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特開2023-74477PBS治療システムにおけるリッジフィルタ及びそれを設計する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074477
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】PBS治療システムにおけるリッジフィルタ及びそれを設計する方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
A61N5/10 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022174047
(22)【出願日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】21208699.5
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】318004198
【氏名又は名称】イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ion Beam Applications S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラバーブ,ルディ
(72)【発明者】
【氏名】ホトイウ,ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,アルノー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC04
4C082AE01
4C082AG21
4C082AG33
4C082AG34
4C082AG35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】PBS治療システムにおけるリッジフィルタ及びそれを設計する方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子加速器のためのリッジフィルタを設計する方法は
・治療体積(V)を規定する円筒状の部分体積(Vi)を、N個のセル(Cij)に分割するステップを含み、
・リッジフィルタは、スポット(Si)が存在する数と同じ数のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を含んで設計される。各エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、長さ(Lij)及び面積(Aij)のN個の円筒状のディグレーディングサブユニット(11.ij)によって形成される。
【選択図】図3a-3d
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速された粒子のビーム(100.i)を用いて、腫瘍細胞(3t)を含む組織の治療体積(V)内の特定の場所に、前記治療体積(V)全体を規定する単一ペインティング層における所定の治療計画(TP)に従ったスポット(Si)ごとのペンシルビームスキャン(PBS)により、特定の線量(Dij)を付与するための、荷電粒子加速器、好ましくは陽子加速器のリッジフィルタを設計する方法において、前記ビーム(100.i)は、照射軸(X)に略平行であり、±5°以内、好ましくは±3°以内に含まれる角度だけ前記照射軸(X)との平行から逸れる対応するビーム軸(Xi)に沿って延び、前記組織は、前記ビームが前記組織を通して伝播しなくなる水等価距離として定義される最大ビーム飛程(W0)によって特徴付けられ、前記方法は、
・厚さ(dxj)のN枚のスライス(Tj=T1~TN)の上流の平面(Y,Z)jにわたる面積(Aj)を規定することにより、前記治療体積(V)に内接する境界を規定するステップであって、前記平面(Y,Z)jは、前記照射軸(X)に垂直であり、患者の皮膚に対する最短水等価厚(d0)及び最長水等価厚(d1)は、前記照射軸(X)に沿って測定される、前記皮膚に最も近い前記境界の点及び前記皮膚から最も遠い前記境界の点としてそれぞれ定義される、ステップ、
・部分体積(Vi)の配列を規定するステップであって、各部分体積は、前記対応するビーム軸(Xi)に平行に前記患者の前記皮膚から前記対応する最遠水等価厚(d1)まで延び、前記照射軸(X)に垂直な平面(Y,Z)上への前記部分体積(Vi)の配列の投影は、前記平面(Y,Z)上への前記体積(V)の投影の面積全体をカバーするスポット(Si)の配列を規定する、ステップ、
・部分体積(Vi)内に含まれる前記N枚のスライス(T1~TN)の各スライス(Tj)について、前記対応するスライス(Tj)内に含まれる前記部分体積(Vi)の一部分として規定されるセル(Cij)を規定するステップ、
・前記所与の部分体積(Vi)の各セル(Cij)について、前記皮膚(3s)から前記セル(Cij)の幾何学的中心までのセルの水等価厚(dij)を決定し、且つ前記TPに従って前記セル(Cij)に前記特定の線量(Dij)を付与するために必要なビーム重み(ωij)を定めるステップであって、前記ビーム重み(ωij)は、前記セルの水等価厚(dij)における荷電粒子の数に比例する、ステップ、
・エネルギーディグレーディングユニット(11.i)の組を備えた前記リッジフィルタ(11)を設計するステップであって、各エネルギーディグレーディングユニット(11.ij)は、前記特定の線量(Dij)が、前記TPに従い、前記部分体積(Vi)内に含まれる前記対応するセル(Cij)に前記セルの水等価厚(dij)において付与されるように、前記対応するビーム軸(Xi)及び部分体積(Vi)と同軸である、ビーム直径(D100.i)の対応する荷電粒子のビーム(100.i)の初期エネルギー(E0)を、低減されたエネルギー(Eij)に低減するように構成され、所与の部分体積(Vi)の前記エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、以下:
○前記部分体積(Vi)の各セル(Cij)について、前記対応するビーム軸(Xi)に垂直な面積(Aij)の底面と、前記対応するビーム軸(Xi)に平行な長さ(Lij)の母線との一般化円筒ジオメトリを有するディグレーディングサブユニット(11.ij)の寸法を定め、前記ディグレーディングサブユニットは、前記対応するビーム軸(Xi)に沿って単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)を有する材料で作られ、前記長さ(Lij)は、前記ディグレーディングサブユニット(11.i)が、前記単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)と前記長さ(Lij)との積に等しいサブユニットの水等価厚(Wij=Wu×Lij)を有するように決定され、前記サブユニットの水等価厚(Wij)と前記セルの水等価厚(dij)との和は、前記最大ビーム飛程(W0)に等しい(すなわちW0=Wij+dij)こと、及び
○ディグレーディングサブユニット(11.ij)の前記面積(Aij)は、正規化されたビーム重み(ωij/Σωij)を、前記サブユニットの底面面積(Aij)にわたるフルエンス(F(y,z))の積分の、前記ディグレーディングユニット(11.i)の底面面積(Abi)にわたる同じ積分に対する比に等しくすることによって決定され、
ここで、前記フルエンスF(y,z)は、前記ビームの位置(y,z)における前記ビーム(100.i)の単位面積あたりの電荷の数であり、前記底面面積(Abi)は、前記サブユニットの面積(Aij)の和に等しい(すなわちAbi=ΣAij)こと
○前記部分体積(Vi)に前記必要な線量(Dij)を付与するように、前記ビーム(100.i)の前記エネルギーをディグレーディングさせるように設計された前記エネルギーディグレーディングユニット(11.i)を得るために、前記N個のディグレーディングサブユニット(11.ij)を組み合わせること
のように設計される、ステップ、
・すべての残りの部分体積(Vi)に対応する前記エネルギーディグレーディングユニット(11.i)を上記で定義されたように設計するステップ
を含み、「水等価厚」(=WET)という表現は、前記粒子ビームによって横断される1つ又は複数の材料の所与の厚さと同じ粒子ビームのエネルギーディグレデーションを引き起こす水の厚さとして定義されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記特定の線量(Dij)は、前記組織の体積(V)内の少なくとも選択された前記特定の場所に超高線量付与率(HDR)で前記治療計画に従って付与され、HDRは、HDR≧1Gy/sの線量付与率として定義されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記スポットの配列の前記スポット(Si)は、1つの単一のスポットにおける前記ビーム(100.i)の前記フルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.8倍以下(すなわちds≦1.8σ)、好ましくは1.5σ以下の距離(ds)だけ互いに隔てられ、前記底面面積(Abi)を通過する前記ビーム(100.i)の前記フルエンス(F(y,z))は、前記体積(V)に内接する前記境界を規定する前記平面(Y,Z)jのすべての値にわたって一定であるように近似されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法において、前記スポットの配列の前記スポット(Si)は、単一のスポットにおける前記ビーム(100.i)の前記フルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.2倍超(すなわちds>1.2σ)、好ましくは1.5倍超の距離(ds)だけ互いに隔てられ、前記底面面積(Abi)を通過する前記ビーム(100.i)の前記フルエンス(Fi(y,z))は、ガウス分布
であるように近似され、ここで、(yi,zi)は、前記(Y,Z)平面における、前記スポット(Si)の前記フルエンスの最大値(Ai)の位置の座標であり、円形スポットの場合、σ=σ=σであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、
・前記エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、前記ビーム軸(Xi)に沿って測定される厚さ(Bi)の支持ベース(11b)において、前記スポット(Si)の配列に従って並べて配置されたオリフィスの形態であり、各オリフィスは、前記支持ベース(11b)の表面に開口している開口部から延び、且つ前記対応するビーム軸(Xi)に沿って測定される所与の深さまで貫通し、
・各エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、
○断面面積(Ai)の一般化円筒ジオメトリを有し、且つ前記対応するビーム軸(Xi)に沿って前記支持ブロック(11b)の前記開口部から、Lij=Bi-Lsijであるような長さ(Lsij)にわたって延びるオリフィスの形態の1つ又は複数のディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)によって形成され、
○前記ディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)は、前記底面面積(Abi)内に配置されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、前記底面面積(Abi)内に以下の構成の1つで配置される少なくとも2つのサブユニット(11.ij)を含み、
・直列構造では、
○前記ディグレーディングサブユニットは、前記対応するビーム軸(Xi)に沿って、長さ(Lsij)が減少する順に、好ましくは同軸に、且つ最長の長さ(Lsi3)を有する前記オリフィスが中央位置に位置するように整列され、
○所与のディグレーディングサブユニット(11.ij)の前記サブユニットの底面面積(Aij)は、前記所与のディグレーディングユニット(11.ij)の断面面積(Axij)と、前記所与のディグレーディングユニット内に外接した前記ディグレーディングユニットの断面面積(Axi(j+1))との間の断面面積の差分(Axij-Axi(j+1))に等しく、
・並列構造では、前記ディグレーディングサブユニットは、2つのディグレーディングサブユニット間に空間なしの状態又は隣接する2つのディグレーディングサブユニット間に空間がある状態の何れかで前記底面面積(Abi)内に並べて配置され、
・並列及び直列の両方の混在構造では、3つ以上のディグレーディングサブユニット(11.ij)は、直列及び並列の両方で配置され、1つ又は複数の構造は、前記対応するビーム軸(Xi)に沿って直列に整列された2つ以上のディグレーディングサブユニットによって形成され、及び任意選択で、1つ又は複数の個々のディグレーディングサブユニットは、前記底面面積(Abi)内に並べて配置されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、
