(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074676
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】マグネットラッチ用ラッチ受け
(51)【国際特許分類】
E05B 15/02 20060101AFI20230523BHJP
E05C 19/16 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E05B15/02 B
E05C19/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187720
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000147442
【氏名又は名称】株式会社WEST inx
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】西 康雄
(72)【発明者】
【氏名】森本 敦
(57)【要約】
【課題】使用時に発生する騒音を抑制可能なマグネットラッチ用ラッチ受けを提供する。
【解決手段】磁力によって移動するラッチを備えたラッチ錠と組み合わせて使用するマグネットラッチ用ラッチ受け1であり、突出したラッチが収容されるラッチ収容部40を有するマグネットラッチ用ラッチ受け1において、ラッチ収容部40の開口縁と重なる位置、及び/又は、ラッチ錠が取り付けられた戸の閉じ方向でラッチ収容部40よりも上流側となる位置に、ラッチとの接触に起因して生じる音を低減する騒音抑制部材45を有するものとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力によって移動するラッチを備えたラッチ錠と組み合わせて使用するマグネットラッチ用ラッチ受けであって、
突出した前記ラッチが収容されるラッチ収容部を有しており、
前記ラッチ収容部の開口縁と重なる位置、及び/又は、前記ラッチ錠が取り付けられた戸の閉じ方向で前記ラッチ収容部よりも上流側となる位置に、前記ラッチとの接触に起因して生じる音を低減する騒音抑制部材を有することを特徴とするマグネットラッチ用ラッチ受け。
【請求項2】
前記騒音抑制部材は、弾性を有していることを特徴とする請求項1に記載のマグネットラッチ用ラッチ受け。
【請求項3】
本体部材を有し、
前記本体部材に前記ラッチ収容部が形成されており、
前記騒音抑制部材は、前記本体部材と一体不可分に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネットラッチ用ラッチ受け。
【請求項4】
前記騒音抑制部材は、前記戸の閉じ方向で前記ラッチ収容部よりも上流側となる位置から、前記ラッチ収容部の開口縁と重なる位置を経て、前記ラッチ収容部の内側まで延びていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマグネットラッチ用ラッチ受け。
【請求項5】
土台部材をさらに有し、
前記本体部材と前記土台部材とが係合した状態で固定対象物に固定されるものであり、
前記本体部材と前記土台部材を係合させる際、前記本体部材と前記土台部材の相対位置を変更して係合させることが可能である請求項3に記載のマグネットラッチ用ラッチ受け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力でラッチを移動させるマグネットラッチ構造において、ラッチ錠と共に使用するマグネットラッチ用ラッチ受けに関する。
【背景技術】
【0002】
戸に取り付けられるラッチ錠と、戸枠に取り付けられるラッチ受けを有し、戸を開状態から閉状態に移行させてラッチ錠がラッチ受けに近づくと、磁力によってラッチ錠の錠ケースからラッチ(ラッチボルト)が突出するマグネットラッチ構造が広く知られている。
このようなマグネットラッチ構造では、ラッチ錠側と、ラッチ受け側の一方に永久磁石を設ける。例えば、ラッチ受け側に永久磁石を設けた場合、戸がラッチ受けに近づくことによって磁力でラッチが吸着されて突出し、施錠(空締り)される。つまり、ラッチ錠側とラッチ受け側の一方に永久磁石を設けると共に、この永久磁石に吸着される部分を他方に設け、磁力によってラッチを動作させる構造となっている。
このようなマグネットラッチ構造(マグネットラッチ)として、例えば、特許文献1に開示されたマグネットラッチ錠がある。
【0003】
