IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 國立中正大學の特許一覧

<>
  • 特開-色度測定方法及び装置 図1
  • 特開-色度測定方法及び装置 図2
  • 特開-色度測定方法及び装置 図3
  • 特開-色度測定方法及び装置 図4
  • 特開-色度測定方法及び装置 図5
  • 特開-色度測定方法及び装置 図6
  • 特開-色度測定方法及び装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074454
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】色度測定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/46 20060101AFI20230522BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G01J3/46 Z
G01J3/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076725
(22)【出願日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】110142801
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】503004699
【氏名又は名称】國立中正大學
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ワン シアン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ツャオ ユイ ミン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ユー リン
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA04
2G020DA02
2G020DA03
2G020DA04
2G020DA14
2G020DA32
(57)【要約】
【課題】より広い面積で測定対象の色度を測定する色度測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】測定対象の色度を測定するための方法であって、色度測定装置により実行され、色度測定装置は、カメラと、記憶ユニットと、処理ユニットと、を含み、記憶ユニットには、複数の対象にそれぞれ対応する複数の光源スペクトル情報が格納されている。カメラを用いて測定対象を撮影して測定対象のカラー画像を得るステップAと、処理ユニットによりスペクトル変換行列を用いて測定対象のカラー画像に基づいて、測定対象のカラー画像に対応する測定対象のスペクトル画像を得るステップBと、処理ユニットにより複数の光源スペクトル情報から測定対象に対応する目標の光源スペクトル情報を得るステップCと、処理ユニットにより目標の光源スペクトル情報と測定対象のスペクトル画像とに基づいて、測定対象の色度データを得るステップDと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の色度を測定するための方法であって、色度測定装置により実行され、前記色度測定装置は、カメラと、記憶ユニットと、処理ユニットと、を含み、前記記憶ユニットには、複数の対象にそれぞれ対応する複数の光源スペクトル情報が格納されており、
前記カメラを用いて前記測定対象を撮影して前記測定対象のカラー画像を得るステップAと、
前記処理ユニットによりスペクトル変換行列を用いて前記測定対象のカラー画像に基づいて、前記測定対象のカラー画像に対応する前記測定対象のスペクトル画像を得るステップBと、
前記処理ユニットにより前記複数の光源スペクトル情報から前記測定対象に対応する目標の光源スペクトル情報を得るステップCと、
前記処理ユニットにより前記目標の光源スペクトル情報と前記測定対象のスペクトル画像とに基づいて、前記測定対象の色度データを得るステップDと、を含む、
色度測定方法。
【請求項2】
前記記憶ユニットには、色度校正モデルがさらに格納されており、
前記ステップDの後に、前記処理ユニットにより前記測定対象の色度データを、色度を校正するために用いられる前記色度校正モデルに入力し、出力として前記測定対象の校正済み色度データを得るステップE、をさらに含む、請求項1に記載の色度測定方法。
【請求項3】
前記記憶ユニットには、複数の色度トレーニングデータがさらに格納されており、各前記色度トレーニングデータは、理論色度データと、測定色度データと、を含み、
前記ステップEの前に、前記処理ユニットにより前記複数の色度トレーニングデータを用いて、線形回帰モデルである前記色度校正モデルをトレーニングするステップF、をさらに含み、前記色度校正モデルは、
であり、
nは前記複数の色度トレーニングデータの数であり、
はi番目の前記色度トレーニングデータの前記理論色度データであり、
は前記i番目の前記色度トレーニングデータの前記測定色度データであり、
及びβ1はトレーニングされる前記色度校正モデルの係数であり、
は前記i番目の色度トレーニングデータに対応する誤差項である、請求項2に記載の色度測定方法。
【請求項4】
前記ステップDは、
前記処理ユニットにより前記目標の光源スペクトル情報と前記測定対象のスペクトル画像とに基づいて、CIE 1931等色関数を用いて、前記測定対象のスペクトル画像における複数のピクセルにそれぞれ対応する複数の三刺激値を得るステップD-1と、
前記処理ユニットにより前記複数の三刺激値に基づいて、前記測定対象のスペクトル画像における前記複数のピクセルのそれぞれの色度値にそれぞれ対応する複数の前記測定対象の色度データを得るステップD-2と、を含む、請求項1に記載の色度測定方法。
【請求項5】
前記ステップD-1において、各前記三刺激値は、第1の刺激値Xと、第2の刺激値Yと、第3の刺激値Zと、を含み、それぞれ、


