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特開2023-74487湾曲した輪郭を有するカンチレバーアームを備えたMEMS音響トランスデューサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074487
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】湾曲した輪郭を有するカンチレバーアームを備えたMEMS音響トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20230522BHJP
   H04R 1/20 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R1/20 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181731
(22)【出願日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】10 2021 130 035.5
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518063492
【氏名又は名称】ユーサウンド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】USOUND GMBH
【住所又は居所原語表記】Kratkystrasse 2, 8020 Graz (AT)
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ルスコーニ クレリチ ベルトラミ
(72)【発明者】
【氏名】フェルッチオ ボトーニ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ノボトニー
(72)【発明者】
【氏名】サム ホーヴァス
【テーマコード(参考)】
5D004
5D019
【Fターム(参考)】
5D004CD08
5D004DD01
5D004DD03
5D019AA09
5D019AA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】MEMS音響トランスデューサの性能を高め、製造コストならびに製造スクラップを低減させるMEMS音響トランスデューサを提供する。
【解決手段】MEMS音響トランスデューサ1は、キャビティ3の境界を少なくとも部分的に定めるキャビティ壁4a・・・を有する支持部2と、少なくとも1つのカンチレバーアーム5・・・と、を備える。カンチレバーアーム5・・・は、支持部2に固定された基部9と、キャビティ壁4a・・・を越えて突出する可撓性の振れ部10と、を有する。振れ部10は、キャビティ壁4a・・・に面した基端11と、MEMS音響トランスデューサ1の往復動軸Hの方向において、支持部2に関して振れることができる自由端12と、を有する。振れ部10の基端11は、音響トランスデューサにおいて、湾曲した第1の輪郭27を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を生成および/または検出するためのMEMS音響トランスデューサ(1)であって、
前記MEMS音響トランスデューサ(1)のキャビティ(3)の境界を少なくとも部分的に定めるキャビティ壁(4)を有する支持部(2)と、
少なくとも1つのカンチレバーアーム(5、6、7、8)と、を備え、
前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)は、前記支持部(2)に固定された基部(9)と、
前記キャビティ壁(4)を越えて突出する可撓性の振れ部(10)とを有し、
前記振れ部(10)は、前記キャビティ壁(4)に面した基端(11)と、
前記MEMS音響トランスデューサ(1)の往復動軸(H)の方向において、前記支持部(2)に関して振れることができる自由端(12)とを有し、
前記振れ部(10)の前記基端(11)は、音響トランスデューサの上面図において、湾曲した第1の輪郭(27)を有することを特徴とする、MEMS音響トランスデューサ。
【請求項2】
前記キャビティ壁(4)は、前記音響トランスデューサの上面図において、特に、前記振れ部(10)の領域に、および/または、前記振れ部(10)に隣接して、前記振れ部(10)の前記第1の輪郭(27)に対応する湾曲した第2の輪郭(28)を有し、
好ましくは、前記第1の輪郭(27)は、凸状に湾曲し、前記第2の輪郭(28)は、凹状に湾曲することを特徴とする、請求項1に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項3】
前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)は、多層設計を有し、少なくとも1つの支持層(13)と、1つの特に圧電性のトランスデューサ層(14)とを有し、
前記支持層(13)は、前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)の長手方向に、前記基部(9)および前記振れ部(10)の特に全体にわたって好ましくは延びる、および/または、
前記トランスデューサ層(14)は、好ましくは、前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)の前記長手方向に、前記基部(9)および/または前記振れ部(10)の特に一部のみにわたって延びる、および/または、前記振れ部(10)から前記基部(9)へと延びることを特徴とする、請求項1または2に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項4】
前記振れ部(10)、特に前記支持層(13)および/または前記トランスデューサ層(14)は、いずれの場合においても、前記自由端(12)の方向に一点に集まる2つの長手方向側部(18、19、20、21)と、1つの横方向側部(22、23)とを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項5】
