(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074574
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】シリンダ錠付ダイヤル南京錠
(51)【国際特許分類】
E05B 67/16 20060101AFI20230523BHJP
E05B 37/02 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E05B67/16
E05B37/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187555
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】古賀 匠
(57)【要約】
【課題】シリンダ錠とダイヤル錠とを具備し、双方の錠によって施錠でき、いずれの錠によっても解錠が可能な南京錠を提供する。
【解決手段】シャックル3は、ダイヤル錠機構4とシリンダ錠機構5により拘束、解放される。ダイヤル錠機構4は、複数のコードリング6と、複数のダイヤルリング7とを具備する。コードリング6は、小径部6aと大径部6bを有し、大径部6aに逃げ溝6cを具備し、大径部6bでダイヤルリング7とスプライン嵌合する。ダイヤルリング7が、解錠番号列に並ぶと、逃げ溝6cが連続する。シリンダ錠機構5のストッパ突起11bは、シリンダ錠9に連動してコードリング6に接近、離反し、近接するとダイヤル錠機構4が施錠状態のときシャックル3を拘束し、解錠状態のとき連続する逃げ溝6cに対応してシャックル3を解放し、離反するとダイヤル錠機構4の施解錠にかかわらずシャックル3を解放する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠本体に下位の施錠位置と上位の解錠位置との間を移動自在に組み込まれるシャックルと、当該シャックルを施錠位置に拘束または解放するように前記錠本体内に相隣接して組み込まれるダイヤル錠機構とシリンダ錠機構とを具備するシリンダ錠付ダイヤル南京錠であって、
前記ダイヤル錠機構は、前記錠本体内に施錠位置と解錠位置との間を上下に移動自在に挿入された前記シャックルの一方の脚部にそれぞれ軸周り回転自在、軸方向移動不能に嵌め込まれた複数のコードリングと、当該各コードリングの外周側に当該コードリングと一体に軸周り回転自在、軸方向相対移動自在に嵌め込まれそれぞれ外周に周方向等間隔に番号が付された複数のダイヤルリングとを具備し、
前記コードリングは、上方の小径部と下方の大径部とを具備し、当該大径部の一部に溝底が前記小径部に連続する上下方向の逃げ溝を具備し、かつ大径部において前記ダイヤルリングと軸周り方向に係合、軸方向に相対移動自在に嵌合し、
前記複数のダイヤルリングの番号が所定の解錠番号列に並んだとき前記複数のコードリングの逃げ溝がシリンダ錠機構側において上下方向に連続する解錠状態と、前記複数のダイヤルリングの番号が、その他の番号列に並んだ施錠状態とが得られるように設けられ、
前記シリンダ錠機構は、シリンダ錠と、当該シリンダ錠のロータに連動して前記コードリングに接近する施錠位置と当該コードリングから離れる解錠位置との間を左右に移動自在のストッパ部材とを具備し、
前記ストッパ部材は、前記各コードリングの小径部に向かって延出する複数のストッパ突起を具備し、
前記ストッパ突起は、施錠位置において先端が前記のコードリングの小径部外周に近接することにより、前記ダイヤル錠機構が施錠状態のときに前記シャックルの上昇を阻止するが、前記ダイヤル錠機構が解錠状態のときに上下方向に連続する前記逃げ溝に対応して前記シャックルの上昇を許容し、かつ解錠位置において先端が前記のコードリングの大径部の外側に位置することにより、前記ダイヤル錠機構の施解錠の位置にかかわらず前記シャックルの上昇を許容するように設けられることを特徴とするシリンダ錠付ダイヤル南京錠。
【請求項2】
前記ダイヤル錠機構が解錠状態のときに前記シリンダ錠機構側において連続する前記逃げ溝内に上下方向に挿脱自在のサーチキーをさらに具備し、
前記錠本体は、下方から前記サーチキーを前記逃げ溝内に上下方向に抜き差し可能な挿通部をさらに具備し、
