(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074753
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】光学アダプタと、この光学アダプタを装着して使用する内視鏡及び挿入部の先端部に光学系を有する内視鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 23/24 20060101AFI20230523BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G02B23/24 A
A61B1/00 650
A61B1/00 715
A61B1/00 731
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187867
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】膳 健一
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040CA22
2H040DA12
2H040DA52
4C161BB03
4C161BB04
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF40
4C161GG11
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】アダプタ本体の外径サイズを維持しながら保持強度を確保しつつプリズムの入射面を拡大し広視野を確保し得る光学アダプタを提供する。
【解決手段】被検体からの観察光が入射する入射面22aを有するプリズム22と、プリズムを保持する保持部材23aとを有し、プリズムは内視鏡挿入部2の挿入軸X方向から見た時の投影形状が多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成されており、多角形状は入射面の一部である入射辺22aと、入射辺に対し挿入軸を挟んで対向する1つ以上の対辺22bと、入射辺と対辺とを結ぶ少なくとも2つ以上の斜辺22cとを有し、対辺よりも入射辺の方が長く形成されており、保持部材はプリズムの斜辺のそれぞれの少なくとも一部を保持し、入射辺を延長した直線と各斜辺のそれぞれを延長した各直線との交点は保持部材に当接しない構成を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部の先端部に着脱自在な光学アダプタであって、
被検体からの観察光が入射する入射面を有するプリズムと、
前記プリズムを保持する保持部材と、
を有し、
前記プリズムは、前記内視鏡挿入部の挿入軸方向から見た時の投影形状が多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成されており、
前記多角形状は、前記入射面の一部である入射辺と、前記入射辺に対し前記挿入軸を挟んで対向する1つ以上の対辺と、前記入射辺と前記対辺とを結ぶ少なくとも2つ以上の斜辺と、を有し、
前記対辺よりも前記入射辺の方が長く形成されており、
前記保持部材は、前記プリズムの前記斜辺のそれぞれの少なくとも一部を保持し、
前記入射辺を延長した直線と前記少なくとも2つ以上の斜辺のそれぞれを延長した各直線との交点は、前記保持部材に当接しない構成を有する
ことを特徴とする光学アダプタ。
【請求項2】
前記保持部材とは異なる第2保持部材を、さらに有し、
前記プリズムは、前記入射辺,前記対辺,前記斜辺のそれぞれに対して平行ではない第1側辺を有し、前記第1側辺は、前記斜辺と当接して形成されており、
前記第2保持部材は、前記第1側辺の少なくとも一部を保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項3】
前記プリズムは、前記入射辺,前記対辺,前記斜辺,前記第1側辺のそれぞれに対して平行ではない第2側辺を、さらに有し、前記第2側辺は、前記第1側辺および前記入射辺と当接して形成されており、
前記第2側辺は、前記光学アダプタの外部に露出される
ことを特徴とする請求項2に記載の光学アダプタ
【請求項4】
前記プリズムは、前記入射面に入射した前記観察光を反射させる反射面を有し、
前記反射面によって反射された反射光の光軸は、前記挿入軸を挟んで前記入射面とは反対側の前記対辺側に偏った位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項5】
前記保持部材と前記先端カバーの内面との間は、隙間を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項6】
前記プリズムは、前記入射辺と前記対辺間の距離をプリズム高さh1とし、前記斜辺の端点から前記対辺に延ばした垂線を斜辺高さh2としたとき、条件式(1)