・前記エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、前記スポット(Si)の配列に従って並べて配置され、且つ前記ビーム軸(Xi)に沿って測定される厚さ(Bi)の支持ベース(11b)上に支持されたピンの形態であり、各ピンは、前記対応するビーム軸(Xi)に沿って前記支持ベースから延び、
・各エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、
○断面面積(Aij)の一般化円筒ジオメトリを有し、且つ前記対応するビーム軸(Xi)に沿って前記支持ベースから、Lij=Bi-Lsijであるような長さ(Lsij)にわたって延びる1つ又は複数のディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)によって形成され、
○前記ディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)は、前記底面面積(Abi)内に配置されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、前記底面面積(Abi)内に以下の構成の1つで配置される少なくとも2つのサブユニット(11.ij)を含み、
・直列構造では、
○前記ディグレーディングサブユニットは、前記対応するビーム軸(Xi)に沿って、長さ(Lsij)が減少する順に、好ましくは同軸に、且つ最長の長さ(Lsi1)を有する前記ピンが中央位置に位置するように整列され、
○所与のディグレーディングサブユニット(11.ij)の前記サブユニットの底面面積(Aij)は、前記所与のディグレーディングユニット(11.ij)の断面面積(Axij)と、前記所与のディグレーディングユニット内に外接した前記ディグレーディングユニットの断面面積(Axi(j-1))との間の断面面積の差分(Axij-Axi(j-1))に等しく、
・並列及び直列の両方の混在構造では、3つ以上のディグレーディングサブユニット(11.ij)は、直列及び並列の両方で配置され、1つ又は複数の構造は、前記対応するビーム軸(Xi)に沿って直列に整列された2つ以上のディグレーディングサブユニットによって形成され、及び任意選択で、1つ又は複数の個々のディグレーディングサブユニットは、前記底面面積(Abi)内に並べて配置されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5乃至8の何れか1項に記載の方法において、第1のエネルギーディグレーディングユニット(11.1)の少なくとも第1のディグレーディングサブユニット(11.11)は、前記第1のエネルギーディグレーディングユニット(11.1)又は第2のエネルギーディグレーディングユニット(11.2)の第2のディグレーディングサブユニット(11.ij)の第2の材料と異なる第1の材料で作られ、前記第1の材料は、前記第2の材料から作られる対応する第1のエネルギーサブユニット(11.11)の長さと比べて、前記第1のディグレーディングサブユニット(11.11)の長さ(L11=W11/Wu)の値を変化させる、好ましくは減少させるように、前記第2の材料と異なる、単位長さあたりの前記サブユニットの水等価厚(Wu)の値を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記第1のディグレーディングサブユニット(11.11)の前記長さ(L11)は、前記第2のディグレーディングサブユニットの前記長さ(Lij)の±20%以内であり、及び好ましくは、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)のすべての前記ディグレーディングサブユニット(11.ij)の前記長さ(Lij)は、平均長さ(Lm,ij)の±20%のばらつき以内で同じ長さ(Lij)を有する(すなわちLij=Lm,ij±20%∀j)ことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療体積(V)全体にわたり、加速された粒子(好ましくは陽子)のビームにより、単一ペインティング層でのペンシルビームスキャン(PBS)によってそれを照射することにより、所定の線量(Dij)を付与するためのリッジフィルタに関する。特に、本発明は、予め立てられた治療計画に従って線量(Dij)を正確に付与するためにそのようなリッジフィルタの寸法を最適化する、そのようなリッジフィルタを設計する方法に関する。本発明のリッジフィルタは、PBSによる超高線量付与率(HDR)での治療体積(V)又はその一部のFLASH照射に特に適合される。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム、陽子ビーム、重イオンビーム、X線、γ線などの粒子又は波動による放射線治療は、腫瘍を患う患者を治療するために不可欠な手段となっている。
【0003】
このような放射線により、体積内に含まれる腫瘍細胞及び健康な細胞の両方が損傷を受けるため、健康な細胞を可能な限り温存するように健康な細胞への線量付与を制限しつつ、腫瘍細胞を効果的に破壊又は死滅させるように腫瘍細胞に規定の線量が付与されることを確保する治療計画を規定することは、癌治療における第1の課題である。第2の課題は、健康な細胞、特に腫瘍細胞に隣接する健康な細胞に対して制限された線量を実際に付与しつつ、規定された線量を腫瘍細胞に実際に付与することである。
【0004】
治療計画は、腫瘍細胞に隣接する健康な細胞の劣化を最小化しつつ、治療終了時に腫瘍細胞を死滅させるのに十分な総標的線量が体積に送達されることを確保しなければならない。放射線が異なれば、付与されるエネルギーのパターンが異なる。例えば、X線は、皮膚付近の深さでそれらのエネルギーの大部分を付与し、付与されるエネルギーは、組織内への透過深と共に減少する。したがって、腫瘍細胞の標的体積の上流に位置する健康な組織は、標的体積の腫瘍細胞よりも高い線量を受ける。これに対して、図2(a)及び図2(b)に示すように、荷電粒子ビーム、特に陽子は、それらのビーム経路の終わり付近でそれらのエネルギーの大部分を付与して、いわゆるブラッグピークを形成する。
【0005】
ペンシルビームスキャン(PBS)は、腫瘍細胞を含む標的体積を規定するスポット(Sij)のメッシュの個々のスポットに向かう対応するビーム軸(Xi)に沿って荷電粒子のビームをステアリングすることからなる技法である。これにより、所定の標的線量は、個々のスポットに整列した細胞に付与される。ビームは、対応するビーム軸(Xi)に沿ってステアリングされ、線量付与は、ビーム軸(Xi)に沿った所与のスポットと整列した各細胞に付与されるべき線量(Dij)を規定する治療計画及びスポット照射のスキャンシーケンスに従って進められる。PBSは、腫瘍の幾何学的形状を反映するように、治療すべき範囲を形成することにより、周囲の非癌細胞の不要な放射線被曝を低減する。標的の幾何学的形状の他に、PBSにより、標的内のスポットの位置に応じてビームの強度を局所的に調整することができる。
【0006】
メッシュは、一般に、ビーム軸(Xi)の中心となる照射軸(X)に垂直ないくつかのペインティング層(Tj=T1~TN)を含む。各層(Tj)の対応する上流にある平面上には、スポット(Sij、Si(j+1)...)が二次元配列で配置される。各ペインティング層は、底面としての対応するスポット(Sij)及び対応するビーム軸(Xi)に平行な母線を有する一般化円筒として規定される、いくつかのセル(Cij、C(i+1)j...)を規定する。セル(Cij)は、対応する層(Tj)と同じ厚さを有する。ペインティング層(Tj)の重ね合わせにより、治療体積(V)全体が規定される。上流にある層(Tj)のスポット(Sij)は、下流にある層(T(j+1)、T(j+2)...)の対応するスポット(Si(j+1)、Si(j+2)...)と対応するビーム軸(Xi)に沿って必ずしも整列されるとは限らない。
【0007】
「上流」及び「下流」という用語は、荷電粒子のビーム(100.i)の方向に対して定義される。本明細書では、別段の指示のない限り、「一般化円筒」、「円筒」及びその派生語は、母線に平行であり、且つ母線に平行ではない平面に含まれる底面の外周を通るすべての線上のすべての点からなる表面を指す。底面は、任意の平坦な幾何学的形状を有し得る。特に底面が円形である場合、それは、円柱を規定する。底面が多角形である場合、それは、角柱を形成する。直円柱は、底面が母線に垂直な円柱である。
【0008】
PBSは、腫瘍を囲む治療体積(V)の幾何学的形状に合うように線量の付与の幾何学的分布を最適化するため、極めて有利である。しかしながら、ビームが各スポット(Sij)及び各層(Tj)をスキャンしなければならないため、PBSは、時間がかかり得る。あるビーム軸(Xi)から別のビーム軸(X(i+1))にビームを移動させるために、数msの時間がかかる。異なる層(Tj)のセル(Cij)に所望の線量(Dij)を付与するために、所与のビーム軸(Xi)に平行な所与のビームのエネルギーを変化させることは、一層時間がかかり、500ミリ秒のオーダーとなる。したがって、層(Tj)の数は、治療の持続時間に強く影響する。
【0009】
加速された陽子ビームを用いて、所与のビーム軸(Xi)に平行な所与のビームは、ビーム軸(Xi)に沿って各ペインティング層において深さをずらしていくつかのブラッグピークを重ね合わせることにより、所与のビーム軸(Xi)に沿って整列した、各ペインティング層の対応するセル(Cij)に所定の電荷を次々に付与することができる。この結果、所与のビーム軸(Xi)に沿って整列したすべてのセル(Cij、Ci(j+1)...)にわたる拡大ブラッグピーク(SOBP)が得られる。しかしながら、この操作では、対応するブラッグピークが対応するセル(Cij)を中心とするように、所与のビームのエネルギーを次々に変化させることが必要になる。この操作は、時間がかかる。絵を描くことと同様に、いくつかの層を塗り重ねたり、所与のビームのエネルギーを次々に変化させたりすることは、時間がかかる。1本の決まったエネルギーのビームで、すなわち単一のペイント層を塗ることにより、所与のスポット(Sij)を中心としたビーム軸(Xi)に沿ってすべての層にわたり、すべての線量(Dij)を付与できることが好ましい。
【0010】
治療時間を削減することにより、各患者が粒子加速器を占有する時間が短縮される。患者にとってもより快適になる。線量が少なくとも1Gy/sの超高線量付与率(HDR)で細胞に付与されるFLASH照射を治療計画が含む場合にも有利である。HDRで付与された所与の線量は、低い付与率(LDR)で付与された同じ線量と比較して健康な細胞を温存することが判明している。FLASH照射が特に興味深いのは、腫瘍細胞に付与された所与の線量が、HDRで付与されたか又はLDRで付与されたかに関わらず、同じ死滅効果を有することである。しかしながら、PBSによって治療体積(V)に線量(Dij)を一層ずつ付与することでは、所与のビーム軸(Xi)に沿って整列したすべてのセル(Cij)が対応する線量(Dij)を受けるまで、体積(V)内で上流に位置するセルは、必然的に複数回繰り返し照射されるため、セルへの付与率がかなり低下する。
【0011】
単一層でPBSによって治療体積に所定の線量(Dij)を付与することは、リッジフィルタを使用することにより実現され得る。リッジフィルタを使用する場合、各層(Tj)のスポット(Sij、Si(j+1)...)が、対応するビーム軸(Xi)に沿って整列することが必要になる。表面が平坦な角錐若しくは階段状の角錐又は稜部の形態のエネルギーディグレーディングユニットを備えるリッジフィルタが当技術分野で示されてきた。例えば、(非特許文献1)は、各スポット(Sij)に対応するビーム軸(Xi)に沿って延びる、表面が平坦な角錐の形態の複数のエネルギーディグレーディングユニットを備えるリッジフィルタを記載している。(非特許文献2)は、多層のリッジフィルタを記載しており、これらの層は、互いに重なり合い、各層は、階段状の角錐の断面を有する平行な線状稜部を備える。(特許文献1)は、対応するビーム軸(Xi)に沿ってSOBPの幅を広げるための複数の貫通孔を備えた板の形状のブラッグピーク拡大フィルタの上流に配置された、円錐又は三角錐の突起を備えるリッジフィルタを記載している。
【0012】
リッジフィルタの原理は、対応するビーム軸(Xi)に沿って向けられた所与のエネルギーのビーム(100.i)の部分が、フィルタの異なる材料厚さを通過して、異なる飛程を有するブラッグピークを生成し、それらのブラッグピークが重ね合わさることにより、対応するビーム軸(Xi)に沿って治療体積(V)の深さ全体にわたる、最初の層(T1)におけるスポット(Si1)から、最初の層(T1)の下流にある最後の層(TN)における対応するスポット(SiN)までによって規定される円筒体積にわたって一様なSOBPが得られるというものである。
【0013】
リッジフィルタのエネルギーディグレーディングユニットを設計すること及び寸法を定めることは、依然として課題である。(非特許文献1)は、関数(DSOBP-D(z))を最小化することを含む、リッジフィルタを形成する角錐状の突起の寸法を定めるための複雑な方法を記載しており、DSOBPは、一様な線量分布を規定し、
