(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074486
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】電気ケーブルを圧着するための方法および電気ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01R 43/28 20060101AFI20230522BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20230522BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20230522BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H01R43/28
H01R43/048 Z
H01B7/00 306
H01R4/18 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181576
(22)【出願日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】10 2021 129 999.3
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ ドゥ クロエ
(72)【発明者】
【氏名】ターゲイ イルマズ
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
5G309
【Fターム(参考)】
5E063CA10
5E063CC10
5E063XA01
5E085BB04
5E085CC03
5E085DD13
5E085EE05
5E085EE11
5E085JJ06
5E085JJ38
5G309FA04
5G309FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造不良のリスクを低減させ、電気ケーブルの信号伝送性能をほとんどまたはまったく低下させない、電気ケーブルを圧着するための費用効果の高い方法を提供する。
【解決手段】シールド編組6と、シールド編組6を囲む絶縁体8とを備える電気ケーブル1を圧着するための方法であって、所定の領域14で、絶縁体8は除去され、シールド編組6は露出され、内側圧着スリーブ18が、所定の領域14に隣接して絶縁体8に完全にまたは大部分が圧着された後に、シールド編組6の露出部分が、内側圧着スリーブ18上に少なくとも部分的に折り返される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド編組(6)と、前記シールド編組(6)を囲む絶縁体(8)とを備える電気ケーブル(1)を圧着するための方法であって、
所定の領域(14)で、前記絶縁体(8)は除去され、前記シールド編組(6)は露出され、
内側圧着スリーブ(18)が、前記所定の領域(14)に隣接して前記絶縁体(8)に圧着された後に、前記シールド編組(6)の露出部分が、前記内側圧着スリーブ(18)上に少なくとも部分的に折り返される、
方法。
【請求項2】
前記シールド編組(6)は、前記内側圧着スリーブ(18)を圧着した後に前記所定の領域(14)で露出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内側圧着スリーブ(18)は、前記電気ケーブル(1)に径方向に供給される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内側圧着スリーブ(18)は前記絶縁体(8)のみに着座される、または前記内側圧着スリーブ(18)の大部分が前記絶縁体(8)に着座される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シールド編組(6)は、外側圧着スリーブ(36)と前記内側圧着スリーブ(16)との間でクランプされる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電気ケーブル(1)であって、
シールド編組(6)と、
前記シールド編組(6)を囲む絶縁体(8)と
を備え、
所定の領域(14)で、前記絶縁体(8)は除去され、前記シールド編組(6)は露出され、
