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特開2023-74493生物学的サンプルを処理するための自動分析システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074493
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】生物学的サンプルを処理するための自動分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
G01N35/04 H
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022183025
(22)【出願日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】21208792
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン バッギオ
(72)【発明者】
【氏名】ロマン エグリ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン エッテル
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル グート
(72)【発明者】
【氏名】ピウス ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ニキフォル コルヤギン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マイアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュラウビッツ
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ シュネーベリ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン ジーゲンターラー
(72)【発明者】
【氏名】イボ ダニエル ビセンテ レイタオ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フォルレンワイダー
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB09
2G058CB15
2G058CF17
2G058GC02
2G058GC05
2G058GE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処理量と柔軟性との間の思慮深い混合をもたらす中処理量の目的のためのバランスのとれたシステムを提供する。
【解決手段】受け入れベイ内のレーンに沿ってサンプルラックを装てん位置から処理位置に向かって手動で移動させる。移動は、ラックが、近位ストッパ要素がラックの移動を妨げるための充分な抵抗をもたらすフォーカス位置に到達したときに停止される。読み取り装置が、レーンへと挿入中のサンプルラックにフォーカスするように動かされる。処理位置へと向かうサンプルラックの移動が、近位ストッパ要素を過ぎて処理位置へと最後まで再開される一方で、読み取り装置が、サンプルラックおよび/または複数のサンプル容器の特徴を検出する。処理位置は、サンプルラックの挿入移動の終点を示す遠位ストッパ要素によって定められ、ラックは、サンプル容器の内容物の以後の処理に関する位置合わせのために、位置決めされ、検出され、ロックされる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサンプル容器(215)を保持するサンプルラック(210)を自動分析システム(1)のハウジング(100)内のサンプル受け入れベイ(200)へと導入するための方法であって、
a)前記サンプル受け入れベイ(200)内のレーン(230)に沿って前記サンプルラック(210)を装てん位置から処理位置に向かって手動で移動させることと、
b)前記サンプルラック(210)が前記装てん位置と前記処理位置との間の近位ストッパ要素(240)によって定められるフォーカス位置に到達したときに、前記移動を休止させることと、
c)読み取り装置(220)を前記レーン(230)と実質的に同じ水平面内で移動させ、前記読み取り装置(220)を前記レーン(230)にフォーカスさせることと、
d)前記近位ストッパ要素(240)を過ぎて前記サンプルラック(210)の前記移動を再開し、前記サンプルラック(210)が遠位ストッパ要素(250)によって定められる前記処理位置に達するまで、前記移動の最中に前記読み取り装置(220)によって前記サンプルラック(210)および/または前記複数のサンプル容器(215)の特徴を検出することと、
e)前記処理位置に前記サンプルラック(210)を位置決めし、検出し、ロックすることと、
f)前記サンプル容器(215)の内容物を処理することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記近位ストッパ要素(250)は、バッフル、前記レーンの底部のくぼみもしくは突起、射出成形部品、ストッパラグ、球状片、ボルト、磁石、キャッチピン、キャッチプレート、またはフックからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記読み取り装置(220)は、バーコードリーダ、カメラ、またはRFIDリーダからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記読み取り装置(220)は、可動カメラである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
センサが、前記サンプルラック(210)が前記フォーカス位置にあることを検出し、前記読み取り装置(220)への信号の送信をトリガする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理位置における前記サンプルラック(210)の前記位置決めすることおよび前記ロックすることは、6つのすべての自由度に関する前記サンプルラック(210)の位置合わせを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
生物学的サンプルを処理するための自動分析システム(1)であって、
-ハウジング(100)と、
-複数のサンプル容器(215)を保持するように構成されるサンプルラック(210)と、
-前記ハウジング(100)の内部のサンプル受け入れベイ(200)であって、複数のレーン(230)を有し、前記複数のレーン(230)は、互いに実質的に平行に配置され、かつ、複数のサンプル容器(215)を保持するように構成される前記サンプルラック(210)を収容するように構成される、サンプル受け入れベイ(200)と、
-レーン(230)上のフォーカス位置を定める近位ストッパ要素(240)と、
-前記レーン(230)と実質的に同じ水平面内の読み取り装置(220)と、
-レーン(230)上の処理位置を定める遠位ストッパ要素(250)と、
-前記サンプルラック(210)を前記処理位置に位置決めするように構成される位置決め要素(260)と、
-前記サンプルラック(210)を前記処理位置で検出するように構成される検出要素(270)と、
-前記サンプルラック(210)を前記処理位置にロックするように構成されるロック要素(280)と、
-前記サンプル容器(215)内の生物学的サンプルを処理するように構成される処理モジュールと
を備える、自動分析システム(1)。
【請求項8】
-サンプルラック(210)が検査位置に位置するときに前記サンプルラック(210)の専用のサンプル容器スロット(212)に位置合わせして前記レーン(230)の各々に沿って配置されたインジケータシステム(300)
をさらに備え、
-前記インジケータシステム(300)は、それぞれのサンプル容器スロット(212)内のサンプル容器(215)の状態を示すように構成される、請求項7に記載の自動分析システム(1)。
【請求項9】
前記インジケータシステム(300)は、前記レーン(230)上または前記レーン(230)内の光源(301)を備え、前記光源(301)は、前記サンプルラック(210)の前記専用のサンプル容器位置(212)に近接して位置する光放射窓(302)に光学導光システム(303)を介して光学的に結合する、請求項8に記載の自動分析システム(1)。
【請求項10】
前記光源(301)は、いくつかの個別の光源(3011)を備え、前記個別の光源(3011)の各々は、前記光放射窓(302)に前記光学導光システム(303)を介して光学的に結合する、請求項9に記載の自動分析システム(1)。
【請求項11】
前記個別の光源(3011)は、実質的に前記サンプルラック(210)の前記専用のサンプル容器位置(212)の下方に位置する、請求項10に記載の自動分析システム(1)。
【請求項12】
レーン(230)に沿った前記個別の光源(3011)の数は、前記サンプルラック(210)の専用のサンプルラック位置(212)および/または光放射窓(302)の数に一致する、請求項11に記載の自動分析システム(1)。
【請求項13】
-前記ハウジング(100)から水平方向に延出して前記ハウジング(100)の外部に前記複数のレーン(230)の延長部を形成するように構成される可動プラットフォーム(350)であって、サンプルラック(210)を前記プラットフォーム(350)上で露出検査位置に位置決めするように構成される位置決め要素(352)を有するプラットフォーム(350)と、
-サンプルラック(210)が前記露出検査位置に位置するときに前記サンプルラック(210)の専用のサンプル容器スロット(212)に位置合わせして延長された前記レーン(230)の各々に沿って配置されたインジケータシステム(300)と
をさらに備え、
-前記インジケータシステム(300)は、それぞれのサンプル容器スロット(212)内のサンプル容器(215)の状態を示すように構成される、請求項7に記載の自動分析システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物学的アッセイまたは生化学的アッセイを行うためのシステムおよび方法の分野に属する。この分野において、本発明は、生物学的サンプルを処理するための分析システムであって、生物学的サンプルをシステムへと導入された後に自動化されたやり方で処理する分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
生物学的サンプルの処理は、分析および診断の目的にとって著しく重要である。とりわけ、インビトロ診断(IVD)の分野が、調節された環境におけるサンプル標本の一貫的であり、信頼性があり、かつ正確な取り扱いを必要とする。臨床サンプルの処理量が多くの場合に大量であることに鑑みて、使用が容易であること、および拘束時間が最小限で済むことが、臨床技師および他の医療専門家にとってかなりの救済をもたらすがゆえに望ましい。
【0003】
この点で、高度な自動化が多くの場合に望ましいが、場合によっては、少なくとも手動介入の選択肢に関するバランスのとれた手法が有利となり得る。一方、すなわち統合および処理量の最大化と、他方、すなわち柔軟性およびカスタマイズとの間のバランスが、臨床診断の中処理量の部門においてきわめて重要である。例えば、異なる種類のサンプルを混合バッチにて処理する、短いターンアラウンドタイム(STAT)を必要とする処理を優先する、などの可能性を維持しつつ、特定の種類の多数のサンプルをバッチにて処理できるようにすることが、好都合となり得る。
【0004】
例えば、Roche Diagnostics GmbH社のcobas(登録商標)6800/8800などの分析システムは、主に大処理量の部門における使用を目的としているが、同社のcobas(登録商標)LIATなどのポイントオブケア(PoC)用のソリューションは、個別化された分析の可能性によって小処理量の部門に対応する。
【0005】
上記で概説したように、処理量と柔軟性との間の思慮深い混合をもたらす中処理量の目的のためのバランスのとれたシステムを提供することが、当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は、上述のニーズを満たす自動分析システムのさまざまな態様を説明する。
【0007】
本明細書において説明される第1の態様において、複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを自動分析システムのハウジング内のサンプル受け入れベイへと導入するための方法が提供される。本方法は、サンプルラックを受け入れベイ内のレーンに沿って装てん位置から処理位置に向かって手動で移動させることによって実行される。移動は、ラックが、近位ストッパ要素がラックの移動を妨げるための充分な抵抗をもたらす上述の2つの終端位置の間のフォーカス位置に到達したときに停止される。この位置において、レーンと実質的に同じ水平面内の読み取り装置が、受け入れベイ内のそれぞれのレーン、したがってレーンへと挿入中のサンプルラックにフォーカスするように動かされる。読み取り装置をそのようにフォーカスさせた状態で、処理位置へと向かうサンプルラックの移動が、近位ストッパ要素を過ぎて処理位置へと最後まで再開される一方で、読み取り装置が、サンプルラックおよび/または複数のサンプル容器の特徴を検出する。処理位置は、サンプルラックの挿入移動の終点を示す遠位ストッパ要素によって定められる。この終端位置において、ラックは、サンプル容器の内容物の以後の処理に関する位置合わせのために、位置決めされ、この位置において検出され、次いでロックされる。
【0008】
別の態様において、本開示は、生物学的サンプルを処理するためのシステムに関し、システムは、複数のサンプル容器のためのサンプルラックと、サンプルラック用の複数の実質的に平行なレーンを有する受け入れベイを取り囲むハウジングと、レーンを延長し、サンプルラックを検査位置に位置決めするために、ハウジングから出し入れすることができる随意によるプラットフォームと、サンプルラックの専用の位置にある容器内の生物学的サンプルの状態を示すためのインジケータシステムとを備える。
【0009】
本明細書において説明されるさらなる態様は、生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するためのシステムであり、システムは、結合粒子の懸濁液を収容する容器と、容器を震盪させ、結合粒子を懸濁させるためのシェーカーとを備え、シェーカーは、容器を震盪位置にロックするように構成されるバヨネットロックを備える。
【0010】
結合粒子の懸濁液を含む容器の震盪のための方法も、本明細書において説明される。第1のステップにおいて、容器は、バヨネットロックを備えるシェーカーに、容器を所定の水平変位角度でシェーカーに押し付け、容器を変位とは反対の方向に水平に回転させ、したがって容器を震盪位置に位置合わせさせてロックすることによって固定される。容器は、次のステップにおいて、シェーカーによって震盪させられ、したがって結合粒子が懸濁する。
【0011】
本明細書において説明される別の態様は、生物学的サンプルを処理するためのシステムであり、システムは、ハウジングと、ハウジング内の処理を観察および操作するためのインターフェースと、透明なスライド窓とを備え、透明なスライド窓は、窓をそれぞれの位置に安定させるカウンタウエイトによって支持されつつ、インターフェースを開閉する。
【0012】
本明細書において開示されるさらに別の態様は、生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するためのシステムであり、システムは、閉鎖可能な開口部を有する上蓋を備える実質的に断熱されたハウジングによって取り囲まれた冷却室と、開いた上部または貫通可能な上部を備える冷却室内の試薬容器と、上蓋の開口部を通して容器から試薬を吸引するための冷却室の上方のピペッタと、蓋を冷却室の外側の空気の露点を上回って加熱するように構成される蓋の下方の加熱要素とを備える。
【0013】
本明細書において、生物学的サンプルをインキュベートするためのサーマルサイクラーであって、マイクロウェルプレートのためのマウントと、マイクロウェルプレートを装てん位置とインキュベーション位置との間で回転によってマウントに対して往復させる装てんプラットフォームと、装てんプラットフォームを上述の位置の間で回転させるためのモータとを備えるサーマルサイクラーがさらに開示される。
【0014】
本明細書に開示される別の態様は、柔軟に取り付けられたピペット先端部ラックであり、ラックは、自動分析システムの作業面上に、ラックと作業面との間に配置された1つ以上の柔軟な要素を介して取り付けられる。
【0015】
