(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074563
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】情報処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20230523BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187530
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井奥 章
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 太亮
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】地域課題の解決を効率的に行うことと地域課題の解決の実効性を向上することとが両立するよう地域を支援する。
【解決手段】コンピュータが、地域に係る関心を表すデータの入力を受け、検索評価処理を行い、当該処理の結果を出力する。検索評価処理は、第1検索(入力されたデータが表す関心に関して所定の条件を満たす一以上の地域を属性データ及び事例データの一方から特定すること)、第2検索(属性データ及び事例データの他方から条件を満たすデータセットを第1検索の結果又は上記関心に基づき特定すること)、及び、検索評価(第1検索の結果と第2検索の結果とを評価すること)を含む。属性データは、複数の地域の各々について当該地域の属性を表す。事例データは、複数の地域の各々について当該地域の事例を表す。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域に係る関心を表すデータを入力データとして受け付ける入力部と、
検索評価処理を行う検索評価部と、
前記検索評価処理の結果を表すデータである処理結果データを出力する出力部と
を有し、
前記検索評価処理は、第1検索と、第2検索と、検索評価とを含み、
前記第1検索は、前記入力データが表す関心に関して所定の条件を満たす一以上の地域の各々のデータセットを属性データ及び事例データの一方のデータから特定することであり、
前記第2検索は、前記属性データ及び前記事例データの他方のデータから、前記第1検索において特定された一以上のデータセットが表す一以上の地域の各々について当該地域に該当するデータセットを特定することと、前記入力データが表す関心に関して所定の条件を満たす一以上の地域の各々のデータセットを特定することとの少なくとも一つであり、
前記検索評価は、前記第1検索の結果と前記第2検索の結果とを評価することであり、
前記属性データは、複数の地域の各々について当該地域の属性を表すデータセットを含むデータであり、
前記事例データは、複数の地域の各々について、当該地域の事例を表すデータセットを含むデータである、
情報処理装置。
【請求項2】
前記検索評価部が、前記検索評価処理として、第1の検索評価処理を行い、
前記第1の検索評価処理では、
前記一方のデータは、前記属性データであり、
前記所定の条件は、前記入力データが表す関心に該当の属性を持つ地域と当該地域と同一又は類似の属性を持つ地域との少なくとも一つであることを含み、
前記他方のデータは、前記事例データであり、
前記第2検索において、前記事例データのうちの検索の範囲は、前記第1検索において特定された一以上の地域に関わる範囲である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記検索評価部が、前記検索評価処理として、前記第1の検索評価処理の他に、第2の検索評価処理を行い、
前記第2の検索評価処理では、
前記一方のデータは、前記事例データであり、
前記所定の条件は、前記入力データが表す関心に該当の事例がある地域であることと、当該該当の事例と類似の事例がある地域であることとのうちの少なくとも一つを含み、
前記他方のデータは、前記属性データであり、
前記第2検索において、前記属性データのうちの検索の範囲は、前記第1検索において特定された一以上の地域に関わる範囲である、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理結果データは、前記第1の検索評価処理において特定された一以上の地域と前記第2の検索評価処理において特定された一以上の地域とのうち共通の地域についてのデータである、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の検索評価処理において、前記所定の条件は、前記入力データが表す関心に該当の属性又は当該属性を持つ地域の属性と所定距離以上離れた属性を持つ地域であることも含み、
前記第2の検索評価処理において、前記所定の条件は、前記入力データが表す関心に該当の事例と所定距離以上離れた事例を持つ地域であることも含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1の検索評価処理において、前記所定の条件は、前記入力データが表す関心に該当の属性と所定距離以上離れた属性を持つ地域であることも含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記一方のデータは、前記事例データであり、
