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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074653
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
H04L25/02 K
H04L25/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187686
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大崎 聡士
【テーマコード(参考)】
5K029
【Fターム(参考)】
5K029AA18
5K029CC01
5K029DD24
5K029DD25
5K029EE01
(57)【要約】
【課題】電源から駆動電力が供給される第一基板に設けられる送信装置が、電源から駆動電力が供給されない第二基板に設けられる受信装置に、信号線を介して信号を送信する通信回路において、第二基板に駆動電力を供給する電源線を省略可能な電力供給装置を開示する。
【解決手段】電力供給装置は、通信回路と電源回路とを具備する。通信回路は、電源から駆動電力が供給される第一基板に設けられる送信装置と電源から駆動電力が供給されない第二基板に設けられる受信装置と終端装置とを備える回路であって、信号線を介して送信装置から受信装置に信号を送信する。電源回路は、通信回路の信号線に並列接続される回路であって、送信装置の出力電力から終端装置によって消費される消費電力を減じた残存電力に基づいて受信装置を含む第二基板に設けられる機器に供給する供給電力を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から駆動電力が供給される第一基板に設けられる送信装置と電源から駆動電力が供給されない第二基板に設けられる受信装置と終端装置とを備える回路であって、信号線を介して前記送信装置から前記受信装置に信号を送信する通信回路と、
前記通信回路の前記信号線に並列接続される回路であって、前記送信装置の出力電力から前記終端装置によって消費される消費電力を減じた残存電力に基づいて前記受信装置を含む前記第二基板に設けられる機器に供給する供給電力を生成する電源回路と、
を具備する電力供給装置。
【請求項2】
前記電源回路は、交流の前記残存電力を直流電力に変換して前記供給電力を生成する請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記通信回路において送信される信号は、差動信号であり、
前記電源回路は、
アノードが前記差動信号の一の前記信号線に接続されている第一ダイオードと、
アノードが前記差動信号の他の一の前記信号線に接続されている第二ダイオードと、
正極側が前記第一ダイオードのカソードおよび前記第二ダイオードのカソードの両方に接続され負極側がグランドに接続されている平滑コンデンサと、
を備える請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記通信回路において送信される信号は、シングルエンド信号であり、
前記電源回路は、
アノードが前記信号線に接続されている第一ダイオードと、
アノードがグランドに接続されている第二ダイオードと、
正極側が前記第一ダイオードのカソードおよび前記第二ダイオードのカソードの両方に接続され負極側が前記グランドに接続されている平滑コンデンサと、
を備える請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記平滑コンデンサは、前記直流電力に含まれるリプルが所定範囲に収まるように静電容量が設定されている請求項3または請求項4に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記送信装置は、前記電源回路の定格出力電圧に前記電源回路による電圧降下分を加算した電圧よりも高電圧の信号を出力する請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電力供給装置。
【請求項7】
前記電源回路から前記機器に供給する供給電流が許容値を超えたときに、前記電源回路の出力を規制する電流制限装置を備える請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の電力供給装置。
【請求項8】
前記電源回路の出力電圧が許容値未満になったときに、前記電源回路の出力を規制する過負荷保護装置を備える請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の電力供給装置。
【請求項9】
前記電源回路の出力電圧が許容値未満になったときに、過負荷を案内する過負荷案内装置を備える請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の電力供給装置。
【請求項10】
前記通信回路は、前記第二基板に設けられる送信装置から前記第一基板に設けられる受信装置に信号を送信する回路をさらに備え、異なる前記信号線を用いて、前記第一基板と前記第二基板との間で全二重通信を行う請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の電力供給装置。
【請求項11】
前記通信回路は、前記第二基板に設けられる送信装置と前記第一基板に設けられる受信装置をさらに備え、同一の前記信号線を用いて、前記第一基板と前記第二基板との間で半二重通信を行う請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の電力供給装置。
【請求項12】
前記機器には、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機に装備されているデバイスに関する情報を表示する表示装置が含まれる請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電力供給装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の生体埋植装置は、生体に埋植された状態で動作する動作ユニットと、動作ユニットへ給電信号を出力する給電ユニットと、動作ユニットと給電ユニットを電気的に接続し給電信号を伝送するケーブルとを備える。給電ユニットは、動作ユニットの動作を制御する制御情報に基づいて、マンチェスター符号によって符号化されたデジタル信号を給電信号として生成する。動作ユニットは、給電信号を直流電力に変換する整流回路と、給電信号に重畳された符号に基づいてクロックを再生し、給電信号において符号として重畳された制御情報をクロックを用いて抽出する再生回路とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-97942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源から駆動電力が供給される第一基板に設けられる送信装置が、当該電源または当該電源と異なる電源から駆動電力が供給されない第二基板に設けられる受信装置に、信号線を介して信号を送信する通信回路を想定する。