別の態様において、本開示は、自動分析システムにおいて弁システムを監視するための方法であって、電源をオンにすることによって自動分析システムを起動することと、起動プロセスの最中または直後に、制御ユニットから弁へと送られる電気プローブ信号を使用し、弁が使用可能であることを示す対応する電気応答信号を検出することによって、弁の動作状態について起動時弁チェックを実行することと、自動分析システムの完全起動モードにおいて弁システムを動作させることと、上述のプローブ信号チェックをアイドル状態の弁について動作弁チェックとして繰り返し実行し、上述のチェックの電気応答信号が存在しない場合にエラーメッセージを生成することとを含む方法を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本明細書において説明される自動分析システムの一式の概略図である。
図1B】本明細書において説明される自動分析システムの一式の概略図である。
図1C】本明細書において説明される自動分析システムの一式の概略図である。
【0017】
図2A】本明細書に開示される自動分析システムの受け入れベイを概略的に示している。
図2B】本明細書に開示される自動分析システムの受け入れベイを概略的に示している。
図2C】本明細書に開示される自動分析システムの受け入れベイを概略的に示している。
図2D】本明細書に開示される自動分析システムの受け入れベイを概略的に示している。
図2E】本明細書に開示される自動分析システムの受け入れベイを概略的に示している。
図2F】本明細書に開示される自動分析システムの受け入れベイを概略的に示している。
【0018】
図3A】本明細書に開示されるインジケータシステムのさまざまな図を示している。
図3B】本明細書に開示されるインジケータシステムのさまざまな図を示している。
図3C】本明細書に開示されるインジケータシステムのさまざまな図を示している。
図3D】本明細書に開示されるインジケータシステムのさまざまな図を示している。
図3E】本明細書に開示されるインジケータシステムのさまざまな図を示している。
【0019】
図4A】本明細書に記載の生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するためのシステムおよび方法の斜視図を示している。
図4B】本明細書に記載の生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するためのシステムおよび方法の斜視図を示している。
図4C】本明細書に記載の生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するためのシステムおよび方法の斜視図を示している。
【0020】
図5】本明細書に開示される自動分析システムの透明な窓の図を示している。
【0021】
図6A】本明細書に開示される生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するためのシステムを示している。
図6B】本明細書に開示される生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するためのシステムを示している。
図6C】本明細書に開示される生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するためのシステムを示している。
図6D】本明細書に開示される生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するためのシステムを示している。
図6E】本明細書に開示される生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するためのシステムを示している。
【0022】
図7A】本明細書に開示される生物学的サンプルをインキュベートするためのサーマルサイクラーの一式の概略図である。
図7B】本明細書に開示される生物学的サンプルをインキュベートするためのサーマルサイクラーの一式の概略図である。
【0023】
図8】本明細書において説明される柔軟に取り付けられたピペット先端部ラックを概略的に示している。
【0024】
図9】本明細書に記載の自動分析システムの弁システムを監視するための方法のステップを示すフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本開示は、自動分析機器、分析機器、または分析装置とも呼ばれる自動分析システムの態様を説明する。そのような機器は、例えば臨床診断の分野において、生物学的サンプル、とりわけ液体生物学的サンプルについて、アッセイを実施することができる。例えば、臨床検査室の文脈において、分析装置を、サンプル、固体支持体、緩衝液、油、プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、標識、プローブ、または他の反応流体などの物質を容器に添加すること、および/または容器から物質を除去すること、容器を震盪させて内容物を混合すること、容器の内容物の温度を維持および/または変更すること、容器の内容物を加熱または冷却すること、容器の1つ以上の内容物成分の濃度を変更すること、容器の内容物の構成成分を分離または単離すること、容器の内容物からの電磁信号放出(例えば、光)を検出すること、進行中の反応を不活発にし、もしくは停止させること、またはこのようなプロセスのうちの2つ以上の任意の組み合わせを含む核酸検査などの多段階の分析プロセスを実行するように構成することができる。
【0026】
分析装置は、所望の分析または分析前プロセスを実行するために少なくとも部分的に自動化される。したがって、自動分析システムは、サンプル容器の内容物および実施すべきアッセイを、自動的に識別することができる。例えば、分析装置は、サンプル容器上のバーコードまたはRFIDタグなどのラベルを読み取り、容器内のサンプルの種類および実施すべきアッセイを識別することができる。
【0027】
本明細書に記載の分析装置の文脈において、サンプルを処理するために、サンプル容器を自動分析システムのハウジングに導入する必要がある。この目的のために、いくつかの手動および/または自動化された手段が実行される。
【0028】
したがって、本明細書において説明される第1の態様は、生物学的サンプルを有する複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを自動分析システムのハウジング内のサンプル受け入れベイへと導入するための方法であって、
a)サンプル受け入れベイ内のレーンに沿ってサンプルラックを装てん位置から処理位置に向かって手動で移動させることと、
b)サンプルラックが装てん位置と処理位置との間の近位ストッパ要素によって定められるフォーカス位置に到達したときに、移動を休止させることと、
c)読み取り装置をレーンと実質的に同じ水平面内で移動させ、読み取り装置をレーンにフォーカスさせることと、
d)近位ストッパ要素を過ぎてサンプルラックの移動を再開し、サンプルラックが遠位ストッパ要素によって定められる処理位置に達するまで、移動の最中に読み取り装置によってサンプルラックおよび/または複数のサンプル容器の特徴を検出することと、
e)処理位置にサンプルラックを位置決めし、検出し、ロックすることと、
f)サンプル容器内の生物学的サンプルを処理することと
を含む、方法である。
【0029】
本明細書において説明される方法は、さまざまな利点をもたらす。例えば、自動分析システムのサンプル受け入れベイへのサンプルラックの導入が、複数のチェックポイントによって確保される。
【0030】
サンプルラックをレーンに沿って手動で移動させることが、多くの状況において、自動搬送よりも好ましいことが明らかになっている。例えば、ユーザがラックを装てん位置においてレーンに配置するとき、多くの場合、所定の(典型的には、比較的遅い)速度でのラックの自動取り込みが、有用というよりはむしろ煩わしいと知覚される。また、自動での移動の最中の手動介入(自発的な介入、待ちきれずに介入、もしくは不注意による意図せぬ介入)は、移動を行わせるモータの損傷につながる可能性がある。他方で、ラックをサンプル受け入れベイに手動で挿入すると、潜在的なエラーの発生源を持ち込むことになりかねない。例えば、ユーザが、過度に高い速度でラックを移動させ、バーコードリーダまたはカメラが正しいレーン、したがってサンプルラックおよび/またはサンプル容器にフォーカスできず、読み取りエラーにつながる可能性がある。当技術分野で見られる解決策は、ガイドレールなどを緊密にフィットさせる堅固な構成を含むが、結果として生じる摩擦を克服するために、ユーザがより大きな力を加える必要がある。このような解決策は、低速なだけでなく、ユーザにさらなる負担をかける。
【0031】
近位ストッパ要素の助けによる本開示の方法による移動の一時停止は、手動挿入および自動挿入の利点を組み合わせる。一方で、ラックをフォーカス位置への到達前および到達後に素早く挿入することが可能でありながら、読み取り装置に、ラックがフォーカス位置にあるときに、装てんされたレーン内のラックにフォーカスする充分な時間が与えられ、したがって読み取りエラーの恐れが最小限に抑えられる。
【0032】
本明細書において使用されるとき、「サンプルラック」は、サンプル容器ホルダを意味する。インビトロ診断の分野において、寸法および形状は、典型的には標準化されている。いくつかの実施形態において、サンプルラックは、対応する専用のサンプル容器スロット内に一列に連続して配置された複数のサンプル容器を保持する。
【0033】
「装てん位置」は、サンプルラックがサンプルベイへの挿入の開始時に位置する初期位置である。例えば、上述のようにサンプル容器用のスロットが直線状に配置されたサンプルラックの場合、ユーザは、例えばハンドルによってラックの一端を保持し、サンプル受け入れベイの一部分を形成する対応するレーンの開始部に他端を配置することができる。この装てん位置から出発して、フォーカス位置に向かい、最終的には処理位置に向かう移動が開始される。
【0034】
「フォーカス位置」は、装てん位置と処理位置との中間位置である。近位ストッパ要素によって定められ、この中間位置または過渡位置は、読み取り装置が、装てんされたレーン、したがって対応するサンプルラックおよび/またはサンプルラック内のサンプル容器にフォーカスすることを可能にする。
【0035】
本明細書において使用されるとき、「近位ストッパ要素」は、例えばバッフル、レーンの底部のくぼみもしくは突起、ストッパラグ、球状片、射出成形部品、ボルト、磁石、キャッチピン、キャッチプレート、またはフック、などのさまざまな要素を備えることができ、あるいはそのような要素で構成されてよい。中間位置または過渡位置であるフォーカス位置に関係しているため、近位ストッパ要素は、処理位置に関して本明細書で説明されるような拘束またはロックをもたらさない。サンプルラックの移動の一時停止を引き起こすことを目的としているため、本明細書において「遅延要素」と呼ばれることもある。これに関連して、この要素が磁石である場合、好ましくはオンおよびオフに切り替えることができる電磁石などの非永久磁石である。同様に、ボルトである場合、そのボルトは、好ましくはレーン上のラックの経路から後退させることが可能であり、以下同様である。いくつかの実施形態において、近位ストッパ要素は、レーン表面上のバッフルであり、その物理的抵抗によって、ラックがフォーカス位置に到達したことを知らせ、したがってユーザに対してこの時点で移動を停止するように促す。いくつかの実施形態において、近位ストッパ要素は、例えば射出成形によるバッフルなど、射出成形部品である。
【0036】
サンプルラックがフォーカス位置に達すると、いくつかの実施形態においては、この位置にあることが検出され、信号が読み取り装置または読み取り装置を制御する制御ユニットに送信される。
【0037】
検出を、例えば、センサによって実行することができる。そのような実施形態において、センサが、サンプルラックがフォーカス位置にあることを検出し、読み取り装置への信号の送信をトリガする。そのようなセンサは、いくつかの実施形態において、誘導センサ、圧力センサ、加速度センサ、または光バリアである。例えば、センサは、フォーカス位置への到達時にサンプルラックに含まれる専用の検出要素を検出することができる。検出要素は、誘導センサの形態の近接センサによって検出できるフラグまたはプレートレットなどの導電性要素であってよい。
【0038】
ひとたび読み取り装置が適切にフォーカスされると、処理位置へと向かうラックの移動を再開することができる。いくつかの実施形態においては、例えばユーザに対して移動の再開を促すために、適切なフォーカスが検出され、信号によってユーザに示される。検出を、読み取り装置の制御ユニット、例えばLEDなどのランプによる光学信号、またはチャイムなどの音響信号、などを介した指示によって行ってもよい。上記のように、移動の再開は、レーン上のサンプルラックの経路から近位ストッパ要素を取り除くことや、例えば手動でより大きな力を加え、あるいはサンプルラックを傾け、もしくは持ち上げるなどの特定の動きを実行することによって近位ストッパ要素の抵抗に打ち勝つことに伴うことができ、あるいはこれらに続くことができる。前進移動の最中に、読み取り装置は、サンプルラックおよび/またはサンプル容器および/またはそれらの内容物に関する情報を記録する。例えば、サンプルラックは、一次元または二次元バーコードなどの識別子を有するサンプル容器を備えることができる。したがって、いくつかの実施形態において、読み取り装置は、ステップd)において、サンプル容器および/またはサンプルラック上の識別子を読み取る。いくつかの実施形態において、読み取り装置は、例えばLEDなどの光源を備える。光源を、とりわけ読み取り装置がレーザバーコードスキャナのようなバーコードスキャナであり、あるいはバーコードを読み取り、かつ/またはサンプルラックおよび/またはサンプル容器の他の特徴を検出するカメラである場合に、読み取り装置の光路に軸方向に位置合わせさせることができる。いくつかの実施形態においては、処理および/または制御ユニットが、読み取ったバーコードを復号することによって情報を取得し、その情報を対応するサンプル容器に関連付ける。その後に、情報を、生物学的サンプル材料に対するアッセイの実施、サンプル容器の内容物、例えば患者識別番号などの患者情報の識別に利用することができる。これに代え、あるいは加えて、読み取り装置は、サンプル容器および/またはサンプルラックの物理的特徴を検出することができる。いくつかの実施形態において、読み取り装置は、リーダは、サンプル容器および/またはサンプル容器内の生物学的サンプルの物理的パラメータを測定する。いくつかの実施形態において、物理的パラメータは、サンプル容器の直径である。例えば、細長いサンプル管などのサンプル容器の直径を上端部において測定することによって、サンプル容器の上部にキャップが存在するか否かを判定することができる。この相関関係を、専用のキャップがサンプル容器自体の直径とは異なる直径を有する場合に利用可能である。多くの場合、キャップの直径はサンプル容器の直径を超える。しかしながら、専用キャップの直径が対応するサンプル管の直径よりも小さい実施形態も考えられる。これに代え、あるいは加えて、読み取り装置は、収集された視覚データを処理するためのプロセッサを有するカメラであってよい。前記プロセッサは、直径以外の特性によってキャップなどの特徴を認識することによって、サンプル容器上のキャップなどの有無を判定することができる。
【0039】
遠位ストッパ要素によって定められる処理位置に到達すると、本方法の信頼性を確保し、下流の処理のための堅牢な開始点を提供するために重要であるいくつかの動作が実行される。
【0040】
処理位置におけるサンプルラックの位置決めは、ラックを周囲に対して位置合わせすることを意味する。とくには、例えば本明細書に記載の自動分析システムのサンプル受け入れベイ内のサンプル容器のうちの1つ以上に収容された生物学的サンプルの下流の処理は、サンプルラック、サンプル容器、および/またはサンプル容器の内容物と相互作用する分析装置のハウジング内の専用の要素またはモジュールを含み得る。例えば、キャップ取り外し装置が、サンプル容器からキャップを取り外すことができる。そのようなキャップは、ねじキャップまたは当技術分野で公知の任意の他の適切なキャップであってよい。キャップ取り外し装置は、例えば、ねじキャップを緩めるなどのための回転運動を実行するように構成されるロボットアームであってよい。いくつかの実施形態においては、キャップ取り付け装置またはキャップ再取り付け装置も、本明細書に開示される自動分析システムのハウジング内に存在する。いくつかの実施形態において、キャップ取り外し装置およびキャップ(再)取り付け装置は、同じモジュールまたは装置である。キャップ取り付け装置またはキャップ取り外し装置は、対応するキャップ、したがって対応するキャップによって覆われるサンプル容器との正確な空間的位置合わせに依存するため、処理位置におけるサンプルラックの適切な位置決めが、きわめて重大な役割を有する。さらに、ピペッタまたはピペッティングモジュールが、液体生物学的サンプルの場合に、容器内のサンプルと相互作用することができる。ピペッタが円滑に動作するために、サンプル容器とピペッタとの間の慎重な位置合わせが保証されなければならない。例えば、細長いサンプル容器が、その上部の開口部が水平方向を向くように傾いていると、例えばピペッティング針または使い捨てのピペット先端部を備えるピペッタが、サンプル容器の底部からはるかに遠いところでサンプル容器の内側側壁と衝突する危険性があり、したがってピペッタによる液体サンプルの円滑かつ完全な吸引が危うくなりかねない。さらに、そのような衝突は、システムエラーにつながる可能性があり、作業の中止、さらにはピペッタの詰まりまたは損傷を引き起こす可能性がある。また、いくつかの実施形態においては、容量式液面検出(cLLD)、超音波LLD、電気式LLD、などの液面検出(LLD)が、ピペッタによって処理位置で実行される。LLDも、いくつかの実施形態においてはピペッタに組み込まれるLLD装置に対するサンプルラックおよびサンプル容器の位置ずれによって妨げられる可能性がある。