であり、ここで、B(z)は、測定される元のブラッグピークであり、Δzは、連続するブラッグピーク間のステップサイズであり、重みωiは、各ピークiのSOBPへの寄与度を決定し、D(z)は、結果として得られる深さ線量分布である。この式を解くには、実験的に当てはめられる関数が必要となる。(非特許文献2)は、そのリッジフィルタをどのように設計するかについて、モンテカルロ計算が使用されていること以外、あまり情報を提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2019-136167号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Simeonov et al.,Phys.Med.Biol.62(2017)7075
【非特許文献2】Sakae et al.,Med.Phys.27,2,(2000)368
【発明の概要】
【0016】
したがって、リッジフィルタのエネルギーディグレーディングユニットの寸法を定めるための、簡単で信頼性が高く且つ再現性がある方法が必要とされている。必要な精度で製造することがより容易な代替的なリッジフィルタの設計が提案される。以下では、これら及び他の利点をより詳細に説明する。
【0017】
本発明は、加速された粒子のビームを用いて、腫瘍細胞を含む組織の治療体積内の特定の場所に特定の線量(Dij)を付与するための、荷電粒子加速器(好ましくは陽子加速器)、ビームラインノズル、コリメータなど(本明細書ではまとめて加速器という)を含む治療システムのリッジフィルタを設計する方法に関する。本発明は、治療体積全体を規定する単一ペインティング層における所定の治療計画(TP)に従ったスポットごとのペンシルビームスキャン(PBS)による線量付与に関する。ビームは、照射軸(X)に略平行であり、±5°以内、好ましくは±3°以内の角度だけ照射軸(X)との平行から逸れる対応するビーム軸(Xi)に沿って延びる。組織は、ビームが組織を通して伝播しなくなる水等価距離として定義される最大ビーム飛程(W0)によって特徴付けられる。本方法は、以下のステップを含む。
【0018】
「水等価厚」(=WET)という表現は、当技術分野において周知であり、粒子ビームによって横断される1つ又は複数の材料の所与の厚さと同じ粒子ビームのエネルギーディグレデーションを引き起こす水の厚さとして定義される。
【0019】
治療体積に内接する境界は、厚さ(dxj)のN枚のスライス(Tj=T1~TN)の上流の平面(Y,Z)jにわたる面積(Aj)を規定することによって規定される。平面(Y,Z)jは、照射軸(X)に垂直である。患者の皮膚に対する最短水等価厚(d0)及び最長水等価厚(d1)は、照射軸(X)に沿って測定される、皮膚に対して最も近い境界の点及び皮膚から最も遠い境界の点としてそれぞれ定義される。
【0020】
部分体積(Vi)の配列が規定され、各部分体積は、対応するビーム軸(Xi)に平行に患者の皮膚から対応する最遠水等価厚まで延び、照射軸(X)に垂直な平面(Y,Z)上への部分体積(Vi)の配列の投影は、平面(Y,Z)上への体積の投影の面積全体をカバーするスポットの配列を規定する。
【0021】
部分体積(Vi)内に含まれるN枚のスライス(T1~TN)の各スライス(Tj)について、セルは、対応するスライス(Tj)内に含まれる部分体積(Vi)の一部分として規定される。所与の部分体積(Vi)の各セルについて、セルの水等価厚は、皮膚からセルの幾何学的中心までで決定される。TPに従ってセルに特定の線量(Dij)を付与するために必要なビーム重み(ωij)がセルごとに定められる。ビーム重み(ωij)は、セルの水等価厚における荷電粒子の数に比例する。
【0022】
リッジフィルタは、エネルギーディグレーディングユニットの組を備えて設計され、各エネルギーディグレーディングユニットは、特定の線量(Dij)が、TPに従い、部分体積(Vi)内に含まれる対応するセルにセルの水等価厚において付与されるように、対応するビーム軸(Xi)及び部分体積(Vi)と同軸である、あるビーム直径の対応する荷電粒子のビームの初期エネルギー(E0)を、低減されたエネルギー(Eij)に低減するように構成され得る。所与の部分体積(Vi)のエネルギーディグレーディングユニットは、以下のように設計される。
【0023】
部分体積(Vi)の各セルについて、対応するビーム軸(Xi)に垂直な面積(Aij)の底面と、対応するビーム軸(Xi)に平行な長さ(Lij)の母線との一般化円筒ジオメトリを有するディグレーディングサブユニットが寸法を定められる。ディグレーディングサブユニットは、対応するビーム軸(Xi)に沿って単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)を有する材料で作られ、長さは、ディグレーディングサブユニットが、単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)と長さ(Lij)との積に等しいサブユニットの水等価厚(Wij=Wu×Lij)を有するように決定される。サブユニットの水等価厚(Wij)とセルの水等価厚(dij)との和は、最大ビーム飛程(W0)に等しい(すなわちW0=Wij+dij)。
【0024】
本明細書では、上記で定義したように、「一般化円筒」、「円筒」及びその派生語は、母線に平行であり、且つ母線に平行ではない平面に含まれる底面の外周を通るすべての線上のすべての点からなる表面を指す。底面は、任意の平坦な幾何学的形状を有し得る。特に底面が円形である場合、それは、円柱を規定する。底面が多角形である場合、それは、角柱を形成する。直円柱は、底面が母線に垂直な円柱である。
【0025】
ディグレーディングサブユニットの面積(Aij)は、正規化されたビーム重み(ωij/Σωij)を、サブユニットの底面面積(Aij)にわたるフルエンス(F(y,z))の積分の、ディグレーディングユニット(11.i)の底面面積(Abi)にわたる同じ積分に対する比に等しくすることによって決定され、
ここで、フルエンスF(y,z)は、ビームの位置(y,z)におけるビーム(100.i)の単位面積あたりの電荷の数であり、底面面積(Abi)は、サブユニットの面積(Aij)の和に等しい(すなわちAbi=ΣAij)。
【0026】
N個のディグレーディングサブユニットは、部分体積(Vi)に必要な線量(Dij)を付与するように、ビームのエネルギーをディグレーディングさせるように設計されたエネルギーディグレーディングユニットを得るために組み合わされる。すべての残りの部分体積(Vi)に対応するエネルギーディグレーディングユニットは、上記で定義されたように設計され得る。
【0027】
好ましい実施形態では、特定の線量(Dij)は、組織の体積内の少なくとも選択された特定の場所に超高線量付与率(HDR)で治療計画に従って付与される。超高線量付与率(HDR)は、HDR≧1Gy/sの線量付与率として定義される。
【0028】
スポットの配列のスポットは、1つの単一のスポットにおけるビームのフルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.8倍以下(すなわちds≦1.8σ)、好ましくは1.5σ以下の距離(ds)だけ互いに隔てられ得る。これらの条件では、底面面積(Abi)を通過するビームのフルエンス(F(y,z))は、体積に内接する境界を規定する平面(Y,Z)jのすべての値にわたって一定であるように近似される。
【0029】
代わりに、スポットの配列のスポットは、単一のスポットにおけるビームのフルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.2倍超(すなわちds>1.2σ)、好ましくは1.5倍超の距離(ds)だけ互いに隔てられ得る。これらの条件では、底面面積(Abi)を通過するビームのフルエンス(Fi(y,z))は、ガウス分布
であるように近似され、ここで、(yi,zi)は、(Y,Z)平面における、スポット(Si)のフルエンスの最大値(Ai)の位置の座標であり、円形スポットの場合、σ=σ=σである。
【0030】
本発明の好ましい構成では、エネルギーディグレーディングユニットは、ビーム軸(Xi)に沿って測定される厚さ(Bi)の支持ベースにおいて、スポットの配列に従って並べて配置されたオリフィスの形態である。各オリフィスは、支持ベースの表面に開口している開口部から延び、且つ対応するビーム軸(Xi)に沿って測定される所与の深さまで貫通する。各エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、断面面積(Ai)の一般化円筒ジオメトリを有し、且つ対応するビーム軸(Xi)に沿って支持ブロックの開口部から、Lij=Bi-Lsijであるような長さ(Lsij)にわたって延びるオリフィスの形態の1つ又は複数のディグレーディングサブユニットによって形成される。上記で定義したディグレーディングサブユニットは、底面面積(Abi)内に配置される。
【0031】
この構成のエネルギーディグレーディングユニットでは、少なくとも2つのサブユニットが底面面積(Abi)内に直列構造、並列構造及び混在構造の何れか1つの構造で配置され得る。
【0032】
直列構造では、ディグレーディングサブユニットは、対応するビーム軸(Xi)に沿って、長さ(Lsij)が減少する順に、好ましくは同軸に、且つ最長の長さ(Lsi3)を有するオリフィスが中央位置に位置するように整列される。所与のディグレーディングサブユニットのサブユニットの底面面積(Aij)は、所与のディグレーディングユニットの断面面積(Axij)と、所与のディグレーディングユニット内に外接したディグレーディングユニットの断面面積(Axi(j+1))との間の断面面積の差分(Axij-Axi(j+1))に等しい。
【0033】
並列構造では、ディグレーディングサブユニットは、2つのディグレーディングサブユニット間に空間なしの状態又は隣接する2つのディグレーディングサブユニット間に空間がある状態の何れかで底面面積(Abi)内に並べて配置される。
【0034】
並列及び直列の両方の混在構造では、3つ以上のディグレーディングサブユニットは、直列及び並列の両方で配置される。1つ又は複数の構造は、対応するビーム軸(Xi)に沿って直列に整列された2つ以上のディグレーディングサブユニットによって形成され、及び任意選択で、1つ又は複数の個々のディグレーディングサブユニットは、底面面積(Abi)内に並べて配置される。
【0035】
本発明の代替的な好ましい構成では、エネルギーディグレーディングユニットは、スポットの配列に従って並べて配置され、且つビーム軸(Xi)に沿って測定される厚さ(Bi)の支持ベース上に支持されたピンの形態である。各ピンは、対応するビーム軸(Xi)に沿って支持ベースから延びる。この構成では、各エネルギーディグレーディングユニットは、断面面積(Aij)の一般化円筒ジオメトリを有し、且つ対応するビーム軸(Xi)に沿って支持ベースから、Lij=Bi+Lsijであるような長さ(Lsij)にわたって延びる1つ又は複数のディグレーディングサブユニットによって形成される。これらのディグレーディングサブユニットは、底面面積(Abi)内に配置される。
【0036】
この構成のエネルギーディグレーディングユニットでは、少なくとも2つのサブユニットが底面面積(Abi)内に直列構造、並列構造及び混在構造の何れか1つの構造で配置され得る。
【0037】
直列構造では、ディグレーディングサブユニットは、対応するビーム軸(Xi)に沿って、長さ(Lsij)が減少する順に、好ましくは同軸に、且つ最長の長さ(Lsi1)を有するピンが中央位置に位置するように整列される。所与のディグレーディングサブユニットのサブユニットの底面面積(Aij)は、所与のディグレーディングユニットの断面面積(Axij)と、所与のディグレーディングユニット内に外接したディグレーディングユニットの断面面積(Axi(j-1))との間の断面面積の差分(Axij-Axi(j-1))に等しい。
【0038】
並列及び直列の両方の混在構造では、3つ以上のディグレーディングサブユニットは、直列及び並列の両方で配置される。1つ又は複数の構造は、対応するビーム軸(Xi)に沿って直列に整列された2つ以上のディグレーディングサブユニットによって形成され、及び任意選択で、1つ又は複数の個々のディグレーディングサブユニットは、底面面積(Abi)内に並べて配置される。
【0039】