この場合、第二基板に駆動電力を供給する必要があり、第二基板に駆動電力を供給するために信号線の他に電源線が必要になる。その結果、配線の数が増加する。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、電源から駆動電力が供給される第一基板に設けられる送信装置が、電源から駆動電力が供給されない第二基板に設けられる受信装置に、信号線を介して信号を送信する通信回路において、第二基板に駆動電力を供給する電源線を省略可能な電力供給装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、通信回路と、電源回路とを具備する電力供給装置を開示する。前記通信回路は、電源から駆動電力が供給される第一基板に設けられる送信装置と電源から駆動電力が供給されない第二基板に設けられる受信装置と終端装置とを備える回路であって、信号線を介して前記送信装置から前記受信装置に信号を送信する。前記電源回路は、前記通信回路の前記信号線に並列接続される回路であって、前記送信装置の出力電力から前記終端装置によって消費される消費電力を減じた残存電力に基づいて前記受信装置を含む前記第二基板に設けられる機器に供給する供給電力を生成する。
【発明の効果】
【0007】
上記の電力供給装置によれば、電源回路を備えるので、受信装置を含む第二基板に設けられる機器に電力を供給することができる。よって、電力供給装置は、第二基板に駆動電力を供給する電源線を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】比較形態に係り、第一基板と第二基板の間の電源線および信号線の配線例を示す模式図である。
図2】比較形態に係り、第一基板と第二基板の間の電源線および信号線の他の配線例を示す模式図である。
図3】電力供給装置の構成例を示す模式図である。
図4A図3の受信装置の非反転入力端子および反転入力端子の入力電圧の経時変化の一例を示す図である。
図4B図3の受信装置の出力端子の出力電圧の経時変化の一例を示す図である。
図4C図3の電源回路の出力端子の出力電圧の経時変化の一例を示す図である。
図4D図3の電源回路の出力端子の出力電圧の経時変化の他の一例を示す図である。
図5】保護装置および機器の構成例を示す模式図である。
図6】電力供給装置の他の構成例を示す模式図である。
図7A図6の受信装置の非反転入力端子の入力電圧の経時変化の一例を示す図である。
図7B図6の受信装置の出力端子の出力電圧の経時変化の一例を示す図である。
図7C図6の電源回路の出力端子の出力電圧の経時変化の一例を示す図である。
図7D図6の電源回路の出力端子の出力電圧の経時変化の他の一例を示す図である。
図8】電力供給装置の他の構成例を示す模式図である。
図9】電力供給装置の他の構成例を示す模式図である。
図10】対基板作業ラインの構成例を示す構成図である。
図11】部品装着機の構成例を示す平面図である。
図12図11の部品装着機の斜視図である。
図13】表示装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
1-1.電力供給装置10の構成例
電源20から駆動電力が供給される第一基板21に設けられる送信装置31が、電源(電源20または電源20と異なる電源)から駆動電力が供給されない第二基板22に設けられる受信装置32に、信号線30sを介して信号を送信する通信回路を想定する。この場合、第二基板22に駆動電力を供給する必要がある。
【0010】
例えば、図1に示すように、第一基板21には、電源線20pおよびグランド線30gを用いて電源20から駆動電力が供給される。第二基板22には、上記の電源線20pおよびグランド線30gとは異なる電源線20pおよびグランド線30gを用いて、電源20から駆動電力が供給される。第一基板21に駆動電力を供給する電源線20pおよびグランド線30gとは異なる電源線20pおよびグランド線30gを用いて、電源20と異なる電源から第二基板22に駆動電力を供給することもできる。
【0011】
また、図2に示すように、第一基板21には、電源線20pおよびグランド線30gを用いて電源20から駆動電力が供給される。第二基板22には、上記の電源線20pおよびグランド線30gとは異なる電源線20pおよびグランド線30gを用いて第一基板21から駆動電力が供給される。いずれの場合も、第二基板22に駆動電力を供給するために、信号線30sの他に電源線20pが必要になる。その結果、配線の数が増加する。
【0012】
そこで、電力供給装置10は、通信回路30と、電源回路40とを具備する。電力供給装置10は、保護装置50を備えることもできる。図3に示すように、実施形態の電力供給装置10は、通信回路30と、電源回路40と、保護装置50とを備えている。電源回路40によって生成された供給電力は、第二基板22に設けられる機器60に供給される。
【0013】
通信回路30は、電源20から駆動電力が供給される第一基板21に設けられる送信装置31と、電源(電源20または電源20と異なる電源)から駆動電力が供給されない第二基板22に設けられる受信装置32と、終端装置33とを備える回路である。通信回路30は、信号線30sを介して送信装置31から受信装置32に信号を送信する。
【0014】
図3に示すように、第一基板21には、電源20から駆動電力が供給される。電源20は、直流電源であっても良く、交流電源であっても良い。また、電源20は、第一基板21の外部に設けられても良く、第一基板21に設けられても良い。図3に示す電源20は、直流電源であり、第一基板21の外部に設けられている。図3に示す電源20は、電源線20pおよびグランド線30gを用いて、第一基板21に直流電力を供給することができる。
【0015】
第一基板21に供給された駆動電力(直流電力または交流電力)は、第一基板21に設けられる機器に供給される。機器には、送信装置31および送信装置31を制御する公知の制御装置21aが含まれる。なお、第一基板21は、種々の機器を備えることができ、制御装置21aは、種々の機器を制御することができる。また、第一基板21は、公知の電力変換器を備えることができる。例えば、電力変換器は、第一基板21に供給された直流電力を昇圧または降圧することができる。電力変換器は、第一基板21に供給された直流電力を交流電力に変換することができ、第一基板21に供給された交流電力を直流電力に変換することもできる。
【0016】
