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特開2023-7447ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むディスプレイパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007447
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20230111BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20230111BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B27/34
G09F9/00 313
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099881
(22)【出願日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083965
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヒュン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
【テーマコード(参考)】
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK25B
4F100AK49B
4F100AK52C
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02C
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ422
4F100EJ542
4F100GB48
4F100JJ07
4F100JK12C
4F100JN30
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
5G435AA18
5G435BB05
5G435BB06
5G435BB12
5G435GG43
5G435HH05
5G435HH18
5G435LL17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた機械的物性および光学的物性を有するガラス基板多層構造体を提供する。
【解決手段】ガラス基板と、前記ガラス基板の一面に形成されるポリイミド系飛散防止層と、前記ポリイミド系飛散防止層上に形成されるハードコーティング層と、を含むガラス基板多層構造体であって、前記ポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであり、前記ハードコーティング層の厚さが5~20μmであり、前記ガラス基板多層構造体の厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下であるガラス基板多層構造体、前記ガラス基板多層構造体の製造方法、および前記ガラス基板多層構造体を含むディスプレイパネルに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一面に形成されるポリイミド系飛散防止層と、
前記ポリイミド系飛散防止層上に形成されるハードコーティング層と、を含むガラス基板多層構造体であって
前記ポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであり、前記ハードコーティング層の厚さが5~20μmであり、前記ガラス基板多層構造体の厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下である、ガラス基板多層構造体。
【請求項2】
前記ポリイミド系飛散防止層は、芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物から誘導された単位を含むポリイミド重合体を含む、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項3】
前記ポリイミド系飛散防止層は、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体をさらに含む、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項4】
前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物から誘導された単位を含む、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項5】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂である、請求項4に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項6】
前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤から誘導された単位をさらに含む、請求項4に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項7】
前記ガラス基板は、厚さが100~1000μmである、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項8】
前記ガラス基板多層構造体は、UL-94VB難燃規格に準じて評価した難燃等級がV-0である、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項9】
前記ガラス基板多層構造体のハードコーティング層面は、ASTM D3363に準じた表面硬度が4H以上である、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項10】
ガラス基板の一面に飛散防止層形成用組成物を塗布および硬化させてポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、
前記ポリイミド系飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、を含むガラス基板多層構造体の製造方法であって、
前記ポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであり、前記ハードコーティング層の厚さが5~20μmであり、前記ガラス基板多層構造体の厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下である、ガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項11】
前記飛散防止層形成用組成物は、芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物から誘導された単位を含むポリイミド重合体を含む、請求項10に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項12】
前記飛散防止層形成用組成物は、多官能性(メタ)アクリル基を有する化合物をさらに含む、請求項10に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項13】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含む、請求項10に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項14】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂である、請求項13に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項15】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含む、請求項13に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項16】
