(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074632
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】気体の水素化方法及び水素化装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/02 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187651
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】502030271
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰男
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140BA03
(57)【要約】
【課題】CO
2ガス、水蒸気等の気体を処理して水素を発生させた増幅材の残渣から更に水素を発生させて水素を大量に発生せしめる。
【解決手段】反応炉2を加熱しながら炉壁からの電磁波を増幅するためのNaOHを主成分とする増幅材をその中に供給し、リードスクリュー22、24で増幅材を撹拌せしめてその寿命を延ばしつつ処理気体を水素に変換し(第1段階採集)、更に、増幅材の残渣を1000℃~1600℃に加熱する残渣処理釜50内に送って残渣から水素を回収し(第2段階採集)、これにより残渣をほぼ消滅させるとともに大量の水素を採集する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により電磁波を放射する反応炉内に前記電磁波を増幅する増幅する増幅材を入れ、この増幅材を撹拌しながらCO2、水蒸気等の処理気体を反応炉内に供給して処理気体をプラズマ崩壊させ水素を発生せしめ、前記プラズマ崩壊と同時に発生する増幅材と処理ガスの反応物を所定時間運転後に残渣として排出し、この残渣を1000℃以上加熱される残渣処理釜に供給し、残渣処理釜から発生する電磁波により残渣をプラズマ崩壊により水素に変換させる水素化方法。
【請求項2】
前記増幅材はNaOHを主成分とし、残渣は主成分がNa2CO3である請求項1記載の気体の水素化方法。
【請求項3】
前記残渣処理釜は、太陽光を集中させて1000℃以上の熱を得る請求項1記載の気体の水素化方法。
【請求項4】
加熱により電磁波を放射する反応炉とこの反応炉内に供給され、前記電磁波を増幅する増幅材と、前記反応炉内に設けられ、前記増幅材を撹拌する撹拌装置と、反応炉を一定時間運転した後に増幅材の残渣を排出する残渣排出装置と、前記残渣を加熱して処理気体のプラズマ崩壊により水素に変換する残渣処理釜とからなる水素化装置。
【請求項5】
前記撹拌装置は、モータにより回転する回転羽根であり、残渣排出装置は反応炉を傾斜させて振動させる機構からなる請求項4記載の気体の水素化装置。
【請求項6】
前記撹拌装置と残渣排出装置は、正逆回転可能なリードスクリューが兼ねる請求項4記載の気体の水素化装置。
【請求項7】
前記残渣処理釜は、セラミックの本体とこの本体を1000℃以上に加熱する加熱装置とからなり、増幅材の残渣は本体内で気体となり、セラミック本体から放射される高周波数の電磁波によりプラズマ崩壊して水素に変換される請求項4記載の気体の水素化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス、水蒸気、空気等の気体を増幅材を収納した反応炉内のプラズマ雰囲気でプラズマ崩壊させた後、増幅材の残渣を再加熱して水素を発生させるようにした気体の水素化方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は、従来、従来SUS304の反応炉内にNaOH又はKOHからなる反応材を収納し、この反応材を500℃以上に加熱して核反応を生ぜしめることを開示している(特開2014-25743)。
また、従来、反応材としてNaOHとステンレス粉をステンレス容器内に入れ、ステンレス容器を500℃以上に加熱して反応材を微粒子として、この微粒子と反応炉の内壁間で核反応を起こさせるようにしている(国際公開番号WO2012/011499A1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-25743号
