換を達成することもできる(例えば、Potrykus et al., Mol. Gen. Genet., 199:183-188,1985;Omirulleh et al., Plant Mol. Biol., 21(3):415-428, 1993;Fromm et al., Nature, 312:791-793, 1986;Uchimiya et al., Mol. Gen. Genet., 204:204, 1986;Marcotte et al., Nature, 335:454, 1988を参照されたい)。植物の形質転換、及び外来性遺伝因子の発現は、Choi et al. (Plant Cell Rep., 13: 344-348, 1994)、及びEllul et al. (Theor. Appl. Genet., 107:462-469, 2003)で例示されている。
【0059】
数多くのプロモーターが、関心を寄せた遺伝子を植物遺伝子発現する上で有用であり、そのような遺伝子として、選択可能なマーカー、点数化可能なマーカー、有害生物耐性、病害抵抗性、栄養強化のための遺伝子、及び農業的に関心を寄せたその他あらゆる遺伝子があるが、これらに限定されない。植物遺伝子発現に有用な構成的プロモーターの例として、単子葉植物(例えば、Dekeyser et al., Plant Cell, 2:591, 1990;Terada and Shimamoto, Mol. Gen. Genet., 220:389, 1990を参照されたい)などの大抵の植物組織において構成的な高レベル発現を示すカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)P-35Sプロモーター(例えば、Odel et al., Nature, 313:810, 1985を参照されたい);CaMV35Sプロモーターを直列に重複した形態である増強した35Sプロモーター(P-e35S);ノパリン合成酵素プロモーター(An et al., Plant Physiol., 88:547, 1988);オクトピン合成酵素プロモーター(Fromm et al., Plant Cell, 1:977, 1989);及び、米国特許第5,378,619号に記載されたゴマノハグサモザイクウイルス(P-FMV)プロモーター、及びP-FMVのプロモーター配列を直列に重複したFMVプロモーターの増強バージョン(P-eFMV)、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター、サトウキビ桿状ウイルスプロモーター、ツユクサ黄斑ウイルスプロモーター、及び植物細胞において発現することが公知であるその他の植物DNAウイルスプロモーターがあるが、これらに限定されない。
【0060】
環境シグナル、ホルモンシグナル、化学的シグナル、及び/または発育シグナルに応答して調節を受ける様々な植物遺伝子プロモーターを、植物細胞において機能的に連結した遺伝子の発現のために使用することもできる、そして、当該プロモーターの例として、(1)熱(Callis et al., Plant Physiol., 88:965, 1988)、(2)光(例えば、エンドウマメrbcS-3Aプロモーター、Kuhlemeier et al., Plant Cell, 1:471, 1989;トウモロコシrbcSプロモーター、Schaffner and Sheen, Plant Cell, 3:997, 1991;または、クロロフィルa/b-結合タンパク質プロモーター、Simpson et al., EMBO J., 4:2723, 1985)、(3)ホルモン、例えば、アブシジン酸(Marcotte et al., Plant Cell, 1:969, 1989)、(4)損傷(例えば、wunl、Siebertz et al., Plant Cell, 1:961, 1989);または(5)化学物質、例えば、ジャスモン酸メチル、サリチル酸、または毒性緩和剤で調節を受けるプロモーターがある。器官特異的プロモーター(例えば、Roshal et al., EMBO J., 6:1155, 1987;Schernthaner et al., EMBO J., 7:1249, 1988;Bustos et al., Plant Cell, 1:839, 1989)を使用することも有利になり得る。
