(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074614
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20230523BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187627
(22)【出願日】2021-11-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】514173696
【氏名又は名称】國家中山科學研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】郭志偉
(72)【発明者】
【氏名】柯政榮
(72)【発明者】
【氏名】陳學儀
(72)【発明者】
【氏名】黄俊彬
(72)【発明者】
【氏名】戴嘉宏
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE08
4G077DA02
4G077ED06
4G077EG11
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法を提供する。
【解決手段】(A)篩にかけた炭化ケイ素原料を黒鉛坩堝の底部にする工程と、(B)グラファイト種結晶台の構成の調整を行う工程と、(C)グラファイト挟持具により炭化ケイ素種結晶を調整が完了したグラファイト種結晶台上にロックする工程と、(D)炭化ケイ素原料及び炭化ケイ素種結晶が充填されている黒鉛坩堝を誘導型高温炉中に載置する工程と、(E)物理気相輸送法により炭化ケイ素結晶体を成長させるフローチャートを応用する工程と、(F)炭化ケイ素単結晶体を獲得する工程と、を含む。本発明はグラファイト種結晶台の表面の幾何学的構成を調整することにより、周囲に結晶粒界が成長しないようにする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)篩にかけた炭化ケイ素原料を黒鉛坩堝の底部に填入する工程と、
(B)グラファイト種結晶台の構成の調整を行う工程と、
(C)グラファイト挟持具により炭化ケイ素種結晶を調整が完了した前記グラファイト種結晶台上にロックする工程と、
(D)前記炭化ケイ素原料及び前記炭化ケイ素種結晶が充填されている黒鉛坩堝を誘導型高温炉中に載置する工程と、
(E)物理気相輸送法により炭化ケイ素結晶体を成長させるフローチャートを応用する工程と、
(F)炭化ケイ素単結晶体を獲得する工程と、を含むことを特徴とする炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項2】
前記グラファイト種結晶台は前記炭化ケイ素種結晶の挟持箇所周縁にスペースを有し、前記スペースは構成の幅、構成の深さ、及び構成の角度を含むことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項3】
前記グラファイト種結晶台は前記炭化ケイ素種結晶を配置する領域に、配置の深さ及び配置の幅をそれぞれ含むことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項4】
前記配置の幅のサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の1.5%であることを特徴とする請求項3に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項5】
前記構成の深さのサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の3%であることを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項6】
前記構成の幅のサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の3%であることを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項7】
前記構成の角度は1°~90°の間の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法に関し、より詳しくは、グラファイト種結晶台の表面の幾何学的構成を調整することで、周囲に結晶粒界が成長しないようにする炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第三世代半導体炭化ケイ素(SiC)及び窒化ガリウム(GaN)といういわゆるワイドバンドギャップ(wide bandgap)半導体が業界及びマスメディアで大きな注目を集めている。その最大の応用はパワー半導体素子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体産業においてパワー半導体はずっと脇役であったが、エネルギー消費量と炭素排出量の削減要求の高まりを受け、電気自動車、太陽光発電、直流グリッド、充電スタンド等の各新興省エネ産業では、高変換効率のパワー半導体が必要とされようになっている。