前記音響トランスデューサの上面図において、前記トランスデューサ層(14)の前記長手方向側部(20、21)は、前記支持層(13)の前記長手方向側部(18、19)から間隔を置いて配置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項6】
前記音響トランスデューサの上面図において、前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)の前記第1の輪郭(27)、および/または、前記キャビティ壁(4)の前記第2の輪郭(28)は、互いに異なる湾曲(30、32)を有する複数の湾曲部分(29、31)を有し、
好ましくは、前記第1の輪郭(27)および/または前記第2の輪郭(28)は、第1の湾曲(30)を有する第1の湾曲部分(29)を有する、および/または、第2の湾曲(32)を有する少なくとも1つの第2の湾曲部分(31)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項7】
前記第1および/または前記第2の湾曲(30、32)は、円セグメント(33、37)として形成される、および/または、
前記第1の湾曲(30)の半径は、前記第2の湾曲(32)の半径より大きいことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項8】
前記音響トランスデューサの上面図において、前記第1の湾曲(30)の第1の円の中心(35)は、前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)の長手方向中心軸(36)上にある、および/または、前記自由端(12)よりさらに、前記基端(11)から離れていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項9】
前記音響トランスデューサの上面図において、前記第2の湾曲(32)の第2の円の中心(39)は、前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)の縦中心軸(40)上にある、および/または、前記基端(11)と前記自由端(12)との間にあることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項10】
前記音響トランスデューサの上面図において、および/または、前記MEMS音響トランスデューサ(1)の横方向において、前記第1の湾曲部分(29)は、2つの前記第2の湾曲部分(31)の間に配置されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項11】
前記MEMS音響トランスデューサ(1)は、複数の、特に4つのカンチレバーアーム(5、6、7、8)を有し、
前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)は、好ましくは、それらの前記自由端(12)が、前記音響トランスデューサの上面図において、前記MEMS音響トランスデューサ(1)の中心(42)に配置されるよう、互いに関して配置されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項12】
2つの隣接する前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)は、分離溝(43)によって互いに分離され、
前記分離溝(43)は、前記音響トランスデューサの上面図において、前記2つのカンチレバーアーム(5、6、7、8)の前記自由端(12)から前記キャビティ壁(4)の方向に延びる、および/または、前記キャビティ壁(4)に面した前記分離溝(43)の溝端部(44)は、前記キャビティ壁(4)から間隔を置いて配置されるので、前記2つの隣接するカンチレバーアーム(5、6、7、8)の前記支持層(13)は、この領域で接続されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項13】
前記分離溝(43)は、前記溝端部(44)に、溝の横方向に延びる、および/または、湾曲する逃がし溝(46)を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項14】
前記音響トランスデューサの上面図において、前記自由端(12)は、矩形の先端(50)として形成される、および/または、
前記MEMS音響トランスデューサ(1)の前記中心(42)における複数の前記分離溝(43)は、前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)の前記自由端(12)を互いに隔てる文字Hの形をした分離溝領域を形成する、ことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のMEMS音響トランスデューサ。
【請求項15】
音波を生成および/または検出するための、特に請求項1~14のいずれか一項に記載されたMEMS音響トランスデューサ(1)であって、
前記MEMS音響トランスデューサ(1)のキャビティ(3)の境界を少なくとも部分的に定めるキャビティ壁(4)を有する支持部(2)と、
少なくとも1つのカンチレバーアーム(5、6、7、8)と、を備え、
前記カンチレバーアーム(5、6、7、8)は、前記支持部(2)に固定された基部(9)と、
前記キャビティ壁(4)を越えて突出する可撓性の振れ部(10)とを有し、
前記振れ部(10)は、前記キャビティ壁(4)に面した基端(11)と、前記MEMS音響トランスデューサ(1)の往復動軸(H)の方向において、前記支持部(2)に関して振れることができる自由端(12)とを有し、