前記サーチキーは、前記シリンダ錠機構が解錠状態にあるとき、前記錠本体の挿通部に差し込みつつ、前記ダイヤルリングを下方から順次上方へと解錠番号列を探るように回転させながら、前記逃げ溝内に貫通させることにより、解錠番号列を探知可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ錠付ダイヤル南京錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ錠とダイヤル錠とを具備し、双方の錠によって施錠でき、いずれの錠によっても解錠が可能な南京錠に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信設備等への部外者の侵入を防止するために、屋外フェンスの門扉の施錠に南京錠が用いられる。通常時は現場担当員が割り当てられている解錠キーで施解錠を行う。有事の際には、現場担当員の以外の者が現場へ赴いて復旧作業を行う必要が生じるが、キーを携帯していないので、管理事務所までにキーを取りに行かなければならず、作業時間に大きなロスが生じてしまう。このような時間ロスをなくすために、有事の際はダイヤルの設定番号を伝えることで、キーが無くても南京錠を施解錠できるようにすることが望まれる。
上記のような要求に対応できる南京錠として、シリンダ錠とダイヤル錠とを具備し、双方の錠によって施錠でき、いずれの錠によっても解錠が可能な南京錠が特許文献1に開示されている。
この南京錠は、錠本体内に組み込まれたダイヤル錠と、シリンダ錠と、シリンダ錠の開錠キーとから構成される。ダイヤル錠は、シャックルの長脚部の下方において水平方向に回転可能に取り付けられる複数のダイヤルリングを具備し、ダイヤルリングを所定の解錠番号列に並べたときにシャックルを解放してこれを上方へ突出させて解錠する。シリンダ錠は、施錠状態において上位にあって、シャックルの短脚部を拘束している。ダイヤル錠が施錠状態にあるとき、解錠キーを用いてシリンダ錠を解錠すると、シリンダプラグを下方に引き下げることができ、それによりシャックルの短脚部を解放して南京錠を解錠することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする第1の課題は、上記従来のシリンダ錠付ダイヤル南京錠と異なる簡易な構造の南京錠を提供することであり、第2の課題は、ダイヤル錠の解錠番号列を失念した場合に、シリンダ錠の解錠キーを持つ正当な錠所有者のみが、簡易に解錠番号列を探知することができるシリンダ錠付ダイヤル南京錠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の説明において添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記第1の課題を解決するための、本発明のシリンダ錠付ダイヤル南京錠1は、錠本体2に下位の施錠位置と上位の解錠位置との間を移動自在に組み込まれるシャックル3と、当該シャックル3を施錠位置に拘束または解放するように錠本体内に相隣接して組み込まれるダイヤル錠機構4とシリンダ錠機構5とを具備する。ダイヤル錠機構4は、錠本体2内に施錠位置と解錠位置との間を上下に移動自在に挿入されたシャックル3の一方の脚部3aにそれぞれ軸周り回転自在、軸方向移動不能に嵌め込まれた複数のコードリング6と、当該各コードリング6の外周側に当該コードリング6と一体に軸周り回転自在、軸方向に相対移動自在に嵌め込まれそれぞれ外周に周方向等間隔に番号7aが付された複数のダイヤルリング7とを具備する。コードリング6は、上方の小径部6aと下方の大径部6bとを具備し、大径部6aの一部に溝底が小径部6aに連続する上下方向の逃げ溝6cを具備し、かつ大径部6bにおいてダイヤルリング7と軸周り方向に係合、軸方向に相対移動自在に嵌合する。複数のダイヤルリング7の番号7aが、所定の解錠番号列に並んだとき、複数のコードリング6の逃げ溝6cがシリンダ錠機構5側において上下方向に連続する解錠状態となり、それ以外の番号列に並んだ施錠状態では逃げ溝が上下方向に不連続となるように設けられる。シリンダ錠機構5は、シリンダ錠9と、それのロータ9aに連動してコードリング6に接近する施錠位置とコードリング6から離れる解錠位置との間を左右に移動自在のストッパ部材11とを具備する。ストッパ部材11は、各コードリング6の小径部6aに向かって延出する複数のストッパ突起11bを具備する。ストッパ突起11bは、施錠位置において先端がコードリング6の小径部6a外周に近接することにより、ダイヤル錠機構4が施錠状態のときにシャックル3の上昇を阻止するが、ダイヤル錠機構4が解錠状態のときに連続する逃げ溝6cに対応してシャックル3の上昇を許容し、かつ解錠位置において先端がコードリング6の大径部6bの外側に位置することにより、ダイヤル錠機構4の施解錠の位置にかかわらずシャックル3の上昇を許容するように設けられる。
