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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074651
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】包装用紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/00 20060101AFI20230523BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20230523BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230523BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B32B29/00
B32B27/10
B32B27/40
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187677
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼子 了
(72)【発明者】
【氏名】松本 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】名越 応昇
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB05
3E086BB61
3E086BB62
3E086BB71
4F100AA03B
4F100AA03H
4F100AC05B
4F100AC05H
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4F100AK25G
4F100AK51B
4F100AK51J
4F100AK71C
4F100AK71G
4F100AK71J
4F100AL01C
4F100AL01G
4F100AL01J
4F100AT00
4F100CB03C
4F100CB03G
4F100CB03J
4F100DG10A
4F100EH411
4F100EH41A
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4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ42B
4F100EJ42C
4F100GB15
4F100JD03B
4F100JD03H
4F100JJ10A
4F100JJ10B
4F100JJ10C
4F100JL12C
4F100JL12J
(57)【要約】
【課題】ヒートシール性を有し、耐熱変形性に優れ、及び酸素バリア性に優れる包装用紙を提供することである。
【解決手段】課題は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対してバリア層と、紙基材を基準として前記バリア層の外側に対してヒートシール層とを有し、前記バリア層が無機層状鉱物及びポリヒドロキシウレタンを含有する包装用紙によって、解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対してバリア層と、紙基材を基準として前記バリア層の外側に対してヒートシール層とを有し、前記バリア層が無機層状鉱物及びポリヒドロキシウレタンを含有する包装用紙。
【請求項2】
前記無機層状鉱物が、マイカを含む請求項1に記載の包装用紙。
【請求項3】
前記マイカのアスペクト比が100以上である請求項2に記載の包装用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール性を有する、紙を基材とする包装用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプラスチック等の環境汚染問題から、包装材料の基材にプラスチックシートを採用せず、紙を基材にする包装用紙が既に存在する。例えば、紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層以上の塗工層を有し、かつ前記塗工層の最表面がヒートシール層であり、前記ヒートシール層と紙基材の間に少なくとも1層のバリア層を有する包装用紙であって、前記バリア層がポリヒドロキシウレタンを含むことを特徴とする、酸素バリア性のある包装用紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。但し、特許文献1に記載された包装用紙では、JIS K7126-1:2006に準拠して包装用紙の酸素透過度を、試験条件20℃及び80%下で、包装用紙の両面に接着剤で無延伸ポリプロピレンをラミネートした試験片を用いて酸素透過度測定装置で測定し、酸素透過度が100cc/m・day・atm以下が酸素バリア性が有とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-138434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるが如くの包装用紙は、包装用紙を測定した場合の酸素バリア性が未だ不十分である。
