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特開2023-74579エリプソメータ及び半導体装置の検査装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074579
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】エリプソメータ及び半導体装置の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 4/04 20060101AFI20230523BHJP
   G01N 21/21 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G01J4/04 Z
G01N21/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187562
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】日高 康弘
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB08
2G059BB16
2G059EE02
2G059EE05
2G059EE09
2G059FF01
2G059FF03
2G059JJ11
2G059JJ12
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM09
(57)【要約】
【課題】エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができるエリプソメータ及び半導体装置の検査装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係るエリプソメータ1は、直線偏光、円偏光及び楕円偏光の少なくともいずれかを含む照明光L1が試料50の測定面で反射した反射光R1のうち、互いに直交する偏光方向の2つの偏光成分を、反射光R1の光学系の光軸Cを中心にした放射方向に分離する偏光光学素子部30と、2つの偏光成分を、各偏光方向と異なる方向の成分を透過させて干渉させ、同心円状の干渉縞を形成させる検光子部41と、干渉縞を検出する画像検出器42と、検出した干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置43と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光、円偏光及び楕円偏光の少なくともいずれかを含む照明光が試料の測定面で反射した反射光のうち、互いに直交する偏光方向の2つの偏光成分を、前記反射光の光学系の光軸を中心にした放射方向に分離する偏光光学素子部と、
前記2つの偏光成分を、各前記偏光方向と異なる方向の成分を透過させて干渉させ、同心円状の干渉縞を形成させる検光子部と、
前記干渉縞を検出する画像検出器と、
検出した前記干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、
を備えたエリプソメータ。
【請求項2】
前記照明光を生成する光源と、
前記光源から生成された前記照明光が入射され、前記直線偏光、前記円偏光及び前記楕円偏光の少なくともいずれかを含む前記照明光を透過させる偏光子部と、
前記照明光を透過させるとともに、前記照明光が前記試料の前記測定面で反射した前記反射光を透過させる対物レンズと、
前記対物レンズの射出瞳を前記画像検出器上に結像させる集光光学系と、
をさらに備えた請求項1に記載のエリプソメータ。
【請求項3】
前記偏光子部は、直線偏光を生成する直線偏光子を含み、
前記検光子部は、所定の方向の直線偏光成分を透過させる直線偏光子を含む、
請求項2に記載のエリプソメータ。
【請求項4】
前記偏光子部は、前記照明光の光軸を中心にして左回転及び右回転のいずれかに回転する円偏光を生成する円偏光子を含み、
前記検光子部は、前記左回転及び前記右回転のいずれかに回転する円偏光成分を透過させる円偏光子を含む、
請求項2に記載のエリプソメータ。
【請求項5】
各前記円偏光子は、直線偏光子及びλ/4波長板を含む、
請求項4に記載のエリプソメータ。
【請求項6】
前記偏光光学素子部は、ウォラストンレンズを含み、
前記ウォラストンレンズは、相互に嵌合する球面形状を有する2個の1軸性複屈折結晶を含み、
各前記1軸性複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の前記光軸に直交し、かつ、相互に直交する、
請求項3に記載のエリプソメータ。
【請求項7】
前記偏光光学素子部は、さらに、別のウォラストンレンズを含み、
前記偏光光学素子部及び前記検光子部を透過した前記反射光の前記2つの偏光成分は、前記画像検出器上の同一点で検出される、
請求項6に記載のエリプソメータ。
【請求項8】
前記偏光光学素子部は、前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置された平行平板形状を有する第1の複屈折結晶を含み、
前記第1の複屈折結晶は、1軸性の複屈折結晶であり、
前記第1の複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の光軸に平行である、
請求項4または5に記載のエリプソメータ。
【請求項9】
前記偏光光学素子部は、
前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置された平行平板形状を有する第1の複屈折結晶と、
入射面が凹の円錐形状及び出射面が凸の円錐形状を有する第2の複屈折結晶と、
を含み、
前記第1の複屈折結晶及び前記第2の複屈折結晶は、1軸性の複屈折結晶であり、
前記第1の複屈折結晶の結晶光学軸及び前記第2の複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の光軸に平行である、
請求項4または5に記載のエリプソメータ。
【請求項10】
前記偏光光学素子部は、
前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置された平行平板形状を有する第1の複屈折結晶と、
前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置された平行平板形状を有する第3の複屈折結晶と、
を含み、
前記第1の複屈折結晶及び前記第3の複屈折結晶は、1軸性の複屈折結晶であり、
前記第1の複屈折結晶の結晶光学軸及び前記第3の複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の光軸に平行である、
請求項4または5に記載のエリプソメータ。
【請求項11】
前記偏光光学素子部は、
前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置され、入射面が凹面の球面形状及び出射面が凸面の球面形状を有する第4の複屈折結晶と、
入射面が凹の円錐形状及び出射面が凸の円錐形状を有する第2の複屈折結晶と、
を含み、
前記第2の複屈折結晶及び前記第4の複屈折結晶は、1軸性の複屈折結晶であり、
前記第2の複屈折結晶の結晶光学軸及び前記第4の複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の光軸に平行である、
請求項4または5に記載のエリプソメータ。
【請求項12】
前記偏光光学素子部は、
前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置された平行平板形状を有する第1の複屈折結晶と、
前記平行平板形状を有する第5の複屈折結晶と、
前記第5の複屈折結晶の入射面側に配置され、入射面が凹の円錐形状及び出射面が平面形状を有する第1のガラス基板と、
前記第5の複屈折結晶の出射面側に配置され、入射面が平面形状及び出射面が凸の円錐形状を有する第2のガラス基板と、
を含み、
前記第1の複屈折結晶及び前記第5の複屈折結晶は、1軸性の複屈折結晶であり、
前記第1の複屈折結晶の結晶光学軸及び前記第5の複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の光軸に平行である、
請求項4または5に記載のエリプソメータ。
【請求項13】
前記偏光光学素子部は、
前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置された平行平板形状を有する第6の複屈折結晶と、
