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特開2023-7464道路車両の性能を向上させる運転者支援のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007464
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】道路車両の性能を向上させる運転者支援のための方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20230111BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20230111BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230111BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20230111BHJP
   B60W 30/188 20120101ALI20230111BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L7/14
B60L50/60
B60L58/13
B60W30/188
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022100937
(22)【出願日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102021000017087
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ フルメリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ジャコミニ
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ タンクレディ
【テーマコード(参考)】
3D241
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BC01
3D241CA08
3D241CC03
3D241DB02Z
3D241DB20Z
3D241DC43Z
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA08
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC05
5H125BC12
5H125CA01
5H125CB02
5H125EE27
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE55
5H125EE63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】道路車両の性能を向上させる運転者支援のための方法を提供する。
【解決手段】運転者によって運転される道路車両1は、車両用電池パック6に接続された少なくとも1つの電気モータ5によって駆動される、少なくとも2つの駆動輪3を備える。運転者の支援方法は、道路車両1の動的モデルを定義するステップと、道路車両1が走行する走路Tの経路Rを決定するステップと、道路車両1の動的モデル及び経路Rの関数として、電気モータ5による車両用電池パック6のエネルギー使用に関する適時性指標を計算するステップを含む。また、経路Rを、計算された適時性指標の相対値をそれぞれに割り当て、複数の領域7に細分化するステップと、経路Rの各領域7に割り当てられた適時性指標の値にしたがって、駆動輪3に電動出力を供給するステップを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者(DR)によって運転され、対応する車両用電池パック(6)に接続された、少なくとも1つの電気モータ(5)によって駆動される少なくとも2つの駆動輪(3)を備える、道路車両(1)の性能を向上させる運転者支援のための方法であって、
前記道路車両(1)の動的モデルを定義するステップと、
前記道路車両(1)が走行したレース走路(T)の経路(R)を決定するステップと、
前記道路車両(1)の前記動的モデル、及び前記経路(R)の関数として、前記電気モータ(5)による前記車両用電池パック(6)のエネルギー使用に関する、適時性指標(CI)を計算するステップと、
前記計算された適時性指標(CI)の相対値を、それぞれに割り当てる複数の領域(7)に、前記経路(R)を細分化するステップと、