前記所定の領域(14)に隣接する内側圧着スリーブ(18)は、前記絶縁体(8)に完全にまたは大部分が圧着され、前記シールド編組の露出部分は、前記内側圧着スリーブ(18)上に少なくとも部分的に折り返されている、
電気ケーブル(1)。
【請求項7】
前記内側圧着スリーブ(18)は、圧着前の非変形状態で、2つの対向する圧着フランク(26)により径方向に開いている、
請求項6に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項8】
前記圧着フランク(26)は、圧着状態で少なくとも部分的に重なる、
請求項7に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項9】
前記内側圧着スリーブ(18)の外殻面(22)に、少なくとも1つの窓(32)が貫通している、
請求項6から8のいずれか一項に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項10】
圧着部(38)を有する外側圧着スリーブ(36)が、前記内側圧着スリーブ(18)に圧着され、前記圧着部(38)は、前記電気ケーブル(1)の前記絶縁体(8)に完全にまたは大部分が重なる、
請求項6から9のいずれか一項に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項11】
前記圧着フランク(26)に、圧着状態で互いに係合する、相互に相補的な形状嵌合要素(30)が設けられている、
請求項6から10のいずれか一項に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項12】
少なくとも一方の圧着フランク(26)がラグ(30)を含み、前記ラグ(30)は、圧着プロセス中に前記2つの圧着フランク(26)が衝突することを防ぐ、
請求項6から11のいずれか一項に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項13】
一方の圧着フランク(26)が形状嵌合要素(30)を含み、前記形状嵌合要素(30)は、圧着状態で、他方の圧着フランク(26)の相補的な窓(32)の縁部を取り囲む、
請求項9および11に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項14】
一方の圧着フランク(26)がラグ(30)を含み、前記ラグ(30)は、圧着プロセスの終了時に、圧着状態で、他方の圧着フランク(26)の前記相補的な窓(32)によって、両方の圧着フランク(26)を互いに位置合わせする、
請求項9および13に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項15】
キット(44)であって、
各々が電気導体(4)を含む少なくとも2本の電気ケーブル(1)を備え、
両方の電気ケーブル(1)のそれぞれの前記電気導体(4)は各々、異なる導体径(5)を有し、
前記電気ケーブル(1)の各々に、シールド編組(6)と、前記シールド編組(6)を囲む絶縁体(8)とが設けられ、
前記キット(44)は、少なくとも2つの同一構成の内側圧着スリーブ(18)をさらに備え、
大きい導体径(5)の前記ケーブル(1)の場合、前記少なくとも2つの同一構成の内側圧着スリーブ(18)のうちの一方は、前記絶縁体(8)から露出した前記電気ケーブル(1)の領域に圧着され、
小さい導体径(5)の前記電気ケーブル(1)の場合、前記少なくとも2つの同一構成の内側圧着スリーブ(18)のうちの他方は、前記絶縁体(8)に完全にまたは大部分が圧着されている、
キット(44)。
【請求項16】
少なくとも2つの同一構成の外側圧着スリーブ(36)を備え、前記外側圧着スリーブ(36)は、それぞれの前記内側圧着スリーブ(36)に少なくとも部分的に圧着されている、
請求項15に記載のキット(44)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルを圧着するための方法および電気ケーブルに関する。さらに、本発明はキットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気ケーブルは、個々のデバイス間でエネルギーまたは情報を伝送するために、多数の技術分野で使用されている。同軸ケーブルは、内側導体と同心の外側導体とから構成される特別なタイプの電気ケーブルである。通常、外側導体はシールド編組から構成され、干渉場に対してシールドするように機能する。誘電体が、内側導体と外側導体との間に位置している。シールド編組に加えて、外側導体は、シールド特性を向上させるためにシールドフィルムを含むことができる。