前記光学系において前記反射光が集光または拡散する位置に配置された平行平板形状を有する第7の複屈折結晶と、
入射面が凹の円錐形状及び出射面が凸の円錐形状を有する第2の複屈折結晶と、
を含み、
前記第2の複屈折結晶、前記第6の複屈折結晶及び前記第7の複屈折結晶は、1軸性の複屈折結晶であり、
前記第2の複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の光軸に平行であり、
前記第6の複屈折結晶の結晶光学軸及び前記第7の複屈折結晶の結晶光学軸は、前記光学系の前記光軸に直交し、かつ、相互に直交する、
請求項4または5に記載のエリプソメータ。
【請求項14】
前記偏光光学素子部は、常光の屈折率n<異常光の屈折率n、及び、通常光の屈折率n>異常光の屈折率nの相互に反対の複屈折性を有する前記複屈折結晶を含む、
請求項9~13のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項15】
直線偏光を含む照明光が試料の測定面で反射した反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光成分に分離する偏光光学素子部と、
各前記偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光成分を透過させて干渉させ、干渉縞を形成させる検光子部と、
前記干渉縞を検出する画像検出器と、
検出した前記干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、
を備え、
前記干渉縞の縞ピッチが前記照明光の複数の波長において同じ値となる、
エリプソメータ。
【請求項16】
前記偏光光学素子部は、
常光の屈折率n<異常光の屈折率nである正の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶と、常光の屈折率n>異常光の屈折率nである負の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶と、を含む第1のノマルスキープリズムと、
前記正の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶と、前記負の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶と、を含む第2のノマルスキープリズムと、
を含む、
請求項15に記載のエリプソメータ。
【請求項17】
前記第1のノマルスキープリズム及び前記第2のノマルスキープリズムは、前記画像検出器の直前での2つの偏光の分離角度が、長波長側が大きく、短波長で小さくなるように配置されている、
請求項16に記載のエリプソメータ。
【請求項18】
前記複屈折結晶は、水晶、フッ化マグネシウム、サファイア、方解石、αBBOのいずれかを含む、
請求項6~14、16~17のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項19】
前記解析装置は、
前記同心円状の干渉縞を含む画像を、同心円の中心が座標原点となるように極座標に座標変換し、
前記極座標の動径及び偏角を軸とする2次元座標の平面上において2次元フーリエ変換し、
前記2次元フーリエ変換後の周波数空間像において、DC成分とAC成分とに分けてトリミングし、
トリミングした部分を逆フーリエ変換した結果を基にしてΨとΔを求める、
請求項1~14のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項のエリプソメータを備えた、
半導体装置の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリプソメータ及び半導体装置の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エリプソメトリ(ellipsometry)は、1975年にAspnesらによって、自動計測が可能となって以来、測定時間の大幅な短縮と共に精度も大幅に向上し、多波長により計測する分光エリプソメトリも実用化された。これ以降、薄膜や微細構造の非破壊計測において、膜厚などの寸法や屈折率等の光学定数の計測を高精度に行えるという特性を生かして、半導体製造工程でも広く使われるようになった。現在でも、ウェハ上の回路パターンの線幅が10nm以下となる微細構造の寸法(Dimension)を計測するOCD(Optical Critical Dimension)測定装置として、測長SEM(Scanning Electron-beam Microscope)やAFM(Atomic Force Microscope)を相補する形で使用されている。
【0003】
ここ10年ほどで、ロジック(Logic)半導体では、FinFET(Fin Field-Effect Transistor)、メモリでは、3D-NANDなど、半導体回路構造は3次元化が進み、より複雑な構造となってきている。多くのOCDは、分光エリプソメトリを計測原理としており、計測対象である半導体回路構造のDimensionや構成物質の光学定数を求めるためには、モデルを作成して計測対象のDimensionや光学定数を、Floating parameterとして、計測結果にモデルをフィッティングさせて解を得るという手法をとる。そのため、求める対象の構造が複雑になると、Floating parameterの数が増える。例えば、現在のFinFETのOCDによる計測では、20-30個程のFloating parameterを用いる必要がある。エリプソメトリは、一般的に、Ψ及びΔの2つの値を計測結果であるエリプソメトリ係数として得るが、エリプソメトリ係数Ψ及びΔは、共に、波長依存性がある。このため、分光エリプソメトリの場合、エリプソメトリ係数Ψ及びΔは、Ψ(λ)、Δ(λ)と表記することができる。
【0004】
Dimensionの解を求めるためには、Floating parameterの数より多い個数のエリプソメトリ係数Ψ及びΔを計測で得ることが、モデルにフィッティングするために最低限必要であるが、Floating parameterの数が多い場合に発生する問題として、実際のDimensionとは異なったFloating parameterの組み合わせでフィッティングが収束する場合がある。これはカップリングと呼ばれる問題で、これを避けるためには、Floating parameterに対して異なる依存性を持つようなエリプソメトリ係数Ψ及びΔを計測してフィッティングを行うことが有効である。そのため、波長に加え、異なる入射角と入射方位でエリプソメトリ計測を行い、前記のFloating parameterに対して、より異なる依存性を互いに持つエリプソメトリ係数Ψ及びΔが、モデルのフィッティングに使われることが望ましい。
【0005】
また、計測感度という観点からは、半導体ウェハへの照明光において、P偏光の反射率が0となるブリュースター角が最も計測感度が高い。このため、エリプソメトリ計測は、ブリュースター角を入射角として行われることが多い。この入射角は、半導体回路構造ではおおよそ60°から75°に相当する。このような斜入射で計測を行う場合、単一の入射角と入射方位に特化した斜入射光学系を用いて分光エリプソメトリ計測が行われることが多い。しかしながら、前述のカップリングの問題を回避するために、複数の入射角や入射方位に対応可能な光学系への要望が大きくなってきている。
【0006】
この要望に対して、光学系や半導体ウェハを計測ごとに動かしていたのでは、計測時間が非常に長くなってしまう。そのため、前述のブリュースター角を含むような大きなNAを持つ対物レンズを用いて、広い範囲の入射角と入射方位から同時に計測光を入射させる。そして、半導体ウェハからの反射光を対物レンズの射出瞳上に導き、エリプソメトリ計測を行う。このような、瞳画像計測光学系とエリプソメトリ計測の組み合わせが理想と言える。ただし、この場合でも、一般的なエリプソメトリ計測の手法である回転補償子や回転検光子を組み合わせた構成では、取得する瞳画像転送速度の制限によって1波長ごとの計測時間が1秒以上となる。さらに、100波長以上の照明光を用いた分光エリプソメトリ計測を行えば、半導体製造工程でのOCD測定装置としては、非現実的な測定時間となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-085698号公報
【特許文献2】米国特許第5596411号明細書
【特許文献3】米国特許第7616323号明細書
【特許文献4】米国特許第5953137号明細書
