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特開2023-74558タッチ状態検出回路、タッチ状態検出回路を備える電子機器、及びタッチ状態検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074558
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】タッチ状態検出回路、タッチ状態検出回路を備える電子機器、及びタッチ状態検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230523BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G06F3/041 560
G06F3/041 512
G06F3/041 534
G06F3/041 590
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187524
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳生
(57)【要約】
【課題】タッチ状態を検出するためのスキャン処理のスキャン条件を固定する場合と比べて、様々な条件に適した検出を行う。
【解決手段】タッチIC20は、複数のセンサ電極18x,18yを面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサ18に接続され、かつ各々のセンサ電極18x,18yから順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行することによりユーザのタッチ状態を検出するタッチIC20であって、スキャン処理の実行頻度又はスキャン処理の実行周期に関するスキャン条件を設定する設定部30と、設定されたスキャン条件でスキャン処理を実行してタッチ状態を検出する検出部32と、を備え、設定部30は、スキャン条件を変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、スキャン条件を変更して再設定し、検出部32は、再設定されたスキャン条件でタッチ状態を検出する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサに接続され、かつ各々の前記センサ電極から順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行することによりユーザのタッチ状態を検出するタッチ状態検出回路であって、
前記スキャン処理の実行頻度又は前記スキャン処理の実行周期に関するスキャン条件を設定する設定部と
設定された前記スキャン条件で前記スキャン処理を実行して前記タッチ状態を検出する検出部と、
を備え、
前記設定部は、前記スキャン条件を変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、前記スキャン条件を変更して再設定し、前記検出部は、再設定された前記スキャン条件で前記タッチ状態を検出する、タッチ状態検出回路。
【請求項2】
前記設定部は、前記判定条件として第1条件を満たす場合に、前記実行頻度が基準に比して高くなるように、又は、前記実行周期が基準に比して短くなるように、前記スキャン条件を変更して再設定する、
請求項1に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項3】
前記第1条件は、少なくとも、前記ユーザの1本以上の指による前記タッチ状態が検出された場合に前記指の本数が閾値以下であることを示す、
請求項2に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項4】
前記閾値は、前記ユーザの片手の指の本数である、
請求項3に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項5】
前記第1条件は、少なくとも、前記ユーザのパームによる前記タッチ状態が検出されたことを示す、
請求項2~4の何れか一項に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項6】
前記第1条件は、少なくとも、前記ユーザの指による前記タッチ状態が検出された場合に前記指の移動速度が閾値以下であることを示す、
請求項2~5の何れか一項に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項7】
前記第1条件は、少なくとも、前記タッチセンサのサイズが閾値以下であることを示す、
請求項2~6の何れか一項に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項8】
前記第1条件は、少なくとも、前記タッチセンサが表示パネルと重ねて配置される場合に前記表示パネルのリフレッシュレートが閾値よりも高いことを示す、
請求項2~7の何れか一項に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項9】
前記第1条件は、少なくとも、前記タッチセンサにより前記タッチ状態を検出できる全体領域のうち、前記ユーザによるタッチの意図がない部分領域があることを示す、
請求項2~8の何れか一項に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項10】
前記設定部は、前記判定条件として第2条件を満たす場合に、前記実行頻度が基準に比して低くなるように、又は、前記実行周期が基準に比して長くなるように、前記スキャン条件を変更して再設定する、
請求項1に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項11】
前記第2条件は、少なくとも、前記ユーザの1本以上の指による前記タッチ状態が検出された場合に前記指の本数が閾値以上であることを示す、
請求項10に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項12】
前記スキャン処理を実行することにより電子ペンのペン状態を更に検出する前記タッチ状態検出回路であって、
前記第2条件は、少なくとも、前記電子ペンの非使用状態が検出されたことを示す、
請求項10又は11に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項13】
前記スキャン処理を実行することにより電子ペンのペン状態と前記タッチ状態とを時分割で検出する前記タッチ状態検出回路であって、
前記スキャン条件は、前記ペン状態を検出するための前記スキャン処理の実行頻度に対する前記タッチ状態を検出するための前記スキャン処理の実行頻度の比率を示し、
前記設定部は、前記判定条件を満たす場合に、前記実行頻度の比率を変更して再設定する、
請求項1~12の何れか一項に記載のタッチ状態検出回路。
【請求項14】
複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサと、
前記タッチセンサに接続される、請求項1~13の何れか一項に記載のタッチ状態検出回路と、
を備える電子機器。
【請求項15】
複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサに接続され、かつ各々の前記センサ電極から順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行することによりユーザのタッチ状態を検出するタッチ状態検出方法であって、
前記スキャン処理の実行頻度又は前記スキャン処理の実行周期に関するスキャン条件を設定する設定ステップと、