【0003】
電気ケーブルを電気機器に接続するために、通常、電気ケーブルに電気コンタクトが設けられている。このコンタクトは、ケーブルに圧着することができる。1つの可能性は、内側圧着スリーブ(いわゆる支持スリーブ)をケーブルの剥離領域に圧着することである。しかしながら、ここでの欠点は、内側スリーブを固定することにより、シールド編組の変形と、それによる誘電体の変形とが大きくなり得ることである。したがって、圧着高さの小さい変化により、ケーブルのインピーダンス応答が変化し、それにより信号伝送の品質が低下することがある。これにより、多数の不良品が生じるおそれがある。圧着高さの許容差が小さいことにより、ケーブル径ごとに専用の圧着スリーブを設ける必要もあるため、保管コストおよび製造コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の基本的な目的は、製造不良のリスクを低減させ、電気ケーブルの信号伝送性能をほとんどまたはまったく低下させない、電気ケーブルを圧着するための費用効果の高い方法を開発することである。さらに、本発明の目的は、信号伝送性能が向上した電気ケーブルを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明により、シールド編組と、シールド編組を囲む絶縁体とを備える電気ケーブルを圧着するための方法であって、所定の領域で、絶縁体は除去され、シールド編組は露出され、内側圧着スリーブが、所定の領域に隣接して絶縁体に圧着された後に、シールド編組の露出部分が、内側圧着スリーブ上に少なくとも部分的に折り返される、方法によって実現される。
【0006】
さらに、上記の目的は、電気ケーブルであって、シールド編組と、シールド編組を囲む絶縁体とを備え、所定の領域で、絶縁体は除去され、シールド編組は露出され、内側圧着スリーブが、所定の領域に隣接して絶縁体に圧着され、シールド編組の露出部分が、内側圧着スリーブ上に少なくとも部分的に折り返されている、電気ケーブルによって実現される。
【0007】
本発明は、内側圧着スリーブが、シールド編組に直接圧着されなくなり、絶縁体に圧着されるため、有利である。この場合、絶縁体は、シールド編組の変形と、それによる誘電体の変形とを防ぐまたは少なくとも減らす緩衝材として作用する。したがって、本発明により、信号伝送の品質を低下させないように、インピーダンスをより良好に制御することができる。したがって、対応する電気ケーブルは、従来の電気ケーブルと比較して信号伝送性能が向上している。別の利点は、圧着プロセスおよびその後のさらなる処理中の取扱いが容易であることに起因する。内側圧着スリーブを絶縁体に固定することにより、特に、内側圧着スリーブが滑らなくなるため、シールド編組を内側圧着スリーブ上に折り返すことがより容易になる。
【0008】
内側圧着スリーブを絶縁体に圧着する別の利点は、ケーブル径のばらつきをより良好に補償できることである。したがって、内側圧着スリーブおよび外側圧着スリーブを、異なる導体径を有する複数の電気ケーブルに使用することができる。各導体径専用の圧着スリーブを使用する必要がないため、製品コストおよび保管コストが大幅に削減される。
【0009】
例えば、内側圧着スリーブの決定的なケーブル径は、絶縁体によって増加するため、所定の導体径を有する電気ケーブル用の内側圧着スリーブを、より小さい導体径を有する電気ケーブルに使用することができるようになる。
【0010】
これは、上記の目的を同様に実現するキットにおいて反映される。キットは、各々が電気導体を含む少なくとも2本の電気ケーブルを備え、2本のケーブルのそれぞれの導体は各々、異なる導体径を有する。少なくとも2本の電気ケーブルのうちの各電気ケーブルに、それぞれ、シールド編組と、シールド編組を囲む絶縁体とが設けられている。キットは、少なくとも2つの同一構成の内側圧着スリーブをさらに備え、大きい径の電気ケーブルにおいて、少なくとも2つの内側圧着スリーブのうちの一方の内側圧着スリーブが、絶縁体から露出した電気導体の部分に圧着され、小さい径の電気ケーブルにおいて、少なくとも2つの内側圧着スリーブのうちの別の内側圧着スリーブが、絶縁体に圧着されている。