【0041】
この文脈において、処理位置にサンプルラックを慎重に位置決めすることにより、キャップ取り付け装置および/またはキャップ取り外し装置、ピペッタ、などの構成要素をサンプル容器に適切に位置合わせすることが可能になる。これは、サンプル容器がサンプルラックの専用スロット内の所定の位置にぎっしりと保持される実施形態においてとくに重要である。
【0042】
「ピペッタ」は、例えば流体を移送し、または出し入れによって混合するために、流体の自動的な引き込みおよび/または送出を可能にする装置である。本明細書に記載の文脈において、これらの流体として、液体生物学的サンプル、液体生物学的サンプルを処理するために使用される試薬、洗浄液、希釈緩衝液、処理済みの液体、処理済みの分析物を含む液体、などが挙げられる。液体を、以下の位置/容器、すなわちサンプル管、中間処理管、試薬容器、廃棄物容器または位置、先端部洗浄ステーション、出力容器、反応管、などのいずれかから引き込み、送出することができる。とくには、ピペットを、本明細書に記載のサンプル容器から流体生物学的サンプルを吸引し、それらを例えば単離および/または分析などの下流の処理のための容器へと送出するために使用することができる。さらに、ピペッタを、サンプル調製用試薬、生物学的標的材料を結合させるための結合粒子の懸濁液、分析物の増幅および/または検出のための試薬、などの試薬を吸引および送出するために使用することができる。ピペッタは、いくつかの実施形態において、空気圧または液体の圧力によるシステムによって駆動される。圧力の液体として、ピペッタは、いくつかの実施形態において、水または当業者に知られているとおりの一般的に使用される試薬を使用することができる。
【0043】
ピペッタは、鋼製針などの1つ以上の再利用できる洗浄可能な針を備えることができ、あるいは使い捨てのピペット先端部を使用することができる。ピペッタを、例えばガイドレールによって平面内の1つまたは2つの移動方向に移動することができ、スピンドルドライブなどによって平面に直交する第3の移動方向に移動することができるピペッティングヘッドとも呼ばれる移送ヘッドに取り付けることができる。例えば、ピペッタを、管などの一次サンプル容器とマルチウェルプレートまたは別の標的位置との間で水平方向に移動させることができ、液体生物学的サンプルまたは他の液体を引き込み、または送出するために、垂直方向に移動させることができる。ピペッタは、作業セルに一体化、すなわち組み込まれてよく、あるいは作業セルに動作可能に接続されたシステムの一モジュールであってよい。ピペッタの位置および動作(体積、流量、流れの方向、などのパラメータを含む)を、以下で説明されるように、制御ユニットによって制御することができる。
【0044】
「制御ユニット」は、本明細書に記載の自動分析システムなどの自動システムを、処理プロトコルに必要なステップが自動システムによって実行されるようなやり方で制御する。すなわち、制御ユニットは、例えば、液体生物学的サンプルを試薬と混合するためにピペッタで特定のピペッティングステップを実行するように自動システムに指示することができ、あるいは制御ユニットは、特定の温度で特定の時間にわたって生物学的サンプルもしくは試薬または両方の混合物をインキュベートするように自動システムを制御し、あるいは制御ユニットは、グリッパ、正しいレーン内のサンプルラックへのフォーカスを含む本明細書に開示の読み取り装置、本明細書に記載の位置決め要素、本明細書に記載の検出要素、本明細書に記載のロック要素、本明細書に記載のインジケータシステム、本明細書に記載のシェーカー、本明細書に記載の透明窓、本明細書に記載の可動プラットフォーム、本明細書に記載の装てんプラットフォーム、本明細書に記載の加熱要素、本明細書に記載の弁システム、および/もしくは本明細書に記載のピペッタの正確な動作、または本明細書に記載の自動分析システムの他の動作もしくは関連のパラメータを制御する。制御ユニットは、特定のサンプルでどのステップを実行する必要があるかに関する情報をデータ管理ユニット(DMU)から受信することができる。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、データ管理ユニットと一体であってよく、あるいは共通のハードウェアによって具体化されてよい。制御ユニットは、例えば、プロセス動作計画に従って動作を実行するための命令を備えたコンピュータ可読プログラムを実行するプログラム可能論理コントローラとして具現化されてよい。とくに、制御ユニットは、所定の時間内に上述の移動などの一連のステップを実行するためのスケジューラを含むことができる。さらに、制御ユニットは、アッセイの種類、緊急性、などに従って、サンプルの処理の順序を決定することができる。制御ユニットは、サンプルのパラメータの測定に関するデータを検出ユニットから受信することもできる。
【0045】
「データ管理ユニット」は、データの格納および管理のためのコンピューティングユニットである。これは、自動システムによって処理される液体サンプルに関するデータ、または自動システムの特定のモジュールによって実行されるステップに関するデータを含むことができる。データ管理ユニットは、LIS(実験室情報システム)および/またはHIS(病院情報システム)に接続されてよい。データ管理ユニット(DMU)は、相互作用の対象の自動システム内のユニット、またはそのような自動システムと同じ場所に位置するユニットであってよい。制御ユニットの一部であってもよい。あるいは、DMUは、自動システムから遠隔に配置されたユニットであってもよい。例えば、自動システムに接続され、例えば本明細書に記載の自動分析システムの制御ユニットに接続されたコンピュータにおいて具現化されてよい。
【0046】
上記で概説したように、サンプルラック、したがってサンプル容器の正しい座標を確認することの重要性に加えて、それらの適切な向きを提供することも有利である。例えば、サンプルラックがx軸、y軸、およびz軸上の座標に関して正しく配置されているが、この特定の場所において傾いている場合、キャップ取り付け装置、ピペッタ、グリッパ、などの他の構成要素が、サンプル容器と円滑に相互作用することができない可能性がある。サンプルラックが配置されて移動するレーンは、好ましくは重力の軸に実質的に直交する平坦、均一、かつ滑らかな表面であることによって、位置決めに寄与する。いくつかの実施形態において、処理位置におけるサンプルラックの位置決めは、6つのすべての空間的自由度に関するサンプルラックの位置合わせを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、分析位置におけるサンプルラックの位置決めは、フィン、リブ、台形、ガイドレール、留め具、ばね留め具、ラッチ、回転ラッチ、またはU字形ブラケットなどのブラケットからなる群から選択される1つ以上の位置決め要素によって行われる。いくつかの実施形態において、位置決め要素は、レーンに一体化されたガイドレールである。いくつかの実施形態において、位置決め要素は、これらの要素のうちの2つ以上からなる組み合わせである。いくつかの実施形態において、組み合わせは、ガイドレール、回転ラッチ、およびばね留め具の組み合わせである。いくつかの実施形態において、組み合わせは、ガイドレールと遠位ストッパ要素との組み合わせである。より具体的な実施形態において、遠位ストッパ要素は、ブラケットである。ブラケットは、例えば、U字形として具現化されてよい。
【0048】
処理位置に到達すると、この位置でサンプルラックの存在がさらに検出される。そのような検出を、例えば、センサまたは複数のセンサなどの検出要素によって達成することができる。いくつかの実施形態において、処理位置におけるサンプルラックの検出は、例えばフォーク状の光バリアなどの光バリア、誘導センサ、またはタッチセンサからなる群から選択される1つ以上の検出要素によって実行される。フォーカス位置の場合と同様に、サンプルラックに含まれる専用の要素が、サンプル受け入れベイの相手方部分と相互作用することができる。いくつかの実施形態においては、サンプルラックに含まれる導電性要素が、処理位置のそれぞれのレーン上またはその近くに配置された誘導センサにおいて検出することができる電流を誘導する。また、いくつかの実施形態においては、サンプルラックに含まれる機械的要素が、サンプルラックを位置決めするときの回転時にフォーク状の光バリアなどの光バリアを遮断する。いくつかの実施形態において、機械的要素は、ラッチ、ノブ、などの突起である。いくつかの実施形態において、位置決め要素および検出要素は、単一の構造体に組み合わせられる。位置決め要素がU字形ブラケットなどのブラケットである上記の実施形態においては、ブラケットのサイドピースが、いくつかの実施形態において、フォーク状の光バリアの端部である。より正確には、U字形の一方のサイドピースが、レーザなどの光源を備え、U字形の対向するサイドピースが、検出器を備える。そのような実施形態において、フォーク状の光バリアは、位置決めブラケットとして、ラックを処理位置に位置合わせさせるのに寄与し、さらに光ビームによって検出も実行する。
【0049】
サンプルラックを処理位置にロックすることは、ロックされないならば、慎重な位置決めが不安定になる可能性があり、グリッパまたはピペッタとの相互作用などの機械的影響によって乱され、完全に損なわれる可能性すらあるため、位置決めことと同様に重要である。したがって、ロックステップは、サンプルラックを適切に位置した位置合わせに拘束する。いくつかの実施形態では、位置決めは、6つのすべての空間自由度に関して固定される。
【0050】
いくつかの実施形態において、ロックは、ロックボルト、ロックピン、カムロック、磁石、ソレノイドロック、バー、ブラケット、またはキャッチからなる群から選択される1つ以上のロック要素によって実行される。
【0051】
例えば、ロックボルトは、サンプルラックの対応する凹部または貫通孔に係合することによって、サンプルラックを処理位置に拘束することができる。
【0052】
いくつかの実施形態においては、処理位置におけるサンプルラックのロックが、ソレノイドロックによって行われる。そのような実施形態において、ソレノイドロックをラックが処理位置に検出されたときに作動させることができ、ソレノイドがロック状態に移行することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、ソレノイドロックは、例えばレーンの下方からサンプルラックの孔へと上方に、場合によってはサンプルラックの孔を通過するように、サンプルラックの孔を通って垂直方向に押されることによってサンプルラックに係合し、したがってサンプルラックを所定の位置にロックすることができる。他の実施形態において、ソレノイドロックは、レーンの下方に、レーンに実質的に平行に配置される。そのような実施形態において、ソレノイドロックは、水平移動を実行することによって、くさび機構を介してサンプルラックの孔を通って垂直ロックボルトを持ち上げるように構成される。したがって、いくつかの実施形態において、ロック要素は、水平方向のソレノイドロックと垂直方向のロックボルトとの組み合わせである。
【0053】
また、いくつかの実施形態において、ロック要素は、位置決め要素および/または検出要素と直接相互作用する。例えば、回転ラッチがサンプルラックを処理位置に位置決めする実施形態において、ロック要素、例えばソレノイドロックが、回転ラッチを処理位置にロックすることができる。サンプルラックを位置決めするための回転ラッチが、サンプルラックを位置決めするときに回転してするとフォーク状の光バリアなどの光バリアを遮断する実施形態において、ソレノイドロックなどのロック要素は、回転ラッチが光バリアを遮断する位置にロックされるように、回転ラッチを処理位置にロックすることができる。
【0054】
ユーザは、多くの場合、サンプルの処理後にサンプルラックを分析装置から取り出すことを望むため、ロックはいくつかの実施形態において可逆的である。例えば、ソレノイドロックを含む上述の実施形態において、ユーザがサンプル受け入れベイからサンプルラックを取り出すことができるように、ソレノイドを開状態にリセットすることができる。
【0055】
サンプル容器の生物学的サンプルの処理は、さまざまな処置を含み得る。典型的には、とりわけ臨床サンプル材料などの生物学的サンプルの場合に、サンプルは、特定の種類の分析物を濃縮または単離する調製プロセスに供される。サンプル材料を、生物学的標的材料を含有すると疑うことができる。
【0056】
「生物学的標的材料」または「生物学的材料」は、本開示の意味において、例えばタンパク質または核酸などのあらゆる種類の生物学的分子を含むが、天然に存在し、もしくは誘導体である他の分子、またはそれらの合成類似体もしくは変異体も含む。さらに、「生物学的材料」という用語は、ウイルスならびに真核および原核細胞を含む。いくつかの実施形態において、生物学的標的材料は、DNA、RNA、またはPNAなどの核酸である。DNAは、例えば、ウイルスDNA、ゲノムDNA、またはプラスミドDNAであってよい。生物学的標的材料は、天然であってよく、あるいは変更されてよい。天然の生物学的材料は、生物から単離されたDNAまたはRNAなどのそれぞれの天然に生じる生物学的材料と比較して不可逆的に変化していない。変更された生物学的材料は、例えば、核酸またはタンパク質などのビオチン化分子を含む。
【0057】
本明細書において使用されるとき、「生物学的サンプル」という用語は、対象の分析物を含む可能性のある材料を指す。同じことが、血液、唾液、眼の水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、便、精液、膣液、母乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、培養細胞、などを含む生理液などのあらゆる生物学的起源に由来し得る「液体生物学的サンプル」に当てはまる。検査サンプルを、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈または希釈全般、溶解、など、使用に先立って事前に処理することができる。処理の方法は、濾過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活性化、および試薬の添加を含むことができる。生物学的サンプルを、出所から得られたままで直接使用することができ、あるいはサンプルの特性を変更するための前処理の後に使用することができる。いくつかの実施形態においては、最初は固体または半固体の生物学的材料が、適切な液体媒体で溶解させ、あるいは懸濁させることによって、液体にされる。さらなる実施形態において、サンプルは、例えば洗浄緩衝液で前処理されていてもよい。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、特定の抗原または核酸を含んでいる可能性が疑われる。
【0058】
本開示の文脈において、生物学的標的材料の「単離」、「精製」、または「抽出」という用語は、以下に関係する。例えば核酸などの生物学的標的材料は、増幅などによって診断アッセイで分析することが可能になる前に、典型的には、さまざまな成分の複雑な混合物を含んでいる生物学的サンプルから精製、単離、または抽出されなければならない。細胞(ヒトまたは外因性)またはウイルスなどの生物学的標的材料は、多種多様な異なる生体分子を含有し、多くの場合、これらの分子のサブグループのみが、所与の種類の分析において関心の対象である。例えば、下流のプロセスにおいてPCRによって分析される核酸を、他の生体分子から分離する必要があるかもしれない。
【0059】
典型的には、第1のステップのうちの1つは、例えば酵素および/または化学試薬を使用することによって、細胞またはウイルス粒子の内容物を放出することを含む。このプロセスは、一般に、溶解と呼ばれる。溶解物中の問題の分析物を濃縮するために、核酸を結合させるための1つの有用な手順は、カオトロピック塩溶液中の磁性粒子などの結合粒子のガラスまたはシリカ表面への核酸の選択的結合、およびアガロース、タンパク質、または細胞残屑などの汚染物質からの核酸の分離を必要とする。そのような組成物は、組成物がそのような結合に通常必要なカオトロピック剤をすでに含有しているため、核酸をガラス表面に結合させる場合にとくに有用であり得る。
