(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074502
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】部材接合構造及びユニット
(51)【国際特許分類】
F16B 7/18 20060101AFI20230522BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20230522BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20230522BHJP
F16B 33/02 20060101ALI20230522BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20230522BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
F16B7/18 A
F16B35/00 K
F16B35/06 Z
F16B33/02 Z
F16B35/00 T
F16B37/00 G
F16B43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183379
(22)【出願日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2021186889
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
3J034
3J039
【Fターム(参考)】
3J034AA02
3J034BA18
3J039AA01
3J039BB02
3J039GA01
3J039GA07
(57)【要約】
【課題】簡易な構造によって、施工不良を防止し、部材同士を確実に且つ非常に強固に接合する手段を提供する。
【解決手段】第一部材及び第二部材の端部同士を合わせて軸方向に接合する部材接合構造であって、上記第一部材は、端部に第一雄ねじ体を配設する第一配設部を有し、上記第二部材は、上記第一配設部に対向する端部に第二雄ねじ体を配設する第二配設部を有し、両端部が開口し、一端部の内周面に上記第一雄ねじ体と螺合する第一螺合領域、他端部の内周面に上記第二雄ねじ体と螺合する第二螺合領域を有し、上記第一配設部と上記第二配設部との間に配される連結部材を具える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材及び第二部材の端部同士を合わせて軸方向に接合する部材接合構造であって、
上記第一部材は、端部に第一雄ねじ体を配設する第一配設部を有し、
上記第二部材は、上記第一配設部に対向する端部に第二雄ねじ体を配設する第二配設部を有し、
両端部が開口し、一端部の内周面に上記第一雄ねじ体と螺合する第一螺合領域、他端部の内周面に上記第二雄ねじ体と螺合する第二螺合領域を有し、上記第一配設部と上記第二配設部との間に配される連結部材を具えることを特徴とする部材接合構造。
【請求項2】
前記連結部材は、一端側の内周面に適宜のリード方向の第一螺旋条を有し、他端側の内周面に上記第一螺旋条と異なるリード方向の第二螺旋条を有することを特徴とする請求項1記載の部材接合構造。
【請求項3】
前記第一雄ねじ体は、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第一配設部内で傾動し得ることを特徴とする請求項1又は2記載の部材接合構造。
【請求項4】
前記第二雄ねじ体は、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第二配設部内で傾動し得ることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項5】
前記第一部材及び/又は前記第二部材は、内部に固定されて、端部よりも軸方向外側に突出する案内部を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項6】
前記第一雄ねじ体及び/又は前記第二雄ねじ体を付勢する付勢部材を設け、
上記付勢部材は、前記第一雄ねじ体の軸部及び/又は前記第二雄ねじ体の軸部の前記連結部材側への突出長さが所定長さで、進退自在に保持し得ることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項7】
前記連結部材は、設置方向及び/又は締結方向の指示表示を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項8】
前記第一雄ねじ体及び前記第二雄ねじ体は、適宜のリード方向に設定された第一螺旋溝と、上記第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード方向に対して異なるリード方向に設定された第二螺旋溝とを有することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項9】
前記第一配設部は、前記第一雄ねじ体の回転を規制し、
前記第二配設部は、前記第二雄ねじ体の回転を規制することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項10】
第一部材及び第二部材の端部同士を合わせて軸方向に接合する部材接合構造であって、
上記第一部材は、端部に第一雌ねじ体を配設する第一配設部を有し、
上記第二部材は、上記第一配設部に対向する端部に第二雌ねじ体を配設する第二配設部を有し、
上記第一雌ねじ体は、内周面に適宜のリード方向の第一螺旋条を有し、