、であり、
は前記目標の光源スペクトル情報であり、


とは前記CIE 1931等色関数であり、
前記ステップD-2において、各前記色度値は、第1の色度値xと、第2の色度値yと、を含み、それぞれ、

、である、
請求項4に記載の色度測定方法。
【請求項6】
測定対象の色度を測定するための装置であって、
複数の対象にそれぞれ対応する複数の光源スペクトル情報が格納されている、記憶ユニットと、
前記記憶ユニットに電気的に接続し、前記測定対象を撮影して前記測定対象のカラー画像を得て前記記憶ユニットに記憶するカメラと、
前記記憶ユニットに電気的に接続し、スペクトル変換行列を用いて前記測定対象のカラー画像に基づいて、前記測定対象のカラー画像に対応する前記測定対象のスペクトル画像を得て、また、前記複数の光源スペクトル情報から前記測定対象に対応する目標の光源スペクトル情報を得て、前記目標の光源スペクトル情報と前記測定対象のスペクトル画像とに基づいて、前記測定対象の色度データを得るように構成されている処理ユニットと、を含む、
色度測定装置。
【請求項7】
前記記憶ユニットには、色度校正モデルがさらに格納されており、
前記処理ユニットは、前記測定対象の色度データを、色度を校正するために用いられる前記色度校正モデルに入力し、出力として前記測定対象の校正済み色度データを得るようにさらに構成されている、請求項6に記載の色度測定装置。
【請求項8】
前記記憶ユニットには、複数の色度トレーニングデータがさらに格納されており、各前記色度トレーニングデータは、理論色度データと、測定色度データと、を含み、前記処理ユニットは、前記複数の色度トレーニングデータを用いて、線形回帰モデルである前記色度校正モデルをトレーニングし、前記色度校正モデルは、

であり、
nは前記複数の色度トレーニングデータの数であり、
はi番目の前記色度トレーニングデータの前記理論色度データであり、
は前記i番目の前記色度トレーニングデータの前記測定色度データであり、
及びβ1はトレーニングされる前記色度校正モデルの係数であり、
は前記i番目の色度トレーニングデータに対応する誤差項である、請求項7に記載の色度測定装置。
【請求項9】
前記処理ユニットは、前記目標の光源スペクトル情報と前記測定対象のスペクトル画像とに基づいて、CIE 1931等色関数を用いて、前記測定対象のスペクトル画像における複数のピクセルにそれぞれ対応する複数の三刺激値を得て、前記複数の三刺激値に基づいて、前記測定対象のスペクトル画像における前記複数のピクセルのそれぞれの色度値にそれぞれ対応する複数の前記測定対象の色度データを得るようにさらに構成されている、請求項6に記載の色度測定装置。
【請求項10】
各前記三刺激値は、第1の刺激値Xと、第2の刺激値Yと、第3の刺激値Zと、を含み、それぞれ、