【0061】
植物へ導入し得る代表的な本発明の核酸として、例えば、別の種からのDNA配列または遺伝子、または同じ種に由来する、または同じ種に存在しているが、伝統的な繁殖または育種技術ではなく、遺伝子操作法でレシピエント細胞に取り込まれる遺伝子または配列もある。しかしながら、用語「外来性」は、形質転換する細胞に通常は存在しない遺伝子、または、おそらくは、単に形質転換するDNAセグメント、または遺伝子において認められるものと同じ形状や構造では存在しない遺伝子、または通常は存在しており、そして、天然の発現パターンとは異なる様式で発現させること、例えば、過剰発現させることが望ましい遺伝子をも意味する。したがって、用語「外来性」遺伝子またはDNAは、同様の遺伝子が、レシピエント細胞に既に存在しているか否かに関係なく、レシピエント細胞に導入するあらゆる遺伝子またはDNAセグメントを指すことを意図している。外来性DNAに含まれるDNAの型として、植物細胞に既に存在しているDNA、別の植物からのDNA、異なる生物からのDNA、または外部で生成したDNA、例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA配列、または遺伝子の合成または改変バージョンをコードするDNA配列を含むことができる。
【0062】
数千にまでは及ばないが、数百の異なる遺伝子が公知であり、これらは、潜在的に本発明のブロッコリー植物へ導入することができる。ブロッコリー植物へ導入するために選択し得る特定の遺伝子、及び対応する表現型の例として、昆虫耐性のための1つ以上の遺伝子、例えば、Bacillus thuringiensis(B.t.)遺伝子、有害生物耐性、例えば、真菌性病害制御のための遺伝子、除草剤耐性、例えば、グリホサート耐性を付与する遺伝子、及び品質の改良、例えば、収量、栄養強化、環境耐性またはストレス耐性、または植物の生理、生育、発達、形態、または植物生成物(複数可)での望ましい変化のための遺伝子があるが、これらに限定されない。例えば、構造遺伝子として、昆虫耐性をもたらすあらゆる遺伝子、例えば、参照により、その全内容を本明細書で援用するWO99/31248、参照により、その全内容を本明細書で援用する米国特許第5,689,052号、参照により、その全内容を本明細書で援用する米国特許第5,500,365号及び第5,880,275号に記載されているBacillus昆虫制御タンパク質遺伝子などがあるが、これらに限定されない。別の実施形態では、構造遺伝子は、様々な遺伝子が付与した除草剤グリホサートに対する耐性を与えることができ、そのような様々な遺伝子として、例えば、参照により、その全内容を本明細書で援用する米国特許第5,633,435号に記載されたAgrobacterium株CP4グリホサート抵抗性EPSPS遺伝子(aroA:CP4)、または参照により、その全内容を本明細書で援用する米国特許第5,463,175号に記載されたグリホサート酸化還元酵素遺伝子(GOX)があるが、これらに限定されない。
【0063】
あるいは、DNAをコードする配列は、内在性遺伝子の発現を標的化して阻害する非翻訳RNA分子をコードすることで、例えば、アンチセンスまたは共抑制媒介メカニズムを介して、これらの表現型に影響を及ぼすことができる(例えば、Bird et al., Biotech. Gen. Engin. Rev., 9:207, 1991を参照されたい)。RNAは、所望の内在性mRNA産物を切断するように遺伝子操作した触媒性RNA分子(すなわち、リボザイム)とし得る(例えば、Gibson and Shillito, Mol. Biotech., 7:125,1997を参照されたい)。したがって、関心を寄せた変化を表現型または形態にもたらすタンパク質またはmRNAを生産するあらゆる遺伝子が、本発明を実行する上で有用である。
【0064】
F.可食組成物