上記第二雌ねじ体は、内周面に上記第一螺旋条と異なるリード方向の第二螺旋条を有し、
一端部に上記第一雌ねじ体に螺合し得る第一雄ねじ部、他端部に上記第二雌ねじ体に螺合し得る第二雄ねじ部を有する連結部材を具えることを特徴とする部材接合構造。
【請求項11】
前記第一雄ねじ部及び前記第二雄ねじ部は、適宜のリード方向に設定された第一螺旋溝と、上記第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード方向に対して異なるリード方向に設定された第二螺旋溝とを有することを特徴とする請求項10記載の部材接合構造。
【請求項12】
前記第一雌ねじ体は、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第一配設部内で傾動し得ることを特徴とする請求項10又は11記載の部材接合構造。
【請求項13】
前記第二雌ねじ体は、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第二配設部内で傾動し得ることを特徴とする請求項10乃至12の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項14】
前記第一雌ねじ体及び/又は前記第二雌ねじ体を付勢する付勢部材を設け、
上記付勢部材は、前記第一雌ねじ体及び/又は前記第二雄ねじ体の前記連結部材側への突出長さが所定長さで、進退自在に保持し得ることを特徴とする請求項10乃至13の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項15】
前記第一配設部は、前記第一雌ねじ体の回転を規制し、
前記第二配設部は、前記第二雌ねじ体の回転を規制することを特徴とする請求項10乃至14の何れかに記載の部材接合構造。
【請求項16】
部材同士の接合に用いる締結部材を保持するユニットであって、
上記締結部材を囲繞し、且つ回転を規制する囲繞部と、
上記締結部材の軸方向の変位を規制する規制部と、を有することを特徴とするユニット。
【請求項17】
前記規制部は、前記締結部材の一部を外部に露出させ得る孔を有し、
前記締結部材を付勢し、前記締結部材の一部を上記孔から突出させる状態で且つ進退自在に保持する付勢部材を有することを特徴とする請求項16記載のユニット。
【請求項18】
前記締結部材は、略球面形状の座面を有し、
上記座面に摺接し得る凹面を有するワッシャを設け、
前記締結部材は、上記ワッシャに面接触しながら、上記座面に沿って傾動し得ることを特徴とする請求項16又は17記載のユニット。
【請求項19】
前記締結部材は、雄ねじ体であり、
該雄ねじ体の軸部には、適宜のリード方向に設定された第一螺旋溝と、上記第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード方向に対して異なるリード方向に設定された第二螺旋溝とを有することを特徴とする請求項16乃至18の何れかに記載のユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材同士を連結して固定する部材接合構造及び、それに用いるユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定長さの角形鋼管や円形鋼管等を現場にて接合して鉄骨柱を施工していくことが行われている。鋼管同士の接合は、鋼管の端面同士を突き合わせて直接溶接することによって行われる。
また、鋼管の管端に継ぎ手部材を取り付け、該継ぎ手部材のねじ孔にボルトを締結することで、一対の鋼管を接合する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合のボルトは、上半部と下半部とで逆ねじとなっており、上半部が一方の鋼管の継ぎ手部材に、下半部が他方の継ぎ手部材にそれぞれ締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋼管同士を直接溶接する場合、現場では溶接を伴うエレクションピースを用いた仮止めを行う必要がある上、現場での溶接作業は天候による影響や作業者の技量等により品質に差が出てしまうという問題がある。更に被溶接鋼材自体に入熱してしまう為、母材を変質させてしまうという問題がある。また溶接作業後、エレクションピースの切断・研磨作業等を行うため、作業工程が煩雑となってしまい、作業効率が悪くなるという問題がある。
【0005】
また、特許文献1の継ぎ手部材を用いた鋼管の接合は、それぞれ直接雌ねじ孔を設けて成る二つの継ぎ手部材間を離間させ、この継手部材間に両端ねじ型のボルトを配して該ボルトの両端部が継ぎ手部材の雌ねじ孔に螺合することで、鋼管同士を徐々に接近させて最終的に鋼管同士の端面を合わせた状態にするため、継ぎ手部材が周方向に複数のねじ孔及びボルトを配して成る場合、全てのボルトを対応する各雌ねじ孔対して高精度で同軸化させつつ、略同時に同速度で回転させないと、一方の鋼管に対し他方の鋼管が傾斜してしまい鋼管の端面同士を突き合わせることが出来ない等、施工不良が発生し、またこのような施工不良によって特定のボルトに各種応力が集中し得る虞があり、結果継ぎ手部材の強度低下を招いてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、施工不良を防止し、部材同士を確実に且つ非常に強固に接合するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部材接合構造は、第一部材及び第二部材の端部同士を合わせて軸方向に接合する部材接合構造であって、上記第一部材は、端部に第一雄ねじ体を配設する第一配設部を有し、上記第二部材は、上記第一配設部に対向する端部に第二雄ねじ体を配設する第二配設部を有し、両端部が開口し、一端部の内周面に上記第一雄ねじ体と螺合する第一螺合領域、他端部の内周面に上記第二雄ねじ体と螺合する第二螺合領域を有し、上記第一配設部と上記第二配設部との間に配される連結部材を具えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の部材接合構造は、前記連結部材が、一端側の内周面に適宜のリード方向の第一螺旋条を有し、他端側の内周面に上記第一螺旋条と異なるリード方向の第二螺旋条を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一雄ねじ体が、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第一配設部内で傾動し得ることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の部材接合構造は、前記第二雄ねじ体が、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第二配設部内で傾動し得ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一部材及び/又は前記第二部材は、内部に固定されて、端部よりも軸方向外側に突出する案内部を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一雄ねじ体及び/又は前記第二雄ねじ体を付勢する付勢部材を設け、上記付勢部材は、前記第一雄ねじ体の軸部及び/又は前記第二雄ねじ体の軸部の前記連結部材側への突出長さが所定長さで、進退自在に保持し得ることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の部材接合構造は、前記連結部材が、設置方向及び/又は締結方向の指示表示を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の部材接合構造。
【0014】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一雄ねじ体及び前記第二雄ねじ体は、適宜のリード方向に設定された第一螺旋溝と、上記第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード方向に対して異なるリード方向に設定された第二螺旋溝とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一配設部は、前記第一雄ねじ体の回転を規制し、前記第二配設部は、前記第二雄ねじ体の回転を規制することを特徴とする。
【0016】
本発明の部材接合構造は、第一部材及び第二部材の端部同士を合わせて軸方向に接合する部材接合構造であって、上記第一部材は、端部に第一雌ねじ体を配設する第一配設部を有し、上記第二部材は、上記第一配設部に対向する端部に第二雌ねじ体を配設する第二配設部を有し、上記第一雌ねじ体は、内周面に適宜のリード方向の第一螺旋条を有し、上記第二雌ねじ体は、内周面に上記第一螺旋条と異なるリード方向の第二螺旋条を有し、一端部に上記第一雌ねじ体に螺合し得る第一雄ねじ部、他端部に上記第二雌ねじ体に螺合し得る第二雄ねじ部を有する連結部材を具えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一雄ねじ部及び前記第二雄ねじ部は、適宜のリード方向に設定された第一螺旋溝と、上記第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード方向に対して異なるリード方向に設定された第二螺旋溝とを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一雌ねじ体が、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第一配設部内で傾動し得ることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の部材接合構造は、前記第二雌ねじ体が、略球面形状の座面を有し、該座面の球面に沿って前記第二配設部内で傾動し得ることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一雌ねじ体及び/又は前記第二雌ねじ体を付勢する付勢部材を設け、上記付勢部材は、前記第一雌ねじ体及び/又は前記第二雄ねじ体の前記連結部材側への突出長さが所定長さで、進退自在に保持し得ることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の部材接合構造は、前記第一配設部が、前記第一雌ねじ体の回転を規制し、前記第二配設部が、前記第二雌ねじ体の回転を規制することを特徴とする。
【0022】
本発明のユニットは、部材同士の接合に用いる締結部材を保持するユニットであって、上記締結部材を囲繞し、且つ回転を規制する囲繞部と、上記締結部材の軸方向の変位を規制する規制部と、を有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明のユニットは、前記規制部が、前記締結部材の一部を外部に露出させ得る孔を有し、前記締結部材を付勢し、前記締結部材の一部を上記孔から突出させる状態で且つ進退自在に保持する付勢部材を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明のユニットは、前記締結部材が、略球面形状の座面を有し、上記座面に摺接し得る凹面を有するワッシャを設け、前記締結部材は、上記ワッシャに面接触しながら、上記座面に沿って傾動し得ることを特徴とする。
