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  • 特開-ハンドタイタンパー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074689
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ハンドタイタンパー
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/16 20060101AFI20230523BHJP
   E01B 27/20 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
E01B27/16
E01B27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187752
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】594183831
【氏名又は名称】伊岳商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利英
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057AB22
2D057AB24
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で、取り扱いやすくて安全に作業でき、しかも、起振部の構成を改変することで、回転を安定化させて安定した振動を得ることを可能にした充電式のハンドタイタンパーを提供することを課題とする。
【解決手段】操作ハンドル1と、操作ハンドル1に吊持される起振部4と、起振部4に取り付けられるビータ5を備えて成り、起振部4において回転軸23に固定されるアンバランスウエイト24は扇型で、フライホイール25が一体化されている。一実施形態においては、アンバランスウエイト24の外周面に環状フライホイール25が一体化され、他の実施形態においては、アンバランスウエイト24の一側面に環状フライホイール25が固定される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ハンドルと、前記操作ハンドルに吊持される起振部と、前記起振部に取り付けられるビータを備えて成り、
前記起振部において回転軸に固定されるアンバランスウエイトは扇型で、フライホイールが一体化されていることを特徴とするハンドタイタンパー。
【請求項2】
前記アンバランスウエイトの外周面に環状フライホイールが一体化されている、請求項1に記載のタイタンパー。
【請求項3】
前記アンバランスウエイトの一側面に環状フライホイールが固定されている、請求項1に記載のタイタンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドタイタンパーに関するものであり、より詳細には、バラストが細粒化したバラスト軌道や道床厚が薄いバラスト軌道の補修を行うためのハンドタイタンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道の場合、日々の列車通行に伴い、バラスト道床を構成する砕石が崩れたり、ずれ動いたりして軌道が沈下し、まくらぎがバラスト道床から浮いてレールにぶら下がる、所謂、浮きまくらぎ現象が発生する。この浮きまくらぎの状態のまま列車運行が続くと、バラスト道床の更なる悪化を招き、安全運行に支障をきたすことになるので、一般にハンドタイタンパーと呼ばれる機具を用いての補修作業が行われる。
【0003】
一般にハンドタイタンパーは、起振部と、起振部に取り付けられて振動駆動されるビータと、起振部の上部に配備される棒状操作ハンドルから成り(特許第6175337号公報、特開2015-59329号公報等)、両手で操作ハンドルを握持し、起振部によってビータを振動させつつバラスト内に進入させ、振動により砕石を浮きまくらぎ個所に寄せ集め、その空間部を充填して補修する。ハンドタイタンパーには、エンジン式タイプと電源コード付きタイプと充電式のコードレスタイプがあり、本発明に係るハンドタイタンパーは、これらすべてのタイプを含んでいる。
【0004】
ハンドタイタンパーは、作業員が操作ハンドルを握持して操作するものであるので、シンプルな構成で取り扱いやすく、安全に作業し得るものであることが要請されることは言うまでもないが、ビータを振動させつつバラスト内に進入させ、その振動により砕石を浮きまくらぎ個所に寄せ集め、その空間部を充填して補修するという機能を十分に果たし得る性能を有していることが要請される。
【0005】
従来のハンドタイタンパーにおける起振部には、扇型のアンバランスウエイトを用い、その要部にモータ軸を通して回転させ、その遠心力で振動を得る方法か、あるいは、一部を弓形に切除した回転軸を回転させることで振動を得る方法が採用されている。作業中に振動が低下したり、不安定になると、ビータがバラストに進入しにくくなって、作業性が低下する。安定した振動を得るには回転を安定化させる必要があるが、これらいずれの方法の場合も、回転を安定化させるための工夫が凝らされていない。
【0006】
特に充電式の場合は、必ずしも常時十分な電力供給がなされるとは限らないので、できるだけ少ないエネルギーで回転の安定化を図る必要があり、更に、ハンドタイタンパーはハンドツールであるため、回転の安定化のために付加される機構は、最小限の大きさと質量に抑える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6175337号公報
【特許文献2】特開2015-59329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、安定した振動を得るには回転を安定化させる必要があるが、従来のハンドタイタンパーにおいては、回転を安定化させるための工夫が凝らされていないために、安定した振動が得られていなかった。そこで本発明は、シンプルな構成で、取り扱いやすくて安全に作業でき、起振部の構成を改変することで、回転を安定化させて安定した振動を得ることを可能にし、しかも、回転の安定化のために付加される機構が最小限の大きさと質量に抑えられている、ハンドタイタンパーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、操作ハンドルと、前記操作ハンドルに吊持される起振部と、前記起振部に取り付けられるビータを備えて成り、
前記起振部において回転軸に固定されるアンバランスウエイトは扇型で、フライホイールが一体化されていることを特徴とするハンドタイタンパーである。
【0010】
一実施形態においては、前記アンバランスウエイトの外周面に環状フライホイールが一体化されている。
【0011】