【0004】
現在市場における炭化ケイ素ウェハーは主に半絶縁性(Semi-insulation)の6インチ及びn型(N-type)の6インチの2つサイズが主流となっている。この2つのタイプは5G通信及び電気自動車市場においてそれぞれ使用され、現在市場で非常に重要な発展目標となっている。この2つのタイプのウェハーは電気的性質の違いやウェハーに使用する軸方向等の仕様が明確に異なっているが、但し、結晶の成長過程では同じ問題に直面している。すなわち、結晶体の周囲に欠陥が生成され、使用可能な面積が狭まってしまう。一般的には、商用研究用の炭化ケイ素ウェハーの欠陥面積は10~30%であり、文献及び炭化ケイ素結晶を成長させた経験に基づくと、結晶の成長過程で結晶体の周囲がグラファイトと接触し、複雑な成長環境が結晶体の周囲に多くの欠陥を誘発した。このため、仕様の10~30%の欠陥が主にウェハーの周囲から発生すると推測される。
【0005】
現在炭化ケイ素結晶の成長はModified-Lely結晶成長法を主とし、黒鉛坩堝内に主に炭化ケイ素種結晶及び炭化ケイ素原料を有し、他のグラファイト部材は各メーカーの専門技術となっている。炭化ケイ素種結晶はグラファイト種結晶台(Platform)に固定し、これを黒鉛坩堝の上部に配置し、炭化ケイ素原料は黒鉛坩堝の底部に配置する。炭化ケイ素種結晶を固定する方法は主に接着及び物理的挟持の2つがある(
図1参照)。
【0006】
接着法は主にグラファイト用接着剤3を炭化ケイ素種結晶2の非成長面に塗布し、この面をグラファイト種結晶台1に接合し、段階的に昇温した後、炭化ケイ素種結晶2をグラファイト種結晶台1に固定する。
【0007】
物理的挟持法はグラファイト種結晶台1に構成を設計し、グラファイト挟持具4(Holder)を使用してねじにより炭化ケイ素種結晶2をグラファイト種結晶台1に固定する。
【0008】
接着法は初期に使用された手法であり、初期の学者は蔗糖を接着剤として使用し、現在ではグラファイト用接着剤により接着を行うものが多い。接着法の仔細は接着剤の調製が重要であり、接着剤が直面する難題は(
図2参照)、グラファイト用接着剤3を高温硬化する際にガスが発生し、ガスが炭化ケイ素種結晶2とグラファイト種結晶台1との間に制限されて排出されず、炭化ケイ素種結晶2とグラファイト種結晶台1との間に多くの気孔5が分布することである。これらの気孔5が炭化ケイ素種結晶2の結晶成長時に温度の分布を不均一にし、成長した単結晶炭化ケイ素6が微小管7に欠陥を生成してしまった。また、グラファイト用接着剤3に発生した気孔5はその分布を制御することが難しく、このため均一性を安定するのが難しく、炭化ケイ素種結晶2及びグラファイト種結晶台1の接触応力の差異が大きくなりすぎ、応力の差異が結晶の成長の堆積過程に影響を及ぼし、転位欠陥の密度が上昇した。
【0009】
図3に示すように、物理的挟持はグラファイト挟持具4を使用してねじにより螺合することで炭化ケイ素種結晶2の周囲を固定する。この方法では応力の不均一性を抑制し、気孔の生成を排除し、接着により発生する問題を解決しているが、周囲を固定することにより成長面積が狭まり、結晶拡張実験には適さなかった。最も致命的な欠点は、周囲に結晶粒界9が成長されてしまい、結晶粒界9は多結晶炭化ケイ素8から派生したものであり、これはグラファイト挟持具4が結晶の成長過程で多結晶炭化ケイ素8がグラファイト挟持具4に堆積することに起因し、成長した単結晶炭化ケイ素6の周囲が影響を受け、単結晶炭化ケイ素6の使用可能面積が大幅に狭まり、多結晶炭化ケイ素8及び結晶粒界9も結晶体が加工で破裂する確率が上昇した。
【0010】
従来技術には炭化ケイ素種結晶に対し加工を行う技術が提示されており、炭化ケイ素種結晶の成長面にグラファイト挟持具に挟持させる箇所を凸設し、炭化ケイ素単結晶の生長過程で炭化ケイ素単結晶を炭化ケイ素多結晶よりも高くなるように持続的に保持し、単結晶炭化ケイ素が多結晶炭化ケイ素及び結晶粒界の欠陥の影響を受けないようにしている。この方法の難点は炭化ケイ素種結晶の取得であり、まず、凸状に加工する炭化ケイ素種結晶は一定の厚さが必要であり、且つ加工で破裂しにくくするために製造コストが大幅に高騰した。
【0011】