【0011】
以下で、上記の解決策のさらなる発展について説明する。これらの発展は、希望に応じて互いに独立して組み合わせることができ、別々に考慮するときは各々が有利である。
【0012】
例えば、内側圧着スリーブを、所定の領域に直接隣接して絶縁体に圧着することができる。したがって、シールド編組が絶縁体の外側に位置する移行領域を形成することなく、シールド編組の露出部分を、内側圧着スリーブ上に直接折り返すことができる。したがって、移行領域におけるシールド編組の望ましくない変形またはさらには損傷を防ぐことができる。
【0013】
特に、例示的な構成において、シールド編組の折返し部(bent-back portion)は、所定の領域から離れた内側圧着スリーブの端部において、長手方向に沿って内側圧着スリーブを越えて延びることはできない。シールド編組が内側圧着スリーブを略完全に覆うように、シールド編組の折返し部は、圧着スリーブの反対側端部と面一である(be level with)ことが好ましい。
【0014】
電気ケーブルは、特に、内側導体と、内側導体を囲む誘電体と、内側導体と同軸に配置された、シールド編組の形の外側導体とを備える同軸ケーブルであってよい。特に、内側導体はいくつかの導線から構成されていてよい。場合により、シールドフィルムをシールド編組と誘電体との間に設けて、シールド特性をさらに向上させることができる。
【0015】
好ましい構成によれば、内側圧着スリーブを電気ケーブルに径方向に供給することができる。したがって、所望の位置に到達するために、内側圧着スリーブを、電気ケーブル上に長手方向軸に沿って押す必要はない。内側圧着スリーブを径方向に供給することにより、内側圧着スリーブを電気ケーブルに迅速、正確、かつ容易に位置決めすることができる。
【0016】
このために、内側圧着スリーブは、非圧着状態で2つの圧着フランクにより開形状(open shape)を有することができ、これらの圧着フランクは圧着状態で閉リングを完成させる。例えば、圧着フランクは、圧着状態で少なくとも部分的に重なることができる。開圧着スリーブとしての構成は、ケーブル径の変化を開圧着スリーブによってより良好に補償することができるため、電気ケーブル上に長手方向に押される閉圧着スリーブと比較して有利である。したがって、圧着中の許容差が大きくなり、内側圧着スリーブを、異なるケーブル径を有する電気ケーブルに使用することができる。例えば、圧着状態で圧着フランクを重ねることによって、ケーブル径の変化を補償することができる。
【0017】
特に好ましい構成によれば、内側圧着スリーブを絶縁体に配置する前に、絶縁体に直接隣接する所定の領域の少なくとも一部を剥離することができる。これにより、所定の領域に向く絶縁体の縁部が、所定の領域に向く内側圧着スリーブの端面を越えて突出しないことを確実にする。
【0018】
内側圧着スリーブの自由端が、所定の領域の方向に絶縁体を越えて延びることができると好ましい。したがって、圧着スリーブの自由端は、所定の領域に少なくとも部分的に重なる。自由端は、絶縁体を最小限にのみ越えて突出することができると好ましい。したがって、所定の領域に重なる内側圧着スリーブの部分は、内側圧着スリーブの全長の1/10以下であってよい。あるいは、内側圧着スリーブの端面が、絶縁体と同一平面にあってもよい。
【0019】
内側圧着スリーブが絶縁体を越えて突出し過ぎることを防ぐ場合、内側圧着スリーブを取り付ける前に剥離される所定の領域の部分を制限することができる。例えば、特に、内側圧着スリーブを圧着する前後に、電気ケーブルを所定の領域で部分的に剥離することができる。
【0020】
特許請求される方法は、特に、電気ケーブルを圧着するための中間ステップに関していてよい。したがって、方法は、電気ケーブルを処理するための方法に関する。特許請求される電気ケーブルは、特に、さらに処理することができる中間製品(intermediate product)であってよい。
【0021】
例えば、外側圧着スリーブを、電気ケーブルに圧着するように設けることができる。特に、外側圧着スリーブは、シールド編組の折返し部を、外側圧着スリーブと内側圧着スリーブとの間でクランプすることができる。
【0022】