【特許文献5】米国特許第6856384号明細書
【特許文献6】特開昭62-197706号公報
【特許文献7】特開2010-002846号公報
【特許文献8】特開2000-331927号公報
【特許文献9】特開2003-279854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体製造工程でのOCD測定装置で使用されるエリプソメータは、典型的には、1点の計測に1秒~数秒の計測時間が必要である。測定に割り当てられた時間から、通常は、ウェハ内で数点から数十点程度しか計測できず、ウェハ内の部分的な膜厚変化や線幅変化による歩留まり悪化を見逃している場合もある。この主な理由としては、回転補償子や位相変調素子による変調と同期して、多数の計測点が必要とされること、分光計測の場合に回折格子等の分散素子で各波長に分かれた光の光量を、高いS/N比で計測する必要があること、さらにミュラー行列エリプソメトリの場合に照明光において数種類の偏光状態を切り替えつつ計測しなければならないことなどがある。
【0009】
これに対して、ウェハ内の測定点を増やすことを目的とし、エリプソメトリの測定を短時間化するためには、回転補償子などの可動部を高速化する必要がある。しかしながら、安定性や発熱等がネックとなり、OCD測定等のためのエリプソメトリ係数測定のスループット(Throughput)を向上させることは困難である。
【0010】
図1は、比較例に係るエリプソメータを例示した構成図である。図1に示すように、特許文献1に記載の比較例のエリプソメータ101は、上述した問題を解決するために考案されたものであり、ノマルスキープリズム131を用いて画像検出器142上で2つの直交する偏光成分を干渉させる。そして、解析装置143は、発生した干渉縞の振幅と位相からΨとΔを求める。このような方法により、半導体製造工程において、高いスループットを実現させ、かつ、可動部がないことによる安定性の高いOCD装置の実用化が期待されている。
【0011】
なお、照明光学系110は、光源111、分光器112、ファイバー113、照明レンズ114、偏光子115、ビームスプリッタ116、対物レンズ117を含み、照明光L1で試料50を照明する。集光光学系120は、対物レンズ117、ビームスプリッタ116、リレーレンズ121及び122を含み、試料50で反射した反射光R1を集光する。偏光光学素子130は、ノマルスキープリズム131を含み、受光光学系140は、検光子141、画像検出器142及び解析装置143を含む。
【0012】
この方法は、エリプソメトリ計測で一般的なストークスパラメータを求めることなく、一つの画像からΨとΔを得ることができる。このため、計測効率もよく、高速の分光器と組み合わせることで分光エリプソメトリも可能である。この計測原理を大NAの対物レンズ117を用いた瞳画像計測に適用することで、同時に多数の入射角と入射方位のエリプソメトリ情報を得ることができ、半導体製造における測定装置としては、理想的な性能を実現できる。
【0013】
図2は、比較例に係る画像検出器142上の干渉縞を例示した図である。図2には、横軸に画像検出器142の位置をとり、縦軸に干渉縞を形成する光の強度をとったグラフを干渉縞に対応させて示している。図2に示すように、比較例のエリプソメータ101は、例えば、X偏光及びY偏光の光を干渉させることにより、画像検出器142上に縦縞の干渉縞を形成する。画像検出器142の中心を通る縦線上において、X偏光、Y偏光の光路長差が0になっている。波長幅が広いと両側の干渉縞のコントラストが低下する。
【0014】
このように、照明光L1として部分コヒーレント光を使用しているために、瞳上に形成される干渉縞の本数を多くした場合には、図2に示すように、原理的に干渉する2つの偏光成分の光路長差が大きい左右両側の領域において、干渉縞のコントラストが低下する。光路長差が大きい領域において、干渉縞のコントラストが低下する現象は、使用可能な干渉縞の本数に上限があるという意味である。
【0015】
図3は、比較例に係る長波長、中波長及び短波長の照明光において、波長幅が同じ場合の干渉縞を例示した図である。図3に示すように、波長幅が同じ場合には短波長の方が干渉縞の本数が多くなるため、短波長ほど干渉縞のコントラストが低くなる。この問題を回避するためには、ノマルスキープリズム131による偏光分離角を小さくするか、短波長での計測時には波長幅を狭くすることが必要である。しかしながら、前者の場合には特に長波長側で縞間隔が広くなるため、瞳上での計測分解能が低下する。後者の場合には短波長における光量が減ってしまうという副作用が発生する。
【0016】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、広い波長域をもつ光源と分光器の組み合わせで計測した場合でも、縞間隔が広くなることによる分解能の低下や、分光器の波長幅を狭くするための光量の低下を抑制し、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができるエリプソメータ及び半導体装置の検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
直線偏光の光を対物レンズに透過させて測定試料を複数の入射角と入射方位から同時に照明し、測定試料で反射した反射光を対物レンズに入射させ、リレーレンズと偏光光学素子部を透過させたのち、対物レンズの瞳共役位置に配置された画像検出器で受光する。
【0018】
偏光解析部は少なくとも2個の1軸性複屈折結晶(例えばフッ化マグネシウム)と直線偏光子から構成されており、1軸性複屈折結晶は結晶光学軸が互いに垂直かつ光軸に対して垂直な2個が組み合わされており、試料での反射時に2つの偏光成分であった光について光軸を中心とした放射方向に分離する。
【0019】
この1軸性複屈折結晶は、それぞれ少なくとも片面が凸面あるいは凹面である球面であり、2個が組み合わされた状態では屈折力を持たない。画像検出器の直前にある直線偏光子(検光子)により結晶で分離された2つの偏光成分は、画像検出器上で互いに可干渉となり、同心円状の干渉縞を形成する。得られた干渉縞画像のコントラストと位相情報を処理してエリプソメトリ計測結果のΨとΔを求める。
【0020】
一実施形態のエリプソメータは、直線偏光、円偏光及び楕円偏光の少なくともいずれかを含む照明光が試料の測定面で反射した反射光のうち、互いに直交する偏光方向の2つの偏光成分を、前記反射光の光学系の光軸を中心にした放射方向に分離する偏光光学素子部と、前記2つの偏光成分を、各前記偏光方向と異なる方向の成分を透過させて干渉させ、同心円状の干渉縞を形成させる検光子部と、前記干渉縞を検出する画像検出器と、検出した前記干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、を備える。
【0021】
また、一実施形態のエリプソメータは、直線偏光を含む照明光が試料の測定面で反射した反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光成分に分離する偏光光学素子部と、各前記偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光成分を透過させて干渉させ、干渉縞を形成させる検光子部と、前記干渉縞を検出する画像検出器と、検出した前記干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、を備え、前記干渉縞の縞ピッチが前記照明光の複数の波長において同じ値となる。
【0022】
さらに、一実施形態の半導体装置の検査装置は、上記エリプソメータを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができるエリプソメータ及び半導体装置の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】比較例に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図2】比較例に係る画像検出器上の干渉縞を例示した図である。
図3】比較例に係る長波長、中波長及び短波長の照明光において、波長幅が同じ場合の干渉縞を例示した図である。
図4】実施形態1に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図5】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、検光子部を透過する直線偏光を例示した図である。