前記所定の条件は、前記入力データが表す関心に該当の事例がある地域であることと、当該該当の事例と同一又は類似の事例がある地域であることとのうちの少なくとも一つを含み、
前記他方のデータは、前記属性データであり、
前記第2検索において、前記属性データのうちの検索の範囲は、前記第1検索において特定された一以上の地域に関わる範囲である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記所定の条件は、前記入力データが表す関心に該当の事例と所定距離以上離れた事例を持つ地域であることも含む、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記検索評価部が、
前記入力データが表す関心が地域の属性を含んでいる場合、前記第1検索において、当該属性を用いて前記属性データから一以上のデータセットを特定し、
前記入力データが表す関心が地域の属性以外の関心を含んでいる場合、前記第1検索において、当該関心を用いて前記事例データから一以上のデータセットを特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータが、地域に係る関心を表すデータを入力データとして受け付け、
コンピュータが、検索評価処理を行い、
コンピュータが、前記検索評価処理の結果を表すデータである処理結果データを出力し、
前記検索評価処理は、第1検索と、第2検索と、検索評価とを含み、
前記第1検索は、前記入力データが表す関心に関して所定の条件を満たす一以上の地域の各々のデータセットを属性データ及び事例データの一方のデータから特定することであり、
前記第2検索は、前記属性データ及び前記事例データの他方のデータから、前記第1検索において特定された一以上のデータセットが表す一以上の地域の各々について当該地域に該当するデータセットを特定することと、前記入力データが表す関心に関して所定の条件を満たす一以上の地域の各々のデータセットを特定することとの少なくとも一つであり、
前記検索評価は、前記第1検索の結果と前記第2検索の結果とを評価することであり、
前記属性データは、複数の地域の各々について当該地域の属性を表すデータセットを含むデータであり、
前記事例データは、複数の地域の各々について、当該地域の事例を表すデータセットを含むデータである、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、情報処理技術に関し、例えば、地域を支援するための情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地域を支援する主体の一例として、自治体(地方公共団体)が知られている。自治体は、地域の行政サービスの向上を目的として、他の自治体が提供する行政サービスに関する情報を収集することがある。行政サービスの向上のために自治体を支援する技術として、例えば特許文献1に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自治体の主要な業務の一つは、地域課題の解決である。行政サービスの向上は、地域課題の解決の一環である。地域課題の解決に際し、例えば下記の2つの要求がある。
(要求A)地域課題の解決を効率的に行うこと。
(要求B)地域課題の解決の実効性を向上させること(例えば、地域の付加価値を創出すること、以って、例えば、他自治体に対する競争優位性を出すこと)。
【0005】
(要求A)及び(要求B)のいずれについても、自治体の職員は、他の自治体の事例を調査し利活用することを試みることが知られている。自治体の「事例」は、典型的には、各自治体の例規、政策、施策、事業及び事務、これらに影響を及ぼす国の法令などの法源のうちの少なくとも一つ又はそれに類するものを含む。
【0006】
(要求A)を満たすためには、効率的な事例調査が必要である。しかし、効率的な事例調査は、コンピュータを利用しても必ずしも容易ではない。事例調査の対象が大量になりえるなどがその理由である。多くの自治体に類似する条例を横断的に検索した場合等には、検索語を含み検索結果として得られる自治体の条例あるいはその条文は、大量になりえる。
【0007】
(要求B)を満たすためには、候補事例の適切な利活用が考えられ、そのためには、候補事例の背景を注視して理解することが有益である。影響要因を度外視した自治体間の政策のいわゆる横並びでは、他の自治体の成功事例だとしても、影響因子の相違が効いて同じようにうまくいくとは限らない。しかし、事例の背景は、その事例のある自治体に特有の影響要因(例えば、地政学的因子)に基づいている為、多くの資料等にあたらずに的確な理解ができるとも限らない。
【0008】
影響要因に係る情報が、事例調査の範囲の絞り込みと重点化に寄与し、地域課題解決の指針策定等の効率を良くする。また、有効な情報のセレクトによる、的確な課題解決方針の導出にもつながる。他方、事例調査の結果を参照することで、影響要因の理解が進むことにもなる。すなわち、事例と影響要因の一方の情報が他方の情報の適切な取捨選択を促しやすい。したがって、事例と影響要因を関連づけた理解が、要求Aと要求Bの両立につながる。
【0009】
以上の課題は、自治体以外の主体(地域を支援する別の主体)についてもあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
情報処理装置は、地域に係る関心を表すデータを入力データとして受け付け、検索評価処理を行い、当該検索評価処理の結果を表すデータである処理結果データを出力する。検索評価処理は、第1検索と、第2検索と、検索評価とを含む。