【0025】
また、本発明のユニットは、前記締結部材が、雄ねじ体であり、該雄ねじ体の軸部には、適宜のリード方向に設定された第一螺旋溝と、上記第一螺旋溝が形成された領域の少なくとも一部の領域で重複するように形成され、上記リード方向に対して異なるリード方向に設定された第二螺旋溝とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡易な構造によって、施工不良を防止し、部材同士を確実に且つ非常に強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態の部材接合構造による角形鋼管同士の接合状態を示す平面図である。
【
図2】部材接合構造による角形鋼管同士の接合状態を示す断面図である。
【
図5】雄ねじ体を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図7】連結部材を示し、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【
図9】連結部材の配設方法の一例を段階的に示す図である。
【
図10】案内部による両角形鋼管の端面同士の位置合わせを示す概略断面図である。
【
図11】角形鋼管の周方向の位相ズレを示す平面図である。
【
図18】凹部によって構成される隅部の他の例を示す図である。
【
図20】クランク型端部同士を突き合せた例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の部材接合構造の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本実施形態の部材接合構造1による被接合部材としての角形鋼管同士の接合状態を示す平面図、
図2は部材接合構造による角形鋼管同士の接合状態を示す断面図(
図1に示すA-A線断面図)である。
【0029】
ここで、角形鋼管は、角形に一体的に成形されたものであっても、複数の角形鋼を組み合わせて管状に形成したものであっても、又は板材で四面を囲んで角管状に構成したものであってもよい。勿論、被接合部材は、角管に限定されるものではなく、円形管のみならず、管以外の部材であってもよい。
【0030】
部材接合構造1は、角形断面の角形鋼管10a(第一接合部材)と角形鋼管10b(第二接合部材)にそれぞれに配される雄ねじ体2、角形鋼管10a、10b間に配されて軸方向に配された二つの雄ねじ体2に螺合し得る連結部材4等を有する。
【0031】
また、部材接合構造1は、連結部材4の一端部に角形鋼管10aの雄ねじ体2を螺合させると共に、他端部に角形鋼管10bの雄ねじ体2を螺合させることで角形鋼管10a、10bの端面同士を突き合せた状態で接合する。なお、ここでは角形鋼管同士を接合する場合を例に説明するが、丸形鋼管等の接合に部材接合構造1を適用することも可能であることは言うまでもない。
【0032】
ここで、
図3は角形鋼管10aを示す斜視図である。なお、角形鋼管10bは、角形鋼管10aと略同形状であり、以下の角形鋼管10aと同様の構成を有するものである。角形鋼管10aは、断面が略矩形状の鋼管である。角形鋼管10aは、内部に角形鋼管10a、10b同士を接合するときに所定の接合位置に案内するための案内部12、雄ねじ体2を配するための配置部14、凹部30等を具える。
【0033】
凹部30は、角形鋼管10a、10b同士の接合時に、連結部材4に干渉しないように、外周端部の四つの角部を軸直交方向内側に窪ませて成る。なお、凹部30の位置は角部に限定するものではなく、配置部14や、連結部材4の位置等に応じて設定される。従って、これらの配設箇所によって適宜の位置に設定されるものであることはいうまでもない。
【0034】
案内部12は、内壁面に接続、固定されており、周方向の略全域で複数配設される。即ち、角形鋼管10aが平面視で略矩形状を成している場合、案内部12は、平面視における四面全てに配設される。また、案内部12は、先端部を角形鋼管10aの端面よりも軸方向外側に突出させ、相手方である角形鋼管10bの内周面に対向し得るように突出する傾斜部13を有する。傾斜部13は、基端から先端に向かって角形鋼管10aの軸心側に傾斜する。
【0035】
配置部14は、雄ねじ体2の軸部を凹部30に向かって突出し得るように雄ねじ体2を保持する。例えば、配置部14は、角形鋼管10a、10bの端部側の四隅に配されて雄ねじ体2の軸部を挿通させる挿通孔を具える。
なお、配置部14の位置は角形鋼管10aの四隅に限定するものではなく、凹部30に対して軸方向に並ぶように配置すれば、凹部30と共に適宜の位置に設けることができる。
【0036】
配置部14は、雄ねじ体2の頭部2a(
図5参照)を囲繞し、頭部2a周面に係合し得る囲繞部16、頭部2aの座面側に配され、上記挿通孔が形成された規制部18等を有して成る。
図4は囲繞部16を示す断面図であり、角形鋼管10aの軸直交断面図である。囲繞部16は、少なくとも雄ねじ体2の周方向全域を囲繞し得るように形成されていればよい。囲繞部16は、例えば
図4(a)に示す角形鋼管10a内の隅部を含んだ内壁を成す壁面部20と、該壁面部20に雄ねじ体2を挟んで対向するように配される別体の板面部22によって形成することができる。
【0037】
ここで、板面部22は、軸直交断面形状が略く字状や断面略L字状等を成し、壁面部20に直接固定される。板面部22を壁面部20に固定する方法は、例えば、溶接、接着及び/又は締結部材を用いた固定等があり、特に限定されるものではない。なお、締結部材を用いた固定とは、ボルト、ナットによる締結、壁面部20及び/又は板面部22にタップ孔を設けてボルトによる締結、リベット接合等が有り得る。