【0060】
さらに、このように精製された生物学的材料を、いくつかの実施形態において、生物学的または生化学的分析に供することができる。生物学的標的材料のそのような下流の分析は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)もしくは核酸の配列決定、またはELISAなどのタンパク質の抗体媒介アッセイ、などを含むことができる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態において、分析は、増幅による核酸の定性的および/または定量的検出を含む。いくつかの実施形態において、増幅技術はPCRである。そのような実施形態において、本明細書に記載の自動分析システムは、サーマルサイクラーを備えることができる。標的核酸を分析するために、等温増幅(LAMP、TMA、など)、LCR、などの他の増幅技術を適用することも可能である。いくつかの実施形態において、分析は、核酸の配列決定を含む。
【0061】
複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを自動分析システムのハウジング内のサンプル受け入れベイへと導入するための方法の実行の文脈において、対応する自動分析システムも、本明細書において説明される。
【0062】
したがって、本明細書に開示される一態様は、生物学的サンプルを処理するための自動分析システムであって、
-ハウジングと、
-複数のサンプル容器を保持するように構成されるサンプルラックと、
-前記ハウジングの内部のサンプル受け入れベイであって、複数のレーンを有し、前記複数のレーンは、互いに実質的に平行に配置され、かつ、複数のサンプル容器を保持するように構成される前記サンプルラックを収容するように構成される、サンプル受け入れベイと、
-レーン上のフォーカス位置を定める近位ストッパ要素と、
-レーンと実質的に同じ水平面内の読み取り装置と、
-レーン上の処理位置を定める遠位ストッパ要素と、
-サンプルラックを処理位置に位置決めするように構成される位置決め要素と、
-サンプルラックを処理位置で検出するように構成される検出要素と、
-サンプルラックを処理位置にロックするように構成されるロック要素と、
-サンプル容器内の生物学的サンプルを処理するように構成される処理モジュールと
を備える、自動分析システムである。
【0063】
生物学的サンプルを処理するための自動分析システムの条件および実施形態は、複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを自動分析システムのハウジング内のサンプル受け入れベイへと導入するための本明細書に開示の方法の文脈において説明される条件および実施形態と同じである。
【0064】
本明細書で説明される別の態様は、生物学的サンプルを処理するための自動分析システムであって、
-ハウジングと、
-複数のサンプル容器を保持するように構成されるサンプルラックと、
-前記ハウジングの内部のサンプル受け入れベイであって、複数のレーンを有し、前記複数のレーンは、互いに実質的に平行に配置され、かつ、複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを収容するように構成される、サンプル受け入れベイと、
-サンプルラックが検査位置に位置するときにサンプルラックの専用のサンプル容器スロットに位置合わせしてレーンの各々に沿って配置され、それぞれのサンプル容器スロット内のサンプル容器の状態を示すように構成されるインジケータシステムと、
-サンプル容器内の生物学的サンプルを処理するように構成される処理モジュールと
を備える、自動分析システムである。
【0065】
この自動分析システムは、是正措置を必要とするサンプルを含むサンプル容器に対して手動処理を実行する可能性をユーザに提供することに関して、とくに有利である。例えば、全血などの生物学的サンプルマトリックスは、凝血塊を形成する傾向があり、凝血塊は、問題のサンプルの円滑な処理を妨げ、いくつかの実施形態においては分析を妨げる可能性がある。この例における凝血塊の溶解など、ユーザが適切な是正措置を適用するために、システムは、所与のサンプルラックに保持された複数のサンプル容器のうちの1つ以上のどのサンプル容器が、処理モジュールにとって問題を引き起こすそのようなサンプルを含んでいるかを示す必要がある。
【0066】
当技術分野における一般的な手法は、例えば、サンプルラック内の影響を受けたサンプル容器の位置を外部ディスプレイ上に表示することを含む。そのような解決策は、ユーザが、画面に示されたとおりのラック内の影響を受けたサンプル容器を識別するために、ディスプレイとラックとの間で視線を切り替えなければならないため、面倒かつ間違いやすい。
【0067】
本明細書に開示される自動分析システムのインジケータシステムは、影響を受けたサンプル容器を保持するサンプルラックのスロットのその場にフラグを立てることによって、そのような問題に対する洗練された複雑でない改善策を提供する。ここで、ユーザは、影響を受けたサンプル容器のすぐ近くの信号によって、その場でサンプルラックのそのようなスロットを直接識別することができる。
【0068】
この文脈において、「検査位置」は、サンプル受け入れベイの表面におけるサンプルラックの位置であって、例えばユーザが自動分析システムの開閉可能な窓などのインターフェースを介してサンプル容器を有するラックにアクセスすることができる位置である。
【0069】
いくつかの実施形態において、インジケータシステムは、サンプル受け入れベイの表面上または表面内の光源を備え、光源は、サンプルラックの専用のサンプル容器位置に近接して位置する光放射窓に光学導光システムを介して光学的に結合する。
【0070】
光信号は、問題のあるサンプルを見つけるためにユーザにとってきわめて便利である。ユーザは、その場所について手動介入を直接実行し、例えば、影響を受けたサンプル容器がサンプルラックの専用のサンプルスロットに保持されている間に、影響を受けたサンプル容器のサンプル内の凝血塊を除去することができる。このプロセスの全体を通して、いくつかの実施形態においては、それぞれのサンプル容器を示す光信号が作動したままであり、したがってユーザが異なる容器の誤ったサンプルを処理する恐れが大幅に低減される。
【0071】
サンプルラックから光源を物理的に分離することで、サンプルラックの複雑さが比較的低いレベルに保たれるという利点がもたらされる。サンプルラックに光源を一体化させると、電池などの電源が必要になると考えられる。これは、それぞれのサンプルラックをより高価かつ複雑にするだけでなく、外部の影響に対してより敏感にする。例えば、とりわけ臨床環境におけるサンプルラックの清掃は、多くの場合に、サンプル材料中に存在し得る病原体などの潜在的に有害な汚染物質を除去するために、サンプルラックを過酷な条件にさらすことを含む。例えば漂白剤を含む溶液にサンプルラックを浸漬すると、サンプルラックに組み込まれた光源および電池などが損傷する可能性がある。本明細書に記載の光学導光システムは、そのような制限を克服することができる。
【0072】
光学導光システムは、光源からの光をそれぞれの放射窓へと導くために適したさまざまな構成要素を備えることができる。例えば、可動プラットフォーム上または可動プラットフォーム内の単一の光源の場合、光を専用の出力位置へと導くために光ファイバの配置を使用することができる。そのような実施形態において、単一の光源によって放射された光は、それぞれが光源を専用の光放射窓に接続する複数の個別の光ファイバへと分割される。そのようなファイバは、例えばポリマーなどの可撓性を付与する材料を含み得る。対応する光ファイバケーブルを、それらの出力を光放射窓へと向け、それらの入力を光源に近接させて配置して、サンプルラックの全体に配置してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、光源は、LEDなどの複数の個別の光源を備え、個別の光源の各々は、光放射窓に光学導光システムを介して光学的に結合する。
【0074】
光ファイバによる解決策は、このような複数の個々の光源の場合にも同様に考えられ、光源の数は、対応する光放射窓の数以下である。
【0075】
いくつかの実施形態において、レーンに沿った個々の光源の数は、サンプルラックの専用のサンプルラック位置および/または光放射窓の数に一致する。
【0076】
とくに、個々の光源の数が対応する光放射窓の数に等しい場合、光学導光システムは、剛体導光要素を備えることができる。いくつかの実施形態において、個々の光源は、検査位置のサンプルラックの専用のサンプル容器スロットおよび対応する光放射窓の実質的に直下に配置される。
【0077】
そのような実施形態において、導光ロッドをサンプルラック内のサンプル容器スロットに実質的に平行に配置することができる。さらに、いくつかの実施形態において、光学導光システムは、サンプルラック内のサンプル容器スロットに実質的に平行に配置されたトンネルで構成される。このさらに単純な解決策は、放射窓における光出力を減少させる可能性があるが、サンプルラックの複雑さをさらに低減することができる。例えば、本明細書に記載のサンプルラック清掃方法に関して、トンネルはきわめて堅牢な解決策である。
【0078】
いくつかの実施形態において、光放射窓は、表示色の光を発するように構成される。単純な場合、光放射窓は、着色された材料からなる透明スクリーンなどのフィルタを備えることができる。より複雑な実施形態においては、複数の光源が、例えば異なる色の光ビームを生成するために、可視スペクトルの異なる波長の光を放射する。異なる色は、示されるサンプル容器のサンプルのさまざまな状態を示すことができる。例えば、サンプルが上述のように凝固し、ユーザによる混合または再ピペッティングを必要とする可能性がある。該当のサンプル容器を保持するサンプルラックスロットを、例えば、赤色の光によって示すことができる。ユーザによる介入を必要としないサンプル容器を、緑色の光によって示すことができる。誤ってキャップされたサンプル容器を保持するスロットを、オレンジ色の光によって示すことができ、以下同様である。
【0079】
この文脈において、生物学的サンプルを処理するための方法が本明細書に記載され、本方法は、
a)複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを上述の自動分析システムへと導入するステップと、
b)インジケータシステムによって、検査を必要とするサンプルラックの専用のスロット内のサンプル容器内のサンプルを示すステップと、
c)対応するサンプルを検査し、必要に応じてサンプルについて是正措置を実行するステップと
を含む。
【0080】
特定の状況においては、自動分析システムのハウジングの外部の追加の作業面などの追加の作業空間を生成することが望ましい。例えば、サンプルをハウジングの外部で操作すべき場合に、ユーザは、例えばサンプルラック内のサンプル容器を収容し、手動のステップを実行した後にハウジングへと再び導入するための便利で容易に手が届くプラットフォームを評価するであろう。
【0081】
したがって、本明細書で説明される関連の態様は、生物学的サンプルを処理するための自動分析システムであって、
-ハウジングと、
-複数のサンプル容器を保持するように構成されるサンプルラックと、
-前記ハウジングの内部のサンプル受け入れベイであって、複数のレーンを有し、前記複数のレーンは、互いに実質的に平行に配置され、かつ、複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを収容するように構成される、サンプル受け入れベイと、
-ハウジングから水平方向に延出してハウジングの外部に複数のレーンの延長部を形成するように構成される可動プラットフォームであって、サンプルラックをプラットフォーム上で露出検査位置に位置決めするように構成される位置決め要素を有するプラットフォームと、
-サンプルラックが露出検査位置に位置するときにサンプルラックの専用のサンプル容器スロットに位置合わせして延長されたレーンの各々に沿って配置され、それぞれのサンプル容器スロット内のサンプル容器の状態を示すように構成されるインジケータシステムと、
-サンプル容器内の生物学的サンプルを処理するように構成される処理モジュールと
を備える、自動分析システムである。
【0082】
可動プラットフォームは、ハウジングの外部に延ばすことが可能であるため、「露出検査位置」は、いくつかの実施形態では、ラックがハウジングによって覆われてはいない位置である。実際に、ユーザは、例えばプラットフォームが完全に引き出されているが、依然として自動分析システムのサンプル受け入れベイに取り付けられたままであるなど、機械的なストッパに到達するまで、可動プラットフォームを自身に向かって引き寄せることができる。次いで、ユーザは、サンプルラックを延長された可動プラットフォーム上へとレーンに沿ってスライドさせつつハウジングから引き出すことによって、サンプル受け入れベイからサンプルラックを取り出すことができる。その後に、サンプルラックは、ラックがユーザにとって容易にアクセス可能である露出検査位置に到達すると、バッフルまたはフックなどの機械的ストッパに到達することができる。さらなる利点として、ユーザは、自動分析システムのハウジングの外側のインジケータシステムの信号を遮られることなく視認できることからも利益を得る。
【0083】
「可動プラットフォーム」は、上記のように、引き出しのように出し入れすることが可能であってよい。いくつかの実施形態においては、プラットフォームを、レーンに実質的に平行な直線運動にて延ばすことができる。そのような実施形態において、プラットフォームは、ガイドレール間にスライド可能に架けられてよい。他の実施形態においては、プラットフォームを、実質的に90°の角度に達するまでプラットフォームの左側または右側の分析装置の前方のユーザに向かってプラットフォームを引っ張り、その後にそれぞれの位置でプラットフォームを拘束することを含む回転運動にて延ばすことができる。いくつかの実施形態において、プラットフォームは、格納された状態においてサンプル受け入れベイ内のレーンの下方に配置される。延長時に、可動プラットフォームは、サンプル受け入れベイ内のレーンよりも延びることができ、この完全に延びた状態において、サンプル受け入れベイ内のレーンに対する均一な延長を形成するように上方への動きによって拘束可能である。
【0084】
この文脈において、生物学的サンプルを処理するための方法が本明細書に記載され、本方法は、
a)複数のサンプル容器を保持するサンプルラックを上述の自動分析システムのサンプル受け入れベイへと導入することと、
b)サンプル受け入れベイの外部、したがってハウジングの外部に、可動プラットフォームを延ばすことと、
c)サンプルラックを露出検査位置まで延ばすことと、
d)インジケータシステムによって、検査を必要とするサンプルラックの専用のスロット内のサンプル容器内のサンプルを示すことと、
e)対応するサンプルを検査し、必要に応じてサンプルについて是正措置を実行することと、
f)ラックをハウジング内のサンプル受け入れベイに戻すことと、
g)可動プラットフォームを格納位置に戻すことと
を含む。
【0085】
上述のさまざまな自動分析システムの利点を、それらの特徴を統合することによって組み合わせることができる。
【0086】
したがって、本明細書で説明される別の態様は、生物学的サンプルを処理するための自動分析システムであって、
-ハウジングと、
-複数のサンプル容器を保持するように構成されるサンプルラックと、
-前記ハウジングの内部のサンプル受け入れベイであって、複数のレーンを有し、前記複数のレーンは、互いに実質的に平行に配置され、かつ、複数のサンプル容器を保持するように構成される前記サンプルラックを収容するように構成される、サンプル受け入れベイと、
-レーン上のフォーカス位置を定める近位ストッパ要素と、
-レーンと実質的に同じ水平面内の読み取り装置と、
-レーン上の処理位置を定める遠位ストッパ要素と、
-サンプルラックを処理位置に位置決めするように構成される位置決め要素と、
-サンプルラックを処理位置で検出するように構成される検出要素と、
-サンプルラックを処理位置にロックするように構成されるロック要素と、
-サンプルラックが検査位置に位置するときにサンプルラックの専用のサンプル容器スロットに位置合わせしてレーンの各々に沿って配置され、それぞれのサンプル容器スロット内のサンプル容器の状態を示すように構成されるインジケータシステムと、
-サンプル容器内の生物学的サンプルを処理するように構成される処理モジュールと
を備える、自動分析システムである。
【0087】
上述のように、追加の便利な作業空間が有利である可能性があり、したがって、本明細書に記載の別の態様は、生物学的サンプルを処理するための自動分析システムであって、
-ハウジングと、
-複数のサンプル容器を保持するように構成されるサンプルラックと、