前記経路(R)の走行時間を最適化するために、前記経路(R)の前記領域(7)のそれぞれに割り当てられた、前記適時性指標(CI)の値に従って、前記駆動輪(3)に電動出力を供給するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記適時性指標(CI)が、前記道路車両(1)の速度(Vx)、及び次の制動までの距離(DNB)の関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適時性指標(CI)が、1kWh消費あたりのラップ走行にかかった時間として定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記経路(R)を決定するステップが、前記走路(T)の予備調査ラップ走行実施によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記予備調査ラップ走行に応じて、前記走路(T)の曲率(PC)が、走行距離の関数として検出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記道路車両(1)が前記走路(T)に沿って走行することができる、速度(Vx)の特性(VT)が、前記曲率(PC)及び前記道路車両(1)の前記動的モデルの関数として構築される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記走路(T)の前記経路(R)に沿った制動地点が、前記速度特性(VT)の関数として特定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記走路(T)を走行中に、前記駆動輪(3)に電動出力を供給する際、前記電池パック(6)の再充電容量が考慮される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記駆動輪(3)に前記電動出力を供給する際に、空間的又は時間的な使用区間が考慮され、前記電気モータ(5)の使用対象となる、距離、ラップ走行数、又は時間を規定する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記駆動輪(3)に供給される前記電動出力は、前記使用区間の終わりに前記電池パック(6)の充電を終了するように計算される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記使用区間は、1回のラップ走行、又は限られたラップ走行数に対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記使用区間の数が制限されず、前記駆動輪(3)に供給される前記電動出力は、1回のラップ走行中に同じ電力を再充電できるだけの電動出力を、前記1回のラップ走行において供給するように計算される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記経路(R)が分割される前記領域(7)はそれぞれ、1cm~50mの長さを有し、特別には、前記領域(7)はそれぞれ、50cm~2mの長さを有し、特別には、前記領域(7)はそれぞれ、様々な長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
道路車両(1)であって、
少なくとも2つの駆動輪(3)と、
前記駆動輪(3)を駆動するように構成された、少なくとも1つの電気モータ(5)と、
前記電気モータ(5)に電力を供給し、制動中には前記駆動輪(3)によって得られたエネルギーを蓄積するように構成された、少なくとも1つの車両用電池パック(6)と、を備え、
前記車両(1)が、請求項1に記載の方法を実施することによって、少なくとも前記電気モータ(5)を制御するように構成された、制御ユニット(10)を備えることを特徴とする、道路車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2021年6月29日に出願されたイタリア特許出願第102021000017087号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、道路車両の性能を向上させる、運転者支援のための方法、及び対応する道路車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、走路を走行中の車両の性能(速度、時間、燃費など)は、様々な要因(運転者の技量、気象条件、レース場についての知識不足など)のために、最大化されない。
【0003】
さらに、特に高性能スポーツカーの場合、交通に開放された道路での速度制限は、車の持つ性能よりもはるかに低いことは明らかである。その結果、高性能スポーツカーの性能のごく一部だけが、道路上の通常の運転で使用される。そのため、高性能スポーツカーの所有者は、自身の車が持つ性能を最大限に活用することを試みるために、走路で時折ラップタイムを競うことが、ますます頻繁になってきている。しかしながら、経験の浅い運転者にとって、走路を運転することは、交通に開放された道路を運転する日常の運転とは全く異なるため、非常に複雑なものである。特に、経験の浅い運転者にとって、車の実際の限界を理解することは非常に複雑なものであり、その結果、一方で、自分の車が持つ性能を十分に活用できない可能性があり、他方で、道路から逸脱する危険性がある。このことは、車の保全性及び運転者の安全性の両方にとって潜在的に危険である。
