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特開2023-74684土留パネル及び該土留パネルを用いた土留構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074684
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】土留パネル及び該土留パネルを用いた土留構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20230523BHJP
   E04C 1/39 20060101ALI20230523BHJP
   E04C 2/32 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E02D17/04 Z
E04C1/39 104
E04C2/32 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187735
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正宏
(72)【発明者】
【氏名】鎌崎 祐治
(72)【発明者】
【氏名】若山 崇大
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162BB02
2E162BB03
2E162CB02
(57)【要約】
【課題】施工現場における補強部材同士のボルト接合作業を省略できる土留パネル及び該土留パネルを用いた土留構造物を提供する。
【解決手段】土留パネルは、波形の山部及び谷部が長手方向に沿って延びるように形成された波付け鋼板と、波付け鋼板の長手方向の両端部に設けられた一対の縦フランジ部と、波付け鋼板の長手方向に沿って延び、波付け鋼板の短手方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部に設けられた補強部材と、を備えている。補強部材は、一対の縦フランジ部の間に挟まれて配置され、長手方向の両端部が縦フランジ部の内面に接合されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削して形成された掘削孔に設置されて土留構造物を構築するために用いられる土留パネルであって、
波形の山部及び谷部が長手方向に沿って延びるように形成された波付け鋼板と、
前記波付け鋼板の長手方向の両端部に設けられた一対の縦フランジ部と、
前記波付け鋼板の長手方向に沿って延び、前記波付け鋼板の短手方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部に設けられた補強部材と、を備え、
前記補強部材は、一対の前記縦フランジ部の間に挟まれて配置され、長手方向の両端部が前記縦フランジ部の内面に接合されている、土留パネル。
【請求項2】
前記補強部材は、溝形鋼であり、溝の内底面を前記波付け鋼板の上端部又は下端部に対向させて配置されている、請求項1に記載の土留パネル。
【請求項3】
前記補強部材は、山形鋼であり、屈曲の内面を前記波付け鋼板の上端部又は下端部に対向させて配置されている、請求項1に記載の土留パネル。
【請求項4】
前記波付け鋼板は、波形断面が角波状に形成された構成である、請求項1~3のいずれか一項に記載の土留パネル。
【請求項5】
前記波付け鋼板は、波形断面がサインカーブ状に形成された構成である、請求項1~3のいずれか一項に記載の土留パネル。
【請求項6】
前記波付け鋼板は、短手方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部に横フランジ部を有する、請求項4又は5に記載の土留パネル。
【請求項7】
前記波付け鋼板の前記横フランジ部には、長手方向に沿って複数の連結孔が形成されており、
前記補強部材は、前記連結孔に対応した位置に接合孔が形成されている、請求項6に記載の土留パネル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の土留パネルが前記掘削孔の壁面に沿って複数配置され、前記土留パネル同士を連結して組み立てられた構造体を含む、土留構造物。
【請求項9】
前記掘削孔の周方向に隣り合う前記土留パネルは、隣り合う前記縦フランジ部が接合されて連結されている、請求項8に記載の土留構造物。
【請求項10】
前記掘削孔の孔軸方向に隣り合う前記土留パネルは、隣り合う前記補強部材同士、又は隣り合う前記補強部材と前記波付け鋼板の短手方向の端部とを突き合せて接合されている、請求項8又は9に記載の土留構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留パネル及び土留パネルを用いた土留構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、地面を掘削して形成された掘削孔に波付け鋼板からなる土留パネルを組み立てて構築された土留構造物が知られている。土留構造物は、掘削孔の壁面に沿って複数の波付け鋼板を環状に配置して形成された構造体を、孔軸方向に積み重ねて構築される。
【0003】
土留構造物は、掘削孔の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きくなり、波付け鋼板だけでは剛性が足りない場合がある。また、深度の深さにかかわらず、土質の条件等により、土圧が大きい場合もある。更に、孔軸方向の深度が深くなるにつれて、上方に配置された構造体の自重が下方に配置された構造体に作用する。このため、土留構造物では、剛性が足りない箇所において、上下に隣り合う波付け鋼板の間に補強リングと呼ばれるH形鋼を挟み込み剛性を高めている。