【特許文献2】国際公開WO2012/011499A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2においては、ステンレス炉内に反応材としてNaOH、KOH、ステンレス粉を使用し、ステンレス炉を所定温度以上に加熱すれば、核反応が生じて水素が発生させることができることが認識されているが、本件発明者の最近(2020年以降)の実験によれば、反応材は使用中固まってしまい、これにより微粒子の発生が減少するとともに、その反応材は残渣として反応炉内に残留して反応炉が使用不可となることが判明しており、この反応材の寿命を伸ばしたり、最終的に残留してしまう残渣の処理については、何らの対応も開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の気体の水素化方法は、加熱により電磁波を放射する反応炉内に前記電磁波のエネルギーを増幅する増幅材を入れ、この増幅材を撹拌しながら、気化せしめて微粒子とし、この微粒子を電子波で電離させてイオン電子とからなるプラズマ雰囲気とし、このプラズマ雰囲気内にCO2、水蒸気、空気等の処理気体を供給して処理気体と増幅材の微粒子との相互作用により処理気体と微粒子とをプラズマ崩壊させて陽子と中性子と電子とに分離させ、β崩壊後の陽子を含む陽子と電子を再結合させて水素ガスを採集し、前記反応炉を所定時間運転後に増幅材の残渣を炉外に排出し、この残渣を1000℃以上に加熱される残渣処理窯に供給し、残渣処理窯から発生する電磁波により水素に変換させる。
【0006】
また、本発明の処理気体の水素化装置は、加熱により電磁波を放射する反応炉と、この反応炉内に供給され、前記電磁波を増幅する増幅材と、前記反応炉内に設けられ、前記増幅材を撹拌する撹拌装置と、反応炉を一定時間運転した後に増幅材の残渣を排出する残渣排出装置と、前記残渣を加熱してプラズマ崩壊により水素に変換する残渣処理釜とで構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、反応炉内で増幅材を撹拌させたので、増幅材表面に増幅材と処理気体との反応化合物が堆積しても増幅材表面からの微粒子の発生が十分に行われるので、プラズマ崩壊反応が長時間継継続して行われ得る。そして、十分な反応が行われた後に、僅かな量の増幅材は残渣として反応炉内に残るので、その残渣を排出した後に、新たな増幅材が供給されて処理ガスの処理操作が継続される。そして前記残渣は残渣処理釜に送られ、この残渣処理釜は高熱(1000℃~1600℃)に耐えられるように、例えば、セラミックスで構成されている。前記残渣処理釜では、供給された残渣(主としてNa2CO3)は、プラズマ崩壊部で釜壁面から放射される電磁波と高熱により気化して微粒子となり、この微粒子は自ら電磁波の増幅作用をするとともに増幅した電磁波に当った場合にプラズマ崩壊して陽子と中性子と電子に分離する。
【0008】
これら分離した陽子と電子は、プラズマ崩壊部に隣接して形成された再結合部で水素となり、分解した中性子は10分~15分後にはβ崩壊して陽子となり、β崩壊時に発生した電子も再結合部に引き寄せられて水素となる。このように残渣も完全にプラズマ崩壊できるので、捨てる物質はなくなる。なお、残渣釜の熱源として太陽光をフレネルレンズ(直径3~4m)で集光すれば、電気ヒータを使う場合に比較してエネルギー収支効率が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のCO
2等の処理気体の水素変換システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の気体の水素変換システムにおける反応炉の縦断面図である。
【
図3】本発明の気体の水素変換システムにおける残渣処理釜の縦断面図である。
【
図4】本発明の反応炉の他の実施例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の残渣処理釜の他の実施例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1において、本発明のCO
2、水蒸気、空気等の気体の水素化システムSは、例えば、火力発電所、焼却炉、工場等で発生したCO
2を空気から分離して、一旦貯留されるCO
2タンク1を有し、このCO
2タンク1からのCO
2は複数並列配置された反応炉2、2…2に送られ、この反応炉でCO