【0011】
第1検索は、入力データが表す関心に関して所定の条件を満たす一以上の地域の各々のデータセットを属性データ及び事例データの一方のデータから特定することである。第2検索は、属性データ及び事例データの他方のデータから、当該特定された一以上のデータセットが表す一以上の地域の各々について当該地域に該当するデータセットを特定することである。
【0012】
検索評価は、第1検索において特定された一以上の地域の少なくとも一部の地域について第2検索において特定された一以上のデータセットを評価することである。属性データは、複数の地域の各々について当該地域の属性を表すデータセットを含んだデータである。事例データは、複数の地域の各々について当該地域の事例を表すデータセットを含むデータである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地域課題の解決を効率的に行うことと地域課題の解決の実効性を向上することとが両立するよう地域を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す図。
【
図3】情報処理装置において行われる処理の概要の例を示す図。
【
図5】第1の検索評価処理における属性検索及び事例検索の考え方の一例の説明図。
【
図6A】第1の検索評価処理における属性検索の結果の一例を示す図。
【
図6B】第1の検索評価処理における事例検索の結果の一例を示す図。
【
図7】第1の検索評価処理の処理結果データが表す結果の表示の例を示す図。
【
図9】第2の検索評価処理における事例検索の結果の一例を示す図。
【
図10】第2の検索評価処理における属性検索の結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0016】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0017】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば永続記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVMe(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、又は、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0018】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0019】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0020】
また、以下の説明では、「xxxDB」といった表現にて(「DB」はデータベースの略)、入力に対して出力が得られるデータを説明することがあるが、当該データは、どのような構造のデータでもよいし(例えば、構造化データでもよいし非構造化データでもよいし)、入力に対する出力を発生するニューラルネットワークに代表されるような学習モデルでもよい。従って、「xxxDB」を「xxxデータ」と言うことができる。また、以下の説明において、各DBの構成は一例であり、一つのDBは、二つ以上のDBに分割されてもよいし、二つ以上のDBの全部又は一部が一つのDBであってもよい。
【0021】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0022】
また、以下の説明では、「データセット」とは、アプリケーションプログラムのようなプログラムから見た一つの論理的な電子データの塊であり、例えば、レコード、ファイル、キーバリューペア及びタプル等のうちのいずれでもよい。
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。また、以下の実施形態では、地域を支援する主体の例として自治体が採用されるが、本発明は、自治体以外の主体(地域を支援する別の主体)についても適用できる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【0025】
情報処理装置1は、通信インターフェースデバイス29、I/O-I/F(入出力インターフェースデバイス)25、永続記憶装置28、メモリ22及びそれらに接続されたプロセッサ21を備える。情報処理装置1は、更に、I/O-I/F25に接続された入力デバイス26及び出力デバイス27を備えてよい。通信インターフェースデバイス29及びI/O-I/F25がインターフェース装置の一例である。
【0026】
情報処理装置1は、通信インターフェースデバイス29経由で、ネットワーク(例えばインターネット)35を介し、一つ又は複数のサーバ30と通信できる。少なくとも一つのサーバ30が、後述の属性DB及び事例DBを格納するサーバでもよいし、属性DB及び事例DBの要素となるデータを格納するサーバでもよい。後者の場合、一つ以上のサーバから収集されたデータを基に後述の属性DB及び事例DBが構築されてもよい。
【0027】