特に好ましい構成によれば、外側圧着スリーブは、好ましくはケーブルの絶縁体に完全に重なる圧着領域を有することができる。ここでも、絶縁体が緩衝材として機能し、シールド編組の望ましくない変形、特に、誘電体の望ましくない変形を抑制することが有利である。
【0023】
外側圧着スリーブを内側圧着スリーブに圧着することができる。
【0024】
絶縁体の材料が内側圧着スリーブの前後で長手方向に変位して、径方向に突出する隆起を形成することを防ぐために、内側圧着スリーブに、周面に沿って少なくとも1つの窓が貫通していてよい。これにより、絶縁体の材料をより均一に分散させることができ、隆起状突起を防ぐことができる。
【0025】
以下で、添付図面を参照しながら、実施形態によって本発明をより詳細に説明する。図中、構造および/または機能に関して互いに対応する要素は、同じ参照符号で示す。
【0026】
個々の実施形態で図示し説明する特徴の組合せは、説明のためのものに過ぎない。上記の説明に従って、実施形態の特徴の技術的効果が特定の適用に重要でない場合には、その特徴を省略することができる。逆に、上記の説明に従って、さらなる特徴の技術的効果が特定の適用に有利であるまたは必要である場合には、その特徴を実施形態に追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による電気ケーブルの例示的な構成の概略断面図である。
【
図2b】内側圧着スリーブが絶縁体に圧着されている状態の、電気ケーブルの概略断面図である。
【
図2c】剥離領域を有する、
図2bによる電気ケーブルの概略断面図である。
【
図2d】シールド編組が内側圧着スリーブ上に折り返されている状態の、
図2cによる電気ケーブルの概略断面図である。
【
図3a】大きい導体径を有する、キットの電気ケーブルの概略断面図である。
【
図3b】小さい導体径を有する、キットの電気ケーブルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、電気ケーブル1の例示的な構成の概略断面図である。特に、電気ケーブル1は、さらに処理することができる中間製品2であってよい。
【0029】
電気ケーブル1は、ケーブル長手方向軸Lに沿って延びることができ、ケーブル径Dを有する。ケーブル1は、導体径5を有する中心電気導体4と、導体4を囲むシールド編組6と、シールド編組6を囲む絶縁体8とを有する。
【0030】
誘電体10を導体4とシールド編組6との間に配置することができる。場合により、シールドフィルム(図示せず)をシールド編組6と誘電体10との間に設けてもよい。
【0031】
電気ケーブル1の自由端12において、電気ケーブル1を剥離して、所定の領域でシールド編組6に外側からアクセスできるようにすることができる。自由端12から離れた側の、ケーブル長手方向軸Lに沿って所定の領域14に隣接する部分16で、内側圧着スリーブ18が、いわゆる支持スリーブ20として絶縁体8に圧着される。
【0032】
露出したシールド編組6は、内側圧着スリーブ18上に折り返され、内側圧着スリーブ18を覆う。
【0033】
内側圧着スリーブ18が圧着によって絶縁体に固定されるため、電気ケーブルのさらなる処理を容易にすることができる。例えば、シールド編組を折り返すときに、内側圧着スリーブの位置決めにさらに注意を払う必要がなくてよい。絶縁体8は、圧着中にシールド編組6および/または導体4の変形に抵抗する緩衝材として作用する。したがって、内側圧着スリーブ18を絶縁体8に圧着すると、より良好なインピーダンス制御が提供され、電気ケーブル1の信号伝送性能が向上する。
【0034】
さらに、電気ケーブル1のインピーダンスに影響を与えることなく、ケーブル径または内側圧着スリーブのばらつきを絶縁体の弾性によって補償することができる。
【0035】
内側圧着スリーブ18が所定の領域に直接隣接することが好ましい。これにより、シールド編組が絶縁体に位置するが内側圧着スリーブ18には位置しない移行領域を防ぐ。
【0036】
内側圧着スリーブ18の安定した嵌合を確実にする場合、内側圧着スリーブ18の大部分を絶縁体8に着座させることができる。内側圧着スリーブ18の自由端は、所定の領域14の方向に絶縁体8を越えて突出することができる。
【0037】
シールド編組6は、径方向外方を向く内側圧着スリーブの外殻面22を実質的に覆うことができる。特に、シールド編組6は、外殻面22を完全に覆うことができる。
【0038】
次に、
図2a~