【0038】
ボルトとナットで板面部22を壁面部20に固定する場合、
図4(b)に示すように、角形鋼管10aの内側からボルト32を通して、角形鋼管10aの外側でナット34を締め付けてもよく、また
図4(c)に示すように角形鋼管10aの外側からボルト32を通して、角形鋼管10aの内側でナット34を締め付けてもよい。
【0039】
規制部18は、中央部に雄ねじ体2の軸部が挿通し得る孔を有する。規制部18の孔径は、軸部の径よりも大径であって、後述する雄ねじ体2による所定角度範囲で傾動するのを妨げない大きさに設定される。
【0040】
図5は、雄ねじ体2を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。雄ねじ体2は、非円柱形状(例えば略矩形状)の頭部2aと、円柱形状で外周面に雄ねじ螺旋溝を形成した軸部2bとを有して成る。頭部2aは、略球面状を成す座面(球座面8という。)を有し、配置部14内での相対回転が規制されるように囲繞部16に係止され得るように外周形状が設定される。
従って、頭部2aは、外周面形状を略矩形状としたが、楕円形状や長円形状、多角形状(六角形状等)、所謂Dカット形状、雄ねじ体2の回転軸を挟んで互いに平行な二つの面からなる二面幅が一対以上形成された形状等としてもよい。
【0041】
軸部2bは、丸先の先端形状を有し、右ねじである第一雄ねじ螺旋溝及び左ねじである第二雄ねじ螺旋溝の二種類の雄ねじ螺旋溝が同一領域上に重複する両ねじ部を有する。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ体の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0042】
勿論、雄ねじ体2としては、対向する一方を右ねじの雄ねじ体とし、他方を左ねじの雄ねじ体として構成することも出来るが、見た目での右ねじと左ねじの判別は難しく組み立て時の部品選定や組み込み位置を誤り易く、誤った配置をした場合に現場での施工が不可能となり、大きな実損を招くことになってしまうので、上記雄ねじ体2を選定することが好ましい。
【0043】
図6はワッシャ6を示す斜視図である。ワッシャ6は、球座面8が摺接し得る接触凹面6aを有する。またワッシャ6に形成される軸部2bを挿通させるための孔は、後述する雄ねじ体2による所定角度範囲で傾動するのを妨げない大きさに設定される。
【0044】
接触凹面6aと球座面8とは、雄ねじ体2を傾動させる傾動構造として機能する。即ち、接触凹面6a上で球座面8を摺動させることで、軸部2bの軸心をワッシャ6の軸心に対して所定角度(例えば、±5°)範囲で傾斜するように雄ねじ体2を傾動させることができる。
【0045】
なお、配置部14内は、雄ねじ体2の軸部2bの略全体を収納可能な軸方向の空間を有する。そのため、軸部2bが配置部14内に隠れてしまうのを防止し得るように、軸部2bを凹部30側に突出させる圧縮ばね又は引張ばね等の付勢部材24を配置部14内に設けてもよい。このような付勢部材24によれば、雄ねじ体2を配置部14内で軸方向に進退可能に保持することができる。
【0046】
例えば、角形鋼管10a、10bを天地方向に並べる場合、下方から凹部30に突出し得る雄ねじ体2に対しては、雄ねじ体2が自重で配置部14内に引っ込んでしまう(落ち込んでしまう)のを防止しつつ軸部2bを所定長さ突出させるように、雄ねじ体2を下方で支持する付勢力を発生させる圧縮ばね等の付勢部材24を配する。
一方で、上方から凹部30に突出し得る雄ねじ体2に対しては、自重による凹部30側への過度な突出を防止しつつ軸部2bを所定長さ突出させるように、雄ねじ体2を上方から配置部14内に引き込んで支持するための付勢力を発生させる引張ばね等の付勢部材24を配する。
【0047】
なお、付勢部材24による軸部2bの突出長さは、角形鋼管10a、10b間に連結部材4を配したとき、連結部材4に雄ねじ体2を確実に螺合させられる程度で突出する長さに設定される。例えば、軸部2b間に連結部材4を配したときに、連結部材4に対し、互いのねじ山を数ピッチ(二、三ピッチ)分、螺合可能に軸部2bを突出させるように突出長さを設定する。従って、軸部2b間に連結部材4を配して互いのねじ部を螺合させていない状態では、連結部材4は軸部2bによって軸方向に付勢される。
【0048】
図7は連結部材4を示し、(a)は正面図、(b)は断面図である。連結部材4は、両端部を開口させた略筒状部材であって内部で二本の雄ねじ体2を連結状態で保持する。また、連結部材4は、角形鋼管10aに対向する一端部の内周面に適宜のリード方向の螺旋条を有し、角形鋼管10bに対向する他端部の内周面に、一端部のリード方向と異なるリード方向の螺旋条を有する。即ち、連結部材4は、一端部に角形鋼管10aに配設されている雄ねじ体2に螺合する第一雌ねじ螺旋条(右ねじの螺旋条)を配した第一螺合領域4aを有し、他端部に角形鋼管10bに配設されている雄ねじ体2に螺合する第二雌ねじ螺旋条(左ねじの螺旋条)を配した第二螺合領域4bを有する。
【0049】
連結部材4は、外表面にトルクを付加するためのトルク付加部5を有する。このトルク付加部5は、
図7に示す連結部材4の軸方向の中央部において、周方向に沿って略等間隔に設けられた穿孔によって成すことができる。この場合、トルク付加部5の孔に棒状部材等を挿入することで周方向にトルクを付加することできる。なお、トルク付加部は、連結部材4の外表面に設けた二面幅を有するものであってもよく、その場合トルクレンチ等によってトルクを付加することができる。
【0050】
また、連結部材4の表面には、設置方向及び締結時の回転方向(締結方向)を示す指示表示が設けられている。具体的には、上下方向に角形鋼管10a、10bを並べる場合、