設定された前記スキャン条件で前記スキャン処理を実行して前記タッチ状態を検出する検出ステップと、
を順次繰り返して実行し、
前記設定ステップでは、前記スキャン条件を変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、前記スキャン条件を変更して再設定し、前記検出ステップでは、再設定された前記スキャン条件で前記タッチ状態を検出する、タッチ状態検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ状態検出回路、タッチ状態検出回路を備える電子機器、及びタッチ状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの指等が検出面に触れたタッチ状態を検出するタッチ状態検出回路が知られている。例えば、下記特許文献1に記載のタッチ状態検出回路では、複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサに接続され、各々のセンサ電極から順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行することにより、タッチ状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-177591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、タッチ状態を検出するためのスキャン処理の実行周期として、様々なユースケースであってもタッチ状態の検出機能を発揮できるような固定の時間が設定されている。具体的な例としては、ユーザの10本の指が検出面に同時に触れた場合を想定し、このタッチに起因する電気ノイズの影響を受けない程度の長い実行周期が設定される。ところが、この設定では、検出面に触れたユーザの指の本数が少ないような場合であっても、タッチ状態を検出するのに固定の時間がかかってしまい、不要な待機時間が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、タッチ状態を検出するためのスキャン処理のスキャン条件を固定する場合と比べて、様々な条件に適した検出を行うことができるタッチ状態検出回路、タッチ状態検出回路を備える電子機器、及びタッチ状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るタッチ状態検出回路は、複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサに接続され、かつ各々の前記センサ電極から順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行することによりユーザのタッチ状態を検出するタッチ状態検出回路であって、前記スキャン処理の実行頻度又は前記スキャン処理の実行周期に関するスキャン条件を設定する設定部と、設定された前記スキャン条件で前記スキャン処理を実行して前記タッチ状態を検出する検出部と、を備え、前記設定部は、前記スキャン条件を変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、前記スキャン条件を変更して再設定し、前記検出部は、再設定された前記スキャン条件で前記タッチ状態を検出する。
【0007】
本発明の第二態様に係るタッチ状態検出回路では、前記設定部は、前記判定条件として第1条件を満たす場合に、前記実行頻度が基準に比して高くなるように、又は、前記実行周期が基準に比して短くなるように、前記スキャン条件を変更して再設定する。
【0008】
本発明の第三態様に係るタッチ状態検出回路では、前記第1条件は、少なくとも、前記ユーザの1本以上の指による前記タッチ状態が検出された場合に前記指の本数が閾値以下であることを示す。
【0009】
本発明の第四態様に係るタッチ状態検出回路では、前記閾値は、前記ユーザの片手の指の本数である。
【0010】
本発明の第五態様に係るタッチ状態検出回路では、前記第1条件は、少なくとも、前記ユーザのパームによる前記タッチ状態が検出されたことを示す。
【0011】
本発明の第六態様に係るタッチ状態検出回路では、前記第1条件は、少なくとも、前記ユーザの指による前記タッチ状態が検出された場合に前記指の移動速度が閾値以下であることを示す。
【0012】
本発明の第七態様に係るタッチ状態検出回路では、前記第1条件は、少なくとも、前記タッチセンサのサイズが閾値以下であることを示す。
【0013】
本発明の第八態様に係るタッチ状態検出回路では、前記第1条件は、少なくとも、前記タッチセンサが表示パネルと重ねて配置される場合に前記表示パネルのリフレッシュレートが閾値よりも高いことを示す。
【0014】
本発明の第九態様に係るタッチ状態検出回路では、前記第1条件は、少なくとも、前記タッチセンサにより前記タッチ状態を検出できる全体領域のうち、前記ユーザによるタッチの意図がない部分領域があることを示す。
【0015】
本発明の第十態様に係るタッチ状態検出回路では、前記設定部は、前記判定条件として第2条件を満たす場合に、前記実行頻度が基準に比して低くなるように、又は、前記実行周期が基準に比して長くなるように、前記スキャン条件を変更して再設定する。
【0016】
本発明の第十一態様に係るタッチ状態検出回路では、前記第2条件は、少なくとも、前記ユーザの1本以上の指による前記タッチ状態が検出された場合に前記指の本数が閾値以上であることを示す。
【0017】
本発明の第十二態様に係るタッチ状態検出回路は、前記スキャン処理を実行することにより電子ペンのペン状態を更に検出する前記タッチ状態検出回路であって、前記第2条件は、少なくとも、前記電子ペンの非使用状態が検出されたことを示す。
【0018】
本発明の第十三態様に係るタッチ状態検出回路は、前記スキャン処理を実行することにより電子ペンのペン状態と前記タッチ状態とを時分割で検出する前記タッチ状態検出回路であって、前記スキャン条件は、前記ペン状態を検出するための前記スキャン処理の実行頻度に対する前記タッチ状態を検出するための前記スキャン処理の実行頻度の比率を示し、前記設定部は、前記判定条件を満たす場合に、前記実行頻度の比率を変更して再設定する。
【0019】
本発明の第十四態様に係る電子機器は、複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサと、前記タッチセンサに接続される、第一態様~第十三態様の何れか一に記載のタッチ状態検出回路と、を備える。
【0020】
本発明の第十五態様に係るタッチ状態検出方法は、複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサに接続され、かつ各々の前記センサ電極から順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行することによりユーザのタッチ状態を検出するタッチ状態検出方法であって、前記スキャン処理の実行頻度又は前記スキャン処理の実行周期に関するスキャン条件を設定する設定ステップと、設定された前記スキャン条件で前記スキャン処理を実行して前記タッチ状態を検出する検出ステップと、を順次繰り返して実行し、前記設定ステップでは、前記スキャン条件を変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、前記スキャン条件を変更して再設定し、前記検出ステップでは、再設定された前記スキャン条件で前記タッチ状態を検出する、タッチ状態検出方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タッチ状態を検出するためのスキャン処理のスキャン条件を固定する場合と比べて、様々な条件に適した検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るタッチ状態検出回路が組み込まれた入力システムの全体構成図である。