入力デバイス26は、例えば、情報処理装置1を使用するユーザが操作するキーボード及びマウス等である。出力デバイス27は、例えば、出力されたデータをユーザが視認するために液晶表示素子や有機EL(Electro Luminescence)表示素子などで構成された液晶ディスプレイである。なお、入力デバイス26と出力デバイス27は、その両方の機能を兼ねたタッチパネルで構成されていてもよい。また、入力デバイス26と出力デバイス27は、情報処理装置1にネットワーク35を介して接続された遠隔の計算機(例えばコンソール)でもよい。
【0028】
永続記憶装置28が、OS(Operating System)及び各種プログラムを記憶していて、それらがメモリ22に読み出され、プロセッサ21により実行されてよい。
【0029】
図2は、情報処理装置1の機能構成例を示す図である。
【0030】
情報処理装置1は、属性DB5、事例DB9、属性検索部3、事例検索部7、入力部2、検索評価部6、及び出力部4を有する。
【0031】
属性DB5は、複数の自治体の各々について当該自治体の属性を表すデータセット(例えばレコード)を含むDBである。属性DB5は、各自治体について、年度毎の属性を表し、属性は、例えば、所属人口、老人福祉施設数、製造品出荷額、死亡者数、小学校児童数等でよい。これらは「属性」の例であるが、「属性」の例は本段落に列挙された要素に限られない。属性DB5において、自治体毎のデータセットは、各属性について、属性項目(例えば項目名)と、属性値(例えば数値やテキスト)とを含んでよい。属性DB5の少なくとも一部が、属性の統計を表してよい。属性は指標と呼ばれてもよい。
【0032】
事例DB9は、複数の自治体の各々について当該自治体の法令、政策、施策、事業及び事務の少なくとも一つの事例を表すデータセットを含むDBである。これらは「事例」の例であるが、「事例」の例は本段落に列挙された要素に限られない。法令は、典型的には条例を含み、更に規則を含んでよい。「法令」の例も本段落に列挙された要素に限られない。
【0033】
本実施形態では、説明を簡単にするために、自治体の属性も事例もDBに集約されている(つまり構造化されている)が、自治体の少なくとも一部の属性及び自治体の少なくとも一部の事例は必ずしもDBに集約されていなくてもよい。例えば、属性データの少なくとも一部、及び、事例データの少なくとも一部が、遠隔のサーバ30に存在してもよい。特に、例えば、事例に関し、行政サービスや条例の名称は自治体間で一致しておらず、条例等の改正(追加、削除、変更)を反映する工数も影響し事例データの全てを構造化しておきメンテナンスすることは困難な場合もあり、故に、事例データの少なくとも一部は構造化されていなくてよい。なお、「属性データ」は、デモグラフィック変数やジオグラフィック変数、サイコグラフィック変数、あるいは予算、税収等を示すデータ、産業構造を示すデータ等、である。「事例データ」は、複数の自治体の各々について、行政の取り組みや実行内容(ルールや活動など)、及びそれらにもとづいて計画や実行された個別の少なくとも一つの事例を表すデータセットを含むデータである。「ルールや活動」とは、当該自治体の例規、政策、施策、事業及び事務規定等、これらに影響を及ぼす国の法令などの法源の少なくとも一つを含むものである。ここで、行政(自治体等)の取り組みや実行内容(ルールや活動など)についての計画時点での重要性や緊急性の程度、実行成果を反映する属性、たとえば、行政が直接的にコントロールできる属性として、自治体等の予算や税収、人件費や物件費などの費用に関する属性と、その費用の範囲で開催されるイベント講座の年単位での開催回数、開催日数、開催箇所などの活動指標としての属性、あるいは、行政が間接的にコントロールできる属性として、イベント講座に参加した受講者人数、その参加者がイベントでの課題を意識して理解や関心を深める人の割合、それによってその課題の理解や関心を深めた市民の割合、といった行政サービス成果に関する属性は、「属性データ」に含まれるものと多くは想定されるが、「事例データ」に含まれていてもよいものとする。
【0034】
属性検索部3は、属性DB5からデータセットを特定することである属性検索を行う機能であるが、属性DB5に対するインターフェースでもよい。後者の場合、検索評価部6が、属性検索において、属性検索部3を通じて属性DB5にアクセスしてよい。
【0035】
事例検索部7は、事例DB9からデータセットを特定することである事例検索を行う機能であるが、事例DB9に対するインターフェースでもよい。後者の場合、検索評価部6が、事例検索において、事例検索部7を通じて事例DB9にアクセスしてよい。
【0036】
入力部2は、自治体に係る関心等を表すデータを入力データとして受け付ける。検索評価部6が、検索評価処理を行う。出力部4は、検索評価処理の結果を表すデータである処理結果データを出力する(例えば出力デバイス27に表示する)。
【0037】
検索評価処理は、第1検索と、第2検索と、検索評価とを含む。第1検索は、入力データが表す関心に関して所定の条件を満たす一以上の自治体の各々のデータセットを属性DB5及び事例DB9の一方のDBから特定することである。第2検索は、属性DB5及び事例DB9の他方のDBから、上記特定された一以上のデータセットが表す一以上の自治体の各々について当該自治体に該当するデータセットを特定することである。検索評価は、第1検索において特定された一以上の自治体の少なくとも一部の自治体について第2検索において特定された一以上のデータセットを評価することである。
【0038】
具体的には、例えば、検索評価部6は、属性検索部3及び事例検索部7の一方に第1検索を実行させ、属性検索部3及び事例検索部7の他方に第2検索を実行させる。すなわち、第1検索は、属性検索及び事例検索の一方であり、第2検索は、属性検索及び事例検索の他方である。属性検索部3及び事例検索部7は、検索評価部6に含まれる機能でもよい。
【0039】
このように、本実施形態では、自治体の属性の検索である属性検索と、自治体の事例の検索である事例検索との両方が行われる。属性検索の結果(例えば、属性が類似の自治体の検索結果)と事例検索の結果(例えば、事例が類似する自治体の検索結果)が評価され、その評価結果が出力される(例えば、事例の違い(例えば、条例や行政サービスの違い)が自治体の財政(属性の一例)にどう影響しているのかの評価結果が出力される)。これにより、地域課題の解決を効率的に行うことと地域課題の解決の実効性を向上することとが両立するよう自治体を支援することができる。一例として下記が考えられる。
【0040】
検索評価部6が、入力データが表す関心(例えば、分野)について、属性検索部3及び事例検索部7を用いて、属性DB5及び事例DB9を参照してよい。関心としての分野は、例えば、教育や社会福祉でよい。事例DB9のうち、例えば法令に関するデータは、条例の改正前のオリジナルのデータと、改正後の条例のデータのうちの当該オリジナルのデータとの差分のデータを含んでいてよい。
【0041】
検索評価部6が、自治体X(X市の自治体)と属性が類似した自治体であり、且つ、上記関心としての分野を有する第1の類似自治体を、少なくとも1つ特定し出力してよい。自治体Xと属性が類似した自治体は、属性DB5から特定されてよい。例えば、X市の人口と類似の人口の市の自治体が特定されてもよいし、1次産業、2次産業又は3次産業の割合がX市と類似の自治体が特定されてもよい(したがって、人口や産業構造等で類似性を判断している政府の統計資料(類似団体分類等)に基づいて(当該類似団体分類も属性DB5に含まれていてよい)、自治体Xと同じ分類名に区分されている自治体の中から特定されてよい)。例えば、財務状況に基づく自治体分類を示す統計資料等が利用可能ならば、それを参照することで(当該自治体分類も属性DB5に含まれていてよい)、自治体Xと同一分類に属する自治体か否かが判定されてよい。
【0042】
属性として、例えば、人口、人口構成(例えば年代別の比率)、面積、気候、予算、税収等が採用されてよい。行政が直接的にコントロールできる属性として、人件費や物件費などの費用に関する属性と、その費用の範囲で開催されるイベント講座の年単位での開催回数、開催日数、開催箇所などの活動指標としての属性があってよい。行政が間接的にコントロールできる属性として、イベント講座に参加した受講者人数、その参加者がイベントでの課題を意識して理解や関心を深める人の割合、それによってその課題の理解や関心を深めた市民の割合、といったサービス成果に関する属性があってよい。
【0043】
このようなイベント講座を開催するための課題として、テーマ設定、開催時期、講師の知名度等があり、これがイベント開催検討の影響要因でよい。更に、影響要因は、イベント講座の提供内容のわかりやすさ、社会的関心の度合い、開催場所及びその広さ等も影響要因に含まれていてよい。他の自治体の事例調査において、これらの影響要因が属性の一例であり、このような影響要因が自治体間の事例の違いに影響し得る。本実施形態では、事例の違いと属性の違いの評価結果を出力すること(典型的には可視化すること)ができる。例えば、影響要因が同一あるいは類似であるA市、C市、D市において、条例に関連する規定が存在して、ある政策を実施しているのがA市とC市、条例に規定が存在せず、その政策を実施していないのがD市とする。ある政策のアウトカム指標(属性の一例)として、D市は1000万円、A市は3000万円、C市は3000万円、との評価結果が得られたら、その差分(3000万円-1000万円)が自治体間の政策の因果効果であると推測しうる。ここでA市が3000万円、C市が4000万円とすれば、その平均金額である3500万円を用いて、その差分を因果効果(3500万円-1000万円)として推測しうる。
【0044】
以下、本実施形態を詳細に説明する。
【0045】
図3は、情報処理装置1において行われる処理の概要の例を示す図である。
【0046】
入力部2が、自治体X(X市の自治体)の職員(ユーザの一例)から入力デバイス26を介して入力データ110を受け付ける。入力データ110が表す関心は、自治体の属性に関する関心(以下、属性関心)と、自治体の属性以外の関心(以下、非属性関心)とのの一方又は両方を含む。
図3が示す例では、入力データ110が表す関心は、属性関心と非属性関心との両方を含んでいる。
【0047】
検索評価部6は、検索評価処理として、第1の検索評価処理111及び第2の検索評価処理112の一方又は両方を行うことができる。本実施形態では、検索評価部6が、入力データ110が表す関心が属性関心を含むか否かを判定してよい。属性関心については、検索評価部6が、第1の検索評価処理111を行ってよい。非属性関心については、検索評価部6が、第2の検索評価処理112を行ってよい。このようにして、関心に応じた適切な検索評価処理を選択的に行うことができ、以って、地域課題の解決のための効率的且つ適切な情報出力が期待される。
【0048】