送信装置31は、信号線30sを介して送信装置31から受信装置32に信号を送信して、受信装置32は、当該信号を受信することができれば良く、種々の形態をとり得る。例えば、送信装置31および受信装置32は、RS422、RS485およびRS232Cなどの通信規格に準拠したシリアル通信を行うことができる。送信装置31および受信装置32は、パラレル通信を行うこともできる。実施形態の送信装置31および受信装置32は、RS422の通信規格に準拠したシリアル通信を行う。
【0017】
終端装置33は、送信装置31から受信装置32への送信を安定(例えば、信号の反射の抑制など)させることができれば良く、種々の形態をとり得る。実施形態の終端装置33は、受信装置32の側に抵抗器を備えている。RS422による通信では、一ビットの信号に対して二本の信号線30sを用いる平衡伝送が行われる。この場合、図3に示すように、終端装置33である抵抗器は、二本の信号線30sの間に接続される。抵抗器の抵抗値は、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)の特性インピーダンスに合わせて設定されている。また、通信ケーブルは、第一基板21および第二基板22の各々に設けられているコネクタを介して接続されている。
【0018】
例えば、受信装置32は、公知のコンパレータを用いることができる。コンパレータの入力インピーダンスは極めて高く、送信装置31から出力された出力電力は、通信回路30において、概ね終端装置33によって消費される。そのため、電力供給装置10は、送信装置31の出力電力から終端装置33によって消費される消費電力を減じた残存電力を活用する。具体的には、電力供給装置10は、電源回路40を具備している。
【0019】
電源回路40は、通信回路30の信号線30sに並列接続される回路であって、送信装置31の出力電力から終端装置33によって消費される消費電力を減じた残存電力に基づいて受信装置32を含む第二基板22に設けられる機器60に供給する供給電力を生成する。電源回路40は、第二基板22に設けられても良く、第二基板22の外部の基板に設けられても良い。また、供給電力は、直流電力であっても良く、交流電力であっても良い。図3に示す電源回路40は、第二基板22に設けられており、機器60に直流電力を供給する。
【0020】
具体的には、電源回路40は、交流の残存電力を直流電力に変換して供給電力を生成する。電源回路40は、供給電力を生成することができれば良く、種々の形態をとり得る。既述したように、RS422による通信では、一ビットの信号に対して二本の信号線30sを用いる平衡伝送が行われる。つまり、通信回路30において送信される信号は、差動信号である。
【0021】
この形態では、図3に示すように、電源回路40は、第一ダイオード41と、第二ダイオード42と、平滑コンデンサ43とを備える。第一ダイオード41は、アノード41aが差動信号の一の信号線30sに接続されている。第二ダイオード42は、アノード42aが差動信号の他の一の信号線30sに接続されている。平滑コンデンサ43は、正極側が第一ダイオード41のカソード41kおよび第二ダイオード42のカソード42kの両方に接続され、負極側がグランド20gに接続されている。グランド20gは、グランド線30gと同電位であり、図面では、下向きの三角形によって表されている。
【0022】
例えば、RS422およびRS485による通信では、最大10Mbpsの伝送速度で信号が送信される。また、RS232Cによる通信では、最大19.2kbpsの伝送速度で信号が送信される。そのため、第一ダイオード41および第二ダイオード42は、上記の周波数帯の高周波回路で使用可能なファーストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオードなどを用いることができる。同様に、平滑コンデンサ43は、上記の周波数帯の高周波回路で使用可能なセラミックコンデンサなどを用いることができる。また、平滑コンデンサ43は、セラミックコンデンサと電解コンデンサを並列接続して、セラミックコンデンサおよび電解コンデンサを併用することもできる。
【0023】
図4Aの実線の折れ線L1は、受信装置32の非反転入力端子(図3の+端子)の入力電圧の経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、入力電圧を示し、横軸は、時間を示している。入力電圧は、時刻T1から時刻T2までの時間、増加して、時刻T2から時刻T3までの時間、電圧V1(ハイレベル)である。入力電圧は、時刻T3から時刻T4までの時間、減少して、時刻T4から時刻T5までの時間、ゼロ電圧(ローレベル)である。入力電圧は、時刻T5から時刻T8までの時間においても、同様に変化しており、時刻T8以降においても同様に変化する。
【0024】
図4Aの破線の折れ線L2は、受信装置32の反転入力端子(図3の-端子)の入力電圧の経時変化の一例を示している。入力電圧は、時刻T1から時刻T2までの時間、減少して、時刻T2から時刻T3までの時間、ゼロ電圧(ローレベル)である。入力電圧は、時刻T3から時刻T4までの時間、増加して、時刻T4から時刻T5までの時間、電圧V1(ハイレベル)である。入力電圧は、時刻T5から時刻T8までの時間においても、同様に変化しており、時刻T8以降においても同様に変化する。
【0025】
図4Bの実線の折れ線L3は、受信装置32の出力端子の出力電圧の経時変化の一例を示している。また、図4Cの実線の曲線L4は、電源回路40の出力端子40pの出力電圧の経時変化の一例を示している。さらに、図4Dの実線の曲線L5は、電源回路40の出力端子40pの出力電圧の経時変化の他の一例を示している。図4B図4Dの縦軸は、いずれも出力電圧を示している。図4A図4Dの横軸は、同じ時間帯の時間を示している。
【0026】
例えば、図4Aに示すように、時刻T2から時刻T3までの時間は、受信装置32の非反転入力端子(図3の+端子)の入力電圧は、電圧V1(ハイレベル)であり、受信装置32の反転入力端子(図3の-端子)の入力電圧は、ゼロ電圧(ローレベル)である。よって、図4Bに示すように、受信装置32の出力端子の出力電圧は、電圧V1(=電圧V1-ゼロ電圧)になる。
【0027】
このとき、第一ダイオード41が接続されている信号線30sの電位は、第二ダイオード42が接続されている信号線30sの電位と比べて高い。よって、送信装置31、第一ダイオード41が接続されている信号線30sおよび第一ダイオード41を介して、送信装置31から平滑コンデンサ43に電流が流れ、平滑コンデンサ43が充電される。
【0028】
逆に、図4Aに示すように、時刻T4から時刻T5までの時間は、受信装置32の非反転入力端子(図3の+端子)の入力電圧は、ゼロ電圧(ローレベル)であり、受信装置32の反転入力端子(図3の-端子)の入力電圧は、電圧V1(ハイレベル)である。よって、図4Bに示すように、受信装置32の出力端子の出力電圧は、-(マイナス)電圧V1(=ゼロ電圧-電圧V1)になる。
【0029】
このとき、第二ダイオード42が接続されている信号線30sの電位は、第一ダイオード41が接続されている信号線30sの電位と比べて高い。よって、送信装置31、第二ダイオード42が接続されている信号線30sおよび第二ダイオード42を介して、送信装置31から平滑コンデンサ43に電流が流れ、平滑コンデンサ43が充電される。