上記第2の課題を解決するための、本発明のシリンダ錠付ダイヤル南京錠1は、ダイヤル錠機構4が解錠状態のときにシリンダ錠機構側において連続する逃げ溝6c内に上下方向に挿脱自在のサーチキー13をさらに具備する。錠本体2は、下方からサーチキー13を逃げ溝6c内に上下方向に抜き差し可能な挿通部2aをさらに具備する。サーチキー13は、シリンダ錠機構5が解錠状態にあるときにのみ、錠本体2の挿通部2aに差し込みつつ、下方のダイヤルリング7から順次上方へと解錠番号列を探るように回転させながら、逃げ溝6c内に貫通させることにより、解錠番号列を探知可能に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来のシリンダ錠付ダイヤル南京錠と異なる簡易な構造の南京錠を提供することができる。また本発明によれば、ダイヤル錠の解錠番号列を失念した場合に、シリンダ錠の解錠キーを持つ、錠の正当な所有者のみが、簡易に解錠番号列を探知して迅速に利用を再開できるシリンダ錠付ダイヤル南京錠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のシリンダ錠付ダイヤル南京錠の一部を切欠した解錠状態における斜視図である
【
図2a】
図1のシリンダ錠付ダイヤル南京錠の施錠状態の断面図である。
【
図2b】
図1のシリンダ錠付ダイヤル南京錠の解錠状態の断面図である。
【
図3】
図1のシリンダ錠付ダイヤル南京錠の主要部の施錠状態を示す説明図である。
【
図4】
図1のシリンダ錠付ダイヤル南京錠の主要部のサーチキー挿入状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1、
図2において、シリンダ錠付ダイヤル南京錠1は、錠本体2に組み込まれるシャックル3、ダイヤル錠機構4及びシリンダ錠機構5を具備する。
【0009】
シャックル3は、概略逆J字状で、一方の長脚部3aと、他方の短脚部3bとを具備し、下位の施錠位置(
図2a)と上位の解錠位置(
図2b)との間を移動自在に錠本体2に組み込まれる。
【0010】
ダイヤル錠機構4とシリンダ錠機構5は、協働してシャックル3を施錠位置(
図2a)に拘束または解放するように、互いに左右に隣接して錠本体2内に組み込まれる。
【0011】
ダイヤル錠機構4は、シャックル3の長脚部3aに嵌め込まれる複数のコードリング6とダイヤルリング7とを具備する。
【0012】
シャックル3の長脚部3aは、錠本体2内に、施錠位置(
図2a)と解錠位置(
図2b)との間を上下に移動自在に挿入され、ばね8で上方に付勢される。
【0013】
複数のコードリング6は、シャックル3の長脚部2aに、それぞれ軸周り回転自在、軸方向移動不能に嵌め込まれる。
【0014】
ダイヤルリング7は、各コードリング6の外周側に嵌め込まれ、コードリング6と一体に、軸周り回転自在に錠本体2内に保持され、それぞれ外周に周方向等間隔に番号7aが付される。
【0015】
コードリング6は、上方の小径部6aと下方の大径部6bとを具備し、大径部6aの一部に、上下方向の逃げ溝6cを具備する。逃げ溝6cの溝底は、小径部6aに連続する。コードリング6は、大径部6bにおいてダイヤルリング7とスプライン結合され、相互に軸周り方向に係合、軸方向に相対移動自在に嵌合する。
【0016】
ダイヤルリング7は、錠本体2の番号表示窓から露出した表示番号列が、所定の解錠番号列に並んだとき、すべてのコードリング6の逃げ溝6cが、シリンダ錠機構5に対面する位置において上下方向に連続し、解錠状態となる。表示番号列が他の番号列、すなわち施錠番号列に並んだとき施錠状態となる。ダイヤルリング7には、錠本体2内に組み込まれたデテントばね12により、番号7aに対応する回転角度毎にクリック感と回転抵抗が付与される。
【0017】
シリンダ錠機構5は、シリンダ錠9と、駆動カム10と、ストッパ部材11とを具備する。
【0018】
ストッパ部材11は、左右方向に延びる受動部と11aと、受動部11aの左端側において上下方向に分岐してそれぞれ左方へ突出する複数のストッパ突起11bとを具備する。