h1<2h2 …… (1)
を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項7】
前記保持部材は、前記光学アダプタ本体に形成され、
前記第2保持部材は、前記光学アダプタカバーに形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項8】
前記第2保持部材と前記第1側辺との間は、隙間を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項9】
前記入射面は、前記光学アダプタの外部に露出される
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項10】
前記保持部材は、左右が繋がっており、前記光学アダプタカバーの外面と同一面にあり、
前記光学アダプタカバーと前記第1保持部材とは、突き当てられ、当該突き当て面は接着又はレーザ溶接にて固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項11】
前記入射辺と前記対辺とは平行である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項12】
前記光学アダプタは、側視用または斜視用である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学アダプタ。
【請求項13】
挿入部の先端部に着脱自在な光学アダプタを装着して使用する内視鏡であって、
前記光学アダプタは、被検体からの観察光が入射する入射面を有するプリズムと、前記プリズムを保持する保持部材と、を有し、
前記プリズムは、前記内視鏡挿入部の挿入軸方向から見た時の投影形状が多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成され、前記多角形状は、前記入射面の一部である入射辺と、前記入射辺に対し前記挿入軸を挟んで対向する1つ以上の対辺と、前記入射辺と前記対辺とを結ぶ少なくとも2つ以上の斜辺とを有し、前記対辺よりも前記入射辺の方が長く形成されており、
前記保持部材は、前記プリズムの前記斜辺のそれぞれの少なくとも一部を保持し、
前記入射辺を延長した直線と前記少なくとも2つ以上の斜辺のそれぞれを延長した直線との交点は、前記保持部材に当接しない構成を有する
ことを特徴とする内視鏡。
【請求項14】
挿入部の先端部に光学系を有する内視鏡であって、
前記光学系は、被検体からの観察光が入射する入射面を有するプリズムと、前記プリズムを保持する保持部材と、を有し、
前記プリズムは、前記内視鏡挿入部の挿入軸方向から見た時の投影形状が多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成され、前記多角形状は、前記入射面の一部である入射辺と、前記入射辺に対し前記挿入軸を挟んで対向する1つ以上の対辺と、前記入射辺と前記対辺とを結ぶ少なくとも2つ以上の斜辺とを有し、前記対辺よりも前記入射辺の方が長く形成されており、
前記保持部材は、前記プリズムの前記斜辺のそれぞれの少なくとも一部を保持し、
前記入射辺を延長した直線と前記少なくとも2つ以上の斜辺のそれぞれを延長した直線との交点は、前記保持部材に当接しない構成を有する
ことを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡挿入部の先端部に対し着脱自在に構成される光学アダプタであって、特に、側方視野を確保し得る光学アダプタと、この光学アダプタを装着して使用する内視鏡及び挿入部の先端部に光学系を有する内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡は、例えば医療分野や工業分野等において広く利用されている。一般に、内視鏡は、細長管形状の挿入部と、挿入部の先端に設けられる先端部とを有して構成されている。
【0003】
医療用内視鏡は、撮像ユニットを備えた挿入部を、例えば生体の体腔内に挿入して使用される。その際、生体の臓器等の内部の病変部等の画像を撮像ユニットを用いて取得する。そして、内視鏡使用者は、取得した画像に基づいて病変部等の状態の観察や検査を行う。
【0004】
また、工業用内視鏡は、撮像ユニットを備えた挿入部を、例えばジェットエンジンや工場配管等の装置若しくは機械設備等の内部に挿入して使用される。その際、当該装置若しくは機械設備内部の傷や腐蝕等の画像を撮像ユニットを用いて取得する。そして、内視鏡使用者は、取得した画像に基づいて傷や腐食等の状態の観察や検査を行う。
【0005】
この種の従来の内視鏡においては、観察対象とする被検体に対して最適な視野を得るためのオプション装置として、光学アダプタがある。そして、従来、この種の光学アダプタについての提案は、例えば、国際公開番号WO2017/086298A1号公報等によって、種々なされている。