好ましい実施形態では、第1のエネルギーディグレーディングユニットの少なくとも第1のディグレーディングサブユニットは、第1のエネルギーディグレーディングユニット又は第2のエネルギーディグレーディングユニットの第2のディグレーディングサブユニットの第2の材料と異なる第1の材料で作られ得る。第1の材料は、例えば、第2の材料から作られる対応する第1のエネルギーサブユニットの長さと比べて、第1のディグレーディングサブユニットの長さ(L11=W11/Wu)の値を変化させる、好ましくは減少させるように、第2の材料と異なる、単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)の値を有する。単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)が異なる値である異なる材料を使用することにより、第1のディグレーディングサブユニットの長さ(L11)は、エネルギーディグレーディングユニットをよりコンパクトにするために、第2のディグレーディングサブユニットの長さ(Lij)の±20%以内に維持され得る。エネルギーディグレーディングユニットのすべてのディグレーディングサブユニットの長さ(Lij)は、好ましくは、平均長さ(Lm,ij)の±20%のばらつき以内で同じ長さ(Lij)を有する(すなわちLij=Lm,ij±20%∀j)。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1a図1(a)は、治療体積(V)を概略的に示す。治療体積(V)は、対応するビーム軸(Xi)に平行に延びる部分体積(Vi)に分割され、各部分体積(Vi)は、セル(Cij)に分割され、セル(Cij)に所定の線量(Dij)が付与される。対応するSOBPは、リッジフィルタの対応するエネルギーディグレーディングユニットを通過する異なるビーム軸(Xi)に沿って示されている。
図1b図1(b)は、本発明によるリッジフィルタを通過した後の3本のビーム(100.i、100.k、100.m)によってSOBPが得られる状態にある、図1(a)の治療体積(V)の側面図を示す。
図1c図1(c)は、照射軸(X)と同軸のビーム軸(Xi)に沿ってビーム(100.i)が延びる状態で得られるSOBPを示す。
図1d図1(d)は、ビーム軸(Xm)に沿ってビーム(100.m)が延びる状態で得られるSOBPを示す。
図2a図2(a)は、所与のエネルギーのビームの典型的なブラッグピークの深さ線量プロファイルを示す。横軸は、水中での深さを表す。水中での最大ビーム飛程(W0)は、ブラッグピークの最大値を超え、且つブラッグピークの最大値の80%に等しいエネルギーに対応する深さであり、W0は、少なくともdij以上でなければならない(dij<W0)と規定される。
図2b図2(b)は、エネルギーディグレーディングユニットがビームの経路と交差している状態における、図2(a)のビームのブラッグピークの深さ線量プロファイルを示す。
図3a図3(a)は、互いに且つ照射軸(X)に平行にそれぞれのビーム軸(Xi、X(i+1)...)に沿って延びてリッジフィルタを通過するビーム(100.i、100.(i+1)...)を示す。
図3b図3(b)は、照射軸(X)を中心として扇状に広がって、それぞれのビーム軸(Xi、X(i+1)...)に沿って延びてリッジフィルタを通過するビーム(100.i、100.(i+1)...)を示す。
図3c図3(c)は、ピンの形態のエネルギーディグレーディングユニットを備えるリッジフィルタを概略的に示す。
図3d図3(d)は、ビーム(100.i、100.(i+1))が、互いに平行ではないそれぞれのビーム軸(Xi、X(i+1))に沿って延びる状態にある、2つのエネルギーディグレーディングユニットを示す(XiとX(i+1)とのなす角度は、誇張してある)。
図3e図3(e)は、照射軸(X)に平行に延び、セル(Cij)に分割されるいくつかの部分体積(Vi)を含む治療体積(V)の体積要素を示す。部分体積(V5)において得られるSOBPも示す。
図3f図3(f)は、対応するビーム軸(Xi)に平行に延びるいくつかの部分体積(Vi)を含む治療体積(V)の体積要素を示す。ビーム軸(Xi)は、互いに完全に平行ではなく、照射軸(X)とも完全に平行ではない。分かりやすくするために、角度のずれを誇張してある。
図4a図4(a)は、間隙によって形成されたエネルギーディグレーディングユニットを備えるリッジフィルタの一実施形態を示す。
図4b図4(b)は、3つのディグレーディングサブユニットから構成された、図4(a)のリッジフィルタのエネルギーディグレーディングユニットを形成する間隙の切断側面図を示す。ディグレーディングユニットによって生成されたSOBPの深さ線量プロファイルも示す。
図4c図4(c)は、図4(b)のエネルギーディグレーディングユニットの第1のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第1のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第1のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi1において最大となる。
図4d図4(d)は、図4(b)のエネルギーディグレーディングユニットの第2のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第2のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第2のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi2において最大となる。
図4e図4(e)は、図4(b)のエネルギーディグレーディングユニットの第3のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第3のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第3のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi3において最大となる。
図4f図4(f)は、間隙によって形成されたエネルギーディグレーディングユニットを備えるリッジフィルタの代替的な実施形態を示す。
図4g図4(g)は、3つのディグレーディングサブユニットから構成された、図4(f)のリッジフィルタのエネルギーディグレーディングユニットを形成する間隙の切断側面図を示す。ディグレーディングユニットによって生成されたSOBPの深さ線量プロファイルも示す。
図4h図4(h)は、図4(g)のエネルギーディグレーディングユニットの第1のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第1のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の例が示されている。第1のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi1において最大となる。
図4i図4(i)は、図4(g)のエネルギーディグレーディングユニットの第2のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第2のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第2のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi2において最大となる。
図4j図4(j)は、図4(g)のエネルギーディグレーディングユニットの第3のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第3のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の例が示されている。第3のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi3において最大となる。
図5a図5(a)は、突出するピンによって形成されたエネルギーディグレーディングユニットを備えるリッジフィルタの一実施形態を示す。
図5b図5(b)は、3つのディグレーディングサブユニットから構成された、図5(a)のリッジフィルタのエネルギーディグレーディングユニットを形成する突出するピンの切断側面図を示す。ディグレーディングユニットによって生成されたSOBPの深さ線量プロファイルが示されている。
図5c図5(c)は、図5(b)のエネルギーディグレーディングユニットの第1のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第1のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第1のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi3において最大となる。
図5d図5(d)は、図5(b)のエネルギーディグレーディングユニットの第2のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第2のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第2のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi2において最大となる。
図5e図5(e)は、図5(b)のエネルギーディグレーディングユニットの第3のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第3のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第3のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi1において最大となる。
図5f図5(f)は、突出するピンによって形成されたエネルギーディグレーディングユニットを備えるリッジフィルタの代替的な実施形態を示す。
図5g図5(g)は、3つのディグレーディングサブユニットから構成された、図5(f)のリッジフィルタのエネルギーディグレーディングユニットを形成する突出するピンの切断側面図を示す。ディグレーディングユニットによって生成されたSOBPの深さ線量プロファイルも示す。
図5h図5(h)は、図5(g)のエネルギーディグレーディングユニットの第1のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第1のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の例が示されている。第1のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi3において最大となる。
図5i図5(i)は、図5(g)のエネルギーディグレーディングユニットの第2のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第2のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の2つの例、すなわち円形又は多角形(六角形)が示されている。第2のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi2において最大となる。
図5j図5(j)は、図5(g)のエネルギーディグレーディングユニットの第3のディグレーディングサブユニットの切断側面図を示す。第3のディグレーディングサブユニットの可能な断面形状の例が示されている。第3のディグレーディングサブユニットによって生成されるブラッグピークは、深さdi1において最大となる。
図6a図6(a)は、連続的な間隙によって形成されたN=3個のディグレーディングサブユニット(11.ij)を備える、図4(b)のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の切断側面図及び対応するSOBPを示す。
図6b図6(b)は、N=6個のディグレーディングサブユニット(11.ij)を備える、図6(a)のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の変形形態及び対応するSOBPを示す。
図6c図6(c)は、連続切頂一般化円錐間隙を形成する、N→∞のディグレーディングサブユニット(11.ij)を備える、図6(a)及び図6(b)のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の変形形態及び対応するSOBPを示す。
図6d図6(d)は、階段状のピンの形態における、N=6個のディグレーディングサブユニット(11.ij)を備えるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)及び対応するSOBPを示す。
図6e図6(e)は、連続切頂一般化円錐を形成する、N→∞のディグレーディングサブユニット(11.ij)を備える、図6(d)のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の変形形態及び対応するSOBPを示す。
図7a図7(a)は、長さ及び断面面積が異なる、同軸に配置された2つのディグレーディングサブユニットを備える突出するピンの形態のエネルギーディグレーディングユニットを通過するビームによる線量付与を特徴付けるブラッグピークのシフトを示す。
図7b図7(b)は、長さ及び断面面積が異なる2つのディグレーディングサブユニットを備える間隙の形態のエネルギーディグレーディングユニットを通過するビームによる線量付与を特徴付けるブラッグピークのシフトを示す。