図6】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
図7】実施形態1に係る画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞の解析方法を例示した図である。
図8】実施形態1に係る画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞の解析方法を例示した図である。
図9】実施形態1に係る画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞の解析方法を例示した図である。
図10】実施形態1及び比較例に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
図11】実施形態1に係る照明光学系、集光光学系及び瞳面の配置を例示した斜視図である。
図12】実施形態1に係る瞳面上の位置と、試料への光の入射角及び入射方位との関係を例示した図である。
図13】実施形態1の変形例に係る半導体装置の検査装置を例示した構成図である。
図14】実施形態2に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図15】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞、Radial偏光及びAzimuth偏光を例示した図である。
図16】実施形態2に係る偏光光学素子部を例示した図である。
図17】実施形態3に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図18】実施形態3に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞、Radial偏光及びAzimuth偏光を例示した図である。
図19】実施形態3に係る偏光光学素子部を例示した図である。
図20】実施形態3の変形例1に係る偏光光学素子部を例示した図である。
図21】実施形態3の変形例2に係る偏光光学素子部を例示した図である。
図22】実施形態3の変形例3に係る偏光光学素子部を例示した図である。
図23】実施形態3の変形例4に係る偏光光学素子部を例示した図である。
図24】実施形態4に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図25】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞、X偏光及びY偏光を例示した図である。
図26】複屈折結晶の各材料における複屈折性の波長依存性を例示したグラフであり、横軸は波長を示し、縦軸は、複屈折性を示す。
図27】実施形態4に係る偏光光学素子を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0026】
(実施形態1)
実施形態1に係るエリプソメータを説明する。図4は、実施形態1に係るエリプソメータを例示した構成図である。図4に示すように、エリプソメータ1は、照明光学系10、集光光学系20、偏光光学素子部30、受光光学系40を備えている。エリプソメータ1は、照明光L1が試料50で反射した反射光R1を受光して、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを取得する。
【0027】
照明光学系10は、直線偏光を含む照明光L1で試料50を照明する。照明光学系10は、光源11、分光器12、ファイバー13、照明レンズ14、偏光子部15、ビームスプリッタ16、対物レンズ17を含んでいる。
【0028】
光源11は、照明光L1を生成する。光源11が生成する照明光L1は、広帯域の波長の光を含んでもよい。照明光L1は、例えば、白色光である。なお、光源11が生成する照明光L1は、白色光に限らず、特定の波長を有する単色光または特定の波長幅を有する光でもよい。光源11から生成された照明光L1は、分光器12に入射する。
【0029】
分光器12は、入射した照明光L1から特定の波長幅の光を取り出して出射する。分光器12は、例えば、10nmの波長幅を有する中心波長400nmの光を出射する。分光器12から出射した照明光L1は、ファイバー13に入射する。
【0030】
ファイバー13は、一端及び他端を有するケーブル状の導光部材である。ファイバー13の一端に入射した照明光L1は、ファイバー13の他端から出射する。ファイバー13の他端から出射した照明光L1は、照明レンズ14に入射する。
【0031】
照明レンズ14は、例えば、凸レンズである。照明レンズ14は、入射した照明光L1の角度分布を変化させ、照明光L1を偏光子部15に照射させる。例えば、照明レンズ14は、ファイバー13の他端から出射した照明光L1を平行光に変換する。そして、平行光にした照明光L1を偏光子部15に入射させる。
【0032】
偏光子部15は、光源11から生成された照明光L1が入射される。偏光子部15は、例えば、直線偏光を生成する直線偏光子H1を含む。よって、偏光子部15は、一方向の直線偏光を含む照明光L1を透過させる。例えば、偏光子部15は、偏光方向が紙面に対して45°傾いた直線偏光の照明光L1をビームスプリッタ16に出射する。
【0033】
ビームスプリッタ16は、入射した照明光L1の一部を反射し、一部を透過させる。ビームスプリッタ16は、入射した照明光L1の一部を対物レンズ17に向けて反射する。ビームスプリッタ16で反射した照明光L1は、対物レンズ17に入射する。
【0034】
対物レンズ17は、直線偏光を含む照明光L1で試料50を照明する。対物レンズ17は、ビームスプリッタ16で反射した照明光L1を点状に集光させて試料50を照明する。対物レンズ17は、NAを有している。対物レンズ17は、NA内のあらゆる角度とあらゆる方向から試料50を照明する。対物レンズのNAは、試料50に対してブリュースター角を含む値(例えば、0.95)以上あることが望ましい。
【0035】
対物レンズ17は、照明光L1を透過させるとともに、照明光L1が試料50の測定面で反射した反射光R1を透過させる。本実施形態のエリプソメータ1では、試料50に入射する照明光L1の光軸C、及び、試料50で反射した反射光R1の光軸Cは、試料50の測定面に対して直交している。
【0036】
ここで、エリプソメータ1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。Z軸方向を光軸Cとする。Z軸方向に直交し、相互に直交する2方向をX軸方向及びY軸方向とする。
【0037】
試料50を照明する照明光L1は、一方向の直線偏光を含んでいる。そのような一方向の直線偏光を含む照明光L1は、集光されながら、試料50の測定面に入射する。よって照明光L1が完全偏光でかつ直線偏光である場合には、光軸Cが試料50の測定面に直交する場合に、測定面に入射する方向によって、照明光L1は、P偏光の部分もあれば、S偏光の部分もある。照明光L1におけるP偏光の部分は、P偏光として反射する。照明光L1におけるS偏光の部分は、S偏光として反射する。
【0038】
集光光学系20は、照明光L1が試料50で反射した反射光R1を集光する。集光光学系20は、対物レンズ17、ビームスプリッタ16、リレーレンズ21及び22を含んでいる。対物レンズ17は、照明光学系10の部材でもあり、集光光学系20の部材でもある。試料50で反射した反射光R1は、対物レンズ17の瞳位置23を通過する。なお、瞳位置23は、リレーレンズ21及び22によって、画像検出器42上に再結像する。このように、集光光学系20は、対物レンズ17の射出瞳を画像検出器42上に結像させる。対物レンズ17は、照明光L1が試料50で反射した反射光R1を透過させて、ビームスプリッタ16に入射させる。
【0039】
ビームスプリッタ16は、入射した反射光R1の一部を透過させる。例えば、ビームスプリッタ16を透過した反射光R1は、リレーレンズ21に入射する。
【0040】
リレーレンズ21は、ビームスプリッタ16を透過した反射光R1を集光させ、像を結んだ後にリレーレンズ(relay lens)22に入射させる。リレーレンズ22は、入射した反射光R1を透過させて、偏光光学素子部30に入射させる。
【0041】
偏光光学素子部30は、直線偏光を含む照明光L1が試料50の測定面で反射した反射光R1のうち、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光成分を、反射光R1の集光光学系20の光軸Cを中心にした放射方向に分離する。偏光光学素子部30は、例えば、ウォラストンレンズを含む。偏光光学素子部30は、複数のウォラストンレンズW10及びウォラストンレンズW20を含んでもよい。ウォラストンレンズW10は、2個の複屈折結晶W11及び複屈折結晶W12を含む。ウォラストンレンズW20は、2個の複屈折結晶W21及び複屈折結晶W22を含む。