【0030】
他の時間帯についても同様であり、時刻T2から時刻T3までの時間について上述されている現象、および、時刻T4から時刻T5までの時間について上述されている現象が順に繰り返される。その結果、図4Cの曲線L4に示すように、電源回路40は、概ね一定の電圧V2の直流電力を出力端子40pから出力することができる。出力端子40pは、平滑コンデンサ43の正極側に接続されている。
【0031】
このように、実施形態の送信装置31は、一ビットの信号に対して二本の信号線30sを介して、差動信号(逆相の信号)を送信し、受信装置32は、当該差動信号を受信することができる。このとき、電源回路40は、送信装置31の出力電力から終端装置33によって消費される消費電力を減じた交流の残存電力を直流電力に変換して、供給電力を生成することができる。
【0032】
なお、図4Dの曲線L5に示すように、時刻T1から時刻T2までの時間、時刻T3から時刻T4までの時間、時刻T5から時刻T6までの時間および時刻T7から時刻T8までの時間において、出力端子40pから出力される直流電力が電圧V2に対して低下する現象がみられる場合がある。上記の時間帯では、受信装置32の非反転入力端子(図3の+端子)の入力電圧が増加し、反転入力端子(図3の-端子)の入力電圧が減少する。若しくは、上記の時間帯では、受信装置32の非反転入力端子(図3の+端子)の入力電圧が減少し、反転入力端子(図3の-端子)の入力電圧が増加する。
【0033】
平滑コンデンサ43の静電容量が小さくなるほど、受信装置32の非反転入力端子(図3の+端子)の入力電圧および反転入力端子(図3の-端子)の入力電圧の変動による影響を受け易くなり、直流電力に上記のリプルが含まれ易くなる。そこで、平滑コンデンサ43は、直流電力に含まれるリプルが所定範囲に収まるように静電容量が設定されていると良い。平滑コンデンサ43の静電容量は、シミュレーション、実機による検証などによって導出することができる。これにより、図4Cの曲線L4に示すように、電源回路40は、概ね一定の電圧V2の直流電力を出力端子40pから出力することができる。
【0034】
また、送信装置31から送信される信号の電圧が高くなるほど、受信装置32の非反転入力端子(図3の+端子)の入力電圧および反転入力端子(図3の-端子)の入力電圧が変動する時間が長くなり、直流電力に上記のリプルが含まれ易くなる。そこで、電力供給装置10は、直流電力に含まれるリプルが所定範囲に収まるように送信装置31から送信する信号の最大電圧を設定することもできる。信号の最大電圧とリプルの関係は、シミュレーション、実機による検証などによって導出することができる。これにより、図4Cの曲線L4に示すように、電源回路40は、概ね一定の電圧V2の直流電力を出力端子40pから出力することができる。
【0035】
なお、送信装置31から送信する信号の最大電圧を低下させると、電源回路40の出力端子40pから出力される直流電力の電圧V2は、当該信号の電圧に合わせて低下する。そこで、電源回路40は、公知の電力変換器を備えることもできる。電力変換器は、電源回路40の出力端子40pから出力される直流電力を、所定の電圧に昇圧することができる。
【0036】
また、電源回路40は、上記の目的に関わらず、公知の電力変換器を備えることもできる。例えば、電力変換器は、電源回路40の出力端子40pから出力される直流電力を昇圧または降圧することができる。電力変換器は、電源回路40の出力端子40pから出力される直流電力を交流電力に変換することもできる。
【0037】
さらに、電源回路40によって生成された供給電力が供給される機器60の仕様に合わせて、電源回路40の定格出力電圧(電源回路40の出力端子40pから出力される直流電力の定格電圧)が決定される場合がある。この場合、送信装置31は、電源回路40の定格出力電圧に電源回路40による電圧降下分を加算した電圧よりも高電圧の信号を出力することができる。例えば、図3に示す電源回路40による電圧降下分は、第一ダイオード41または第二ダイオード42の順方向電圧に相当する。
【0038】
なお、送信装置31は、通信規格に準拠した電圧範囲の信号を出力する必要がある。例えば、RS422による通信では、送信装置31は、最大電圧(既述した電圧V1に相当)が2V~6Vの範囲の信号を出力する必要がある。このとき、例えば、送信装置31は、最大電圧(電圧V1)が5V~6Vの範囲の信号を出力することができる。第一ダイオード41または第二ダイオード42の順方向電圧が約0.7Vと仮定すると、電源回路40は、定格出力電圧が概ね4V~5V程度の直流電力を出力端子40pから出力することができる。
【0039】
電力供給装置10は、通信回路30と電源回路40を具備している。そのため、電源回路40によるノイズの影響が懸念される。しかしながら、実施形態の通信回路30において送信される信号は、差動信号である。つまり、送信装置31は、一ビットの信号に対して二本の信号線30sを介して、差動信号(逆相の信号)を送信し、受信装置32は、当該差動信号を受信する。そのため、グランド20gと信号線30sとの間に、それぞれ印可されるコモンモードノイズによる影響は、後述されているシングルエンド信号の場合と比べて、低減されている。
【0040】
また、実施形態の電源回路40では、平滑コンデンサ43が第一ダイオード41を介して差動信号の一の信号線30sに接続され、第二ダイオード42を介して差動信号の他の一の信号線30sに接続されている。そのため、二本の信号線30sの間に印可されるノーマルモードノイズは、平滑コンデンサ43によって低減されている。なお、ノーマルモードノイズについて上述されていることは、後述されているシングルエンド信号の場合についても同様に言える。
【0041】
さらに、電力供給装置10は、必要に応じて、信号線30sをツイストペアケーブルにすることができる。また、電力供給装置10は、必要に応じて、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)をシールドケーブルにすることができる。さらに、電力供給装置10は、必要に応じて、通信回路30にチョークコイルなどの公知のノイズ対策機器を備えることができる。
【0042】
電力供給装置10は、種々の保護装置50を備えることができる。例えば、電力供給装置10は、電流制限装置51、過負荷保護装置52および過負荷案内装置53のうちの少なくとも一つの保護装置50を備えることができる。電流制限装置51は、電源回路40から機器60に供給する供給電流が許容値を超えたときに、電源回路40の出力を規制する。例えば、電流制限装置51は、ヒューズなどを用いることができる。機器60に供給する供給電流が許容値を超えたときに、ヒューズが溶断して電源回路40の出力が規制される。
【0043】