【0004】
補強リングは、複数のH形鋼を、そのフランジ部が地山側と掘削側に向くように、掘削孔の周方向に沿って配置され、隣り合うH形鋼のフランジ部が継手板を介して接合されて構築される。継手板は、H形鋼における地山側のフランジ部と掘削側のフランジとにそれぞれ当てがわれて、隣り合うH形鋼のフランジ部にそれぞれボルト接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-066845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、継手板を介して隣り合うH形鋼のフランジ部を接合する際に、地山側に配置された継手板をボルト接合する場合では、作業者は屈んだ状態で、構築途中の土留構造物の下端部から地山側に回り込み、窮屈な姿勢でボルト締めをすることを強いられていた。つまり、地山側におけるボルト接合の作業性が悪く煩雑で手間が掛かるため、作業者にとって負担が大きかった。その結果、工期が長引き工費が嵩む問題がある。また、掘削孔の周方向に沿って複数のH形鋼を配置し、左右に隣り合うH形鋼をフランジ継手で接続する場合に、作業者の目が届かない接続箇所が存在する。そのため、この組立作業方法では、目視が困難な状態での作業となり、組立が困難となることに加えて、安全の確認に懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、施工現場における補強部材同士のボルト接合作業を省略できる、土留パネル及び該土留パネルを用いた土留構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る土留パネルは、地面を掘削して形成された掘削孔に設置されて土留構造物を構築するために用いられる土留パネルであって、波形の山部及び谷部が長手方向に沿って延びるように形成された波付け鋼板と、前記波付け鋼板の長手方向の両端部に設けられた一対の縦フランジ部と、前記波付け鋼板の長手方向に沿って延び、前記波付け鋼板の短手方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部に設けられた補強部材と、を備え、前記補強部材は、一対の前記縦フランジ部の間に挟まれて配置され、長手方向の両端部が前記縦フランジ部の内面に接合されているものである。
【0009】
本発明に係る土留構造物は、上記構成の土留パネルが前記掘削孔の壁面に沿って複数配置され、前記土留パネル同士を連結して組み立てられた構造体を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、補強部材が一対の縦フランジ部の間に挟まれて配置され、該補強部材の長手方向の両端部が縦フランジ部の内面に接合された構成なので、掘削孔の周方向に沿って隣り合う土留パネルの縦フランジ部同士を接合することで、隣り合う補強部材同士を継手板を介してボルト接合することなく、周方向に沿って設置することができる。よって、施工現場における補強部材同士のボルト接合作業を省略できるので、施工作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】土留構造物の一例を模式的に示した斜視図である。
図2】土留構造物を構成する土留パネルの一例を示した斜視図である。
図3】土留構造物を構成する土留パネルの一例を示した縦断面図である。
図4】土留構造物の構築工法の一例を模式的に示した説明図である。
図5】実施の形態1に係る土留パネルを示した斜視図である。
図6】実施の形態1に係る土留パネルを示した縦断面図である。
図7】実施の形態1に係る土留パネルの補強部材を示した斜視図である。
図8】実施の形態1に係る土留パネルを上下に配置して連結した状態を示した説明図である。
図9】実施の形態1に係る土留パネルを掘削孔の周方向に配置して連結した状態を示した説明図である。
図10】実施の形態1に係る土留パネルの変形例を示した縦断面図である。
図11】実施の形態2に係る土留パネルを示した縦断面図である。
図12】実施の形態2に係る土留パネルを上下に配置して連結した状態を示した説明図である。
図13】実施の形態3に係る土留パネルを示した縦断面図である。
図14】実施の形態4に係る土留パネルを示した縦断面図である。
図15】実施の形態4に係る土留パネルを上下に配置して連結した状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。また、本実施の形態では、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左、右、縦、横等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0013】
実施の形態1.
先ず、土留構造物200の一例を図1図4を参照して説明する。図1は、土留構造物200の一例を模式的に示した斜視図である。図2は、土留構造物200を構成する土留パネル101の一例を示した斜視図である。図3は、土留構造物200を構成する土留パネル101の一例を示した縦断面図である。土留構造物200は、例えば建築構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物を構築する際に構築されるものである。土留構造物200は、地面を掘削して形成された鉛直の掘削孔に、図1に示すような環状の構造体201を掘削孔の孔軸方向に沿って複数段に積み重ねて構築される。
【0014】