【0042】
複屈折結晶W11は、1軸性複屈折結晶を含む。複屈折結晶W11は、入射面が平面形状であり、出射面が凹面の球面形状である。複屈折結晶W11は、X軸方向の結晶光学軸を有する。複屈折結晶W12は、1軸性複屈折結晶を含む。複屈折結晶W12は、入射面が凸面の球面形状であり、出射面が平面形状である。複屈折結晶W12は、Y軸方向の結晶光学軸を有する。よって、ウォラストンレンズW10は、相互に嵌合する球面形状を有する2個の1軸性複屈折結晶を含む。ウォラストンレンズW10の各1軸性複屈折結晶の結晶光学軸は、集光光学系20の光軸Cに直交し、かつ、相互に直交する。
【0043】
複屈折結晶W21は、1軸性複屈折結晶を含む。複屈折結晶W21は、入射面が平面形状であり、出射面が凹面の球面形状である。複屈折結晶W21は、Y軸方向の結晶光学軸を有する。複屈折結晶W22は、1軸性複屈折結晶を含む。複屈折結晶W22は、入射面が凸面の球面形状であり、出射面が平面形状である。複屈折結晶W22は、X軸方向の結晶光学軸を有する。よって、ウォラストンレンズW20は、相互に嵌合する球面形状をする2個の1軸性複屈折結晶を含む。ウォラストンレンズW20の各1軸性複屈折結晶の結晶光学軸は、集光光学系20の光軸Cに直交し、かつ、相互に直交する。
【0044】
各複屈折結晶W11、W12、W21及びW22は、材料として、水晶、フッ化マグネシウム、サファイア、方解石、αBBOのいずれかを含んでもよい。偏光光学素子部30において、ウォラストンレンズW10及びウォラストンレンズW20は、屈折力が0である。よって、偏光光学素子部30は、反射光R1を集光または拡散させなくてもよい。
【0045】
ウォラストンレンズW10において、複屈折結晶W11の結晶光学軸と、複屈折結晶W12の結晶光学軸とは、互いに垂直かつ光軸Cに対して直交になるように配置される。例えば、複屈折結晶W11の結晶光学軸は、X軸方向であり、複屈折結晶W12の結晶光学軸は、Y軸方向である。これにより、2つの互いに垂直な偏光(図1ではX偏光とY偏光)は、光軸Cを中心とした放射状に分離して異なる方向に進む。例えば、X偏光は、Y偏光よりも光軸Cから離れた外側に分離される。Y偏光は、X偏光よりも光軸Cに近い内側に分離される。
【0046】
偏光光学素子部30は、さらに、もう一組のウォラストンレンズW20を含んでいる。ウォラストンレンズW20において、複屈折結晶W21の結晶光学軸と、複屈折結晶W22の結晶光学軸とは、互いに垂直かつ光軸Cに対して直交になるように配置される。しかしながら、ウォラストンレンズW20では、各複屈折結晶の結晶光学軸は、ウォラストンレンズW10の各複屈折結晶の結晶光学軸と逆になる。例えば、複屈折結晶W21の結晶光学軸は、Y軸方向であり、複屈折結晶W22の結晶光学軸は、X軸方向である。これにより、2組のウォラストンレンズW10及びW20は、それぞれの偏光を反対方向に分離させ、画像検出器42上で2つの偏光光が再び同一点となるように、配置と曲率半径を設計されている。よって、偏光光学素子部30及び検光子部41を透過した反射光R1の2つの偏光成分は、画像検出器42上の同一点で検出される。
【0047】
受光光学系40は、反射光R1を受光し、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する。受光光学系40は、検光子部41、画像検出器42、解析装置43を有している。検光子部41は、例えば、所定の方向の直線偏光成分を透過させる直線偏光子H2を含む。
【0048】
図5は、実施形態1に係るエリプソメータ1において、検光子部41を透過する直線偏光を例示した図である。図5に示すように、検光子部41は、偏光光学素子部30が分離させたX方向の偏光方向及びY方向の偏光方向と、45[deg]傾いた方向における直線偏光の成分を透過させる。よって、検光子部41は、X方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、X方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。また、検光子部41は、Y方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、Y方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。このように、ウォラストンレンズW20と画像検出器42の間に直線偏光子H2等の検光子部41も配置されている。この直線偏光子H2の透過軸方向は、ウォラストンレンズW10及びW20を形成する2個の1軸性の複屈折結晶のそれぞれの光学軸の中間(45[deg])となる方位に配置される。よって、検光子部41は、互いに直交した2つの偏光線分を、各偏光方向と異なる方向の成分を透過させて干渉させ、同心円状の干渉縞を形成させる。すなわち、2つの偏光線分は、検光子部41を透過することによって、同じ方向(45[deg]傾いた方向)に偏光した偏光成分として出射し、干渉する。
【0049】
画像検出器42は、入射した反射光R1を受光する。画像検出器42は、対物レンズ17の瞳位置23と共役な瞳共役位置24に配置されている。反射光R1は、互いに直交した2つの直線偏光における同じ方向の偏光成分を含んでいる。よって、反射光R1は、画像検出器42上で干渉する。これにより、画像検出器42上に同心円状の干渉縞が形成される。画像検出器42は、検光子部41を透過した各偏光成分の干渉縞を検出する。
【0050】
図6は、実施形態1に係る実施形態1に係るエリプソメータ1において、画像検出器42上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。図6に示すように、画像検出器42上の干渉縞は、同心円状の形状となる。本実施形態において、このような同心円状の干渉縞をウォラストンレンズ干渉縞と呼ぶ。ウォラストンレンズ干渉縞は、X偏光とY偏光との干渉により形成される。ウォラストンレンズ干渉縞において、中心付近の縞間隔は大きく、ブリュースター角で入射した光に対応する瞳の端では細かな縞間隔となる。ウォラストンレンズ干渉縞は、画像検出器42の周辺領域に円状に、X偏光とY偏光の光路長差が0の位置を有している。
【0051】
図7図9は、実施形態1に係る画像検出器42上で干渉した反射光R1の干渉縞の解析方法を例示した図である。図7に示すように、解析装置43は、画像検出器42上に検出された画像を取得する。そして、解析装置43は、取得された点対称の同心円状の干渉縞を含む画像を、同心円の中心が座標原点となるように極座標に座標変換する。次に、解析装置43は、座標変換後の画像を、極座標系の半径(動径)及び方位(偏角)を軸とする2次元座標で表す。解析装置43は、2次元座標の平面上において、2次元フーリエ変換を行い、変換後の周波数空間像において、DC成分とAC成分とに分けてトリミングする。
【0052】
次に、図8に示すように、解析装置43は、DC成分について、ピーク位置を座標原点にシフトした上で逆フーリエ変換を行う。また、図9に示すように、解析装置43は、AC成分について、ピーク位置を座標原点にシフトした上で逆フーリエ変換を行う。解析装置43は、AC成分から、さらに、振幅成分であるAC成分(振幅)と位相成分であるAC成分(位相)を求める。得られたAC成分(位相)は、そのままエリプソメトリ計測のΔに対応する。エリプソメトリ計測のΨは下記の(1)式となる。ここで、DCは、DC成分を示し、AC振幅は、AC成分(振幅)を示す。このようにして、解析装置43は、逆フーリエ変換した結果を基にして、検出した干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する。
【0053】
Ψ=tan-1[DC/AC振幅±√{(DC/AC振幅)-1}] (1)
【0054】
次に、本実施形態の効果を説明する。図10は、実施形態1及び比較例に係るエリプソメータ1及び101において、画像検出器42上で干渉した反射光R1の干渉縞を例示した図である。図10に示すように、干渉縞を利用するエリプソメータ1及び101は、計測に用いる光を、時間的、空間的に部分コヒーレントな光としている。よって、干渉する2つの偏光光の光路長差が大きくなる場所においては、干渉縞のコントラストは、著しく低下する。そのため、瞳内に形成される干渉縞の本数には、波長幅や視野領域に依存して上限がある。