本明細書で使用する「可食組成物」とは、哺乳動物が摂取し得る組成物、例えば、食品、飼料、または、医薬組成物のことを指す。本明細書で使用する「食品」及び「飼料」とは、動物またはヒト用の食品として使用または調製することができる物質のことを指しており、そして、食品の調製において使用し得る物質、または、食品添加物として使用し得る物質を含む。一般的な食品または飼料として、スープ、ジュース、スムージー、スプレッド、ヨーグルト、ソース(sauces)、グレイビー(gravies)、キッシュ、パイ、調製済ベジタブル製品、例えば、ベジタブルベイク、及び混合ベジタブル製品などがあるが、これらに限定されない。さらに、本明細書に記載した可食組成物は、添加物またはサプリメントとしても摂取し得る。これらは、栄養物質、例えば、様々なビタミン及びミネラルと一緒に配合することができる、そして、実質的に液体の組成物、実質的に固体の組成物、または、ゼラチンに入れることができる。本明細書に記載した可食組成物は、一部の実施形態では、粉末形態とし得る。
【0065】
本明細書で使用する「医薬組成物」とは、医薬として許容可能な担体を含む組成物のことを指す。特定の実施形態では、用語「医薬として許容可能」とは、動物またはヒトへの投与に適した担体のことを指す。本開示の可食組成物は、例えば、意図している投与経路、及び標準的な薬務に関して選択した医薬として許容可能なあらゆる担体を含み得る。本開示の可食組成物は、例えば、錠剤、カプセル、エリキシル剤、溶液、または懸濁液として投与し得る。
【0066】
本明細書に記載した可食組成物は、当該技術分野で公知のあらゆる方法、例えば、混合(mixing)、混合(blending)、凍結、加熱、冷却、凍結乾燥、低温殺菌、及び、あらゆる適切な方法を使用する調理など、これらに限定されない方法を使用して製造し得る。
【0067】
本発明のブロッコリーは、ブロッコリーを入れるあらゆる製品において使用することができる、また、ブロッコリーの使用として、例えば、ブロッコリー、ブロッコリーの一部分、ブロッコリーの抽出物または誘導物、またはブロッコリーの細胞の使用などがあるが、これらに限定されない。ブロッコリーは、材料、成分、製剤、抽出物、または、誘導体として使用することができる。ブロッコリーは、同定可能な部分、または、同定不可能な部分として存在させることができる。ブロッコリーは、新鮮なもの、凍結したもの、または乾燥させたものとすることができる。ブロッコリーは、ヒトまたは動物用の食品、飼料、または、サプリメントなど、これらに限定されないすべての目的のために、あらゆる食品、飲料、抽出物、サプリメント、栄養補助食品などで使用することができる。特に、ブロッコリーは、新鮮な、または凍結したインタクトなブロッコリー製品、または、インタクトな、または、加工したブロッコリーを含むスープ、インスタント食品、スナックバー、飲料、スムージー、ミルクセーキ、錠剤、カプセル、注射物質、ビタミン、または、その他の同様の製品として使用することができる。
【0068】
G.定義
本明細書の説明及び表では、数多くの用語を使用している。明細書及び特許請求の範囲の理解を、明確かつ矛盾のないようにするために、以下のように定義をする:
【0069】
対立遺伝子:遺伝子座の1つ以上の代替形態のいずれかであって、その対立遺伝子のすべてが、1つの形質または特徴に関連している。二倍体の細胞または生物では、所与の遺伝子の2つの対立遺伝子が、一対の相同染色体において、対応する遺伝子座を占めている。
【0070】
戻し交配:育種家が、雑種子孫、例えば、第一代雑種(F1)を、当該雑種子孫の親の片方と反復交配するプロセス。戻し交配は、一方の遺伝的バックグラウンドに由来する1つ以上の単一遺伝子座変換または導入遺伝子を、他方へ導入するために使用することができる。
【0071】
交配:2つの親植物を交配させること。
【0072】
他家受粉:異なる植物に由来する2つの配偶子を結合させて受精させること。
【0073】
二倍体:2セットの染色体を有する細胞または生物。
【0074】
除雄:植物の雄性器官の除去、または、細胞質または核の遺伝因子、もしくは雄性不稔を招く化学物質を使用した当該器官の不活化。
【0075】
酵素:生物学的反応において触媒として作用する分子。
【0076】
F1雑種:2つの非同質遺伝子植物の交配での第一代子孫。
【0077】