【0006】
上記国際公開番号WO2017/086298A1号公報などによって開示されている光学アダプタは、内視鏡挿入部の先端に着脱自在に構成され、内視鏡挿入部の挿入方向に対して側方視野を確保するための側視用光学アダプタである。
【0007】
一般に、側視用光学アダプタ或いは側視型内視鏡は、入射面からの入射光束の光路を屈曲させて撮像素子の受光面へと導く光学素子であるプリズムなどを備えて構成されている。この種のプリズムを用いることにより、側視用光学アダプタ或いは側視型内視鏡は、内視鏡挿入部の挿入方向(挿入軸方向)に対して側方からの入射光の光路を、同挿入軸に沿う方向へと変更する。したがって、例えば、側視用光学アダプタは、直視型の内視鏡の挿入部の先端に装着することによって、当該直視型内視鏡を側視型内視鏡として使用することができるようになる。
【0008】
そして、上記国際公開番号WO2017/086298A1号公報などによって開示されている従来の光学アダプタは、本体部材に設けられた保持部によって、プリズムの側面の略全体を保持する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開番号WO2017/086298A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記国際公開番号WO2017/086298A1号公報などによって開示されている光学アダプタにおけるプリズムの保持構造では、例えば、プリズムの保持強度を確保するためには、保持部の厚さ寸法を厚くすることが考えられる。この構成の場合、アダプタ本体の外径サイズを維持しようとすると、プリズムの幅寸法を小さくしなければならなくなる。プリズムが小さくなると、プリズムの入射面が狭くなってしまう。すると、観察視野が狭くなってしまうという問題点が生じる。
【0011】
一方、必要とするプリズム保持強度を確保しながら、観察視野を拡げることを目的にプリズムの幅を拡大しようとすると、アダプタ本体の外径サイズが大きくなってしまうという問題点が生じる。
【0012】
本発明は、アダプタ本体の外径サイズを維持しながら、プリズムの保持強度を確保しつつ、プリズムの入射面を拡大することができ、よって広視野を確保することのできる光学アダプタと、この光学アダプタを装着して使用する内視鏡及び挿入部の先端部に光学系を有する内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の側視用光学アダプタは、内視鏡挿入部の先端部に着脱自在な光学アダプタであって、被検体からの観察光が入射する入射面を有するプリズムと、前記プリズムを保持する保持部材と、を有し、前記プリズムは、前記内視鏡挿入部の挿入軸方向から見た時の投影形状が多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成されており、前記多角形状は、前記入射面の一部である入射辺と、前記入射辺に対し前記挿入軸を挟んで対向する1つ以上の対辺と、前記入射辺と前記対辺とを結ぶ少なくとも2つ以上の斜辺と、を有し、前記対辺よりも前記入射辺の方が長く形成されており、前記保持部材は、前記プリズムの前記斜辺のそれぞれの少なくとも一部を保持し、前記入射辺を延長した直線と前記少なくとも2つ以上の斜辺のそれぞれを延長した各直線との交点は、前記保持部材に当接しない構成を有する
【0014】
本発明の一態様の内視鏡は、挿入部の先端部に着脱自在な光学アダプタを装着して使用する内視鏡であって、前記光学アダプタは、被検体からの観察光が入射する入射面を有するプリズムと、前記プリズムを保持する保持部材と、を有し、前記プリズムは、前記内視鏡挿入部の挿入軸方向から見た時の投影形状が多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成され、前記多角形状は、前記入射面の一部である入射辺と、前記入射辺に対し前記挿入軸を挟んで対向する1つ以上の対辺と、前記入射辺と前記対辺とを結ぶ少なくとも2つ以上の斜辺とを有し、前記対辺よりも前記入射辺の方が長く形成されており、前記保持部材は、前記プリズムの前記斜辺のそれぞれの少なくとも一部を保持し、前記入射辺を延長した各直線と前記少なくとも2つ以上の斜辺のそれぞれを延長した直線との交点は、前記保持部材に当接しない構成を有する。
【0015】