第1の検索評価処理111は、属性検索を第1段階検索(第1検索の一例)として含み事例検索を第2段階検索(第2検索の一例)として含む処理である。具体的には、第1の検索評価処理111では、属性関心を基に属性検索が行われる。属性検索において特定されたデータセット群113(1以上のデータセット)は、属性関心に該当の属性を持つ自治体のデータセットと当該自治体の属性と同一又は類似の属性を持つ自治体のデータセットとのうちの少なくとも一方を含んでよい。属性関心の一例が、「自治体名“X市”」であり、「属性関心に該当の属性を持つ自治体の属性と同一又は類似の属性を持つ自治体」の一例を、自治体名“X市”に該当する自治体Xの属性(全ての又は一部の属性)と同一又は類似の属性を持つ自治体A、D及びEとする。「自治体Xの属性と同一の属性」とは、自治体Xの全属性が一致した属性でよい。「自治体Xの属性と類似の属性」とは、自治体Xの全属性のうちの一部の属性が一致した属性でもよいし、自治体Xの属性との差が所定範囲以内の属性(例えば、自治体Xの全属性の特徴量との差が所定範囲以内となる特徴量となる1以上の属性)でよい。第2段階検索において、事例DB9のうちの検索の範囲は、第1段階検索において特定された一以上の自治体に関わる範囲でよい。つまり、第2段階検索の範囲が、第1段階検索の結果に従う範囲に絞りこまれてよい。これにより、地域課題の解決が一層効率的になされることが期待される。なお、第2段階検索において、事例DB9のうちの検索の範囲は、第1段階検索において特定された一以上の自治体に関わる範囲のうち、更に、入力された関心のうちの非属性関心から特定される事項(例えば分野)に該当する範囲に絞られてよい。第2段階検索では、このように絞られた範囲からデータセット群115(1以上のデータセット)が特定される。データセット群113とデータセット群115が評価され、その評価結果を表すデータが処理結果データ121として出力される。この処理結果データ121が表す結果が可視化(出力)されてもよいし、処理結果データ121に代えて又は加えて、後述の処理結果データ125が表す結果が可視化されてもよい。
【0049】
第2の検索評価処理112は、事例検索を第1段階検索として含み属性検索を第2段階検索として含む処理である。具体的には、第2の検索評価処理112では、非属性関心を基に事例検索が行われる。非属性関心の例は、
図3に示す「分野“社会保障”」でよいが、それに代えて又は加えて、「事例が類似すること」といった関心でもよい。事例検索において特定されたデータセット群117(1以上のデータセット)は、非属性関心に該当の事例のデータセットと、当該該当の事例と類似の事例のデータセットとのうちの少なくとも一つを含んでよい。「非属性関心に該当の事例」又は「当該該当の事例と類似の事例」を持つ自治体の一例を、自治体C及びEとする。第2段階検索において、属性DB5のうちの検索の範囲は、第1段階検索において特定された一以上の自治体に関わる範囲でよい。これにより、地域課題の解決が一層効率的になされることが期待される。第2段階検索では、このように絞られた範囲からデータセット群119(1以上のデータセット)が特定される。データセット群117とデータセット群119が評価され、その評価結果を表すデータが処理結果データ123として出力される。この処理結果データ123が表す結果が可視化(出力)されてもよいし、処理結果データ123に代えて又は加えて、後述の処理結果データ125が表す結果が可視化されてもよい。
【0050】
処理結果データ125は、同一の入力データ110について第1の検索評価処理111及び第2の検索評価処理112の両方が行われた場合に出力されるデータでよい。処理結果データ125は、処理結果データ121から特定される一以上の自治体と処理結果データ123から特定される一以上の自治体との共通の自治体を表すデータでよい。上述の例によれば、第1の検索評価処理111の処理結果データ121からは自治体A、D及びEが特定され、第2の検索評価処理112の処理結果データ123からは自治体C及びEが特定され、故に、共通の自治体は自治体Eである。以上のように、入力データ110が表す一つの関心に、属性関心と非属性関心が含まれていて、属性関心については、第1の検索評価処理111(属性検索→事例検索)が行われ、非属性関心については、第1の検索評価処理111と真逆の順序の第2の検索評価処理112(事例検索→属性検索)が行われ、これらの処理111及び112の共通の結果としての自治体が特定される。つまり、一つの関心における異なる関心種別に応じた異なる観点(異なる順序)でそれぞれ検索が行われ、それらの検索の結果が最終の検索結果として特定される。この最終の検索結果が適切であることの期待値は、第1の検索評価処理111と第2の検索評価処理112の一方のみの検索結果に比べて一層高く、故に、地域課題の一層効率的且つ適切な解決が期待される。
【0051】
第1の検索評価処理111において、属性検索では、属性関心に該当の属性(又は当該属性を持つ自治体の属性)と所定距離以上離れた属性を持つ自治体が特定されてもよい。「自治体Xの属性と所定距離以上離れた属性を持つ自治体」とは、例えば、自治体Xの一以上の属性に基づく値(例えば特徴量)との差が所定値以上となる値の基になる属性を持つ自治体でよい。このような自治体は、自治体Xの属性と非類似の属性を持つ自治体のうち、属性が自治体Xと対称的である、すなわち、或る属性の観点で特徴づけると正反対に近い特徴を有する自治体(自治体Xの属性との非類似度が一定値以上に大きい属性を持つ自治体の一例)とみなしうる。このような自治体も特定されるため、類似の自治体とそれとは対称的な自治体との比較が可能となり、故に、事例の背景を正確且つ迅速に推測することが期待され、結果として、地域課題の解決を効率的に行うことと地域課題の解決の実効性を向上することとの両立への一層の貢献が期待される。