【0004】
さらに、経験の浅い運転者は、走路上でのラップタイムを最小限に抑えるために辿るべき最適な軌道を認識しておらず、したがって、自分のラップ走行能力に満足できない可能性がある。
【0005】
また、近年、性能を重視するために、電気モータで吸熱エンジンを補助する、数々のハイブリッド高性能車両が開発されている。それらの車両では、吸熱エンジンによって伝達されるトルクに加えて、電気モータによって、加速中にさらなるトルクが駆動輪に注入される。しかしながら、そのような電気モータは、一般に、極めて様々な寸法の電池パックによって駆動される。その寸法は、加速を重視することと、車両を可能な限り軽量に保つこととの間の妥協点を見出すために、設計段階で製造業者によって選択される。
【0006】
しかしながら、従来技術の解決策によれば、車両は、各加速時に電池パックによって供給可能な(充電レベルに基づく)最大電力を使用するため、性能を最適化することは制限される。
【0007】
例えば、電気モータは、レース場における最初の段階の間に電池パックの充電を使い果たし、制動下では部分的に再充電することができるのだが、このようにして蓄積された電力は、性能の観点からは不十分なものである。車両は、車両性能の観点での見返りなく、(電気モータ及び電池パックの追加による)かなりの追加重量とともに、経路の相当の部分で競争することを余儀なくされる。このようにして、電池パックのすべての電力が使用されるレースの初期部分を除いて、通常は電池パックのごく一部のみを、制動中及び加速中にそれぞれ再充電及び放電して走行するため、電池パックの残り部分の副次的な重量が決定される。
【0008】
このため、近年の高性能車両では、小型化された電池パックを備えた電力システムを使用する傾向がある。この電力システムでは、ラップ走行中の運転者による減速中及び制動中に、再充電することが容易に管理され、したがって高性能車両における重量増加を、効率的に最大限活用することができる。
【0009】
しかしながら、そのような解決策は、特定のタイプのレース場に対してのみ最適化されている。実際には、電池パックの寸法設定に使用されたレース場よりも短いレース場では、電池パックの寸法は過剰なものとなり、完全に放電することができず、実質上、蓄積されたエネルギーの一部が無駄になる。一方、より長いレース場では、加速時に電気モータによって与えられるわずかな寄与が、経路に沿って分散されるため、ラップタイムへの効果は低減される。
【0010】
最後に、従来技術の解決策では、それらが搭載される車両に最適化するように調整されることが多いが、その車両が各タイプの走路とどのように調和するかは考慮されていない。実際、車両の形状及び構造は、走路の変化に対するその性能にも強く影響し得ることが知られている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、道路車両の性能を向上させる運転者支援のための方法、及び対応する道路車両を提供することである。本方法は、上述の欠点から少なくとも部分的に自由であり、具現化するのが容易で費用効果が高く、特に走路走行中に性能を最大化することを可能にする。
【0012】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載の、道路車両の性能を向上させる運転者支援のための方法、及び対応する道路車両が提供される。
【0013】
特許請求の範囲には、本明細書の不可欠な部分を形成する、本発明の好ましい実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
次に、添付の図面を参照して、本発明の説明を行う。これらの図面は、本発明の非限定的な例示的実施形態を示す。
【0015】
図1】高性能道路車両が走行する、走路経路の概略平面図である。
図2】予備調査ラップ走行中に検出された、走路経路の概略平面図である。
図3】適時性指標を示す、概略グラフである。
図4】経路の曲率特性、それがどのように変化するか、及び道路車両の目標速度特性をそれぞれ示す、3つのグラフを概略的に示す図である。
図5】出力の変動を適時性指標の関数として示す、概略グラフである。
図6】様々な使用区間が設定された、図1の経路の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、参照符号1は、全体として、運転者DRによって運転され、2つの前輪2、及びパワートレインシステム4から駆動トルクを受ける2つの後駆動輪3(したがって、同じ車軸に属する後部車輪)を備える、道路車両を示す。
【0017】