前記ガラス基板多層構造体は、UL-94VB難燃規格に準じて評価した難燃等級がV-0である、請求項10に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項17】
前記ガラス基板多層構造体のハードコーティング層面は、ASTM D3363に準じた表面硬度が4H以上である、請求項10に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項1~9のいずれか一項に記載のガラス基板多層構造体を含むディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(liquid crystal display)または有機発光表示装置(organic light emitting diode display)などの平板表示装置を用いた薄型表示装置が大きい注目を浴びている。
【0003】
特に、これらの薄型表示装置は、ディスプレイ装置の発展とともにその薄膜化が求められており、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)の形態で実現され、車両、列車、および航空機などの輸送手段に搭載されるLCDおよびLEDディスプレイ装置などに広く用いられている。
【0004】
かかるディスプレイ装置は、ディスプレイ画面を覆う透明なウィンドウを含み、ウィンドウは、外部衝撃と使用中に加えられるスクラッチなどからディスプレイ装置を保護する機能をする。
【0005】
ディスプレイ用ウィンドウとしては、機械的特性に優れた素材であるガラスまたは強化ガラスが一般的に用いられているが、従来のガラスは、その重さにより、ディスプレイ装置が高重量化するという問題がある。
【0006】
上記のような問題を解決するために、ガラス基板を薄膜化する技術が開発されているが、依然として外部衝撃に脆弱であるため、容易に割れない性質(unbreakable)の実現が難しく、難燃性が低いため、火災に脆弱であるという問題が解決できていない。
【0007】
このため、ディスプレイパネルに活用できる新しいガラス基板多層構造体として、既存の強化ガラスに相応する強度または耐スクラッチ性を有しながらも、表面硬度、外部衝撃に対する耐飛散性、および耐引火性などの機械的物性を有する、新しいガラス基板多層構造体に対する開発が求められている。
【0008】
また、前記物性を満たすとともに、光学的等方性、視認性、および透明性などの光学的物性が改善された、新しいガラス基板多層構造体に対する開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一実現形態は、優れた機械的物性および光学的物性を有するガラス基板多層構造体を提供する。
他の実施形態は、前記ガラス基板多層構造体の製造方法を提供する。
また他の実施形態は、前記ガラス基板多層構造体を用いたディスプレイパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実現形態は、ガラス基板と、前記ガラス基板の一面に形成されるポリイミド系飛散防止層と、前記ポリイミド系飛散防止層上に形成されるハードコーティング層と、を含む、ガラス基板多層構造体を提供する。
【0011】
前記ガラス基板多層構造体は、前記ポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであり、前記ハードコーティング層の厚さが5~20μmであり、前記ガラス基板多層構造体は、厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下である、ガラス基板多層構造体を提供してもよい。
【0012】
前記位相差は、具体的には100nm以下、より具体的には50nm以下であってもよく、さらに具体的には20nm以下であってもよい。
前記ポリイミド系飛散防止層は、芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物から誘導された単位を含むポリイミド重合体を含んでもよい。
【0013】
前記ポリイミド系飛散防止層は、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体をさらに含んでもよい。
前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物から誘導された単位を含んでもよい。
【0014】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂であってもよい。
前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤から誘導された単位をさらに含んでもよい。
【0015】
前記ガラス基板は、厚さが100~1000μmであってもよい。
前記ガラス基板多層構造体は、UL-94VB難燃規格に準じて評価した難燃等級がV-0であってもよい。
前記ガラス基板多層構造体のハードコーティング層面は、ASTM D3363に準じた表面硬度が4H以上であってもよい。
【0016】
他の実施形態は、ガラス基板の一面に飛散防止層形成用組成物を塗布および硬化させてポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、前記ポリイミド系飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、を含む、ガラス基板多層構造体の製造方法を提供する。
【0017】
前記ガラス基板多層構造体のポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであり、前記ハードコーティング層の厚さが5~20μmであり、厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下、100nm以下、50nm以下である、ガラス基板多層構造体の製造方法を提供してもよい。
【0018】
前記飛散防止層形成用組成物は、芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物から誘導された単位を含むポリイミド重合体を含んでもよい。
前記飛散防止層形成用組成物は、多官能性(メタ)アクリル基を有する化合物をさらに含んでもよい。
【0019】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んでもよい。
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂であってもよい。
【0020】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んでもよい。
前記ガラス基板多層構造体は、UL-94VB難燃規格に準じて評価した難燃等級がV-0であってもよい。
前記ガラス基板多層構造体のハードコーティング層面は、ASTM D3363に準じた表面硬度が4H以上、具体的には6H以上であってもよい。
【0021】
また他の実施形態は、上述したガラス基板多層構造体を含むディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0022】
薄い飛散防止層を備えても、優れた表面硬度、外部衝撃に対する耐飛散性、および耐引火性を確保することができ、レインボー現象が発生せず、視認性、透明性、光透過率、および黄色度(Yellow Index)などの光学的物性を有するガラス基板多層構造体を提供することができる。
また、前記物性を有するガラス基板多層構造体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むディスプレイパネルについて説明する。
この際、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。
【0024】
本発明における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
また、明細書において、特に記載していない添加物の単位は重量%であってもよい。
【0025】
また、明細書および添付された請求範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
本発明を記述する明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0026】