-前記ハウジングの内部のサンプル受け入れベイであって、複数のレーンを有し、前記複数のレーンは、互いに実質的に平行に配置され、かつ、複数のサンプル容器を保持するように構成される前記サンプルラックを収容するように構成される、サンプル受け入れベイと、
-レーン上のフォーカス位置を定める近位ストッパ要素と、
-レーンと実質的に同じ水平面内の読み取り装置と、
-レーン上の処理位置を定める遠位ストッパ要素と、
-サンプルラックを処理位置に位置決めするように構成される位置決め要素と、
-サンプルラックを処理位置で検出するように構成される検出要素と、
-サンプルラックを処理位置にロックするように構成されるロック要素と、
-ハウジングから水平方向に延出してハウジングの外部に複数のレーンの延長部を形成するように構成される可動プラットフォームであって、サンプルラックをプラットフォーム上で露出検査位置に位置決めするように構成される位置決め要素を有するプラットフォームと、
-サンプルラックが露出検査位置に位置するときにサンプルラックの専用のサンプル容器スロットに位置合わせして延長されたレーンの各々に沿って配置され、それぞれのサンプル容器スロット内のサンプル容器の状態を示すように構成されるインジケータシステムと、
-サンプル容器内の生物学的サンプルを処理するように構成される処理モジュールと
を備える、自動分析システムである。
【0088】
上述のように、サンプル容器内の生物学的サンプルの処理は、標的分析物の精製を含むことができ、この目的のために結合粒子を利用することができる。例えば、適切な結合粒子は、ナノビーズを含むビーズなどの粒子状材料を含み、あるいはそのような粒子状材料で構成される。いくつかの実施形態において、それらは、例えば分子、細胞、またはウイルスであってよい特定の生物学的標的を結合させるための分析物結合粒子である。それらの実施形態において、粒子は、例えば核酸捕捉プローブ、mRNAを結合させるためのオリゴ鎖またはポリ(dT)鎖、免疫グロブリンのFc部分を結合させるためのプロテインA、特異タンパク質を結合させるための抗体のFabフラグメント、ヒスチジンタグを結合させるためのニッケル、ストレプトアビジンもしくはビオチン、インテグリン、アドヘシン、または他の細胞表面分子など、特異的または非特異的な結合分子でコーティングされた表面を有することができる。いくつかの実施形態において、生物学的標的分子は、特定の細胞を分析物結合粒子によって捕捉できるような細胞表面分子である。一実施形態において、単分散シラン化フェリ磁性酸化鉄粒子のサイズの差は、平均で5%未満である。特定の実施形態において、粒子のサイズまたは直径はnという値を有し、nは20nm~600nmの値である。さらに特定の実施形態において、粒子のサイズまたは直径はnという値を有し、nは100nmである。
【0089】
磁性ガラス粒子などの結合粒子が、いくつかの実施形態においては、懸濁液として保存および使用される。生物学的材料の単離のための結合粒子の懸濁液を含む容器が、例えばシェーカー上で震盪させられ、あるいは撹拌器で混合される。撹拌器が、別の汚染源となり得る一方で、震盪は、こぼれによって懸濁液を失うという問題を引き起こす。他方で、自動化された解決策においては、容器上にカバーを配置することが、懸濁液の取り出しを可能な限り容易なやり方で可能にすべきであるという問題につながる。例えば、毎度の取り出しに先立つカバーの取り外しは、結合粒子の懸濁液を提供するための方法において追加のステップを必要とし、容器を開くことで汚染のリスクも高くなる。
【0090】
本明細書において説明される一態様は、生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するためのシステムであって、
-生物学的材料を結合させるための結合粒子の懸濁液を収容する容器と、
-容器を震盪させ、結合粒子を懸濁させるように構成され、容器を震盪位置にロックするように構成されるバヨネットロックを備えているシェーカーと
を備える、システムである。
【0091】
上述のとおりの結合粒子を提供するためのシステムのバヨネットロックは、懸濁液容器を専用のシェーカーに係合させる有利なやり方を提供する。とりわけ、このステップが手動で行われる実施形態において、バヨネットロックは、ユーザが過度に大きな力を加える必要なく、容器とシェーカーとの間の緊密なロックを達成することを可能にする。当技術分野で知られているように、バヨネットロックは、構成要素をロック状態へと回転させるという原理に基づく。
【0092】
さらに特定の実施形態において、本システムは、複数のピペットまたはピペット先端部を備える。例えば、柔軟性および処理能力の向上の両方に寄与するマルチチャネルピペット。
【0093】
したがって、本明細書において説明される別の態様は、生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するためのシステムであって、
-複数のピペットまたはピペットチップの直線配置と、
-生物学的材料を結合させるための結合粒子の懸濁液を収容し、カバーを備えており、前記カバーは、複数のピペットまたはピペットチップの直線配置のために、開口部を有し、かつ/または貫通可能である容器と、
-容器を震盪させ、結合粒子を懸濁させるように構成され、容器を震盪位置にロックするように構成されるバヨネットロックを備えているシェーカーと
を備える、システムである。
【0094】
上述の懸濁液容器の利点の1つは、複数のピペットまたはピペット先端部の直線配置のために開口部を有し、かつ/または貫通可能であるカバーである。このようにして、結合粒子の懸濁液を取り出すためにカバーの取り外しが不要でありながら、こぼれおよび汚染の両方のリスクが大幅に低減される。懸濁液容器を、開放を必要とすることなく空になるまで懸濁液を提供するために使用することができる。
【0095】
カバーは、複数のピペットまたはピペット先端部の直線配置のために開口部を有し、かつ/または貫通可能であるため、結合粒子の懸濁液の提供の並列化に好都合に使用することができる。複数のピペットを使用することにより、ユーザは、結合粒子の懸濁液を複数の容器に同時に送出することができ、ピペットを個別に制御することができる場合、効率および柔軟性の両方を高めることができる。
【0096】
上記のシステムの場合に、生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するための対応する方法は、以下のステップ、すなわち
a)生物学的材料を結合させるための結合粒子の懸濁液を収容する容器であって、随意によりカバーを備えており、このカバーが、複数のピペットまたはピペット先端部の直線配置のために開口部を有し、かつ/または貫通可能である容器を、バヨネットロックを備えるシェーカーへと、容器を所定の水平変位角度でシェーカーに押し付け、変位と反対の方向に容器を水平に回転させて、容器を震盪位置に位置合わせさせてロックすることにより、固定するステップと、
b)震盪位置の前記容器をシェーカーで震盪させ、結合粒子を懸濁させるステップと
を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、所定の水平変位角度は、90°以下であり、いくつかの実施形態においては1°~60°、または5°~45°、または約20°である。
【0098】
さらに、本明細書に記載の自動分析システムは、ユーザがハウジングの内部にアクセスするためのインターフェースを有することができる。
【0099】
したがって、本明細書で説明される別の態様は、生物学的サンプルを処理するための自動分析システムであって、
a)ハウジングと、
b)システムのハウジング内での処理を観察および操作するためのインターフェースと、
c)インターフェースを開閉するための透明な窓であって、開位置または閉位置の間をスライド可能であり、窓を開位置、閉位置、または両者の間の位置に保持するように構成されるカウンタウエイトを備える透明な窓と
を備える、自動分析システムである。
【0100】
透明な窓は、分析装置の内部でのプロセスのユーザ視認性を便利に提供するが、ユーザがハウジング内の構成要素と物理的に相互作用できるように窓を開く必要があり得る。例えば、構成要素を洗浄もしくは交換しなければならない場合があり、または他のメンテナンス処置を実行しなければならない場合がある。また、例えばサンプルラック内のサンプル容器との相互作用が望まれ、あるいは必要となる可能性がある。
【0101】
当技術分野における一般的な手法は、スイング式またはスライド式で開くことができる一方で、従来からのヒンジ、機械的ばね、ガスばね、などによって安定化される窓を含む。例えば分析装置の上方の開位置にガスばねによって保持される窓は、下方へと、場合によってはハウジングの内部を検査している最中のユーザの頭部または背中に、落下する危険性がある。これは、とりわけ、ガスばねなどの安定化要素が寿命の終わりに近づき、次第に圧力を失う場合に当てはまる。上述の窓によって使用されるカウンタウエイトは、そのような事故のリスクを最小限に抑える安定した耐久性のある解決策を提供する。
【0102】
さらに、本明細書に開示される自動分析システムは、試薬容器のための貯蔵ユニットを備えることができる。そのような貯蔵部は、例えば、分析装置から試薬を取り出して新鮮な試薬を供給することを可能にする引き出しに含まれてよい。いくつかの実施形態においては、臨床診断において日常的に使用される特定の試薬が、長期間にわたって高温または室温で保存された場合でさえも劣化する傾向があるため、貯蔵ユニットが冷却室である。しかしながら、試薬貯蔵部を冷却すると、とりわけ分析装置が温暖または高温の気候条件の場所に配置されている場合に、一方、すなわち冷却された内部と、他方、すなわち周囲環境との間に、著しい温度差が生じる可能性がある。冷却された区画の外面において凝縮が生じ、以下で説明されるような問題を引き起こす可能性がある。
【0103】
自動分析システムにおいて、上述のようなピペッタなどの操作モジュールによる試薬容器およびその内容物へのアクセスを可能にすることが、さらに有利である。ピペッタは、典型的には、単に重力ゆえに対応する容器の上方から作用するため、ピペッタを貯蔵部に進入させ、試薬を冷却室内の指定された容器に出し入れするために、冷却された貯蔵室の上部に窓または単にスリットを開くことができる。ここで、開口部が生成されると、冷却室の上面に形成されている可能性がある凝縮水の液滴が、下方の試薬容器に滴り落ちる可能性がある。これは、容器内の試薬の希釈の恐れを生じさせるだけでなく、試薬に汚染物質を持ち込む恐れも生じさせる。交差汚染は、とりわけ臨床診断において生じると、結果が影響を受ける可能性があり、サンプル材料が損傷し、使い物にならなくなる可能性すらあるため、深刻な問題である。例えば、病原性核酸配列に関して検査される患者サンプルが、交差汚染核酸の存在のために誤って陽性と見なされかねない。
【0104】
これに関連して、本明細書に開示される別の態様は、生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するためのシステムであって、
a)底部および上部を有する実質的に断熱されたハウジングであって、上部は、開状態と閉状態との間で切り替え可能な開口部を備える蓋によって覆われているハウジングによって囲まれた冷却室と、
b)冷却室内に配置され、開放可能または貫通可能な上部を有する試薬容器と、
c)冷却室の上方に配置され、冷却室を覆う蓋の開口部を通して試薬容器から試薬を吸引するように構成されるピペッタと、
d)冷却室を覆う蓋の下方に熱接触させて配置され、蓋の上面の温度が冷却室の外側の空気の露点よりも高くなるように蓋を加熱するように構成される加熱要素と
を備える、システムである。
【0105】
本開示の文脈における「加熱要素」は、例えば、アルミニウムおよびその合金、銅、鋼、銀、アルミナセラミック、および/または炭化ケイ素などの材料から製作されてよい。実質的に加熱要素が金属から製作される実施形態において、さらなる利点が、例えば自動液体処理システムにおいて一般的に使用される容量式の水位検出方法によって水位検出を容易にすることによって達成される。
【0106】
「熱接触」は、加熱要素と表面との間の実質的に妨げられることのない熱伝達が可能であるように、直接的な物理的接触または近接および/または熱伝導媒体によって媒介される接触のいずれかを意味する。加熱要素は、いくつかの実施形態において、外部凝縮が回避されるべき表面に直接物理的に接触させ、あるいは近接させて配置される。
【0107】
本明細書に開示されるシステムのいくつかの実施形態において、加熱装置は、温度センサをさらに備える。加熱要素および/もしくは冷却室の蓋の表面の温度ならびに/または試薬容器もしくは試薬の温度を監視することが、望ましいかもしれない。場合によっては、表面の温度が周囲の外気の露点を常に上回るように保証するうえで、温度を監視し、その正確さを温度センサによって調査できることが有益となり得る。例えば、所定のしきい値を超える偏差の場合に、加熱要素に供給される電力を調整することによって、加熱要素の温度を具体的に所望の値または範囲へと調整することが有利であり得る。そのような制御された供給は、制御ユニットまたはその一部によって操縦されてよい。加熱要素の温度は、有効温度を目標温度と比較する温度コントローラによって制御することができる。コントローラは、当業者に知られているように、例えばPID(比例-積分-微分)アルゴリズムを使用して有効温度と目標温度との間の偏差を小さくすることができる。
【0108】
したがって、いくつかの実施形態において、外気および内気の状態が1つ以上の熱センサによって監視され、温度コントローラが、指定された表面を外気の露点より上に維持するために、加熱要素の電力、したがって温度出力を制御する。
【0109】
加熱要素を、例えば、冷却室の蓋の内面に電気抵抗加熱要素を適用することによって実現することができる。これは、例えば耐熱接着剤を使用して、適切な形状の加熱材料を加熱要素の表面に適用することによって達成することができる。そのような加熱要素は、電流下で熱を発生する導電性材料を含むポリイミド(Kapton(登録商標))またはシリコンポリマーなどのキャリア材料から製作されてよい。加熱材料は、熱センサを含むことができる。このような接着性加熱材料の製造および適用は、当業者に知られている。
【0110】
あるいは、いわゆる「厚膜」技術を使用して、導電性の抵抗加熱材料を冷却室の蓋の内面に印刷することができる。電気的短絡を回避するために、加熱要素は、とりわけ導電性である場合、いくつかの実施形態において電気絶縁層でコーティングされる。そのような電気絶縁層は、例えば、酸化アルミニウムなどの酸化物で製作されてよい。スクリーン印刷を使用して抵抗加熱材料を加熱要素に適用してもよい。そのような印刷可能な抵抗加熱材料は、典型的には、銀、銅、または炭素などの導電性粉末と、硬化性エポキシ樹脂などの結合剤とを含む。このような厚膜ヒータの製造および適用も、当業者に知られている。
【0111】
さらには、いわゆる「厚膜」技術を使用して、導電性の抵抗加熱材料を冷却室の蓋の内面にスパッタまたは真空蒸着することができる。この目的に適した材料として、金または白金が挙げられる。厚膜技術の場合と同様に、電気的短絡を回避するために電気絶縁層を適用することができる。ヒータの形状を、例えば、マスクプロセスまたはレーザアブレーションによって定めることができる。このような薄膜ヒータの製造および適用は、当技術分野において充分に確立されている。
【0112】
さらなる選択肢として、電気抵抗ワイヤを加熱要素に適用することができる。そのようなワイヤを、例えば、コンスタンタンで作ることができる。あるいは、加熱要素は、熱輸送媒体を輸送するための1つ以上の流体経路を有することができる。
【0113】
「熱輸送媒体」は、本開示の文脈において理解されるとき、加熱要素の加熱材料全体に熱エネルギーを伝達するための充分な熱伝導率の流体を意味する。適切な流体は当業者に公知である。
【0114】
いくつかの実施形態において、外気および内気の状態が1つ以上の熱センサによって監視され、制御ユニットが、指定された表面を外気の露点より上に維持するために、加熱要素の電力、したがって温度出力を制御する。
【0115】
ピペッタは、本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態において、洗浄可能なピペット針などのピペット針、またはマルチチャネルピペッタとして配置された複数のピペット針、などを備える。いくつかの実施形態において、ピペッタは、プラスチックまたは当技術分野で公知の他の適切な材料で作られた使い捨てのピペット先端部を備える。ピペッタは、切り替え可能な開口部および/または加熱要素などの他の構成要素と同様に、本明細書に開示される制御ユニットによって制御されてよい。温度コントローラが加熱要素を制御する実施形態において、その温度コントローラは、本明細書に記載の自動分析システムの多数の実質的にすべての自動モジュールおよび/またはプロセスを制御し、協調させる上位の制御ユニットの拡張部または一体の一部分として具体化されてよい。また、いくつかの実施形態において、温度コントローラは、データ転送を介して制御ユニットに接続されているが、別個のユニットであってよい。