また、ポリヒドロキシウレタン等のポリウレタンはバリア性を有する樹脂であるものの熱変形が大きいために、樹脂の主成分としてポリウレタンを含有するバリア層に対してヒートシール層を設けた包装用紙では、ヒートシールを行うとバリア層が熱変形し、結果としてヒートシール部に皺、ズレ及びヨレを発生して外観に劣る場合がある。特に、紙基材である包装用紙は、基材がプラスチックシートである包装材料に比べて皺、ズレ及びヨレを発生し易い。また、ポリウレタンは、ポリ塩化ビニリデン等の従来公知のバリア性を有する樹脂に比べて有害性が低いものの、ポリウレタンの分子構造からバリア性が相対的に高くない。
【0005】
本発明の目的は、ヒートシール性を有し、樹脂の主成分としてポリウレタンを含有するバリア層で耐熱変形性に優れ、酸素バリア性に優れる包装用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、樹脂の主成分としてポリウレタンを含有するバリア層でありながら、耐熱変形性及び酸素バリア性に優れる包装用紙について鋭意検討を行った。結果、本発明の構成を見出し、本発明の目的を達成するに至った。
【0007】
[1]紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対してバリア層と、紙基材を基準として前記バリア層の外側に対してヒートシール層とを有し、前記バリア層が無機層状鉱物及びポリヒドロキシウレタンを含有する包装用紙。
【0008】
[2]上記無機層状鉱物が、マイカを含む上記[1]に記載の包装用紙。
【0009】
[3]上記マイカのアスペクト比が100以上である上記[2]に記載の包装用紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装用紙は、ヒートシール性を有し、樹脂の主成分としてポリウレタンを含有するバリア層で耐熱変形性に優れ、酸素バリア性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
包装用紙は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対してバリア層を有する。なおかつ、包装用紙は、紙基材を基準として前記バリア層の外側に対してヒートシール層を有する。包装用紙の実施形態では、包装物及び収納物と対向する包装用紙の面が包装用紙のヒートシール層及びバリア層を有する側である。いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材の両面にバリア層及びヒートシール層を有する。この理由は、表裏関係なく使用できるため取り扱いに優位であるからである。いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材の片面に対してのみバリア層及びヒートシール層を有する場合、紙基材におけるこれら層を有する側の反対面に対してグラビア印刷機若しくはデジタル印刷機に対する印刷適性のための又は寸法安定性のための従来公知の塗工層を有する。また、いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材とバリア層との間にバリア性をさらに向上するための又は紙基材が有する空隙を目止めするための、顔料及び樹脂を含有する従来公知の塗工層を有する。少なくとも一つの実施態様において、包装用紙は、紙基材とバリア層との間に顔料及び樹脂を含有する塗工層を有しない。この理由は、製造コストの観点で優位であるからである。
【0012】
ヒートシール層は、ヒートシール性を有する樹脂を含有する。前記ヒートシール性を有する樹脂は、特に限定されず、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂及び変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレンブタジエン系共重合樹脂、並びにスチレンアクリル系共重合体及びエチレンアクリル系共重合体等のアクリル系樹脂等を挙げることができる。ヒートシール層は、1層又は2層以上の層構成である。いくつかの実施態様において、ヒートシール層は1層である。この理由は、製造コストの観点で優位であるからである。
いくつかの実施態様において、包装用紙は、バリア性のさらなる向上のためにバリア層とヒートシール層との間に水蒸気バリア層及びガスバリア層等の従来公知の他バリア層を有する。少なくとも一つの実施態様において、包装用紙は、バリア層とヒートシール層との間に他バリア層を有しない。この理由は、製造コストの観点で優位であるからである。
【0013】
ヒートシール層は、ヒートシール性を有する樹脂以外に必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、無機顔料、有機顔料、パラフィンワックス等のワックス類、ヒートシール性を有する樹脂以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類等の多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、紫外線吸収剤、並びに蛍光剤等を挙げることができる。
【0014】
いくつかの実施態様において、ヒートシール層の塗工量は、紙基材の片面あたり乾燥固形分として5g/m以上25g/m以下である。この理由は、ヒートシール性が安定して得られ、かつ紙基材の空隙に起因してバリア層に生じる可能性がある層の欠陥を塞ぐことができるからである。
【0015】