土留構造物200を構成する各々の構造体201は、同じ断面係数から成る複数の土留パネル101を環状に配置して形成された構成とされている。土留パネル101は、図2及び図3に示すように、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された1枚の波付け鋼板1と、波付け鋼板1の長手方向Xとなる両端部に設けられた縦フランジ部2と、を備えている。
【0015】
波付け鋼板1は、波形断面が角波状となるように、圧延鋼板を角波状に屈曲成形した構成である。本実施の形態における角波状とは、一例として、角が丸められた台形波状である。波付け鋼板1は、一例として、3つの山部1aと2つの谷部1bとで構成されている。但し、山部1aと谷部1bの個数は、図示した個数に限定されない。山部1aと谷部1bは、略平行となるように形成されている。波付け鋼板1は、谷部1bの谷底が狭くなるように、山部1aと谷部1bとを繋ぐウェブ1cを水平方向に対し若干傾斜させて形成されている。ウェブ1cを若干傾斜させることで、波付けのための塑性加工を行う際に、離型しやすくなり、製造が容易となる。また、波付け鋼板1は、山部1aと谷部1bとを繋ぐウェブ1cの傾斜角度を小さくすることで、山部1aと谷部1bとの間が広くなり、面方向に曲げモーメントが負荷されたときの剛性が高くなる。波付け鋼板1の曲げの中立軸における断面係数は、山部1aと谷部1bの幅が広いほど大きくなるからである。波付け鋼板1のウェブ1cの水平方向に対する傾斜角度は、0°以上、20°以下に設定され、更に望ましくは、0°以上3°以下に設定される。
【0016】
波付け鋼板1は、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。山部1aと谷部1bの板厚は、ウェブ1cと同じ板厚で形成されているが、ウェブ1cよりも厚くしても良い。このように構成されることにより、中立軸から遠い山部1aと谷部1bの断面積が大きくなり、波付け鋼板1の断面係数をさらに高くすることができる。
【0017】
図2及び図3に示すように、波付け鋼板1は、短手方向Yの両端部に、波形の両端縁を曲げ加工によって形成された横フランジ部10を有している。横フランジ部10は、孔軸方向に対してほぼ垂直に形成された平板状の部分である。横フランジ部10には、掘削孔の孔軸方向に積み重ねた上下に隣り合う波付け鋼板同士を連結するための連結孔10aが長手方向Xに沿って複数形成されている。上下に隣り合う波付け鋼板1は、横フランジ部10を突き合わせ、連結孔10aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、上下に隣り合う波付け鋼板1の横フランジ部10を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔10aの個数は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0018】
縦フランジ部2は、波付け鋼板1の長手方向Xの両端縁にプレートを溶接して設けられた構成である。縦フランジ部2は、土留構造物200に必要な強度及び剛性に応じて厚さが決定される。縦フランジ部2には、掘削孔の周方向に配置した左右に隣り合う土留パネル101同士を連結するための連結孔2aが上下方向(Y方向)に沿って複数形成されている。左右に隣り合う土留パネル101同士は、縦フランジ部2を突き合わせ、連結孔2aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、左右に隣り合う土留パネル101の縦フランジ部2を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔2aの個数は、一例であって、これに限定されるものではない。なお、図1に示すように、構造体201の矩形の角部には、角部材4を介してL字形に加工されたコーナー部用の土留パネル102が配置されている。土留パネル102を構成する波付け鋼板1及び縦フランジ部2は、上記構成と同じである。
【0019】
なお、図1図3に示されている土留パネル101の断面形状は、一例であり、例えばサインカーブ状に形成された構成でもよいし、他の形状であっても良い。
【0020】
次に、上記土留構造物200の構築工法の一例を、図4を参照して説明する。図4は、土留構造物200の構築工法の一例を模式的に示した説明図である。先ず、図4(A)に示すように、地面300に土留構造物200を構築するための掘削孔301を形成する。掘削孔301は、土留構造物200の外径よりも例えば20cm程度の大きい外径で形成される。掘削孔301の深さは、一例として0.5m~1.5m程度である。そして、掘削孔301の壁面に沿って土留パネル101を環状に配置して構造体201を組み立てる。土留パネル101は、山部1aが地山側に向き、谷部1bが掘削側に向くように配置される。なお、地山側とは土留パネル101の外面側であり、掘削側とは土留パネル101の内面側である。
【0021】
構造体201は、掘削孔301の壁面の周方向に沿って土留パネル101を順に配置し、左右に隣り合う土留パネル101をボルト及びナットで連結して組み立てられる。上段の構造体201の土留パネル101と、下段の構造体201の土留パネル101とは、ボルト及びナットで連結される。なお、上段の土留パネル101と下段の土留パネル101とは、千鳥配置となるように、周方向の位置をずらして配置される。これにより、土留構造物200は、周方向の各位置において強度及び剛性のばらつきを抑えることができる。但し、土留パネル101は、縦フランジ部2に十分な厚さを持たせれば、千鳥配置とすることなく孔軸方向に連続して設置してもよい。このように、構造体201を孔軸方向に沿って複数段積み重ねて(図示例の場合は3段)土留構造物200の一部が構築される。