また、図5に示すように、電流制限装置51は、例えば、電源監視装置50aと、電流検出器51aとを備えることもできる。電源監視装置50aは、電源回路40から供給される供給電力の状態を監視することができれば良く、公知の電源監視用の集積回路を用いることができる。電流検出器51aは、供給電流を検出することができれば良く、公知の電流検出器を用いることができる。実施形態の電流検出器51aは、出力端子40pから出力される直流電力の電流(直流電流)を検出する。電源監視装置50aは、電流検出器51aによって検出された電流値が許容値を超えたときに、機器60に対する供給電力の供給を停止して、電源回路40の出力を規制する。
【0044】
過負荷保護装置52は、電源回路40の出力電圧が許容値未満になったときに、電源回路40の出力を規制する。過負荷保護装置52は、電源回路40の出力電圧が許容値未満になったときに、電源回路40の出力を規制することができれば良く、種々の形態をとり得る。図5に示すように、過負荷保護装置52は、例えば、電源監視装置50aと、分圧器52a,52bとを備えることができる。
【0045】
実施形態の分圧器52a,52bは、抵抗器であり、出力端子40pから出力される直流電力の電圧(直流電圧)を二つの抵抗器によって分圧する。分圧器52a,52bによって分圧された直流電圧は、負荷が大きくなるほど低下する。そこで、電源監視装置50aは、分圧器52a,52bによって分圧された直流電圧が所定電圧値未満になったときに、電源回路40の出力電圧が許容値未満の過負荷状態であると判断する。この場合、電源監視装置50aは、機器60に対する供給電力の供給を停止して、電源回路40の出力を規制する。
【0046】
過負荷案内装置53は、電源回路40の出力電圧が許容値未満になったときに、過負荷を案内する。過負荷案内装置53は、電源回路40の出力電圧が許容値未満になったときに、過負荷を案内することができれば良く、種々の形態をとり得る。図5に示すように、過負荷案内装置53は、例えば、電源監視装置50aと、分圧器52a,52bと、抵抗器53aと、発光ダイオード53bと、トランジスタ53cと、抵抗器53dと、抵抗器53eとを備えることができる。
【0047】
抵抗器53a、発光ダイオード53bおよびトランジスタ53cは、出力端子40pから出力される直流電力の正極側(出力端子40pの側)と負極側(グランド20gの側)との間において、正極側から上記の順に直列接続されている。抵抗器53dは、電源監視装置50aの出力ポートと、トランジスタ53cのベース端子との間に設けられている。抵抗器53eは、トランジスタ53cのベース端子とエミッタ端子との間に設けられている。
【0048】
電源監視装置50aは、電源回路40の出力電圧が許容値未満の過負荷状態であると判断したときに、上記の出力ポートをローレベルからハイレベルにする。これにより、トランジスタ53cが開状態から閉状態に制御されて、発光ダイオード53bが発光する。よって、例えば、作業者は、過負荷であることを視認することができる。なお、電力供給装置10は、上記以外にも、種々の保護装置50を備えることができる。例えば、電力供給装置10は、過電圧保護、回路素子の過熱保護などを行う保護装置50を備えることもできる。
【0049】
機器60は、電源回路40による供給電力(送信装置31の出力電力から終端装置33によって消費される消費電力を減じた残存電力に概ね相当)よりも消費電力が少なければ良く、限定されない。機器60は、例えば、センサなどであっても良い。また、図5に示すように、機器60は、例えば、表示装置であっても良い。図5に示す少なくとも一つ(同図では、三つ)の機器60の各々は、抵抗器60aと、発光ダイオード60bと、トランジスタ60cと、抵抗器60dと、抵抗器60eとを備えている。
【0050】
抵抗器60a、発光ダイオード60bおよびトランジスタ60cは、出力端子40pから出力される直流電力の正極側(出力端子40pの側)と負極側(グランド20gの側)との間において、正極側から上記の順に直列接続されている。抵抗器60dは、制御装置22aの出力ポートと、トランジスタ60cのベース端子との間に設けられている。抵抗器60eは、トランジスタ60cのベース端子とエミッタ端子との間に設けられている。
【0051】
制御装置22aは、第二基板22に設けられている受信装置32および種々の機器60を制御することができる。制御装置22aは、電源回路40から供給される供給電力の状態を電源監視装置50aから取得することもできる。制御装置22aは、発光ダイオード60bを点灯させる機器60と接続されている出力ポートをローレベルからハイレベルにする。これにより、トランジスタ60cが開状態から閉状態に制御されて、発光ダイオード60bが発光する。よって、例えば、作業者は、発光ダイオード60bによる案内を視認することができる。
【0052】
1-2.電力供給装置10の他の構成例
電力供給装置10は、種々の形態をとり得る。図面では、各形態について、共通する箇所に共通の符号番号が付されており、本明細書では、重複する説明が省略されている。例えば、送信装置31および受信装置32は、RS232Cの通信規格に準拠したシリアル通信を行うこともできる。RS232Cによる通信では、一ビットの信号に対して一本の信号線30sを用いる不平衡伝送が行われる。つまり、通信回路30において送信される信号は、シングルエンド信号である。
【0053】
図6に示すように、本形態においても、電源回路40は、第一ダイオード41と、第二ダイオード42と、平滑コンデンサ43とを備える。但し、第一ダイオード41は、アノード41aが信号線30sに接続されている。第二ダイオード42は、アノード42aがグランド20g(グランド線30g)に接続されている。平滑コンデンサ43は、正極側が第一ダイオード41のカソード41kおよび第二ダイオード42のカソード42kの両方に接続され負極側がグランド20gに接続されている。グランド20gは、グランド線30gと同電位であり、図面では、下向きの三角形によって表されている。また、本形態では、終端装置33である抵抗器は、信号線30sとグランド20g(グランド線30g)との間に接続されている。
【0054】
図7Aの実線の折れ線L6は、受信装置32の非反転入力端子(図6の+端子)の入力電圧の経時変化の一例を示している。同図の縦軸は、入力電圧を示し、横軸は、時間を示している。なお、受信装置32の反転入力端子(図6の-端子)は、グランド20g(グランド線30g)に接続されており、ゼロ電圧(ローレベル)である。
【0055】
図7Aに示すように、受信装置32の非反転入力端子(図6の+端子)の入力電圧は、電圧V1と、-(マイナス)電圧V1とが交互に繰り返される。具体的には、入力電圧は、時刻T1から時刻T2までの時間、増加して、時刻T2から時刻T3までの時間、電圧V1である。入力電圧は、時刻T3から時刻T4までの時間、減少して、時刻T4から時刻T5までの時間、-(マイナス)電圧V1である。入力電圧は、時刻T5から時刻T8までの時間においても、同様に変化しており、時刻T8以降においても同様に変化する。