図7c図7(c)は、密度及び断面面積が異なる(内側要素の密度が周囲要素の密度よりも低い)2つのディグレーディングサブユニットを備える同心要素の形態のエネルギーディグレーディングユニットを通過するビームによる線量付与を特徴付けるブラッグピークのシフトを示す。
図7d図7(d)は、密度及び断面面積が異なる(内側要素の密度が周囲要素の密度よりも高い)2つのディグレーディングサブユニットを備える同心要素の形態のエネルギーディグレーディングユニットを通過するビームによる線量付与を特徴付けるブラッグピークのシフトを示す。
図7e図7(e)は、長さ及び断面面積が異なる、並べて配置された2つのディグレーディングサブユニットを備える突出するピンの形態のエネルギーディグレーディングユニットを通過するビームによる線量付与を特徴付けるブラッグピークのシフトを示す。
図7f図7(f)は、図7(a)に示したタイプのエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の斜視図を示す。
図7g図7(g)は、図7(e)に示したタイプのエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の斜視図を示す。
図7h図7(h)は、直列構造及び並列構造の両方の混在構造で配置されたディグレーディングサブユニットを備えるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の一実施形態の斜視図を示す。
図7i図7(i)は、直列構造及び並列構造の両方の混在構造で配置されたディグレーディングサブユニットを備えるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の代替的な実施形態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、荷電粒子加速器、好ましくは陽子加速器のリッジフィルタ(11)の設計方法に関する。本発明のリッジフィルタ(11)は、加速された粒子のビーム(100.i)を用いて、所定の治療計画(TP)に従い、腫瘍細胞(3t)を含む組織の治療体積(V)内の特定の場所に、ペンシルビームスキャン(PBS)によってスポットの配列のスポット(Si)ごとに、特定の線量(Dij)を付与するように構成される。リッジフィルタを用いることにより、治療体積(V)全体を規定する単一ペインティング層でPBSを実行することができる。PBSでは、細いペンシルビームが配列の各スポット(Si)をスキャンするように偏向される。偏向されるのは単一のビームであるが、次々に、対応するスポット(Si)に向けられ、且つ対応するビーム軸(Xi)に沿って延びる各ビーム(100.i)が、異なるスポット(Sk、k≠i)に向けられ、且つ第2のビーム軸(Xk)に沿って延びるビーム(100.k)と異なる個々のビームとして扱われる。図1(b)及び図3(a)に示すように、ビーム軸(Xi)は、照射軸(X)に略平行である。実際には、「個々」のビーム(100.i)は、共通の加速器の出口点から配列の個々のスポット(Si)に向かって偏向される単一のビームであるため、ビーム軸(Xi)は、とりわけ治療体積(V)のサイズと治療体積(V)からの加速器の出口までの距離とに応じて、照射軸(X)との平行から±5°以内、好ましくは±3°以内に含まれる角度で逸れる。
【0042】
ビーム(100.i)が横断する組織は、ビームのエネルギーの一部を吸収し、これによりビーム軸(Xi)に沿ったブラッグピークの位置の透過深が決定される。所与の組織におけるブラッグピークの位置の透過深は、「水等価厚」(=WET)として規定される、すなわち水中でビームの伝播が停止する位置を規定する水中での最大ビーム飛程(W0)によって特徴付けられ得る。「水等価厚」(=WET)という表現は、当技術分野において周知であり、粒子ビームが横断する所与の厚さの1つ又は複数の材料と同じ粒子ビームのエネルギーディグレデーションを引き起こす水の厚さとして定義される。最大ビーム飛程(W0)は、組織を通る同じビームの透過深に直接関連し得る。したがって、WET及び組織を通るブラッグピークの位置の透過深は同義で使用され得、当然のことながら、前者(WET)の方が実験的に試験及び測定するのが容易である。
【0043】
本発明によるリッジフィルタ(11)の設計方法は、
・治療体積(V)並びに治療体積(V)に付与される位置及び線量を示す地図を規定するステップと、
・それに応じてリッジフィルタを設計し、寸法を定めるステップと
を含む。
【0044】
治療体積の規定は、第1に、図1(a)、図1(b)、図3(a)及び図3(b)に概略的に示すように、治療体積(V)に内接する境界を規定することを含む。この操作は、厚さ(dxj)のN枚のスライス(Tj=T1~TN)の上流の平面(Y,Z)jにわたる面積を規定することを含み、平面(Y,Z)jは照射軸(X)に垂直である。上流の平面(Y,Z)jは、ビーム(100.i)が最初に当たるスライス(Tj)の平面(Y,Z)である。照射軸(X)に沿って測定される治療体積(V)の深さは、患者の皮膚(3s)から測定される最短水等価厚(d0)と最長水等価厚(d1)との間に含まれ、これらの水等価厚は、照射軸(X)に沿って測定される皮膚(3s)に対して最も近い境界の点と最も遠い境界の点とにそれぞれ対応する。
【0045】
第2に、図1(a)、図1(b)、図3(e)及び図3(f)に示すように、境界内に内接する治療体積(V)は、部分体積(Vi)の配列を規定することによって分割される。各部分体積は、対応するビーム軸(Xi)に平行に患者の皮膚から対応する最遠水等価厚(d1)まで延び、照射軸(X)に垂直な平面(Y,Z)上への部分体積(Vi)の配列の投影が、平面(Y,Z)上への体積(V)の投影の面積全体をカバーするスポット(Si)の配列を規定する(図1(a)を参照されたい)。
【0046】
第3に、部分体積(Vi)自体が、以下のようにセル(Cij)に分割される。部分体積(Vi)内に含まれるN枚のスライス(T1~TN)の各スライス(Tj)について、セル(Cij)が、対応するスライス(Tj)内に含まれる部分体積(Vi)の一部分として規定される。このことは、図1(a)、図3(e)及び図3(f)に示されている。所与の部分体積(Vi)の各セル(Cij)について、皮膚(3s)からセル(Cij)の幾何学的中心までのセルの水等価厚(dij)が決定される。TPに従ってセル(Cij)に特定の線量(Dij)を付与するために必要なビーム重み(ωij)がセル(Cij)ごとに決定される。ビーム重み(ωij)は、スポット(Cij)に送達される荷電粒子(例えば、陽子)の数に対応する。したがって、ビーム重み(ωij)は、セルの水等価厚(dij)における荷電粒子の数に比例する。
【0047】
治療体積が部分体積(Vi)、そしてセル(Cij)に分割され、治療計画に従って各セル(Cij)に線量(Dij)を付与するために必要なビーム重み(ωij)が決定されると、それに応じてリッジフィルタ(11)が以下のように設計され、寸法を定められ得る。
【0048】
リッジフィルタ(11)は、特定の線量(Dij)がTPに従って部分体積(Vi)内に含まれる対応するセル(Cij)にセルの水等価厚(dij)において付与されるように、対応するビーム軸(Xi)及び部分体積(Vi)と同軸であり、ビーム直径(D100.i)を有する荷電粒子のビーム(100.i)の初期エネルギー(E0)を低減されたエネルギー(Eij)に低減するように構成されたエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の組を備える。図2(a)及び図2(b)に原理を示す。
【0049】
図2(a)は、所与のエネルギー(E0)のビーム(100.i)によってビーム軸(Xi)に沿ってWETの関数として付与された線量(Dij)をプロットしたものである。上述のように、水中での最大ビーム飛程(WET)は、W0と規定され、ブラッグピークの最大値を超えた深さに対応し、且つブラッグピークの最大値の80%に等しいエネルギーに対応する。このことは、所与のエネルギーのビーム(100.i)は、対応する水等価厚さW0よりも深くには組織に透過することができないことを意味する(すなわちd1≦W0)。d1>W0の場合、すなわち治療体積(V)がブラッグピークよりも深く延びる場合、より高いエネルギーのビームを使用しなければならない。図2(b)は、所与のエネルギーの同じビーム(100.i)の経路にディグレーディングサブユニット(11.ij)を挿入したときのブラッグピークの変位を示す。この場合、ブラッグピークのWETは、皮膚(3s)から深さ(dij<W0)にあることが分かる。これは、ビーム(100.i)のエネルギーの一部(E0-Eij)が、ビームが通らなければならないディグレーディングサブユニット(11.ij)によって吸収されるためである。図2(b)は、ディグレーディングサブユニット(11.ij)を介在させることによってWET=W0を形成する1つのブラッグピークを所望のWET=dijに変位させる方法を示す。SOBPは、単一ペインティング層でのPBSによって部分体積(Vi)全体に必要な線量(Dij)を付与するように、照射軸(X)に沿って所与の深さにわたって分布するいくつかのブラッグピークを重ね合わせることによって形成され得るため、いくつかのディグレーディングサブユニット(11.ij)が重ね合わされてエネルギーディグレーディングユニット(11i)を形成することができ、各ディグレーディングサブユニット(11.ij)は、ブラッグピークをWET=W0から対応するセルの等価厚さ(dij)にシフトするように寸法を定められて、必要な線量(Dij)がビーム(100.i)によって照射される部分体積(Vi)の各セル(Cij)に付与されることを確保する。このことが図6(a)~図6(e)に示されており、図6(a)~図6(e)では、それぞれがN=3個、N=6個及びN→∞のディグレーディングサブユニット(11.ij)から構成されるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)及び対応するSOBPを示す。TPに従う所望のSOBPを得るために必要なブラッグピークの数及びそれらに対応するセルの水等価厚(dij)が決定されなければならない。所与のビーム(100.i)のブラッグピーク、したがって対応するエネルギーディグレーディングユニット(11.i)のディグレーディングサブユニット(11.ij)の数は、スライス(T1~TN)の数Nに等しい。所与のビーム(100.i)の各ブラッグピークは、対応するエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を有し、それらのディグレーディングサブユニット(11.ij)は、必要なSOBPを得るように、ひいては対応するセル(Cij)に必要な線量(Dij)を付与するように設計され得る。図6(c)及び図6(e)に示すようなN→∞のディグレーディングサブユニット(11.ij)の場合、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)の階段状の構成の段差は、略ゼロになるまで小さくなって、図6(c)及び図6(e)に示す切頂一般化円錐の表面が平坦な幾何学的形状をもたらし、一般化円錐は、円に限定されない任意の幾何学的形状の底面を有し得る。
【0050】
各ディグレーディングサブユニット(11.ij)は、対応するビーム軸(Xi)に垂直な面積(Aij)の底面と、対応するビーム軸(Xi)に平行な長さ(Lij)の母線とから構成される一般化円筒ジオメトリを有する(すなわち必ずしも円柱であるとは限らない)。図4(a)~図4(e)及び図5(a)~図5(e)に示すディグレーディングサブユニットは、円形又は多角形の断面を有する。他の断面も可能であることは明らかである。ただし、面積(Aij)の寸法を定める計算を容易にするために、断面にはある程度の対称性があることが望ましい。ディグレーディングサブユニットは、対応するビーム軸(Xi)に沿って単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)を有する材料で作られる。各ディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)及び面積(Aij)は、以下のように寸法を定められ得る。
【0051】
ディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)は、ディグレーディングサブユニット(11.i)が単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)と長さ(Lij)との積に等しいサブユニットの水等価厚(Wij=Wu×Lij)を有するように決定される。サブユニットの水等価厚(Wij)とセルの水等価厚(dij)との和が最大ビーム飛程(W0)に等しくなければならない(すなわちW0=Wij+dij)ことを考慮すると、ディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)は、
と規定され、係数(W0-dij)は図2(b)において図示されている。このようにして、ディグレーディングサブユニットの長さが完全に規定される。