紙基材は、木材パルプ及び/又は非木材パルプから成るスラリーに対して填料、サイズ剤、バインダー、定着剤、歩留り剤及び紙力剤等の各種添加剤を必要に応じて添加した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性の条件で従来公知の抄紙方法によって抄造した抄造紙、前記抄造紙をサイズプレス液でサイズプレス処理した原紙、前記抄造紙を表面処理液で表面処理した原紙、又は前記抄造紙若しくは前記原紙に対してカレンダー処理を施した普通紙である。上記紙料には、その他の添加剤として顔料分散剤、嵩高剤、増粘剤、流動性改良剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、保湿剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤等から選ばれる一種又は二種以上を、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜添加することができる。
加えて紙基材は、例えば、前記抄造紙、前記原紙又は前記普通紙に塗工層を設けた塗工紙、クラフト紙、片艶紙及びトレーシングペーパー等を挙げることができる。
【0016】
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性及び厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置は、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、及びマルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0017】
木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプは、例えば、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)及びNBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)等の化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)及びCGP(ChemiGroundwood Pulp)等の機械パルプ、並びにDIP(DeInked Pulp)等の古紙パルプを挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維からなるパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。
木材パルプ及び/又は非木材パルプは、前記木材パルプ及び前記非木材パルプから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0018】
填料は、製紙分野で従来公知の顔料である。顔料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、シリカ、珪酸アルミニウム、珪藻土、活性白土、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料を挙げることができる。さらにスチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂及びマイクロカプセル等の有機顔料を挙げることができる。填料は、前記無機顔料及び前記有機顔料から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
いくつかの実施態様において、紙基材は、填料を実質的に含有しない。この理由は、包装用紙の酸素バリア性が良化するからである。ここで、「填料を実質的に含有しない」とは、填料を含有することによって紙の透気性を上げてしまう程の含有量未満を指す。例えば、填料は、紙基材中のパルプ100質量部に対して0.5質量%未満である。
【0019】
いくつかの実施態様において、紙基材の灰分は3質量%以下である。この理由は、紙基材の灰分が3質量%以下であれば紙基材自身の透気性が低下するために、得られる包装用紙の酸素バリア性にとって優位になるからである。紙基材の灰分は、ISO1762:2001「Paper, board and pulps - Determination of residue(ash) on ignition at 525 degree C」に準拠して求められる値である。
【0020】
サイズ剤は、製紙分野で従来公知の内添サイズ剤である。内添サイズ剤は、例えば、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、中性ロジン系サイズ剤及びカチオン性スチレンアクリル系サイズ剤等を挙げることができる。
また、サイズプレス液に用いる表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤は、例えば、澱粉系サイズ剤、セルロース系サイズ剤、ポリビニルアルコール系サイズ剤、スチレンアクリル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレンマレイン酸系サイズ剤、及びアクリルアミド系サイズ剤等を挙げることができる。
【0021】