【0056】
図7Bの実線の折れ線L7は、受信装置32の出力端子の出力電圧の経時変化の一例を示している。また、図7Cの実線の曲線L8は、電源回路40の出力端子40pの出力電圧の経時変化の一例を示している。さらに、図7Dの実線の曲線L9は、電源回路40の出力端子40pの出力電圧の経時変化の他の一例を示している。図7B図7Dの縦軸は、いずれも出力電圧を示している。図7A図7Dの横軸は、同じ時間帯の時間を示している。
【0057】
例えば、図7Aに示すように、時刻T2から時刻T3までの時間は、受信装置32の非反転入力端子(図6の+端子)の入力電圧は、電圧V1であり、受信装置32の反転入力端子(図6の-端子)の入力電圧は、ゼロ電圧(ローレベル)である。よって、図7Bに示すように、受信装置32の出力端子の出力電圧は、電圧V1(=電圧V1-ゼロ電圧)になる。
【0058】
このとき、第一ダイオード41が接続されている信号線30sの電位は、第二ダイオード42が接続されているグランド20g(グランド線30g)の電位と比べて高い。よって、送信装置31、第一ダイオード41が接続されている信号線30sおよび第一ダイオード41を介して、送信装置31から平滑コンデンサ43に電流が流れ、平滑コンデンサ43が充電される。
【0059】
逆に、図7Aに示すように、時刻T4から時刻T5までの時間は、受信装置32の非反転入力端子(図6の+端子)の入力電圧は、-(マイナス)電圧V1であり、受信装置32の反転入力端子(図6の-端子)の入力電圧は、ゼロ電圧(ローレベル)である。よって、図7Bに示すように、受信装置32の出力端子の出力電圧は、-(マイナス)電圧V1(=-電圧V1-ゼロ電圧)になる。
【0060】
このとき、第二ダイオード42が接続されているグランド20g(グランド線30g)の電位は、第一ダイオード41が接続されている信号線30sの電位と比べて高い。よって、送信装置31、第二ダイオード42が接続されているグランド20g(グランド線30g)および第二ダイオード42を介して、送信装置31から平滑コンデンサ43に電流が流れ、平滑コンデンサ43が充電される。
【0061】
他の時間帯についても同様であり、時刻T2から時刻T3までの時間について上述されている現象、および、時刻T4から時刻T5までの時間について上述されている現象が順に繰り返される。その結果、図7Cの曲線L8に示すように、電源回路40は、概ね一定の電圧V2の直流電力を出力端子40pから出力することができる。出力端子40pは、平滑コンデンサ43の正極側に接続されている。
【0062】
このように、通信回路30において送信される信号がシングルエンド信号の場合も、差動信号の場合と同様にして、電源回路40は、供給電力を生成することができる。また、通信回路30において送信される信号がシングルエンド信号の場合も、差動信号の場合と同様にして、電源回路40は、交流の残存電力を直流電力に変換して供給電力を生成することができる。
【0063】
なお、図7Dの曲線L9に示すように、差動信号の場合と同様に、出力端子40pから出力される直流電力が電圧V2に対して低下する現象がみられる場合がある。よって、平滑コンデンサ43は、直流電力に含まれるリプルが所定範囲に収まるように静電容量が設定されていると良い。また、電力供給装置10は、直流電力に含まれるリプルが所定範囲に収まるように送信装置31から送信する信号の最大電圧を設定することもできる。
【0064】
さらに、送信装置31は、電源回路40の定格出力電圧に電源回路40による電圧降下分を加算した電圧よりも高電圧の信号を出力することができる。図6に示す電源回路40においても、電源回路40による電圧降下分は、第一ダイオード41または第二ダイオード42の順方向電圧に相当する。このように、図3に示す電力供給装置10について既述されていることは、図6に示す電力供給装置10についても同様に言える。
【0065】
但し、通信回路30において送信される信号がシングルエンド信号の場合、差動信号の場合と比べて、コモンモードノイズによる影響を受け易くなる。よって、電力供給装置10は、必要に応じて、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)をツイストペアケーブルにすることができる。また、電力供給装置10は、必要に応じて、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)をシールドケーブルにすることができる。さらに、電力供給装置10は、必要に応じて、通信回路30にチョークコイルなどの公知のノイズ対策機器を備えることができる。
【0066】
既述した通信回路30は、第一基板21に設けられる送信装置31から第二基板22に設けられる受信装置32に信号を送信する単方向の回路である。しかしながら、図8に示すように、通信回路30は、第二基板22に設けられる送信装置31から第一基板21に設けられる受信装置32に信号を送信する回路をさらに備えることもできる。この場合、通信回路30は、異なる信号線30sを用いて、第一基板21と第二基板22との間で全二重通信を行うことができる。なお、図8に示す通信回路30は、図3に示す通信回路30において上記の回路が追加されているが、図6に示す通信回路30において上記の回路を追加することもできる。
【0067】
また、図9に示すように、通信回路30は、第二基板22に設けられる送信装置31と第一基板21に設けられる受信装置32をさらに備えることもできる。この場合、通信回路30は、同一の信号線30sを用いて、第一基板21と第二基板22との間で半二重通信を行うことができる。
【0068】
具体的には、第一基板21に設けられる送信装置31から第二基板22に設けられる受信装置32に信号を送信する場合、第一基板21に設けられる制御装置21aは、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)を送信装置31の側に接続する。第二基板22に設けられる制御装置22aは、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)を受信装置32の側に接続する。このとき、第一基板21に設けられる受信装置32および第二基板22に設けられる送信装置31は、回路から切り離される。
【0069】
逆に、第二基板22に設けられる送信装置31から第一基板21に設けられる受信装置32に信号を送信する場合、第一基板21に設けられる制御装置21aは、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)を受信装置32の側に接続する。第二基板22に設けられる制御装置22aは、通信ケーブル(信号線30sおよびグランド線30g)を送信装置31の側に接続する。このとき、第一基板21に設けられる送信装置31および第二基板22に設けられる受信装置32は、回路から切り離される。
【0070】