パワートレインシステム4は、特に既知のタイプの吸熱エンジンを補助するものとして、少なくとも1つの電気モータ5を備え、図示されていない。電気モータは、好ましくは、道路車両1の前後方向後方の、横方向中央位置に配置される。前述した電気モータ5は、パワートレインシステム4の残りの部分によって駆動輪3に供給されるトルクに加えて、さらなるトルクを伝達するように、駆動輪3に機械的に接続される。特に、駆動輪3は電気モータ5によって駆動される。この電気モータ5は、車両用電池パック6に(電気エネルギーを相互に交換するように)接続される。
【0018】
道路車両1は、とりわけ、直線路走行中、及びカーブ走行中の両方で、以下でよりよく説明するように、電気モータ5によって駆動輪3に供給されるトルクに介入し、場合によっては道路車両1に搭載されている他の駆動装置と協働して、道路車両1の挙動を調整する電子制御ユニット10(「ECU」)を備える。物理的には、制御ユニット10は、単一の装置、又は互いに分離され、道路車両1のCANネットワークを介して通信する、複数の装置で構成することができる。
【0019】
非限定的な実施形態によれば、本方法は、設計ステップ及び開発ステップにおいて、道路車両1の動的モデルを適宜に定義するステップを含む。「適宜に」という表現は、「その都度」を意味すると理解される。具体的には、(例えば、アクチュエータ又はセンサの追加又は除去を通じて)「動的モデルの変数の数が変更される毎に」、ということを意味すると理解される。
【0020】
有利には、本方法は、道路車両が走行した、走路Tの経路Rを特定するステップを含む。具体的には、制御ユニット10は、走路の経路Rを検出し、経路Rの関数として、最適な軌道を特定するように構成される。具体的には、最適な軌道とは、ラップ走行中の平均速度を最高に維持することのできる軌道である。
【0021】
これが必須ではないが、有利には、走路Tの予備調査ラップ走行を実施することによって、経路Rが決定される。このようにして、本発明の方法の対象を任意の走路T上で使用する際に、各運転者DRを個別に、かつ専用的に又は場合によっては変更して扱うことができる。
【0022】
いくつかの非限定的な実施形態によれば、予備調査ラップ走行を行う最初の試行FAが実施され、その終了時点で、(例えば、走路Tの全長にわたって分散する)開始地点と終了地点との間の誤差が補償され、最終推定値FEが取得される。
【0023】
図2の非限定的な実施形態では、走路Tの経路R(特に、現在の軌道ATJ)は、衛星測位システム(例えばGPS)によって検出される。
【0024】
さらなる非限定的な実施形態によれば、道路車両1は、車両の現在位置を(例えばGPSを使用して)特定することによって、走路Tの経路Rを決定し、かつ、走行すべき経路に関する情報をデータベースから(自律的に)ダウンロードするため、予備調査ラップ走行は不要である。
【0025】
特に、本方法は、制御ユニット10を使用して、かつ道路車両1の動的モデル及び経路Rの関数として、電気モータ5による車両用電池パック6のエネルギー使用に関する、適時性指標CIを計算するステップを含む(適時性指標CIの3次元特性を、概略的かつ非限定的に図3に示す)。
【0026】
有利には、図1の非限定的な実施形態に概略的に示すように、本方法は、経路Rを複数の(連続する)領域7に分割し、制御ユニット10によって計算された適時性指標CIの相対値A、B、C、Dを、それぞれの領域に割り当てることを含む。明らかに、図1の概略図で使用される値、A、B、C、Dは、単純化された非限定的な例を表す。
【0027】
各領域7に割り当てられた適時性指標CIの値、A、B、C、Dに応じて、制御ユニット10は、電気モータ5による電動出力を駆動輪3に供給する。特に、制御ユニット10は、走路Tに沿って、電動出力を供給するのに最も都合の良い、1つ又は複数の(図6の非限定的な実施形態に示すような)ブースト地点BPを決定する。より具体的には、制御ユニット10は、適時性指標CIの値、A、B、C、Dに応じて、各ブースト地点BPに対し、どれだけの電動出力を供給するかを決定する。
【0028】
有利には、図3の非限定的な実施形態に示すように、適時性指標CIは、(好ましくはkm/hで計算される)道路車両1の(長手方向の)速度Vx、及び(好ましくはメートル単位で計算される)次の制動までの距離DNBの、関数として計算される数値である。特に、適時性指標CIは、使用される車両1のモデルに応じて計算される。このようにして、例えば、道路車両1の重量や空気抵抗に基づいて、適時性指標CIを効果的に調整することができる。
【0029】
これが必須ではないが、有利には、適時性指標CIは、車両1によって1kWhが消費される、ラップ走行にかかった時間として定義される。言い換えれば、適時性指標CIは、所与の領域7において「n」kWhを使用する間の、走路Tのラップタイムと、対照的に、電気モータ5によって与えられる増強を使用しない間のラップタイムとの、時間差を示す。