前記振れ部(10)の前記自由端(12)は、音響トランスデューサの上面図において、2つの隅部(47、48)を有することを特徴とする、MEMS音響トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波を生成および/または検出するためのMEMS音響トランスデューサに関する。MEMS音響トランスデューサは、MEMS音響トランスデューサのキャビティの境界を少なくとも部分的に定めるキャビティ壁を有する支持部と、該支持部に固定された基部、および、キャビティ壁を越えて突出する可撓性の振れ部を有する少なくとも1つのカンチレバーアームと、を備える。振れ部は、キャビティ壁に面した基端と、MEMS音響トランスデューサの往復動軸の方向において支持部に対して振れることができる自由端とを有する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板と、少なくとも3つの隣接した先細りのトランスデューサ梁とを有するMEMS音響トランスデューサを開示している。各梁は、圧電層と電極層とを交互に有し、圧電層は、受けた圧力を電圧に変換する。各梁は、梁基端部と、梁先端部と、梁基端部と梁先端部との間に配置される梁本体部とを有する。各梁は、梁基端部から梁先端部に向けて先細りしている。各梁は、梁基端部に沿って基板に結合されるが、梁本体部に沿って基板に結合されていない。梁は、梁先端部のそれぞれが実質的に一点に集まるよう配置されている。このようなMEMS音響トランスデューサの欠点は、局所的な荷重のピークがトランスデューサ梁またはカンチレバーアームで起き、それによってカンチレバーアーム、すなわち、特に圧電トランスデューサ層を高出力で破壊してしまう可能性があるということである。結果として、荷重のピークを許容レベルに保つために、MEMS音響トランスデューサの製造においては、非常に厳密な製造公差が維持されなければならない。その結果、製造コストが高くなるだけでなく、製造スクラップも増大する。さらに、これまで知られているMEMS音響トランスデューサは、局所的な荷重ピークのせいで、低出力レベルでしか動作できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 692 153号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、従来技術で知られる欠点を取り除くことであり、特に、MEMS音響トランスデューサの性能を高める、および/または、製造コストならびに製造スクラップを低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題は、独立請求項に記載された特徴を有するMEMS音響トランスデューサによって解決される。
【0006】
音波を生成および/または検出するためのMEMS音響トランスデューサが提供される。MEMS音響トランスデューサは、可聴波長スペクトルにおける音波を生成および/または検出するよう設計され得る。この場合、MEMS音響トランスデューサは、好ましくは、ツィーターとして設計される、および/または、オーディオシステムとして設けられる。さらに、または、あるいは、MEMS音響トランスデューサは、超音波領域における音波を生成および/または検出するよう設計され得る。この場合、MEMS音響トランスデューサは、好ましくは、超音波センサ、および/または、超音波送信器である。さらに、または、あるいは、MEMS音響トランスデューサは、オーディオ情報に好ましくはエンコードされた、特に2値のデータを送信および/または受信するよう設計され得る。この場合、MEMS音響トランスデューサは、好ましくは、データ送信装置と一体化した部分である。
【0007】
MEMS音響トランスデューサは、MEMS音響トランスデューサのキャビティの境界を少なくとも部分的に定める少なくとも1つのキャビティ壁を含む支持部を有する。さらに、MEMS音響トランスデューサは、支持部に固定された基部と、キャビティ壁を越えて突出する可撓性の振れ部とを含む少なくとも1つのカンチレバーアームを有する。用語「カンチレバーアーム」は、固定された端部と自由に振れる端部とを有する梁形状の構成要素を意味すると理解されたい。振れ部は、キャビティ壁に面した基端と、MEMS音響トランスデューサの往復動軸の方向において、支持部に対して振れることができる自由端とを有する。音響トランスデューサの上面図において、振れ部の基端は、湾曲した第1の輪郭を有する。
【0008】
湾曲した第1の輪郭は、振れ部、つまり、特に基端の領域で荷重が均等に分散されるという効果をもたらす。これによって、局所的な荷重のピークによるカンチレバーアームの損傷を防ぐことができる。カンチレバーアームの横方向における荷重の均等な分散により、カンチレバーアームは、全体としてより大きい力を吸収することができる。結果として、MEMS音響トランスデューサの性能は、湾曲した第1の輪郭によって高められ得る。さらに、湾曲した第1の輪郭は、カンチレバーアームの中心と隅部の領域との間の構造差を縮小し、このことにより、MEMS音響トランスデューサのさらに安定した動作が保証される。湾曲した第1の輪郭の別の利点は、カンチレバーアーム、特にその自由端が往復動軸に沿ってより鮮明な往復動作をするということである。有利には、このことは、MEMS音響トランスデューサの製造公差を拡大することができる。したがって、例えば、支持部および/または他のカンチレバーアームに対するカンチレバーアームの許容される調整誤差をより大きくできる。製造精度への要求が引き下げられることにより、MEMS音響トランスデューサの製造コストを低減することができる。
【0009】
音響トランスデューサの上面図における振れ部の基端が湾曲した第1の輪郭を有しているという上記特徴に加えて、または、上記特徴の他に、音響トランスデューサの上面図における振れ部の自由端は、2つの隅部を有し、それらは、自由端の横方向において好ましくは互いに距離を置いて配置される。さらに、カンチレバーアーム、特に、その自由端の横方向において、自由端の2つの隅部が端側を介して互いに接続されれば有利である。有利には、カンチレバーアームのその自由端の領域における性能が結果として向上し得る。
【0010】
キャビティ壁が、音響トランスデューサの上面図において、特に、振れ部の領域に、および/または、振れ部と隣接して、振れ部の第1の輪郭に対応する湾曲した第2の輪郭を有すると有利である。好ましくは、キャビティ壁の湾曲した第2の輪郭は、振れ部の第1の輪郭の湾曲形状を規定する。
【0011】
第1の輪郭がプラス形状を有し、第2の輪郭が対応するマイナス形状を有すると有利である。
