(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074552
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】土留パネル
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
E02D17/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187516
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正宏
(72)【発明者】
【氏名】鎌崎 祐治
(72)【発明者】
【氏名】若山 崇大
(57)【要約】
【課題】断面剛性を向上させて、土圧が高く作用する掘削孔や掘削孔の深度が深い部分において用いることができる土留パネルを提供する。
【解決手段】土留パネルは、波形の山部及び谷部が長手方向に沿って延びるように形成された複数の波付け鋼板と、少なくとも1つの波付け鋼板の長手方向の両端部に設けられた縦フランジ部と、を備えている。複数の波付け鋼板は、隣り合う波付け鋼板の山部同士及び谷部同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削して形成された掘削孔に設置されて土留構造物を構築するために用いられる土留パネルであって、
波形の山部及び谷部が長手方向に沿って延びるように形成された複数の波付け鋼板と、
少なくとも1つの前記波付け鋼板の長手方向の両端部に設けられた縦フランジ部と、を備え、
複数の前記波付け鋼板は、隣り合う前記波付け鋼板の前記山部同士及び前記谷部同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合されている、土留パネル。
【請求項2】
隣り合う前記波付け鋼板は、前記縦フランジ部を介して接合されている、請求項1に記載の土留パネル。
【請求項3】
隣り合う前記波付け鋼板は、前記山部同士又は前記谷部同士が接合部材で接合されている、請求項1又は2に記載の土留パネル。
【請求項4】
隣り合う前記波付け鋼板は、短手方向における両端部が溶接で接合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の土留パネル。
【請求項5】
前記波付け鋼板は、波形断面が角波状に形成され、短手方向の両端部に横フランジ部を有する構成である、請求項1~4のいずれか一項に記載の土留パネル。
【請求項6】
複数の前記波付け鋼板は、波形断面が角波状に形成され、短手方向の両端部に横フランジ部を有する第1波付け鋼板と、波形断面が角波状に形成され、短手方向の両端部に横フランジ部を有さない第2波付け鋼板と、を有し、
前記第1波付け鋼板と前記第2波付け鋼板とが、前記山部同士及び前記谷部同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の土留パネル。
【請求項7】
前記波付け鋼板は、波形断面がサインカーブ状に形成された構成である、請求項1~4のいずれか一項に記載の土留パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面剛性を向上させた土留パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、地面を掘削して形成された掘削孔に波付け鋼板を有する土留パネルを組み立てて構築された土留構造物が知られている。土留構造物は、掘削孔の壁面に沿って複数の土留パネルを環状に配置して形成された構造体を、孔軸方向に積み重ねて構築される。
【0003】
土留構造物は、掘削孔の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きくなり、波付け鋼板だけでは剛性が足りない場合がある。また、深度の深さにかかわらず、土質の条件等により、土圧が大きい場合もある。更に、孔軸方向の深度が深くなるにつれて、上方に配置された構造体の自重が下方に配置された構造体に作用する。このため、土留構造物では、剛性が足りない箇所において、上下に隣り合う波付け鋼板の間に補強リングと呼ばれるH形鋼を挟み込み剛性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、補強リングの施工は、煩雑で手間が掛かるため、工期が長引き工費が嵩む問題がある。そのため、補強リングの設置を省略できる土留構造物を構築するための土留パネルが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、断面剛性を向上させて、土圧が高く作用する掘削孔や掘削孔の深度が深い部分において用いることができる土留パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る土留パネルは、地面を掘削して形成された掘削孔に設置されて土留構造物を構築するために用いられる土留パネルであって、波形の山部及び谷部が長手方向に沿って延びるように形成された複数の波付け鋼板と、少なくとも1つの前記波付け鋼板の長手方向の両端部に設けられた縦フランジ部と、を備え、複数の前記波付け鋼板は、隣り合う前記波付け鋼板の前記山部同士及び前記谷部同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る土留パネルは、複数の波付け鋼板と縦フランジ部とを備え、隣り合う波付け鋼板の山部同士及び谷部同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合し、断面剛性を向上させているので、土圧が高く作用する掘削孔や掘削孔の深度が深い部分において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】土留構造物の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図2】土留構造物を構成する土留パネルの一例を示した斜視図である。
【
図3】土留構造物を構成する土留パネルの一例を示した縦断面図である。
【
図4】土留構造物の構築工法の一例を模式的に示した説明図である。
【
図5】実施の形態1に係る土留パネルを示した斜視図である。
【
図6】実施の形態1に係る土留パネルを示した縦断面図である。
【
図7】実施の形態1に係る土留パネルの変形例1を示した斜視図である。
【
図8】実施の形態1に係る土留パネルの変形例2を示した縦断面図である。
【
図9】実施の形態1に係る土留パネルを用いて構築した土留構造物の要部を拡大して示した説明図である。
【
図10】実施の形態2に係る土留パネルを示した縦断面図である。
【
図11】実施の形態3に係る土留パネルを示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。また、本実施の形態では、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左、右、縦、横等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0011】
実施の形態1.