【0052】
同様に、第2の検索評価処理112において、事例検索では、非属性関心に該当の事例と所定距離以上離れた事例を持つ自治体が特定されてもよい。「非属性関心に該当の事例と所定距離以上離れた事例を持つ自治体」とは、非属性関心に該当の事例に基づく値(例えば特徴量)との差が所定値以上となる値の基になる事例がある自治体でよい。このような自治体は、非属性関心に該当の事例と非類似の事例がある自治体のうちの、該当の事例と対称的な事例がある自治体(自治体Xについての事例との非類似度が一定値以上に大きい事例がある自治体の一例)でよい。このような自治体も特定されるため、該当又は類似の事例がある自治体とそれとは対称的な事例がある自治体との比較が可能となり、故に、事例の背景を正確且つ迅速に推測することが期待され、結果として、地域課題の解決を効率的に行うことと地域課題の解決の実効性を向上することとの両立への一層の貢献が期待される。
【0053】
以下、第1の検索評価処理111及び第2の検索評価処理112をそれぞれ詳細に説明する。
【0054】
<第1の検索評価処理111>
【0055】
図4は、第1の検索評価処理111のフローチャートである。
【0056】
S1では、検索評価部6が、属性関心を属性検索部3に入力することで属性検索部3に属性検索を実行させる。これにより、属性DB5からデータセット群113(属性関心に該当する属性を持つ自治体のデータセットと当該自治体の属性に同一又は類似の属性を持つ自治体のデータセットとのうちの少なくとも一つ)が取得される。
【0057】
S2では、検索評価部6が、S1において特定された一以上の自治体から一つの自治体を選択する。
【0058】
S3では、検索評価部6が、選択された自治体のデータセットの少なくとも一部(例えば、自治体名)を事例検索部7に入力することで事例検索部7に事例検索を実行させる。これにより、事例DB9から、当該自治体の事例を表すデータセットが取得される。
【0059】
S4では、検索評価部6が、S1の属性検索において特定された全ての自治体についてS3が行われたか否かを判定する。S4の判定結果が偽の場合(S4:No)、S2が実行される。
【0060】
S4の判定結果が真の場合(S4:Yes)、検索評価部6が、データセット群113及びデータセット群115(S3において取得された一つ以上のデータセット)の評価を含む検索評価を行い、その結果を表す処理結果データ121を出力する。
【0061】
以下、第1の検索評価処理111の一具体例を説明する。
【0062】
図5は、第1の検索評価処理111における属性検索及び事例検索の考え方の一例の説明図である。
【0063】
例えば、ユーザが、「自治体毎の罰則適用実績は、各自治体の法規制の厳しさや細やかさに相関する」との仮説の下で、関心を決定する。この場合、例えば、関心が、属性関心を含み、属性関心が、「罰則適用実績」を含むとする。罰則適用件数が“0”であることが、罰則適用実績なしを意味し、罰則適用件数が“1”以上であることが、罰則適用実績ありを意味する。
【0064】
実線で表される集合11が、罰則適用実績という属性項目がある自治体の集合である。集合11の部分集合12が、属性検索において特定された自治体(例えば、自治体A,D及びEとする)の集合である。部分集合12に、罰則適用実績なしの自治体G(例えば、罰則適用実績なしの複数の自治体からルールベースで又はランダムに選択された自治体)が含まれてよい。自治体Gが、入力データ110が表す関心に該当の属性又は当該属性を持つ自治体の属性と所定距離以上離れた属性を持つ自治体の一例でよい。
【0065】
破線で表される集合10が、非属性関心に該当の事例がある自治体と、当該該当の事例と同一又は類似の事例がある自治体とのうちの少なくとも一つを含む自治体の集合(例えば、条例に「abc」という表現や表現の集合体(概念等)を含む自治体の集合)である。
【0066】
図5が示す例によれば、集合10のうち(つまり、事例DB9のうちの当該集合10に属する全自治体の事例データセットのうち)、事例検索の範囲が、部分集合12と重なる範囲に絞られる。つまり、部分集合12(集合10と集合11との共通部分)に属する各自治体について、事例データセットが取得される。
【0067】
例えば、
図6Aが示すように、罰則適用実績(個人情報保護関連の問題の発生)について、属性検索において、罰則適用実績という属性項目がある自治体A~Jの各々について、罰則適用実績について“実績あり”又は“実績なし”が特定される。
図6Aが示す例によれば、罰則適用実績ありは、自治体A、D及びEである(この集合「自治体A、D及びE」が、
図5に例示した部分集合12に相当する)。
【0068】
続いて、
図6Bが示すように、検索評価部6が、事例検索部7を通じて事例DB9にアクセスし、行政機関個人情報保護法(「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」の通称)と自治体A~Jの条例とを比較する。これにより、自治体A~Jの各々について、行政機関個人情報保護法のうちの該当規定(条例でもカバーされている規定)の個数がわかる。該当規定の個数は、自治体Aについては12個、自治体Dについては10個、自治体Eについては8個であったとする。つまり、罰則適用実績のある自治体について、該当規定の平均個数は10(=(12+10+8)÷3)であることがわかる。罰則適用実績のない自治体についても、同様の特定方法により、該当規定の平均個数は3.85であることがわかる。この結果、該当規定の平均個数は罰則適用実績のある自治体の方が多く、これは、罰則適用実績のある自治体の方が法規制に厳しい又は細かいと言える。故に、この結果は、上述の仮説「自治体毎の罰則適用実績は、各自治体の法規制の厳しさや細やかさに相関する」が正しいことの根拠となる。