図7に示すように「天」の文字と上向きの矢印によって連結部材4の設置方向としての天地方向を示すと共に、「締」の文字と左側を示す矢印(即ち、右回転を誘導する矢印)によって締結方向を示す表示を設けている。従って、この場合は、天が正しい向きで表示され且つ矢印が上向きの姿勢を設置方向とし、左側を示す矢印に沿って連結部材4を回転させて雄ねじ体2に締結する
勿論、天地方向及び締結方向の表示方法は、これに限定するものではなく、単に矢印の表示や、ローマ字や英字と矢印の表示で指示する等、適宜設定することが可能である。
【0051】
連結部材4の軸方向長さは、角形鋼管10a、10b同士の端面を突き合せた状態の凹部30間の長さL(
図1参照)よりも短く設定される。軸部2bの凹部30への突出長さは、角形鋼管10a、10b同士の端面を突き合せた状態で且つ凹部30間に連結部材4を配した場合に、連結部材4内の第一螺合領域4a又は第二螺合領域4bの螺旋条に掛かり得る程度の長さとなるように設定される。即ち、凹部30間の長さLは、連結部材4の軸方向長さと軸部2bの二本分の突出長さとの和よりも短くなるように設定される。
【0052】
部材接合構造1による角形鋼管10a、10b同士の接合方法について説明する。先ず
図8に示すように、角形鋼管10a、10bを上下方向に並べて端面同士を突き合わせる。結果、対向する凹部30によって連結部材4を配設するための空間を形成する。
【0053】
凹部30同士で形成された空間に連結部材4を配設する。このとき連結部材4に対し、上下方向から雄ねじ体2の軸部2bが干渉し得るが、各雄ねじ体2を軸方向に移動させることで、連結部材4を配設する。即ち、各雄ねじ体2を配置部14内部に変位させることで、雄ねじ体2間の間隙を拡げ、連結部材4を配設する。
【0054】
ここで
図9は、連結部材4の配設方法の一例を段階的に示す図である。連結部材4の配設は、まず
図9(a)に示すように連結部材4を、その下端部を前方に向けた傾斜姿勢にし、凹部30により作出された空間に進入させる。結果、下方に存する角形鋼管10a側の雄ねじ体2は、連結部材4の下端部に当接して下方、即ち配置部14内部に引っ込むように変位する。連結部材4は、第一螺合領域4aに雄ねじ体2の軸部2bが進入し得るように下端部の位置が調整される。
【0055】
次に、連結部材4の軸心が略鉛直方向(或いは、角形鋼管10a、10bの軸心の方向)と略平行となるように、上端部を起こす方向に回動させる。
図9(b)に示すように、角形鋼管10b側の雄ねじ体2は、回動している連結部材4の上端部に当接し、上方、即ち配置部14内部に押し上げられるように変位する。
【0056】
図9(c)に示すように、連結部材4を回動させて連結部材4の軸心と雄ねじ体2の軸心とが略一直線状に並んだとき、連結部材4の両端部の開口に軸部2bの先端部が進入する。このとき、軸部2bは連結部材4を軸方向に押圧するように付勢する。
即ち、連結部材4の第一螺合領域4aには、角形鋼管10a側に配した雄ねじ体2の軸部2bが進入し得、第二螺合領域4bには、角形鋼管10b側に配した雄ねじ体2の軸部2bが進入し得る。
【0057】
また、各雄ねじ体2が連結部材4側に付勢され、更に連結部材4が第一螺合領域4aと第二螺合領域4bとで互いにリード方向が異なる螺旋条を有しているため、連結部材4に締結方向のトルクを印加したとき、連結部材4の回転に伴って両端部で雄ねじ体2が螺合する。
即ち、連結部材4が締結方向に回転することで、角形鋼管10a側の雄ねじ体2の軸部2bは、第一螺合領域4aで噛み合って上方に相対移動すると共に、角形鋼管10b側の雄ねじ体2の軸部2bは、第二螺合領域4bで噛み合って下方に相対移動する。
【0058】
各軸部2bが第一螺合領域4a、第二螺合領域4bの軸方向奥部まで移動し、
図2に示すように、各雄ねじ体2が規制部18を押圧し得る位置に達することで、角形鋼管10a、10bは互いに軸方向の変位が規制されるため、連結部材4による雄ねじ体2の締結処理が完了する。
【0059】
上記の締結処理を各連結部材4に対して行うことで、角形鋼管10a、10bの接合処理が完了する。即ち、角形鋼管10a、10b間には、凹部30によって連結部材4を配設可能な空間が四か所形成されるため、四つの連結部材4によって雄ねじ体2を締結することにより、角形鋼管10a、10bの接合処理が完了する。
【0060】
以上説明したように、部材接合構造1は、連結部材4によって二つの雄ねじ体2を連結するので、角形鋼管10a、10b同士を突き合せた状態で個々の連結部材4をそれぞれのタイミングで雄ねじ体2に螺合していくことができ、作業効率を向上させることができる。
即ち、複数の連結部材4を締結方向に回転させるものであるが、これらの連結部材4は、同時に回転させる必要がなく、一箇所ずつ締結処理を完了させていくことでも角形鋼管10a、10b同士の接合を確実に行うことができ、施工不良の発生を防止して非常に強固な接合を行うことができる。
【0061】
また、案内部12を設けたことにより、角形鋼管10aと角形鋼管10bとを突き合わせるときに、相対位置のズレを矯正することができる。
図10は、案内部12による両角形鋼管10a、10bの端面同士の位置合わせを示す概略断面図であり、角形鋼管10aの案内部12の周囲及び、該案内部12によって所定位置に誘導される角形鋼管10bの一部を示す。
【0062】
例えば、
図10(a)の点線で示すように、角形鋼管10a及び角形鋼管10bの外周面位置がズレている場合、角形鋼管10a、10b同士を軸方向に接近させて外周面の位置ズレを矯正することができる。具体的には、傾斜面13に角形鋼管10bの外周面が当接したとき、