先ず、土留構造物200の一例を
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、土留構造物200の一例を模式的に示した斜視図である。
図2は、土留構造物200を構成する土留パネル101の一例を示した斜視図である。
図3は、土留構造物200を構成する土留パネル101の一例を示した縦断面図である。土留構造物200は、例えば建築構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物を構築する際に構築されるものである。土留構造物200は、地面を掘削して形成された鉛直の掘削孔に、
図1に示すような環状の構造体201を掘削孔の孔軸方向に沿って複数段に積み重ねて構築される。
【0012】
土留構造物200を構成する各々の構造体201は、同じ断面係数から成る複数の土留パネル101を環状に配置して形成された構成とされている。土留パネル101は、
図2及び
図3に示すように、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された1枚の波付け鋼板1と、波付け鋼板1の長手方向Xとなる両端部に設けられた縦フランジ部2と、を備えている。
【0013】
波付け鋼板1は、波形断面が角波状となるように、圧延鋼板を角波状に屈曲成形した構成である。本実施の形態における角波状とは、一例として、角が丸められた台形波状である。波付け鋼板1は、一例として、3つの山部1aと2つの谷部1bとで構成されている。但し、山部1aと谷部1bの個数は、図示した個数に限定されない。山部1aと谷部1bは、略平行となるように形成されている。波付け鋼板1は、谷部1bの谷底が狭くなるように、山部1aと谷部1bとを繋ぐウェブ1cを水平方向に対し若干傾斜させて形成されている。ウェブ1cを若干傾斜させることで、波付けのための塑性加工を行う際に、離型しやすくなり、製造が容易となる。また、波付け鋼板1は、山部1aと谷部1bとを繋ぐウェブ1cの傾斜角度を小さくすることで、山部1aと谷部1bとの間が広くなり、面方向に曲げモーメントが負荷されたときの剛性が高くなる。波付け鋼板1の曲げの中立軸における断面係数は、山部1aと谷部1bの幅が広いほど大きくなるからである。波付け鋼板1のウェブ1cの水平方向に対する傾斜角度は、0°以上、20°以下に設定され、更に望ましくは、0°以上3°以下に設定される。
【0014】
波付け鋼板1は、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。山部1aと谷部1bの板厚は、ウェブ1cと同じ板厚で形成されているが、ウェブ1cよりも厚くしても良い。このように構成されることにより、中立軸から遠い山部1aと谷部1bの断面積が大きくなり、波付け鋼板1の断面係数をさらに高くすることができる。
【0015】
図2及び
図3に示すように、波付け鋼板1は、短手方向Yの両端部に、波形の両端縁を曲げ加工によって形成された横フランジ部10を有している。横フランジ部10は、孔軸方向に対してほぼ垂直に形成された平板状の部分である。横フランジ部10には、掘削孔の孔軸方向に積み重ねた上下に隣り合う波付け鋼板同士を連結するための連結孔10aが長手方向Xに沿って複数形成されている。上下に隣り合う波付け鋼板1は、横フランジ部10を突き合わせ、連結孔10aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、上下に隣り合う波付け鋼板1の横フランジ部10を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔10aの個数は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0016】
縦フランジ部2は、波付け鋼板1の長手方向Xの両端縁にプレートを溶接して設けられた構成である。縦フランジ部2は、土留構造物200に必要な強度及び剛性に応じて厚さが決定される。縦フランジ部2には、掘削孔301の周方向に配置した左右に隣り合う土留パネル101同士を連結するための連結孔2aが上下方向(Y方向)に沿って複数形成されている。左右に隣り合う土留パネル101同士は、縦フランジ部2を突き合わせ、連結孔2aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、左右に隣り合う土留パネル101の縦フランジ部2を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔2aの個数は、一例であって、これに限定されるものではない。なお、