図2】タッチICにおけるペン検出及びタッチ検出の処理の流れを示すシーケンス図である。
図3図1のタッチICが有するタッチ検出機能を示す機能ブロック図である。
図4】タッチ実行周期について概念的に説明するためのグラフである。
図5】スキャン時間について概念的に説明するためのグラフである。
図6】スキャン条件としてのスキャンレートの定義について説明するための図である。
図7】判定条件と当該判定条件を満たす場合のスキャンレートとの組み合わせの一例を示す図である。
図8】タッチ検出機能によるタッチ検出の実行時におけるタッチICの処理の流れ一例を示すフローチャートである。
図9図8のステップSP14のスキャン設定の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る判定条件と当該判定条件を満たす場合のタッチ実行周期(スキャン時間)との組み合わせの一例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る図8のステップSP14のスキャン設定の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】スキャン実行頻度の比率を概念的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の種々の実施形態に係るタッチ状態検出回路、タッチ状態検出回路を備える電子機器、及びタッチ状態検出方法について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0024】
[第1実施形態]
まず、図1図9を参照して、本発明の第1実施形態に係るタッチ状態検出回路、タッチ状態検出回路を備える電子機器、及びタッチ状態検出方法について説明する。
【0025】
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るタッチ状態検出回路が組み込まれた入力システム10の全体構成図である。図1に示すように、入力システム10は、タッチパネルディスプレイを有する電子機器12と、ペン型のポインティングデバイスである電子ペン14と、から基本的に構成される。電子ペン14は、「スタイラス」ともいう。
【0026】
電子機器12は、例えば、タブレット型端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータで構成される。ユーザは、電子ペン14を片手で把持し、電子機器12の検出面16にペン先を押し当てながら移動させることで、電子機器12に絵や文字を書き込むことができる。また、ユーザは、自身の指Fで検出面16に接触することで、表示中のユーザコントロールを介して所望の操作を行うことができる。
【0027】
電子機器12は、タッチセンサ18と、タッチ状態検出回路であるタッチIC(Integrated Circuit)20と、ホストプロセッサ22と、を含んで構成される。タッチセンサ18は、液晶等の表示パネル(不図示)と重ねて配置される複数の電極を組み合わせてなる。タッチセンサ18は、複数のセンサ電極を面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサである。タッチセンサ18は、X軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18xと、Y軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18yと、を含む。本図に示すx方向,y方向は、タッチセンサ18がなす検出面16上において定義される直交座標系のX軸,Y軸に相当する。
【0028】
帯状のセンサ電極18xは、y方向に延びて設けられると共に、x方向に沿って等間隔に配置されている。帯状のセンサ電極18yは、x方向に延びて設けられると共に、y方向に沿って等間隔に配置されている。なお、タッチセンサ18は、上記した相互容量方式のセンサに代えて、ブロック状の電極を二次元格子状に配置した自己容量方式のセンサであってもよい。
【0029】
タッチIC20は、ファームウェア24を実行可能に構成された集積回路であり、タッチセンサ18を構成する複数のセンサ電極18x,18yのそれぞれに接続されている。このファームウェア24は、各々のセンサ電極18x,18yから順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行する。ファームウェア24は、当該スキャン処理を実行することによりユーザの指F等の人体の一部である検出対象のタッチ状態を検出する処理(以下、「タッチ検出」という。)を行うタッチ検出機能26と、当該スキャン処理を実行することにより電子ペン14のペン状態を検出する処理(以下、「ペン検出」という。)を行うペン検出機能28と、を実現可能に構成される。タッチ状態は、ユーザの1本以上の指Fによるタッチ状態と、ユーザのパーム(指Fより広い領域の手の部分であって、手の平、手の甲、拳等を含む。)によるタッチ状態と、を含む。タッチ状態は、検出面16に触れた指Fやパームの位置等である。また、ペン状態は、検出面16に触れた電子ペン14の位置、傾き、筆圧等である。
【0030】
図2は、タッチIC20におけるペン検出及びタッチ検出の処理の流れを示すシーケンス図である。図2に示すように、タッチIC20は、ペン検出機能28によるペン検出(ステップSP10)と、タッチ検出機能26によるタッチ検出(ステップSP12)とを、時分割で繰り返し実行するように構成される。ここで、ペン検出の実行頻度とタッチ検出の実行頻度とは、所定の比率となるように予め設定されている。図2の例では、1回の繰り返し周期におけるペン検出とタッチ検出との実行頻度の比率を1:1として図示しているが、当該実行頻度の比率は、1:n、n:1、n:m(ただし、n、mは整数。)の何れであってもよい。
【0031】
ステップSP10におけるペン検出には、例えば、タッチセンサ18のスキャン処理(グローバルスキャン又はセクタスキャン)、電子ペン14から送信されるダウンリンク信号の受信・解析処理、電子ペン14のペン状態の推定処理、電子ペン14に対する指令を含むアップリンク信号の生成・送信処理を含む。また、ステップSP12におけるタッチ検出には、例えば、タッチセンサ18のスキャン処理、タッチセンサ18上のヒートマップ(検出レベルの二次元分布)の作成処理、指Fのタッチ状態の推定処理を含む。
【0032】
図1に戻り、ホストプロセッサ22は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)からなるプロセッサである。ホストプロセッサ22は、図示しないメモリからプログラムを読み出し実行することで、例えば、タッチIC20からのデータを用いてデジタルインクを生成する処理、当該デジタルインクが示す描画内容を表示させるためのレンダリング処理などを行う。
【0033】
<タッチIC20の機能構成>
図3は、図1のタッチIC20が有するタッチ検出機能26を示す機能ブロック図である。図3に示すように、タッチ検出機能26は、設定部30と、検出部32と、取得部34と、判定部36と、を有する。
【0034】
設定部30は、スキャン処理の実行頻度又はスキャン処理の実行周期に関するスキャン条件を設定する。ここで、スキャン処理の実行頻度は、タッチ状態を検出するためのスキャン処理がどの程度の時間間隔で繰り返されるのかを示す。また、スキャン処理の実行周期は、タッチ状態を検出するためのスキャン処理の実行周期(以下、「タッチ実行周期」という。)である。
【0035】