【0019】
受動部と11aは、シリンダ錠9のロータ9aに連動して正逆回転する駆動カム10に結合される。それにより、ストッパ部材11は、左方の施錠位置(
図2a)と右方の解錠位置(
図2b)との間を左右に移動自在である。
【0020】
ストッパ突起11bは、各コードリング6の小径部6bに向かって延出する。ストッパ突起11bが、左方の施錠位置(
図2a,
図3)にあるとき、その先端がコードリング6に接近している。したがって、ダイヤル錠機構4が施錠状態のとき、ストッパ突起11bが大径部6aに当接してシャックル3の上昇を阻止する。また、ダイヤル錠機構4が解錠状態のとき、シリンダ錠機構5が施錠状態であっても、上下方向に連続する逃げ溝6cにストッパ突起11bが対応して、シャックル3の上昇を許容する。また、ストッパ突起11bは、解錠位置において先端がコードリング6の大径部6aの外側に位置することにより、ダイヤル錠機構5の施解錠の位置にかかわらず、シャックル3の上昇を許容する。
【0021】
シリンダ錠付ダイヤル南京錠1は、使用者がダイヤルリング7の解錠番号列を失念したとき等に、これを探索するために錠本体2の挿通部2aに挿入するサーチキー13をさらに具備する。挿通部2aは、錠本体2の、ストッパ突起11bの先端前方位置に設けられる。
【0022】
図4に示すように、サーチキー13は、ダイヤル錠機構11が解錠状態のときに、ストッパ突起11bの先端対応位置で上下方向に連続する逃げ溝6c内に、挿通部2aを介して上下方向に挿脱自在である。
【0023】
したがって、シリンダ錠機構5が解錠状態にあるときのみ、サーチキー13を錠本体2の挿通部2aに差し込みつつ、下方のダイヤルリング7から順次上方へと解錠番号列を探るように回転させながら、逃げ溝6c内に貫通させることにより、解錠番号列を探知可能である。すなわち、解錠番号列の探知は、シリンダ錠9の施解錠キー14を所持する正当管理者のみが行うことができる。
【0024】
シリンダ錠付ダイヤル南京錠1の使用方法を説明する。施錠は、シャックル3を押し下げた状態で、施解錠キー14を用いてシリンダ錠9を施錠操作すると共に、ダイヤルリング7の番号列を施錠番号列に設定することにより行う。この施錠状態においては、
図3に示すように、ストッパ突起11bの先端がコードリング6の小径部6aに近接し、逃げ溝6cは整列していない。大径部6bの上昇はストッパ突起11bにより阻止され、したがって、シャックル3は下位の施錠位置に保持される。
【0025】
解錠は、施解錠キー13を用いてシリンダ錠9を解錠操作するか、ダイヤルリング7を解錠番号列に設定するか、いずれかの方法により行う。すなわち、ダイヤルリング7が施錠番号列に設定されていても、シリンダ錠9を解錠操作すると、ストッパ部材11が解錠位置に後退し、ストッパ突起11bの先端がコードリング6の大径部6bの外周より外側に位置するので、コードリング6は解放され、シャックル3と共にばね8により解錠位置へ押し上げられる。また、シリンダ錠9が施錠されていても、ダイヤルリング7が解錠番号列に配列されれば、ストッパ突起11bに対面する位置においてコードリング6の逃げ溝6cが上下方向に連続するため、同様にコードリング6は解放され、シャックル3と共にばね8により解錠位置へ押し上げられる。
【0026】
例えば、南京錠を携帯電話基地局の屋外通信設備等のフェンスの門扉に使用する場合、施解錠キーを所持する現場担当員以外の管理者が現場で復旧作業を行う必要が生じるとき、施解錠キーを携帯していないため、これを管理事務所等までに取りに行く必要があり、作業時間に大きなロスが生じてしまう。これに対して、本発明のシリンダ錠付ダイヤル南京錠1を用いる場合には、有事の際はダイヤル錠の解錠番号列を伝えれば、シリンダ錠9の施解錠キー14が無くても施解錠でき、時間ロスをなくすことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 シリンダ錠付ダイヤル南京錠
2 錠本体
2a サーチキー挿通部
3 シャックル
3a 長脚部
3b 短脚部
4 ダイヤル錠機構
5 シリンダ錠機構
6 コードリング
6a 小径部
6b 大径部
7 ダイヤルリング
7a 番号
8 ばね
9 シリンダ錠
9a ロータ
10 駆動カム
11 ストッパ部材
11a 受動部
11b ストッパ突起
12 デテントばね
13 サーチキー
14 施解錠キー