図1に示すように、構造体201の矩形の角部には、角部材6を介してL字形に加工したコーナー部用の土留パネル102が配置されている。土留パネル102を構成する波付け鋼板1及び縦フランジ部2は、上記構成と同じである。
【0017】
なお、
図1~
図3に示されている土留パネル101の断面形状は、一例であり、例えばサインカーブ状に形成された構成でもよいし、他の形状であっても良い。
【0018】
次に、上記土留構造物200の構築工法の一例を、
図4を参照して説明する。
図4は、土留構造物200の構築工法の一例を模式的に示した説明図である。先ず、
図4(A)に示すように、地面300に土留構造物200を構築するための掘削孔301を形成する。掘削孔301は、土留構造物200の外径よりも例えば20cm程度の大きい外径で形成される。掘削孔301の深さは、一例として0.5m~1.5m程度である。そして、掘削孔301の壁面に沿って土留パネル101を環状に配置して構造体201を組み立てる。土留パネル101は、山部1aが地山側に向き、谷部1bが掘削側に向くように配置される。なお、地山側とは土留パネル101の外面側であり、掘削側とは土留パネル101の内面側である。
【0019】
構造体201は、掘削孔301の壁面の周方向に沿って土留パネル101を順に配置し、左右に隣り合う土留パネル101をボルト及びナットで連結して組み立てられる。上段の構造体201の土留パネル101と、下段の構造体201の土留パネル101とは、ボルト及びナットで連結される。なお、上段の土留パネル101と下段の土留パネル101とは、千鳥配置となるように、周方向の位置をずらして配置される。これにより、土留構造物200は、周方向の各位置において強度及び剛性のばらつきを抑えることができる。但し、土留パネル101は、縦フランジ部2に十分な厚さを持たせれば、千鳥配置とすることなく孔軸方向に連続して設置してもよい。このように、構造体201を孔軸方向に沿って複数段積み重ねて(図示例の場合は3段)土留構造物200の一部が構築される。
【0020】
次に、
図4(B)に示すように、最上段に位置する構造体201を地面300に設置した井桁400で固定した後、構造体201の外側の掘削孔301を掘削土で埋め戻す。なお、最上段に位置する構造体201を地面300に固定する手段は、井桁400に限定されず、例えばコンクリートを用いてもよい。
【0021】
そして、
図4(C)に示すように、地盤を掘削しつつ、構造体201を組み立て、所定の深度まで掘り進める。なお、最上段に位置する構造体201を井桁400で固定した後は、上段の構造体201の下端に、掘削孔301の壁面の周方向に沿って土留パネル101を配置し、上段の土留パネル101にボルト及びナットで連結するとともに、左右に隣り合う土留パネル101をボルト及びナットで連結して、下段の構造体201を構築していく。なお、土留パネル101と掘削孔301との間には、裏込注入材として、コンクリート又はモルタルが充填される。
【0022】
このように、土留構造物200は、地面300を掘削して形成された鉛直の掘削孔301に、
図1に示すような環状の構造体201を掘削孔301の孔軸方向に沿って複数段に積み重ねて構築される。なお、土留構造物200は、
図1に示す矩形状に限定されず、例えば平面視において、円形状、小判のような形をした長円形状や、馬蹄形のようにU字状等でもよい。波付け鋼板1は、土留構造物200の形状に応じた形状で構成するものとする。
【0023】
ところで、土留構造物200は、掘削孔301の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きくなり、剛性が足りない場合がある。また、深度の深さにかかわらず、土質の条件等により、土圧が大きい場合もある。更に、孔軸方向の深度が深くなるにつれて、上方に配置された構造体201の自重が下方に配置された構造体201に作用する。