【0022】
次に、図4(B)に示すように、最上段に位置する構造体201を地面300に設置した井桁400で固定した後、構造体201の外側の掘削孔301を掘削土で埋め戻す。なお、最上段に位置する構造体201を地面300に固定する手段は、井桁400に限定されず、例えばコンクリートを用いてもよい。
【0023】
そして、図4(C)に示すように、地盤を掘削しつつ、構造体201を組み立て、所定の深度まで掘り進める。なお、最上段に位置する構造体201を井桁400で固定した後は、上段の構造体201の下端に、掘削孔301の壁面の周方向に沿って土留パネル101を配置し、上段の土留パネル101にボルト及びナットで連結するとともに、左右に隣り合う土留パネル101をボルト及びナットで連結して、下段の構造体201を構築していく。なお、土留パネル101と掘削孔301との間には、裏込注入材として、コンクリート又はモルタルが充填される。
【0024】
このように、土留構造物200は、地面300を掘削して形成された鉛直の掘削孔301に、図1に示すような環状の構造体201を掘削孔301の孔軸方向に沿って複数段に積み重ねて構築される。なお、土留構造物200は、図1に示す矩形状に限定されず、例えば平面視において、円形状、小判のような形をした長円形状や、馬蹄形のようにU字状等でもよい。波付け鋼板1は、土留構造物200の形状に応じた形状で構成するものとする。
【0025】
ところで、土留構造物200は、掘削孔301の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きくなり、剛性が足りない場合がある。また、深度の深さにかかわらず、土質の条件等により、土圧が大きい場合もある。更に、孔軸方向の深度が深くなるにつれて、上方に配置された構造体201の自重が下方に配置された構造体201に作用する。
【0026】
このため、従来の土留構造物では、深度が深い箇所において、上下に隣り合う構造体201の間に補強リングと呼ばれるH形鋼を挟み込み剛性を高めている。補強リングは、複数のH形鋼を、そのフランジ部が地山側と掘削側に向くように、掘削孔の周方向に沿って配置され、隣り合うH形鋼のフランジ部が継手板を介して接合されて構築される。継手板は、H形鋼における地山側のフランジ部と掘削側のフランジとにそれぞれ当てがわれて、隣り合うH形鋼のフランジ部にそれぞれボルト接合される。
【0027】
しかしながら、継手板を介して隣り合うH形鋼のフランジ部を接合する際に、地山側に配置された継手板をボルト接合する場合では、作業者は屈んだ状態で、構築途中の土留構造物の下端部から地山側に回り込み、窮屈な姿勢でボルト締めをすることを強いられていた。つまり、地山側におけるボルト接合の作業性が悪く煩雑で手間が掛かるため、作業者にとって負担が大きかった。その結果、工期が長引き工費が嵩む問題がある。また、掘削孔301の周方向に沿って複数のH形鋼を配置し、左右に隣り合うH形鋼をフランジ継手で接続する場合に、作業者の目が届かない接続箇所が存在する。そのため、この組立作業方法では、目視が困難な状態での作業となり、ボルトが確実に接続できたことを確認することができず、組立が困難となることに加えて、安全の確認に懸念がある。
【0028】
そこで、本実施の形態に係る土留パネル100では、施工現場における補強部材3同士の周方向のボルト接合作業を省略できる構成としたことを特徴としている。図5は、実施の形態1に係る土留パネル100を示した斜視図である。図6は、実施の形態1に係る土留パネル100を示した縦断面図である。図7は、実施の形態1に係る土留パネル100の補強部材3を示した斜視図である。
【0029】
本実施の形態1に係る土留パネル100は、図5及び図6に示すように、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された波付け鋼板1と、波付け鋼板1の長手方向Xの両端部に設けられた一対の縦フランジ部2と、波付け鋼板1の長手方向Xに沿って延び、波付け鋼板1の下端部に設けられた補強部材3と、を備えている。
【0030】
波付け鋼板1及び縦フランジ部2は、上記した土留パネル101と同じ構成である。つまり、波付け鋼板1は、波形断面が角波状となるように、圧延鋼板を角波状に屈曲成形した構成である。本実施の形態における角波状とは、一例として、角が丸められた台形波状である。また、図5及び図6に示すように、波付け鋼板1は、短手方向Yの両端部に、波形の両端縁を曲げ加工によって形成された横フランジ部10を有している。縦フランジ部2は、波付け鋼板1の長手方向Xの両端縁にプレートを溶接して設けられた構成である。縦フランジ部2は、土留構造物200に必要な強度及び剛性に応じて厚さが決定される。
【0031】
補強部材3は、図6及び図7に示すように、溝形鋼であり、溝の内底面を波付け鋼板1の下端部に対向させて配置されている。補強部材3は、図5に示すように、一対の縦フランジ部2、2の間に挟まれて配置され、長手方向Xの両端面を縦フランジ部2の内面に突き合わせ、両端部が縦フランジ部2に溶接されて接合されている。縦フランジ部2は、補強部材3のウェブ30の幅寸法に合わせて横幅が形成されている。なお、縦フランジ部2は、補強部材3のウェブ30の端縁からZ方向にはみ出すように、該ウェブ30の幅寸法よりも横幅を大きくして、補強部材3を覆うように取り付けられた構成でもよい。一方、補強部材3は、波付け鋼板1には接合されておらず、図6に示すように、ウェブ30の内面を波付け鋼板1の横フランジ部10に当接させて配置されている。このように、補強部材3は、波付け鋼板1及び縦フランジ部2と一体化させた構成である。なお、補強部材3は、波付け鋼板1に接合されている必要はないが、波付け鋼板1に例えば溶接等で接合されていても特に問題はない。例えば、補強部材3は、長手方向Xの長さが長い場合など、形状保持のため、波付け鋼板1に断続溶接してもよい。