図4は、タッチ実行周期について概念的に説明するためのグラフである。図4のグラフは、時間の一軸グラフであって、1回のスキャン処理を四角で示す。図4に示すように、タッチ検出がON状態では、タッチ状態を検出するためのスキャン処理が複数回連続的に繰り返し実行される。なお、当該スキャン処理は、複数回連続的に繰り返し実行されなくてもよく、例えばペン状態を検出するためのスキャン処理と交互に実行されること等により間欠的に実行されてもよい。タッチ実行周期は、具体的には1回のスキャン処理にかかるスキャン時間Taである。なお、1回のスキャン時間Taは短い時間であるため、タッチ実行周期は、当該スキャン時間Taをスキャン処理の所定回分まとめて積算した積算スキャン時間Tbとしてもよい。
【0036】
スキャン時間Ta(1回のスキャン処理にかかるスキャン時間)は、例えばスキャン条件の設定のタイミングを起点とし、1回のスキャン処理分の検出データであるフレームデータを取得した後、再度スキャン条件の設定を開始するまでにかかる時間である。スキャン時間Taとしては、規定時間が設定されている。
【0037】
図5は、スキャン時間Taについて概念的に説明するためのグラフである。図5のグラフは、図4のグラフにおけるスキャン時間Taの部分を拡大した図に相当する。図5に示すように、スキャン時間Taは、実スキャン時間T1と、非スキャン時間T2と、を含む。実スキャン時間T1(t1~t2)は、検出信号の読み出し、演算、及び検出データの出力といった実際のスキャン処理に要する時間を示す。非スキャン時間T2(t2~t3)は、検出データの出力後に再度スキャン条件を設定するまでの待機時間を示す。
【0038】
第1実施形態では、スキャン条件を、タッチ状態を検出するためのスキャン処理の頻度に関するスキャンレートとして説明する。スキャンレートは、スキャン周波数ともいう。図6は、スキャン条件としてのスキャンレートの定義について説明するための図であり、図4と同様、1回のスキャン処理を四角で示す。図6に示すように、スキャンレートは、例えば任意時間当たりのスキャン処理の実行回数として示される。例えばスキャン時間Taを1[sec]としてスキャン処理を5回繰り返した場合、当該5回のスキャン処理を実行するスキャンレートは1[Hz]となる。これに対し、例えばスキャン時間Taを0.5[sec]としてスキャン処理を5回繰り返した場合、当該5回のスキャン処理を実行するスキャンレートは2[Hz]となる。すなわち、スキャン時間Taの変化に応じてスキャンレートが変化する。また、複数のスキャンレートが混在する時間帯では、スキャンレートは、その時間帯におけるスキャンレートの平均値として算出されてもよい。例えば、スキャン時間Taを1[sec]としてスキャン処理を5回繰り返した後、スキャン時間Taを0.5[sec]としてスキャン処理を5回繰り返した場合、全部で10回のスキャン処理を実行する処理全体におけるスキャンレートの平均値は、1.3[Hz]となる。
【0039】
設定部30は、スキャンレートの初期値を例えば100[Hz]に設定する。また、設定部30は、スキャン条件であるスキャンレートを変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、当該スキャンレートを変更して再設定する。この判定条件は、スキャンレートを基準に比して高くすべき状況を示す第1条件と、スキャンレートを基準に比して低くすべき状況を示す第2条件と、を含む。ここでの基準は、スキャンレートの基準値であって、例えば初期値等として予め設定された値としてもよく、判定条件の判定直前の前回設定値としてもよい。
【0040】
設定部30は、第1条件を満たす場合に、スキャンレートが基準に比して高くなるようにする。例えば、基準を前回設定値とし、当該前回設定値が100[Hz]である場合には、設定部30は、スキャンレートを150[Hz]に再設定する。これに対し、設定部30は、第2条件を満たすと判定された場合に、スキャンレートが基準に比して低くなるようにする。例えば、基準を前回設定値とし、当該前回設定値が150[Hz]である場合には、設定部30は、スキャンレートを100[Hz]に再設定する。
【0041】
設定部30は、再設定したスキャンレートとなるように、当該スキャンレートを決定するスキャン時間Taと相関関係を有する要素の再設定や、この要素に対応する周期となるようにスキャン時間Taそのものの再設定を行う。スキャン時間Taと相関関係を有する要素には、例えば、タッチ検出用の符号多重の信号長さや検出された指Fの座標計算時間がある。
【0042】
符号多重の信号長さとは、送信導体毎に異なる符号パターンの信号を供給する符号多重方式の信号の長さである。検出範囲が大きい場合や検出対象が多い場合には、送信導体毎に異なる符号パターンの信号の組み合わせを増やす必要があり、符号多重の信号長さを長くする必要がある。よって、このような場合には、設定部30は、符号多重の信号長さを長く設定することで、その分、スキャン時間Taにおける実スキャン時間T1を長くする。これに対し、検出範囲が小さい場合や検出対象が少ない場合には、符号多重の信号長さを短くしてもよい。よって、このような場合には、設定部30は、符号多重の信号長さを短く設定することで、その分、スキャン時間Taにおける実スキャン時間T1を短くする。
【0043】
また、検出された指Fの座標計算時間は、指Fの本数に依存する。指Fの本数が多い場合には、当該指Fの座標計算時間が長くなるため、その分、スキャン時間Taにおける実スキャン時間T1が長くなる。これに対し、指Fの本数が少ない場合には、当該指Fの座標計算時間が短くなるため、その分、スキャン時間Taにおける実スキャン時間T1が短くなる。
【0044】
また、スキャン時間Taは、スキャン時間Taとして設定された規定時間を変更することにより変更することができる。検出範囲が大きい場合や検出対象が多い場合には、上記のように符号多重の信号長さを長くすることや指Fの座標計算時間が長くなることにより、スキャン時間Taにおける実スキャン時間T1が長くなる。よって、設定部30は、これに対応させて規定時間すなわちスキャン時間Taを長く設定することで、スキャンレートが低くなるようにする。これに対し、検出範囲が小さい場合や検出対象が少ない場合には、上記のように符号多重の信号長さを短くすることや指Fの座標計算時間が短くなることにより、スキャン時間Taにおける実スキャン時間T1が短くなる。よって、設定部30は、これに対応させて規定時間すなわちスキャン時間Taを短くすることで、スキャンレートが高くなるようにする。
【0045】
以上のようにして、設定部30は、スキャン時間Taと当該スキャン時間Taにより決定されるスキャンレートを最適化する。これにより、スキャン時間Taにおける実スキャン時間T1をタッチ状態の検出機能を発揮できる程度に確保すると共に、無駄な待機時間が生じないようにスキャン時間Taにおける非スキャン時間T2を短く又は無くすようにすることができる。
【0046】
検出部32は、タッチ状態を検出するためのスキャン処理を、設定部30により設定又は再設定されたスキャンレートで実行する。すなわち、検出部32は、タッチ検出用の多重符号の信号長さを、設定部30により設定又は再設定された多重符号の信号長さとして、スキャン処理を実行する。また、検出部32は、規定時間を、設定部30により設定又は再設定された規定時間として、スキャン処理を実行する。
【0047】
検出部32は、タッチ状態を検出するためのスキャン処理として、まず各センサ電極18yに対してタッチ検出用信号を送信し、各センサ電極18xから出力されるタッチ検出用信号を受信する。なお、検出部32は、2回目以降のスキャン処理において、前回検出された指Fの位置の近傍領域だけについてスキャン処理を実行してもよい。続いて、検出部32は、タッチ検出用信号の受信結果に基づいて、タッチセンサ18の2次元位置毎の検出レベルを示すヒートマップを作成する。
【0048】