【0024】
このため、従来の土留構造物では、深度が深い箇所において、上下に隣り合う構造体201の間に補強リングと呼ばれるH形鋼を挟み込み剛性を高めている。しかしながら、補強リングの施工は、煩雑で手間が掛かるため、工期が長引き工費が嵩む問題がある。例えば、掘削孔301の周方向に沿って複数のH形鋼を配置し、左右に隣り合うH形鋼をフランジ継手で接続する場合に、作業者の目が届かない接続箇所が存在する。そのため、この組立作業方法では、目視が困難な状態での作業となり、組立が困難となることに加えて、安全の確認に懸念がある。
【0025】
そこで、本実施の形態1に係る土留パネル100では、土圧が高く作用する掘削孔や掘削孔の深度が深い部分において用いることができるように、断面剛性を向上させたものである。
図5は、実施の形態1に係る土留パネル100を示した斜視図である。
図6は、実施の形態1に係る土留パネル100を示した縦断面図である。
図7は、実施の形態1に係る土留パネル100の変形例1を示した斜視図である。
図8は、実施の形態1に係る土留パネル100の変形例2を示した縦断面図である。
【0026】
本実施の形態1に係る土留パネル100は、
図5及び
図6に示すように、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された2つの波付け鋼板1、1と、波付け鋼板1の長手方向Xとなる左右両端部に設けられた縦フランジ部2、2と、を備えている。
【0027】
波付け鋼板1は、上記した土留パネル101の波付け鋼板1と同じ構成である。つまり、波付け鋼板1は、波形断面が角波状に形成された構成である。波付け鋼板1は、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。
図5及び
図6に示すように、波付け鋼板1は、短手方向Yの両端部に、波形の両端縁を曲げ加工によって形成された横フランジ部10を有している。2つの波付け鋼板1、1は、Z方向に重ねて配置され、波付け鋼板1の山部1a同士及び谷部1b同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合されている。対向する山部1a同士は、面接触している。波付け鋼板1の山部1aには、接合部材3を取り付けるための接合孔(図示は省略)が長手方向Xに沿って間隔をあけて複数形成されている。また、2つの波付け鋼板1、1は、横フランジ部10の先端縁が、それぞれ外側に向くように対向させて組み合わされている。これは、上下左右の土留パネル100及び101の連結作業を考慮したものである。
【0028】
2つの波付け鋼板1、1は、面接触する山部1a同士が接合部材3で接合されている。2つの波付け鋼板1、1は、波形の断面形状が同じである。これにより、2つの波付け鋼板1、1は、厚さ方向(Z方向)において互いに逆方向を向くように配置し、波形の平坦部分を突き合わせて接合できる。2つの波付け鋼板1、1は、山部1a及び谷部1bが断面形状において平坦になっているため、厚さ方向(Z方向)に重ねたときに互いに接合し易く、接触面積も大きいため、互いに荷重を伝達し易いという利点がある。
【0029】
接合部材3は、一例としてボルト及びナットである。2つの波付け鋼板1、1は、接合孔に挿通したボルトの軸部をナットで締結することで接合される。接合部材3は、面接触する各山部1aにおいて、長手方向Xに沿って間隔をあけて複数設けられている。なお、接合部材3は、必ずしも各山部1aに設ける必要はなく、一部の山部1aにのみ設けてもよい。つまり、接合部材3の位置及び個数は、図示した構成に限定されず、波付け鋼板1、1の大きさ及び形状に応じて、適宜変更して設けるものである。
【0030】
また、2つの波付け鋼板1、1は、短手方向Yにおける両端部が溶接4で接合されている。具体的には、組み合わせた2つの波付け鋼板1、1の上部及び下部には、凹んだ部分10bが形成されている。2つの波付け鋼板1、1は、当該凹んだ部分10bを溶接4して接合されている。なお、対向する波付け鋼板1、1は、短手方向Yにおける両端部のうち、いずれか一方の端部のみを溶接4で接合する構成としてもよい。
【0031】