特許文献1のマグネットラッチ錠においても、戸を閉じていくことでラッチボルトが錠箱から突出し、ストライク側(ラッチ受け側)の筐体に形成された開口部分から筐体内にラッチボルトの一部が入り込むことで、戸が施錠された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のマグネットラッチは、戸の閉まる速度や、錠箱とストライク側の筐体の取り付け位置によっては、戸を閉めていく際にラッチボルトが開口部分の手前側で突出してしまい、ストライク側の部材に当接してしまう場合があった。
そして、特許文献1のマグネットラッチ錠のようにラッチボルトが金属製の部材である場合、突出したラッチボルトがストライク側の金属製の部材と当接してしまうと、意図しない大きな音が生じてしまう場合があった。
つまり、従来のマグネットラッチには、使用時に発生する騒音を抑制するという観点から、改良の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、使用時に発生する騒音を抑制可能なマグネットラッチ用ラッチ受けを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、磁力によって移動するラッチを備えたラッチ錠と組み合わせて使用するマグネットラッチ用ラッチ受けであって、突出した前記ラッチが収容されるラッチ収容部を有しており、前記ラッチ収容部の開口縁と重なる位置、及び/又は、前記ラッチ錠が取り付けられた戸の閉じ方向で前記ラッチ収容部よりも上流側となる位置に、前記ラッチとの接触に起因して生じる音を低減する騒音抑制部材を有することを特徴とするマグネットラッチ用ラッチ受けである。
【0008】
本様相によると、ラッチがラッチ収容部の手前側で突出してしまっても、ラッチが騒音抑制部材と接触することで騒音の発生を抑制できる。
【0009】
上記した様相は、前記騒音抑制部材は、弾性を有していることが好ましい。
【0010】
かかる様相によると、ラッチが金属性の部材であっても金属同士の衝突音が生じることがなく、騒音の発生を抑制可能であり、且つ、ラッチ受けに当接することに起因するラッチの破損を防止できる。
【0011】
上記した様相は、本体部材を有し、前記本体部材に前記ラッチ収容部が形成されており、前記騒音抑制部材は、前記本体部材と一体不可分に形成されていることが好ましい。
なお、ここでいう「一体不可分」とは、いずれかの部材を破壊、破損等しなければ分離できないこととする。
【0012】
かかる様相によると、経年使用によって不意に騒音抑制部材が外れてしまうといった問題の発生を抑制できる。
【0013】
上記した様相は、前記騒音抑制部材は、前記戸の閉じ方向で前記ラッチ収容部よりも上流側となる位置から、前記ラッチ収容部の開口縁と重なる位置を経て、前記ラッチ収容部の内側まで延びていることが好ましい。
【0014】
かかる様相によると、より騒音の発生を抑制できる。
【0015】
上記した好ましい様相は、土台部材をさらに有し、前記本体部材と前記土台部材とが係合した状態で固定対象物に固定されるものであり、前記本体部材と前記土台部材を係合させる際、前記本体部材と前記土台部材の相対位置を変更して係合させることがより好ましい。
【0016】
かかる様相によると、ラッチ受けを戸枠等の固定対象物に取り付けるとき、騒音抑制部材の固定対象物との相対位置を調整できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、使用時に発生する騒音を抑制可能なマグネットラッチ用ラッチ受けを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態にかかるラッチ受け部材を使用したドア構造を示す斜視図である。
【
図3】
図2のラッチ受け部材を示す分解斜視図である。
【
図4】
図3の本体部材を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。
【
図5】
図3の本体部材を示す図であって、(a)は、
図4(a)とは別方向から見た本体部材の分解斜視図であり、(b)は、背面図である。
【
図6】
図3の本体部材を示す図であって、(a)は、断面斜視図であり、(b)は、
図4(a)のA-A断面図である。
【
図7】
図3の土台部材を示す図であって、(a)、(b)はそれぞれ異なる方向からみた斜視図である。
【
図8】左図は、本体部材と土台部材を係合させた構造体を示す正面図であり、右図は、左図の構造体に化粧板部材を重ねる様子を示す説明図であって、(a)、(b)は、本体部材を土台部材の異なる位置にそれぞれ係合させた状態を示す。
【
図9】(a)は、