サイズプレスは、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置を用いたサイジング処理である。サイズプレス装置は、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス及びブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー及びスピードサイザーを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーターを、さらにビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、並びにカレンダーサイズプレス等を挙げることができる。
【0022】
バリア層は、無機層状鉱物及びポリヒドロキシウレタンを含有する。バリア層は、ポリヒドロキシウレタンから成るバリア層に対して無機層状鉱物を配合することによって、優れた耐熱変形性及び酸素バリア性を得ることができる。いくつかの実施態様において、無機層状鉱物は、バリア層中の含有量が該バリア層中のポリヒドロキシウレタン100質量部に対して50質量部以上200質量部以下である。この理由は、耐熱変形性及び酸素バリア性が良化するからである。
【0023】
無機層状鉱物は、平面方向に成長した結晶面が層状に重なった層状骨格を有して劈開性を有する天然又は合成の鉱物から得られる平板状の無機顔料である。無機層状鉱物は、例えば、カオリン、マイカ、パイロフィライト、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン及びアルミナ等を挙げることができる。無機層状鉱物に該当しない無機顔料は、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム及びシリカ等の塗工紙分野で従来公知のものを挙げることができる。
【0024】
いくつかの実施態様において、バリア層は、無機層状鉱物としてマイカを少なくとも含む。少なくとも一つの実施態様において、バリア層は、バリア層中の無機層状鉱物を含む無機顔料に対してマイカの含有量が10質量%以上である。これらの理由は、耐熱変形性及び酸素バリア性が良化するからである。このような効果を発現する理由は不明であるものの、本発明者らは以下を推察する。マイカは、熱に対する安定性及び耐熱性を有するためにバリア層の耐熱変形性に対して作用効果を有する。また、マイカは、結晶がフィルムのような弾力性を有するためにマイカの層状の粒子間にポリヒドロキシウレタンが侵入し易く、結果として酸素バリア性に優れた層を形成する。
【0025】
マイカは、雲母とも称されるケイ素を主成分とする鉱物の一種であって、天然物と合成物とがある。マイカは、天然の雲母原鉱を工業的に精製及び加工したものであって、例えば、粉砕、洗浄、除鉄及び分級等の工程を経て製造されるものである。また、マイカは、例えば、珪砂、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪フッ化カリウム及び珪フッ化ナトリウム等の原料を加熱して熔融合成して製造されるものである。
いくつかの実施態様において、マイカは、アスペクト比が100以上である。少なくとも一つの実施態様において、マイカは、アスペクト比が680以上である。これらの理由は、酸素バリア性が良化するからである。マイカのアスペクト比は、上限を特に限定しない。いくつかの実施態様において、マイカのアスペクト比は、2000以下である。この理由は、材料コスト及び入手の容易性の観点で優位だからである。マイカは、例えば、トピー工業社及びヤマグチマイカ社等から市販される。
【0026】
いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対してバリア層と、紙基材を基準として前記バリア層の外側に対してヒートシール層とを有し、前記バリア層がマイカ及びポリヒドロキシウレタンを含有する。少なくとも一つの実施態様において、包装用紙は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対してバリア層と、紙基材を基準として前記バリア層の外側に対してヒートシール層とを有し、前記バリア層がマイカ及びポリヒドロキシウレタンを含有し、前記マイカのアスペクト比が100以上である。
【0027】
アスペクト比は、例えば、体積基準の平均粒子径と数平均粒子厚みとから算出することができる。アスペクト比は、下記式によって計算される値である。
[アスペクト比]=[体積基準の平均粒子径(μm)]/[数平均厚み(μm)]
ここで、「体積基準の平均粒子径」は、例えば、無機層状鉱物100mgを秤量して、水中に分散させた後、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、日機装社レーザー回折/散乱式粒度分布測定器Microtrac MT3300EXII)を用いて求める。また、「数平均厚み」は、例えば、走査型電子顕微鏡により2000倍の倍率で観察した無機層状鉱物の画像から無作為に選んだ10個の厚みを測定し、その平均から求める。
【0028】
いくつかの実施態様において、バリア層は、マイカ以外の無機層状鉱物としてカオリンを含有する。この理由は、酸素バリア性が良化する場合があるからである。
カオリンは、無機顔料の一種である。カオリンは、天然に産出されたカオリン原鉱を工業的に精製及び加工したものであって、例えば、粉砕、洗浄、除鉄及び分級等の工程を経て製造されるものである。また、アスペクト比を向上させるためにせん断力をかけて薄板状としたデラミネーティッドカオリンや、粒度分布がシャープになるよう調整したエンジニアードカオリン、凝集性を高めた焼成カオリンといった加工性の高いものも含まれる。