、であり、
は前記目標の光源スペクトル情報であり、


とは前記CIE 1931等色関数であり、
各前記色度値は、第1の色度値xと、第2の色度値yと、を含み、それぞれ、

、である、
請求項9に記載の色度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定方法に関し、特に色度測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)パネル、液晶ディスプレイ(LCD)パネルなどの表示装置は、製造完了後に、表示品質を確保するため、色度測定器を用いて色度(chromaticity)を測定する必要がある。色度とは、明度を含まず、色相と彩度とを示すものである。色度検出器は、人間の目が色を認識する方法を模倣することにより、測定対象の色度を測定する。その原理は大まかに、光を測定対象(表示装置)の表面に当てて、測定対象から反射された光を色度検出器の三色のカラーフィルター(赤、緑、青のカラーフィルター)に通し、三刺激値(tristimulus values)を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許出願公開第201441589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の色度測定器、例えば特許文献1に開示された色度測定器は、近距離で測定するため、測定範囲が狭く、測定対象の全体の測定を終えるまでに数回の測定が必要であり、測定効率が悪い。
【0005】
従って、本発明の目的は、より広い面積で測定対象の色度を測定する色度測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の色度測定方法は、測定対象の色度を測定するための方法であって、色度測定装置により実行され、色度測定装置は、カメラと、記憶ユニットと、処理ユニットと、を含み、記憶ユニットには、複数の対象にそれぞれ対応する複数の光源スペクトル情報が格納されている。色度測定方法は、カメラを用いて測定対象を撮影して測定対象のカラー画像を得るステップAと、処理ユニットによりスペクトル変換行列を用いて測定対象のカラー画像に基づいて、測定対象のカラー画像に対応する測定対象のスペクトル画像を得るステップBと、処理ユニットにより複数の光源スペクトル情報から測定対象に対応する目標の光源スペクトル情報を得るステップCと、処理ユニットにより目標の光源スペクトル情報と測定対象のスペクトル画像とに基づいて、測定対象の色度データを得るステップDと、を含む。
【0007】
本発明の色度測定装置は、測定対象の色度を測定するための装置であって、複数の対象にそれぞれ対応する複数の光源スペクトル情報が格納されている記憶ユニットと、記憶ユニットに電気的に接続し、測定対象を撮影して測定対象のカラー画像を得て記憶ユニットに記憶するカメラと、記憶ユニットに電気的に接続し、スペクトル変換行列を用いて測定対象のカラー画像に基づいて、測定対象のカラー画像に対応する測定対象のスペクトル画像を得て、また、複数の光源スペクトル情報から測定対象に対応する目標の光源スペクトル情報を得て、目標の光源スペクトル情報と測定対象のスペクトル画像とに基づいて、測定対象の色度データを得るように構成されている処理ユニットと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
カメラを用いて、測定対象を撮影し、より広い面積の測定対象を含む測定対象のカラー画像を得て、スペクトル変換行列を用いて測定対象のカラー画像に基づいて、測定対象のスペクトル画像を得て、目標の光源スペクトル情報と測定対象のスペクトル画像とに基づいて、測定対象の色度データを得て、これにより、より広い範囲で色度を測定することを実現し、色度測定の効率を向上させる。
【0009】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の色度測定装置の一の実施例が示されているブロック図である。
図2】本発明の色度測定方法の一の実施例のスペクトル変換行列計算プロセスが示されているフロー図である。
図3図2のステップS25のサブステップが示されているフロー図である。
図4】本発明の色度測定方法の該実施例における色度測定プロセスの実施形態Iが示されているフロー図である。
図5図4のステップS32のサブステップが示されているフロー図である。
図6図4のステップS34のサブステップが示されているフロー図である。
図7】本発明の色度測定方法の該実施例における該色度測定プロセスの実施形態IIが示されているフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を詳細に説明する前に、以下の説明では、類似な構成要素は同一の参照符号で示されていることに留意されたい。
【0012】
本明細書において、「接続」という用語は、複数の電気機器/装置/設備の間が導電材料(例えば、電線)により直接的に接続されること、或いは、2つの電気機器/装置/設備の間が他の一つ以上の機器/装置/設備又は無線通信により間接的に接続されることを意味する。
【0013】
図1は、本発明の色度測定装置1の一の実施例が示されているブロック図である。該色度測定装置1は、測定対象の色度を測定するように用いられ、記憶ユニット11と、カメラ12と、処理ユニット14と、を含む。
【0014】
処理ユニット14は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、デュアルコアモバイルプロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、無線周波数集積回路(RFIC)などを用いてもよいが、これらに限られない。
【0015】
記憶ユニット11は、カメラ12及び処理ユニット14に電気的に接続し、ハードディスクドライブ(HDD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルROM、ファームウェア、フラッシュメモリなどのコンピューター可読の記憶媒体を用いてもよいが、これらに限られない。
【0016】
本実施例において、記憶ユニット11には、参照対象のカラー画像と、複数の対象にそれぞれ対応する複数の光源スペクトル情報と、該参照対象の反射スペクトルデータと、が含まれる。
【0017】
なお、本実施例において、該参照対象は標準24色のカラーチャート(X-rite社のカラーチェッカー(登録商標)クラッシック)であり、標準24色のカラーチャートには、自然色、原色、グレースケールなどを含む。該参照対象の反射スペクトルデータは、例えばロチェスター工科大学のマンセル色彩科学研究所(Munsell Color Science Laboratory)が提供する関連のデータセットを参照することで得られるが、これに限られない。
【0018】
なお、本実施例において、該複数の光源スペクトル情報が対応する複数の対象は、例えば異なるメーカーが製造したLEDであるが、これらに限られない。
【0019】
本実施例において、カメラ12は、画素数が約2000万画素(5472×3648画素)であり、画素密度が100ピクセル/センチメートル(ppcm)であり、撮影範囲(Field of view、FOV)が547.2ミリメートル×364.8ミリメートルであるスペックを有するものであるが、これに限られない。
【0020】
本実施例において、照明としてハロゲンライトを使用し、標準グレーチャート(18%グレー)を用いてカメラ12のホワイトバランスを調整し、画像のグレースケールを例えば220階調にすることにより、予めカメラ12を調整し、撮影条件を固定して撮影する。なお、本実施例において、カメラ12が撮影した画像の色空間は、sRGB(standard RGB color space)である。
【0021】
本発明の色度測定方法の一の実施例は、スペクトル変換行列(spectral transform matrix)計算プロセスと、色度測定プロセスと、を含む。
【0022】
図1及び図2を参照し、以下では本発明の色度測定方法の該実施例の該スペクトル変換行列計算プロセスの各ステップ(S21~S25)を説明する。
【0023】
ステップS21において、処理ユニット14により、参照対象のカラー画像と参照対象の反射スペクトルデータとをCIE 1931XYZ色空間に変換し、参照対象のカラー画像に対応する参照対象の変換画像と、参照対象の反射スペクトルデータに対応する参照対象の変換スペクトルデータと、を得る。
【0024】
具体的には、処理ユニット14により、下記の式に基づいて、参照対象の変換画像を得る:
【数1】
【0025】