続いて、検出部32は、作成したヒートマップに基づき、センサ電極18xとセンサ電極18yとの間に形成される静電容量の変化が閾値以上である領域を判定し、例えばその中心位置を指Fの位置として検出し、その座標を計算する。そして、検出部32は、計算した座標を、ホストプロセッサ22や取得部34に出力する。また、検出部32は、作成したヒートマップを含むフレームデータを作成し、当該フレームデータをホストプロセッサ22や取得部34に出力してもよい。
【0049】
また、検出部32は、作成したヒートマップに基づき、指Fによってタッチされている領域であるタッチ領域と、指Fではなくユーザのパームによってタッチされている領域とを導出する処理を行う。具体的には、検出部32は、センサ電極18xとセンサ電極18yとの間に形成される静電容量の変化が閾値以上の領域を判定し、その領域の面積が閾値以下である場合にはタッチ領域と判定し、そうでない場合にはパーム領域と判定する。検出部32は、判定したタッチ領域及びパーム領域を示す情報についても、ホストプロセッサ22や取得部34に出力する。
【0050】
検出部32は、スキャン時間Taとして設定された規定時間を経過するまで次のスキャン処理を開始せずに待ち、当該規定時間を経過すると次のスキャン処理を再度繰り返す。
【0051】
取得部34は、判定部36の判定に用いるための各種の情報を取得する。例えば、取得部34は、検出部32から出力された指Fの座標やヒートマップを含むフレームデータに基づき、検出面16に触れている指Fの本数や、当該指Fの移動速度を示す情報を算出して取得する。指Fの移動速度は、検出面16に沿って移動する指Fの速度である。また、取得部34は、検出部32からの出力により、タッチ領域及びパーム領域を示す情報を取得する。
【0052】
また、取得部34は、電子ペン14の非使用状態が検出されたか否かを判定するための情報として、電子ペン14が格納された状態を示す情報や、電子ペン14の傾きや移動速度を示す情報を取得する。
【0053】
電子ペン14が格納された状態を示す情報は、例えば電子ペン14が電子機器12に収納されたことをセンサ等で検知し、その検知した情報をホストプロセッサ22から受信することにより取得することができる。電子ペン14の傾きとは、検出面16の法線と電子ペン14の軸とのなす角を示す。当該電子ペン14の傾きを示す情報は、傾き検出に対応している電子ペン14の2つの送信電極のそれぞれから送信される各ペン信号に基づいて2つのペン座標を取得し、これら2つのペン座標の間の距離に基づき算出される。また、電子ペン14の移動速度を示す情報は、ペン検出機能28によりペン状態が検出された電子ペン14の位置座標に基づき算出される。
【0054】
また、取得部34は、タッチセンサ18のサイズ又はセンサ電極18x,18yの個数を示す情報を、例えばホストプロセッサ22等から取得する。また、取得部34は、タッチセンサ18が表示パネルと重ねて配置される場合に、当該表示パネルのリフレッシュレートを示す情報を取得する。リフレッシュレートは、任意時間に表示パネルを書き換える回数であって、例えば70[Hz]と示される。取得部34は、例えばホストプロセッサ22等から受信することによってリフレッシュレートを示す情報を取得する。
【0055】
また、取得部34は、タッチセンサ18によりタッチ状態を検出できる全体領域のうち、ユーザによるタッチの意図がない部分領域がある場合には、当該部分領域があることを示す情報(以下、「非タッチ領域情報」という。)を取得する。例えば2つの画面を有するデュアルスクリーンモデルの場合、2つの画面のそれぞれにおいてタッチ検出及びペン検出を行う。取得部34は、この2つの画面のうち片側画面が不使用モードであることを示す情報をホストプロセッサ22等から受信すると、当該情報を非タッチ領域情報として取得する。また、例えば画面が折り曲げ可能に構成されたフォルダブルの画面の場合に、画面の一部領域にキーボード等の物が置かれた状態をタッチセンサ18が検知すると、取得部34は、当該状態を示す情報をタッチセンサ18から受信して非タッチ領域情報として取得する。また、例えばデュアルスクリーンモデルにおける片側画面やフォルダブルの画面の一部領域が曲がっている位置の周辺では、電子ペン14が複数の領域にて同時に検出される場合がある。そこで、取得部34は、ペン検出機能28により検出される電子ペン14の傾きに基づき水平状態により近い領域が存在すると判定した場合に、その判定結果を非タッチ領域情報として取得する。
【0056】
判定部36は、例えば取得部34により取得された情報に基づき、判定条件を満たすか否かを判定する。図7は、判定条件と当該判定条件を満たす場合のスキャンレートとの組み合わせの一例を示す図である。図7に示すように、第1条件は、例えば、条件ID「1」~「6」の条件を示し、第2条件は、例えば、条件ID「7」、「8」の条件を示す。本実施形態において、判定部36は、条件ID「1」~「6」の条件の少なくとも何れかを満たす場合には第1条件を満たすと判定し、条件ID「7」、「8」の条件の少なくとも何れかを満たす場合には第2条件を満たすと判定する。
【0057】
ここで、複数の条件のうち少なくとも何れかを満たす場合とは、何れか一つの条件を満たす場合に限らず、複数の条件の任意の組み合わせを満たす場合を含むことを意味する。よって、判定部36は、条件ID「1」~「6」の条件の何れか一つを満たす場合に限らず、これらの条件の任意の組み合わせを満たす場合に第1条件を満たすと判定し、条件ID「7」、「8」の条件の何れか一つを満たす場合に限らず、これらの条件の任意の組み合わせを満たす場合に第2条件を満たすと判定してもよい。
【0058】
条件ID「1」の条件は、検出面16にタッチした指Fの本数が少ないほどスキャンレートを高くするための条件である。具体的には、条件ID「1」の条件は、ユーザの1本以上の指Fによるタッチ状態が検出された場合に当該指Fの本数が閾値以下であることを示す。ここでの閾値は、少なくともユーザの両手の指Fの本数(10本)よりは少ない本数として設計者や操作者等により予め設定されており、例えばユーザの片手の指Fの本数(5本)である。
【0059】
判定部36は、判定直前のスキャン処理の結果として取得部34により取得された指Fの本数を示す情報に基づき、条件ID「1」の条件の判定を行う。指Fの本数が閾値以下である場合には、当該指Fの本数が閾値より多い場合に比して、当該指Fの座標計算時間が短くなる。また、同じ電極に複数の指Fが重なる確率が低く、指Fのタッチに起因する電気ノイズが少なくなる可能性が高い。よって、この場合には、符号多重の信号長さを短くし、スキャン時間Taとして設定された規定時間を短くすることができる。その結果、スキャンレートを基準に比して高くすることができる。
【0060】
条件ID「2」の条件は、指Fではなくパームにより検出面16にタッチした場合にはスキャンレートを高くするための条件である。具体的には、条件ID「2」の条件は、ユーザのパームによるタッチ状態が検出されたことを示す。判定部36は、判定直前のスキャン処理の結果として取得部34によりパーム領域を示す情報が取得された場合に、条件ID「2」の条件の判定を肯定判定する。パーム領域が検出された場合には、片手を検出面16に置いた状態であるため、検出面16に触れる指Fの本数が少なくなる可能性が高い。よって、この場合には、条件ID「1」の条件の場合と同様の理由で、スキャンレートを基準に比して高くすることができる。
【0061】
条件ID「3」の条件は、指Fの移動速度が低速であるほどスキャンレートを高くするための条件である。具体的には、条件ID「3」の条件は、ユーザの指Fによるタッチ状態が検出された場合に指Fの移動速度が閾値以下であることを示す。ここでの閾値は、例えば、5[mm/sec]として設計者や操作者等により予め設定されている。判定部36は、判定直前のスキャン処理の結果として取得部34により取得された指Fの移動速度を示す情報に基づき、条件ID「3」の条件の判定を行う。指Fの移動速度が閾値以下である場合には、実際にユーザが使用している箇所が小さく検出範囲が小さいとみなせる。よって、この場合には、符号多重の信号長さを短くし、スキャン時間Taとして設定された規定時間を短くすることができる。その結果、スキャンレートを基準に比して高くすることができる。