図2dを参照しながら、電気ケーブルを圧着するための方法の例示的な構成について説明する。
【0039】
図2aにおいて、電気ケーブル1は初期状態24で示され、すなわち、内側圧着スリーブ18はまだケーブル1に取り付けられていない。さらに、初期状態24における電気ケーブル1の絶縁体8は、所定の領域14でシールド編組6を少なくとも部分的にまだ覆っていてよい。内側圧着スリーブが圧着された後に、所定の領域の方向を向く絶縁体の縁部が内側圧着スリーブの端面を越えて突出することを防ぐことを意図する場合、内側圧着スリーブを絶縁体に配置する前に、少なくとも絶縁体に直接隣接する所定の領域の部分を剥離することができる。
【0040】
内側圧着スリーブ18を電気ケーブル1に、特に径方向に供給することができる。したがって、内側圧着スリーブ18を、電気ケーブル1の任意の位置に容易に嵌合させることができる。内側圧着スリーブ18を、電気ケーブル1上にケーブルの長手方向軸に沿って押す必要はない。内側圧着スリーブの径方向の供給を可能にするために、内側圧着スリーブ18を開圧着スリーブとして構成することができる。したがって、
図2aに示す非圧着状態で、内側圧着スリーブ18は、2つの圧着フランク26により開形状を有し、これらの圧着フランク26は、共通のベース28により一端部で互いに接続され、ベースから離れる方を向く自由端が互いに離間している。特に、圧着フランクの自由端間の距離は、ケーブル径Dよりも大きくてよい。
【0041】
圧着フランク26の自由端に、相補的な形状嵌合要素30、例えば、ロックラッチおよびラッチレセプタクルを設けることができ、これらは圧着時に互いに係合することができる。ロックラッチは、圧着プロセス中に反対側の圧着フランクをより良好に捕えて、圧着フランク間の衝突を避けるように機能することができる。
【0042】
内側圧着スリーブ18が絶縁体の周りに圧着されると、圧着フランク26は、形状嵌合を行い、絶縁体に密着する(nestle against)。ここでの好ましい特徴は、圧着フランクの重なりを個々に調節することができるため、圧着高さを決定することによってケーブル径の変化を補償できることである。その結果、製造中により高い許容差が可能になり、不良品の数を大幅に減らすことができる。さらに、同一構成の圧着スリーブを、所定のケーブル径範囲を有する電気ケーブルに使用することができる。
【0043】
内側圧着スリーブ18を絶縁体に圧着すると、絶縁体の材料変位が生じることがある。内側圧着スリーブ18の前後でケーブル長手方向Lに材料が隆起状に蓄積することを減らすまたはさらには防ぐために、内側圧着スリーブ18に、外殻面に沿って少なくとも1つの窓32が貫通していてよい。各圧着フランク26がそれぞれの窓32を有することができると好ましい。これにより、絶縁体8の変位した材料をより均一に分散させることができる。
【0044】
特に好ましい構成によれば、圧着フランクのうちの少なくとも一方が、形状嵌合要素30としてラグを有することができ、ラグは、圧着プロセス中の圧着フランク間の衝突を避け、したがって、他方の圧着フランクのガイド要素として機能する。圧着状態で、ラグは、必要に応じて、他方の圧着フランクの窓32に係合することにより、圧着フランクを互いに位置合わせすることができる。
【0045】
圧着スリーブ18が絶縁体8に固定された後、
図2cに示すように、圧着スリーブ18に隣接する部分で、ケーブル長手方向軸Lに沿って自由端12に向かう方向に延びる部分において、残りの絶縁体8を除去することができる。したがって、シールド編組6は所定の領域14で完全に露出される。当然、内側圧着スリーブ18が絶縁体8に圧着される前に、シールド編組6を所定の領域14で完全に露出させてもよい。
【0046】
図2dに、シールド編組6の露出部分が内側圧着スリーブ18上に約180°折り返されて、シールド編組6が内側圧着スリーブ18を覆い、
図1を参照して説明した電気ケーブル1が得られる様子が示されている。
【0047】
方法は、特に、電気ケーブル1を圧着するための中間ステップであってよい。したがって、電気ケーブル1は、さらなる方法ステップによりってさらに処理することができる中間製品である。
【0048】
したがって、導体4を自由端12で露出させ、コンタクト34(
図3b参照)、例えば圧着コンタクトに接続することができる。コンタクトは、特定の導体径5に合わせて構成されていてよい。
【0049】
さらに、圧着部38を有する外側圧着スリーブ36(