、及び
はそれぞれ参照対象の変換画像の各ピクセルのCIE 1931XYZ色空間におけるXの値、Yの値、及びZの値を示し、

、及び
はそれぞれ参照対象のカラー画像の各ピクセルのsRGB色空間における赤色の値、緑色の値、及び青色の値を示し、
は色順応変換行列(Chromatic adaptation transform matrix)を示し、

、及び
は特定の標準光源の白色点(White point)を示し、

、及び
は参照対象のカラー画像の撮影環境光源の白色点を示す。
【0026】
なお、sRGB色空間において、特定の標準光源は、例えば、CIE標準光源D65(CIE Standard Illuminant D65)である。参照対象のカラー画像の撮影環境光源と特定の標準光源とは異なるため、色順応変換行列
を介して特定の標準光源の白色点を参照対象のカラー画像の撮影環境光源の白色点に変換する。
【0027】
また、具体的には、処理ユニット14により、下記の式に基づいて、参照対象の変換スペクトルデータを得る:
【数2】
【0028】

、及び
はそれぞれ参照対象のCIE 1931XYZ色空間におけるXの値、Yの値、及びZの値を示し、
は参照対象の反射スペクトルデータの波長であり(範囲は380~780ナノメートルである)、
は参照対象のカラー画像の撮影時の光源スペクトルであり、
は参照対象の反射スペクトルであり、

、及び
はCIE 1931等色関数(Color matching fuctions、CMF)である。
【0029】
ステップS22において、処理ユニット14により、ステップS21で得られた参照対象の変換画像に基づいて、変数行列を得る。なお、該変数行列は、例えば、非線形応答、暗電流、カラーフィルターの不精確な色分解、色ずれ(例えばホワイトバランス)など、色度測定装置1のカメラ12において誤差を生じる可能性のある要素を分析して得る。
【0030】
非線形応答に関する非線形応答行列
は、例えば以下の式のように定義される:
【数3】
【0031】
暗電流は、カメラに入る光の量によって変わることなく、通常は固定値である。従って、暗電流行列
は以下の式のように定義される:
、aは任意の定数である。
【0032】
カラーフィルターの不精確な色分解、及び色ずれについては、参考対象のカラー画像は既にCIE 1931XYZ色空間に変換されているため、参照対象の変換画像の各ピクセルのCIE 1931XYZ色空間におけるXの値
、Yの値
、及びZの値
について考慮し、色ずれ行列
は、以下の式のように定義される:
【数4】
【0033】
従って、非線形応答行列と、暗電流行列と、色ずれ行列とに基づいて、変数行列
を得る。変数行列
は以下のように示される:
【数5】
【0034】
ステップS23において、処理ユニット14により、参照対象の変換スペクトルデータと変数行列とに基づいて、校正係数行列
を得る。具体的には、処理ユニット14により、以下の式に基づいて多変量回帰分析(Multiple regression analysis)を実行し、校正係数行列
を得る:
【数6】
【0035】
はCIE 1931XYZ色空間における参照対象の変換スペクトルデータに関する参照対象の変換スペクトル行列であり、
は変数行列であり、
は変数行列の逆行列である。
ステップS24において、処理ユニット14により、変数行列と校正係数行列とに基づいて、参照対象の変換画像に対応する参照対象の校正画像を得る。具体的には、処理ユニット14により、以下の式に基づいて参照対象の校正画像を得る:
【数7】
【0036】
は参照対象の校正画像のすべてのピクセルがCIE 1931XYZ色空間におけるXの値、Yの値、及びZの値を含む参照対象の校正画像行列であり、
は校正係数行列であり、
は変数行列である。
【0037】
ステップS25において、処理ユニット14により、参照対象の反射スペクトルデータと参照対象の校正画像とに基づいて、スペクトル変換行列を得る。
【0038】
図3と合わせて参照し、詳しく説明すると、ステップS25は以下のサブステップ(S251、S252)を含む。
【0039】
サブステップS251において、処理ユニット14により、参照対象の反射スペクトルデータに対して主成分分析(Principal component analysis、PCA)を実行し、複数の目標の主成分得点(Principal component score)と複数の目標の主成分固有値(Principal component eigenvalue)とを得る。本実施例において、複数の目標の主成分得点及び複数の目標の主成分固有値は、例えば、参照対象の反射スペクトルデータの99.9964854%の変動性を説明することができる前12組の主成分の主成分得点及び主成分固有値であるが、これに限られない。
【0040】
サブステップS252において、処理ユニット14により、複数の目標の主成分得点と参照対象の校正画像とに対して多変量回帰分析を実行し、スペクトル変換行列を得る。具体的には、処理ユニット14により、以下の式に基づいて多変量回帰分析を実行し、スペクトル変換行列
を得る:
【数8】
【0041】
は複数の目標の主成分得点を含む主成分得点行列であり、