【0012】
また、第1の輪郭が凸状であり、第2の輪郭が凹状に湾曲していると有利である。これによって、カンチレバーアームの振れ部において非常に良好な荷重分散が保証される。さらに、第2の輪郭の凹状湾曲によって、キャビティの容積を増大させることができる。
【0013】
本発明の有利な改良された実施形態では、湾曲した第1の輪郭が、特に勾配を変えられる曲線として、および/または、折れ線として形成されていると有利である。用語「曲線」とは、滑らかな、すなわち、ねじれや段のない湾曲した輪郭であると理解されたい。用語「折れ線」とは、まっすぐな接続線によって互いに接続された複数の点によって形成された輪郭であると理解されたい。まっすぐな接続線は、それぞれ隣接する接続線に対する角度を有し、したがって「より粗い格子」では、第1の湾曲した輪郭の理想的な曲線に従うようになる。折れ線は、段を有する、および/または、不連続な曲線であるかもしれない。
【0014】
少なくとも振れ部がその全長にわたり可撓性および/または弾性であると有利である。その結果、カンチレバーアームは、支持部に固定されていない振れ部の全長にわたって均等に曲がるようになる。さらに、または、あるいは、音響トランスデューサの上面図において、少なくとも振れ部が基端から自由端の方向に、特に、台形または三角形に先細りしていれば有利である。
【0015】
また、音響トランスデューサの上面図において自由端が矩形の先端として形成され、矩形の先端の両側が好ましくはまっすぐまたは湾曲していれば有利である。用語「矩形の先端」とは、自由端の先端が矩形を有することを意味すると理解されたい。2つの隅部および自由端の端側がこの矩形の自由な側となる。有利には、2つの隅部を有する自由端は、構造的に単純に形成され得る。
【0016】
カンチレバーアームは、特に、往復動軸の方向に多層設計を有し、少なくとも1つの、特に可撓性の支持層と、1つの、特に可撓性および/または圧電性のトランスデューサ層とを備える。また、カンチレバーアームが少なくとも1つの電極層を有していると有利である。好ましくは、断面図において、2つの電極層の間に少なくとも1つの圧電層が挟まれている。カンチレバーアームの長手方向において、支持層が、基部および振れ部にわたって、特に完全にわたって延びていれば有利である。さらに、または、あるいは、カンチレバーアームの長手方向において、トランスデューサ層が、基部および/または振れ部にわたって、および/または基部および/または振れ部へと、特に一部のみに延びていれば有利である。さらに、または、あるいは、カンチレバーアームの長手方向において、トランスデューサ層が、振れ部から基部へと延びていれば有利である。その結果として強い往復動力が生じ得る。しかしながら、これによってキャビティ壁の領域でトランスデューサ層にストレスがかかり、トランスデューサ層を破壊してしまう可能性があるという問題がある。しかしながら、このようなストレスを、第1の湾曲した輪郭によって低減することができる。
【0017】
トランスデューサ層がアクチュエータ層および/またはセンサ層として設計されていれば有利である。アクチュエータ層としてのトランスデューサ層は、カンチレバーアームの振れ部を印可電圧によって積極的に振れさせるために用いられる。センサ層としてのトランスデューサ層は、カンチレバーアームの振れ部の振れを電圧に変換するために用いられる。
【0018】
また、振れ部、特に、支持層および/またはトランスデューサ層が音響トランスデューサの上面図において矩形を有していれば有利である。さらに、または、あるいは、振れ部、特に支持層および/またはトランスデューサ層が、いずれの場合においても、自由端の方向に一点に集まる、好ましくは直線の2つの長手方向側部を有していれば有利である。さらに、または、あるいは、振れ部、特に支持層および/またはトランスデューサ層が、いずれの場合においても、自由端の反対方向を向いた端部に横方向側部を有していれば有利である。好ましくは、横方向側部は、カンチレバーアームの横方向に延びる、および/または、2つの長手方向側部を互いに接続させると有利である。横方向側部とそれぞれの長手方向側部との間に結果として生じる隅部は、丸みを帯び得る。トランスデューサ層は、音響トランスデューサの上面図において、支持層よりも小さく、特に面積という点から見て小さく、特に、横方向に狭い、および/または、長手方向に短いと有利である。さらに、音響トランスデューサの上面図において、トランスデューサ層の長手方向側部が支持層の長手方向側部から間隔を置いて配置されており、この間隔は、全長にわたり好ましくは一定であると有利である。このようにして、トランスデューサ層の材料を節約できるので、カンチレバーアームの製造コストを低減できる。
【0019】
また、トランスデューサ層の少なくとも1つの長手方向側部が支持層の対応する長手方向側部と平行であれば有利である。
【0020】
また、第1の輪郭および/または第2の輪郭が少なくとも部分的に円セグメントとして形成されていれば有利である。
【0021】
また、音響トランスデューサの上面図において、カンチレバーアームの第1の輪郭、および/または、キャビティ壁の第2の輪郭が、互いに異なる湾曲を有する複数の湾曲部分を有すれば有利である。この点において、好ましくはカンチレバーアームの第1の輪郭、および/または、キャビティ壁の第2の輪郭が、第1の湾曲を有する第1の湾曲部分、および/または、第2の湾曲を有する少なくとも1つの第2の湾曲部分を有すればさらに有利である。
【0022】
また、第1および/または第2の湾曲は、円セグメントとして形成されると有利である。さらに、または、あるいは、第1の湾曲は、第2の湾曲より大きい半径を有すれば有利である。
【0023】
音響トランスデューサの上面図において、第1の湾曲の第1の円の中心が、カンチレバーアームの長手方向中心軸上にある、および/または、自由端からよりもさらに、基端から離れていると有利である。さらに、音響トランスデューサの上面図において、第2の湾曲の第2の円の中心が、カンチレバーアームの長手方向外側軸上にある、および/または、基端と自由端との間にあれば有利である。
【0024】
また、音響トランスデューサの上面図および/または、MEMS音響トランスデューサの横方向において、第1の湾曲部分が第2の湾曲部分の間に配置されると有利である。