なお、対向する波付け鋼板1、1は、断面剛性を向上させる上で、接合部材3で接合し、且つ溶接4で接合することが望ましいが、接合部材3で接合する構成、及び溶接4で接合する構成のうち、いずれか一方のみで接合した構成でもよい。更に、接合部材3で接合する構成、及び溶接4で接合する構成を省略し、対向する波付け鋼板1、1を、縦フランジ部2を介して接合した構成でもよい。
【0032】
縦フランジ部2も、上記した土留パネル101の縦フランジ部2と同じ構成である。縦フランジ部2は、2つの波付け鋼板1、1に対して1枚の鋼板で構成されており、2つの波付け鋼板1、1の長手方向Xの両端縁に溶接して設けられている。なお、縦フランジ部2は、
図5に示すように、1枚で構成してもよいし、
図7に示すように、各波付け鋼板1にそれぞれ設けてもよい。各波付け鋼板1に縦フランジ部2をそれぞれ設けた場合には、縦フランジ部2の対向する端面を溶接等で接合するとよい。また、図示することは省略したが、縦フランジ部2は、2枚の波付け鋼板1、1のうち、掘削側に位置する波付け鋼板1にのみ設けた構成でもよい。周方向に隣り合う土留パネル100同士を連結するためには、掘削側に位置する波付け鋼板1に縦フランジ部2を設ける必要があるからである。
【0033】
なお、土留パネル100は、図示した2枚の波付け鋼板1、1を組み合わせて接合した構成に限定されない。
図8に示すように、土留パネル100は、3枚以上の波付け鋼板1を有し、隣り合う波付け鋼板1の山部1a同士及び谷部1b同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合してもよい。これにより、土留パネル100の剛性を更に高めることができる。
【0034】
また、土留パネルは、平面視(Y方向の視点)が直線状である構成を示したが、掘削孔の形状に応じて、例えば円弧状としてもよい。
【0035】
図9は、実施の形態1に係る土留パネル100を用いて構築した土留構造物の要部を拡大して示した説明図である。
図9に示すように、本実施の形態1に係る土留パネル100は、土圧が高く作用する掘削孔301や掘削孔301の深度が深い部分に配置された後、既に設置された土留パネル101に接合部材5を用いて連結される。接合部材5は、一例としてボルト及びナットである。本実施の形態1に係る土留パネル100は、2つの波付け鋼板1、1のうち、掘削側に位置する波付け鋼板1が、上段の土留パネル101の波付け鋼板1に連結される。上下に隣り合う波付け鋼板1は、互いの横フランジ部10を上下に突き合わせて連結孔10aの位置を合わせ、互いの連結孔10aにボルトの軸部を通し、該軸部をナットで締結することで連結される。本実施の形態1に係る土留パネル100の2つの波付け鋼板1、1のうち、地山側に位置する波付け鋼板1は、上段の土留パネル101の波付け鋼板1に連結されていない。掘削側に位置する波付け鋼板1を、上段の土留パネル101の波付け鋼板1に連結する方が、掘削孔の内部で作業を行う作業者にとって、作業がしやすいからである。
【0036】
なお、本実施の形態1に係る土留パネル100の下段に、土留パネル101を連結する場合においても、掘削側に位置する波付け鋼板1が、下段の土留パネル101の波付け鋼板1に連結される。また、本実施の形態1に係る土留パネル100が、上下に連続して2段以上配置される場合においても、掘削側に位置する波付け鋼板1同士のみが連結される。但し、地山側に位置する波付け鋼板1、1同士を連結してもよい。また、上下に隣り合う波付け鋼板1を連結する手段は、ボルト及びナットに代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0037】
また、周方向に隣り合う土留パネル100同士においても、掘削側の位置する波付け鋼板1のみが連結され、地山側に位置する波付け鋼板1は連結されない。左右に隣り合う波付け鋼板1は、縦フランジ部2を突き合わせて連結孔2aの位置を合わせ、互いの連結孔2aにボルトの軸部を通し、該軸部をナットで締結することで連結される。なお、左右に隣り合う土留パネル100を連結する手段は、ボルト及びナットに代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0038】