また、第二基板22に設けられる送信装置31から第一基板21に設けられる受信装置32への信号の送信は、電源回路40が供給電力を供給可能な間に行うことができる。そのため、例えば、第二基板22に設けられる送信装置31から第一基板21に設けられる受信装置32に送信する信号は、第一基板21に設けられる送信装置31から第二基板22に設けられる受信装置32に送信された信号に対する応答などが想定される。なお、図9に示す通信回路30は、図3に示す通信回路30において送信装置31および受信装置32が追加されているが、図6に示す通信回路30において送信装置31および受信装置32を追加することもできる。
【0071】
1-3.対基板作業ラインWL0の構成例
対基板作業ラインWL0では、対基板作業機WM0が基板90に所定の対基板作業を行う。対基板作業ラインWL0を構成する対基板作業機WM0の種類および数は、限定されない。図10に示すように、実施形態の対基板作業ラインWL0は、印刷機WM1、印刷検査機WM2、部品装着機WM3、リフロー炉WM4および外観検査機WM5の複数の対基板作業機WM0を備えており、基板90は、基板搬送装置によって、上記の順に搬送される。
【0072】
印刷機WM1は、基板90の複数の部品91の装着位置に、はんだを印刷する。印刷検査機WM2は、印刷機WM1によって印刷されたはんだの印刷状態を検査する。図11に示すように、部品装着機WM3は、印刷機WM1によってはんだが印刷された基板90に複数の部品91を装着する。部品装着機WM3は、一つであっても良く、複数であっても良い。部品装着機WM3が複数設けられる場合は、複数の部品装着機WM3が分担して、複数の部品91を装着することができる。
【0073】
リフロー炉WM4は、部品装着機WM3によって複数の部品91が装着された基板90を加熱し、はんだを溶融させて、はんだ付けを行う。外観検査機WM5は、部品装着機WM3によって装着された複数の部品91の装着状態などを検査する。このように、対基板作業ラインWL0は、複数の対基板作業機WM0を用いて、基板90を順に搬送し、検査処理を含む生産処理を実行して基板製品900を生産することができる。なお、対基板作業ラインWL0は、例えば、機能検査機、バッファ装置、基板供給装置、基板反転装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などの対基板作業機WM0を必要に応じて備えることもできる。
【0074】
対基板作業ラインWL0を構成する複数の対基板作業機WM0およびライン管理装置LC0は、通信部によって通信可能に接続されている。また、ライン管理装置LC0および管理装置HC0は、通信部によって通信可能に接続されている。通信部は、有線または無線によって、これらを通信可能に接続することができ、通信方法は、種々の方法をとり得る。
【0075】
実施形態では、複数の対基板作業機WM0、ライン管理装置LC0および管理装置HC0によって、構内情報通信網(LAN:Local Area Network)が構成されている。よって、複数の対基板作業機WM0は、通信部を介して、互いに通信することができる。また、複数の対基板作業機WM0は、通信部を介して、ライン管理装置LC0と通信することができる。さらに、ライン管理装置LC0および管理装置HC0は、通信部を介して、互いに通信することができる。
【0076】
ライン管理装置LC0は、対基板作業ラインWL0を構成する複数の対基板作業機WM0の制御を行い、対基板作業ラインWL0の動作状況を監視する。ライン管理装置LC0には、複数の対基板作業機WM0を制御する種々の制御データが記憶されている。ライン管理装置LC0は、複数の対基板作業機WM0の各々に制御データを送信する。また、複数の対基板作業機WM0の各々は、ライン管理装置LC0に動作状況および生産状況を送信する。
【0077】
管理装置HC0は、少なくとも一つのライン管理装置LC0を管理する。例えば、ライン管理装置LC0によって取得された対基板作業機WM0の動作状況および生産状況は、必要に応じて、管理装置HC0に送信される。管理装置HC0には、記憶装置が設けられている。記憶装置は、対基板作業機WM0が取得した種々の取得データを記憶することができる。例えば、対基板作業機WM0によって撮像された種々の画像データは、取得データに含まれる。対基板作業機WM0によって取得された稼働状況の記録(ログデータ)は、取得データに含まれる。また、記憶装置は、基板製品900の生産に関する種々の生産情報を記憶することができる。
【0078】
1-4.部品装着機WM3の構成例
部品装着機WM3は、基板90に複数の部品91を装着する。図11に示すように、部品装着機WM3は、基板搬送装置811、部品供給装置812、部品移載装置813、部品カメラ814、基板カメラ815および制御装置816を備えている。
【0079】
基板搬送装置811は、例えば、ベルトコンベアなどによって構成され、基板90を搬送方向(X軸方向)に搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路、電気回路、磁気回路などが形成される。基板搬送装置811は、部品装着機WM3の機内に基板90を搬入し、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置811は、部品装着機WM3による複数の部品91の装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機WM3の機外に搬出する。
【0080】
部品供給装置812は、基板90に装着される複数の部品91を供給する。部品供給装置812は、基板90の搬送方向(X軸方向)に沿って設けられる複数のフィーダ812aを備えている。複数のフィーダ812aの各々には、リールが装備されている。リールには、複数の部品91が収納されているキャリアテープが巻回されている。フィーダ812aは、キャリアテープをピッチ送りさせて、フィーダ812aの先端側に位置する供給位置において部品91を採取可能に供給する。また、部品供給装置812は、チップ部品などと比べて比較的大型の電子部品(例えば、リード部品など)を、トレイ上に配置した状態で供給することもできる。
【0081】
部品移載装置813は、ヘッド駆動装置813aおよび移動台813bを備えている。ヘッド駆動装置813aは、直動機構によって移動台813bを、X軸方向およびY軸方向(水平面においてX軸方向と直交する方向)に移動可能に構成されている。移動台813bには、クランプ部材によって装着ヘッド820が着脱可能(交換可能)に設けられている。装着ヘッド820は、少なくとも一つの保持部材830を用いて、部品供給装置812によって供給される部品91を採取し保持して、基板搬送装置811によって位置決めされた基板90に部品91を装着する。保持部材830は、例えば、吸着ノズル、チャックなどを用いることができる。
【0082】