いくつかの実施態様において、カオリンは、アスペクト比が15以上である。この理由は、酸素バリア性が良化するからである。カオリンのアスペクト比は、上限を特に限定しない。いくつかの実施態様において、カオリンのアスペクト比は、100以下である。この理由は、材料コスト及び入手の容易性の点で優位だからである。カオリンは、例えば、BASF社、兵庫クレー社、KaMinLLC社及びイメリス社等から市販される。
【0029】
ポリヒドロキシウレタンは、従来公知の側鎖に水酸基を有するウレタン系樹脂をいう。ポリヒドロキシウレタンは、例えば、特開2021-146519号公報、特開2018-070841号公報及び特開2012-172144号公報等に記載されるが如くのウレタン系樹脂である。いくつかの実施態様において、ポリヒドロキシウレタンは酸価が5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である。この理由は、酸素バリア性が良化するからである。酸価は、JIS K1557-5:2007「プラスチック -ポリウレタン原料ポリオール試験方法- 第5部:色数,粘度,酸価及びpHの求め方」に準拠して滴定法によって測定した、樹脂1gあたりの各官能基の含有量をKOHのmg当量で表した値である。
ヒドロキシポリウレタン及びポリウレタンは、例えば、三井化学社、DIC社、大日精化工業社及びトーヨーケム社等から市販される。
【0030】
バリア層は、無機層状鉱物及びポリヒドロキシウレタン以外に必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、無機層状鉱物以外の無機顔料、有機顔料、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ブタジエン系共重合樹脂、酢酸ビニル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂等のポリヒドロキシウレタン以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類等の多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、並びに耐水化剤等を挙げることができる。
【0031】
いくつかの実施態様において、バリア層の塗工量は、紙基材の片面あたり乾燥固形分として8g/m以上28g/m以下である。この理由は、酸素バリア性が良化するからするからである。
【0032】
紙基材に対してバリア層を設ける方法は、特に限定されない。紙基材に対してバリア層を設ける方法は、例えば、製紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて、バリア層塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、フィルムプレスコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター及びフィルムトランスファーコーター等を挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー及びマイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。実験室における試作では、紙基材に対してバリア層塗工液を手塗用ワイヤーバーで塗工及び簡易熱風乾燥機で乾燥する方法を採用することができる。
ヒートシール層をバリア層に対して設ける方法は、紙基材に対してバリア層を設ける方法と同様の塗工装置及び乾燥装置を用いて、バリア層に対してヒートシール層塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。
【0033】
バリア層塗工液が無機層状鉱物及びポリヒドロキシウレタンを含有すること、並びにヒートシール層塗工液がヒートシール性を有する樹脂を含有することによって、得られる各層は、無機層状鉱物及びポリヒドロキシウレタンとヒートシール性を有する樹脂とをそれぞれ含有することができる。
【実施例0034】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の塗工量は乾燥固形分量を表す。
【0035】
<紙基材>
以下の紙料を調成した。
LBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
NBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
硫酸バンド 1質量部
ロジン系サイズ剤(CC1404、星光PMC社) 0.4質量部
紙力剤 0.9質量部
【0036】
上記配合の紙料を長網抄紙機で抄造し、表面サイズ剤として酸化澱粉をサイズプレスで片面あたり1g/m付与して、坪量45g/mの原紙を得た。これに、マシンカレンダーを用いて温度60℃及び処理速度500m/分の条件でカレンダー処理して紙基材を得た。紙基材の灰分量は1.5質量%であった。
【0037】
<バリア層塗工液>
水を媒体として以下のバリア層塗工液を調製した。
顔料 種類及び質量部は表1に記載
樹脂 種類は表1に記載/70質量部
【0038】
<ヒートシール層塗工液>
水を媒体として以下のヒートシール層塗工液を調製した。
樹脂 種類は表1に記載/100質量部
【0039】
【表1】
【0040】
表1に登場する各材料は以下である。