【0032】
補強部材3は、図6に示すように、フランジ31と谷部1bとの間に隙間Sが形成される大きさで構成されている。上下左右に配置された土留パネル100A同士の接合作業時において、波付け鋼板1の谷部1bの空間に作業者の手又は工具を入れるための隙間Sが必要だからである。また、図6及び図7に示すように、補強部材3のウェブ30には、波付け鋼板1の横フランジ部10に形成された連結孔10aに対応する位置に接合孔30aが形成されている。
【0033】
なお、補強部材3は、波付け鋼板1の下端部に配置された構成を示したが、これに限定されず、波付け鋼板1の上端部及び下端部にそれぞれ配置してもよい。
【0034】
次に、本実施の形態1に係る土留パネル100の連結構造について説明する。本実施の形態1に係る土留パネル100は、土圧が高く作用する掘削孔301や掘削孔301の深度が深い部分に配置された後、既に設置された図2に示す土留パネル101に連結される。既に設置された上部の土留パネル101と、本実施の形態1に係る土留パネル100とを連結する場合には、互いの横フランジ部10を上下に突き合わせて連結孔10aの位置を合わせ、互いの連結孔10aにボルトの軸部を通し、該軸部をナットで締結する。ちなみに、本実施の形態1に係る土留パネル100は、補強部材3を波付け鋼板1及び縦フランジ部2と一体化させた構成なので、重量が大きくなる。しかし、土留パネル100を掘削孔301の所定の位置に配置する際には、重機等による取り回しが行われるので、土留パネル100の重量が大きいことによって作業者の負担が増えることはなく、むしろ、接続作業が容易となるため、作業能率が向上する。
【0035】
図8は、実施の形態1に係る土留パネル100を上下に配置して連結した状態を示した説明図である。上段の土留パネル100は、補強部材3が波付け鋼板1の下端部にのみ設けられた構成である。一方、下段の土留パネル100は、補強部材3が波付け鋼板1の上端部及び下端部に設けられた構成である。本実施の形態1に係る土留パネル100を上下に配置して連結する場合には、図8に示すように、互いの補強部材3のウェブ30の外面を上下に突き合わせて連結孔10a及び接合孔30aの位置を合わせ、互いの連結孔10a及び接合孔30aにボルト5の軸部を通し、該軸部をナット6で締結する。これにより、上下に隣り合う土留パネル100の補強部材3は、波付け鋼板1の横フランジ部10と共にボルト5及びナット6で接合されて連結されることになる。
【0036】
なお、下段に配置された本実施の形態1に係る土留パネル100の下部に、図2に示した土留パネル101を配置して連結する場合には、土留パネル100の補強部材3のウェブ30の外面に、下部の土留パネル101の波付け鋼板1の横フランジ部10を突き合わせ、互いの連結孔10a及び接合孔30aの位置を合わせる。そして、土留パネル100の連結孔10a及び接合孔30aと、土留パネル101の連結孔10aにボルトを挿通し、ボルトの軸部をナットで締結する。このように、土留パネル100の補強部材3は、波付け鋼板1の横フランジ部10と共に、土留パネル101の横フランジ部10にボルト及びナットで接合されることになる。
【0037】
図9は、実施の形態1に係る土留パネル100を掘削孔301の周方向に配置して連結した状態を示した説明図である。図9に示すように、掘削孔301の周方向に隣り合う土留パネル100同士を連結する場合には、左右に隣り合う縦フランジ部2を突き合わせて連結孔2aの位置を合わせ、互いの連結孔2aにボルト7の軸部を通し、該軸部をナット8で締結する。つまり、本実施の形態1に係る土留パネル100では、掘削孔301の周方向に沿って隣り合う土留パネル100の縦フランジ部2同士を接合するだけで、隣り合う補強部材3同士をボルト接合することなく、補強部材3を周方向に沿って設置することができる。なお、左右に隣り合う土留パネル100を連結する手段は、ボルト及びナットに代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0038】
以上のように、本実施の形態1に係る土留パネル100は、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された波付け鋼板1と、波付け鋼板1の長手方向Xの両端部に設けられた一対の縦フランジ部2と、波付け鋼板1の長手方向Xに沿って延び、波付け鋼板1の短手方向Yの両端部のうち、少なくとも一方の端部に設けられた補強部材3と、を備えている。補強部材3は、一対の縦フランジ部2、2の間に挟まれて配置され、長手方向Xの両端部が縦フランジ部2の内面に接合されている。
【0039】
したがって、本実施の形態1に係る土留パネル100は、掘削孔301の周方向に沿って隣り合う土留パネル100の縦フランジ部2同士を接合することで、隣り合う補強部材3同士を継手板を介してボルト接合することなく、周方向に沿って設置することができる。よって、施工現場における補強部材3同士のボルト接合作業を省略できるので、施工作業の作業性を向上させることができる。また、土留パネル100は、縦フランジ部2、2同士を接合することにより、補強部材3同士を継手板で接合した場合と同様な強度及び剛性の向上を図ることができる。
【0040】
なお、図10は、実施の形態1に係る土留パネルの変形例を示した縦断面図である。補強部材3は、上記溝形鋼に代えて、図10に示すように、H形鋼を用いてもよい。
【0041】
実施の形態2.