【0030】
図4の非限定的な実施形態に示すように、予備調査ラップ走行中に、又は何らかの形で特定された経路Rに応じて、走路Tの曲率PCは、走行距離Sの関数として検出される。特に、制御ユニット10はまた、走路Tの曲率PCにおける(導出された)変化量PC’を、走行距離Sの関数として検出、又は計算する。
【0031】
これに限定されないが、好ましくは、制御ユニット10は、曲率PC(及びその変化量PC’)の関数として、かつ道路車両の動的モデルの関数として、道路車両1が最適な方法で走路を走行する、目標速度特性VTを構築する。
【0032】
特に、目標速度特性VTの関数として、走路Tの経路に沿った、(時々刻々と変わる次の制動までの残りの距離を含む)制動地点BRKが特定される。より正確には、図4の非限定的な実施形態に示すように、本方法は、制動地点BKPと加速地点APの両方を特定するステップを含む。特に、図3に見られるグラフに示すように、(領域7内の)車両位置と、次の制動地点BRKとの間の距離が大きいほど、電気モータ5の補助増強を使用することがより好都合になる。特に、図3において、曲線の中央頂部は、電池パック6に貯蔵された電気エネルギーを使用するのに、最も好都合な領域を示す。より具体的には、適時性指標CIの分布は、速度Vxの軸に沿った釣鐘型の推移を有する。すなわち、それは道路車両の特定の速度Vx(例えば、150km/h)まで増加し、次いで、速度がさらに上がると減少する。
【0033】
例として、駆動輪3に電動出力を供給するのにより好都合な領域7は、値A(図1)を有する領域7、すなわち、加速地点APに非常に近く、次の制動地点BRKまで非常に遠い、曲線を離れる領域でる。一方、値Dは、次の制動地点BRKにより近く、電力を供給するにはあまり好都合ではない領域を示すと理解される。
【0034】
したがって、上述したように、これが必須ではないが、有利には、各領域7には(例えば、走路Tのメートル毎に)、対応する適時性指標CIが割り当てられる。この指標は、個々の領域7においてエネルギーを消費することがどれだけ好都合であるかを示す(すなわち、道路車両1が、その所与の領域において、エネルギーを注ぎ込まない場合に対し、エネルギー消費にどれだけの時間がかかるかを示す)。
【0035】
好ましくは、駆動輪(3)に電動出力を供給する場合、走路(T)の走行中における、電池パック6の再充電容量が考慮される。
【0036】
いくつかの非限定的な実施形態によれば、適時性指標CIを計算するとき、走路Tの走行中における、電池パック6の再充電容量が考慮される。言い換えれば、指標CIは、ラップ走行中又はその一部において、制動時及び減速時に、どれだけの電気エネルギーが電池パック6に回収されるかを考慮して調整される。
【0037】
他の好ましい非限定的な実施形態によれば、本方法は、道路車両1、特に電池パック6のエネルギー収支を、(適時性指標CIに関わらず)計算するステップを含む。利用可能なエネルギー収支の関数として、(必須ではないが、好ましくは各領域7について)最適なエネルギー閾値が構築される。特に、この最適な閾値は、適時性指標CIの最適な基準値を(s/kWhで)示すものである。より詳細には、制御ユニット10は、ある領域7について、適時性指標CIの値が最適なエネルギー閾値を超えている場合、駆動輪により多くの(すべての)動力を伝達するように、電気モータ5を制御する(すなわち、電気モータ5を使用して動力を注入する)。
【0038】
特に、適時性指標CI及び/又はエネルギー収支を計算するとき、電気モータ5の使用対象となる、距離、ラップ走行数、又は時間を規定する、空間的又は時間的な使用区間が考慮される。
【0039】
これが必須ではないが、有利には、適時性指標CI及び/又はエネルギー収支は、使用区間の終わりに電池パック6の充電を終了するように計算される。
【0040】
いくつかの非限定的な事例では、使用区間は、1回のラップ走行、又は限られたラップ走行数に対応する。例えば、1回のラップ走行に対応する使用区間に限定する場合、制御ユニット10は、好ましくは適時性指標CIに関連して電力供給を調整することによって、そのラップ走行中に電池パック6で利用可能なすべての電力を供給するように、電気モータ5を制御する。
【0041】
別の例によれば、この使用区間は5回のラップ走行であり、したがって、制御ユニット10は、適時性指標CIに関連して、(例えば、所与の領域7において最適エネルギー閾値を超過する、又は不足する場合に)出力調整することによって、並びに、好ましくは各ラップ走行中にどれだけの電気エネルギーが回収されるかを考慮することによって、5回のラップ走行全体に電力供給を分配して、電池パック6で利用可能なすべての電力を供給するように、電気モータ5を制御する。言い換えれば、この方法は、モータ5が走路Tの各ラップ走行(又は各領域7)に費やすことのできる、特定のエネルギー収支を割り当てることを含む。
【0042】