図10(b)に示すように角形鋼管10bを外周面位置のズレを矯正する方向(
図10(b)の矢印で示す方向)に相対変位させることができる。従って、角形鋼管10a、10bは、
図10(c)に示すように、端面同士を突き合せたとき、互いの外周面が略面一に並んで角形鋼管10a、10b同士の位置ずれを確実に防止することが出来る。
【0063】
また、案内部12による相対位置のズレ矯正は、両角形鋼管10a、10bの平面視における周方向の位相ズレに対しても有効である。例えば、角形鋼管10aに対し、上方から角形鋼管10bを降ろして接合する場合、角形鋼管10bを角形鋼管10aに対して相対回転させて所定位置に案内することができる。
【0064】
即ち、
図11に示す平面視において、点線で示す角形鋼管10aの外周面に対して角形鋼管10bの外周面が周方向(時計回り)に位相がズレていた場合、案内部12が角形鋼管10a又は角形鋼管10bの内周面に当接することで、角形鋼管10bは、角形鋼管10aの外周面と略面一の状態になるように角形鋼管10aに対して反時計回りに相対回転する。結果、角形鋼管10a、10b同士の周方向の位相ズレが矯正される。
【0065】
また、角形鋼管内側の周方向全域に複数の案内部12を設けたことで、案内部12を角形鋼管10a、10b間に生じる軸直交方向の剪断力に抗するように機能させることができる。従って角形鋼管10a、10bの剪断方向の外力に対する接合強度を向上させることができる。
【0066】
また、雄ねじ体2の球座面8とワッシャ6の接触凹面6aとが摺動可能に接触するので、雄ねじ体2は、傾動することで姿勢を変化させ得る。即ち、
図12(a)に示すように雄ねじ体2の軸心C1及びワッシャ6の軸心C2が一致する状態から、
図12(b)に示すような軸心C1が軸心C2に対して傾斜した状態となり得る。
従って、雄ねじ体2の軸部2bが所定角度範囲内で傾斜することで、連結部材4の両端に螺合する雄ねじ体2が互いに傾斜していても、その角度ずれの誤差を吸収して各々を連結部材4に螺合することができる。これにより、連結部材4と雄ねじ体2とを確実に締結することができる。
【0067】
また、雄ねじ体2が傾動しても、球座面8が接触凹面6aの略全面に面接触するため、雄ねじ体2のワッシャ6への片当たりを防止、且つ雄ねじ体2と連結部材4との締結時の軸力低下を防止でき、安定した高い軸力を発生させることが出来る。
【0068】
また、雄ねじ体及び連結部材は、角形鋼管の四隅部で壁面近傍に位置しているため、雄ねじ体及び連結部材による軸力が効率的に角形鋼管同士の接合に寄与する。即ち、雄ねじ体及び連結部材が、角形鋼管の壁部に対して略軸方向延長線上に存するため、雄ねじ体と連結部材との締結によって発生する軸力を角形鋼管同士の接合に効率的に寄与させることができる。
換言すれば、本発明の部材接合構造1は、角形鋼管の壁部に対し軸方向延長線上に雄ねじ体及び連結部材を存するので、同じ軸力を発生させた場合であっても、角形鋼管の壁部から軸直交方向に離間させた位置で雄ねじ体と連結部材とを締結させたときと比較し、非常に高い強度で角形鋼管同士を接合することができる。
【0069】
なお、囲繞部16を、壁面部20及び板面部22によって形成したが、これに限定するものではなく、板状部材を矩形状に折り曲げることで、囲繞部を形成してもよい。このような囲繞部においても、角形鋼管の壁面部に対して溶接、接着及び/又は締結部材等によって固定することができる。
【0070】
また、設置部14は、角形鋼管内で雄ねじ体を保持し得る構成として、少なくとも囲繞部16、規制部18に相当する部材を有していればよい。例えば、雄ねじ体を保持する別体のユニットとして角形鋼管に固定してもよい。ここで
図13は角形鋼管10aに固定し得るボルトユニット40(ユニット)を示す斜視図である。ボルトユニット40は、雄ねじ体2の頭部を囲繞する、囲繞部16に相当する機能を有する外周面42と、雄ねじ体2の軸部を突出させ且つ頭部の軸方向変位を規制する、規制部18に相当する機能を有した端面44等を有する。また、ボルトユニット40内部には、上述の付勢部材24(不図示)を配してもよい。
【0071】
また、
図13(a)に示すように、角形鋼管10aには、その隅部にボルトユニット40を配設可能な切欠き部50を設ける。ボルトユニット40は、
図13(b)に示すように、切欠き部50に嵌め込むように、角形鋼管10aの外周面に固定することができる。なお、ボルトユニット40は、
図14に示すように角形鋼管10aの内周面側で固定してもよい。ボルトユニット40の固定は、接着、溶着、締結部材(ボルト、ナット等)を用いた固定等、適宜の方法があり得、特に限定するものではない。
勿論、ボルトユニット40は、雄ねじ体2が角形鋼管10aの壁部と軸方向延長線上に存するように設けることが好ましい。
【0072】
また、上述した部材接合構造1は、二本の雄ねじ体を連結部材の両端部に締結させるものとして説明したが、両端部に雄ねじ部を形成した軸部を有する連結部材に、雌ねじ体を螺合させた構成であってもよい。
【0073】
ここで、
図15は部材接合構造の他の例を示す図であり、部材接合構造1は、設置部14によって保持される雌ねじ体50と、凹部30間に配された連結部材60とにより構成することができる。
雌ねじ体50は、一端部が開口しており内部に適宜のリード方向の螺旋条を有する。また雌ねじ体50は、他端部に径方向外側に突出して端面が球座面形状のフランジ部52を有する。フランジ部52は、設置部14内でワッシャ6の接触凹面6aに摺動可能に接触する。
【0074】