本発明の他の一態様の内視鏡は、挿入部の先端部に光学系を有する内視鏡であって、前記光学系は、被検体からの観察光が入射する入射面を有するプリズムと、前記プリズムを保持する保持部材と、を有し、前記プリズムは、前記内視鏡挿入部の挿入軸方向から見た時の投影形状が多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成され、前記多角形状は、前記入射面の一部である入射辺と、前記入射辺に対し前記挿入軸を挟んで対向する1つ以上の対辺と、前記入射辺と前記対辺とを結ぶ少なくとも2つ以上の斜辺とを有し、前記対辺よりも前記入射辺の方が長く形成されており、前記保持部材は、前記プリズムの前記斜辺のそれぞれの少なくとも一部を保持し、前記入射辺を延長した直線と前記少なくとも2つ以上の斜辺のそれぞれを延長した直線との交点は、前記保持部材に当接しない構成を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アダプタ本体の外径サイズを維持しながら、保持強度を確保しつつ、プリズムの入射面を拡大することができ、よって広視野を確保することのできる光学アダプタと、この光学アダプタを装着して使用する内視鏡及び挿入部の先端部に光学系を有する内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態の光学アダプタを装着して使用し得る内視鏡装置の全体構成を示す構成図、
【
図2】本発明の第1の実施形態の光学アダプタの外観を示す斜視図、
【
図5】
図2の光学アダプタから光学アダプタカバーを取り外した状態の分解斜視図、
【
図7】
図2の光学アダプタにおける光学アダプタカバー以外の構成の側面図、
【
図9】
図2の光学アダプタにおけるプリズムのみを取り出して示す外観斜視図、
【
図10】
図2の光学アダプタにおけるプリズム形状についての第1変形例を示す断面図、
【
図11】
図2の光学アダプタにおけるプリズム形状についての第2変形例を示す断面図、
【
図12】本発明の第2の実施形態の光学アダプタの外観を示す斜視図、
【
図14】
図12の光学アダプタから光学アダプタカバーを取り外した構成を示す斜視図、
【
図16】
図12の光学アダプタにおけるプリズム形状についての変形例を示す断面図、
【
図17】本発明の第3の実施形態の光学アダプタの外観を示す斜視図、
【
図20】
図17の光学アダプタから光学アダプタカバーを取り外した状態の分解斜視図、
【
図22】
図17の光学アダプタにおける光学アダプタカバー以外の構成の側面図、
【
図24】
図17の光学アダプタにおけるプリズムのみを取り出して示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0019】
まず、本発明の第1の実施形態の光学アダプタをオプション装置として適用し得る内視鏡装置の全体構成について、
図1を用いて以下に簡単に説明する。なお、本実施形態において例示する光学アダプタは、側視用光学アダプタである。
図1は、本発明の第1の実施形態の光学アダプタを装着して使用し得る内視鏡装置の全体構成を示す構成図である。
【0020】
図1に示すように、内視鏡装置1は、挿入部2と、本体部3と、操作部4とを主に有して構成されている。
【0021】
挿入部2は、全体として細長で可撓性を有する管形状に形成されて、基端が本体部3に接続されている。挿入部2は、先端側から順に、先端部11,湾曲部12,可撓管部13が連設されて構成されている。
【0022】
先端部11は、先端部本体11a(
図3の符号11a参照)と、不図示の観察窓,撮像光学系を構成する光学レンズ(
図3の符号27b参照),CCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor;相補型MOS)などから構成される撮像素子(
図3の符号28参照),照明窓,照明光学系等の公知の基本構成を有している。この先端部11の先端側に、本実施形態の側視用光学アダプタ20が適宜、装着することができる構成となっている。この場合において、側視用光学アダプタ20の着脱方向は、
図1の矢印Xで示す方向である。この矢印Xで示される着脱方向は、挿入部2の挿入軸に平行な方向である。
【0023】
湾曲部12は、操作部4からの操作に応じて能動的に湾曲動作を行い得る管状部である。湾曲部12は、先端部11の基端側に接続されている。可撓管部13の先端は、湾曲部12の基端に接続されている。可撓管部13の基端は、本体部3に接続されている。なお、挿入部2を構成する先端部11,湾曲部12,可撓管部13の基本的な構成は、従来公知の同様の内視鏡と同様の構成を有するものとして、その詳細説明は省略する。
【0024】
本体部3は、中央処理装置(CPU),ROM,RAM,画像処理部,光源,大容量記憶装置,表示装置14等を内蔵している。本体部3には、挿入部2の基端が接続されている。そして、本体部3の表示装置14には、先端部11の撮像素子28(
図3参照)により取得された画像等のほか、各種の情報が表示される。
【0025】
操作部4は、ケーブル15を通じて本体部3と接続されている。操作部4は、例えばジョイスティックや押しボタン式などの各種操作部材を有している。例えば、内視鏡操作者は、操作部4のジョイスティックを操作することによって、挿入部2の湾曲部12を所望の方向へ湾曲させることができる。また、内視鏡操作者は、所定の押しボタンの押圧操作によって、表示装置14に静止画を表示させることができる。