遺伝子型:細胞または生物の遺伝子構成。
【0078】
半数体:二倍体での2セットの染色体の1セットを有する細胞または生物。
【0079】
連鎖:同じ染色体での対立遺伝子が、それらの遺伝が独立していると、偶然にも、期待した以上に頻繁に一緒に分離する傾向を示す現象。
【0080】
マーカー:環境分散の要素が皆無である、すなわち、遺伝率が1であり、容易に検出できる表現型であって、好ましくは、共優性の様式で遺伝する(二倍体ヘテロ接合体での遺伝子座の両方の対立遺伝子が容易に検出可能である)表現型。
【0081】
表現型:細胞または生物の検出可能な特徴であって、遺伝子発現の出現を特徴としている。
【0082】
量的形質遺伝子座(QTL):量的形質遺伝子座(QTL)とは、通常は連続的に分布する数的に示すことができる形質を、ある程度にまで制御する遺伝子座のこと。
【0083】
抵抗性:本明細書で使用する用語「抵抗性」及び「耐性」は、特定の有害生物、病原体、非生物的影響または環境条件において症状を示さない植物を説明するために互換可能に使用する。これらの用語は、幾分の症状を示すが、市場に流通可能な製品を許容可能な収量で生産することができる植物を説明するためにも使用している。抵抗性または耐性と称する一部の植物には、当該植物の発育が阻害を受けて収量が減少しても、依然として作物を生産し得るという意味だけで、そのように称しているものがある。
【0084】
再生:組織培養物からの植物の発生。
【0085】
Royal Horticultural Society(RHS)カラーチャート値:RHSカラーチャートは、あらゆる色の正確な同定を可能にする標準化した基準である。当該チャートでの色の名称は、その色相、輝度、及び彩度を表す。色は、例えば、Yellow-Orange Group 19A、またはRed Group 41Bなど、グループ名、シートの番号、及び記号を特定して、RHSカラーチャートで正確に命名する。
【0086】
自家受粉:同じ植物の葯から柱頭への花粉の移動。
【0087】
単一遺伝子座を変換した植物(単一遺伝子座変換植物):戻し交配と称する植物育種技術または遺伝子座の遺伝子操作で作出した植物であって、単一遺伝子座の特徴に加えて、ブロッコリー品種の本質的にすべての所望の形態学的及び生理学的特徴が正常な状態に戻っている植物。
【0088】
実質的に等価:比較をした場合に、平均からの統計学的に有意な差異(例えば、p=0.05)が認められない特徴。
【0089】
組織培養物:同一の型または異なる型を有する単離した細胞、または植物の一部分を構成している当該細胞の集合を含む組成物。
【0090】
導入遺伝子:形質転換または部位特異的改変によってブロッコリー植物のゲノムへ導入した配列を含む遺伝子座。
【0091】
H.寄託情報
上記した、及び特許請求の範囲に記載したブロッコリー雑種SVBL0308の寄託は、Provasoli-Guillard National Center for Marine Algae and Microbiota (NCMA), 60 Bigelow Drive, East Boothbay, Maine, 04544 USAに対して行った。ブロッコリー雑種SVBL0308の種子について行った寄託の寄託日は、2021年5月27日である。ブロッコリー雑種SVBL0308の種子について行った寄託の受託番号は、NCMA受託番号202105012である。特許が付与されれば、当該寄託に関するすべての制限は解除される、そして、当該寄託は、37C.F.R.§§1.801-1.809のすべての要件を満たすこととなる。この寄託は、ブダペスト条約に従って受理されている、そして、30年間、または最後の請求から5年間、または特許の存続期間のいずれか長い期間にわたって寄託機関で維持される、また、その期間内に必要に応じて交換を行う。
【0092】
上記した発明は、明確化及び理解のために、例示及び実施例によって、ある程度は詳細に説明をしてはいるが、添付した特許請求の範囲の制限を受けるに過ぎず、本発明の範囲内において、ある程度の変更及び修正を行い得ることは自明である。
【0093】
本明細書で引用した全文献は、参照により、その全内容を本明細書で明示的に援用する。
【外国語明細書】