図8(a)の構造体を示す背面図であり、(b)は、
図8(b)の構造体を示す背面図である。
【
図10】左図は、
図1のドア構造においてドアを閉じる際にラッチボルトがラッチ受け部材側へ突出する様子を模式的に示す説明図であり、ドア枠部材及びラッチ受け部材を破断して上方からみた図であって、右図は、左図の状態に対応するドア及びドア枠部材を示す斜視図であり、(a)~(c)の順でドアが閉じていく。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るドア構造について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、上下方向、左右方向については、
図1の状態を基準として説明する。すなわち、ラッチ受け部材1(マグネットラッチ用ラッチ受け)の幅方向のうち、ドア4(戸)の閉じ方向で上流側(
図1、
図2の左手前側)を左方とし、同下流側(
図1、
図2の右奥側)を右方として説明する。そして、前後方向については、ラッチ受け部材1の手前側(ドア4を閉状態としたときのドア4側)を前側とし、その逆側を後側として説明する。
【0020】
本実施形態のドア構造は、ラッチ受け部材1と、ラッチ錠2と、ドア枠部材3(固定対象物)と、ドア4を有しており、ドア枠部材3にラッチ受け部材1を取り付け、ドア4にラッチ錠2を取り付けて形成されている。詳細には、このドア構造は、所謂開き戸であり、ドア4とドア枠部材3は、図示しない蝶番(連結部材)を介して回動可能に取り付けられている。
【0021】
ラッチ錠2は、錠ケースとラッチボルト2a(ラッチ)を有しており、ラッチボルト2aが錠ケースに対して出退する構造となっている。このラッチ錠2は、ラッチ受け部材1と共にマグネットラッチ(マグネットラッチ構造)を形成する。すなわち、ラッチ受け部材1とラッチ錠2の一方(本実施形態ではラッチ受け部材1)に設けられたマグネット部材37(
図1では図示しない、詳しくは後述する)の磁力により、ラッチボルト2aが突出(移動)する。
【0022】
ラッチ受け部材1は、ドア枠部材3の縦枠部分であり、戸当たりとなる部分に取り付けられている。
【0023】
本実施形態のラッチ受け部材1は、
図2、
図3で示されるように、化粧板部材10と、本体部材11と、土台部材12を有する。
【0024】
化粧板部材10は、金属製の薄板状部材であり、詳細には、正面視した形状が略縦長長方形状となる部材である。
【0025】
この化粧板部材10には、
図3で示されるように、取付用孔16と貫通孔部17が設けられている。これら取付用孔16と貫通孔部17は、いずれも化粧板部材10を厚さ方向に貫通する孔である。
【0026】
取付用孔16は、開口形状が円形で前後に延びる孔であり、上下方向に離れた位置にそれぞれ一つずつ形成されている。すなわち、本実施形態の化粧板部材10は、複数(2つ)の取付用孔16を有する。この取付用孔16は、ねじ等の締結要素を挿通可能な孔である。
なお、ここでいう「締結要素」は、ネジ、釘、ボルト、ピン等の上位概念であり、被締結物を原則的に破壊せずに締結解除可能な機械構成要素である。
【0027】
貫通孔部17は、2つの取付用孔16の間となる位置に形成された貫通孔であり、ラッチボルト2aが通過する部分となるラッチ通過孔17aと、内側に防音部材45(詳しくは後述する)の一部が配される部材配置孔17bとが一体となった孔である。ラッチ通過孔17a、部材配置孔17bは、いずれも正面視において、四角形状となる貫通孔であり、ラッチ通過孔17aが部材配置孔17bに比べて開口面積が大きい。具体的には、ラッチ通過孔17a、部材配置孔17bは、左右方向で並んだ状態となっており、ラッチ通過孔17aの一辺の一部と、部材配置孔17bの一辺の全体が連続している。
【0028】
本体部材11は、
図4、
図5で示されるように、取付板部20と、隆起部21と、係合爪部22とを有している。
取付板部20は、正面視した形状が略縦長長方形状となる部分である。取付板部20には、取付孔部30と、中間孔部31を有する。
取付孔部30は、左右方向に延びる長孔であり、上下方向に離れた位置に一つずつ形成されている。すなわち、本実施形態の本体部材11は、複数(2つ)の取付孔部30を有する。
中間孔部31は、開口形状が略横長四角形状となる孔であり、2つの取付孔部30の間となる位置で、上下方向に離れた位置に一つずつ形成されている。
【0029】
隆起部21は、
図5で示されるように、外形が略直方体状の部分であり、取付板部20の一主面から後方側に突出している。この隆起部21の後方側の部分には、部材収容部35が形成されている。