図3b参照)を設けることができ、この圧着部38により、外側圧着スリーブ36は、内側圧着スリーブ18に少なくとも部分的に圧着されている。その結果、内側圧着スリーブ18上に折り返されたシールド編組6の部分を、内側圧着スリーブ18と外側圧着スリーブ38との間でクランプすることができる。したがって、外側圧着スリーブは、シールド編組6に接触することができ、それにより、シールドコンタクトとして機能する。
【0050】
圧着部38を、ワイヤ圧着部40と絶縁体圧着部42とに分割することができる。ワイヤ圧着部40は、特に、長手方向軸Lに沿って内側圧着スリーブ18に完全に重なることができる。絶縁体圧着部42は、内側圧着スリーブ18に対して自由端12から離れる方を向く側で、絶縁体8の周りに直接圧着することができる。
【0051】
この方法により、大きい導体径5を有する電気ケーブル1用に設けられた内側圧着スリーブ18および外側圧着スリーブ36の両方を、小さい導体径5を有する電気ケーブル1に使用することが可能になる。
【0052】
これは、
図3aおよび
図3bを用いてより詳細に説明するキット44において反映される。
【0053】
キット44は、大きい導体径5を有する電気ケーブル1(
図3a)と、小さい導体径5を有する電気ケーブル1(
図3b)とを備える。一般的に、ケーブル径Dに合わせて特に構成された内側圧着スリーブ18および/または外側圧着スリーブ36が、電気ケーブル1ごとに必要である。
【0054】
しかしながら、キット44では、同一構成の少なくとも2つの内側圧着スリーブ18が設けられている。少なくとも2つの内側圧着スリーブ18のうちの一方の内側圧着スリーブ18を、大きい導体径5を有する電気ケーブル1の絶縁体8から露出した電気ケーブル1の領域に圧着することができる。少なくとも2つの内側圧着スリーブ18のうちの他方の内側圧着スリーブ18を、小さい導体径5を有する電気ケーブル1の絶縁体8に圧着することができる。
【0055】
さらに、キット44は、対応する内側圧着スリーブ18の周りに各々圧着された、少なくとも2つの同一構成の外側圧着スリーブ36を備えることができる。
【0056】
内側圧着スリーブの少なくともある長さ部分(長さは内側圧着スリーブの全長の少なくとも50%に対応する)が絶縁体8に着座される場合、内側圧着スリーブ18の大部分または最大部分が絶縁体8に着座される。内側圧着スリーブ18の大部分が絶縁体8に圧着される場合にも同じことが当てはまる。圧着部38の大部分が絶縁体8に重なる場合にも同じことが当てはまる。
【符号の説明】
【0057】
1 電気ケーブル
2 中間製品
4 電気導体
5 導体径
6 シールド編組
8 絶縁体
10 誘電体
12 自由端
14 所定の領域
16 部分
18 内側圧着スリーブ
20 支持スリーブ
22 外殻面
24 初期状態
26 圧着フランク
28 ベース
30 形状嵌合要素
32 窓
34 コンタクト
36 外側圧着スリーブ
38 圧着部
40 ワイヤ圧着部
42 絶縁体圧着部
44 キット
D ケーブル径
L ケーブル長手方向軸
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド編組(6)と、前記シールド編組(6)を囲む絶縁体(8)とを備える電気ケーブル(1)を圧着するための方法であって、
所定の領域(14)で、前記絶縁体(8)は除去され、前記シールド編組(6)は露出され、
内側圧着スリーブ(18)が、前記所定の領域(14)に隣接して前記絶縁体(8)に圧着された後に、前記シールド編組(6)の露出部分が、前記内側圧着スリーブ(18)上に少なくとも部分的に折り返される、
方法。
【請求項2】
前記シールド編組(6)は、前記内側圧着スリーブ(18)を圧着した後に前記所定の領域(14)で露出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内側圧着スリーブ(18)は、前記電気ケーブル(1)に径方向に供給される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記内側圧着スリーブ(18)は前記絶縁体(8)のみに着座される、または前記内側圧着スリーブ(18)の大部分が前記絶縁体(8)に着座される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シールド編組(6)は、外側圧着スリーブ(36)と前記内側圧着スリーブ(18)との間でクランプされる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電気ケーブル(1)であって、