【0026】
内視鏡操作者は、例えば、配管等の検査対象物の内部に挿入部2を挿入し、検査部位の近傍に先端部11の観察窓を位置させる。これにより、当該内視鏡装置1における挿入部2の先端部11の撮像素子28(
図3参照)は、当該検査部位の画像を内視鏡画像として表示装置14に表示させることができる。これと同時に、当該内視鏡画像は、静止画像データ或いは動画像データとして、記憶装置に記録することができる。
【0027】
なお、
図1に示す内視鏡装置1においては、挿入部2と本体部3を一体に形成した形態を例示している。しかし、この形態に限らず、例えば、挿入部2と本体部3とは、コネクタ等によって着脱可能に構成される形態であってもよい。さらに、挿入部2と本体部3とを分離可能な形態とするタイプの内視鏡装置としては、
図1に例示の形態とは異なる形態として、挿入部2と操作部4とを一体とした内視鏡として構成してもよい。この場合、当該内視鏡は、表示装置を有する本体部に対して着脱自在に構成する形態としてもよい。さらになお、内視鏡装置は、挿入部2と操作部4と表示装置14とが一体型の内視鏡と本端部とから構成されるタイプであってもよい。
【0028】
次に、本発明の第1の実施形態の光学アダプタの構成を、
図2~
図9を用いて以下に説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態の光学アダプタの外観を示す斜視図である。
図3は、
図2の矢印[3]で示す平面に沿う断面図である。なお、
図2,
図3は、側視用である本実施形態の光学アダプタ(側視用光学アダプタ)が挿入部2の先端に装着されている状態を示している。
図4は、
図3の[4]-[4]線に沿う断面図である。
図5は、
図2の側視用光学アダプタから側視用光学アダプタカバーを取り外した状態の分解斜視図である。
図6は、
図2の側視用光学アダプタの分解斜視図である。なお、
図5,
図6は、本実施形態の側視用光学アダプタのみを示している。
図7は、
図2の側視用光学アダプタにおける側視用光学アダプタカバー以外の構成の側面図である。
図8は、
図7の矢印[8]方向から見た正面図である。
図9は、
図2の側視用光学アダプタにおけるプリズムのみを取り出して示す外観斜視図である。
【0029】
本発明の第1の実施形態の側視用光学アダプタ20は、
図1に示す内視鏡装置1の挿入部2の先端部11に着脱自在に構成される光学アダプタである。この側視用光学アダプタ20は、特に側方視野を確保するための光学アダプタとして構成されている。
【0030】
なお、本実施形態を説明するのに際しては、
図2等において、符号Xで示す仮想線(二点鎖線)を側視用光学アダプタ20の挿入軸というものとする。この挿入軸Xは、当該側視用光学アダプタ20の中心軸である。
【0031】
本実施形態の側視用光学アダプタ20は、図示のように、側視用光学アダプタカバーである先端カバー21と、プリズム22と、側視用光学アダプタ本体であるアダプタ本体23と、連結部材24と、保持部材(詳細後述)とによって主に構成されている。
【0032】
先端カバー21は、側視用光学アダプタ20の先端側の部位に設けられている。先端カバー21の内部には、プリズム22が配置されている。これにより、先端カバー21は、プリズム22の外面の一部を保護する保護部材として機能している。
【0033】
先端カバー21は、全体として略筒形状に形成されている。
図5,
図6等に示すように、先端カバー21の先端面21aは閉塞されており、基端面21bは開口する形態で形成されている。また、先端カバー21は、外周面上の一部を切り欠いて形成される開口21cを有している。この開口21cは、プリズム22の一部(後述する入射面22a及び第2側面22f)を外部に露呈させて、被検体からの光束をプリズム22の内部へ入射させる開口部である。先端カバー21の基端面21bは、当該側視用光学アダプタ20を組み立て状態とした時、アダプタ本体23の当接面23bに当接する。そのため、先端カバー21の外径は、アダプタ本体23の外径と略同径に形成されている。
【0034】
また、先端カバー21の一部は、プリズム22の一部を保持する第2保持部材として機能している。第2保持部材は、先端カバー21の基端寄りで、かつ開口21c寄りの一部領域を第2保持部21dとしている(詳細後述;
図4等参照)。
【0035】
プリズム22は、挿入軸Xに対して側方からの入射光の光路を挿入軸Xと略平行な方向へと向かう光路に変更する光学素子である。プリズム22は、アダプタ本体23及び先端カバー21に設けられた保持部材(詳細後述)によって保持されている。
【0036】
ここで、
図2等に示すように、側方からの入射光の光路の光軸(一点鎖線)を符号O1で示し、以下の説明において第1光軸O1というものとする。また、プリズム22によって変更された後、挿入軸Xと平行方向に進む光路の光軸(一点鎖線)を符号O2で示し、以下の説明において第2光軸O2というものとする。この第2光軸O2は、挿入部2の先端部11内に設けられる撮像光学系の一部を構成する光学レンズ27b(