次に、本実施の形態2に係る土留パネル100Aを、図11及び12を参照して説明する。図11は、実施の形態2に係る土留パネル100Aを示した縦断面図である。
図12は、実施の形態2に係る土留パネル100Aを上下に配置して連結した状態を示した説明図である。なお、実施の形態1で説明した土留パネル100と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0042】
実施の形態2に係る土留パネル100Aは、図11に示すように、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された波付け鋼板1と、波付け鋼板1の長手方向Xの両端部に設けられた一対の縦フランジ部2と、波付け鋼板1の長手方向Xに沿って延び、波付け鋼板1の下端部に設けられた補強部材3Aと、を備えている。波付け鋼板1及び縦フランジ部2は、実施の形態1の構成と同じである。
【0043】
補強部材3Aは、図11に示すように、山形鋼であり、屈曲の内面を波付け鋼板1の下端部に対向させて配置されている。また、補強部材3Aは、屈曲の側部33が地山側に位置するように配置させている。屈曲の側部33を地山側に配置することで、波付け鋼板1の内面側に作業空間を確保することができ、上下左右に配置された土留パネル100A同士の連結作業時において、補強部材3Aの存在が邪魔にならず作業がしやすいからである。
【0044】
補強部材3Aは、一対の縦フランジ部2の間に挟まれて配置され、長手方向Xの両端面を縦フランジ部2の内面に突き合わせ、両端部が縦フランジ部2に溶接されて接合されている。縦フランジ部2は、補強部材3Aの底部32の幅寸法に合わせて横幅が形成されている。一方、補強部材3Aは、波付け鋼板1には接合されておらず、底部32を波付け鋼板1の横フランジ部10に当接させて配置されている。このように、補強部材3Aは、波付け鋼板1及び縦フランジ部2と一体化させた構成である。なお、補強部材3Aは、波付け鋼板1に接合されている必要はないが、波付け鋼板1に例えば溶接等で接合されていても特に問題はない。例えば、補強部材3Aは、長手方向Xの長さが長い場合など、形状保持のため、波付け鋼板1に断続溶接してもよい。
【0045】
また、補強部材3Aの底部32には、図11に示すように、波付け鋼板1の横フランジ部10に形成された連結孔10aに対応する位置に接合孔30aが形成されている。なお、補強部材3Aは、波付け鋼板1の下端部に配置された構成を示したが、これに限定されず、波付け鋼板1の上端部及び下端部にそれぞれ配置してもよい。
【0046】
本実施の形態2に係る土留パネル100Aも、土圧が高く作用する掘削孔301や掘削孔301の深度が深い部分に配置された後、既に設置された土留パネル101に連結される。既に設置された上部の土留パネル101と、本実施の形態2に係る土留パネル100Aとを連結する場合には、互いの横フランジ部10を上下に突き合わせて連結孔10aの位置を合わせ、互いの連結孔10aにボルトの軸部を通し、該軸部をナットで締結する。
【0047】
図12は、実施の形態2に係る土留パネル100Aを上下に配置して連結した状態を示した説明図である。上段の土留パネル100Aは、補強部材3Aが波付け鋼板1の下端部にのみ設けられた構成である。一方、下段の土留パネル100Aは、補強部材3Aが波付け鋼板1の上端部及び下端部に設けられた構成である。本実施の形態2に係る土留パネル100Aを上下に配置して連結する場合には、図12に示すように、互いの補強部材3Aの底部32の外面を上下に突き合わせて連結孔10a及び接合孔30aの位置を合わせ、互いの連結孔10a及び接合孔30aにボルト5の軸部を通し、該軸部をナット6で締結する。これにより、上下に隣り合う土留パネル100Aの補強部材3Aは、波付け鋼板1の横フランジ部10と共にボルト5及びナット6で接合されて連結されることになる。なお、上下に隣り合う波付け鋼板1を連結する手段は、ボルト5及びナット6に代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0048】
なお、下段に配置された本実施の形態2に係る土留パネル100Aの下部に、図2に示した土留パネル101を配置して連結する場合には、土留パネル100Aの補強部材3Aの底部32の外面に、下部の土留パネル101の波付け鋼板1の横フランジ部10を突き合わせ、互いの連結孔10a及び接合孔30aの位置を合わせる。そして、土留パネル100Aの連結孔10a及び接合孔30aと、土留パネル101の連結孔10aにボルトを挿通し、ボルトの軸部をナットで締結する。このように、土留パネル100Aの補強部材3Aは、波付け鋼板1の横フランジ部10と共に、土留パネル101の横フランジ部10にボルト及びナットで接合されることになる。なお、上下に隣り合う波付け鋼板1を連結する手段は、ボルト及びナットに代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0049】
そして、掘削孔301の周方向に隣り合う土留パネル100A同士を連結する場合には、例えば図9に示すように、左右に隣り合う縦フランジ部2を突き合わせて連結孔2aの位置を合わせ、互いの連結孔2aにボルト7の軸部を通し、該軸部をナット8で締結する。つまり、本実施の形態2に係る土留パネル100Aも、掘削孔301の周方向に沿って隣り合う土留パネル100Aの縦フランジ部2同士を接合するだけで、隣り合う補強部材3A同士をボルト接合することなく、補強部材3Aを周方向に沿って設置することができる。よって、施工現場における補強部材3A同士のボルト接合作業を省略できるので、施工作業の作業性を向上させることができる。なお、左右に隣り合う土留パネル100Aを連結する手段は、ボルト7及びナット8に代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0050】
また、本実施の形態2に係る土留パネル100Aは、実施の形態1で説明した溝形鋼から成る補強部材3を有する土留パネル100と比較して、剛性及び強度が低いものの、波付け鋼板1の内面側に作業空間を確保することができるので、上下左右に配置された土留パネル100A同士の接合作業時において、掘削孔301の内部で作業を行う作業者にとって作業性がよいものとなる。
【0051】
なお、図示することは省略したが、補強部材3Aは、上記山形鋼に代えて、T形鋼を用いてもよい。
【0052】
実施の形態3.