【0025】
MEMS音響トランスデューサが、複数の、特に、4つのカンチレバーアームを有し、音響トランスデューサの上面図において、それらの自由端がキャビティおよび/またはMEMS音響トランスデューサの中心にくるように各々に対して好ましくは配置されると有利である。
【0026】
また、2つの隣接したカンチレバーアームの2つの第2の湾曲部分が同じ第2の湾曲を有することによって、共通の円セグメントを形成すれば有利である。
【0027】
2つの隣接したカンチレバーアームが分離溝によって互いに分離され、この分離溝がカンチレバーアームの上側から下側まで全体にわたって好ましくは延びていると有利である。
【0028】
また、音響トランスデューサの上面図において、分離溝が2つのカンチレバーアームの自由端からキャビティ壁の方向に延びると有利である。さらに、または、あるいは、キャビティ壁に面した分離溝の溝端部はキャビティ壁から離れているため、2つの隣接したカンチレバーアームの支持層はこの領域でつながっている、および/または、一体となっていると有利である。
【0029】
また、分離溝が、その溝端部において、溝の横方向に延びるおよび/または湾曲する逃がし溝を有すれば有利である。これによって、溝の端部が裂けることを防止する。
【0030】
また、MEMS音響トランスデューサの中心において、複数の分離溝が、カンチレバーアームの自由端を互いに隔てる文字Hの形をした分離溝領域を形成すれば有利である。
【0031】
本発明のさらなる利点は、以下の実施形態に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】湾曲した第1の輪郭を有するカンチレバーアームを備えたMEMS音響トランスデューサの上面図である。
図2】1つのカンチレバーアームの領域における図1に示されたMEMS音響トランスデューサの縦断面図である。
図3図1および2に示されたMEMS音響トランスデューサにおける湾曲の幾何配置を視覚化した底面図である。
図4図1、2、3に示されたMEMS音響トランスデューサの中心領域の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1~4は、音波を生成および/または検出するMEMS音響トランスデューサ1を示す。MEMS音響トランスデューサ1は、可聴波長スペクトルにおける音波を生成および/または検出するよう設計され得る。この場合、MEMS音響トランスデューサ1は、好ましくは、ツィーターとして設計される、および/または、オーディオシステムとして設けられる。さらに、または、あるいは、MEMS音響トランスデューサ1は、超音波領域における音波を生成および/または検出するよう設計されてよい。この場合、MEMS音響トランスデューサは1、好ましくは、超音波センサ、および/または、超音波送信器である。さらに、または、あるいは、MEMS音響トランスデューサ1は、オーディオ情報に好ましくはエンコードされたデータを送信および/または受信するよう設計されてよい。この場合、MEMS音響トランスデューサ1は、好ましくは、データ送信装置と一体化した部分である。
【0034】
図1、2、3によれば、MEMS音響トランスデューサ1は、支持部2を有する。支持部2は、シリコン基板であってよい。あるいは、支持部2は、PCB回路基板でもあり得る。さらに、MEMS音響トランスデューサ1は、キャビティ3を有する。このキャビティ3は、その前側で音圧を生成および/または検出し得る音響部材の後側に好ましくは形成される音響空洞である。
【0035】
支持部2は、キャビティ3の境界を少なくとも部分的に定める少なくとも1つのキャビティ壁4を有する。図1に示された実施形態では、支持部2は、複数の、特に4つのキャビティ壁4a、4b、4c、4dを有する。これらの2つが互いに対向するよう配置されている。このようにして、キャビティ壁4a、4b、4c、4dは、特に、四角形の、および/または、周方向に閉じたフレームを形成している。音圧を生成および/または検出するために、MEMS音響トランスデューサ1は、本例ではカンチレバーアーム5、6、7、8として設計される少なくとも1つの音響部材を有する。
【0036】
図2は、上記カンチレバーアーム5、6、7、8の縦断面図であり、図中、長手方向に基部9および振れ部10が示されている。カンチレバーアーム5、6、7、8は、基部9で支持部2に固定されている。その結果、カンチレバーアーム5、6、7、8は、その片側が、つまり、基部9が支持部2に固定されるので、基部9は支持部2に関して動くことはできない。これに対し、振れ部10は、キャビティ壁4を越えて突出しているか、または、キャビティ壁4から突き出ている。その結果、カンチレバーアーム5、6、7、8の振れ部10は支持部2によって支持されないので、振れ部10の長さに沿って曲がることができる。カンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向において、振れ部10は、キャビティ壁4に面した基端11と、キャビティ壁4の反対側を向いた自由端12とを有する。基端11は、キャビティ壁4の間近に形成されているので、キャビティ壁4に対応する形状を有する。振れ部10全体、および、特に自由端12は、完全に独立しており、すなわち、他のいかなる構成要素とも接続されていない。
【0037】
カンチレバーアーム5、6、7、8の振れ部10は、好ましくは、その全長にわたり可撓性であるよう設計されているので、振れ部10の、または、カンチレバーアーム5、6、7、8の自由端12は、振れ部10を曲げることにより、特に、振れ部10をその全長にわたり曲げることにより、往復動軸Hの方向に振れ得る。これは、入ってくる音波に反応して、または、音波を生成するために積極的になされ得る。
【0038】