2がH
2に変換され、このH
2は、H
2タンク3に貯留されて、水素発電、燃料電池等の種々の用途に使用される。
【0012】
前記各反応炉2内には、加熱により発生する電磁波を増幅する増幅材が入れられているが、この増幅材は所定時間使用された後は残渣となり、この残渣は各反応炉2に沿って設けられたコンベア4によって運送され、それに接続されたコンベア5、6を経て高温の残渣処理釜7に送られ、ここで残渣もプラズマ崩壊して殆ど全て水素に変換され、種々の用途に使用され得る。
【0013】
前記反応炉2は
図2に示すように、SUS304製の筒状の本体20を有し、この本体20の外周面は、面状ヒータ21によって400~500℃に加熱され、この加熱により本体壁面からは種々の周波数を有する電磁波w、w、…wが放射される。前本体20の中心には、回転軸22が設けられこの回転軸22はその右端でモータ23に接続され、前記回転軸22には旋回羽根24が設けられ回転軸22と旋回羽根23とでリードスクリューをなしている。前記モータ23は正転逆転が可能であり、前記回転軸22はその先端(左端)が左端板25の軸受26で右端板28の軸受27で回転自在に支持される。前記反応炉2の右端上部にはホッパー30が設けられ、このホッパー30内には前記電磁波wのエネルギーを増幅するための増幅材の主成分としてカセイソーダ粉(NaOH)が収納され、このNaOHは回転弁33の回転によりバッチ式で所定量反応炉内に送給される。反応炉内のNaOHはリードスクリューによってゆっくりと前方に撹拌されながら送られ、NaOHが反応炉2の先端に溜ったら、モータ23を逆転させてリードスクリューを逆転させ、NaOHを反応炉の右端に移動させる。このようにゆっくりと増幅材の主成分としてのNaOH31を撹拌しながら移動させると、右端板28の開口から送られるCO
2等の処理ガスと長時間反応を継続できる。すなわち反応炉2の加熱と電磁波との作用によりNaOHは微粒子となり炉内で飛行しているが、この微粒子はCO
2の一部と反応して、
2NaOH+CO
2→Na
2CO3+H
2O ……(1)
の反応によりNa
2CO
3となり、このNa
2CO
3は固化する傾向にあるが、このNa
2CO
3がリードスクリューにより撹拌されるので、再び微粒子となり反応が継続される。しかしながら前記(1)式は化学的反応であるが、反応炉内でNaOHは微粒子化すると、この微粒子の一部は電磁波により化学結合が切断されて、NaとOとHに分離されるとともに、更に電離してNa
+イオン、O
2-イオン、H
+イオンと電子e
-とで構成されるプラズマ雰囲気となり、この中で高エネルギーの電磁波が発生して炉内に供給された各原子の原子核がプラズマ崩壊して陽子と中性子に分離される。分離後10~15分で中性子は陽子にβ崩壊するので、元々の陽子と中性子から変換した陽子を含む陽子と電子が再結合した場合に水素として排出される。
【0014】
反応炉内の作用をまとめると、炉内は電磁波に寄りNaとOとHのイオンと電子e-とのプラズマ雰囲気が形成され、このプラズマ雰囲気内にCO2が供給されると、その一部は化学的反応により、主としてNa2CO3を形成し、その残りはプラズマ崩壊して陽子、中性子、電子に分離して炉内を飛行する。この場合、陽子と電子がタイミングよく再結合したものは水素として排出されるが、分離した核子(陽子、中性子)の大部分は炉の運転を停止して温度を下げると残渣としてのNa2CO3に吸収される。所定時間運転後にNa2CO3は残渣としてリードスクリューの回転により左端壁の出口29を通ってコンベア4上に排出される。
【0015】
なお、プラズマ崩壊は炉内を負圧にすると活発に起きることが判っているので、炉には真空ポンプ34が設けられ、CO2の注入量はプラズマ雰囲気が負圧で維持されるように真空ポンプの能力とCO2の注入量が調整される。
【0016】
なお、増幅材は必ずしもNaOHのみに限定されず、Zn粉、Al粉、ステンレス粉を加えると効率が向上する。
【0017】
前記反応炉内に設けられたリードスクリューは、増幅材を撹拌する撹拌装置としての機能と増幅材を前後に送る搬送装置としての機能を有するが、これら装置を別個に設けてもよい。すなわち