【0116】
試薬容器は、当技術分野で公知の任意の適切な容器であってよい。いくつかの実施形態において、試薬容器は、フラスコ、プラスチックボトル、キャニスタ、などである。いくつかの実施形態において、試薬容器は、冷却室への導入に先立って上部において開かれる。いくつかの実施形態において、試薬容器は、最初の使用時にピペッタによって貫通される封止膜などの壊れやすい上部カバーを有する。
【0117】
上述のように、いくつかの実施形態において、自動分析システムは、サーマルサイクラーを備える。当技術分野で知られているように、サーマルサイクラーの動作原理は、交互の加熱および冷却ステップからなる特定のプロファイルに基づく。いくつかの実施形態において、サーマルサイクラーはPCRサイクラーである。後者は、核酸を含有するサンプルを、熱安定性DNAポリメラーゼによって触媒される変性、アニーリング、および伸長の複数回の反復を通じて「サイクル」させ、これに、いくつかの実施形態においては、例えばウイルスサンプル中に存在し得るリボ核酸(RNA)のデオキシリボ核酸(DNA)への逆転写に適した温度でのステップが先行する。本明細書に開示される自動分析システムのいくつかの実施形態における分離ステーションにおいて精製済みであってよいサンプルを、例えば、増幅および検出の目的のためにマルチウェルプレートに移すことができる。いくつかの実施形態において、処理される生物学的サンプルならびにサンプルの中間および最終生成物は、本明細書に記載の1つ以上のピペッタによって本明細書に記載の自動分析システムの種々のモジュール間を移送される。
【0118】
サーマルサイクラーは、いくつかの実施形態において、マルチウェルプレートなどのサンプル容器を保持するためのマウントを含むサーマルアセンブリを備える。いくつかの実施形態において、マウントは、マルチウェルプレートのウェルが係合するように構成される凹部を備えるブロックまたはプレートである。
【0119】
この文脈において、本明細書に開示される一態様は、生物学的サンプルをインキュベートするためのサーマルサイクラーであって、
a)マルチウェルプレートを受け入れて保持するように構成されるマウントと、
b)マルチウェルプレートをマウントへと輸送またはマウントから輸送するように構成され、装てん位置とインキュベーション位置との間を回転可能である装てんプラットフォームと、
c)装てんプラットフォームを装てん位置とインキュベーション位置との間で回転させるように構成されるモータと
を備える、サーマルサイクラーである。
【0120】
本明細書に記載のサーマルサイクラーは、回転可能なプラットフォームを介してマイクロウェルプレートなどのマルチウェルプレートを好都合に装てんする。いくつかの実施形態において、装てん位置は、マウントと装てんプラットフォームとの間の45°~135°、または約90°の変位角度を有する。装てん位置において、装てんプラットフォームは、ユーザまたはグリッパなどのロボット移送モジュールにとってアクセス可能である。この位置で、マルチウェルプレートを、クランプまたはラッチなどの締結要素を備えることができる装てんプラットフォーム上に配置することができる。装てんプラットフォームをマウントに向かってインキュベーション位置へと回転させることによって、マルチウェルプレートは、周期的な熱インキュベーションを行うためのマウントとマルチウェルプレートとの間の熱接触が確立されるように、最終的にマウント上に配置される。プラットフォームの回転運動を行わせるモータは、いくつかの実施形態においては、ステッピングモータである。回転構成は、おそらくはより多くの空間を占めるであろう直線的な引き出しを延ばす必要がないため、空間が限られている場合にとくに有利である。さらに、いくつかの実施形態において、マルチウェルプレートは、サーマルサイクラーにとって正しくない向きで、本明細書に記載の分離ステーションなどの先行モジュールから移送される。例えば、ロボットグリッパなどによって分離ステーションから移送されるとき、マルチウェルプレートは、マウントの向きに対して約90°などの角度に変位させられ得る。したがって、引き出しの回転運動は、マルチウェルプレートを熱サイクルのための正しい位置に配置するのに好都合に寄与し得る。
【0121】
本明細書に記載の自動分析システムの1つ以上のピペッタは、いくつかの実施形態において、使い捨てのピペット先端部を使用することができる。これらを、本明細書に記載の自動分析システムのハウジング内のロボット要素の自動化された移動によって便利に供給することができる。例えば、ピペット先端部は、ユーザによって消耗品用の引き出しなどの専用のインターフェースを介して分析装置へと導入されてよい専用のピペット先端部ラック内に供給されてよい。ピペット先端部ラックは、例えば、ピペッタのピペッティングヘッドがラックからピペット先端部をピックアップするために、分析装置のハウジング内のマウント上に配置されてよい。いくつかの実施形態において、ピペッタの複数のピペットが複数のピペット先端部に同時に係合する。例えば、ピペット先端部は、8×12のパターンなどの二次元パターンで専用のラックに配置されてよい。ピペッタは、直線状8チャネルピペッタなどのマルチチャネルピペッタとして具現化されてよく、例えばラック内のピペット先端部に対する単一の垂直方向係合移動によって8つのピペット先端部をピックアップすることができる。そのようなロボットの動きは、ピペットとピペット先端部との間の位置合わせ、とりわけ水平方向の位置合わせの公差に敏感であり得る。例えば、ピペットの座標とピペットの指定の先端部の座標との間に水平方向のずれが存在すると、係合がうまく行われない可能性がある。深刻な場合には、ロボットアームに吊り下げられたピペッティングヘッドが引っ掛かる可能性があり、ピペットが損傷する可能性すら存在する。
【0122】
したがって、本明細書に開示される別の態様は、柔軟に取り付けられたピペット先端部ラックであり、ラックは、自動分析システムの作業面上に、ラックと作業面との間に配置された1つ以上の柔軟性要素を介して取り付けられる。
【0123】
適切な柔軟性要素は、いくつかの実施形態において、ばね、ゴムもしくは発泡プラスチック層、Oリング、または磁場からなる群から選択される。
【0124】
ラックが付勢された方向に傾くことによって移動に追従することにより、ピペットとピペット先端部との間の小さな位置ずれを補償することができる。
【0125】
本明細書に記載の自動分析システムは、流体ネットワークをさらに備えることができる。そのような「流体ネットワーク」は、液体を供給および輸送するためのシステムである。いくつかの実施形態において、流体ネットワークは、ポンプ、ピペッタ、入口もしくは出口などの試薬インターフェース、入口もしくは出口などの廃棄物インターフェース、および/または弁を含む配管システムを備え、あるいはそのような配管システムで構成される。流体ネットワークは、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の制御ユニットによって制御される。例えば、制御ユニットは、本明細書に記載の処理位置にあるサンプルラック内のサンプル容器からのピペッタによる試薬の吸引を実行するように流体ネットワークを制御することができる。さらに、本明細書に記載の自動分析システムの別個のモジュールに対する流体ネットワークの全体におけるポンピングおよび/またはピペッティングによるサンプルの移送を協調させることができる。例えば、サンプルラックに存在する一次サンプル容器から吸引されたサンプルを、二次容器へとピペットで移し、分離ステーションにおける精製プロセスに供することができる。そこから、濃縮または単離された分析物を含有する液体は、例えばやはりピペッティングによって三次サンプル容器に移され、本明細書に記載のサーマルサイクラーにおける増幅および検出プロセスに供される。例えばピペッタを試薬容器などに接続する管を、制御ユニットによって制御されてよい弁システムによって開閉することができる。そのような弁システムの弁が動作可能であることを確認することが、好都合であり得る。例えば、弁の電源への電気的接続が、断たれる可能性がある。場合によっては、これは、個々の弁に電力を供給する電気プラグの不注意な取り外しによって起こり得る。
【0126】
これに関連して、本開示のさらに別の態様は、自動分析システムにおいて弁システムを監視するための方法であって、以下のステップ、すなわち
a)電源をオンにすることによって自動分析システムを起動するステップと、
b)起動プロセスの最中または直後に、弁の動作状態について起動時弁チェックを実行し、チェックは、制御ユニットから弁へと電気プローブ信号を送信すること、および制御ユニットによって電気応答信号の有無を検出することを含み、応答信号の存在が、弁が動作可能であることを示すステップと、
c)自動分析システムの完全起動モードにおいて弁システムを動作させ、アイドル状態の弁について動作弁チェックとしてステップb)のチェックを繰り返し実行するステップと、
d)ステップb)またはステップc)において電気応答信号の欠如が検出された場合に、エラーメッセージを生成するステップと
を含む方法を説明する。
【0127】
一方での分析装置の電源投入時の動作状態の初期チェックと、分析装置の通常の動作の最中の連続チェックとの組み合わせは、弁システムの弁の機能を密接に監視および保証するための手段を提供する。
【0128】
いくつかの実施形態において、電気プローブ信号は、個々の弁に関連する回路に印加される電圧である。回路は、いくつかの実施形態において、プリント回路基板(PCB)である。
【0129】
「プリント回路基板」または「PCB」は、導電層と絶縁層との積層サンドイッチ構造体である。PCBは、2つの相補的な機能を有する。第一に、はんだ付けによって外側層上の指定された位置に電子部品を取り付けることである。第2は、多くの場合にPCB設計と呼ばれる制御されたやり方で構成要素の端子間に信頼性の高い電気的接続を(および、信頼性の高い開回路も)提供することである。各々の導電層は、その導電層上に電気的接続を設ける導体(平坦な表面上のワイヤと同様)の図柄パターンを備えて設計される。
【0130】
制御ユニットが個々の弁に関連する回路に電圧を印加すると、回路が動作可能、すなわち制御ユニットによって制御される電源、および/または制御ユニットが電源としても機能する場合には制御ユニット自体に接続されていれば、その回路に測定可能な電流が誘導される。いくつかの実施形態において、電圧は、弁の切り替え、すなわち開閉を担う回路と同じ回路に印加される。そのような実施形態において、チェックの実行の目的で印加される電圧は、弁を切り替えるために必要なしきい値よりも低い。実質的に、チェック中に実行されるプロセスは、開閉をもたらすことがないようにより低い電圧ではあるが、弁の切り替えを模倣する。
【0131】
本明細書において使用されるとき、弁の「アイドル状態」は、弁が開状態と閉状態との間で切り替え中でない状態を意味する。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、1秒~10秒、または2秒~5秒、または約3秒であってよい特定の時間にわたって切り替えられなかった場合に、弁に「アイドル」としてフラグを立てる。したがって、上述の方法は、現時点においてアイドル状態ではなくアクティブ状態にある弁の切り替えを妨げることなく、弁システムの連続監視のための手段を提供する。
【0132】
しかしながら、いくつかの実施形態においては、切り替えられる弁も動作弁チェックに含まれる。いくつかの実施形態において、本方法は、ステップc)において、アクティブ状態の弁についてステップb)のチェックを実行するステップをさらに含む。「アクティブ」状態は、それぞれの弁が切り替え中、または切り替えられる直前であることを意味する。いくつかの実施形態において、「アクティブ」は、弁が、切り替え前の10秒、5秒、2秒、1秒、500ms、または100msなど、切り替えから特定の時間だけ離れている状態を意味する。
【0133】
本明細書に記載の自動分析システムの動作において、弁システムのさまざまな弁は、分析装置によって生成される結果に対して異なる影響を有し得る。影響は、弁の位置、弁が分析装置のどのモジュールの間で動作するか、などの要因に依存し得る。例えば、分析される液体生物学的サンプルに直接的または間接的に影響を及ぼし得る自動分析システム内のあらゆるステップは、例えば廃液の処分に関連するステップと比べて、生成される結果により大きな影響を及ぼし得る。
【0134】
これに関連して、上述の方法のいくつかの実施形態において、ステップd)は、弁システムの弁の少なくともサブセットからの電気応答信号が存在しない場合に自動分析システムの動作を中断することをさらに含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、サブセットは、流体ネットワークのサンプル相互作用要素の上流の任意の弁からなる。「サンプル相互作用要素」は、流体ネットワークのうちで、例えばサンプル容器から生物学的サンプルを吸引するピペッタや、増幅および検出モジュールに試薬を供給するように指定された管など、いずれかの時点において生物学的サンプルを含み、あるいはいずれかの段階において生物学的サンプルに何らかの種類の液体を供給する部分である。そのような上流の弁の故障の場合、サンプル、あるいは少なくとも自動分析システムにおけるサンプルの処理が、損なわれる可能性がある。例えば、バルブが開かない場合、試薬がサンプルに添加されず、分析生化学反応がうまく行われない可能性がある。そのようなエラーは、偽陽性の診断結果につながり、最終的には患者について誤った治療が行われ、あるいは治療がまったく行われないなどの結果になりかねないため、自動システムの動作、例えばサンプルの特定のセットが処理および分析されている「実行」が、上述の実施形態において、動作を再開する前にそれぞれの弁を修理することができるように、停止される。
【0135】
他方で、そのような実施形態において、流体ネットワークのサンプル相互作用要素の下流にも弁システムの弁のサブセットが存在し得る。これらの後者の弁は、生物学的サンプルに影響を及ぼさず、したがってエラーメッセージの生成を除き、あまり厳格な介入は必要でなく、あるいは介入がまったく不要である。そのような下流の弁は、上述のように、流体ネットワークのうちの廃液の処分などに指定された任意の弁を含む。
【0136】
例示的な実施形態
以下の例は、本開示のシステムおよび方法の特定の実施形態を例示するように意図されているが、それらは限定を意図していない。
【0137】
図1の概略図が、本明細書に記載の自動分析システム(1)の実施形態を示している。
【0138】
図1Aの斜視図が、分析装置(1)をわずかに上方からの斜視正面図にて示している。機器は、内部を外部の影響から保護し、その逆も然りであるハウジング(100)によって囲まれている。例えば、内部が外部の汚染源から保護される一方で、ハウジング(100)の外部のユーザが、内部で処理される可能性がある病原体などの生物学的因子から遮蔽される。
【0139】
しかしながら、内部は、透明な窓(500)を通して観察可能である。この実施形態において、窓(500)は、凹部または穴であってよいハンドル(501)を備える。他の実施形態において、ハンドル(501)は、ノブなどのような突起として具現化されてもよい。透明な窓(500)内に、例えばタッチスクリーンとして具現化されてよいディスプレイ(502)が一体化される。ディスプレイ(502)は、ユーザのためのインターフェースとして機能し、ユーザに、例えば分析装置(1)内の特定のサンプルの状態、ハウジング(100)内の温度または特定のモジュールの温度、試薬容器または廃棄物容器の充てん状態、消耗品の残数、実験の推定残り時間、などについて知らせることができる。いくつかの実施形態において、ディスプレイ(502)は、対話型デバイスである。この文脈において、ディスプレイは、キーボード、音声プロセッサを含むマイクロフォン、タッチスクリーン、または他の適切な入力デバイスを備えることができる。ディスプレイ(502)を介してコマンドを入力することにより、ユーザは、分析装置(1)によって実行される動作および分析装置(1)内で実行される動作に影響を及ぼすことができる。例えば、ユーザは、所与の時点において自動分析システム(1)内に存在する他のサンプルのうちの特定のサンプルを優先するように、制御ユニットに指示することができる。他の場合に、ユーザは、特定の処理ステップをスケジュールすることができ、あるいは温度などのシステム(1)の特定のパラメータを調整することができる。いくつかの実施形態において、ディスプレイ(502)は、本明細書に記載のとおりの制御ユニットに接続され、ユーザは、制御ユニットを介して、上述のプロセスおよびパラメータを操作することができる。
【0140】
ハウジング(100)内のモジュールおよびプロセスの視認性を向上させるために、図示の実施形態における分析装置(1)は、機器の上部(120)および側面(110)にさらなる透明窓を有する。
【0141】
通気開口部(140、141)が、サンプルおよび試薬の安定性のためのハウジング(100)内の好ましい温度の維持に寄与し、分離ステーションなどのモジュールにおけるインキュベーション工程を特定の必要な温度で実行できることを保証する。