本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含んでもよい。
【0027】
本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0028】
本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)および重合体(polymer)を含んでもよく、同種重合体および共重合体を含んでもよい。前記オリゴマーは、繰り返し単位が2~20以下である場合を意味し得、前記共重合体は、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを全て含んでもよい。
【0029】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリイミド」または「ポリイミド系」は、イミド構造を含む重合体として、ポリイミド系またはポリアミドイミド系重合体を含むものと解釈する。
【0030】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」または「アクリル」をいずれも含む意味として用いられてもよい。
【0031】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ムラ現象」は、特定の角度で引き起こされ得る光による歪み現象を全て包括する意味として解釈されてもよい。例えば、ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置において、画面が黒く見えるブラックアウト現象、ホットスポット現象、または虹色のムラを有するレインボー現象などの光による歪みが挙げられる。
【0032】
一実現形態に係るガラス基板多層構造体は、ガラス基板と、前記ガラス基板の一面に形成されるポリイミド系飛散防止層と、前記ポリイミド系飛散防止層上に形成されるハードコーティング層と、を含む多層構造を有してもよい。
【0033】
前記ガラス基板多層構造体において、前記ポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであり、前記ハードコーティング層の厚さが5~20μmであり、 前記ガラス基板多層構造体は、厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下、100nm以下、より具体的には50nm以下であってもよい。
【0034】
この際、前記ガラス基板、ポリイミド系飛散防止層、およびハードコーティング層は、順に配置されてもよい。また、各層は、直接接して配置されてもよく、各層の間に他の層が配置されてもよい。
【0035】
前記条件を満たすことで、前記ガラス基板多層構造体は、薄い飛散防止層を備えても、ガラス基板と保護フィルムとの間の優れた接着力を有し、優れた表面硬度および外部衝撃に対する優れた耐飛散性を実現することができ、優れた耐引火性を有することができる。
【0036】
それとともに、光学的等方性に優れ、レインボー現象が発生しないため、視認性が顕著に向上するだけでなく、高い光透過率および低い黄色度(Yellow Index)を満たすため、透明性に優れたガラス基板多層構造体を提供することができる。
【0037】
前記ガラス基板多層構造体は、ガラス基板多層構造体を一定の大きさに切って厚さを測定した後、Axoscanで位相差を測定し、位相差値を補うためにC-plate方向に補正しつつ測定した厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下、150nm以下、100nm以下、50nm以下、または20nm以下であってもよい。
【0038】
この際、前記厚さ方向位相差(Rth)は、下記式1により計算された。
[式1]
th=[(n+n)/2-n]×d
(式1中、nは、面内屈折率のうち最も大きい屈折率であり、nは、面内屈折率のうちnと垂直な屈折率であり、nは、面と垂直な方向の屈折率であり、dは、ガラス基板多層構造体の厚さを10μmに換算して計算した値である。)
【0039】
ガラス基板多層構造体の厚さ方向位相差(Rth)が前記範囲を満たす場合、光学的等方性に非常に優れ、レインボー現象が容易に観察されず、視認性がさらに向上し、ディスプレイパネルおよび装置などにさらに好適に活用することができる。具体的に、位相差が50nm以下、より具体的には20nm以下である場合に、さらに優れた特性を示すことができる。
【0040】
また、前記ガラス基板多層構造体は、1次、2次燃焼させて燃焼時間およびglowing時間を記録し、UL-94VB難燃規格に準じて評価した難燃等級としてV-0を得ることができる。
【0041】
前記難燃等級を満たすガラス基板多層構造体は、耐引火性がさらに向上し、ディスプレイパネルが外部衝撃などにより破損して容易に火災が発生する問題をさらに改善させることができる。
【0042】
また、前記ガラス基板多層構造体のハードコーティング面は、ASTM D3363に準じた表面硬度が4H以上、具体的には4H~9H、より具体的には6H~9Hであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。表面硬度が前記範囲を満たす場合、前記ガラス基板多層構造体は、さらに優れた強度を有し、外部衝撃による表面損傷をさらに顕著に防止することができる。
【0043】
また、前記ガラス基板多層構造体は、ASTM D1746に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が90%以上であってもよく、ASTM E313に準じて測定された黄色度が3.0以下、具体的には2.0以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
前記範囲の光学特性を有することで、ガラス基板多層構造体は、透明性に非常に優れるため、ディスプレイ装置にさらに好適に活用することができる。
【0044】
以下、ガラス基板多層構造体に含まれるガラス基板、ポリイミド系飛散防止層、およびハードコーティング層の各構成についてより具体的に説明する。ただし、これは例示的なものにすぎず、本発明が例示的に説明された具体的な実施形態に制限されるのではない。
【0045】
<ガラス基板>
ガラス基板は、ディスプレイパネルの一面上に形成されてもよく、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、および等方性などに優れることができる。
【0046】
前記ガラス基板は、車両、列車、および航空機などの輸送手段に搭載され、密閉された空間で用いられてもよい。
したがって、前記ガラス基板は、外部衝撃または火災などに頻繁にさらされる中型および大型ディスプレイパネルの一面に形成できるように、外部衝撃により容易に破損せず、その厚さは100~1000μm、具体的には500~1000μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0047】
前記ガラス基板は、化学強化層をさらに含んでもよく、前記化学強化層は、前記ガラス基板の両面のうちいずれか一面以上に化学強化処理を行って形成されてもよく、これにより、ガラス基板の強度がさらに向上することができる。
【0048】
このように化学強化処理されたガラス基板を形成する方法には種々の方法があるが、一例として、100μm以上の厚さを有するマザーガラスを準備し、切断、面取り、焼成などを経て所定の形状に加工した後、それを化学強化処理してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
<ポリイミド系飛散防止層>
ポリイミド系飛散防止層は、前記ガラス基板の一面上に配置されてもよい。
前記ポリイミド系飛散防止層は、前記ガラス基板の破損時に発生するエネルギを吸収することで、破片が飛散するのを防止する基本機能の他に、耐引火性を向上させ、光学的等方性を改善し、視認性および透明性などの光学的物性をさらに向上させることができるため、前記物性を満たすことが重要である。
【0050】
前記ポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであってもよく、具体的には5~20μmであってもよい。
【0051】
ガラス基板上にポリイミド系飛散防止層をコーティングすることで、上述した範囲の相対的に薄い厚さのポリイミド系飛散防止層を含みながらも、ガラス基板多層構造体の優れた耐飛散性および表面硬度を維持することができる。