【0062】
条件ID「4」の条件は、タッチセンサ18の検出範囲が小さいほどスキャンレートを高くするための条件である。具体的には、条件ID「4」の条件は、タッチセンサ18のサイズが閾値以下であることを示す。ここでの閾値とは、スマートフォンやタブレット等の小型の電子機器に対応するサイズとして設計者や操作者等により予め設定されており、例えば11インチである。判定部36は、取得部34により取得されたタッチセンサ18のサイズを示す情報に基づき、条件ID「4」の条件の判定を行う。タッチセンサ18のサイズが閾値以下である場合には、タッチ状態の検出範囲が小さい。よって、この場合には、符号多重の信号長さを短くし、スキャン時間Taとして設定された規定時間を短くすることができる。その結果、スキャンレートを基準に比して高くすることができる。なお、条件ID「4」の条件は、タッチセンサ18のサイズに代えて又は加えてセンサ電極18x,18yの個数が閾値以下であることを示してもよい。
【0063】
条件ID「5」の条件は、タッチセンサ18が重ねて配置された表示パネルのリフレッシュレートが高くなるほどスキャンレートを高くするための条件である。具体的には、条件ID「5」の条件は、タッチセンサ18が表示パネルと重ねて配置される場合に表示パネルのリフレッシュレートが閾値よりも高いことを示す。ここでの閾値は、ゲーム等の画面表示に対応するリフレッシュレートとして設計者や操作者等により予め設定されており、例えば120~160[Hz]である。判定部36は、取得部34により取得された表示パネルのリフレッシュレートを示す情報に基づき、条件ID「5」の条件の判定を行う。タッチセンサ18が配置される画面のリフレッシュレートが閾値よりも高い場合には、これに対応するスキャンレートとなるようにスキャンレートを基準に比して高くする。
【0064】
条件ID「6」の条件は、検出範囲の中にユーザのタッチの意図がない領域がある場合に、スキャンレートを高くするための条件である。具体的には、条件ID「6」の条件は、タッチセンサ18によりタッチ状態を検出できる全体領域のうち、ユーザによるタッチの意図がない部分領域があることを示す。判定部36は、取得部34により非タッチ領域情報が取得された場合に、ユーザによるタッチの意図がない部分領域があると判定する。ユーザによるタッチの意図がない部分領域がある場合には、当該部分領域がない場合に比してタッチ状態の検出範囲が小さい。よって、この場合には、符号多重の信号長さを短くし、スキャン時間Taとして規定された規定時間を短くすることができる。その結果、スキャンレートを基準に比して高くすることができる。
【0065】
条件ID「7」の条件は、検出面16にタッチした指Fの本数が多いほどスキャンレートを低くするための条件である。具体的には、条件ID「7」の条件は、ユーザの1本以上の指Fによるタッチ状態が検出された場合に当該指Fの本数が閾値以上であることを示す。ここでの閾値は、例えばユーザの片手の本数よりは多い数(6~10本)として設計者や操作者等により予め設定されている。判定部36は、判定直前のスキャン処理の結果として取得部34により取得された指Fの本数を示す情報に基づき、条件ID「7」の条件の判定を行う。指Fの本数が閾値以上である場合には、当該指Fの本数が閾値より少ない場合に比して、当該指Fの座標計算時間が長くなる。また、同じ電極に複数の指Fが重なる確率が高く、指Fのタッチに起因する電気ノイズが多くなる可能性が高い。よって、この場合には、符号多重の信号長さを長くし、スキャン時間Taとして設定された規定時間を長くする必要がある。その結果、スキャンレートを基準に比して低くする必要がある。
【0066】
条件ID「8」の条件は、ペン状態が検出不可能な状態である場合にスキャンレートを低くするための条件である。具体的には、条件ID「8」の条件は、電子ペン14の非使用状態が検出されたことを示す。判定部36は、電子ペン14が格納された状態を示す情報が取得部34により取得された場合に、電子ペン14の非使用状態が検出されたと判定する。また、判定部36は、判定直前のスキャン処理の結果として取得部34により取得された電子ペン14の傾きを示す情報に基づき、電子ペン14が水平に傾き過ぎている場合には、電子ペン14の非使用状態が検出されたと判定する。また、判定部36は、判定直前のスキャン処理の結果として取得部34により取得された電子ペン14の移動速度を示す情報に基づき、当該移動速度が閾値以下である場合には、電子ペン14の非使用状態が検出されたと判定する。電子ペン14が非使用状態である場合には、電子ペン14が使用状態である場合に比して、多くの指Fで検出面16にタッチする可能性が高い。よって、この場合には、条件ID「7」の条件の場合と同様の理由で、スキャンレートを基準に比して高くする必要がある。
【0067】
また、判定部36は、タッチ検出における処理時間についての判定を行う。例えば、判定部36は、スキャン時間Taとして設定又は再設定された規定時間を経過したか否かの判定を行い、その判定結果を検出部32に出力する。
【0068】
<タッチIC20の処理の流れ>
次に、図8のフローチャートを参照して、タッチ検出機能26によるタッチ検出の実行時におけるタッチIC20の処理の流れについて説明する。図8は、タッチ検出機能26によるタッチ検出の実行時におけるタッチIC20の処理の流れ一例を示すフローチャートである。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。
【0069】
(ステップSP14)
タッチ検出が開始すると、設定部30は、スキャン条件の設定を含むスキャン設定としてスキャンレートの初期設定を行う。また、ステップSP24の処理から移行した後、設定部30は、スキャンレートを変更して再設定を行う。そして、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0070】
(ステップSP16)
検出部32は、ステップSP14の処理で設定又は再設定したスキャンレートでスキャン処理を実行する。具体的には、検出部32は、各センサ電極18yに対してタッチ検出用信号を送信し、各センサ電極18xから出力されるタッチ検出用信号を受信し、受信結果に基づきヒートマップを作成する。そして、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0071】
(ステップSP18)
検出部32は、ステップSP16の処理で作成したヒートマップに基づき、検出された指Fの座標計算を実行する。そして、処理は、ステップSP20の処理に移行する。
【0072】
(ステップSP20)
検出部32は、ステップSP18の処理で計算した座標をホストプロセッサ22に出力する。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0073】
(ステップSP22)
判定部36は、スキャン時間Taとして設定又は再設定された規定時間を経過したか否かを判定する。当該判定を否定判定した場合、当該判定を再度繰り返す。当該判定を肯定判定した場合、処理は、ステップSP24の処理に移行する。
【0074】
(ステップSP24)
判定部36は、タッチ検出を終了するか否かを判定する。当該判定を否定判定した場合、処理は、ステップSP14の処理に移行する。当該判定を肯定判定した場合、図8に示す一連の処理が終了する。
【0075】