【0055】
図10に示すように、本実施形態のエリプソメータ1で形成される同心円状の干渉縞と、比較例のエリプソメータ101で形成される干渉縞とを比較するために、例えば、両方とも同じ5本程度の縞本数とする。そうすると、比較例の干渉縞は、瞳内で等間隔である。これに対し、本実施形態の干渉縞は、中央付近で疎であり、周辺付近で密である。また、同じ5本の干渉縞が含まれる幅は、比較例では瞳直径であるのに対し、本実施形態では瞳半径である。よって、本実施形態のエリプソメータ1では、比較例のエリプソメータ101に比べて、2倍密に干渉縞を配置することができる。特に、瞳の周辺付近においては、数倍から10倍程度、密に干渉縞を形成することができる。
【0056】
ここで、エリプソメトリ計測における瞳上での重要度を考える。図11は、実施形態1に係る照明光学系10、集光光学系20及び瞳面の配置を例示した斜視図である。瞳面上の位置と試料50への光の入射角と入射方位との関係を例示した図である。瞳上の中心付近には、試料50に垂直に入射した光が到達する。一方、試料50の周辺付近には、試料50に大きな入射角で入射した光が到達する。エリプソメトリ計測においては、後者の斜入射の光がより重要である。特に、入射角が60°~75°にあるブリュースター角付近の照明光L1を用いたエリプソメトリ計測は、最も感度が高い。また、このような入射角の照明光L1は、入射角度依存性と入射方位依存性も大きいため、高い分解能で計測することができる。
【0057】
図12は、実施形態1に係る瞳面上の位置と、試料50への光の入射角及び入射方位との関係を例示した図である。一般的な対物レンズ17のNAの上限であるNA=0.95は、入射角72°に対応し、ブリュースター角をほぼ含んでいる。NA=0.7は、入射角45°に対応する。本実施形態のエリプソメータ1は、瞳上において、より重要な周辺付近に密な干渉縞を形成することができる。したがって、例えば、半導体製造における高精度な計測において、非常に大きな優位性がある。
【0058】
このように、本実施形態のエリプソメータ1は、異なる2つの偏光光から形成される同心円状の干渉縞からΨ及びΔを算出するという特徴的な測定原理を有している。そして、特に、広帯域の光源と分光器を組み合わせて分光エリプソメトリ測定を行う場合には、瞳上の分解能を向上させ、光量を増加させることができるので、測定時間の短縮が期待される。よって、測定精度を向上させ、スループットを向上させることができる。
【0059】
(変形例)
次に、実施形態1の変形例を説明する。本変形例は、上述したエリプソメータ1を半導体装置の検査装置に適用した例である。図13は、実施形態1の変形例に係る半導体装置の検査装置を例示した構成図である。図13に示すように、検査装置1Aは、エリプソメータ1、基台80、アイソレータ81、光学定盤82、ステージ83、ウェハホルダ84、フレーム85、環境チャンバー86、温度コントローラユニット87、基板自動搬送装置88を備えている。エリプソメータ1は、光源11、分光器12、照明光学系10、集光光学系20、偏光光学素子部30、受光光学系40を有している。
【0060】
基台80は、土台となる台である。基台80上に設けられたアイソレータ81は、床面からの振動を除振する。光学定盤82は、アイソレータ81上に設けられている。ステージ83及びフレーム85は、光学定盤82上に配置されている。ステージ83は、ウェハホルダ84に取り付けられたSiウェハ等の試料50を載置される。フレーム85は、光学系を固定する。環境チャンバー86は、エリプソメータ1のいくつかの部材、基台80、アイソレータ81、光学定盤82、ステージ83、ウェハホルダ84、フレーム85等を外部環境から隔離する。温度コントローラユニット87は、環境チャンバー86内を所定の温度に維持する。基板自動搬送装置88は、試料50を搬送する。
【0061】
エリプソメータ1の解析装置43は、カメラ等の画像検出器42からの画像を取り込んで、エリプソメトリ計測の処理を行う。解析装置43は、コンピュータ等の制御部91、画像検出器42からの画像を取り込んで処理をするグラバーボード92、試料50を搭載するステージ83を制御するステージコントローラー93、及び、光源11、分光器12を制御するための光源・分光器コントローラー94を含んでもよい。
【0062】
本変形例の半導体装置の検査装置1Aは、前述のエリプソメータ1を備えている。よって、半導体装置の検査における計測制度を向上させ、スループットを向上させることができる。例えば、半導体製造工程におけるCD計測とOverlay評価において、これまで1ウェハ内で数点の測定であったものを、ウェハ上のショット(Shot)内、チップ(Chip)内、メモリーセル(Memory-cell)内の分布評価まで行うことができる。これにより、半導体装置の製造の歩留まりと生産性向上に貢献し、半導体装置のコスト低減にも繋がる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0063】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るエリプソメータを説明する。本実施形態のエリプソメータは、円偏光を含む照明光L1を用いる。図14は、実施形態2に係るエリプソメータを例示した構成図である。図14に示すように、本実施形態のエリプソメータ2は、偏光子部15の代わりに、偏光子部18を有している。偏光子部18は、照明光L1の光軸を中心にして左回転及び右回転のいずれかに回転する円偏光を生成する円偏光子を含む。円偏光子は、直線偏光子H1及びλ/4波長板H3を含む。
【0064】
また、本実施形態のエリプソメータ2は、検光子部41の代わりに、検光子部44を有している。検光子部44は、左回転及び右回転のいずれかに回転する円偏光成分を透過させる円偏光子を含む。円偏光子は、直線偏光子H2及びλ/4波長板H4を含む。
【0065】
さらに、本実施形態のエリプソメータ2は、偏光光学素子部30の代わりに、偏光光学素子部31を有している。偏光光学素子部31は、複屈折結晶F1を含む。複屈折結晶F1は、集光光学系20において、反射光R1が集光または拡散する位置に配置されている。例えば、複屈折結晶F1は、リレーレンズ21とリレーレンズ22との間において、反射光R1が拡散する位置に配置されている。複屈折結晶F1は、平行平板形状を有する。よって、複屈折結晶F1は、平行な2つの板面を有している。複屈折結晶F1は、1軸性の複屈折結晶である。複屈折結晶F1の結晶光学軸は、板面に直交する方向に配置されている。複屈折結晶F1は、板面を光軸に直交するように配置されている。よって、複屈折結晶F1の結晶光学軸は、集光光学系20の光軸Cに平行である。複屈折結晶F1は、例えば、材料として、αBBOを含む。なお、複屈折結晶F1は、水晶、フッ化マグネシウム、サファイア、方解石のいずれかを含んでもよい。
【0066】
本実施形態のエリプソメータ2において、照明レンズ14によって平行光に変換された照明光L1は、直線偏光子H1を透過し、直線偏光を含むようになる。その後、直線偏光を含む照明光L1は、λ/4波長板H3を透過することにより円偏光を含む照明光L1となる。なお、照明光L1は、楕円偏光を含んでもよい。
【0067】
照明光L1は、ビームスプリッタ16を介して、対物レンズ17を透過する。これにより、対物レンズ17のNA内のあらゆる角度とあらゆる方位から試料50を照明する。この場合の対物レンズ17のNAは、試料50のブリュースター角を含む値以上あることが望ましい。
【0068】
試料50で反射した反射光R1は、Radial偏光及びAzimuth偏光を含む。反射光R1は、対物レンズ17の瞳位置23を通過する。瞳位置23と共役な瞳共役位置24は、リレーレンズ21及び22によって、画像検出器42上に結像する。
【0069】
図15は、実施形態2に係るエリプソメータ2において、画像検出器42上で干渉した反射光R1の干渉縞、Radial偏光及びAzimuth偏光を例示した図である。図15に示すように、反射光R1に含まれたRadial偏光及びAzimuth偏光が複屈折結晶F1を透過した際の作用を考える。まず、Azimuth偏光は、常に、複屈折結晶F1の結晶光学軸に垂直である。よって、Azimuth偏光は、常光である。一方、Radial偏光は、光軸C以外では、偏光方向が光軸Cに対して傾いている。このため、複屈折結晶F1の結晶光学軸と電場とが平行となる異常光を含む。
【0070】