図3参照)の光軸に一致する。また、第2光軸O2は、撮像素子28(
図3参照)の撮像面(
図3の符号Im参照)に直交しかつ当該撮像素子28の略中心点に一致する。
【0037】
プリズム22は、
図8に示すように、挿入軸X方向から見た時の投影形状が多角形状に形成されている。この場合において、当該多角形状は、角の数をnとするとき、n≧4(nは自然数)である。本実施形態においては、n=8の場合、即ち八角形状の場合を例示している。
【0038】
プリズム22は多面体である。したがって、以下、プリズム22を構成する各面のそれぞれに符号を付して説明する。この場合において、特定の符号を付して特定の「面」として説明する部位の一部は、挿入軸X方向から見たときの多角形状の一つの「辺」に相当する。具体的には、例えば、
図8において、プリズム22を挿入軸X方向から見た時の多角形状における一つの特定の辺22aは、プリズム22の一つの特定の面である入射面22aの一部である。このとき、当該特定の辺22aを入射辺と呼称する。この場合、入射辺22aは、入射面の一部であるので、入射辺及び入射面は、同じ符号22aを用いるものとする。
【0039】
以下、本実施形態の側視用光学アダプタ20に適用されているプリズム22の構成を詳述する。プリズム22は、
図4,
図7~
図9等に示すように、被検体からの観察光が入射する入射面22aを有する。この入射面22aは、当該プリズム22が側視用光学アダプタ20に組み付けられた状態とされたとき、挿入軸X方向に対して側方に向けて配置される。光軸O1は、この入射面22aに直交し、当該入射面22aの略中心を通る。なお、入射面22aの平面形状は、本実施形態においては略四角形として例示しているが、これに限られない。
【0040】
プリズム22は、入射面22aに対して挿入軸Xを挟んで対向する対面22bを有する。入射面22aの平面形状は、本実施形態においては略四角形として例示しているが、これに限られない。ここで、入射面22aと対面22bとは平行に形成されている。また、
図4に示すように、入射面22aの幅方向(挿入軸Xに直交する横方向)の長さW1は、対面22bの幅方向(同前)の長さW2よりも長く形成されている(W1>W2)。
【0041】
また、プリズム22は、入射面22aの4つの周縁辺のそれぞれと、対面22bの4つの周縁辺のそれぞれとを結ぶ4つの斜面を有している。このうち、入射面22aの4つの周縁辺のうちの挿入軸Xに沿う2つの側方周縁辺と、これらに対応する対面22bの2つの側方周縁辺とをそれぞれ結ぶ2つの斜面を、側方斜面22cというものとする(
図4,
図7~
図9参照)。
【0042】
また、入射面22aの4つの周縁辺のうちの挿入軸Xと直交する2つの周縁辺と、これらに対応する対面22bの2つの周縁辺とをそれぞれ結ぶ2つの斜面を、それぞれ反射面22d,出射面22gというものとする(
図9等参照)。ここで、反射面22dは、入射面22aから入射した観察光を反射させる面である。出射面22gは、反射面22dにより反射された観察光が当該プリズム22の外部に出射する面である。これら2つの側方斜面22c,反射面22d,出射面22gの平面形状は、本実施形態においては略四角形として例示しているが、これに限られない。
【0043】
ここで、
図8に示すように、プリズム22を挿入軸X方向から見たときの多角形状においては、入射辺22aと対辺22bとは平行である。また、入射辺22aは対辺22bよりも長く形成されている(W1>W2)。そして、この場合において、対辺22bは、入射辺22aに対向する領域内に配置されている。また、入射辺22aの各端部と対辺22bの各端部とをそれぞれ結ぶ2つの側方斜辺22cは、
図8において、下方に向けて互いに近づく傾斜を有している。
【0044】
さらに、プリズム22は、
図8に示すように、入射辺22a,対辺22b,2つの側方斜辺22cのそれぞれに対して平行ではない2つの第1側辺22eを有している。2つの第1側辺22eのそれぞれを延長した直線は、2つの側方斜辺22cのそれぞれと交わる。したがって、第1側辺22eは、側方斜辺22cと当接している。
【0045】
さらにまた、プリズム22は、
図8に示すように、入射辺22a,対辺22b,2つの側方斜辺22c,2つの第1側辺22eのそれぞれに対して平行ではない2つの第2側辺22fを有している。2つの第2側辺22fのそれぞれを延長した直線は、2つの第1側辺22e及び入射辺22aとそれぞれに交わる。したがって、第2側辺22fは、第1側辺22e及び入射辺22aとに当接している。そして、当該プリズム22が側視用光学アダプタ20に組み付けられた状態とされたとき、2つの第2側辺22f及び入射面22aは、先端カバー21の開口21cから外部に対して露呈される。
【0046】
プリズム22は、上述したように、アダプタ本体23及び先端カバー21に設けられた保持部材によって保持されている。即ち、