図9は、図8のステップSP14のスキャン設定の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0076】
(ステップSP26)
判定部36は、第1条件の条件ID「1」~「6」の条件の少なくとも何れかを満たすか否かを判定する。当該判定を肯定判定した場合、処理は、ステップSP28の処理に移行する。当該判定を否定判定した場合、処理は、ステップSP30の処理に移行する。
【0077】
(ステップSP28)
設定部30は、スキャンレートを基準に比して高く再設定する。具体的には、設定部30は、再設定したスキャンレートとなるように、符号多重の信号長さを短くし、且つ、ステップSP22の処理で判定する規定時間を短くするように再設定する。そして、スキャン設定を終了する。
【0078】
(ステップSP30)
判定部36は、第2条件の条件ID「7」、「8」の条件の少なくとも何れかを満たすか否かを判定する。当該判定を肯定判定した場合、処理は、ステップSP32の処理に移行する。当該判定を否定判定した場合、スキャン設定を再設定することなくスキャン設定を終了する。
【0079】
(ステップSP32)
設定部30は、スキャンレートを基準に比して低く再設定し、スキャン設定を終了する。具体的には、設定部30は、再設定したスキャンレートとなるように、符号多重の信号長さを長くし、且つ、ステップSP22の処理で判定する規定時間を長くするように再設定する。そして、スキャン設定を終了する。
【0080】
<作用効果>
以上、第1実施形態において、電子機器12は、複数のセンサ電極18x,18yを面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサ18と、タッチセンサ18に接続されるタッチIC20と、を備える。このタッチIC20は、タッチセンサ18に接続され、かつセンサ電極18x,18yから順次出力される検出信号を読み出して処理するスキャン処理を実行することによりユーザのタッチ状態を検出するタッチ状態検出回路IC20であって、スキャン処理の実行頻度に関するスキャン条件としてスキャンレートを設定する設定部30と、設定されたスキャンレートでスキャン処理を実行してタッチ状態を検出する検出部32と、を備え、設定部30は、スキャンレートを変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、スキャンレートを変更して再設定し、検出部32は、再設定されたスキャンレートでタッチ状態を検出する。
【0081】
また、このタッチIC20においてユーザのタッチ状態を検出するタッチ状態検出方法は、スキャンレートを設定する設定ステップ(ステップSP14)と、設定されたスキャンレートでスキャン処理を実行してタッチ状態を検出する検出ステップ(ステップSP16~ステップSP24)と、を順次繰り返して実行し、設定ステップでは、判定条件を満たす場合に、スキャンレートを変更して再設定し、検出ステップでは、再設定されたスキャンレートでタッチ状態を検出する。
【0082】
第1実施形態に係るタッチIC20、電子機器12、及びタッチ状態検出方法によれば、判定条件を満たす場合にスキャンレートが変更され再設定されるので、検出対象や検出範囲等に応じてスキャン時間Taを変動させて最適化することができる。これにより、実スキャン時間T1をタッチ状態の検出機能を発揮できる程度に確保すると共に、無駄な待機時間が生じないように非スキャン時間T2を短く又は無くすことができる。その結果、スキャンレートを固定する場合と比べて、様々な条件に適した検出を行うことができる。
【0083】
また、設定部30は、判定条件として第1条件を満たす場合において、スキャンレートを基準に比して高く変更して再設定する。第1条件は、図7に示す条件ID「1」~「6」の条件の少なくとも何れかを示す。
【0084】
この構成によれば、条件ID「1」~「6」の条件の少なくとも何れかを満たす状況に応じて、スキャンレートを高くしてスキャン時間Taを短くすることができる。特に、条件ID「1」の条件においては、閾値をユーザの片手の指Fの本数である5本とすることにより、両手でのタッチと区別してスキャン時間Taを最適化することができる。
【0085】
また、設定部30は、判定条件として第2条件を満たす場合において、スキャンレートを基準に比して低く変更して再設定する。第2条件は、図7に示す条件ID「7」、「8」の条件の少なくとも何れかを示す。
【0086】
この構成によれば、条件ID「7」、「8」の条件の少なくとも何れかを満たす状況に応じて、スキャンレートを低くしてスキャン時間Taを長くすることができる。
【0087】
[第2実施形態]
次に、図10及び図11を参照して、本発明の第2実施形態に係るタッチ状態検出回路、タッチ状態検出回路を備える電子機器、及びタッチ状態検出方法について説明する。第2実施形態に係るタッチ状態検出回路も、第1実施形態と同様、電子機器12がタッチ状態検出回路であるタッチIC20を含んで構成される。以下、第1実施形態と同様の構成又は機能については同一の参照符号を付すと共に説明を適宜省略し、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0088】
<タッチIC20の機能構成>
第2実施形態では、スキャン条件を、スキャンレートではなく、タッチ実行周期に関するスキャン条件、具体的には、タッチ実行周期であるスキャン時間Taとする点で、第1実施形態と異なる。
【0089】
設定部30は、スキャン時間Taの初期値を例えば10[mmsec]に設定する。設定部30は、スキャン条件であるスキャン時間Taを変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、当該スキャン時間Taを変更して再設定する。この判定条件は、スキャン時間Taを基準に比して短くすべき状況を示す第1条件と、スキャン時間Taを基準に比して長くすべき状況を示す第2条件と、を含む。ここでの基準は、スキャン時間Taの基準値であって、例えば初期値等として予め設定された値としてもよく、判定条件の判定直前の前回設定値としてもよく、ペンスキャン時間としてもよい。ペンスキャン時間とは、ペン状態を検出するための1回のスキャン処理にかかるスキャン時間であって、スキャン時間Taに対応する。
【0090】
設定部30は、第1条件を満たす場合に、スキャン時間Taが基準に比して短くなるようにする。これに対し、設定部30は、第2条件を満たすと判定された場合に、スキャン時間Taが基準に比して長くなるようにする。なお、基準がペンスキャン時間である場合、スキャン時間Taの変更は、ペンスキャン時間を変更することによるペンスキャン時間に対する相対的なスキャン時間Taの変更であってもよい。例えば、ペン状態を検出するためのスキャン処理を停止してペンスキャン時間を0とすることにより、ペンスキャン時間に対する相対的なスキャン時間Taを長くしてもよい。
【0091】
検出部32は、タッチ状態を検出するためのスキャン処理を、設定部30により設定又は再設定されたスキャン時間Taで実行する。
【0092】
図10は、第2実施形態に係る判定条件と当該判定条件を満たす場合のタッチ実行周期(スキャン時間Ta)との組み合わせの一例を示す図であって、図7に対応する。図10に示すように、第2実施形態における判定条件は、第1実施形態に係る判定条件と同様である。
【0093】
<タッチIC20の処理の流れ>
第2実施形態において、タッチ検出機能26によるタッチ検出の実行時におけるタッチIC20の処理の流れは、図8に示すフローチャートと同様である。また、第2実施形態において、図8のステップSP14のスキャン設定の処理の流れは、図9に示すフローチャートに代えて図11に示すフローチャートで示される。図11は、第2実施形態に係る図8のステップSP14のスキャン設定の処理の流れの一例を示すフローチャートであって、図9に示すフローチャートに対応する。なお、以下のステップの順番は、適宜、変更することができる。