図16は、実施形態2に係る偏光光学素子部31を例示した図である。図16においては、Radial偏光及びAzimuth偏光の伝播状態を説明するために、検光子部44の直線偏光子H2及びλ/4波長板H4を省いている。図16に示すように、本実施形態の偏光光学素子部31において、複屈折結晶F1を透過するRadial偏光及びAzimuth偏光は、屈折率の違いにより、進行方向と位相が相対的に異なる。すなわち、異常光を含むRadial偏光は、常光を含むAzimuth偏光よりも光軸Cから離れる方向に拡がって進む。一方、複屈折結晶F1を透過後は、Radial偏光及びAzimuth偏光は、互いに平行にシフトして進行する。
【0071】
そして、リレーレンズ22を透過後には、Radial偏光及びAzimuth偏光は、画像検出器42上(瞳上)の同じ点に再び戻る。ここで、注意が必要なのは、2つの偏光の位相差もそれぞれ異なる量だけ遅延している。光軸C上ではRadial偏光及びAzimuth偏光は同じ位相であるが、画像検出器42上(瞳上)の周辺部にいくにつれて位相が異なる。
【0072】
画像検出器42とリレーレンズ22との間には、λ/4波長板H4及び直線偏光子H2を含む検光子部44が配置されている。検光子部44は、Radial偏光及びAzimuth偏光の共通の偏光成分のみを透過させる。これにより、検光子部44を透過したRadial偏光及びAzimuth偏光は可干渉となり、画像検出器42上に同心円状の干渉縞を形成する。ここで、Radial偏光は、例えば、半導体ウェハ等の試料50上で、P偏光に対応し、Azimuth偏光は、試料50上でS偏光に対応する。よって、本実施形態のエリプソメータ2は、全方位にわたってP偏光とS偏光に対するエリプソメトリ計測を可能とする構成であり、対称性により計測対象の構造に依存せずに高感度な計測をすることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び変形例の記載に含まれている。
【0073】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るエリプソメータを説明する。前述の実施形態2において、Radial偏光及びAzimuth偏光の光路長差が0の位置は、集光光学系20の光軸C上である。これに対して、本実施形態では、Radial偏光及びAzimuth偏光の光路長差が0の位置を、瞳上でより周辺に配置させる。これにより、干渉縞の縞本数を密にして計測することができる。
【0074】
図17は、実施形態3に係るエリプソメータを例示した構成図である。図17に示すように、本実施形態のエリプソメータ3は、偏光光学素子部31の代わりに、偏光光学素子部32を有している。偏光光学素子部32は、複屈折結晶F1の他に複屈折結晶F2を含んでいる。複屈折結晶F2は、リレーレンズ22と検光子部44との間に配置されている。複屈折結晶F2は、入射面及び出射面を有する板状であるが、入射面が凹の円錐形状及び出射面が凸の円錐形状を有している。複屈折結晶F2は、いわば、両面アキシコンレンズ形状を有している。複屈折結晶F2は、一軸性複屈折結晶を含む。複屈折結晶F2の結晶光学軸は、集光光学系20の光軸Cに平行である。
【0075】
複屈折結晶F2は、複屈折性が複屈折結晶F1と反対となっている。具体的には、複屈折結晶F1及び複屈折結晶F2は、常光の屈折率n(以下、nで示す。)<異常光の屈折率n(以下、nで示す。)、及び、n>nの相互に反対の複屈折性を有する。例えば、複屈折結晶F1が負結晶(n>n)であれば、複屈折結晶F2は、正結晶(n<n)である。複屈折結晶F1が正結晶(n<n)であれば、複屈折結晶F2は、負結晶(n>n)である。
【0076】
図18は、実施形態3に係るエリプソメータ3において、画像検出器42上で干渉した反射光の干渉縞、Radial偏光及びAzimuth偏光を例示した図である。図19は、実施形態3に係る偏光光学素子部32を例示した図である。図18及び図19に示すように、複屈折結晶F1に複屈折結晶F2を加えることにより、画像検出器42上において、Radial偏光及びAzimuth偏光の光路長差0の位置を、光軸Cよりも外側の位置に移動させることができる。なお、図19では、Radial偏光及びAzimuth偏光の伝播状態を説明するために、検光子部44の直線偏光子H2及びλ/4波長板H4を省いている。
【0077】
(変形例1~4)
次に、実施形態3の変形例1~4を説明する。図20図23は、実施形態3の変形例1~4に係る偏光光学素子部33~36を例示した図である。図20図23に示すように、偏光光学素子部33~36が偏光光学素子部32と異なる構成を取った場合でも、偏光光学素子部32と同様の原理により、Radial偏光及びAzimuth偏光の同心円状の干渉縞を画像検出器42上に形成することができる。
【0078】
図20に示すように、変形例1の偏光光学素子部33は、複屈折結晶F1及び複屈折結晶F3を含んでいる。具体的には、変形例1の偏光光学素子部33は、実施形態3の偏光光学素子部32の構成において、複屈折結晶F2を省くとともに、複屈折結晶F1とリレーレンズ22との間に複屈折結晶F3を配置させている。よって、複屈折結晶F3は、集光光学系20の反射光R1が集光または拡散している領域に配置されている。複屈折結晶F3は、平行平板形状の1軸性の複屈折結晶を含む。複屈折結晶F3は、平行な2つの板面を有する。複屈折結晶F3の結晶光学軸は、板面に直交している。複屈折結晶F3は、板面を集光光学系20の光軸Cに直交させるように配置されている。複屈折結晶F3の結晶光学軸は、光軸Cに平行である。
【0079】
複屈折結晶F3は、複屈折性が複屈折結晶F1と反対となっている。具体的には、複屈折結晶F1及び複屈折結晶F3は、n<n及びn>nの相互に反対の複屈折性を有する。例えば、複屈折結晶F1が負結晶(n>n)であれば、複屈折結晶F3は、正結晶(n<n)である。複屈折結晶F1が正結晶(n<n)であれば、複屈折結晶F3は、負結晶(n>n)である。
【0080】
図21に示すように、変形例2の偏光光学素子部34は、両面アキシコンレンズ形状の複屈折結晶F2及びメニスカスレンズ形状の複屈折結晶F4を含んでいる。具体的には、変形例2の偏光光学素子部34は、実施形態3の偏光光学素子部32の構成において、複屈折結晶F1の代わりに、リレーレンズ21とリレーレンズ22との間に配置された複屈折結晶F4を含んでいる。よって、複屈折結晶F4は、集光光学系20の反射光R1が集光または拡散している領域に配置されている。複屈折結晶F4は、入射面及び出射面を有している。複屈折結晶F4は、入射面が凹面の球面形状及び出射面が凸面の球面形状を有する。複屈折結晶F4は、1軸性の複屈折結晶を含む。複屈折結晶F4の結晶光学軸は、集光光学系20の光軸Cに平行となるように配置されている。
【0081】
複屈折結晶F4は、複屈折性が複屈折結晶F2と反対となっている。具体的には、複屈折結晶F2及び複屈折結晶F4は、n<n及びn>nの相互に反対の複屈折性を有する。例えば、複屈折結晶F2が負結晶(n>n)であれば、複屈折結晶F4は、正結晶(n<n)である。複屈折結晶F2が正結晶(n<n)であれば、複屈折結晶F4は、負結晶(n>n)である。
【0082】
図22に示すように、変形例3の偏光光学素子部35は、複屈折結晶F1、複屈折結晶F5、アキシコンレンズ25及び26を含んでいる。具体的には、変形例3の偏光光学素子部35は、実施形態3の構成において、両面アキシコンレンズ形状の複屈折結晶F2の代わりに、凹凸のアキシコンレンズ25及び26で、平行平板状の複屈折結晶F5を挟んだ構成となっている。複屈折結晶F5は、平行平板形状の1軸性の複屈折結晶を含む。複屈折結晶F5は、平行な2つの板面を有している。複屈折結晶F5の結晶光学軸は、板面に直交している。複屈折結晶F5は、板面を集光光学系20の光軸Cに直交させるように配置されている。複屈折結晶F5の結晶光学軸は、光軸Cに平行である。
【0083】
アキシコンレンズ25は、リレーレンズ22と複屈折結晶F5との間に配置されている。よって、アキシコンレンズ25は、複屈折結晶F5の入射面側に配置されている。アキシコンレンズ25は、材料として、例えば、ガラスを含む。アキシコンレンズ25は、入射面が凹の円錐形状及び出射面が平面形状を有する。
【0084】
アキシコンレンズ26は、複屈折結晶F5と検光子部44との間に配置されている。よって、アキシコンレンズ26は、複屈折結晶F5の出射面側に配置されている。アキシコンレンズ26は、材料として、例えば、ガラスを含む。アキシコンレンズ26は、入射面が平面形状及び出射面が凸の円錐形状を有する。
【0085】