以上のように、本実施の形態1に係る土留パネル100は、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された複数の波付け鋼板1と、少なくとも1つの波付け鋼板1の長手方向Xの両端部に設けられた縦フランジ部2と、を備えている。複数の波付け鋼板1は、隣り合う波付け鋼板1の山部1a同士及び谷部1b同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合されている。
【0039】
つまり、本実施の形態1に係る土留パネル100は、波付け鋼板1の厚さ方向において隣り合う波付け鋼板1の山部1a同士及び谷部1b同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合し、剛性的に一体化させているので、断面剛性を向上させることができ、土圧が高く作用する掘削孔や掘削孔の深度が深い部分において用いることができる。よって、本実施の形態1に係る土留パネル100を用いることで、補強リングの設置を省略できる。但し、本実施の形態1に係る土留パネル100に補強リングを設置して、更に剛性を高めた構成としてもよい。
【0040】
また、隣り合う波付け鋼板1、1は、縦フランジ部2を介して接合されている。また、隣り合う波付け鋼板1、1は、山部1a同士又は谷部1b同士が接合部材3で接合されている。また、隣り合う波付け鋼板1、1は、短手方向Yにおける両端部が溶接4で接合されている。これらの構成により、本実施の形態1に係る土留パネル100は、剛性的に一体化させることができる。
【0041】
実施の形態2.
次に、本実施の形態2に係る土留パネル100Aを、
図10を参照して説明する。
図10は、実施の形態2に係る土留パネル100Aを示した縦断面図である。なお、実施の形態1で説明した土留パネル100と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0042】
本実施の形態2に係る土留パネル100Aは、
図10に示すように、2つの波付け鋼板が、第1波付け鋼板1Aと第2波付け鋼板1Bとで構成されている。第1波付け鋼板1Aは、実施の形態1で説明した波付け鋼板1と同じ構成である。即ち、第1波付け鋼板1Aは、波形断面が角波状に形成され、短手方向Yの両端部に横フランジ部10を有する構成である。第2波付け鋼板1Bは、波形断面が角波状に形成され、短手方向Yの両端部に横フランジ部10を有さない構成である。
【0043】
上記
図9を参照して説明したように、地山側に位置する波付け鋼板1は、上段の土留パネル101の波付け鋼板1及び下段の土留パネル101の波付け鋼板1に接合されない。そのため、地山側に位置する波付け鋼板1の横フランジ部10は、構造上、無駄となる部分である。そこで、本実施の形態2に係る土留パネル100Aでは、地山側に位置する波付け鋼板を、横フランジ部10を有さない第2波付け鋼板1Bとしている。よって、本実施の形態2に係る土留パネル100Aは、第2波付け鋼板1Bの横フランジ部10の加工を省略することができ、且つ材料のコストを削減することができるので、製造コストを削減しつつ、剛性断面を高めることができる。
【0044】
なお、本実施の形態2に係る土留パネル100Aにおいても、縦フランジ部2は、1枚で構成してもよいし、第1波付け鋼板1Aと第2波付け鋼板1Bとにそれぞれ設けてもよい。第1波付け鋼板1Aと第2波付け鋼板1Bとに縦フランジ部2をそれぞれ設けた場合には、縦フランジ部2の対向する端面を溶接等で接合するとよい。また、図示することは省略したが、縦フランジ部2は、掘削側に位置する第1波付け鋼板1Aにのみ設けた構成でもよい。
【0045】
また、本実施の形態2に係る土留パネル100Aは、第1波付け鋼板1Aと第2波付け鋼板1Bとで2枚の波付け鋼板を組み合わせて接合した構成に限定されない。土留パネル100Aは、第1波付け鋼板1Aと第2波付け鋼板1Bとを合わせて3枚以上とした構成でもよい。これにより、土留パネル100の剛性を更に高めることができる。
【0046】
本実施の形態2に係る土留パネル100Aは、平面視(Y方向の視点)が直線状である構成を示したが、掘削孔の形状に応じて、例えば円弧状としてもよい。
【0047】
実施の形態3.