特に図2からわかるように、カンチレバーアーム5、6、7、8は、多層設計を有する。よって、カンチレバーアーム5、6、7、8は、往復動軸Hの方向に重なり合う複数の層を含む。これらの層の1つは、支持層13であり、好ましくは、シリコンまたはポリマーなどの可撓性材料からなる。この場合、支持層13は、少なくとも1つ上の層に対しての荷重支持機能を担う。また、支持層13に加えて、カンチレバーアーム5、6、7、8は、少なくとも1つのトランスデューサ層14をさらに有する。このトランスデューサ層14によって、音波が検出および/または生成され得る。これは、運動エネルギーを電気に、および/または、電気を運動エネルギーに変換することによってなされる。トランスデューサ層14も、振れることができるように、特に全長にわたり可撓性に設計される。トランスデューサ層14は、好ましくは、圧電層である。したがって、トランスデューサ層14は、音波を生成するために、アクチュエータ層、特に、圧電アクチュエータ層として設計され得る。さらに、または、あるいは、トランスデューサ層14は、音波を検出するためのセンサ層、特に、圧電センサ層として設計され得る。トランスデューサ層14に隣接して追加の電子層が配置され得る。
【0039】
図2に示された1つのカンチレバーアーム5、6、7、8の縦断面図によれば、支持層13は、カンチレバーアーム5、6、7、8の全長にわたり延びている。それに対し、トランスデューサ層14は、カンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向において支持層13より短い。このようにして、キャビティ壁4の反対側を向いたトランスデューサ層14の第1の端部15は、カンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向において、カンチレバーアーム5、6、7、8の自由端12から間隔を置いて配置されている。トランスデューサ層14の反対側の第2の端部16は、カンチレバーアーム5、6、7、8、または、支持層13の外端部17から間隔を置いて配置されている。トランスデューサ層14は、カンチレバーアーム5、6、7、8の基部9および振れ部10のどちらにも位置している。基部9に位置するトランスデューサ層14の部分は、支持部2に固定されているため、曲げられない。
振れ部10に位置するトランスデューサ層14の部分は、キャビティ壁4を越えて突出している。その結果、振れ部10が振れると、往復動軸Hの方向に、その長さ、特に、その全長にわたって曲がる。
【0040】
図1の上面図、および、図3のMEMS音響トランスデューサ1のキャビティ側の底面図では、カンチレバーアーム5、6、7、8は、自由端の方向に先細りしていることがわかる。したがって、カンチレバーアーム5、6、7、8は、自由端12の領域よりも基部9の領域において幅広くなっている。本例示的実施形態では、カンチレバーアーム5、6、7、8は、三角形に先細りしている。したがって、自由端12は、往復動軸Hの方向に自由に振れるカンチレバーアーム5、6、7、8の先端を成す。
【0041】
カンチレバーアーム5、6、7、8は、2つの長手方向側部18および19を有する。図1によれば、それらは、自由端12の方向に互いに向かって延びている。2つの長手方向側部18および19は、直線である。外端部17において、カンチレバーアーム5、6、7、8は、好ましくはカンチレバーアーム5、6、7、8の最も幅広い個所を形成する横方向側部22を有する。図1の上面図によれば、トランスデューサ層14は、カンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向側部18および19に対応する長手方向側部20および21を有する。しかしながら、トランスデューサ層14は、支持層13より狭いので、トランスデューサ層14の長手方向側部20および21は、カンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向側部18および19から間隔を置いて配置されている。好ましくは、トランスデューサ層14の長手方向側部20および21は、カンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向側部18および19と平行に形成されている。さらに、トランスデューサ層14は、トランスデューサ層14の第2の端部16に形成された、および/または、第2の端部16を形成する横方向側部23も有する。トランスデューサ層14の横方向側部23は、図1の上面図によると、凸状に湾曲している。さらに、トランスデューサ層14は、横方向側部23とそれぞれの長手方向側部20および21との間に、好ましくは丸みを帯びた隅部24を有する。
【0042】
図1および3に示されるように、MEMS音響トランスデューサ1は、上述のように形成された複数のカンチレバーアーム5、6、7、8を有する。さらに、MEMS音響トランスデューサ1は、複数のキャビティ壁4a、4b、4c、4dを有し、これらは、特に図3で見ることができる。好ましくは、これらキャビティ壁4a、4b、4c、4dのそれぞれは、カンチレバーアーム5、6、7、8に関連付けられている。キャビティ壁4a、4b、4c、4dは、キャビティ3の横方向の境界を定める、および/または、周方向に閉じたフレーム25を形成する。フレーム25は、往復動軸Hの方向において少なくとも一端が開口することによって、フレーム開口部26が形成されている。カンチレバーアーム5、6、7、8は、このフレーム開口部26の領域内で往復動軸Hの方向に配置される、および/または、フレーム開口部26を少なくとも部分的に閉鎖する。
【0043】
本実施形態では、MEMS音響トランスデューサ1は、4つのカンチレバーアーム5、6、7、8、および/または、4つのキャビティ壁4a、4b、4c、4dを有する。4つのキャビティ壁4a、4b、4c、4dは、四角い、特に正方形のフレーム25を形成する。2つのカンチレバーアーム5、6、7、8が互いに対向するよう配置される。その結果、それらの基端11は、フレーム25の2つの対向するキャビティ壁4a、4b、4c、4dに位置する。
【0044】