他の実施形態においては、前記アンバランスウエイトの一側面に環状フライホイールが固定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述したとおりであって、シンプルな構成で、取り扱いやすくて安全に作業でき、起振部を構成するアンバランスウエイトにフライホイールを一体化した構成であるため、アンバランスウエイトの回転が安定化して安定した振動を得ることが可能であり、しかも、フライホイールはアンバランスウエイトに一体化された構成であって、そのサイズはアンバランスウエイトの回転域内に収まっているため、回転の安定化のために付加された機構が最小限の大きさと質量に抑えられているという効果があり、また、エンジン式タイプ、電源コード付きタイプ及び充電式のコードレスタイプのいずれにも適用可能という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るハンドタイタンパーの一実施形態の正面図である。
図2】本発明に係るハンドタイタンパーの一実施形態の右側面図である。
図3】本発明に係るハンドタイタンパーの一実施形態の平面図である。
図4】本発明に係るハンドタイタンパーを寝かせた状態を示す図である。
図5】本発明に係るハンドタイタンパーの起振部のアンバランスウエイト部の構成例を示す正面図及びA-A線断面図である。
図6】本発明に係るハンドタイタンパーの起振部のアンバランスウエイト部の他の構成例を示す正面図、A-A線断面図、フライホイール及びアンバランスウエイト本体の正面図である。
図7】本発明に係るハンドタイタンパーの起振部のアンバランスウエイト部の効用を示すためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図示した例は充電式のハンドタイタンパーであり、図1はそのハンドタイタンパーの構成を示す正面図、図2はその右側面図、図3はその平面図で、それらに示されるように、本ハンドタイタンパーは、水平方向に伸びる操作ハンドル1と、通例、一対の緩衝アーム2,3を介して操作ハンドル1に吊持される起振部4と、起振部4に取り付けられるビータ5と、操作ハンドル1の中間部に設置されて起振部4の動作を制御する制御ボックス6と、制御ボックス6に着脱自在に配備される一対の蓄電池7,8とを含んで構成される(エンジン駆動タイプ及び電源コード付きタイプのタイタンパーの場合は、制御ボックス6及び蓄電池7,8を含まない。)。
【0015】
起振部4は、振動ケース21と、振動ケース21内に配備されるモータ22と、モータ22の回転軸23に固定されて振動を発生させるアンバランスウエイト24とから成る。振動ケース21は、その側面が、緩衝アーム2,3の下端に垂設された支持部材19,20に固定されることにより支持される。ビータ5は、一方の支持部材19と振動ケース21の側面との間に挟持される。また、他方の支持部材20に、手持ち27が取り付けられる。
【0016】
アンバランスウエイト24は扇型で、その回転を安定させるために、フライホイール25,26が一体化される。フライホイール25,26は、軸の回転を安定させるために一般的に用いられるが、本発明に係るハンドタイタンパーはハンドツールであるため、フライホイールは最小限の大きさと質量に抑える必要がある。
【0017】
図5に示す例では、アンバランスウエイト24の外周面に沿って、環状フライホイール25が一体に配置されている。換言すれば、アンバランスウエイト24は、環状フライホイール25の内周面に一体化されている。この場合アンバランスウエイト24は、環状フライホイール25と一体成形することができ、あるいは、別成形し、溶着等により一体化することができる。また、図6に示す例では、アンバランスウエイト24の一側面に、それと同径で比較的薄手のドーナツ型フライホイール26が、ボルト止め等により固定されて、一体化されている。いずれの場合においても、フライホイール25,26は、アンバランスウエイト24の回転域内の寸法であり、重量も最小限に抑えられている。
【0018】
このように、扇型のアンバランスウエイト24にフライホイール25,26が一体化されることにより、消費電力の増加を招くことなくアンバランスウエイトの回転が安定し、振動が安定化する。図7は、図5に示されるようにアンバランスウエイト24に環状フライホイール25が一体化された実施形態の場合と、アンバランスウエイト24にフライホイールが付いていない従来の構成の場合における、ビータ5の加速度を比較したグラフである。なお、これらはいずれも、充電式のハンドタイタンパーである。
【0019】
この実験例においては、アンバランスウエイト24にフライホイールが付いていない場合の平均加速度は、約380m/s であるのに対し、環状フライホイール25が付いている場合の平均加速度は、約520m/s と、大幅に増加している。この実験結果から明らかなように、フライホイール一体型アンバランスウエイト24を用いる本発明に係るハンドタイタンパーの場合は、従来のものに比較して大きな加速度が得られ、その分振動が安定して、バラスト貫入時における力不足が払拭され、作業効率が向上する。
【0020】
好ましい実施形態においては、操作ハンドル1に、制御ボックス6と蓄電池7,8を保護する保護ガード9が設置される。保護ガード9は、通例パイプ材で形成され、その形状は特に問わないが、制御ボックス6と蓄電池7,8を囲み、且つ、作業者の視覚を遮ることがないようなシンプルな形状とする必要がある。図示した例では、角を丸めた長コの字型のパイプ材9a,9bを操作ハンドル1の前後に、前後方向に傾斜させた状態で配置し、それらの中間部を連結パイプ9cで連結したものとされている(図2,3参照)。この保護ガード9は、本ハンドタイタンパーを横に寝かせた時に、パイプ材9a,9bの一方が起振部4の振動ケース21と共に接地し、横臥位姿勢を安定に保つよう機能する(図4参照)
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は上述したとおりであって、シンプルな構成で、取り扱いやすくて安全に作業でき、起振部を構成するアンバランスウエイトにフライホイールを一体化した構成であるため、アンバランスウエイトの回転が安定化して安定した振動を得ることが可能であり、しかも、フライホイールはアンバランスウエイトに一体化された構成であって、そのサイズはアンバランスウエイトの回転域内に収まっているため、回転の安定化のために付加された機構が最小限の大きさと質量に抑えられているという効果があり、また、エンジン式タイプ、電源コード付きタイプ及び充電式のコードレスタイプのいずれにも適用可能であって、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0022】
1 操作ハンドル
2,3 緩衝アーム
4 起振部
5 ビータ
6 制御ボックス
7,8 蓄電池
9 保護ガード
21 振動ケース
22 モータ
23 回転軸
24 アンバランスウエイト
25,26 フライホイール
27 持ち手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7