【0142】
図示の自動分析システム(1)は、ハンドヘルドバーコードリーダなどの付属品用のホルダ(151)と、USBポートまたはデータ転送用の他の適切なポートなどの通信ポート(152)とを含む接続インターフェース(150)をさらに備える。
【0143】
さらに、バルク試薬容器や廃棄物キャニスタなどの主としてより大きな構成要素に指定された試薬引き出し(161)および廃棄物引き出し(162)などの複数の専用引き出しを備えた下部装てん用前部(160)を見て取ることができる。図示の実施形態の上部装てん用前部(170)は、サンプル受け入れベイカバーフラップ(171)などのいくつかのフラップまたは引き出しを備える。図面を点検することによって推測できるとおり、上部装てん用前部(170)は、下部装てん用前部(160)の場合よりも嵩張らない構成要素の出し入れのために指定される。
【0144】
図1Aにおいて、機器(1)の上部に取り付けられた信号ランプ(180)をさらに見て取ることができる。そのようなランプは、例えば、さまざまなコード化された色の発光によって警告を示すことができる。自動分析システム(1)の上部への配置は、システム(1)の前部または後部への配置とは対照的に、実質的にあらゆる方向からの視認性を改善する。
【0145】
図示の実施形態の自動分析システム(1)の底部に、例えばディスプレイまたはLEDのような信号灯などの他の種類のインジケータを含む傾斜計などの重力センサに基づくレベルインジケータ(191)と、機器(1)を水平にするための調整式台座(192)とを備えるレベリング機構(190)が存在する。分析装置を床に平行であり、したがって重力に位置合わせされた位置に維持することは、多くの場合に、例えばサンプル容器の傾きまたは試薬コンテナの開放に起因するハウジング(100)内での液体のこぼれを回避するために重要である。
【0146】
図1Bに示される自動分析システム(1)の斜視背面図に目を向けると、図1Aに見られる種々の要素をここでも見ることができる。さらに、この図において、分析装置(1)の後壁(101)を見て取ることができる。
【0147】
自動分析システム(1)の上部内部空間の一実施形態を示すために、図1Cの斜視正面図は、前部の窓(500)が開いた状態の自動分析システム(1)を示している。窓(500)は、透明であり、したがって窓(500)が閉じた状態でも目視検査を行うことができるため、主に内部の構成要素を操作するために開かれる。窓(500)は、ガイドレール(510、この図では見えない)に沿って垂直方向にスライド可能であり、下方位置が閉じた状態である一方で、上方位置は開いた状態であると推測することができる。ディスプレイ(502)は、この図では省略されており、その位置は、ウィンドウ(500)における対応する切り欠きとして見て取ることができる。図1Aおよび図1Bに見られるように、反対側の側面の窓(110)に対応する側面の窓(130)が、外部からの内部プロセスの視覚的監視を可能にすることに寄与する。
【0148】
ハウジング(100)内に、さまざまな装置およびモジュールを見て取ることができる。例えば、右側において、サンプル受け入れベイ(200)を上方から見て取ることができ、その専用のインターフェースは、サンプル受け入れベイカバーフラップ(171)によって覆われている。サンプル受け入れベイ(200)内に、カメラまたはバーコードリーダなどの読み取り装置(220)が示されている。サンプル受け入れベイ(200)は、この実施形態においてはサンプル管である複数のサンプル容器(215)を保持するサンプルラック(210、この図では見て取ることができない)と共に表示されている。
【0149】
ピペッタ(630、この図では見て取ることができない)が、試薬引き出し(161)の背後に位置する試薬貯蔵ユニット(610、この図では見て取ることができない)の実質的に上方に配置され、したがってこの実施形態において、試薬ピペッタ(630)と呼ぶことができる。さらに、試薬ピペッタ(630)を移動させるための駆動機構に属する駆動ベルト(611)も見て取ることができる。
【0150】
この図において概略的に見て取ることができるハウジング(100)内の構成要素のいくつかを、以下で説明する。
【0151】
図2の個々の図面は、本明細書に開示されるサンプル受け入れベイ(200)のさまざまな態様を示している。
【0152】
図2Aを、実質的に、図1Cの右側に見えるサンプル受け入れベイ(200)の拡大された別個の斜視正面図と理解することができる。この実施形態のベイ(200)は、複数のサンプル容器(215、図示せず)を専用のサンプル容器スロット(212)内に保持するサンプルラック(210)を受け入れて案内するように構成される互いに実質的に平行に配置された8つのレーン(230)を有する。この図においては、レーン(230)のうちの1つ、すなわち最も左側のレーンのみに、サンプルラック(210)が装てんされている。ここに示されるサンプルラック(210)は、ユーザによる便利な手動での出し入れのためのハンドル(211)を備える。各々のレーン(230)は、出し入れの動作の際にサンプルラック(210)のセンタリングに寄与する突出するガイドピース(231)を備える。これにより、各々のレーンは短いガイドレールとして働く。図示の各々のレーン(230)の別の部分は、本実施形態においては射出成形部品、すなわち射出成形によるバッフルによって表される本明細書に記載のとおりの近位ストッパ要素(240)である。近位ストッパ要素(240)は、サンプルラック(210)の底部の対応する突起(図示せず)との間に摩擦を生じるように構成されることで、ユーザに対して手動による挿入動作を一時停止させるように促し、フォーカス位置に到達したことを知らせる。後者の位置において、読み取り装置(220)は、例えばサンプルラック(210)またはサンプルラックに保持されたサンプル容器(215)の特徴を読み取るために、サンプルラック(210)を保持するレーン(230)にフォーカスする。この図に示される読み取り装置(220)は、複数の構成要素からなるユニットとして具現化される。それは、カメラまたは一次元もしくは二次元バーコードリーダの場合、光ビームなどの電磁波を収集するレシーバ(221)を備える。この実施形態における読み取り装置(220)は、ガイドレール(223)に移動可能に取り付けられたマウント(222)をさらに備える。ステッピングモータなどのモータ(225)によって駆動されると、読み取り装置(220)は、読み取り装置のフォーカスをレーン1内のサンプルラック(210)へと調節するために、ガイドレール(223)に沿って移動可能である。例えばオートフォーカスカメラの場合など、読み取り装置(220)が不動である他の実施形態も考えられる。この実施形態における読み取り装置(220)は、レシーバ(221)の縁部の周りに配置されたLEDリングとして具現化された一体型の光源(224)を有する。したがって、この光源(224)は、読み取り装置(220)のレシーバ(221)の光路に軸方向に位置合わせされる。図示の実施形態において、読み取り装置(220)と容器(215、図示せず)を有するサンプルラック(210)との間の光路は、直線ではないと推測することができる。サンプルラック(210)のサンプル容器スロット(212)は、例えば、サンプル容器(215)上のバーコードなどの識別子が読み取り装置(220)にとってアクセス可能であり得るように、ラック(210)の側面に面する開口部を有する。図2Aに示される実施形態において、光路をたどる光ビームは、光源(224)およびレシーバ(221)を有する読み取り装置(220)の光路内に配置されたミラー(225)によって約90°の角度に曲げられる。この配置は、読み取り装置(220)をそれぞれのレーン(230)上のサンプルラック(210)と同じ軸に沿って移動させることができ、図1Cの図から推測できるように自動分析システム(1)の幅を広げる必要がないため、実験室において限られていることが多い空間を節約する。
【0153】
図2Aに示される実施形態のサンプル受け入れベイ(200)の遠位ストッパ要素(250)は、サンプル受け入れベイ(200)の後壁の一部または全部を含み、あるいはサンプル受け入れベイ(200)の後壁の一部または全部で構成される。サンプルラック(210)を専用のレーン(230)に沿って受け入れベイ(200)に挿入するユーザは、この遠位ストッパ要素(250)の抵抗に遭遇すると挿入動作を停止することにより、処理位置に到達する。
【0154】
この実施形態における位置決めは、レーン(230)の一部を形成する位置決め要素(260)としてのガイドレール(260)によって与えられる。サンプルラック(210)の底部からラック(210)の側面に向かって突出するスカートが、ガイドレール(260)のブラケット内を案内される。
【0155】
この図においてはサンプル受け入れベイ(200)の後壁(250)、したがって遠位ストッパ要素(250)に固定されたレーン(230)の遠位端に位置するフォーク状の光バリア(270)として具現化された検出要素(270)が、処理位置におけるサンプルラック(210)の位置決めにさらに寄与する。位置決め要素としての追加の役割において、フォーク状の光バリア(270)は、サンプルラック(210)の遠位端から突出する突起(この図には示されていない)のための機械的なブラケットとして機能する。さらに、この突起は、検出要素としての役割における光バリア(270)を遮断する。
【0156】
この光バリア(270)を介して処理位置にあるサンプルラック(210)が検出されると、サンプルラック(210)の穴を貫くロック要素として作用する垂直に配置されたロックボルト(280)の上方への延長をもたらす機構がトリガされる。これにより、ロック要素(280)は、位置決め要素(260)および検出要素(270)の助けを借りて、サンプルラック(210)を6つのすべての自由度に関して位置合わせされた処理位置にロックする。
【0157】
図2Bが、サンプルラック(210)が処理位置に挿入された状態のレーン(230)に沿ったサンプル受け入れベイ(200)の水平断面を示している。
【0158】
例えばラックハンドル(211)、容器スロット(212)、遠位ストッパ要素として作用するサンプル受け入れベイ(200)の後壁(250)、および位置決め要素として作用するガイドレール(260)など、図2Aにおいて紹介した要素の一部も、この断面図において見て取ることができる。この図は、射出成形によるバッフルとして具現化された近位ストッパ要素(240)のさらに詳細な表示を提供する。
【0159】
サンプルラック(210)を処理位置に拘束するためのロック機構がさらに示されている。水平配置のソレノイドロック(281)が、検出要素として作用するフォーク状の光バリア(270)によって処理位置のサンプルラック(210)が検出されたときに、いくつかの実施形態においては制御ユニットによって作動させられて、伸長位置へと延びる。これにより、水平くさび(282)が、サンプルロック(210)の対応する穴へと上方に押されることによって、この穴と直ちに相互作用してサンプルラック(210)を処理位置にロックするロック要素である垂直ロックボルト(280)の一部を形成する垂直くさび(283)に押し付けられ、垂直くさびに沿ってスライドする。
【0160】
このロック機構のさらに詳細な図が、図2Cに示されており、この図においては、ロック要素のより明瞭な図を生むために、サンプルラック(210)は存在していない。リセット力が、水平ばね(284)によってソレノイドロック(281)に与えられ、垂直ばね(285)によってロックボルト(280)に与えられる。ロック機構をレーン(230)の底部に締結するねじ(232)を、さらに見て取ることができる。
【0161】
ロック機構に関する別の実施形態が、サンプルラック(210)の出し入れのさまざまな段階を示す図2D図2Fの概略の断面図に示されている。
【0162】
図2Dにおいて、サンプルラックが遠位ストッパ要素(294)、したがって処理位置に向かって、右から左へと移動している(それぞれの要素の移動が、矢印で示されている)。レーン(230)の下方に配置され、そこから上方に突出するばねキャッチ(290)が、移動するラック(210)によってレーン(230)の下方の空間へと押し下げられる。ラック(210)から側方に突出するノブ(216)が、回転ラッチ(292)と係合し、反時計回りの方向に回転させる。この段階で、ソレノイドロック(291)は、後退した状態、すなわち開状態にある。読み取り装置に向かって延び、したがってレーン(230)に直角に延びる光バリア(293)は、遮られておらず、したがって非検出状態にある。
【0163】
次に、図2Eが、サンプルラック(210)が完全に挿入され、処理位置にロックされた構成を示している。サンプルラック(210)のノブ(216)が、回転ラッチ(292)と係合し、遠位ストッパ要素(294)に押し付けられる実質的に完全に垂直な位置へと押し込んでいる。この位置において、ばねキャッチ(290)は、サンプルラックの対応する凹部(295)に係合し、サンプルラックを所定の位置にロックする。同時に、回転ラッチ(292)が、専用の舌部(2921)で光バリア(293)を遮ることによって、処理位置にあるサンプルラック(210)の検出を達成する。回転ラッチ(292)自体は、今や閉状態へと延びて回転ラッチ(291)の隆起部(2922)を拘束するソレノイドロック(291)によって所定の位置にロックされる。この実施形態において、位置決め、検出、およびロックは、複数の協働する要素によって相乗的に与えられる。回転ラッチ(292)は、位置決め(サンプルラック(210)のノブ(216)との係合による)、検出(舌部(2921)で光バリア(293)を遮ることによる)、およびロック(隆起部(2922)を介してソレノイドロック(291)によってブロックされることによる)において役割を果たす。
【0164】
この実施形態におけるサンプルラック(210)の取り出しが、図2Fに示される。ソレノイド(291)を再び開状態へと引き戻すことによって開始され、サンプル(210)を左から右へと(矢印を参照)引き出して、回転ラッチ(292)を再び斜めの位置へと回転させることができる一方で、ノブ(216)の係合が外れ、舌部(2921)が光バリア(293)の経路から離れるように移動して検出が終了し、ばねキャッチ(290)の係合が外れ、移動するサンプルラック(210)によって押し下げられる。
【0165】
図2D図2Fに示されるプロセスの基本原理は、サンプルラック(210)をロック位置にロックするためのくさび機構を有する図2Cに示される実施形態を含む他の考えられる実施形態にも当てはまる。
【0166】
自動分析システム(1)のインジケータシステム(300)の態様が、図3の図面に示される。
【0167】
この文脈において、図3Aが、本明細書に開示される自動分析システム(1)の一実施形態によるサンプル受け入れベイ(200)の斜視概略図を示している。
【0168】
サンプル受け入れベイ(200)が、内部へのアクセスが自動分析システム(1)の前方に立つユーザにとって可能である開状態にて描かれている。
【0169】
この実施形態において、サンプル受け入れベイ(200)は、可動プラットフォーム(350)を備える。インジケータシステム(300)は、可動プラットフォーム(350)に組み込まれ、インジケータシステム(300)は、プラットフォーム(350)の上面、すなわち作業面(351)とインターフェースする。サンプル受け入れベイ(200)の上方に、透明な窓(500)に一体化されたディスプレイ(502)を見ることができる。
【0170】
可動プラットフォーム(350)は、ハウジング(100)の外部に複数のレーン(230)の延長部を形成するようにハウジング(100)から水平に引き出されるように構成され、プラットフォーム(350)は、サンプルラック(210)を露出検査位置に位置決めするように構成される位置決め要素(352、この図には示されていない)を有する。図3Aは、完全に延ばされた状態の可動プラットフォーム(350)を示しており、サンプルラック(210)を、ユーザによる目視検査または直接的な物理的操作を改善するために、プラットフォーム上に引き出して位置させることができる。
【0171】
図示の実施形態のインジケータシステム(300)は、複数のサンプル容器(215)を保持するように構成されるサンプルラック(210)の容器スロット(212)に位置合わせさせて配置されたLEDなどの複数の個々の光源(3011)を備える。
【0172】
インジケータシステム(300)とサンプルラック(210)との間の相互作用が、図3Bに示されている。図3Aと同様に、可動プラットフォーム(350)が、完全に延ばされた位置に示されているが、この図では、サンプルラック(210)がプラットフォーム(350)の作業面(351)上の露出検査位置にある。サンプルラック(210)は、この実施形態においては可動プラットフォーム(350)の作業面(351)の近位端に配置された位置決め要素(352)の助けによって検査位置に位置決めされる。位置決め要素(352)は、例えば、フック、ラッチ、ピン、スカート、または任意の他の考えられる機械的解決策であってよい。いくつかの実施形態において、位置決め要素(352)は、磁石を備え、あるいは磁石からなる。