複屈折結晶F5は、複屈折性が複屈折結晶F1と反対となっている。具体的には、複屈折結晶F1及び複屈折結晶F5は、n<n及びn>nの相互に反対の複屈折性を有する。例えば、複屈折結晶F1が負結晶(n>n)であれば、複屈折結晶F5は、正結晶(n<n)である。複屈折結晶F1が正結晶(n<n)であれば、複屈折結晶F5は、負結晶(n>n)である。
【0086】
図23に示すように、変形例4の偏光光学素子部36は、複屈折結晶F2、複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7を含んでいる。具体的には、変形例4の偏光光学素子部36は、実施形態3の構成において、複屈折結晶F1の代わりに、複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7を含んでいる。よって、複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7は、集光光学系20の反射光R1が集光または拡散している領域に配置されている。複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7は、平行平板形状の1軸性の複屈折結晶を含む。複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7は、それぞれ、平行な2つの板面を有している。複屈折結晶F6の結晶光学軸及び複屈折結晶F7の結晶光学軸は、板面に平行である。複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7は、板面を集光光学系20の光軸Cに直交させるように配置されている。複屈折結晶F6の結晶光学軸及び複屈折結晶F7の結晶光学軸は、集光光学系20の光軸Cに直交し、かつ、相互に直交する。
【0087】
複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7は、複屈折性が複屈折結晶F2と反対となっている。具体的には、複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7と、複屈折結晶F2とは、n<n及びn>nの相互に反対の複屈折性を有する。例えば、複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7が負結晶(n>n)であれば、複屈折結晶F2は、正結晶(n<n)である。複屈折結晶F6及び複屈折結晶F7が正結晶(n<n)であれば、複屈折結晶F2は、負結晶(n>n)である。このように、実施形態3及び変形例1~4において、偏光光学素子部32~36は、n<n、及び、n>nの相互に反対の複屈折性を有する複屈折結晶を含む。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~2及び変形例の記載に含まれている。
【0088】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係るエリプソメータを説明する。図24は、実施形態4に係るエリプソメータを例示した構成図である。図24に示すように、エリプソメータ4において、偏光子部15は、直線偏光子H1を含み、検光子部41は、直線偏光子H2を含む。偏光光学素子部37は、ノマルスキープリズム131及び132を含む。偏光光学素子部37は、n<nである正の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶と、n>nである負の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶とを含むノマルスキープリズム131と、正の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶と、負の複屈折性を有する1軸性複屈折結晶とを含むノマルスキープリズム132とを含む。よって、偏光光学素子部37は、直線偏光を含む照明光L1が試料50の測定面で反射した反射光R1を、互いに直交する直線偏光方向の2つの直線偏光成分に分離する。検光子部41は、各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光成分を透過させて干渉させ、干渉縞を形成させる。画像検出器42は、干渉縞を検出する。解析装置43は、検出した干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する。
【0089】
図25は、実施形態4に係るエリプソメータ4において、画像検出器42上で干渉した反射光R1の干渉縞、X偏光及びY偏光を例示した図である。図25には、比較例のエリプソメータ101における画像検出器142上で干渉した反射光R1の干渉縞も示している。本実施形態のエリプソメータ4は、実施形態1~3と異なり、X偏光とY偏光の干渉縞を瞳上で1次元状に縦縞に形成させる。ただし、2種類以上の複屈折性の異なる結晶を用いることで、2つの偏光の分離角を波長ごとに変える。より具体的には、ノマルスキープリズム131及び132は、画像検出器42の直前での2つの偏光の分離角度が、長波長側が大きく、短波長で小さくなるように配置されている。よって、本実施形態では、色消しノマルスキープリズム132を含むことで、比較例に比べて、X軸方向の両端のコントラストの低下を抑制することができる。このようにすることで、干渉縞の間隔の波長の違いによる変化を小さくする。よって、広帯域の光源を用いた計測でも、これまでの方法よりも干渉縞の間隔を狭めたり、波長幅を広げたりすることが可能となる。
【0090】
図26は、複屈折結晶の各材料における複屈折性の波長依存性を例示したグラフであり、横軸は波長を示し、縦軸は、複屈折性を示す。図26では、(n-n)/{(n+n)/2}の値を、波長が400nmの場合に1となるように規格化し、αBBO、水晶(Quartz)、フッ化マグネシウム(MgF)、サファイア(Al)、方解石(Calcit)の各材料でノマルスキープリズムを作成した場合の偏光分離角の波長依存性を表している。図26に示すように、フッ化マグネシウムが比較的偏光分離角の波長依存性が小さく、方解石が偏光分離角の波長依存性が大きい。干渉縞の縞ピッチが照明光の複数の波長において同じ値となる。
【0091】
図27は、実施形態4に係る偏光光学素子部37を例示した図である。図27に示すように、ノマルスキープリズム132を方解石とし、ノマルスキープリズム131をフッ化マグネシウムとすれば、画像検出器42直前の偏光分離角は、長波長側で大きく、短波長側で小さくなる。このように設計することで、干渉縞の間隔の波長依存性を小さくすることが可能となる。これ以外の構成及び効果は実施形態1~3及び変形例の記載に含まれている。
【0092】
本発明は、上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1~4及び各変形例の各構成は、相互に組み合わせることができる。また、実施形態1~4及び各変形例のエリプソメータを備えた半導体装置の検査装置も、本実施形態の技術的思想に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1、2、3、4 エリプソメータ
1A 検査装置
10 照明光学系
11 光源
12 分光器
13 ファイバー
14 照明レンズ
15、18 偏光子部
16 ビームスプリッタ
17 対物レンズ
20 集光光学系
21、22 リレーレンズ
23 瞳位置
24 瞳共役位置
25、26 アキシコンレンズ
30、31、32、33、34、35、36、37 偏光光学素子部
40 受光光学系
41、44 検光子部
42 画像検出器
43 解析装置
50 試料
80 基台
81 アイソレータ
82 光学定盤
83 ステージ
84 ウェハホルダ
85 フレーム
86 環境チャンバー
87 温度コントローラユニット
88 基板自動搬送装置
91 制御部
92 グラバーボード
93 ステージコントローラー
94 光源・分光器コントローラー
101 エリプソメータ
110 照明光学系
111 光源
112 分光器
113 ファイバー
114 照明レンズ
115 偏光子
116 ビームスプリッタ
117 対物レンズ
120 集光光学系
121、122 リレーレンズ
130 偏光光学素子
131、132 ノマルスキープリズム
140 受光光学系
141 検光子
142 画像検出器
143 解析装置
C 光軸
H1、H2 直線偏光子
H3、H4 λ/4波長板
F1、F2 複屈折結晶
L1 照明光
R1 反射光
W10、W20 ウォラストンレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27