以上を総合すると、現在の炭化ケイ素結晶の成長方法には欠陥があり、このため本発明人は苦心して研究を行い、炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法を発展し、結晶体の成長過程で物理的挟持法及び接着法が直面する問題を有効的に解決する。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法を提供することにある。つまり、炭化ケイ素種結晶を物理的に挟持することを出発点とし、炭化ケイ素種結晶が脱落する確率を低下させ、同時にグラファイト種結晶台の表面の幾何学的構成を調整することで、周囲に結晶粒界が成長しないようにし、結晶成長の歩留まりを効果的に高める。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法は、
(A)篩にかけた炭化ケイ素原料を黒鉛坩堝の底部に填入する工程と、
(B)グラファイト種結晶台の構成の調整を行う工程と、
(C)グラファイト挟持具により炭化ケイ素種結晶を調整が完了した前記グラファイト種結晶台上にロックする工程と、
(D)前記炭化ケイ素原料及び前記炭化ケイ素種結晶が充填されている黒鉛坩堝を誘導型高温炉中に載置する工程と、
(E)物理気相輸送法により炭化ケイ素結晶体を成長させるフローチャートを応用する工程と、
(F)炭化ケイ素単結晶体を獲得する工程と、を含む。
【0014】
好ましくは、前記グラファイト種結晶台は前記炭化ケイ素種結晶の挟持箇所周縁にスペースを有し、前記スペースは構成の幅、構成の深さ、及び構成の角度を含む。
【0015】
好ましくは、前記グラファイト種結晶台は前記炭化ケイ素種結晶を配置する領域に、配置の深さ及び配置の幅をそれぞれ含む。
【0016】
好ましくは、前記配置の幅のサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の1.5%である。
【0017】
好ましくは、前記構成の深さのサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の3%である。
【0018】
好ましくは、前記構成の幅のサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の3%である。
【0019】
好ましくは、前記構成の角度は1°~90°の間の範囲である。
【0020】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来のグラファイト種結晶台を示す概略構成図である。
【
図2】従来の炭化ケイ素種結晶の接着剤の固定で問題が発生した概略図である。
【
図3】従来の炭化ケイ素種結晶の物理的挟持の固定で問題が発生した概略図である。
【
図4】本発明の昇華法による炭化ケイ素種結晶を使用する固定方法を示す概略図である。
【
図5】本発明のグラファイト種結晶台を示す撮影例である。
【
図6】本発明と従来のXRTによるウェハー検査を示す撮影例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0023】
図4は本発明の昇華法による炭化ケイ素種結晶を使用する固定方法を示す概略図である。
図5は本発明のグラファイト種結晶台を示す概略図である。
【0024】
本発明に係る炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法は、篩にかけた炭化ケイ素原料を黒鉛坩堝の底部に填入する工程と、次いで、グラファイト種結晶台1’の構成の調整を行い、グラファイト種結晶台1’が炭化ケイ素種結晶2の挟持箇所の周縁にスペース10を有し、このスペース10が構成の幅14と、構成の深さ15と、構成の角度16とを含み、グラファイト種結晶台1’が炭化ケイ素種結晶2を配置する領域に配置の深さ12及び配置の幅13をそれぞれ含み、且つグラファイト挟持具4により炭化ケイ素種結晶2を調整が完了したグラファイト種結晶台1’にロックする工程と、次いで、炭化ケイ素原料及び炭化ケイ素種結晶2が充填されている黒鉛坩堝を誘導型高温炉中に載置する工程と、物理気相輸送法により炭化ケイ素結晶体を成長させるフローチャートを応用する工程と、炭化ケイ素単結晶体を獲得する工程と、を含む。
【0025】
以上、本発明は物理気相輸送法(PVT)を用いて炭化ケイ素単結晶を成長させ、物理的に挟持する炭化ケイ素種結晶2をグラファイト種結晶台1’に載置し、これを黒鉛坩堝の上部に配置する。炭化ケイ素原料は底端に配置し、惰性ガス雰囲気下で0.1~50Torrまで減圧し、且つ2000~2400℃まで加熱して炭化ケイ素原料を昇華させ、温度場を制御しガス源を炭化ケイ素種結晶2の表面で結晶体に生長させる。本発明は物理的挟持を出発点とし、グラファイト種結晶台1’の表面の幾何学的構成を調整することで、周囲に結晶粒界9が成長しないようにし、結晶成長の歩留まりを効果的に高めている。
【0026】