【0052】
ディグレーディングサブユニット(11.ij)の面積(Aij)は、正規化されたビーム重み(ωij/Σωij)を、サブユニットの底面面積(Aij)にわたるフルエンス(F(y,z))の積分の、ディグレーディングユニット(11.i)の底面面積(Abi)にわたるフルエンス(F(y,z))の積分に対する比に等しくすることによって決定され、
ここで、フルエンスF(y,z)は、ビームの位置(y,z)におけるビーム(100.i)の単位面積あたりの電荷の数であり、底面面積(Abi)は、図4(a)及び図5(a)に示すようにサブユニットの面積(Aij)の和に等しい(すなわちAbi=ΣAij)。図7(a)~図7(e)に示すように、荷電粒子のビームのフルエンスは、一般にガウス分布を有する。ビームの直径(D100)は、距離4σと規定され、σは、ビームのフルエンスを特徴付けるガウス分布の標準偏差である。スポットの陽子の約95%がこの直径4σの中に位置している。
【0053】
図4(b)~図4(e)、図4(g)~図4(j)、図5(b)~図5(e)及び図5(g)~図5(j)に示すように、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)の3つのディグレーディングサブユニット(11.ij)は、寸法を定められた状態で、同軸に組み合わされて、部分体積(Vi)に必要な線量(Dij)を付与させるためにビーム(100.i)のエネルギーをディグレーディングするように設計されたエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を得ることができる。
【0054】
同じ動作が繰り返されて、すべての残りの部分体積(Vi)に対応するエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を上記で定義されたように設計する。
【0055】
スポット(Si)の配列
図1(a)に示すように、照射軸(X)に垂直な投影面(Y,Z)上に、照射軸(X)に平行に投影した治療体積(V)の領域をカバーするスポット(Si)の配列が規定される。
【0056】
腫瘍医が、コンピュータ断層撮影(=CTスキャン)によって得られた腫瘍領域の画像に基づいて、腫瘍領域の幾何学的形状(geometry)及び組織分布(topography)の特性を明らかにする。図1(b)に示すように、治療体積(V)に到達するために、治療体積(V)を患者の皮膚(3s)から隔てている健康な細胞をビーム(100.i)が通過しなければならず、これにより健康な細胞と腫瘍細胞との両方が照射される。腫瘍医は、治療体積(V)に付与される線量(Dij)と、治療体積の外側(特に、上流)に位置する健康な細胞において超えてはならない線量付与とを規定する治療計画を規定する。
【0057】
スポットは、照射軸(X)に垂直な方向の寸法を有し、これは、上で論じたビーム直径に等しくなり得る。配列の密度が高いほど(すなわち隣接するスポットが互いに近いほど)、隣接するスポットの広がった細胞への線量の重なりの影響が大きくなるため、配列密度を規定する隣接するスポット間の距離は重要なパラメータである。隣接するスポット間の距離が約1.5σのときに、横方向の一様な線量分布が確認されるような十分な重なりが観測される。
【0058】
第1の実施形態では、スポットの配列のスポット(Si)は、単一のスポットにおけるビーム(100.i)のフルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.8倍以下(すなわちds≦1.8σ)、好ましくは1.5σ以下の距離(ds)だけ互いに隔てられる。この構成では、所与の部分体積(Vi)は、対応するビーム軸(Xi)を中心とするビーム(100.i)からだけではなく、隣接するビーム軸を中心とする隣接するビームからも、そのフルエンスが所与の部分体積(Vi)にわたって広がり、また所与のディグレーディングユニット11.iにわたって広がる線量(Dij)を受ける。隣接するビームによって部分体積(Vi)に付与される線量を考慮すると、底面面積(Abi)を通過するビーム(100.i)のフルエンス(F(y,z))(式(1)を参照されたい)は、体積(V)に内接する境界を規定するスライス(Tj)の平面(Y,Z)jのすべての値にわたって一定であるように近似される。
【0059】
第2の実施形態では、スポットの配列のスポット(Si)は、単一のスポット(100.i)におけるビーム(100.i)のフルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.2倍超(すなわちds>1.2σ)、好ましくは1.5倍超の距離(ds)だけ互いに隔てられる。このような距離では、所与のディグレーディングユニット(11.i)を通る隣接するビームのフルエンスは、無視することができる。したがって、底面面積(Abi)を通過するビーム(100.i)のフルエンス(Fi(y,z))は、ガウス分布
であるように近似され、ここで、(yi,zi)は、(Y,Z)平面におけるスポット(Si)のフルエンスの最大値(Ai)の位置の座標であり、円形スポットの場合、σ=σ=σである。
【0060】
スポット(Si)の配列の密度を上げることは、密度の低い配列よりも常に有利であるように見えることがある。しかしながら、密度の高い配列を照射することにより、治療体積(V)全体をカバーするために必要なスキャン時間が長くなる。更に、健康な細胞を温存するためのFLASH効果を得るためにHDRで線量(Dij)を付与するFLASH付与は、線量が隣接するビームから付与されるために付与時間が長くなる(且つそれに応じて付与速度が低下する)ことから、密度の高い配列では実現することが困難である。したがって、スポット(Si)の配列の密度は、個別に決定される。
【0061】
ディグレーディングユニット(11.i)
本発明のリッジフィルタ(11)の原理は、各スポット(Si)について、対応する部分体積(Vi)において所望のSOBPが得られるように、拡大されたピークが、患者の皮膚(3s)から測定される最短水等価厚(d0)と最長水等価厚(d1)との間に延び、治療体積内に含まれる部分体積(Vi)の部分を境界とする状態で、ビーム(100.i)のエネルギーをディグレーディングすることである。課題は、所望の線量(Dij)が、対応する部分体積(Vi)の対応するセル(Cij)に付与されるように、ビーム(100.i)の重み(ωi)全体のうちの所定のビーム重み部分(ωij)のブラッグピークを対応するセルの水等価厚(dij)に移動させるように、ビーム(100.i)のほんの一部分のエネルギーをディグレーディングすることである。
【0062】
上記の目的を達成するために、ここで、エネルギーディグレーディングユニット(11i)の3種の幾何学的形状が、エネルギーディグレーディングユニット(11i)を形成するディグレーディングサブユニット(11.ij)の寸法を定めるための対応する方法と併せて提案される。ある幾何学的形状が別の幾何学的形状と組み合わされて、最も利便性の高いリッジフィルタを実現することができる。
・オリフィスの形態のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)、
・ピンの形態のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)、
・異なる単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)を有する異なる材料を組み合わせたエネルギーディグレーディングユニット(11i)。
【0063】
ディグレーディングユニット(11.i)がオリフィスである場合
図4(a)~図4(e)、図4(f)~図4(j)及び図6(a)~図6(c)に示す本実施形態では、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、ビーム軸(Xi)に沿って測定される厚さ(Bi)の支持ベース(11b)において、スポット(Si)の配列に従って並べて配置されたオリフィスの形態である。各オリフィスは、支持ベース(11b)の表面に開口している開口部から延び、対応するビーム軸(Xi)に沿って測定される所与の深さまで貫通する。各エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、断面面積(Axij)の一般化円筒ジオメトリを有し、且つ対応するビーム軸(Xi)に沿って支持ブロック(11b)の開口部から、Lij=Bi-Lsijであるような長さ(Lsij)にわたって延びるオリフィスの形態の1つ又は複数のディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)によって形成される。ディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)は、ビーム(100.i)の直径(D100)よりわずかに大きいか又はそれと等しい直径以内となるように、且つサブユニットの底面面積(Aij)の和が底面面積(Abi)に等しくなる(すなわち、
)ように構成される。
【0064】
図4(a)~図4(e)及び図7(b)に示す好ましい実施形態では、ディグレーディングサブユニットは、直列構造で配置され、ディグレーディングサブユニット(11.ij)が、長さ(Lsij)が減少する順に、対応するビーム軸(Xi)に沿って整列される。ディグレーディングサブユニット(11.ij)は、好ましくは、同軸に且つ最長の長さ(Lsi3)を有するオリフィスが中央位置に配置される状態で配置される。ディグレーディングサブユニット(11.ij)は、他の構成、例えば同心円状ではない構成において且つ最長の長さ(Li3)のオリフィスが必ずしも中心でない状態で配置することもできる。
【0065】
ディグレーディングサブユニット(11.ij)が同心円状に配置される実施形態では、各ディグレーディングサブユニット(11.ij)のサブユニットの底面面積(Aij)のうち、最深のオリフィス(11.i3)のサブユニットの底面面積(Ai3)を除く部分は環状の幾何学的形状を有する。その結果、所与のディグレーディングサブユニット(11.ij)のサブユニットの底面面積(Aij)は、所与のディグレーディングユニット(11.ij)の断面面積(Axij)と、所与のディグレーディングユニット内に外接したディグレーディングユニットの断面面積(Axi(j+1))との間の断面面積の差分(Axij-Axi(j+1))に等しく、ディグレーディングサブユニット(11.ij)の断面面積(Axij)は、ディグレーディングサブユニット(11.ij)の断面の外周内に含まれる対応するビーム軸(Xij)に垂直なオリフィスの断面面積である。
【0066】
図4(f)~図4(j)に示す代替的な実施形態では、ディグレーディングサブユニットは、並列構造で配置され得る。この実施形態では、ディグレーディングサブユニットは、図7(e)及び図7(g)のピンに関して示されたような(オリフィスによる対応する設計を想像することは容易である)2つのディグレーディングサブユニット間に空間なしの状態又は隣接する図4(f)及び図4(g)に示すような2つのディグレーディングサブユニット間に空間がある状態の何れかで底面面積(Abi)内に並べて配置される。
【0067】
更なる代替的な実施形態では、ディグレーディングサブユニットは、直列構造及び並列構造の両方の混在構造で配置され得る。図7(h)及び図7(i)のピンに関して示されたこの構成では(オリフィスによる対応する設計を想像することは容易である)、3つ以上のディグレーディングサブユニット(11.ij)が直列及び並列の両方で配置され、1つ又は複数の構造が、対応するビーム軸(Xi)に沿って直列に整列された2つ以上のディグレーディングサブユニットによって形成され、任意選択で、1つ又は複数の個々のディグレーディングサブユニットが底面面積(Abi)内に並べて配置される。
【0068】
本実施形態は、支持ベース(11b)を形成するブロックを機械加工若しくはエッチングするか、又は三次元プリンティング技法によって形成することにより、特に製造が容易である。ビーム(100.i)の最大フルエンスがビーム軸(Xi)にあることを考えると、フルエンスのガウス分布の最大値においてビーム軸(Xi)と交差するディグレーディングサブユニット(11.ij)の製造誤差は周辺位置における場合よりも重要である。ピンではなくオリフィスを使うことには、ブラッグピークに割り当てられる重みがスポットのフルエンスと一致するという利点がある。実際、より大きい飛程を有するブラッグピークは、通常、治療計画においてより大きい重み(ωij)を有するブラッグピークである。したがって、対応するサブユニット(すなわち最短の長さLiを有するサブユニット)をビームの最高フルエンスの位置(すなわち中心)に配置し得る。加えて、最長の長さLiを有するサブユニットは、通常重みが小さいブラッグピーク(最短の飛程のブラッグピーク)に対応し、したがって断面が小さい。したがって、サブユニットは、最小のフルエンスを有するスポットの領域に配置されると都合がよい。オリフィスを厳しい公差で形成することは、所望の効果を得るために必要な長さ(Lij)の細いピンを同じ公差で形成することより容易である。最長の長さ(Lij)のディグレーディングサブユニットをオフセットすることは、製造におけるわずかな逸脱の重みを減らすことにも寄与し得る。