【0173】
光源(3011)と光放射窓(302)との間の光結合の一実施形態の概略図を、図3Cの断面図に見ることができる。原則として、図3Bと同じ配置を見て取ることができる。サンプルラック(210)は露出検査位置にあり、可動プラットフォーム(350)の作業面(351)上の延長レーン(230)に沿って配置されたインジケータシステム(300)は、サンプルラック(210)の専用のサンプル容器位置(212)に位置合わせする。より正確には、図示の実施形態において、インジケータシステム(300)の個々の光源(3011)が、露出検査位置のサンプルラック(210)のサンプル容器スロット(212)に位置合わせされることにより、各々のサンプル容器スロット(212)に近接した各々の光放射窓(302)の下方に、個々の光源(3011)が配置され、光学的に結合する。ここに示される実施形態において、光源(3011)と光放射窓(302)とを光学的に結合させる光学導光システム(303)は、垂直に位置合わせされた導光ロッド、ファイバ、または単にサンプルラック(210)を通って垂直に延びるトンネルであってよい。
【0174】
図3Dに示される光学導光システム(303)の代替の実施形態においては、単一の光源(301)が、可動プラットフォーム(350)の作業面(351)上または作業面(351)内で検査位置のサンプルラック(210)の下方に配置される。この実施形態の光学導光システム(303)は、複数の光ファイバ(3031)を備え、各々の光ファイバは、光源(301)を専用のサンプル容器スロット(212)に関連付けられた対応する光放射窓(302)に結合させる。
【0175】
図3Eが、図3A図3Cの実施形態によるインジケータシステム(300)の個々の光源(3011)を上方から見た2次元の図にて示している。この実施形態の個々の光源(3011)は、異なる色を有し、それらの対応する光放射窓(302)に光学的に結合するように構成される。サンプルラック(210)は、インジケータシステム(300)の情報表示の原理に着目するために、この図からは省略されている。個々の光源(3011)の各々は、検査位置または露出検査位置において、対応するサンプルラック(210)のサンプル容器スロット(212)と位置合わせし、光源(3011)の特定の色は、それぞれのサンプル容器スロット(212)内の対応するサンプル容器(215)およびその生物学的サンプルの特定の状態を示す。例えば、赤色(xで埋められた円で表されている)は、ユーザによる手動介入を必要とする凝固した生物学的サンプルを有するサンプル容器(215)を保持するサンプル容器スロット(212)を示すことができる。緑色光(黒塗りの円で表されている)が、問題のないサンプルを示すことができる一方で、青色光(空の円によって表されている)は、空の容器スロット(212)を示すことができる。オレンジ色(+で埋められた円で表されている)は、誤ってキャップされたサンプル容器などを示すことができる。これらの容易に解読可能な視覚信号の助けを借りて、ユーザは、インジケータシステム(300)の色コードに基づいて、問題のあるサンプルならびに根本的な問題の種類を容易に見きわめることができる。
【0176】
本明細書に記載されるとおり、本明細書に開示されるインジケータシステム(300)は、自動分析システム(1)のサンプル受け入れベイ(200)においてハウジング(100)内のレーン(230)に沿って配置されてもよい。可動プラットフォーム(350)はサンプルのアクセス性の改善をもたらすが、ハウジング(100)内にインジケータシステム(300)を有する実施形態は、ハウジング(100)からサンプルラック(210)を取り出す必要性をなくすことによって、ユーザの負担を軽減することができる。
【0177】
ひとたび生物学的サンプルが処理位置のサンプルラック(210)で分析装置(1)に導入されると、専用のモジュールがサンプルについて処理ステップの実行を開始することができる。上述のように、生物学的サンプルの分析に先立つ1つの典型的なステップは、単離または精製プロセスである。
【0178】
本明細書に開示される自動分析システム(1)のいくつかの実施形態において、分離ステーションが、生物学的標的材料を結合させるための専用の結合粒子を使用して、分析物単離プロセスを実行する。例えば核酸を結合させるための磁性ガラス粒子など、結合粒子は、専用の容器にて懸濁液として提供されることが多いため、懸濁液全体にわたって結合粒子の均一な分布を維持することが重要となり得る。静止している容器の底部へと沈む粒子が、典型的には、分布を変化させ、容器の上部領域において粒子の密度が低くなる一方で、底部における粒子の密度は高くなる。したがって、一定量の懸濁液を吸引するとき、すべてのイベントにおいて吸引される懸濁液の量が一貫しているにもかかわらず、異なる吸引イベントにおいて取り出される結合粒子の量がばらつく可能性がある。とりわけ臨床診断において、そのような変動は、核酸収量に影響を及ぼす可能性があり、下流での生物学的サンプルの分析の成功を危うくする可能性がある。
【0179】
そのような懸濁液の均一性を維持するための好都合な手法は、ロボットシェーカーの助けを借りた容器の震盪を含む。例えば、2つのピペットイベントの間に、シェーカーは、容器、したがって内部の懸濁液を、指定された時間にわたって震盪させることができる。
【0180】
図4の図面が、生物学的材料を単離するための結合粒子を提供するための専用のシステム(400)において、結合粒子の懸濁液を含む容器(410)をシェーカー(420)に固定するための好都合なプロセスのさまざまな段階を示している。個々の図4A図4Cの各々は、斜視図を表している上側の図と、上側の図と同じ構成を懸濁液容器(410)の上方からの平面図にて示している下側の図で構成される。
【0181】
図4Aは、懸濁液容器(410)が、この図においては閉じた震盪位置に対して約20°である変位角度に変位させられている開状態を示している。容器(410)は、シェーカー(420)の上方に位置している。
【0182】
図4Bにおいて、容器(410)は、依然として図4Aと同じ変位角度で、シェーカー(420)上に配置され、上方からシェーカーに押し付けられる。
【0183】
結合粒子の懸濁液を含む容器(410)がシェーカー(420)に固定される震盪位置が、図4Cに示されている。図4Bからの以前の状態と比較して、今や懸濁液容器(410)が時計回りの方向に20°回転させられることにより、容器(410)がバヨネットロック(430)を介してシェーカー(420)に固定されている。
【0184】
本明細書に記載の自動分析システム(1)の別の態様に目を向けると、図5が、分析装置(1)の透明な窓(500)を示している。
【0185】
本明細書で説明されるとおり、いくつかの実施形態において、ユーザは、透明な窓(500)によって開閉可能なインターフェースを介してハウジング(100)の内部空間に到達することができる。インターフェースを開閉するための透明な窓(500)は、開位置および閉位置の間をスライド可能であり、窓(500)は、窓(500)を開位置、閉位置、またはそれらの間の位置に保持するように構成されるカウンタウエイト(530)を備える。
【0186】
この実施形態における透明な窓(500)は、ガイドレール(510)に沿ってスライド可能であり、プーリ(520)を介してカウンタウエイト(530)に接続されている。
【0187】
図6の図面は、本明細書に記載の自動分析システム(1)において生物学的アッセイを行うための試薬を冷却するための上述のシステム(600)に関する。
【0188】
図6Aが、図1に示した実施形態と実質的に同じ実施形態による本明細書に記載の自動分析システム(1)の斜視図を示している。試薬引き出し(161)が、この図においては、底部および上部を有する実質的に断熱されたハウジング(615)によって囲まれた冷却室(610)を備える冷却システム(600)の各部を露わにするように開かれており、上部は、開状態と閉状態との間で切り替え可能な開口部(621)を備える蓋(620)によって覆われている。冷却システム(600)に属するピペッタ(630)は、分析装置(1)のハウジング(100)の内側にあり、したがって、この図では見て取ることができない。
【0189】
図6Bにおいて、蓋(620)は、部分分解図にて、普段は蓋(620)によって覆われる冷却室(610)から離して示されている。また、閉状態であればハウジング(615)に一体化するサイドドア(616)も、ハウジング(615)から取り外されて見て取ることができる。サイドドア(616)は、実質的に断熱されたハウジング(615)の内部の試薬容器または他の構成要素を交換または検査するために有用であり得る。
【0190】
図6Cが、自動分析システム(1)から分離した冷却室(610)のさらに詳細な図を、やはり上記と同様の部分分解図にて示している。取り外された蓋(620)の下方に、試薬容器(640)が、ピペッティングデッキ(612)上の冷却室(610)内に配置されて存在し、試薬容器(640)は、ピペッタ(630、図示せず)の針または先端部を導入するための複数の上部開口部(641)を有する。取り外されたサイドドア(616)の背後に、試薬貯蔵室(650)を見て取ることができ、試薬貯蔵室は、この実施形態においては3つの別個のレベル(651、652、653)を備え、これらのレベルのあらゆる場所に、制御ユニットが、別個の試薬容器を、所与の状況においてどの試薬容器が必要とされるかに応じて並べ替えることができる。例えば、差し迫った作業に必要な試薬容器を、第3のレベル(653)などの冷却室(610)の上部の近くに配置することができ、あるいはピペットデッキ(612)上に直接配置することができる。
【0191】
図6Dが、分解された蓋(620)の詳細図を示している。上方部分が、開口部(621)を備える蓋(620)を示しているが、冷却室(610)を覆う蓋(620)の下方に近接して配置されたインレーとして具現化された加熱要素(625)も見て取ることができ、加熱要素(625)は、蓋(625)の上面の温度が冷却室(610)の外側の空気の露点を上回るように蓋(620)を加熱するように構成される。加熱要素(625)は、蓋(620)の開口部(621)に対応する開口部(626)を有し、これらの開口部は蓋の開口部と位置合わせされ、したがって、例えばピペッティング針が、蓋(620)および加熱要素(625)の両方の位置合わせされた開口部(621、626)を通過することができる。組み立てられた状態において、この実施形態の加熱要素(625)は、蓋(620)の下面に直接物理的に接触して配置されることにより、蓋(620)に熱エネルギーを効率的に伝達し、蓋の外側の結露を防止する。加熱要素(625)は、例えば制御ユニットまたは温度コントローラと一体の電源に接続された電源コネクタ(627)を介して電力を供給される。
【0192】
図6Eが、冷却室(610)の上方に配置されたピペッタ(630)を含む冷却システム(600)の全体を示しており、ピペッタ(630)は、冷却室(610)を覆う蓋(620)の開口部(621)を通して試薬容器(640)から試薬を吸引するように構成される。この実施形態のピペッタ(630)は、ピペット針(632)が取り付けられたヘッド(631)を備える。図6Eの右側の図は、左側の図の円でマークされた領域の拡大図を示している。この詳細図において、試薬容器(640)の上部の指定された開口部(641)に挿入されたピペット針(632)を遮られることなく見て取ることができるように、蓋(620)および試薬容器(640)の対応する部分が省略されていることを理解できるであろう。
【0193】
本明細書に開示される自動分析システム(1)のさらなる態様、すなわち生物学的サンプルのインキュベーションのためのサーマルサイクラー(700)が、図7の図面に示されている。核酸などの容易に単離された生物学的標的材料を、分離ステーションから増幅および検出モジュールに移すことができ、増幅および検出モジュールは、マイクロウェルプレートを受け入れて保持するように構成されるマウント(710)と、マイクロウェルプレートをマウント(710)へと輸送およびマウント(710)から輸送するように構成される装てんプラットフォーム(720)とを含む前記サーマルサイクラー(700)を備え、装てんプラットフォーム(720)は、装てん位置とインキュベーション位置との間で回転可能である。さらに、サーマルサイクラー(700)は、装てんプラットフォーム(720)を装てん位置とインキュベーション位置との間で回転させるように構成されるステッピングモータなどのモータを備える。
【0194】
図7Aは、装てんプラットフォーム(720)が装てん位置にあり、すなわちマウントから離れるように回転し、したがってマルチウェルプレートにとってアクセス可能であるサーマルサイクラー(700)の全体図を示す。
【0195】
図7Bを参照すると、サーマルサイクラー(700)のマウント(710)を含む同じ実施形態の装てん機構のさらに詳細な図が示されている。依然として装てん位置にある装てんプラットフォーム(720)は、マルチウェルプレート(図示せず)を受け入れて保持するための受け入れトレイ(721)を備え、マルチウェルプレートを、ひとたびグリッパまたは他の適切な移送手段によって挿入されると、適切な熱接触のためにマルチウェルプレートをマウント(710)に係合させるインキュベーション位置に回転させることができる。
【0196】
図8が、柔軟に取り付けられたピペット先端部ラック(800)の図を示しており、ラック(800)は、自動分析システム(1)の作業面(820)上に、ラック(800)と作業面(820)との間に配置された1つ以上の柔軟な要素(810)を介して取り付けられる。柔軟な要素(810)は、矩形のピペット先端部ラック(800)の4つの角において底部に取り付けられたばねであり、これにより、例えばピペッティングヘッドによって不均一に加えられる力を補償するために、垂直方向におけるラック(800)の柔軟性を提供する。
【0197】
図9が、本明細書に記載の自動分析システム(1)の弁システムを監視するための方法のステップを、フローチャートによって示している。
【0198】
ステップは、以下に従って説明される。
【0199】
最初に、電源をオンにすることによって自動分析システムを起動する(910)。
【0200】
第二に、起動プロセスの最中または直後に、弁の動作状態について起動時弁チェック(920)を実行し、チェックは、制御ユニットから弁へと電気プローブ信号を送信すること、および制御ユニットによって電気応答信号(930)の有無を検出することを含み、電気応答信号がない場合、それは弁が使用できないことを示しており、エラーメッセージ(935)が生成され、応答信号がある場合、それは弁が使用可能であることを示し、本方法は続行可能である。
【0201】
第三に、自動分析システム(1)の完全起動モードにおいて動作弁チェック(940)を行い、アイドル状態の弁について電気プローブ信号に基づいてチェックを繰り返し実行する。
【0202】
第四に、チェックが上流の弁について実行されたかどうか、したがってサンプルに影響を及ぼす可能性があるかどうかの評価に基づいて(950)、弁が下流の弁であり、したがってサンプルに影響を及ぼさない場合に、エラーメッセージを生成し(955)、次いで弁システムの動作を継続し、動作弁チェック(940)のさらなる反復を実行し、弁が上流の弁である場合には、エラーメッセージを生成し、さらに現在の作業も中止する(960)。このようにして弁が不良であると識別された場合に実行中の実験を中止することによって、サンプル材料を救出することができる。
【0203】
一般に、開示されたすべての実施形態について、変更および変形が、上記の説明に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の技術的範囲において、本発明を上記の例に具体的に記載された方法以外の方法でも実施できることを理解されたい。
【0204】
以上の明細書の全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「一例」、または「例」への言及は、その実施形態または例に関して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体のさまざまな場所に現れる「一実施形態において(in one embodiment)」、「或る実施形態において(in an embodiment)」、「一例(one example)」、または「或る例(an example)」という表現は、必ずしもすべてが同じ実施形態または例を指すわけではない。
【0205】
さらに、特定の特徴、構造、または特性が、1つ以上の実施形態または実施例において任意の適切な組み合わせおよび/または部分的組み合わせにて組み合わせられてよい。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8
図9
【外国語明細書】