図1および3に特に示されるように、少なくとも1つのカンチレバーアーム5、6、7、8の振れ部10の基端11は、湾曲した第1の輪郭27を有する。この第1の輪郭27は、間近のおよび/または対応するキャビティ壁4a、4b、4c、4dによって規定される。したがって、図1および3の音響トランスデューサの上面図によるキャビティ壁4a、4b、4c、4dは、特に、少なくとも往復動軸Hの方向における振れ部10に隣接した領域では、振れ部10の第1の輪郭27に対応する湾曲した第2の輪郭28を有する。その結果として、基端11の第1の輪郭27は、プラスの形状を成し、キャビティ壁4a、4b、4c、4dの第2の輪郭28は、対応するマイナスの形状を成す。カンチレバーアーム5、6、7、8の基端11の第1の輪郭27は、図1および3によると、凸状に湾曲している。キャビティ壁4a、4b、4c、4dの第2の輪郭28は、凹状に湾曲している。
【0045】
例示された実施形態では、湾曲した第1の輪郭27および湾曲した第2の輪郭28は、特に、図1および3に示されるように、曲線として設計されている。この曲線は、滑らかまたは段がないよう勾配を変えることができる。
あるいは、湾曲した第1の輪郭27および湾曲した第2の輪郭28は、折れ線として形成されてもよい。その場合、第1の輪郭27の湾曲および第2の輪郭28の湾曲は、まっすぐな連続する部分を介して互いに接続された複数の点によって形成されるだろう。折れ線は、段を有する、および/または、不連続な曲線として設計されてもよい。
【0046】
図3から特にわかるように、第1の輪郭27およびそれに対応する第2の輪郭28は、少なくとも1つの円34、38の一部として、または、少なくとも1つの円セグメント33、37として少なくとも部分的に形成される。図3の音響トランスデューサの上面図において、第1の輪郭27およびそれに対応する第2の輪郭28は、互いに異なる湾曲30および32を有する複数の湾曲部分29および31を有する。よって、第1の輪郭27および/または第2の輪郭28は、第1の湾曲30を有する第1の湾曲部分29を有する。第1の湾曲30は、第1の円の中心35を有する第1の円34の第1の円セグメント33として形成される。第1の円の中心35は、対応するカンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向中心軸36上にある。さらに、第1の円の中心35は、MEMS音響トランスデューサ1の自由端12からよりもさらに、振れ部10の基端11から離れている。第1の湾曲部分29は、カンチレバーアーム5、6、7、8の横方向に、トランスデューサ層14全体の幅にわたって延びている。
【0047】
上面図においてキャビティ壁4a、4b、4c、4dが直線であると、カンチレバーアーム5、6、7、8内で局所的な荷重のピークが起き、それによってカンチレバーアーム5、6、7、8、すなわち、特にカンチレバーアーム5、6、7、8のトランスデューサ層14を破壊してしまう可能性がある。このような局所的な荷重のピークは、特に、基端11の領域、とりわけ、カンチレバーアーム5、6、7、8の長手方向中心軸36の領域で起きる。湾曲した第1の輪郭27および/または第2の輪郭28は、振れ部10、すなわち、特に基端11の領域で、カンチレバーアーム5、6、7、8の横方向に荷重を均等に分散させる。これによって、過荷重によるカンチレバーアーム5、6、7、8の損傷を防止することができる。荷重を横方向に均等に分散させることにより、カンチレバーアーム5、6、7、8は全体としてより大きい力を吸収できる。結果として、MEMS音響トランスデューサ1の性能も、第1の輪郭27および/または第2の輪郭28によって向上し得る。さらに、湾曲した第1の輪郭27および/または第2の輪郭28は、カンチレバーアーム5、6、7、8の中心と、その隅の領域との間の構造差を縮小する。その結果、カンチレバーアーム5、6、7、8のトランスデューサ層14を有する領域と支持部2との結合がより良くなるので、MEMS音響トランスデューサ1のより安定した動作が保証される。湾曲した第1の輪郭27および/または第2の輪郭28のさらなる利点は、カンチレバーアーム5、6、7、8、特に、その自由端12が往復動軸Hに沿ってより鮮明な往復動作を行うことである。有利には、これによってMEMS音響トランスデューサ1の製造公差を拡大できるので、製造コストを低減できるようになる。したがって、例えば、支持部2および/または他のカンチレバーアーム5、6、7、8に対するカンチレバーアーム5、6、7、8の調整誤差がより大きくなっても、湾曲した第1の輪郭27および/または第2の輪郭28のおかげで許容できるようになる。
【0048】
第1の湾曲部分29に加え、図3による第1の輪郭および27/または第2の輪郭28は、第2の湾曲32を有する少なくとも第2の湾曲部分31を有する。第2の湾曲32は、第1の湾曲30より大きい。第2の湾曲32は、第2の円の中心39を有する第2の円38の第2の円セグメント37として形成される。第2の円の中心39は、カンチレバーアーム5、6、7、8の縦横軸(longitudinal lateral axis)40上にある。縦横軸40は、周方向に互いに隣接した2つのカンチレバーアーム5、6、7、8の間に配置される。第2の円の中心39は、MEMS音響トランスデューサ1の振れ部10の基端11と自由端12との間に配置される。その結果、第2の円の中心39の方が、第1の円の中心35よりも基端11に近くなる。このようにして、第2の円セグメント37の半径は、第1の円セグメント33の半径より小さくなる。
【0049】
図3に示すように、第1の輪郭27および/または第2の輪郭28は、2つの第2の湾曲部分31を有し、これら2つの第2の湾曲部分31の間に、第1の湾曲部分29がカンチレバーアーム5、6、7、8の横方向に配置される。
【0050】
対応するキャビティ壁4a、4b、4c、4d第2の輪郭28は、第1の輪郭27に対応する上述の記載のとおりに形成される。その結果、第2の輪郭28も第1の湾曲部分29、および、2つの横に隣接した湾曲部分31を有する。ここでは、第1の湾曲部分29は、実質的にキャビティ壁4a、4b、4c、4dの1つを形成する。上述のように、支持部2は、このような複数の、つまり、本例示的実施形態によれば4つのキャビティ壁4a、4b、4c、4dを有する。2つの周方向に隣接したキャビティ壁4a、4b、4c、4dの間にはそれぞれのキャビティ隅部41が形成される。本例示的実施形態によれば、支持部2のそれらキャビティ隅部41は、丸みを帯びている。その結果、2つの隣接する第1の湾曲部分29は、丸みを帯びたキャビティ隅部41を通じてなだらかに1つになる。それぞれのキャビティ隅部41の丸みは、関連付けられた第2の湾曲部分31によって形成される。結果として、上面図におけるキャビティ隅部41の丸みは、第2の湾曲32と合致するようになる。図3によれば、上面図において、支持部2のキャビティ壁4a、4b、4c、4dは、湾曲しており、特に凹状である。さらに、2つの隣接したキャビティ壁4a、4b、4c、4dの間に形成されたキャビティ隅部41は、丸みを帯びている。