図4等に示すように、プリズム22の2つの側方斜辺(側方斜面)22cのそれぞれの少なくとも一部が、アダプタ本体23の第1保持部23a(第1保持部材)によって保持されている。この場合において、プリズム22の側方斜辺22cと第1保持部23aとの間は接着剤等(不図示)によって固定される。
【0047】
そして、プリズム22が接着固定されたアダプタ本体23に対して先端カバー21が組み込み固定されたとき、第1保持部23aの外面と先端カバー21の内面との間には隙間23x(
図4参照)が形成されている。先端カバー21の基端部分とアダプタ本体23がレーザ溶接等の手段で接合されるため、この隙間23xには、接着剤は充填されない。隙間23xに空間を設けることで、外部から先端カバー21に衝撃が加わったとしても、先端カバー21の内蔵物に外力が伝わることがないため、外力による破損や変形に対しさらに強い構造とすることができる。
【0048】
また、プリズム22の第1側辺(第1側面)22eの少なくとも一部は、先端カバー21の第2保持部21d(第2保持部材)によって保持されている。この場合において、第1側辺22eと第2保持部21dとの間には隙間があり、接着剤が充填される。そして、第1側辺22eと第2保持部21dとの間は接着剤によって水密的に固定されている。接着剤が水密保持および衝撃吸収の役目を果たし、先端カバー21が外力を受けた際にも接着剤が外力を吸収する。
【0049】
また、プリズム22の反射面22dによって反射された後の第2光軸O2は、挿入軸Xを挟んで入射面22aとは反対側の対辺22b側に偏った位置に配置されている。例えば、
図8において、第2光軸O2は、挿入軸X(側視用光学アダプタ20の中心軸)から対辺22b側に符号Dで示す量だけ偏った位置に配置されている。
【0050】
また、プリズム22は、
図8に示すように、挿入軸X方向から見たときの多角形状における入射辺22aと対辺22bとの間の距離をプリズム高さh1とし、側方斜辺22cの端点から対辺に延ばした垂線を斜辺高さh2としたとき、条件式(1)、
h1<2h2 …… (1)
を満たす。この条件式を満たすことにより、第1保持部23aの厚みを適切に確保することができ、プリズムの保持強度を十分に保つことができる。
【0051】
一方、アダプタ本体23は、
図3等に示すように、撮像光学系の一部を構成する光学レンズ27aと、照明開口25と、照明導光路26等を有して構成されている。なお、アダプタ本体23の内部構成は、従来の光学アダプタ等に採用される公知の構成が適用されているものとして、詳細な説明は省略する。
【0052】
また、アダプタ本体23には、第1保持部23aが形成されている。第1保持部23aは、アダプタ本体23の両側面から前方に向けて突設される2つの腕状部である。詳しくは、第1保持部23aは、アダプタ本体23の外周縁部近傍の位置から挿入軸Xの略平行方向に前方に向けて突設されている。そして、第1保持部23aは、挿入軸Xを挟んで対向する位置のそれぞれに設けられている。2つの第1保持部23aは、プリズム22の2つの側方斜面22cをそれぞれ保持する保持部材の一部である。つまり、2つの第1保持部23aは、プリズム22を両側面から挟持する。
【0053】
ここで、
図8に示すように、入射辺22aを延長した直線Aと、側方斜辺22cを延長した直線Bとの交点C1は、第1保持部23aとは当接しない。
【0054】
保持部材は、プリズム22を保持する部材である。保持部材は、第1保持部材と、当該第1保持部材とは別の第2保持部材とを有している。第1保持部材は側視用光学アダプタ本体であり、詳しくはアダプタ本体23の第1保持部23aである。第2保持部材は側視用光学アダプタカバーであり、詳しくは先端カバー21の第2保持部21dである。
【0055】
連結部材24は、アダプタ本体23と挿入部2の先端とを連結するための部材である。連結部材24は、軸方向両端が開口した略円筒形状に形成されている。なお、連結部材24と挿入部2の先端との連結手段は、従来の光学アダプタ等に採用される公知の技術が適用されているものとして、詳細な図示及び説明は省略する。
【0056】
このように構成された本実施形態の側視用光学アダプタ20においては、入射面22aに入射する入射光束L1(
図2,
図3,
図8の点線L1参照)は、反射面22dにおいて反射して光路が変更される。ここで、
図8にて符号R1で示す台形状の点線領域は、反射面22dで反射される反射光の領域を示している。なお、この点線領域R1は、撮像素子の有効領域に入射する光の領域であり、実際には点線領域R1以外の反射面にも光自体は入射している。
【0057】
反射面22dにて反射した後の反射光束L2(
図3,
図8の点線L2参照)は、光学レンズ27aを透過する。ここで、当該側視用光学アダプタ20が挿入部2の先端に装着された状態にあるとき(