部材収容部35は、前方に窪んだ凹部であって略直方体状の空間を形成する。
【0030】
本実施形態のラッチ受け部材1は、マグネット部材37を有している。このマグネット部材37は、部材収容部35に略丁度嵌入されて本体部材11に取り付けられている。
マグネット部材37は、永久磁石である。
【0031】
係合爪部22は、
図6(a)で示されるように、後方側に向かって延びており、延び方向の基端側に位置する基端側部22aと、先端側に位置する先端側部22bとが一体に形成されている。
基端側部22aは、一部が屈曲して延びるL字板状の部分であり、立板状の部分と水平板状の部分との境界に屈曲部を有する。この基端側部22aは、弾性変形可能なように形成されている。
先端側部22bは、横断面形状が略三角形状で左右に延びる略三角柱状の部分であって、後方に向かうにつれて厚さが薄くなる部分である。詳細には、上方に位置する係合爪部22では、基端側部22aの上面と先端側部22bの上面が段差を介して連続しており、先端側部22bの上面が後方に向かうにつれて下り勾配となる傾斜面となっている。下方に位置する係合爪部22は、上方に位置する係合爪部22を天地逆とした形状である。
【0032】
この係合爪部22は、中間孔部31の内側から延びる部分であり、一部が中間孔部31の内部に配される。ここで、
図5、
図6(a)で示されるように、隆起部21の上側部分(上側面)と下側部分(下側面)には、それぞれ下方に窪む上側凹部21aと、上方に窪む下側凹部21bが形成されている。そして、上側の係合爪部22の一部が上側凹部21aの内側に配され、下側の係合爪部22の一部が下側凹部21bの内側に配されている。
【0033】
本体部材11には、
図4、
図6で示されるように、ドア4が閉じたときにラッチボルト2aが入り込むラッチ収容部40が設けられている。
ラッチ収容部40は、取付板部20の前側の主面に開口を有し、後方に窪んだ窪み部分(凹部)である。すなわち、ラッチ収容部40は、取付板部20を貫通して隆起部21の内部まで至る部分に形成される。
【0034】
ラッチ収容部40は、
図4で示されるように、上壁部40aと、第一側壁部40b及び第二側壁部40cからなる2つの側壁部と、下壁部40dと、背面壁部40eを有しており、これらに囲まれた略直方体状の空間を形成する。第一側壁部40b、第二側壁部40cは、左右方向で離間対向しており、第一側壁部40bが左方に位置し、第二側壁部40cが右方に位置する。
【0035】
ここで、
図6で示されるように、隆起部21の内部では、背面壁部40eの後方側に部材収容部35が位置する。すなわち、隆起部21の内部には背面壁部40eを形成する仕切壁状の部分(仕切壁部)があり、この仕切壁部を挟んだ両側にラッチ収容部40と部材収容部35(マグネット部材37)が位置している。
【0036】
本実施形態の本体部材11は、
図4等で示されるように、特徴的な部分として、防音部材45(騒音抑制部材)を有している。
【0037】
防音部材45は、ゴムを主たる原料とするゴム製の部材であり、弾性を有し、弾性変形が可能である。なお、ここでいう「主たる原料(主原料)」とは、機能を発揮するために十分な量が含まれていることをいう。
【0038】
防音部材45は、取付板部20よりも前方に位置する手前側部45aと、奥側部45bを有している。
手前側部45aでは、
図4(a)、
図6(a)等で示されるように、上下方向の中央側の部分が、上端側の部分と下端側の部分よりも前方に盛り上がった形状となっている。
【0039】
ここで、防音部材45は、
図6(a)等で示されるように、外部に露出している部分が平面視で略L字状に延びている。すなわち、防音部材45の外部に露出する部分は、あたかも、取付板部20の前側主面と、この前側主面と第一側壁部40bの内側面がなす角部分と、第一側壁部40bの内側面に添え当てられたような形状となっている。
【0040】
すなわち、防音部材45(手前側部45a)は、
図4(b)等で示されるように、正面視において、ラッチ収容部40よりも左方から右側に向かって延び、ラッチ収容部40の開口縁と重なる部分を経て、同開口縁の内側となる位置まで延びている。すなわち、防音部材45の一部と、ラッチ収容部40の開口縁の一部(正面視で左側の一辺となる部分の一部)とが、正面視で重なった状態となる。そして、防音部材45の他の一部は、正面視においてラッチ収容部40の開口縁で囲まれた領域内に配される。
また、奥側部45bは、
図6等で示されるように、外部に露出する部分が後方に向かって延びている。このとき、奥側部45bは、背面壁部40eに至る部分まで延びており、奥側部45bの後端部分が背面壁部40eと接した状態となっている。