【0051】
図1および3によれば、カンチレバーアーム5、6、7、8は、MEMS音響トランスデューサ1の中心42の方向において、支持部2のキャビティ壁4a、4b、4c、4dから延びている。よって、カンチレバーアーム5、6、7、8の自由端12は、中心42の領域に位置する。2つの隣接したカンチレバーアーム5、6、7、8の間にはそれぞれ分離溝43a、43b、43c、43dが形成され、少なくとも1つの領域において2つのカンチレバーアーム5、6、7、8を互いに分離する。ここでは、分離溝43a、43b、43c、43dは、カンチレバーアーム5、6、7、8の全層、すなわち、カンチレバーアームの上側から下側まで全体にわたって延びている。図1および3によれば、音響トランスデューサの上面図において、それぞれの分離溝43a、43b、43c、43dは、支持部2のそれぞれ対応するキャビティ壁4a、4b、4c、4dの方向に、2つの隣接するカンチレバーアーム5、6、7、8の自由端12から延びている。結果として、カンチレバーアーム5、6、7、8は、自由端12の領域では完全に切り離される、および/または、相隔てられる。分離溝43a、43b、43c、43dは、それぞれの対応する縦横軸40に沿って延びている。
【0052】
分離溝43a、43b、43c、43dのそれぞれは、対応するキャビティ壁4a、4b、4c、4dに面した溝端部44を有する。溝端部44は、特に、縦横軸40の方向において、対応するキャビティ壁4a、4b、4c、4dから間隔を置いて配置される。その結果、2つの隣接するカンチレバーアーム5、6、7、8の支持層13は、この溝のない領域では互いに接続され、一つながりの材料で形成される。有利には、周方向に閉じた支持層縁45が、カンチレバーアーム5、6、7、8の振れ部10の領域に結果として形成される。これによって、MEMS音響トランスデューサ1の安定性および堅牢性が向上する。
【0053】
溝端部44の領域が裂けることを防ぐべく、分離溝43a、43b、43c、43dは、それらの溝端部44に逃がし溝46を有する。これらの逃がし溝46は、溝の横方向に延び、好ましくは、湾曲している。
【0054】
図4は、MEMS音響トランスデューサ1の中心42の詳細を示す図である。カンチレバーアーム5、6、7、8の自由端12は、それらの間に配置された分離溝43a、43b、43c、43dによって互いに完全に分離されていることがはっきりわかる。さらに、それらの上側または下側のいかなる構成要素にも接続されていない。結果として、自由端12は完全に露出している。カンチレバーアーム5、6、7、8の間、特に、それらの自由端12の間の空隙を可能な限り狭くできるよう、自由端12は、この音響トランスデューサの上面図において、2つの隅部47および48を有している。2つの隅部47および48は、端側49を介して互いに接続されている。端側49は、自由端12の前側を形成する。好ましくは、端側49は、直線である。図4からわかるように、2つの隅部47および48、および、端側49は、矩形を成す一体部分であるため、自由端12は、矩形の先端50a、50b、50c、50dとして形成される。空隙を可能な限り狭くできるよう、2つの相対向するカンチレバーアーム5および7の矩形先端50aおよび50cを含む、矩形先端の第1の対である矩形先端50aおよび50cは、矩形先端の第2の対である矩形先端50bおよび50dより狭い。好ましくは、上面図または下面図において、矩形先端の第1の対は、矩形先端の第2の対に関して90°にオフセットされる。さらに、矩形先端の第1の対である狭い方の矩形先端50aおよび50cは、矩形先端の第2の対である矩形先端50bおよび50dの2つの端側49の間に配置される。分離溝43a、43b、43c、43dは、自由端12の領域で互いに接続されて共通の連続した分離溝となる。このようにして、分離溝43a、43b、43c、43dは、矩形先端50a、50b、50c、50dと共に、中心42に文字Hの形をした分離溝領域を形成する。
【0055】
本発明は、図示および記載した実施形態に限定されない。特徴は、異なる例示的実施形態で図示および記載されたとしても、それらの組み合わせとして、請求項の範囲内での変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 MEMS音響トランスデューサ
2 支持部
3 キャビティ
4 キャビティ壁
5 第1のカンチレバーアーム
6 第2のカンチレバーアーム
7 第3のカンチレバーアーム
8 第4のカンチレバーアーム
9 基部
10 振れ部
11 基端
12 自由端
13 支持層
14 トランスデューサ層
15 トランスデューサ層の第1の端部
16 トランスデューサ層の第2の端部
17 外端部
18 カンチレバーアームの第1の長手方向側部
19 カンチレバーアームの第2の長手方向側部
20 トランスデューサ層の第1の長手方向側部
21 トランスデューサ層の第2の長手方向側部
22 カンチレバーアームの横方向側部
23 トランスデューサ層の横方向側部
24 トランスデューサ層の隅部
25 フレーム
26 フレーム開口部
27 第1の輪郭
28 第2の輪郭
29 第1の湾曲部分
30 第1の湾曲
31 第2の湾曲部分
32 第2の湾曲
33 第1の円セグメント
34 第1の円
35 第1の円の中心
36 長手方向中心軸
37 第2の円セグメント
38 第2の円
39 第2の円の中心
40 縦横軸
41 キャビティの隅部
42 中心
43 分離溝
44 溝端部
45 支持層縁
46 逃がし溝
47 自由端の第1の隅部
48 自由端の第2の隅部
49 端側
50 矩形の先端
H 往復動軸
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】