【0052】
また、前記ガラス基板多層構造体が上述した範囲の厚さを有するポリイミド系飛散防止層を含むことで、ガラス基板多層構造体の光学的等方性にさらに優れ、レインボー現象が低下するなど、さらに優れた視認性を有し、光透過率および黄色度などの光学的物性がさらに向上することができる。
【0053】
前記ポリイミド系飛散防止層は、ポリイミド系重合体、具体的には、フッ素元素を含有するポリイミド系重合体を含む飛散防止層であってもよく、後述するハードコーティング層とともに前記ガラス基板上に構成されることで、外部衝撃および火災に対する耐飛散性、耐引火性をさらに向上可能であるとともに、光学的等方性に優れた効果をさらに高度に実現可能である。
【0054】
前記ポリイミド系飛散防止層は、芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物から誘導された単位を含むポリイミド系重合体を含んでもよい。
【0055】
前記ポリイミド系重合体の単量体として前記芳香族ジアミンは、フッ素元素を含有するフッ素系芳香族ジアミンであってもよく、必ずしもこれに限定されるものではないが、フッ素系ジアミンを用いる場合、優れた表面硬度、耐飛散性、および耐引火性などの機械的物性と、光学的等方性、視認性、および透明性などの光学的物性をさらに向上させることができ、前記ガラス基板の変形を防止する効果をさらに増進させることができる。
【0056】
前記フッ素系芳香族ジアミンは、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene、6FAPB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl ether、6FODA)などから選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
また、前記フッ素系芳香族ジアミンは、他の公知の芳香族ジアミン成分と混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。このようなフッ素系芳香族ジアミンを用いることで、前記ポリイミド系飛散防止層を含むガラス基板多層構造体の光学的物性をさらに向上させることができ、光透過率および黄色度などをさらに改善することができる。
【0058】
前記芳香族二無水物は、エーテルやエステル基により連結された芳香族二無水物であってもよく、フィルムに製造した場合、厚さ方向の位相差をさらに減少させることができる。前記芳香族二無水物は、ポリアルキレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)などのエーテル系芳香族二無水物やエステル系芳香族二無水物が挙げられ、非制限的に、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(Ethylene glycol bis(anhydrotrimellitate)、TMEG100)、TMEG200、TMEG500、Bis(1,3-dioxo-1,3-dihydroisobenzofuran-5-carboxylic Acid)1,4-Phenylene Ester(TAHQ)が挙げられる。
【0059】
他の芳香族二無水物の例を挙げると、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(6HDBA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(SiDA)、およびビス(ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0060】
前記ポリイミド系重合体を製造する溶媒としては、特に制限されないが、例えば、極性非プロトン性溶媒を用いることで、さらに優れた溶解度特性を示すことができる。かかる重合溶媒の例としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどから選択される溶媒またはこれらの混合溶媒を含んでもよいが、ポリイミド系重合体およびその単量体が溶解されるものであれば、特に制限されない。
【0061】
前記ポリイミド系飛散防止層は、多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体をさらに含んでもよい。
ポリイミド系飛散防止層が前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体をさらに含む場合、ガラス基板と保護フィルムとの間の接着力がさらに向上することができ、表面硬度および外部衝撃に対する優れた耐飛散性をさらに高度に実現することができ、耐引火性がさらに向上することができる。また、光学的等方性、視認性、および透明性などの光学的物性もさらに向上することができる。
【0062】
この際、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、加熱などの手段を介して、多官能性(メタ)アクリル系化合物の架橋重合を誘導して形成されてもよい。
【0063】
また、前記架橋重合は、前記多官能性(メタ)アクリル系化合物の全部または一部が架橋されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、多官能性(メタ)アクリル基を有する化合物であって、前記(メタ)アクリル基は、例えば、(メタ)アクリレート基であってもよい。
【0064】
また、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、前記飛散防止層のポリイミドマトリックス(matrix)樹脂に分散されて複合体(composite)を形成してもよい。
【0065】
前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、アルキレン基、エーテル基、ウレタン基、エステル基、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
また、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、3~6個の(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0067】
より具体的には、前記多官能性(メタ)アクリル系架橋重合体は、多官能性(メタ)アクリル基を有するモノマーおよび多官能性(メタ)アクリル基を有するオリゴマーなどの多官能性(メタ)アクリル系化合物から誘導された構造単位を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0068】
前記多官能性(メタ)アクリル系化合物は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0069】
<ハードコーティング層>
前記ハードコーティング層は、優れた光学的、機械的特性を有するポリイミド系飛散防止層を外部の物理、化学的損傷から保護することができる。
【0070】
前記ハードコーティング層は、ハードコーティング層形成用組成物を硬化して形成してもよく、また、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化後に熱硬化した複合ハードコーティング層であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0071】
前記ハードコーティング層は、例えば、エポキシ硬化層またはビニル基硬化層であってもよいなど、多様な形態の有機硬化層であってもよいが、これに限定されない。
【0072】
前記ハードコーティング層の厚さは5~20μm、具体的には5~15μmであってもよい。ガラス基板多層構造体が上述した範囲の厚さを有するハードコーティング層を含むことで、さらに優れた表面硬度および耐飛散性を有することができ、光学的等方性および視認性の低下をさらに防止することができる。
【0073】
前記ハードコーティング層は、ポリイミド系飛散防止層上に形成され、外部からポリイミド系飛散防止層を保護できるものであれば、特に制限されない。具体的には、ハードコーティング層は、アクリル系重合体、シリコン系重合体、エポキシ系重合体、およびウレタン系重合体などから選択されるいずれか1つ以上の重合体を含んでもよい。