、及び
はそれぞれ参照対象の校正画像の各ピクセルのCIE 1931XYZ色空間におけるXの値、Yの値、及びZの値である。
【0042】
図1及び図4を参照し、以下では本発明の色度測定方法の該実施例における該色度測定プロセスの実施形態Iの各ステップ(S31~S34)を説明する。
【0043】
ステップS31において、カメラ12を用いて測定対象を撮影して測定対象のカラー画像を得て記憶ユニット11に記憶する。本実施例において、測定対象はLEDパネルであり、撮影したカラー画像は測定対象の一部を含む。
【0044】
ステップS32において、処理ユニット14により、スペクトル変換行列を用いて測定対象のカラー画像に基づいて、測定対象のカラー画像に対応する測定対象のスペクトル画像を得る。
【0045】
図5と合わせて参照し、詳しく説明すると、ステップS32は以下のサブステップ(S321、S322)を含む。
【0046】
サブステップS321において、処理ユニット14により、測定対象のカラー画像をCIE 1931XYZ色空間に変換し、測定対象のカラー画像に対応する測定対象の変換画像を得る。サブステップS321は、ステップS21と同様な方法で行うことができ、本明細書では簡潔のため詳細は省略されている。
【0047】
サブステップS322において、処理ユニット14により、スペクトル変換行列を用いて測定対象の変換画像に基づいて、測定対象のスペクトル画像を得る。具体的には、処理ユニット14により下記の式に基づいて測定対象のスペクトル画像を得る:
【数9】
【0048】
は測定対象のスペクトル画像のすべてのピクセルのCIE 1931XYZ色空間におけるXの値、Yの値、及びZの値を含む測定対象のスペクトル画像行列であり、
は複数の目標の主成分固有値であり、
はスペクトル変換行列であり、


、及び
はそれぞれ測定対象の変換画像の各ピクセルのCIE 1931XYZ色空間におけるXの値、Yの値、及びZの値である。
【0049】
ステップS33において、処理ユニット14により、複数の光源スペクトル情報から測定対象に対応する目標の光源スペクトル情報を得る。
【0050】
具体的には、例えば、記憶ユニット11には光源スペクトル情報A、光源スペクトル情報Bなどが格納されており、光源スペクトル情報AはメーカーAが製造したLEDに対応し、光源スペクトル情報BはメーカーBが製造したLEDに対応する。測定対象がメーカーA製造のLEDパネルである場合、目標の光源スペクトル情報は光源スペクトル情報Aである。
【0051】
ステップS34において、処理ユニット14により、目標の光源スペクトル情報と測定対象のスペクトル画像とに基づいて、測定対象の色度データを得る。
【0052】
図6を合わせて参照し、詳しく説明すると、ステップS34は以下のサブステップ(S341、S342)を含む。
【0053】
サブステップS341において、処理ユニット14により、目標の光源スペクトル情報と測定対象のスペクトル画像とに基づいて、CIE 1931等色関数を用いて、測定対象のスペクトル画像における複数のピクセルにそれぞれ対応する複数の三刺激値を得る。各三刺激値は、第1の刺激値Xと、第2の刺激値Yと、第3の刺激値Zと、を含む。それぞれ、