部品カメラ814および基板カメラ815は、公知の撮像装置を用いることができる。部品カメラ814は、光軸が鉛直方向(X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向)の上向きになるように、部品装着機WM3の基台に固定されている。部品カメラ814は、保持部材830に保持されている部品91などを下方から撮像することができる。基板カメラ815は、光軸が鉛直方向(Z軸方向)の下向きになるように、部品移載装置813の移動台813bに設けられている。基板カメラ815は、基板90などを上方から撮像することができる。部品カメラ814および基板カメラ815は、制御装置816から送出される制御信号に基づいて撮像を行う。部品カメラ814および基板カメラ815によって撮像された撮像画像の画像データは、制御装置816に送信される。
【0083】
制御装置816は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている。制御装置816には、部品装着機WM3に設けられる各種センサから出力される情報、画像データなどが入力される。制御装置816は、制御プログラムおよび予め設定されている所定の装着条件などに基づいて、各装置に対して制御信号を送出する。
【0084】
例えば、制御装置816は、基板搬送装置811によって位置決めされた基板90を基板カメラ815に撮像させる。制御装置816は、基板カメラ815によって撮像された画像を画像処理して、基板90の位置決め状態を認識する。また、制御装置816は、部品供給装置812によって供給された部品91を保持部材830に採取させ保持させて、保持部材830に保持されている部品91を部品カメラ814に撮像させる。制御装置816は、部品カメラ814によって撮像された画像を画像処理して、部品91の姿勢を認識する。
【0085】
制御装置816は、制御プログラムなどによって予め設定される装着予定位置の上方に向かって、保持部材830を移動させる。また、制御装置816は、基板90の位置決め状態、部品91の姿勢などに基づいて、装着予定位置を補正して、実際に部品91を装着する装着位置を設定する。装着予定位置および装着位置は、位置(X軸座標およびY軸座標)の他に回転角度を含む。
【0086】
制御装置816は、装着位置に合わせて、保持部材830の目標位置(X軸座標およびY軸座標)および回転角度を補正する。制御装置816は、補正された目標位置において補正された回転角度で保持部材830を下降させて、基板90に部品91を装着する。制御装置816は、上記のピックアンドプレースサイクルを繰り返すことによって、基板90に複数の部品91を装着する装着処理を実行する。
【0087】
1-5.表示装置70の構成例
既述したように、機器60は、電源回路40による供給電力(送信装置31の出力電力から終端装置33によって消費される消費電力を減じた残存電力に概ね相当)よりも消費電力が少なければ良く、限定されない。例えば、機器60には、基板90に所定の対基板作業を行う対基板作業機WM0に装備されているデバイスDD0に関する情報を表示する表示装置70が含まれる。表示装置70は、デバイスDD0に関する情報を表示することができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0088】
例えば、対基板作業機WM0が部品装着機WM3の場合、デバイスDD0には、フィーダ812aが含まれる。フィーダ812aは、部品供給装置812の複数のスロットのうちの一のスロットに装備される。図12に示すように、表示装置70は、対基板作業機WM0(部品装着機WM3)において、作業者が視認し易い位置(例えば、前面)に配置されている。また、図13に示すように、表示装置70は、複数のスロットの対応する位置に、個別表示部71を備えている。個別表示部71は、スロットの数に合わせて複数設けられている。
【0089】
複数の個別表示部71の各々は、スロットに装備されているフィーダ812aの状態を表示することができる。なお、複数の個別表示部71の各々の近傍には、複数のスロットを識別するスロット番号を表す数字などが付されている。個別表示部71が表示するフィーダ812aの状態は、限定されないが、例えば、正常状態、異常状態、警告状態などを含む。正常状態は、フィーダ812aが適正にスロットに装備されており、且つ、動作可能であることを示す状態である。
【0090】
異常状態には、フィーダ812aが適正にスロットに装備されているが、部品切れ、部品供給不良、採取ミス、画像処理エラー、通信エラーなどの異常が生じていることを示す状態を含む。また、異常状態には、フィーダ812aが適正にスロットに装備されていないことを示す状態を含む。警告状態は、フィーダ812aが適正にスロットに装備されているが、例えば、フィーダ812aと制御装置816との間で通信中であり、作業者にフィーダ812aの取り外しを警告する状態を含む。
【0091】
複数の個別表示部71の各々は、複数種類(例えば、赤色、緑色および黄色の三種類)の光源を備えている。光源は、例えば、既述した図5に示す発光ダイオード60bなどを用いることができる。複数の個別表示部71の各々は、スロットに装備されているフィーダ812aの状態に応じて光源を点灯させる。
【0092】
例えば、複数の個別表示部71の各々は、スロットに装備されているフィーダ812aの状態が正常状態のときに、緑色の発光ダイオード60bを点灯させる。複数の個別表示部71の各々は、スロットに装備されているフィーダ812aの状態が異常状態のときに、赤色の発光ダイオード60bを点灯させる。複数の個別表示部71の各々は、スロットに装備されているフィーダ812aの状態が警告状態のときに、黄色の発光ダイオード60bを点灯させる。このように、複数の個別表示部71の各々は、スロットに装備されているフィーダ812aの状態を、単色の発光ダイオード60bの発光によって表すことができる。また、複数の個別表示部71の各々は、スロットに装備されているフィーダ812aの状態を、複数色の発光ダイオード60bの発光によって表すこともできる。
【0093】
2.実施形態の効果の一例
電力供給装置10によれば、電源回路40を備えるので、受信装置32を含む第二基板22に設けられる機器60に電力を供給することができる。よって、電力供給装置10は、第二基板22に駆動電力を供給する電源線20pを省略することができる。
【符号の説明】
【0094】
10:電力供給装置、20:電源、20g:グランド、21:第一基板、
22:第二基板、30:通信回路、30s:信号線、31:送信装置、32:受信装置、
33:終端装置、40:電源回路、41:第一ダイオード、41a:アノード、
41k:カソード、42:第二ダイオード、42a:アノード、42k:カソード、
43:平滑コンデンサ、51:電流制限装置、52:過負荷保護装置、
53:過負荷案内装置、60:機器、70:表示装置、90:基板、DD0:デバイス、
WM0:対基板作業機。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13