【0074】
前記ハードコーティング層は、アクリルまたはエポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物から誘導された単位を含んでもよい。例えば、前記ハードコーティング層として用いられる前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を含むシロキサン(Siloxane)系樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0075】
前記ハードコーティング層がエポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物から誘導された単位を含むことで、前記ハードコーティング層を含むガラス基板多層構造体が硬化後にさらに優れた硬度を示すことができる。
【0076】
前記エポキシ基は、環状エポキシ基、脂肪族エポキシ基、および芳香族エポキシ基から選択されるいずれか1つ以上であってもよく、前記シロキサン系樹脂は、シリコン原子と酸素原子が共有結合を形成したモイエティを含む高分子化合物を意味し得る。
【0077】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン(Silsesquioxane)樹脂であってもよい。具体的には、シルセスキオキサン樹脂のケイ素原子にエポキシ基が直接置換されるか、または前記ケイ素原子に置換された置換基にエポキシ基が置換されたものであってもよい。一具体例として、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が置換されたシルセスキオキサン樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0078】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、重量平均分子量が1,000~20,000g/mol、具体的には1,000~18,000g/mol、より具体的には2,000~15,000g/molであってもよい。重量平均分子量が前述した範囲である場合、前記ハードコーティング層形成用組成物の流れ性、塗布性、硬化反応性などがさらに向上することができる。
【0079】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、下記化学式1で表されるアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。
【0080】
[化学式1]
Si(OR4-n
【0081】
前記化学式1中、Rは、炭素数3~6のエポキシシクロアルキル基またはオキシラニル基で置換された直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキル基であって、前記アルキル基は、エーテル基を含んでもよく、Rは、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~7のアルキル基であり、nは、1~3の整数であってもよい。
【0082】
前記化学式1で表されるアルコキシシラン化合物は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0083】
前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、後述するハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して20~70重量部で含まれてもよく、具体的には、100重量部に対して20~50重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記範囲を満たす場合、ハードコーティング層形成用組成物は、さらに優れた流れ性および塗工性を確保することができる。また、ハードコーティング層形成用組成物の硬化時に均一な硬化が可能であるため、過硬化によるクラックなどの物理的欠陥をさらに効果的に防止することができ、それにより製造されたハードコーティング層はさらに優れた硬度を示すことができる。
【0084】
前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤から誘導された単位をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物と架橋結合を形成してハードコーティング層形成用組成物を固体化させ、ハードコーティング層の硬度をさらに向上させることができる。
【0085】
前記架橋剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物を含んでもよい。例えば、前記架橋剤は、2個の3,4-エポキシシクロヘキシル基が連結された化合物を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物と構造および性質が類似してもよく、この場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物の架橋結合をさらに促進し、組成物をさらに適した粘度に維持させることができる。
【0086】
前記架橋剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して5~150重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。架橋剤の含量が前記範囲内である場合、組成物の粘度を適正範囲に維持することができ、塗布性および硬化反応性をさらに改善させることができる。
【0087】
また、前記ハードコーティング層は、無機充填剤をさらに含んでもよい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。無機充填剤をさらに含むハードコーティング層は、難燃特性がさらに向上することができる。
【0088】
また、前記ハードコーティング層は、滑剤をさらに含んでもよい。滑剤は、巻取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などを改善させることができる。滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0089】
また、前記ハードコーティング層形成用組成物は、光開始剤を含むか、または前記光開始剤および下記化学式2で表される熱開始剤を含んでもよい。
【0090】
[化学式2]
【化1】
【0091】
前記化学式2中、Rは、水素、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキルカルボニル基、または炭素数6~14のアリールカルボニル基であり、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは、1~4であり、Rは、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数7~15のアラルキル基であり、Rは、炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、SbF、PF、AsF、BF、CFSO、N(CFSO、またはN(Cである。
【0092】
前記アルコキシカルボニル基は、アルコキシ部分の炭素数が1~4であるものであって、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、およびプロポキシカルボニル基などが挙げられる。
前記アルキルカルボニル基は、アルキル部分の炭素数が1~4であるものであって、例えば、アセチル基およびプロピオニル基などが挙げられる。
【0093】
前記アリールカルボニル基は、アリール部分の炭素数が6~14であるものであって、例えば、ベンゾイル基、1-ナフチルカルボニル基、および2-ナフチルカルボニル基などが挙げられる。
前記アラルキル基は、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-ナフチルメチル基、および2-ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0094】