、である。
【0054】
は目標の光源スペクトル情報であり、


とはCIE 1931等色関数である。
【0055】
サブステップS342において、処理ユニット14により、複数の三刺激値に基づいて、測定対象のスペクトル画像における複数のピクセルのそれぞれの色度値にそれぞれ対応する複数の測定対象の色度データを得る。各色度値は、第1の色度値xと、第2の色度値yと、を含む。それぞれ、

、である。
【0056】
図1及び図7は、本発明の色度測定方法の該実施例における該色度測定プロセスの実施形態IIの各ステップを説明する。実施形態IIはステップS41~S46を含むが、ステップS41~S44は実施形態IのステップS31~S34と同様であるため、以下では実施形態Iと実施形態IIとの違いのみについて説明する。
【0057】
本実施例において、記憶ユニット11には、色度校正モデルと、複数の色度トレーニングデータと、がさらに格納されている。各色度トレーニングデータは、理論色度データと、測定色度データと、を含む。
【0058】
ステップS45において、処理ユニット14により複数の色度トレーニングデータを用いて、色度を校正するために用いられる色度校正モデルをトレーニングする。
【0059】
なお、本実施例において、複数の理論色度データは、ディスプレイカラーアナライザーCA-310(コニカミノルタ社製)を用いて、複数のトレーニングカラー画像を測定して得る。複数の色度トレーニングデータの測定色度データは、複数のトレーニングカラー画像に対してステップS42~S44を実行して得る。但し、複数の理論色度データは、他の方法で得てもよく、これに限られない。このステップでは、複数の色度トレーニングデータの理論色度データと測定色度データとの関係を決めることにより、その後で測定対象の色度データを校正し、より精確な色度データを得ることができる。
【0060】
本実施例において、色度校正モデルは、理論色度データと測定色度データとの線形関係を表す線形回帰モデルである。色度校正モデルは以下の式のように示される:
【数10】
【0061】
nは複数の色度トレーニングデータの数であり、
はi番目の色度トレーニングデータの理論色度データであり、
はi番目の色度トレーニングデータの測定色度データであり、
及びβ1はトレーニングされる色度校正モデルの係数であり、
はi番目の色度トレーニングデータに対応する誤差項である。
【0062】
色度校正モデルの係数の
とβ1と、及びi番目の色度トレーニングデータに対応する誤差項
は、複数の色度トレーニングデータの理論色度データと測定色度データとの関係を分析することによって得られる。なお、線形回帰モデルである色度校正モデルの生成は、関連文献を参照して得られ、本明細書では簡潔のため詳細は省略されている。
【0063】
ステップS46において、処理ユニット14により、測定対象の色度データを色度校正モデルに入力し、出力として測定対象の校正済み色度データを得る。
【0064】
実施形態Iと比較すると、実施形態IIはより精確な測定対象の校正済み色度データを有するようになる。
【0065】
本実施例において、ステップS45はステップS44の後に行われるが、他の実施形態では、ステップS45は、ステップS46の前の色度測定プロセスの様々なステップで行われてもよいことに留意されたい。
【0066】
上記の通り、本発明の色度測定方法及び装置は、カメラ12を用いて、測定対象を撮影し、より広い面積の測定対象を含む測定対象のカラー画像を得て、スペクトル変換行列を用いて測定対象のカラー画像に基づいて、測定対象のスペクトル画像を得て、目標の光源スペクトル情報と測定対象のスペクトル画像とに基づいて、測定対象の色度データを得て、さらに、測定対象の色度データを色度校正モデルに入力し、より精確な測定対象の校正済み色度データを得て、これにより、より広い面積で色度を測定することを実現し、色度測定の効率を向上させる。これにより、本発明の目的を確実に実現する。
【0067】
以上、本発明の実施形態および変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【符号の説明】
【0068】
1 色度測定装置
11 記憶ユニット
12 カメラ
14 処理ユニット
S21~S25 スペクトル変換行列計算プロセスのステップ
S251、S252 サブステップ
S31~S34 色度測定プロセスのステップ
S321、S322 サブステップ
S341、S342 サブステップ
S41~S46 色度測定プロセスのステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7