【0069】
分かりやすくするために、図4(a)~図4(e)は、3つのディグレーディングサブユニット(11.ij)で形成されるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を示し、図7(b)は、2つのディグレーディングサブユニット(11.ij)のみで形成されるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を示す。より滑らかなSOBPプラトーを得るために、ディグレーディングサブユニットの数(N)は、実際には、より多くなり得ることは明らかである。図6(a)~図6(c)は、3個、6個及び「無限数」のディグレーディングサブユニット(11.ij)を備える同様のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を示し、無限数の場合には切頂三角錐オリフィスが形成される。図6(a)~図6(c)のすべてのオリフィスは、開口部面積(Axi1)及び底部面積(Axi3)を有し、長さ(Lsi3)のオリフィスである(記号の意味については、図4(a)~図4(e)を参照されたい)。
【0070】
図4(c)~図4(e)では、各ディグレーディングサブユニットが別々に示されており、その全体が一般化中空円筒を形成し、それらが互いに嵌め合わされて図4(b)のディグレーディングサブユニットを形成する。実際には、図4(b)のディグレーディングサブユニット(11.ij)は、支持ベース(11b)を機械加工若しくはエッチングしてオリフィスを形成するか、又は三次元プリンティング技法によって対応するオリフィスと共にリッジフィルタを形成することによって製造され得る。
【0071】
ディグレーディングユニット(11.i)がピンである場合
図5(a)~図5(e)、図7(a)、図7(e)及び図7(f)に示す代替的な実施形態では、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、スポット(Si)の配列に従って並べて配置され、ビーム軸(Xi)に沿って測定される厚さ(Bi)の支持ベース(11b)上で支持されたピンの形態である。各ピンは、対応するビーム軸(Xi)に沿って支持ベースから延びる。各エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、断面面積(Axij)の一般化円筒ジオメトリを有し、且つ対応するビーム軸(Xi)に沿って支持ベースから、Lij=Bi+Lsijであるような長さ(Lsij)にわたって延びる1つ又は複数のディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)によって形成される。ディグレーディングサブユニット(11.ij、11.i3、11.i2、11.i1)は、ビーム(100.i)の直径(D100)よりわずかに大きいか又はそれと等しい直径以内となるように、且つサブユニットの底面面積(Aij)の和が底面面積(Abi)に等しくなる(すなわち、
)ように構成される。
【0072】
図5(a)~図5(e)及び図7(a)に示す好ましい実施形態では、ディグレーディングサブユニット(11.ij)は、直列に配置される。この構造では、ディグレーディングサブユニットは対応するビーム軸(Xi)に沿って、長さ(Lsij)が減少する順に整列される。ディグレーディングサブユニットは、好ましくは、同軸に且つ最長の長さ(Lsi1)を有するピンが中央位置に配置される状態で配置される。
【0073】
ディグレーディングサブユニット(11.ij)が同心円状に配置される実施形態では、所与のディグレーディングサブユニット(11.ij)のサブユニットの底面面積(Aij)が、所与のディグレーディングユニット(11.ij)の断面面積(Axij)と、所与のディグレーディングユニット内に外接したディグレーディングユニットの断面面積(Axi(j-1))との間の断面面積の差分(Axij-Axi(j-1))に等しい。換言すれば、有限の数N個のディグレーディングサブユニット(11.ij)については、ピンが階段状の角錐の形状である(図4(b)~図4(e)を参照されたい)。所与のディグレーディングサブユニット(11.ij)の面積(Aij)は、所与のディグレーディングサブユニット(11.ij)より小さい寸法の次のディグレーディングサブユニット(11.i(j+1))を囲む所与のディグレーディングサブユニット(11.ij)によって形成される階段の踏面(又はフランジ)の面積である。
【0074】
図5(f)~図5(j)、図7(e)及び図7(g)に示す代替的な実施形態では、ディグレーディングサブユニットは、並列構造で配置され得る。この実施形態では、ディグレーディングサブユニットは、図7(e)及び図7(g)に示すような2つのディグレーディングサブユニット間に空間なしの状態又は隣接する図5(f)及び図5(g)に示すような2つのディグレーディングサブユニット間に空間がある状態の何れかで底面面積(Abi)内に並べて配置される。例えば、図7(e)及び図7(g)に示す実施形態では、ディグレーディングサブユニットは並べて配置され、最長のディグレーディングサブユニットが、対応するビーム軸(Xi)に対してオフセットされることが好ましい。このようにして、最長のディグレーディングユニットは、重みの小さいビーム(100.i)の一部分に面し、したがって、断面領域(Aij)を大きくすることができ、これによりエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の製造が容易になる。同じ構成は、上で論じたオリフィスの形態におけるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)にも適用することができる。
【0075】
更なる代替的な実施形態では、3つ以上のディグレーディングサブユニットが、直列構造及び並列構造の両方の混在構造で配置され得る。図7(h)及び図7(i)に示すこの構成では、3つ以上のディグレーディングサブユニット(11.ij)が直列及び並列の両方で配置され、1つ又は複数の構造が、対応するビーム軸(Xi)に沿って直列に整列された2つ以上のディグレーディングサブユニットによって形成され、任意選択で、1つ又は複数の個々のディグレーディングサブユニットが底面面積(Abi)内に並べて配置される。
【0076】
分かりやすくするために、図5(a)~図5(e)及び図7(f)は、3つのディグレーディングサブユニット(11.ij)で形成されるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を示し、図7(a)及び図7(e)は、2つのディグレーディングサブユニット(11.ij)のみで形成されるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を示す。より滑らかなSOBPプラトーを得るために、ディグレーディングサブユニットの数(N)は、実際には、より多くなり得ることは明らかである。図5(b)、図6(d)及び図6(e)に示すように、ピンの形態のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、3個、6個及び「無限数」のディグレーディングサブユニット(11.ij)などの任意の数を備えることができ、無限数の場合には切頂円錐を形成する(図6(e)を参照されたい)。ディグレーディングサブユニット(11.ij)の数Nに関わらず、すべてのピンは、底面面積(Ai1)及び先端面積(Ai3)を有し、長さ(Lsi3)のピンである(記号の意味については、図5(a)~図5(e)を参照されたい)。
【0077】
図5(c)~図5(e)では、各ディグレーディングサブユニットが別々に示されており、その全体が、それらが互いに嵌め合わされて図5(b)のディグレーディングサブユニットを形成する。実際には、図5(b)のディグレーディングサブユニット(11.ij)は、好ましくは支持ベース(11b)を備えたモノリシックエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を機械加工、エッチング若しくは三次元プリンティングするか、又は各ディグレーディングサブユニット(11.ij)を個別に機械加工、エッチング若しくは三次元プリンティングし、それらを組み付けてエネルギーディグレーディングユニット(及び支持ベース(11b))を形成することにより製造され得る。最も好ましくは、リッジフィルタ全体がモノリシックに生産される(すなわち組み立て工程を必要としない)。
【0078】
異なる材料で作られたディグレーディングユニット(11.i)
図7(c)及び図7(d)に示す第3の実施形態では、上で論じた空洞又はピンの形態のエネルギーディグレーディングユニットの上記の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせることができ、第1のエネルギーディグレーディングユニット(11.1)の少なくとも第1のディグレーディングサブユニット(11.11)が、第1のエネルギーディグレーディングユニット(11.1)又は第2のディグレーディングユニット(11.2)の第2のディグレーディングサブユニット(11.ij)の第2の材料と異なる第1の材料で作られる。第1の材料は、第2の材料から作られる対応する第1のエネルギーサブユニット(11.11)の長さと比べて、第1のディグレーディングサブユニット(11.11)の長さ(L11=W11/Wu)の値を変化させる、好ましくは減少させるために、第2の材料と異なる、単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)の値を有する。
【0079】
図7(c)は、同心円状に配置された第1のディグレーディングサブユニット(11.i1)及び第2のディグレーディングサブユニット(11.i2)を備える一実施形態を示す。第2のディグレーディングサブユニット(11.i2)は環状の第1のディグレーディングサブユニット(11.i1)内に囲まれる。第1のディグレーディングサブユニット(11.i1)は、第2のディグレーディングサブユニット(11.i2)を形成する材料よりも高い単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)を有する第1の材料で作られる。このことから、ビーム軸(Xi)に沿って測定される長さ(Li1=Li2)が同じである場合、第1のディグレーディングサブユニット(11.i1)はビームからより多くのエネルギーを吸収し、第2のディグレーディングサブユニット(11.i2)を横切るセルの水等価厚(di2)より低い、より小さいセルの水等価厚(di1<di2)のセルへブラッグピークをシフトさせる。
【0080】
図7(d)も同様の構成を示すが、第1のディグレーディングサブユニット(11.i1)が、第2のディグレーディングサブユニット(11.i2)が作られる第2の材料よりも単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)の値が高い第1の材料で作られ、第2のディグレーディングサブユニット(11.i2)に囲まれて中央に位置する。その結果、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)の中心に位置する第1のディグレーディングサブユニット(11.i1)を横切る一部のビームのブラッグピークが生じる深さ(di1<di2)は、ビーム軸(Xi)に沿って測定される長さ(Li1=Li2)と同じである第2のディグレーディングサブユニット(11.i2)を横切る割合より低くなる。図7(c)及び図7(d)のディグレーディングサブユニット(11.i1、11.i2)は、同心円状に配置される。例えば並べて配置するなど、他の構成も可能であることは明らかである。同じ長さLi1=Li2を有することも最適化された状況である。単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)の値の全範囲にわたって連続的に材料を選択することはできないため、必要なセルの水等価厚(dij)が得られると同時に同じ長さ(Lij)を有する材料を選択することは困難である。しかしながら、材料を変えることにより、ディグレーディングサブユニット間の高さの差を減らし、よりコンパクトで堅牢なエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を実現できる。
【0081】
異なる単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)を有する異なる材料を組み合わせるこの実施形態は、最長のディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)を短くし、最短のディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さを長くするように、空洞状及びピン状の両方のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)に適用されて、より短いリッジフィルタ(11)を得ることができ、且つ公差観点において生産を容易にするが、生産に最も適した寸法を選択することができる。