【0094】
(ステップSP34)
判定部36は、第1条件の条件ID「1」~「6」の条件の少なくとも何れかを満たすか否かを判定する。当該判定を肯定判定した場合、処理は、ステップSP36の処理に移行する。当該判定を否定判定した場合、処理は、ステップSP38の処理に移行する。
【0095】
(ステップSP36)
設定部30は、タッチ実行周期であるスキャン時間Taを基準に比して短く再設定する。そして、スキャン設定を終了する。
【0096】
(ステップSP38)
判定部36は、第2条件の条件ID「7」、「8」の条件の少なくとも何れかを満たすか否かを判定する。当該判定を肯定判定した場合、処理は、ステップSP40の処理に移行する。当該判定を否定判定した場合、スキャン設定を再設定することなくスキャン設定を終了する。
【0097】
(ステップSP40)
設定部30は、タッチ実行周期であるスキャン時間Taを基準に比して長く再設定し、スキャン設定を終了する。そして、スキャン設定を終了する。
【0098】
<作用効果>
以上、第2実施形態においても、電子機器12は、複数のセンサ電極18x,18yを面状に配置してなる静電容量方式のタッチセンサ18と、タッチセンサ18に接続されるタッチIC20と、を備える。第2実施形態に係るタッチIC20は、スキャン条件としてタッチ実行周期であるスキャン時間Taを設定する設定部30と、設定されたスキャン時間Taでスキャン処理を実行してタッチ状態を検出する検出部32と、を備え、設定部30は、スキャン時間Taを変更すべき状況を示す判定条件を満たす場合に、スキャン時間Taを変更して再設定し、検出部32は、再設定されたスキャン時間Taでタッチ状態を検出する。
【0099】
また、第2実施形態に係るタッチIC20においてユーザのタッチ状態を検出するタッチ状態検出方法は、タッチ実行周期であるスキャン時間Taを設定する設定ステップ(ステップSP14)と、設定されたスキャン時間Taでスキャン処理を実行してタッチ状態を検出する検出ステップ(ステップSP16~ステップSP24)と、を順次繰り返して実行し、設定ステップでは、判定条件を満たす場合に、スキャン時間Taを変更して再設定し、検出ステップでは、再設定されたスキャン時間Taでタッチ状態を検出する。
【0100】
よって、第2実施形態に係るタッチIC20、電子機器12、及びタッチ状態検出方法によれば、判定条件を満たす場合にスキャン時間Taが変更され再設定されるので、検出対象や検出範囲等に応じてスキャン時間Taを変動させることができる。その結果、第1実施形態同様、スキャン時間Taを固定する場合と比べて、様々な条件に適した検出を行うことができる。
【0101】
また、設定部30は、判定条件として第1条件を満たす場合において、スキャン時間Taを基準に比して短く変更して再設定する。第1条件は、図10に示す条件ID「1」~「6」の条件の少なくとも何れかを示す。
【0102】
この構成によれば、条件ID「1」~「6」の条件の少なくとも何れかを満たす状況に応じて、スキャン時間Taを短くすることができる。特に、条件ID「1」の条件においては、閾値をユーザの片手の指Fの本数である5本とすることにより、両手でのタッチと区別してスキャン時間Taを最適化することができる。
【0103】
また、設定部30は、判定条件として第2条件を満たす場合において、スキャン時間Taを基準に比して長く変更して再設定する。第2条件は、図10に示す条件ID「7」、「8」の条件の少なくとも何れかを示す。
【0104】
この構成によれば、条件ID「7」、「8」の条件の少なくとも何れかを満たす状況に応じて、スキャン時間Taを長くすることができる。
【0105】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0106】
例えば、第1実施形態において、再設定したスキャンレートとなるように、符号多重の信号長さ及び規定時間の両方を変更する例について説明したが、これに限らない。例えば、符号多重の信号長さ及び規定時間の何れか一方を変更してもよく、その他の要素を変更してもよい。また、スキャン時間Taとして設定された規定時間を変更することでスキャンレートを再設定する例について説明したが、スキャン時間Taに限らず例えば積算スキャン時間Tbとして設定された規定時間を変更することでスキャンレートを再設定してもよい。
【0107】
また、第2実施形態において、タッチ実行周期に関するスキャン条件をスキャン時間Taとして説明したが、タッチ実行周期に関するスキャン条件を積算スキャン時間Tbとしてもよい。
【0108】
また、スキャン条件は、タッチ検出のみに着目した制御パラメータに限らず、ペン状態とタッチ状態の時分割検出に着目した制御パラメータに関する条件であってもよい。例えば、スキャン条件は、ペン状態を検出するためのスキャン処理の実行頻度に対するタッチ状態を検出するためのスキャン処理の実行頻度の比率(以下、「スキャン実行頻度の比率」という。)であってもよい。すなわち、設定部30は、判定条件を満たす場合に、スキャン実行頻度の比率を変更して再設定してもよい。
【0109】
図12は、スキャン実行頻度の比率を概念的に説明するための図である。図12では、任意時間ΔTで実行された10回のスキャン処理のうち、タッチ検出における1回のスキャン処理を黒い四角で示し、ペン検出における1回のスキャン処理を白い四角で示している。これにより、図12では、所定回数中におけるペン検出におけるスキャン実行回数とタッチ検出におけるスキャン実行回数との比率を概念的に示している。図12の(A)は、スキャン実行頻度の比率(ペン検出:タッチ検出)が5:5である場合を示し、図12の(B)は、スキャン実行頻度の比率(ペン検出:タッチ検出)が6:4である場合を示している。設定部30は、スキャン実行頻度の比率を例えば図12の(A)に示す5:5から図12の(B)に示す6:4に変更する。このようにスキャン実行頻度の比率を変更することにより、例えば1回のスキャン処理にかかるスキャン時間Taが固定であっても、任意時間ΔTにおけるスキャン実行回数を変更することができる。すなわち、タッチ検出の中でのスキャン処理の実行頻度が固定であったとしても、ペン検出のスキャン処理とタッチ検出のスキャン処理とを含めた全体のスキャン処理の中での大局的なスキャン処理の実行頻度を変更することができる。その結果、様々な条件に適した検出を行うことができる。
【0110】
また、スキャン条件は、スキャンレート、タッチ実行周期、及びスキャン実行頻度の比率の何れか一つを示す場合に限らず、これらの組み合わせであってもよい。すなわち、設定部30は、判定条件を満たす場合に、スキャンレート、タッチ実行周期、及びスキャン実行頻度の比率のうち何れか一つのスキャン条件に限らず、これらを任意に組み合わせたスキャン条件を変更して再設定してもよい。
【0111】
また、本発明は、タッチIC20や電子機器12等の情報処理装置を、図3に示す各機能構成として機能させるためのプログラムであってもよい。当該プログラムは、タッチIC20や電子機器12等の内部に配置された記憶手段に記憶されてもよく、ネットワークでタッチIC20や電子機器12等に接続された外部の記憶手段に記憶されてもよい。また、当該プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよく、インターネット等のネットワーク経由でインストールする形式で提供してもよい。
【符号の説明】
【0112】
18x,18y:センサ電極、18:タッチセンサ、20:タッチIC(タッチ状態検出回路)、30:設定部、32:検出部、F:指

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