シールド編組(6)と、
前記シールド編組(6)を囲む絶縁体(8)と
を備え、
所定の領域(14)で、前記絶縁体(8)は除去され、前記シールド編組(6)は露出され、
前記所定の領域(14)に隣接する内側圧着スリーブ(18)は、前記絶縁体(8)に完全にまたは大部分が圧着され、前記シールド編組の露出部分は、前記内側圧着スリーブ(18)上に少なくとも部分的に折り返されている、
電気ケーブル(1)。
【請求項7】
前記内側圧着スリーブ(18)は、圧着前の非変形状態で、2つの対向する圧着フランク(26)により径方向に開いている、
請求項6に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項8】
前記圧着フランク(26)は、圧着状態で少なくとも部分的に重なる、
請求項7に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項9】
前記内側圧着スリーブ(18)の外殻面(22)に、少なくとも1つの窓(32)が貫通している、
請求項6から8のいずれか一項に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項10】
圧着部(38)を有する外側圧着スリーブ(36)が、前記内側圧着スリーブ(18)に圧着され、前記圧着部(38)は、前記電気ケーブル(1)の前記絶縁体(8)に完全にまたは大部分が重なる、
請求項6から8のいずれか一項に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項11】
前記圧着フランク(26)に、圧着状態で互いに係合する、相互に相補的な形状嵌合要素(30)が設けられている、
請求項7または8に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項12】
前記2つの対向する圧着フランク(26)のうちの少なくとも一方がラグ(30)を含み、前記ラグ(30)は、圧着プロセス中に前記2つの対向する圧着フランク(26)が衝突することを防ぐ、
請求項7または8に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項13】
前記2つの対向する圧着フランク(26)のうちの一方が形状嵌合要素(30)を含み、前記形状嵌合要素(30)は、圧着状態で、前記2つの対向する圧着フランク(26)のうちの他方の相補的な窓(32)の縁部を取り囲む、
請求項11に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項14】
前記2つの対向する圧着フランク(26)のうちの前記一方がラグ(30)を含み、前記ラグ(30)は、圧着プロセスの終了時に、圧着状態で、前記2つの対向する圧着フランク(26)のうちの前記他方の前記相補的な窓(32)によって、両方の前記圧着フランク(26)を互いに位置合わせする、
請求項13に記載の電気ケーブル(1)。
【請求項15】
キット(44)であって、
各々が電気導体(4)を含む少なくとも2本の電気ケーブル(1)を備え、
両方の電気ケーブル(1)のそれぞれの前記電気導体(4)は各々、異なる導体径(5)を有し、
前記電気ケーブル(1)の各々に、シールド編組(6)と、前記シールド編組(6)を囲む絶縁体(8)とが設けられ、
前記キット(44)は、少なくとも2つの同一構成の内側圧着スリーブ(18)をさらに備え、
大きい導体径(5)の前記電気ケーブル(1)の場合、前記少なくとも2つの同一構成の内側圧着スリーブ(18)のうちの一方は、前記絶縁体(8)から露出した前記電気ケーブル(1)の領域に圧着され、
小さい導体径(5)の前記電気ケーブル(1)の場合、前記少なくとも2つの同一構成の内側圧着スリーブ(18)のうちの他方は、前記絶縁体(8)に完全にまたは大部分が圧着されている、
キット(44)。
【請求項16】
少なくとも2つの同一構成の外側圧着スリーブ(36)を備え、前記外側圧着スリーブ(36)は、それぞれの前記内側圧着スリーブ(36)に少なくとも部分的に圧着されている、
請求項15に記載のキット(44)。
【外国語明細書】