カオリン :イメリス社コンツアーエクストリーム、アスペクト比35。
マイカ1 :トピー工業社PDM-40L、アスペクト比80。
マイカ2 :ヤマグチマイカ社A-41S、アスペクト比100。
マイカ3 :ヤマグチマイカ社TM-20、アスペクト比140。
マイカ4 :トピー工業社NTO-8、アスペクト比680。
マイカ5 :トピー工業社DMA-350、アスペクト比1000。
マイカ6 :トピー工業社NTS-10、アスペクト比1500。
無機顔料 :イメリス社カービラックス(登録商標)重質炭酸カルシウム。
樹脂1 :ポリヒドロキシウレタン、
三井化学社タケラック(登録商標)WPB-341。
樹脂2 :低密度ポリエチレン樹脂、
三井化学社ケミパール(登録商標)M200。
樹脂3 :メチルメタクリレートブチルアクリレート系共重合樹脂。
樹脂4 :エチレンアクリル酸系共重合樹脂。
【0041】
<バリア層>
紙基材の片面に対して、バリア層塗工液をエアーナイフコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。バリア層の塗工量は、15g/mになるようにコーター条件を調整した。
【0042】
<ヒートシール層>
得られたバリア層に対して、ヒートシール層塗工液をロッドコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。ヒートシール層の塗工量は、10g/mになるようコーター条件を調整した。
【0043】
<包装用紙>
上記のように、紙基材に対してバリア層及びバリア層に対してヒートシール層を設けたものを包装用紙とした。但し、比較例2では、バリア層を塗工及び乾燥せず、紙基材に対してヒートシール層塗工液を塗工及び乾燥した。
【0044】
<酸素バリア性>
酸素バリア性の評価は、ISO15105-2:2003「Plastics-Film and sheeting - Determination of gas-transmission rate - Part2 : Equal-pressure method」(JIS K7126-2:2006「プラスチック -フィルム及びシート- ガス透過度試験方法-第2部:等圧法」)に準じてガス透過度の測定結果から行った。測定は、バリア層及びヒートシール層を有する側を外側にして行った。ガス透過度の測定ガスには酸素ガスを用いた。温湿度の条件は、23±0.5℃及び相対湿度85±2%とした。本発明において、包装用紙は、A、B又はCの評価であれば酸素バリア性に優れるものとする。
A:ガス透過度が9ml/m・day・atm以下。
B:ガス透過度が上記Aより劣り18ml/m・day・atm以下。
C:ガス透過度が上記Bより劣り40ml/m・day・atm以下。
D:ガス透過度が上記Cより劣り80ml/m・day・atm以下。
E:ガス透過度が80ml/m・day・atm超。
【0045】
<ヒートシール性>
同じ構成の2枚の包装用紙を用いて、包装用紙のヒートシール層を有する側の面どうしを対向させてヒートシーラーにより圧力0.5MPa、130℃、1秒間の条件によってヒートシールを施した。
ヒートシールした包装用紙を15mm幅で切り出し、温度23℃、相対湿度50%で24時間静置後、引張り試験機を用い、引張り速度300mm/分、引張り角度180度でヒートシール箇所の剥離強度を測定することによってヒートシール性を評価した。測定は、各包装用紙でサンプル数5部で行い、5部の平均値とした。測定値から、ヒートシール性を下記の基準で評価した。本発明において、包装用紙は、評価A、B又はCであればヒートシール性を有するものとする。
A:値が、6N/15mm以上。
B:値が、4N/15mm以上6N/15mm未満。
C:値が、2N/15mm以上4N/15mm未満。
D:値が、2N/15mm未満。
【0046】
<耐熱変形性>
耐熱変形性の評価は、包装用紙を横(合掌貼り)シール及び縦(封筒貼り)シールを行った平袋のヒートシール部の外観を観察する方法で行った。ヒートシールの条件は、上記<ヒートシール性>の評価と同様とした。ヒートシールは、各包装用紙についてサンプル数20部実施した。本発明において、包装用紙は、評価A、B又はCであれば耐熱変形性に優れるものとする。
A:20部全てに皺、ズレ及びヨレが概ね認められない。
B:20部全てに皺が概ね認められない。
及び1~3部にかすかにズレ及び/又はヨレが認められる。
C:20部全てに皺が概ね認められない。
及び4部以上にかすかにズレ及び/又はヨレが認められる。
D:20部全てに皺が概ね認められない。
及び1~2部に明らかなズレ及び/又はヨレが認められる。
E:1部以上に皺が認められる。
及び/又は3部以上に明らかなズレ及び/又はヨレが認められる。
【0047】
評価結果を表1に示す。
【0048】
表1から、本発明に該当する実施例1~13は、ヒートシール性を有し、樹脂の主成分としてポリウレタンを含有するバリア層でありながら耐熱変形性に優れ、酸素バリア性に優れる包装用紙と分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~3は、本発明に係る効果の少なくとも一つを満足できない包装用紙と分かる。
【0049】
主に、実施例1及び実施例12との対比から、バリア層の無機層状鉱物がマイカであると、包装用紙は、耐熱変形性及び酸素バリア性が良化すると分かる。
主に、実施例2~7の間の対比から、マイカのアスペクト比が100以上であると、包装用紙は、酸素バリア性が良化すると分かる。