前記化学式2の化合物を熱開始剤として用いることで、硬化半減期を短縮させることができ、低温条件においてもさらに迅速に熱硬化を行うことができるため、高温条件下で長期間熱処理をする場合に発生する損傷および変形をさらに防止することができる。
【0095】
前記熱開始剤は、ハードコーティング層形成用組成物に熱が加えられる際に、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物または架橋剤の架橋反応をさらに促進することができる。前記熱開始剤としては、カチオン性熱開始剤が用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0096】
また、前記熱開始剤を用いた熱硬化と前記光開始剤を用いた光硬化を併用することで、ハードコーティング層の硬化度、硬度などをさらに向上させることができる。例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を前記ポリイミド系飛散防止層に塗布し、紫外線を照射(光硬化)して少なくとも部分的に硬化させた後、追加的に熱を加えて(熱硬化)実質的に完全に硬化させてもよい。
【0097】
前記光硬化により前記ハードコーティング層形成用組成物が半硬化または部分硬化してもよく、前記半硬化または部分硬化したハードコーティング層形成用組成物は、前記熱硬化により実質的に完全に硬化してもよい。
【0098】
例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化だけで硬化する際には、硬化時間が過度に長くなるか、または部分的に硬化が完全に行われないことがある。これに対し、前記光硬化に続き前記熱硬化を行う場合には、光硬化により硬化していない部分が熱硬化により実質的に完全に硬化することができ、硬化時間も減少することができる。
【0099】
前記ハードコーティング層形成用組成物を先に光硬化し、追加的に熱硬化する方法について前述したが、光硬化および熱硬化の順が特にこれに制限されない。すなわち、一部の実施形態においては、前記熱硬化が先に行われてから前記光硬化が行われてもよいことはいうまでもない。
【0100】
一部の実施形態において、前記熱開始剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1~20重量部、より具体的には1~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記熱開始剤の含量が前記範囲内である場合、熱硬化反応がさらに有効な速度で行われることができ、ハードコーティング層の機械的特性の劣化をさらに防止することができる。
【0101】
また、例えば、前記熱開始剤は、全体ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01~15重量部、具体的には0.1~15重量部、より具体的には0.3~10重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0102】
前記光開始剤は、光カチオン開始剤を含んでもよい。前記光カチオン開始剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物およびエポキシ系単量体の重合を開始することができる。
【0103】
前記光カチオン開始剤としては、オニウム塩および/または有機金属塩などを用いてもよく、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0104】
前記光開始剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1~15重量部、具体的には1~15重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記光開始剤の含量が前記範囲内である場合、さらに優れたハードコーティング層形成用組成物の硬化効率を維持し、硬化後の残存成分による物性の低下を防止することができる。
【0105】
また、例えば、前記光開始剤は、全体ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01~10重量部、具体的には0.1~10重量部、より具体的には0.3~5重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、熱硬化剤をさらに含んでもよい。
前記熱硬化剤は、アミン系、イミダゾール系、酸無水物系、アミド系の熱硬化剤などを含んでもよく、変色を防止および高硬度を実現するという面で、より具体的には、酸無水物系熱硬化剤をさらに用いてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0107】
前記熱硬化剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して5~30重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記熱硬化剤の含量が前記範囲内である場合、ハードコーティング層形成用組成物の硬化効率をさらに改善し、さらに優れた硬度を有するハードコーティング層を形成することができる。
【0108】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
前記溶媒の非制限的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、ヘキサン系(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0109】
前記溶媒の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して10~200重量部で含まれてもよい。前記範囲を満たす場合、ハードコーティング層形成用組成物は、適正レベルの粘度を確保することができるため、ハードコーティング層の形成時に作業性にさらに優れることができる。また、ハードコーティング層の厚さ調節が容易であり、溶媒乾燥時間を減少させ、さらに迅速な工程速度を確保することができる。
【0110】
前記溶媒は、予定の全体ハードコーティング層形成用組成物の総重量のうち、残りの成分が占める量を除いた残量を含んでもよい。例えば、予定の全体組成物の総重量が100gであり、溶媒を除いた残りの成分の重量の和が70gであれば、溶媒は30gが含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0111】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、無機充填剤をさらに含んでもよい。前記無機充填剤は、ハードコーティング層の硬度をさらに向上させることができる。
【0112】
前記無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などが用いられてもよく、ハードコーティング層形成用組成物の他の成分との相溶性の面でシリカが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0113】
前記ハードコーティング層形成用組成物は、滑剤をさらに含んでもよい。前記滑剤は、巻取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などをさらに改善させることができる。
【0114】
前記滑剤の種類は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0115】
この他にも、前記ハードコーティング層形成用組成物は、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、熱的高分子化禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0116】
<ディスプレイパネル>
他の実施形態は、ガラス基板多層構造体を含むディスプレイパネルまたはディスプレイ装置を提供することができる。
【0117】
この際、前記ガラス基板多層構造体は、ディスプレイ装置の最外面ウィンドウカバーとして用いられてもよい。前記ディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0118】