すなわち、本実施形態では、奥側部45bの前端部分と、第一側壁部40bの前端部分の前後方向における位置が同じであり、奥側部45bの後端部分と、第一側壁部40bの後端部分の前後方向の位置が同じとなっている。
【0041】
なお、防音部材45の上面及び下面と、取付板部20の前側主面及び第一側壁部40bの内側面の間に段差が形成されており、防音部材45の側面と取付板部20の前側主面の間にもまた段差が形成されている。
【0042】
ここで、防音部材45の上下方向の長さは、ラッチ収容部40の上下方向の長さよりも短い。そして、防音部材45の上端部分は、ラッチ収容部40の上端部分よりも下方に位置し、防音部材45の下端部分は、ラッチ収容部40の下端部分よりも上方に位置している。つまり、防音部材45は、ラッチ収容部40の上端部分と下端部分の間に全体が位置している。
【0043】
さらに、本実施形態の本体部材11は、合成樹脂製の部材であり、防音部材45をインサート品としたインサート成形によって形成されている。つまり、本体部材11と防音部材45とは一体不可分に形成されており、原則的に非破壊での分離ができない状態となっている。
【0044】
なお、本実施形態の本体部材11は、
図5で示されるように、隆起部21の側方に突起部48が形成されている。この突起部48は、詳細には、取付板部20の後方側の主面からさらに後方に突出しており、隆起部21の2つの側面部分のうち、左方(
図5では右方)の側面部分と連続する縦長の突起部分である。
【0045】
土台部材12は、
図7で示されるように、取付板部50と箱状部51を有している。
【0046】
取付板部50は、略縦長長方形状となる板体の一部が欠落したような形状であり、詳細には、上下方向の中途部分が欠落したような形状となっている。つまり、取付板部50は、上下で離れた位置に配される上側フランジ板部50aと下側フランジ板部50bから構成されている。また、上側フランジ板部50aと下側フランジ板部50bの間に2つの欠落部55が形成されている。2つの欠落部55は、左右方向に離れた位置にそれぞれ形成されている。
また、上側フランジ板部50aと下側フランジ板部50bには、それぞれ取付用孔57が形成されている。この取付用孔57は、それぞれ上側フランジ板部50a、下側フランジ板部50bを貫通する貫通孔であり、開口形状が円形で前後に延びる孔であって、ねじ等の締結要素を挿通可能な孔である。
【0047】
箱状部51は、前側に開口を有する略直方体状の部分であり、
図7(b)等で示されるように、上壁部51aと、下壁部51bと、2つの側壁部51cと、後壁部51dを有している。
【0048】
箱状部51は、取付板部50の後方側に位置している。そして、箱状部51の前側部分の一部は、取付板部50の後側部分と一体に連続している。
すなわち、上側フランジ板部50aの下側部分と、箱状部51の上側部分とが一体に連続している。詳細には、箱状部51のうち、上壁部51aと、2つの側壁部51cの上側部分とが上側フランジ板部50aの後側部分と一体に連続している。
また、下側フランジ板部50bの上側部分と、箱状部51の下側部分とが一体に連続している。詳細には、箱状部51のうち、下壁部51bと、2つの側壁部51cの下側部分とが下側フランジ板部50bの後側部分と一体に連続している。
【0049】
そして、この土台部材12には、土台側収容空間58が形成されている。
土台側収容空間58は、取付板部50の前面に開口を有し、取付板部50を貫通し、箱状部51の内部に至るまでの部分に形成される空間である。すなわち、後方側に窪んだ略直方体状の空間となっている。したがって、この土台側収容空間58は、大部分が上壁部51aと、下壁部51bと、2つの側壁部51cと、後壁部51dによって囲まれる。
【0050】
ここで、
図7(b)等で示されるように、箱状部51の上側と下側には、それぞれ係合孔部59が設けられている。この係合孔部59は、土台側収容空間58と外部を連通する孔である。
詳細には、上側の係合孔部59は、上壁部51aの一部における前端から後端までの部分と、この部分と連なる後壁部51dの一部とが欠落して形成されている。そして、上壁部51aの一部と、後壁部51dの一部とをそれぞれ貫通している。
また、下側の係合孔部59は、下壁部51bの一部における前端から後端までの部分と、この部分と連なる後壁部51dの一部とが欠落して形成されている。そして、下壁部51bの一部と、後壁部51dの一部とをそれぞれ貫通している。
これら2つの係合孔部59は、上下方向で離間対向している。