次に、本実施の形態3に係る土留パネル100Bを、
図11を参照して説明する。
図11は、実施の形態3に係る土留パネル100Bを示した縦断面図である。なお、実施の形態1で説明した土留パネル100及び実施の形態2で説明した土留パネル100Aと同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0048】
図11に示すように、実施の形態3に係る土留パネル100Bも、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された2つの波付け鋼板1Cと、波付け鋼板1Cの長手方向Xの両端部に設けられた縦フランジ部2と、を備えている。2つの波付け鋼板1Cは、波形断面がサインカーブ状に形成された、所謂ライナープレートである。この波付け鋼板1Cは、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。波付け鋼板1Cは、短手方向Yの両端部に、波形の両端縁を曲げ加工によって形成された横フランジ部10を有している。横フランジ部10は、波付け鋼板1Cの波形の両端縁を曲げ加工されて形成される。2つの波付け鋼板1C、1Cは、波付け鋼板1Cの山部1a同士及び谷部1b同士を互いに対向させて組み合わせた状態で接合されている。2つの波付け鋼板1C、1Cを接合させる構成については、上記実施の形態1及び2と同じである。対向する山部1a同士は、面接触している。また、2つの波付け鋼板1C、1Cは、横フランジ部10の先端縁が、それぞれ外側に向くように対向させて組み合わされている。
【0049】
なお、本実施の形態3に係る土留パネル100Bにおいても、縦フランジ部2は、1枚で構成してもよいし、波付け鋼板1Cにそれぞれ設けてもよい。波付け鋼板1Cに縦フランジ部2をそれぞれ設けた場合には、縦フランジ部2の対向する端面を溶接等で接合するとよい。また、図示することは省略したが、縦フランジ部2は、掘削側に位置する波付け鋼板1Cにのみ設けた構成でもよい。
【0050】
また、本実施の形態3に係る土留パネル100Bは、2枚の波付け鋼板1Cを組み合わせて接合した構成に限定されない。土留パネル100Bは、3枚以上の波付け鋼板1Cを有する構成でもよい。これにより、土留パネル100Bの剛性を更に高めることができる。
【0051】
本実施の形態3に係る土留パネル100Bは、平面視(Y方向の視点)が直線状である構成を示したが、掘削孔の形状に応じて、例えば円弧状としてもよい。
【0052】
以上のように、本実施の形態3に係る土留パネル100Bは、ライナープレートから成る波付け鋼板1Cを用いて断面剛性を向上させることができ、土圧が高く作用する掘削孔や掘削孔の深度が深い部分において用いることができる。
【0053】
以上に、土留パネル(100、100A、100B)を実施の形態に基づいて説明したが、上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、上述した土留パネル(100、100A、100B)の構成は、一例であって他の構成要素を含んでもよい。また、
図4に基づいて説明した土留構造物200の構築工法は、一例であって、上記実施の形態に限定されない。要するに、土留パネル(100、100A、100B)は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0054】
1、1C 波付け鋼板、1A 第1波付け鋼板、1B 第2波付け鋼板、1a 山部、1b 谷部、1c ウェブ、2 縦フランジ部、2a 連結孔、3 接合部材、4 溶接、5 接合部材、6 角部材、10 横フランジ部、10a 連結孔、10b 凹んだ部分、100、100A、100B、101、102 土留パネル、200 土留構造物、201 構造体、300 地面、301 掘削孔、400 井桁、X 長手方向、Y 短手方向。