前記ガラス基板多層構造体は、優れた耐飛散性および耐引火性により、外部衝撃で飛散する現象または火災が発生する現象を防止することができ、それとともに、ディスプレイ装置に活用するのに非常に適したレベルの優れた光学的等方性、視認性、および透明性などを実現することができる。
【0119】
したがって、車両、列車、および航空機などの輸送手段に搭載され、密閉された空間で用いられ、外部衝撃または火災などに頻繁にさらされる中型および大型ディスプレイ装置を保護する最外面ウィンドウカバーに活用するのに非常に好適である。
【0120】
<ガラス基板多層構造体の製造方法>
また他の実施形態は、上述したガラス基板多層構造体の製造方法を提供する。
上述したガラス基板多層構造体の製造方法は、ガラス基板の一面に飛散防止層形成用組成物を塗布および硬化させてポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、
前記ポリイミド系飛散防止層上にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、を含む。
【0121】
前記ポリイミド系飛散防止層の厚さが5~50μmであり、前記ハードコーティング層の厚さが5~20μmであり、前記ガラス基板多層構造体の厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下であってもよい。
【0122】
前記各層の厚さおよびガラス基板多層構造体の物性は、前記ガラス基板多層構造体に関する説明において上述したものと同様であるため、その具体的な説明は省略する。
【0123】
先ず、前記ポリイミド系飛散防止層を形成する方法について説明する。
前記ポリイミド系飛散防止層は、前記飛散防止層形成用組成物をガラス基板上に塗布した後に硬化して形成されてもよい。すなわち、前記ポリイミド系飛散防止層は、溶液キャスティング方法で形成されてもよい。この際、塗布方法としては、バー(bar)コーティング、ディップ(dip)コーティング、ダイ(die)コーティング、グラビア(gravure)コーティング、コンマ(comma)コーティング、およびスリット(slit)コーティングの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合方式であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0124】
前記ポリイミド系飛散防止層が上記のように溶液キャスティング方法で形成される場合、それを含むガラス基板多層構造体の優れた耐飛散性、耐引火性、および光学的等方性などを維持しながらも、前記飛散防止層の薄膜化が可能であり、前記飛散防止層ないしそれを含むガラス基板多層構造体の厚さを最小化することができる。
【0125】
したがって、前記ガラス基板多層構造体を含むディスプレイパネルまたはディスプレイ装置などのスリム(slim)化および軽量化などが可能であり、車両、列車、および航空機などの輸送手段に搭載される中型および大型ディスプレイ装置に活用するのに非常に好適であり、その活用度をさらに向上させることができる。
【0126】
前記硬化は50~250℃の温度で熱処理してもよく、前記熱処理回数は1回以上であってもよく、同一温度または異なる温度範囲で1回以上熱処理してもよいが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記熱処理時間は1分~60分であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0127】
以下、前記ハードコーティング層を形成する方法について説明する。前記ハードコーティング層は、前記ハードコーティング層形成用組成物を前記ポリイミド系飛散防止層上に塗布して硬化させて形成されてもよい。この際、塗布方法としては、バー(bar)コーティング、ディップ(dip)コーティング、ダイ(die)コーティング、グラビア(gravure)コーティング、コンマ(comma)コーティング、およびスリット(slit)コーティングの中から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合方式であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0128】
前記ハードコーティング層を形成するステップの硬化は、光硬化や熱硬化を単独で行うか、光硬化後に熱硬化を行うか、または熱硬化後に光硬化を行う方法などで行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0129】
一例として、前記光硬化前に前記ハードコーティング層形成用組成物を加熱して前処理するステップをさらに含んでもよく、前記前処理は、前記熱硬化よりも低い温度で行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0130】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例により制限されるものではない。
【0131】
[物性の測定方法]
(1)表面硬度
ASTM D3363に準じて、鉛筆硬度計(Kipae E&T社)を用いて、750gfの荷重で、硬度別の鉛筆(Mitsubishi社)を用いて、実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体の表面に対する鉛筆硬度を測定した。この際、ガラス基板多層構造体の表面は、ハードコーティング層が形成された方向の表面を対象に測定した。
【0132】
(2)位相差(Rth
Axoscanを用いて測定した。下記の実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体を一定の大きさに切って厚さを測定した後、Axoscanで位相差を測定し、位相差値を補うためにC-plate方向に補正しつつ測定した厚さ(nm)を入力した。
【0133】
[式1]
th=[(n+n)/2-n]×d
(式1中、nは、面内屈折率のうち最も大きい屈折率であり、nは、面内屈折率のうちnと垂直な屈折率であり、nは、面と垂直な方向の屈折率であり、dは、ガラス基板多層構造体の厚さを10μmに換算して計算した値である。)
【0134】
(3)レインボー現象
下記の実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体の一面に偏光板(Nitto denko社、polarizing film)を付着した後、視野角60°で肉眼で観察した場合、レインボーが視認されるか否かに応じて下記基準で評価した。
【0135】
<評価基準>
OK:レインボーが見えず、均一な色感を示す
NG:レインボーが強く見え、強い色感を示す
【0136】
(4)難燃等級
下記の実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体を1次、2次燃焼させ、燃焼時間およびglowing時間を記録し、UL-94VB難燃規格に準じて難燃等級で評価した。
【0137】
(5)耐飛散性
下記の実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体上にスチールボール(steel ball)(500gの重量)を3mの高さから落下させた後、基板の状態を下記基準で評価した。この際、スチールボールは、ハードコーティング層が形成された面上に落下させて測定した。
【0138】
<評価基準>
OK:スチールボール落下前/後の多層構造体の重さの差が0.01g未満(飛散せず)
NG:スチールボール落下前/後の多層構造体の重さの差が0.01g以上
【0139】
(6)光透過率
ASTM D1746の規格に準じて、厚さ50μmのフィルムに対して、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-400)を用いて、400~700nmの波長領域の全体で測定された全光線透過率を測定した。単位は%である。
【0140】
(7)黄色度(YI)
ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定した。
【0141】