また、雌ねじ体50は、何れの角形鋼管に配設されるかに応じて螺旋条のリード方向を定める。即ち、角形鋼管10aに配設される雌ねじ体50は、第一雌ねじ螺旋条(左ねじの螺旋条)を配し、角形鋼管10bに配設される雌ねじ体50は、第二雌ねじ螺旋条(右ねじの螺旋条)を配する。勿論、雌ねじ体50に形成される螺旋条のリード方向は、上記に限定するものではなく、第一雌ねじ螺旋条を右ねじの螺旋条、第二雌ねじ螺旋条を左ねじの螺旋条としてそれぞれ設定してもよい。
【0075】
連結部材60は、両端部に右ねじである第一雄ねじ螺旋溝及び左ねじである第二雄ねじ螺旋溝の二種類の雄ねじ螺旋溝を同一領域上に重複形成した雄ねじ部を有する。また連結部材60の軸方向中央部には、外表面にトルクを付加するためのトルク付加部を設けるものとする。
【0076】
また、案内部12は、角形鋼管内側の周方向に沿って複数配しており、上述した
図3等に記載の角形鋼管10aには、各辺に案内部12を二つずつ配しているが、これに限定するものでは無い。即ち、案内部12の配設数やサイズ等は、適宜設定し得、例えば規制部18近傍を除いた角形鋼管内周面の各辺に一乃至二以上の案内部12を配することができる。
具体的には、
図16(a)に示すように案内部12は、規制部18間に一つ配設し、且つ角形鋼管の内側の辺に沿った長さを延長させた形状とすることができる。このように角形鋼管の内周面に沿う案内部12の長さを延長させることで、角形鋼管同士を接合状態としたときに相手方の角形鋼管に接触し得る面積が大きくなり、角形鋼管間に生じる剪断強度を高めることができる。また、案内部12は、
図16(b)に示すように角形鋼管内側の周方向全域に亘って一連に延在する環形状を有するものであってもよい。
但し、
図16(a)、(b)に示す案内部12は、角形鋼管の一端部にのみ設けるものとする。角形鋼管10a、10bを接合させる際に互いの案内部12同士が干渉してしまうのを防止するためである。
【0077】
また、案内部12を角形鋼管の内周面側にのみ設けている場合を例に説明したが、勿論これに限定するものではなく外周面側に設けるようにしてもよく、また内周面及び外周面の両側に設けてもよい(例えば、
図18参照)。案内部12を角形鋼管の内周面及び外周面の両側に設ければ、角形鋼管同士を接合させたときに他方の角形鋼管の周面を内外両側で支持し得、角形鋼管同士の間に生じる軸直交方向の剪断力に抗する接合強度を更に向上させることが出来る。
【0078】
また、上記実施形態において、角形鋼管の角部に凹部30を設けた場合、該凹部30を設けた箇所において外周面を軸直交方向内側に窪ませて隅部を形成しており、該隅部を互いに直交する二平面によって構成したが(例えば、
図3参照。)、該隅部の形状はこれに限定するものではない。例えば、
図17に示す略円弧状等の曲面(湾曲も含む)で隅部を構成してもよい。また隅部を曲面や平面等を組み合わせて構成してもよい。
【0079】
また、角形鋼管の外形形状を、角形鋼管同士を接合したときに互いに径方向に係合し得る形状にしてもよい。即ち、角形鋼管10a、10bを接合したとき、一方が他方の端部を囲繞、被覆するように互いの端部形状を設定してもよい。
【0080】
図19は角形鋼管の端部の例を示す断面図であり、例えば、角形鋼管の端部の断面形状をクランク型にしたクランク型端部50を形成する。また、クランク型端部50は、クランク型に折れ曲がった中途部分において、相手方の角形鋼管を軸方向に支持し得る支持面52を有する。
図19において、一方の角形鋼管10aは、端部が径方向外側に拡がるクランク型とし、他方の角形鋼管10bは、端部が径方向内側に狭まるクランク型とすることが出来る。従って、角形鋼管10a、10b同士を接合させたとき、両クランク型端部50において互いを径方向に係合させることが出来る。よって、角形鋼管10a、10b同士の間に生じる軸直交方向の剪断力に抗する接合強度を向上させることが出来る。
【0081】
勿論、角形鋼管10a、10bは、クランク型端部50を有すると共に、上記案内部12を有していてもよいことは言うまでもない。また、クランク型端部50のクランクの向きは、上記に限定するものでは無く、角形鋼管10aは、端部が径方向内側に狭まるクランク型、角形鋼管10bは、端部が径方向外側に拡がるクランク型であってもよい。
また、クランク型端部50を有する角形鋼管10a、10b同士を接合する場合、
図20(a)又は
図20(b)に示すように角形鋼管10a、10bの端面を相手方のクランク型端部50の支持面52に当接させてもよい。特に
図20(b)に示すように角形鋼管10a、10bの断面の厚み方向中央部にクランク型端部50を設けるようにすれば、角形鋼管10a、10bの外周面が軸方向に略直線状に並んだ状態で角形鋼管10a、10b同士を接合することが出来る。また、上記のように角形鋼管10a、10bの端面を相手方のクランク型端部50の支持面52に当接させることで、角形鋼管10aの支圧面(角形鋼管10aの端面及び支持面52)と角形鋼管10bの支圧面(角形鋼管10bの端面及び支持面52)によって角形鋼管10a、10b間に作用する応力が分散される。即ち、角形鋼管10a、10bのクランク型端部50以外の箇所の軸直交方向の断面積よりも支圧面の面積の方が広いので、結果支圧応力が分散されて角形鋼管10a、10bの変形や損傷等を抑制することができると共に、角形鋼管10a、10b同士の接合部分における強度、剛性を向上させることが出来る。
また、
図20(c)に示すように互いの支持面52同士を当接させるように並べてもよく、その場合は角形鋼管10a、10bの先端面は、相手方の周面の外側或いは内側に位置する。
【符号の説明】
【0082】
1…部材接合構造、2…雄ねじ体、4…連結部材、6…ワッシャ、6a…接触凹面、8…球座面、10a,10b…角形鋼管、12…案内部、14…配置部、16…囲繞部、18…規制部、20…壁面部、22…板面部、24…付勢部材、30…凹部、40…ボルトユニット。