【0069】
図7は、処理結果データ121が表す結果の表示の例を示す図である。
【0070】
この表示によれば、ユーザは、自治体A、D及びEに共通して「保有個人情報」という概念が存在することがわかる。また、「個人情報」に対する規制よりも「保有個人情報」に対する規制が多いことがわかる。
【0071】
また、自治体A、D及びEと自治体Gとの比較によれば、自治体Gには「保有個人情報」という概念が存在しないことがわかる。
【0072】
以上のようにして、ユーザは、自治体A、D及びEの政策面(条例)の傾向をつかみ、以って、ユーザの上記仮説の正当性を確かめることができる。
【0073】
このような例に代えて又は加えて、第1の検索評価処理111においては、下記のうちの少なくとも一つが期待されてよい。
・産業、土木、保健衛生、環境、福祉などを含んだ属性DB5を、自治体Xが属する同一都道府県内の他自治体と比較し、これにより抽出された所属自治体の特徴として、市税の徴収率が相対的に高かったり、森林面積が相対的に広かったりすることがわかる。目標としては、税の徴収を県内1位にする政策、林業を盛んにする政策が立案されることが望ましいことがわかる。
・人口が同規模だと事業も類似していると思われがちだが比較してみると異なることがわかる。
・自治体Xの財政指数と同規模の(自治体Xと豊かさが類似している)他自治体と比較をすることで、これらの自治体は震災時の想定被害が大きいことがわかる。このため、同被害想定の周辺市ではなく遠隔地域と連携する政策が立案されることが望ましいことがわかる。
【0074】
<第2の検索評価処理112>
【0075】
図8は、第2の検索評価処理112のフローチャートである。
【0076】
S11では、検索評価部6が、非属性関心を事例検索部7に入力することで事例検索部7に事例検索を実行させる。これにより、事例DB9からデータセット群117(非属性属性関心に該当する事例を持つ自治体のデータセットと当該事例に類似の事例がある自治体のデータセットとのうちの少なくとも一つ)が取得される。
【0077】
S12では、検索評価部6が、S11において特定された一以上の自治体から一つの自治体を選択する。
【0078】
S13では、検索評価部6が、選択された自治体のデータセットの少なくとも一部(例えば、自治体名)を属性検索部3に入力することで属性検索部3に属性検索を実行させる。これにより、属性DB5から、当該自治体の属性を表すデータセットが取得される。
【0079】
S14では、検索評価部6が、S11の事例検索において特定された全ての自治体についてS13が行われたか否かを判定する。S14の判定結果が偽の場合(S14:No)、S12が実行される。
【0080】
S14の判定結果が真の場合(S14:Yes)、検索評価部6が、データセット群117及びデータセット群119(S13において取得された一つ以上のデータセット)の評価を含む検索評価を行い、その結果を表す処理結果データ123を出力する。
【0081】
なお、第2の検索評価処理112では、類似の事例は、条例の文面(内容)が類似しているかどうか、法令が制定後(改正されてから)の期間が同じであるかなど、複数法令等による総合評価に基づき決定されてもよい。
【0082】
以下、第2の検索評価処理112の一具体例を説明する。
【0083】
例えば、事例検索において、自治体C及びEが特定されたとする。例えば、
図8に示すように、自治体Eには、「個人情報取扱事務の処理」についての条例がある(委託規制)が、自治体Cにはそのような条例がない。ユーザは、自治体Eについて、この条例の趣旨(目的・背景等)を推測するには、属性検索の結果を参酌することが助けとなりうる。
【0084】
たとえば、
図9が示すように、苦情処理対応を行う機関の具備状況について、自治体Eではコールセンター等の外部委託先に窓口機能があるが、自治体Cではこのような窓口機能はなく、基本的に各局等の部局が窓口機能を兼務している、とする。この場合、コールセンター等の外部委託先による相談窓口の設置(委託で運営)を目的として
図9に例示の条例が制定されたとユーザが推測できる。
【0085】
以上、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や他の構成を組み合わせることができる。また本発明は、上記の実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
【0086】
例えば、本実施形態で言う「自治体」は、日本国内(例えば、ユーザが所属する自治体がある国)の自治体に限らず、外国における自治体も該当してよい。この場合、少なくとも事例検索において、事例データの少なくとも一部を、既存の翻訳システムに入力しその出力として翻訳後のデータを取得することで、事例検索の継続が可能でよい。また、上述したように、「自治体」は、地域を支援する主体の一例であり、本発明は、自治体以外の主体(地域を支援する主体)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 情報処理装置