次に、本実施の形態3に係る土留パネル100Bを、図13を参照して説明する。図13は、実施の形態3に係る土留パネル100Bを示した縦断面図である。なお、実施の形態1で説明した土留パネル100及び実施の形態2で説明した土留パネル100Aと同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0053】
実施の形態3に係る土留パネル100Bは、図13に示すように、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された波付け鋼板11と、波付け鋼板11の長手方向Xの両端部に設けられた一対の縦フランジ部2と、波付け鋼板11の長手方向Xに沿って延び、波付け鋼板11の下端部に設けられた補強部材3と、を備えている。
【0054】
実施の形態3に係る土留パネル100Bの波付け鋼板11は、波形断面がサインカーブ状に形成された、所謂ライナープレートである。この波付け鋼板11は、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。波付け鋼板11は、短手方向Yの両端部に、波形の両端縁を曲げ加工によって形成された横フランジ部10を有している。横フランジ部10には、掘削孔301の孔軸方向に積み重ねた上下に隣り合う波付け鋼板11同士を連結するための連結孔10aが長手方向Xに沿って複数形成されている。
【0055】
縦フランジ部2及び補強部材3は、実施の形態1及び2の構成と同じである。補強部材3は、実施の形態1で示した溝形鋼又はH形鋼でもよいし、実施の形態2で示した山形鋼又はT形鋼でもよい。なお、補強部材3は、波付け鋼板11の下端部に配置された構成を示したが、これに限定されず、波付け鋼板11の上端部及び下端部にそれぞれ配置してもよい。
【0056】
本実施の形態3に係る土留パネル100Bを上下に配置して連結する場合には、例えば図8に示すように、互いの補強部材3のウェブ30の外面を上下に突き合わせて連結孔10a及び接合孔30aの位置を合わせ、互いの連結孔10a及び接合孔30aにボルト5の軸部を通し、該軸部をナット6で締結する。これにより、上下に隣り合う土留パネル100Bの補強部材3は、波付け鋼板11の横フランジ部10と共にボルト5及びナット6で接合されて連結されることになる。なお、実施の形態2で説明した補強部材3Aを用いた場合、上下に隣り合う波付け鋼板11を連結する手段は、ボルト5及びナット6に代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0057】
掘削孔301の周方向に隣り合う土留パネル100B同士を連結する場合には、例えば図9に示すように、左右に隣り合う縦フランジ部2を突き合わせて連結孔2aの位置を合わせ、互いの連結孔2aにボルト7の軸部を通し、該軸部をナット8で締結する。つまり、本実施の形態3に係る土留パネル100Bも、掘削孔301の周方向に沿って隣り合う土留パネル100Bの縦フランジ部2同士を接合することで、隣り合う補強部材3同士を継手板を介してボルト接合することなく、周方向に沿って設置することができる。よって、施工現場における補強部材3同士のボルト接合作業を省略できるので、施工作業の作業性を向上させることができる。なお、左右に隣り合う土留パネル100Bを連結する手段は、ボルト7及びナット8に代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0058】
実施の形態4.
次に、本実施の形態4に係る土留パネル100Cを、図14及び図15を参照して説明する。図14は、実施の形態4に係る土留パネル100Cを示した縦断面図である。なお、上記実施の形態で説明した土留パネル100、100A、100Bと同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0059】
実施の形態4に係る土留パネル100Cは、図14に示すように、波形の山部1a及び谷部1bが長手方向Xに沿って延びるように形成された波付け鋼板12と、波付け鋼板12の長手方向Xの両端部に設けられた一対の縦フランジ部2と、波付け鋼板12の長手方向Xに沿って延び、波付け鋼板12の下端部に設けられた補強部材3と、を備えている。
【0060】
本実施の形態4における波付け鋼板12は、波形断面が角波状となるように形成された構成である。この波付け鋼板12は、実施の形態1における波付け鋼板1と比較して、補強部材3が設けられる短手方向Yの下端部に、横フランジ部10が設けられていない。実施の形態1で説明したように、上下に隣り合う波付け鋼板1は、横フランジ部10を突き合わせ、連結孔10aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。しかしながら、補強部材3が設けられた短手方向Yの端部では、補強部材3が横フランジ部10の機能も担うこととなるため、横フランジ部10を敢えて設ける必要がない。但し、本実施の形態4における波付け鋼板12では、波形の端縁と補強部材3とを溶接して一体化を図ることが望ましい。短手方向Yにおける波形の端縁と補強部材3とを必ずしも溶接する必要はないが、溶接することで一体化を図ることができ耐力を向上させることができる。
【0061】
なお、本実施の形態4における波付け鋼板12は、短手方向Yの両端部に補強部材3が設けられる場合、該両端部において横フランジ部10を設けないこととする。
【0062】