【0051】
続いて、本実施形態に係るラッチ受け部材1の組み立て構造について説明する。
【0052】
本実施形態のラッチ受け部材1は、
図2、
図3で示されるように、土台部材12と本体部材11を係合させた状態とし、土台部材12と本体部材11が係合してなる構造体の前側を覆うように化粧板部材10を配した状態とする。そして、化粧板部材10の取付用孔16と、本体部材11の取付孔部30と、土台部材12の取付用孔57に締結要素を挿通することで、ラッチ受け部材1がドア枠部材3等の固定対象物に固定された状態となる。
【0053】
詳細に説明すると、土台部材12は、ラッチ受け部材1がドア枠部材3に取り付けられたとき(
図1参照)、少なくとも後側部分(箱状部51)がドア枠部材3に形成された取付用孔部(図示しない)に収容された状態となる(詳細な図示を省略する)。すなわち、土台部材12は、ラッチ受け部材1の取り付け時に固定対象物と直接接触する部材となっている。
【0054】
そして、このような土台部材12に対し、本体部材11を係合させた状態とする。この状態では、
図2、
図8等で示されるように、土台部材12の土台側収容空間58(
図3等参照)の内部に、本体部材11の隆起部21(
図3等参照)が挿入された状態となる。
このとき、
図2等で示されるように、本体部材11の配置位置によっては(詳しくは後述する)、土台部材12の欠落部55の内部に、本体部材11の突起部48の一部が入り込んだ状態となる。
【0055】
さらに、
図9等で示されるように、本体部材11の2つの係合爪部22と、土台部材12の2つの係合孔部59とが互いに係合した状態となっている。すなわち、2つの係合爪部22と、2つの係合孔部59とは対となる係合部であり、2つの係合爪部22が、それぞれ別の係合孔部59と係合する。
詳細に説明すると、土台部材12と本体部材11を近接させ、本体部材11を土台部材12側に押し込む等することで、係合爪部22の基端側部22a(
図6(a)参照)が一時的に弾性変形する(詳細な図示は省略する)。そして、係合爪部22の先端側の一部分が係合孔部59の内側に入り込んだ状態となり(
図9参照)、係合爪部22と係合孔部59とが係合した状態となる。
【0056】
このとき、
図9等で示されるように、係合爪部22の先端側部22b(
図6(a)等参照)の前方(
図9では後方)に取付板部50が位置する。このため、本体部材11を単に前方に移動させようとしても、係合爪部22(先端側部22b)が取付板部50に当接し、その移動が阻止される。
【0057】
本実施形態のラッチ受け部材1では、
図8、
図9で示されるように、本体部材11と土台部材12を係合させるとき、本体部材11と土台部材12の相対位置を変更可能となっている。つまり、本体部材11の土台部材12に対する取り付け位置を変更可能となっている。
【0058】
詳細に説明すると、
図8で示されるように、本体部材11と土台部材12は、上下方向の長さが略同一である一方、本体部材11が土台部材12に比べて幅方向(左右方向)の長さが短い。
そして、隆起部21(
図3等参照)の幅方向の長さが、土台側収容空間58(
図3等参照)の幅方向の長さよりも短い。
また、
図9で示されるように、係合爪部22の幅方向の長さが、係合孔部59の幅方向の長さよりも短い。
さらに、
図8で示されるように、本体部材11の取付孔部30は長孔であり、土台部材12の取付用孔57よりも幅方向(ラッチ受け部材1の幅方向)における長さが長い。
【0059】
以上のことから、本体部材11は、土台部材12と係合した状態で、土台部材12に対する相対位置を変更可能となる。すなわち、土台部材12が固定され、本体部材11と土台部材12とが係合した状態では、本体部材11は、係合した状態を維持したまま左右方向に移動可能となっている。
そして、本体部材11の土台部材12に対する取り付け位置を変更しても、
図8で示されるように、本体部材11の取付孔部30の一部と、土台部材12の取付用孔57とが前後方向で重なる状態が維持される。すなわち、本体部材11の土台部材12に対する位置を左右方向におけるいずれの位置に変更しても、取付孔部30の一部と取付用孔57とが一連の孔を形成する。
【0060】
したがって、土台部材12を取り付け位置に配し、本体部材11と土台部材12を係合させた後、本体部材11の適宜の位置に移動させる。そして、化粧板部材10の取付用孔16と、取付孔部30の一部と、取付用孔57が前後方向で重なって一連の孔を形成する状態とし、締結要素を挿通することで、ラッチ受け部材1を固定対象物に固定することができる。