図4に示すように軸40に単純な平板状の羽根41、41、41を軸40の回転方向に角度をずらして設けたものでもよい。また、前記反応炉2の本体20の左端下部には回動機構42が、本体20の右端下部には上下動機構43が設けられ、上下動機構42により反応炉2を上下動させれば炉内の増幅材は前後に移動する。更に増幅材32を所定時間使用後には前記搬送装置(上下動機構42と撹拌装置)を作動させて、右端壁の下部に設けた排出口44から残渣46を収納する残渣収納箱45に排出する。なお、処理すべき気体はCO
2に限定されず、水蒸気(H
2O)、空気(N
2、O
2)でも水素化が可能である。なお、水蒸気の場合は残渣は水和カセイソーダ(NaOH・H
2O)であり、空気の場合にはN
2Oが残渣となり、CO
2の場合の残渣であるNa
2CO
3の処理よりも単純に処理可能である。
【0018】
次に、残渣処理釜7について説明する。
【0019】
前記残渣処理釜7は、残渣(Na
2CO
3)を気化せしめるための気化部50と、この気化部50から水平に張り出して陽子と電子とを再結合させて水素ガスを発生させるための再結合部51とからなり、前記気化部50内には、コンベア6(
図1)からの残渣を受けて気化部50内に供給するホッパー52が設けられている。前記気化部50及び再結合部51は肉厚の黒鉛材からなる耐熱壁52、53を有し、これら耐熱壁52、53内には伝達ヒータ54,55が配設され、電熱ヒータ54は1600℃迄加熱でき電熱ヒータ55は500℃まで加熱できる。
【0020】
前記再結合部51の上下空間内には、所定間隔でプラスの電極板7、7…7とマイナスの電極板6、6…6が対向配置されており、これら電極板56,57は並列配置された直流電源58、59に接続されスイッチ60の切換により電極のプラス、マイナスを切換可能になっている。そして、前記再結合部の左端壁には、発生した水素ガスを排出する排出口61が設けられている。
次に気化部および再結合部の作用について説明する。
前記気化部50内に送られた残渣としてのNa2CO3は、耐熱壁50が1000~1600℃に加熱されており、しかも耐熱壁50の内壁からは高周波数の電磁波が放射されているので、Na原子、C原子及びO原子に分離し高速で気化部内を飛行しており、この時電磁波に当たるとそれら原子は中性のNa、C、O原子に加えて電離してNa+、Na2+…Nan+のイオン、Cn+イオン、On-イオン及び電子に分離されプラズマ雰囲気となり、ハイデルベルグの不確定原理の範囲内で高エネルギー電磁波が発生し、これにより各中性原子、各イオンがプラズマ崩壊して陽子と中性子と原子に分離する。
【0021】
このようにして分離した陽子と中性子(10分程度でβ崩壊して陽子に変換される)と電子は再結合部51に送り込まれ、陽子-電極近傍に電子は+電極に引寄せられ、1分間に1度切換スイッチ60が切替わり、これに伴ってその電極の極性も変わるので、+電極側の電子は反対側に、また、-電極側の陽子はその反対側に移動するので、陽子と電子は交叉して再結合が生じて水素ガスが排出口61から排出される。
【0022】
前記残渣処理釜7は電気ヒータにより加熱するようになっているが、1000~1600℃の温度を
図5に示すように太陽光を集束させて得ることができる。
図5に示す残渣処理釜70は、セラミック材からなる円筒状の気化部71と、この気化部71から水平に張出した再結合部72を有し、前記気化部71の上面は透明な光透過材73を備え、残渣74は気化部71の側面上部に形成された残渣供給口75から供給される。
前記残渣処理釜70の上方には直径3m~5mのフレネルレンズ76が設けられ、更にフレネルレンズ76の上方には太陽光を遮る遮光板77が開閉自在に設けられ、遮蔽板77を開放した時に、フレネルレンズ76を透過した太陽光は、前記気化部71の残渣74内で焦点を結ぶようになっている。
【0023】
このように集束された太陽光は、1500~2000℃程度に残渣74を加熱するので、この熱と釜のセラミックスの壁からの高エネルギーの電磁波により残渣74は気化するとともに電磁波の作用により電離してプラズマ雰囲気となりプラズマ崩壊して陽子、中性子及び電子に分離し、中性子からβ崩壊した陽子を含む陽子群と電子群とが、再結合部72で電極56、57の作用により再結合して水素ガスとなる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
CO2を大量に排出する石炭、石油産業全般に適用され得る。
【符号の説明】
【0025】
1…CO2タンク
2…反応炉
7…残渣処理釜
23…モータ
56、57…電極板
70…残渣処理釜
73…光透過材
76…フレネルレンズ