[製造例1](飛散防止層形成用組成物の製造)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)267gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine)39gを溶解させた。前記TFMB溶液にTMEG100(Ethylene glycol bis-anhydrotrimellitate)50gを同じ温度で添加し、48h撹拌しつつ重合した。最終的に固形分濃度が20重量%となるようにジメチルプロパンアミド(DMPA)を添加し、飛散防止層形成用ポリイミド組成物前駆体であるポリアミック酸溶液を製造した
【0142】
前記ポリイミド系樹脂溶液に、有機添加剤(DPHA、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、50%)を前記固形分含量に対して15重量%となるように添加し、飛散防止層形成用組成物を製造した。
【0143】
[比較製造例1](飛散防止層形成用組成物の製造)
窒素雰囲気下で、反応器にグラブス触媒(Grubbs catalyst)61.9mgおよび10mlのMC(methylenechloride)を入れ、12時間撹拌させた後、ジシクロペンタジエン0.8gを10mlのMC(methylenechloride)に溶かして反応器に添加した後、2時間常温で反応を行った。
【0144】
反応の終了後、反応溶液を高圧反応器に移した後、反応溶液にMC 100ml、トリエチルアミン0.014ml、MeOH 0.01mlを添加した後、100psiの圧力で水素ガス(H(g))を入れ、60℃まで昇温させて12時間撹拌させ、飛散防止層形成用組成物を製造した。
【0145】
[製造例2](ハードコーティング層形成用組成物の製造)
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、TCI社)と水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して反応溶液を製造し、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物に0.1mLのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Aldrich社)触媒およびテトラヒドロフラン(Aldrich社)100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。
【0146】
その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレン(Aldrich社)で抽出し、抽出物を硫酸マグネシウム(Aldrich社)で水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシシロキサン系樹脂を得た。
【0147】
上記のように製造されたエポキシシロキサン系樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート10gおよびビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート5g、光開始剤として(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート0.5g、メチルエチルケトン54.5gを混合し、ハードコーティング層形成用組成物を製造した。
【0148】
[ガラス基板多層構造体の製造]
[実施例1]
厚さ700μmのガラス基板の一面に、前記製造例1で製造された飛散防止層形成用組成物をドクターブレードを用いて塗布した後、窒素雰囲気で、80℃で10min、230℃で10分間乾燥し、5μmの厚さを有する飛散防止層を形成した。そして、前記飛散防止層上に、前記製造例2で製造されたハードコーティング層形成用組成物を#10 Mayer Barを用いて塗布した後、60℃で3分間乾燥した。その後、高圧メタルランプを用いて1J/cmでUVを照射した後、150℃で10分間硬化させ、厚さ10μmのハードコーティング層が形成されたガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した。
【0149】
[実施例2]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが11μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した。
【0150】
[実施例3]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが20μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した。
【0151】
[実施例4]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが50μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した。
【0152】
[比較例1]
前記実施例2において、前記飛散防止層として、前記製造例1で製造された飛散防止層形成用組成物の代わりに、前記比較製造例1で製造された飛散防止層形成用組成物を用いて形成したことを除いては、実施例2と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した
【0153】
[比較例2]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが4μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した
【0154】
[比較例3]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが60μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した。
【0155】
[比較例4]
前記実施例1において、ハードコーティング層の厚さが100μmであり、飛散防止層の厚さが11μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した。
【0156】
[比較例5]
前記実施例1において、飛散防止層の厚さが11μmであり、ハードコーティング層の厚さが1μmであることを除いては、実施例1と同様にガラス基板多層構造体を製造した。その結果を表1に示した。
【0157】
【表1】
【0158】
前記表1を参照すると、実施例1~4のガラス基板多層構造体は、光学的等方性に非常に優れ、レインボー現象が観察されないため、視認性に非常に優れることを確認することができ、UL-94VB難燃規格に準じて評価した難燃等級がV-0として耐引火性に非常に優れることを確認することができる。
【0159】
また、実施例1~4のガラス基板多層構造体は、3mの高さからスチールボール(500gの重量)を落下させても割れ現象が発生しないため、非常に優れた耐飛散性を有するだけでなく、4H以上の非常に優れた表面硬度を有し、光透過率および黄色度(YI)などの光学的物性にも優れることを確認した。
【0160】
これに対し、比較例1~5の場合、厚さの範囲および位相差値が上述した範囲から外れることにより、レインボー現象が発生せず、それとともに視認性に優れた特性を同時に満たす物性を示すことができなかった。また、COPフィルムを飛散防止層として適用した比較例1のガラス基板多層構造体は、UL-94VB難燃規格に準じて評価した難燃等級がV-3として耐引火性が顕著に低下するだけでなく、表面硬度が劣化することを確認した。
【0161】
したがって、実施例1~4のガラス基板多層構造体は、ガラス基板の一面に形成される厚さ5~50μmのポリイミド系飛散防止層、および前記ポリイミド系飛散防止層上に形成される厚さ5~20μmのハードコーティング層を含み、厚さ方向位相差(Rth)が200nm以下であることで、ガラス基板が破損する際に飛散する現象が改善され、火災などにより容易に燃焼しないため、ユーザの安全を確保可能でありながらも、光学的等方性に優れるため、視認性が顕著に改善され、優れた表面特性および光学的物性を有することができる。
【0162】
以上、特定された事項と限定された実施例により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0163】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。