本実施例では、物理気相輸送法は主に高温低圧で炭化ケイ素の昇華点に到達する。気体として昇華した炭化ケイ素を黒鉛坩堝の冷却エリアに向けて堆積させ、この際温度場を制御することで昇華した炭化ケイ素雰囲気11を炭化ケイ素種結晶2に堆積するようにガイドし、炭化ケイ素単結晶が成長を開始する。雰囲気11が全て黒鉛坩堝の上半部に向けて昇華した後、最終的に炭化ケイ素が全て黒鉛坩堝の上端に堆積する。よって、炭化ケイ素種結晶2を黒鉛坩堝の最上端に位置させることにより、雰囲気11として昇華して上端に向けて堆積しないようにしている。
【0027】
本発明の炭化ケイ素種結晶2を固定する方式は初期は物理的挟持を使用し、成長過程で接着に変更する。この際、接着にはグラファイト用接着剤3を使用せず、多結晶炭化ケイ素8を使用する。
図4に示すように、本発明のメカニズムは炭化ケイ素種結晶2を左から右に固定するようになっている。まず、グラファイト種結晶台1’の幾何学的構成を調整してスペース10を形成し、炭化ケイ素種結晶2をその上に物理的に挟持する。次いで、高温低圧で炭化ケイ素を生長させる。この際、スペース10の上方に位置している炭化ケイ素種結晶2が徐々に昇華し、昇華した雰囲気11がグラファイト種結晶台1’の幾何学的構成に沿って多結晶炭化ケイ素8として堆積し、周囲が昇華すると同時に、中心も同期で単結晶炭化ケイ素6が成長する。最終的に、単結晶炭化ケイ素6が周囲の多結晶炭化ケイ素8と接着してグラファイト種結晶台1’に固定される。
【0028】
図5は本発明のグラファイト種結晶台を示す撮影例である。すなわち、グラファイト挟持具を使用して炭化ケイ素種結晶2を調整したグラファイト種結晶台1’に物理的に挟持する。炭化ケイ素種結晶2を配置する領域には配置の深さ12及び配置の幅13をそれぞれ含み、主にグラファイト挟持具4が確実に貼付するようにするために、配置の深さ12のサイズは炭化ケイ素種結晶2の厚さよりもやや小さくする。配置の幅13のサイズは炭化ケイ素種結晶2の直径の大きさによって決定し、本実施例では、主にグラファイト挟持具4が炭化ケイ素種結晶2を湾曲(Bending)するのを防止するために、配置の幅13のサイズは炭化ケイ素種結晶2の直径の1.5%とする。もし過大に湾曲すると炭化ケイ素結晶の成長応力が過大になって欠陥が増加してしまい、ひいては破裂(Crack)を引き起こした。幾何学的構成は構成の幅14と、構成の深さ15と、構成の角度16と、を備え、構成を調整する概念は全て原則に基づいて行う必要がある。すなわち、炭化ケイ素種結晶2の昇華完了時に、多結晶炭化ケイ素8が単結晶炭化ケイ素6に確実に接着する。このため、構成の深さ15が深すぎ、構成の角度16が大きすぎる場合、炭化ケイ素種結晶2の昇華完了時に、単結晶炭化ケイ素6の周囲への多結晶炭化ケイ素8の接着が間に合わなくなり、炭化ケイ素種結晶2が炭化ケイ素原料の表面に直接脱落して失効する。反対に、構成の深さ15が浅すぎ、構成の角度16が小さすぎる場合、多結晶炭化ケイ素8の接着率が高まるが、但し、多結晶炭化ケイ素8がより速く単結晶炭化ケイ素6と接触してしまい、結晶粒界が炭化ケイ素単結晶に影響を及ぼす確率も大幅に上昇し、炭化ケイ素結晶体の使用可能面積が縮小する。構成の幅14、構成の深さ15、及び構成の角度16のデータは同様に炭化ケイ素種結晶2の直径の大きさにより決定し、本実施例では、構成の深さ15のサイズは炭化ケイ素種結晶2の直径の3%とし、構成の幅14のサイズは炭化ケイ素種結晶2の直径の3%とし、構成の角度16は1°~90°の間の範囲とする。これは黒鉛坩堝のサイズは炭化ケイ素結晶体の成長したサイズに基づいて決定し、炭化ケイ素原料の重量及び断面積はサイズの増大に従って増加し、炭化ケイ素結晶体が大サイズに成長した場合、昇華する炭化ケイ素雰囲気11の単位が増加し、多結晶炭化ケイ素8が溢れ出すのを回避するためにさらに広いスペース10が必要になるためである。よって、本発明の精神は、多結晶炭化ケイ素8を単結晶炭化ケイ素6に接着させ、同時に単結晶炭化ケイ素6も相応の厚さに成長させ、全成長過程で単結晶炭化ケイ素6が多結晶炭化ケイ素8よりも高くなるようにし、多結晶炭化ケイ素8が発生させる結晶粒界9が単結晶炭化ケイ素6に影響を及ぼさないようにすることである。
【0029】
図6は本発明と従来のXRTによるウェハーを示す撮影例である。本発明の例では2種類の実験を比較し、A:正規の(Normal)グラファイト種結晶台及びB:調整した(Modify)グラファイト種結晶台をそれぞれ使用している。調整したグラファイト種結晶台のパラメーターは、配置の幅13が2mmであり、構成の幅14が5mmであり、構成の深さ15が約8.7mmであり、構成の角度16が30°である。グラファイト挟持具4を使用して直径6インチ、厚さ1mmの炭化ケイ素種結晶2を正規及び調整したグラファイト種結晶台にロックする。これを3kgの炭化ケイ素原料を含む黒鉛坩堝の上方にそれぞれ装設する。断熱材パックに装設が完了した黒鉛坩堝を加熱炉に入れて成長を行う。成長温度は約2100~2200℃とし、圧力は5Torrとし、70時間成長させた後に約1.5cmの厚さの炭化ケイ素結晶体を獲得する。