本実施の形態4に係る土留パネル100Cも、土圧が高く作用する掘削孔301や掘削孔301の深度が深い部分に配置された後、既に設置された土留パネル101に連結される。既に設置された上部の土留パネル101と、本実施の形態4に係る土留パネル100Cとを連結する場合には、互いの横フランジ部10を上下に突き合わせて連結孔10aの位置を合わせ、互いの連結孔10aにボルトの軸部を通し、該軸部をナットで締結する。
【0063】
図15は、実施の形態4に係る土留パネル100Cを上下に配置して連結した状態を示した説明図である。上段の土留パネル100Cは、補強部材3が波付け鋼板12の下端部にのみ設けられた構成である。上段の土留パネル100Cは、短手方向Yの下端部に、横フランジ部10が設けられていない。一方、下段の土留パネル100Cは、補強部材3が波付け鋼板12の上端部及び下端部に設けられた構成である。下段の土留パネル100Cは、短手方向Yの両端部に、横フランジ部10が設けられていない。本実施の形態4に係る土留パネル100Cを上下に配置して連結する場合には、図15に示すように、互いの補強部材3のウェブ30の外面を上下に突き合わせて接合孔30aの位置を合わせ、互いの接合孔30aにボルト5の軸部を通し、該軸部をナット6で締結する。これにより、上下に隣り合う土留パネル100Cは、補強部材3同士がボルト5及びナット6で接合されることによって連結される。
【0064】
なお、下段に配置された本実施の形態4に係る土留パネル100Cの下部に、図2に示した土留パネル101を配置して連結する場合には、土留パネル100Cの補強部材3のウェブ30の外面に、下部の土留パネル101の波付け鋼板12の横フランジ部10を突き合わせ、連結孔10aと接合孔30aの位置を合わせる。そして、土留パネル100Cの接合孔30aと、土留パネル101の連結孔10aにボルトを挿通し、ボルトの軸部をナットで締結する。
【0065】
掘削孔301の周方向に隣り合う土留パネル100C同士を連結する場合には、例えば図9に示すように、左右に隣り合う縦フランジ部2を突き合わせて連結孔2aの位置を合わせ、互いの連結孔2aにボルト7の軸部を通し、該軸部をナット8で締結する。つまり、本実施の形態4に係る土留パネル100Cも、掘削孔301の周方向に沿って隣り合う土留パネル100の縦フランジ部2同士を接合するだけで、隣り合う補強部材3同士をボルト接合することなく、補強部材3を周方向に沿って設置することができる。よって、施工現場における補強部材3同士のボルト接合作業を省略できるので、施工作業の作業性を向上させることができる。なお、左右に隣り合う土留パネル100Cを連結する手段は、ボルト7及びナット8に代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態4に係る土留パネル100Cは、波付け鋼板12の短手方向Yの少なくとも一端部における横フランジ部10を省略した構成なので、製造の手間を省略できるし材料費の削減もでき、結果的に製造コストを削減できる。また、土留パネル100Cは、例えば円形の立坑などへ適用するために曲げ加工が必要な場合であっても、横フランジ部10を有さないので曲げ加工を容易に行うことができる。更に、土留パネル100Cは、横フランジ部10を省略した分だけ軽量化を図ることができるので、持ち運びの負担が軽減され、施工時の作業性を向上させることができる。
【0067】
なお、本実施の形態4に係る土留パネル100Cは、実施の形態1で説明した溝形鋼から成る補強部材3を有する構成について説明したが、この限りではない。土留パネル100Cは、図10に示したH形鋼からなる補強部材3、実施の形態2で説明した山形鋼からなる補強部材3A又はT形鋼からなる補強部材でもよい。実施の形態2で説明した補強部材3Aを用いた場合、上下に隣り合う波付け鋼板12を連結する手段は、ボルト5及びナット8に代えて、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、本実施の形態4に係る土留パネル100Cは、波形断面が角波状に形成された波付け鋼板12を有する構成に限定されず、実施の形態3で説明した波形断面がサインカーブ状に形成された波付け鋼板11を有する構成でもよい。
【0068】
以上に、土留パネル(100、100A、100B、100C)及び土留構造物200を実施の形態に基づいて説明したが、上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、上述した土留パネル(100、100A、100B、100C)の構成は、一例であって他の構成要素を含んでもよい。また、図4に基づいて説明した土留構造物200の構築工法は、一例であって、上記実施の形態に限定されない。要するに、土留パネル(100、100A、100B、100C)及び土留構造物200は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0069】
1 波付け鋼板、1a 山部、1b 谷部、1c ウェブ、2 縦フランジ部、2a 連結孔、3、3A 補強部材、30 ウェブ、30a 接合孔、31 フランジ、32 底部、33 側部、4 角部材、5 ボルト、6 ナット、7 ボルト、8 ナット、10 横フランジ部、10a 連結孔、11 波付け鋼板、12 波付け鋼板、100、100A、100B、100C、101、102 土留パネル、200 土留構造物、201 構造体、300 地面、301 掘削孔、400 井桁、X 長手方向、Y 短手方向、S 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15