他の非限定的な事例では、使用区間の数は制限されず、したがって、適時性指標CI及び/又はエネルギー収支は、走路Tの1回のラップ走行において、(電気モータ5によって)電動出力を供給し、前述のラップ走行中に同じ電力を再充電できるように計算される。
【0043】
これが必須ではないが、有利には、本方法は、運転者DRが、実行すべき所定のミッションに基づき、インターフェース装置(例えば、小型ハンドレバー、スクリーン、音声コマンドシステムなど)を用いて、所望の使用区間を車両1、特に制御ユニット10に伝達する、さらなるステップを含む。
【0044】
いくつかの非限定的な実施形態によれば、経路が細分化された各領域7は、1cm~50mの長さを有し、特別には、各領域7は、50cm~2mの長さを有し、より特別には、各領域7は、約1メートルの長さを有する。
【0045】
いくつかの非限定的な事例において、各領域7は様々な長さを有し、特に、その区画における走路の曲率PCが大きいほど、領域7の長さは短くなる。
【0046】
図5に示す非限定的な実施形態のグラフでは、道路車両の速度Vx(x座標軸)、及びその加速度Ax(y座標軸)が表される。特に、関数SPは、道路車両1のパワートレインシステム4の(例えば、吸熱エンジンのみによって供給されるトルクによる)基本出力を示し、関数FPは、モータ5を含む道路車両1のパワートレインシステム4の全出力を示す。特に、この図は、ユニット10によって電気モータ5が作動することで、一方の関数から他方の関数へ移行することを示している。具体的には、区間BZは、所与の領域7に沿った電気モータ5のブースト区間を表し、これは、進行方向のブースト地点BPから特定の時間間隔(例えば、1秒)にわたって供給される、トルクの差を決定するものである。
【0047】
いくつかの非限定的な事例では、各領域7は直線路であり、各領域7を基本出力SPの状態で走行するために使用される時間、並びに、全出力FPの状態で走行するために使用される時間が計算される。
【0048】
いくつかの非限定的な実施形態によれば、モータ5は、デジタル制御(すなわち、バイナリ制御、オン/オフ制御)でユニット10によって作動される。
【0049】
図6に示すような他の非限定的な実施形態によれば、モータ5によって供給される補助トルクは、適時性指標CIの値に応じて調整することができる。
【0050】
上記の発明は、特に極めて具体的な例示的実施形態に言及しているが、そのような例示的実施形態に限定されると見なされるべきではない。例えば、2つの駆動輪それぞれの電動化、レース場を検出する様々な方法、又は適時性指標を計算する様々な方法などが、添付の特許請求の範囲が対象とする、すべての変形、修正、又は簡略化の範囲内にある。
【0051】
上述の制御方法には、多くの利点がある。
【0052】
第1に、上述の方法では、走路のラップ走行に費やすことができるエネルギー収支が定義されると、ラップ走行時間を最小化することが可能となり、運転者の側で特定の対策又は措置を必要とせずに、大幅に性能が改善される。
【0053】
さらに、上述の方法では、ラップタイムをさらに短縮するように、少なくとも1つの電気モータを備える自動車の電池パックを、最適な方法で寸法設定することが可能となり、電池パックの重量と性能との間の、適正な妥協点が見出される。
【0054】
加えて、上述の制御方法では、道路車両だけでなく、走路の構造にも応じて電動出力の供給を調整することができるため、さらなる性能向上が可能となる。
【0055】
さらに、上述の制御方法では、限定された、特定の数のラップ走行、又は単に「エンドレス式」のテスト走行など、車両によって実行されるミッションに応じて、レース中に最高な形で電池パックの電力を使用することが可能となる。
【0056】
最後に、上述の制御方法では、物理的構成要素を追加する必要がなく、ソフトウェアによって完全に実行することができるため、駆動輪に動力を供給する電気モータを備えた道路車両1への実装が簡単であり、費用効率が高い。
【0057】
上記の制御方法は、大規模な計算能力、又は大容量のメモリを必要とせず、したがって、アップデート又はアップグレードを必要とせずに、既知の制御ユニットに実装できることに、留意することが重要である。
【符号の説明】
【0058】
1 道路車両
2 前輪
3 後輪
4 パワートレインシステム
5 電気モータ
6 電池パック
7 領域
10 制御ユニット
A CI値
AC 加速地点
AP 加速地点
ATJ 現在の軌道
Ax 加速度
B CI値
BP ブースト地点
BRK 制動地点
BZ ブースト区間
C CI値
CI 適時性指標
D CI値
DNB 次の制動までの距離
FA 第1の試行
FE 最終推定値
FP 全出力
PC 走路曲率
PC’ 走路曲率の変化量
R 経路
S 走行距離
SP 基本出力
T 走路
Vx 速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】