【0082】
例えば、各ディグレーディングサブユニットの材料の選択は、第1のディグレーディングサブユニットの長さ(L11)を第2のディグレーディングサブユニットの長さ(Lij)の±20%以内に収めることなどを目的とし得る。好ましくは、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)のすべてのディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)は、平均長さ(Lm,ij)の±20%のばらつき以内で同じ長さ(Lij)を有する(すなわちLij=Lm,ij±20%∀j)。このようにして、コンパクトなリッジフィルタを得ることができる。
【0083】
リッジフィルタ(11)及びリッジフィルタ(11)を備える粒子加速器
図3(c)に示すように、リッジフィルタ(11)が、支持ベース(11b)上に並べて配置された複数のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)によって形成される。個々のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の位置は、対応するスポット(Si)の位置に対応し、その向きは対応するビーム軸(Xi)に平行である。
【0084】
図1(a)、図1(b)、図3(a)及び図3(e)では、すべてのビーム軸(Xi)が互いに平行に表されている。これは、すべてのビーム軸(Xi)はノズルにおけるスキャニング電磁石の中心の同じ点から出発し、治療体積(V)を特徴付けるすべてのスポット(Si)をスキャンするように逸れるため、正確には正しくない。このことは図3(b)、図3(d)及び図3(f)に表されており、分かりやすくするために偏角は誇張されている。すべてのビーム軸(Xi)を囲む円錐の開口部角度は、スキャニング磁石と治療体積(V)との間の距離及び治療体積(V)のサイズに依存する。図3(b)は、図3(a)の図に対応する照射システムの図を、ビームのスキャニング効果を考慮してビーム軸が平行からずれている状態で示す。図3(b)では、開口部角度が誇張されている。図3(c)は、支持ベース(11b)からピンが突出し、互いに平行からずれている対応するリッジフィルタ(11)を示す。図3(d)は、支持ベース(11b)における対応する2つのオリフィスによって形成された2つのエネルギーディグレーディングユニットを示す。ここでも、分かりやすくするために、開口部の角度を誇張してある。
【0085】
実際には、開口部角度は照射軸(X)から概ね±5°以内、好ましくは±3°以内、より好ましくは±1°以内にある。この理由のため、厳密には正しくないが、図面の中でビーム軸(Xi)を互いに平行に表現することは、許容可能な現実を単純化したものである。
【0086】
図3(e)及び図3(f)は、いくつかの部分体積(Vi)を含む治療体積(V)の同様の立方体要素を示す。部分体積(V1、V4及びV5)は、対応するセル(Cij、i=1、4及び5、j=1~4)の位置を示す切断側面図において示されている。図3(e)では、部分体積(Vi)は、互いに(略)平行に、且つ照射軸(X)に(略)平行に延び、図3(f)では、部分体積は、発散するビーム軸(Xi)に沿って延びる(ここでも、開口部角度は分かりやすくするために誇張してある)。
【0087】
対応するビーム軸(Xi)に沿って測定される最長の長さ(Li1)のディグレーディングサブユニット(11.i1)は、より短いディグレーディングサブユニットよりもビーム(100.i)のエネルギーを多く吸収する。したがって、最長のディグレーディングサブユニット(11.i1)により、患者の皮膚(3s)の最も近くのブラッグピークの位置を規定する最短のセルの水等価厚(di1)が決定される。ディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)が短くなるにつれて、患者の皮膚(3s)から最も離れたブラッグピークのセルの水等価厚(diN)を決定する最短の長さ(LiN)の最短のディグレーディングサブユニット(11.iN)まで、対応するセルの水等価厚(dij)は増加する。すべてのブラッグピークの重ね合わせが、治療計画に従わなければならないSOBPを形成する(図4(a)~図4(e)及び図5(a)~図5(e)を参照されたい)。各ディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)は、上で論じたように、Lij=Wij/Wu=(W0-dij)/Wuとして容易に決定することができる(図2(b)を参照されたい)。
【0088】
各ディグレーディングサブユニット(11.ij)の面積(Aij)は、それぞれのセルの水等価厚(dij)における対応するセルに所定の線量(Dij)を付与するために必要な数の荷電粒子をもたらすように寸法を定められなければならない。ディグレーディングサブユニット(11.ij)の面積(Aij)の値を決定するために式(1)が用いられる。
【0089】
式(1)では、正規化されたビーム重み(ωij)は、寸法を定められる面積(Aij)でビームフルエンス(F(y,z))の積分したものの正規化された値に等しい。面積(Aij)は境界を規定し、境界に沿って、式(1)の分子の積分が計算されるため、各ディグレーディングサブユニット(11.ij)について面積(Aij)を決定することができる。上で論じたように、個々のディグレーディングサブユニット(11.ij)の好ましい配置は、対応するエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を形成するように個々のディグレーディングサブユニット(11.ij)を同軸に組み付けることである(図4(a)~図4(e)及び図5(a)~図5(e)を参照されたい)。この直列での配置では、第1のディグレーディングサブユニット(11.ij)の面積(Aij)は、第1のディグレーディングサブユニット内に同軸に内接するディグレーディングサブユニット(11.i(j+1))の周囲に環状の段差を形成する環状の幾何学的形状を有する。図4(f)~図4(j)、図5(h)~図5(j))並びに図7(e)及び図7(g)に示すような並列での配置では、ディグレーディングサブユニット(11.ij)の面積(Aij)は各ディグレーディングサブユニットの底面における面積である。
【0090】
スポット(Si)の密な配列の場合、スポット(Si)はビーム(100.i)のフルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.8倍以下、好ましくは1.5倍以下の距離(ds)だけ互いに隔てられ、底面面積(Abi)を通過するビームのフルエンスが、体積(V)に内接する境界を規定する平面(Y,Z)jのすべての値にわたって一定であるように近似される。この構成により、式(1)の分子における積分を解くことが大幅に簡単になる。
【0091】
スポット(Si)の配列が比較的疎である場合、スポットは、ビーム(100.i)のフルエンス(Fi(y,z))の標準偏差(σ)の1.2倍超(すなわちds>1.2σ)、好ましくは1.5倍超の距離(ds)だけ互いに隔てられ、底面面積(Abi)を通過するビーム(100.i)のフルエンス(Fi(y,z))が、ガウス分布
であるように近似され、ここで、(yi,zi)は、(Y,Z)平面におけるスポット(Si)のフルエンスの最大値(Ai)の位置の座標であり、円形スポットの場合、σ=σ=σである。式(1)の分子における積分を解くことは、スポット(Si)の配列が密である場合(すなわちds<1.8σ又は<1.5σ)ほど簡単ではないが、少なくとも数値的に解くことができる。スポットが円形であり、σ=σ=σである場合、式(1)を解くことは簡単になる。
【0092】
結語
本明細書で提案された、治療体積(V)の単一層PBSペインティングのためのリッジフィルタ(11)を設計し、寸法を定める方法は、簡単で信頼性が高く、且つ再現性がある。空洞の形態のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の設計は、同心円状のディグレーディングサブユニット(11.ij)によって形成されたピンよりも製造公差に対してロバストであり、これは、ピンの場合、中心のディグレーディングサブユニット(11.i1)が、エネルギーディグレーディングユニット(11.i)全体の中で最も長いと同時に薄く、ピンの正確な製造がより複雑であるためである。積み重ねることなど、同心円状以外の構成も可能であり、この問題を軽減できる。最長の長さ(Lij)のディグレーディングサブユニット(11.ij)に対して単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)が高い材料を使用することも、細長いピンを正確に製造するという課題を軽減するための解決策である。
【0093】
ある治療計画を起点として、スポット(Si)の配列は、上述のように規定され、治療体積(V)が(スポットあたり1つの)部分体積(Vi)に分割され、部分体積(Vi)が適宜N個のセル(Cij)に分割され得る。セル(Cij)に付与されるべき線量(Dij)は、治療計画に基づいて決定される。
【0094】
リッジフィルタは、スポット(Si)が存在する数と同じ数のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を備えて設計される。各エネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、長さ(Lij)及び面積(Aij)を有するN個のディグレーディングサブユニット(11.ij)によって形成される。
【0095】
各ディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ(Lij)は、単位長さあたりのサブユニットの水等価厚(Wu)に対する所望のサブユニットの水等価厚(Wij)の比として計算される(すなわちLij=Wij/Wu)。サブユニットの水等価厚は、Wij=W0-dijとして規定され、W0は、最大ビーム飛程であり、dijは、対応するセル(Cij)の中心におけるブラッグピークの所望の位置である。長さ(Lij)は、すべてのエネルギーディグレーディングユニット(11.i)を支持する支持ブロック(11b)の厚さ(Bi)を考慮しなければならない。
【0096】
各ディグレーディングサブユニット(11.ij)の面積(Aij)は、式(1)の分子にある積分が計算される面積(Aij)を求めることによって得られる。この演算は数値的に実行され得る。
【0097】
個々のエネルギーディグレーディングユニット(11.i)は、それぞれのビーム軸(Xi)に沿って同軸に延びるように支持ブロック(11b)上に配置される。リッジフィルタは、ブロックの機械加工、支持ブロック(11b)への個々のピンの取り付け、三次元プリンティング技法などによって製造され得る。このようにして製造されたリッジフィルタ(11)は、荷電粒子の加速器の出口と治療体積(V)との間に、各部分体積(Vi)が対応するビーム軸(Xi)と同軸となるように設置され得る。単一層PBSペインティングによる照射を開始できる。
【0098】
本発明の方法によって設計されたリッジフィルタ(11)は、治療体積全体を単一ペインティング層でカバーすることができ、これにより各スライス(Tj)への線量(Dij)の付与に要するスキャニング時間が大幅に短縮されるため、PBSによって超高線量付与率(HDR)でセル(Cij)に線量(Dij)を付与させる必要がある治療体積(V)の少なくとも一部のFLASH照射を含む治療計画に特に適する。
【符号の説明】
【0099】
3s 皮膚
11 リッジフィルタ
11.i エネルギーディグレーディングユニット
11.ij ディグレーディングサブユニット
100.i ビーム
Abi ディグレーディングユニット(11.i)の底面面積(Abi)
Aij ディグレーディングサブユニット11.ijの底面面積
Axij ディグレーディングサブユニット(11.ij)の深さにおけるエネルギーディグレーディングユニット(11.i)の断面面積
Bi 照射軸(X)に沿った支持ブロックの厚さ
Cij セル
d0 最短水等価厚
d1 最遠水等価厚
dij セルの水等価厚
Dij 線量
F(y,z) ビームのフルエンス
Lij ビーム軸(Xi)に沿ったディグレーディングサブユニット(11.ij)の長さ
Lsij =Bi-Lij。空洞の形態のエネルギーディグレーディングユニット
Si スポット
Tj スライス
V 治療体積
Vi 部分体積
W0 最大ビーム飛程
Wu 単位長さあたりのサブユニットの水等価厚
X 照射軸
Xi ビーム軸
X、Y、Z 座標系
(Y,Z) 照射軸(X)に垂直な平面
(Y,Z)j スライスTjの上流にある平面
ωij スライスTjにおけるビーム100.iの重み

図1a
図1b-1d】
図2a-2b】
図3a-3d】
図3e-3f】
図4a-4e】
図4f-4j】
図5a-5e】
図5f-5j】
図6a-6e】
図7a-7i】
【外国語明細書】