【0061】
なお、化粧板部材10は、上下方向の長さ、幅方向の長さが、土台部材12の上下方向の長さ、幅方向の長さと略同一の長さとなっている。
【0062】
以上のように、本体部材11の土台部材12に対する取り付け位置を変更可能な構造によると、ラッチ受け部材1をドア枠部材3に固定するとき(
図1参照)、本体部材11のドア枠部材3に対する位置を変更(調整)できる。すなわち、ラッチ収容部40や防音部材45のドア枠部材3に対する位置変更が可能となっている。
【0063】
加えて、本実施形態の本体部材11は、土台部材12に対して天地逆として取り付けることが可能となっている。例えば、本体部材11を、
図2、
図3で示した状態とは天地逆として土台部材12に取り付けることで、防音部材45が左方側に位置する状態から、防音部材45が右方側に位置する状態とすることができる。なお、この場合、化粧板部材10もまた天地逆として取り付けることとなる。
つまり、本実施形態のラッチ受け部材1は、ドア枠等の固定対象物に固定するとき、戸の閉じ方向に応じて防音部材45の位置を変更可能となっている。例えば、戸の閉じ方向が
図1で示す方向(手前側から奥側に向かう方向)と逆方向の場合であっても、本体部材11を天地逆として防音部材45の位置を変更することで、防音部材45を閉じ方向の上流側に配することができる。なお、この場合、ラッチ受け部材1の全体を天地逆にして取り付けて、防音部材45の位置を変更してもよい。
【0064】
続いて、本実施形態のドア構造において、ドア4が想定とは異なる速度で閉じられる等することにより、ラッチボルト2aが想定よりも上流側(戸の閉じ方向で上流側)で突出してしまった場合について、詳細に説明する。
【0065】
図10(a)で示されるように、ドア4が閉じられ、ラッチ錠2がラッチ受け部材1に近づくことで、ラッチ錠2の錠ケースからラッチボルト2aが突出していく。
そして、ラッチボルト2aが規定位置よりも上流側で突出すると、
図10(b)で示されるように、ラッチボルト2aの突出端が防音部材45に当接(接触)する。詳細には、防音部材45の手前側部45aにラッチボルト2aが当接する。
【0066】
このとき、防音部材45は、上記したように、樹脂製であり、弾性変形が可能な部材であるため、金属同士の衝突音はもちろん、衝突に伴う騒音の発生を防止(抑制)できる。すなわち、ラッチ収容部40の周辺部分にラッチボルト2aが当接しても、大きな音が発生することがない。
また、防音部材45は、上記したように、本体部材11と一体不可分に形成されている。このため、経年使用によってラッチボルト2aが防音部材45に繰り返し当接しても、防音部材45が本体部材11から外れてしまうといった問題の発生を防止できる。
【0067】
そして、ドア4が閉じられていくことで、ラッチボルト2aが防音部材45と接触した状態を維持しつつ、ドア4の閉じ方向の下流側へ移動していく。なお、この際もラッチボルト2aが防音部材45と接触した状態を維持するため、騒音の発生を防止できる。
【0068】
さらに、ドア4が閉状態となることで、
図10(c)で示されるように、ラッチボルト2aの先端側(突出端側)の部分がラッチ収容部40に収容された状態となる。すなわち、ラッチボルト2aが化粧板部材10の貫通孔部17を経て、ラッチ収容部40の内部に入り込んだ状態となる。
本実施形態のラッチ受け部材1は、防音部材45が奥側部45bを有しているため、何等かの理由で閉状態(
図10(c)で示す状態)となったドア4が開き方向に移動しても、ラッチボルト2aが防音部材45(奥側部45b)と当接する。このことにより、ラッチボルト2aがラッチ収容部40の内周面に当接することに起因する騒音の発生を防止できる。
【0069】
上記した実施形態の防音部材45は、ゴムを主原料とした弾性変形可能な部材としたが、本発明はこれに限るものではない。本発明の騒音抑制部材は、金属が衝突したときに音が発生しない、又は、一定以上の大きな音が発生しない部材であればよい。
この騒音抑制部材の原料(主原料)としては、天然ゴムや合成ゴムの他、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーが考えられる。また、これらを適宜組み合わせたものが考えられる。例えば、シリコーンゴム等を採用することが考えられる。
【符号の説明】
【0070】
1 ラッチ受け部材(マグネットラッチ用ラッチ受け)
2 ラッチ錠
2a ラッチボルト(ラッチ)
3 ドア枠部材(固定対象物)
4 ドア(戸)
11 本体部材
12 土台部材
40 ラッチ収容部
45 防音部材(騒音抑制部材)