【0030】
2つの炭化ケイ素結晶体を種結晶を基準面とし、上方1cmの箇所を切断し、切断したウェハーに対しXRTによる検出を行い、ウェハー周囲の結晶粒界の状況及び使用可能面積の大きさを観察する。
図6に示されるように、左辺は正規のグラファイト種結晶台に成長したウェハーであり、右辺は調整したグラファイト種結晶台に成長したウェハーである。
図6のAの周囲の欠陥がBよりも重大であることは明らかであり、最長で3cm近くになり、使用可能面積が大幅に縮小している。
図6のBでは上方に僅かな欠陥が存在するのみであり、よって、本発明はウェハーの歩留まりを効果的に向上している。
【0031】
以上を総合すると、本発明の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法は、炭化ケイ素種結晶2を物理的に挟持することを出発点とし、炭化ケイ素種結晶2が脱落する確率を低下させ、同時にグラファイト種結晶台1’の表面の幾何学的構成を調整することで、周囲に結晶粒界9が成長しないようにし、結晶成長の歩留まりを効果的に向上している。
【0032】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 グラファイト種結晶台
1’ グラファイト種結晶台
12 炭化ケイ素種結晶
13 グラファイト用接着剤
14 グラファイト挟持具
15 気孔
16 単結晶炭化ケイ素
17 微小管
18 多結晶炭化ケイ素
19 結晶粒界
20 スペース
21 雰囲気
22 配置の深さ
23 配置の幅
24 構成の幅
25 構成の深さ
26 構成の角度
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)篩にかけた炭化ケイ素原料を黒鉛坩堝の底部に填入する工程と、
(B)グラファイト種結晶台の幾何学的構成を調整して炭化ケイ素種結晶の挟持箇所周縁の下方にスペースを形成する工程と、
(C)グラファイト挟持具により前記炭化ケイ素種結晶を前記スペースに物理的に挟持し、次いで、高温低圧で炭化ケイ素を生長させ、この際、前記スペースの上方に位置している前記炭化ケイ素種結晶が徐々に昇華し、昇華した雰囲気が前記グラファイト種結晶台の幾何学的構成に沿って多結晶炭化ケイ素として堆積し、周囲が昇華すると同時に、中心も同期で単結晶炭化ケイ素が成長し、最終的に、前記単結晶炭化ケイ素が周囲の前記多結晶炭化ケイ素と接着して前記グラファイト種結晶台に固定される調整が完了した前記グラファイト種結晶台上にロックする工程と、
(D)前記炭化ケイ素原料及び前記炭化ケイ素種結晶が充填されている黒鉛坩堝を誘導型高温炉中に載置する工程と、
(E)物理気相輸送法により炭化ケイ素結晶体を成長させるフローチャートを応用する工程と、
(F)炭化ケイ素単結晶体を獲得する工程と、を含むことを特徴とする炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項2】
前記スペースは、前記単結晶炭化ケイ素の成長方向に垂直な方向に幅があり、前記単結晶炭化ケイ素の成長方向に深さがあることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項3】
前記グラファイト種結晶台は前記炭化ケイ素種結晶を配置する領域において、前記単結晶炭化ケイ素の成長方向に深さがあり、前記単結晶炭化ケイ素の成長方向に垂直な方向に幅があることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項4】
前記幅のサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の1.5%であることを特徴とする請求項3に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項5】
前記深さのサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の3%であることを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【請求項6】
前記幅のサイズ≧前記炭化ケイ素種結晶の直径の3%であることを特徴とする請求項2に記載の炭化ケイ素単結晶の成長収率を向上する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
1 グラファイト種結晶台
1’ グラファイト種結晶台
2 炭化ケイ素種結晶
3 グラファイト用接着剤
4 グラファイト挟持具
5 気孔
6 単結晶炭化ケイ素
7 微小管
8 多結晶炭化ケイ素
9 結晶粒界
10 スペース
11 雰囲気
12 配置の深さ
13 配置の幅
14 構成の幅
15 構成の深さ
16 構成の角度