図3参照)、上記反射光束L2は、光学レンズ27aを透過した後、さらに、挿入部2の先端部11の光学レンズ27bを透過して、撮像素子28の撮像面上に入射する。これにより、撮像素子28の撮像面上には、被検体の光学像が結像する。ここで、
図8にて符号Imで示す矩形状の点線領域は、撮像素子28の撮像面上の撮像領域を示している(なお、
図3の符号Imも参照)。
【0058】
以上説明したように上記第1の実施形態によれば、側視用光学アダプタ20は、プリズム22と保持部材とを有する。
【0059】
プリズム22は、挿入部2の挿入軸X方向から見た時の投影形状を多角形状(角の数n≧4;nは自然数)に形成されている。プリズム22の多角形状は、入射辺22aと、入射辺22aに対し挿入軸Xを挟んで対向する対辺22bと、入射辺22aと対辺22bとを結ぶ2つの側方斜辺22cとを有している。ここで、入射辺22aと対辺22bとは平行である。また、対辺22bよりも入射辺22aの方が長く形成されている(W1>W2)。
【0060】
保持部材の一つである第1保持部23aは、プリズム22の2つの側方斜辺22cのそれぞれの少なくとも一部を保持する。このとき、入射辺22aを延長した直線Aと、2つの側方斜辺22cのそれぞれを延長した直線Bとの交点C1は、第1保持部23aに当接しない。つまり、第1保持部23aは、プリズム22の2つの側方斜辺22cのそれぞれの中程の部位の一部を保持する。
【0061】
さらに、保持部材は、第1保持部23aとは別の第2保持部21dを有する。これに応じて、プリズム22は、入射辺22a,対辺22b,側方斜辺22cのそれぞれに対して平行でない第1側辺22eを有している。そして、第2保持部21dは、第1側辺22eの少なくとも一部を保持する
【0062】
さらにまた、プリズム22は、入射辺22a,対辺22b,側方斜辺22c,第1側辺22eのそれぞれと平行ではない第2側辺22fを有している。そして、第2側辺22fは、入射面22aと共に、側視用光学アダプタ20の外部に露出されている。
【0063】
換言すると、プリズム22は、挿入部2の挿入軸X方向から見た時の投影形状において、入射辺22aと対辺22bと2つの側方斜辺22cとを有し、入射辺22aと対辺22bとが平行で、対辺22bよりも入射辺22aの方が長く形成されている。したがって、当該形状は、例えば略台形状である。そして、投影形状が略台形状のプリズム22は、側方斜面22cの中程の部位が、第1保持部23aによって保持される構成となっている。
【0064】
この場合において、本実施形態におけるプリズム22は、従来の形態の三角柱形状のプリズム22において撮像素子に入射する有効光束が通過せず利用されていなかった領域を一部除去した形態で、側方斜面22cを形成している。この構成により、プリズム22は、挿入軸X方向から見たときの投影形状が多角形状(本実施形態においては略台形状に近い八角形状)に形成している。
【0065】
そして、側方斜辺22cのうちの少なくとも一部を保持する第1保持部23aを、アダプタ本体23に設けている。この第1保持部23aは、側方斜辺22cを延長した直線Bと入射辺22aを延長した直線Aとの交点C1、即ち入射面22aの側方領域には当接しない位置に設けられている。さらに、プリズム22は、反射面22dの反射光の光軸(第2光軸O2)は、挿入軸Xを挟んで入射面22aとは反対側の対辺22b側に
図8における符号Dだけ偏った位置に配置されている。
【0066】
つまり、プリズム22は、側方斜辺22cが形成されていると共に、反射面22dの反射光の光軸(第2光軸O2)が挿入軸Xを挟んで入射面22aとは反対側の対辺22b側に偏った位置に配置されている。
【0067】
このようにプリズム22の形状及び配置を工夫して構成された本実施形態の側視用光学アダプタ20においては、アダプタ外径寸法を拡大することなく、プリズム22の入射面22aを拡大(広画角化)することができる。従来では、プリズム22の入射面22aを拡大するために第2光軸O2を入射面22aとは反対側の対辺22b側に偏らせようとすると、プリズムの大きさに起因し第1保持部23aの肉厚が確保できなくなり、保持性能が低下してしまっていた。保持性能を同時に確保しようとするとアダプタ外径寸法を拡大せざるを得なかったが、本構成により、側視用光学アダプタ20において、アダプタ外径寸法を維持しながら、保持性能の維持および広画角化を実現することができる。
【0068】
また、プリズム22は、アダプタ本体23の第1保持部23aによって保持され接着固定されている。そして、プリズム22が接着固定されたアダプタ本体23に対して先端カバー21が組み込まれたとき、第1保持部23aの外面と先端カバー21の内面との間には隙間23x(
図4参照)が形成されている。先端カバー21の基端部分とアダプタ本体23がレーザ溶接等の手段で接合されるため、この隙間23xには、接着剤は充填されない。
【0069】
このようなアダプタ本体23によりプリズム22を保持する構成により、例えば当該側視用光学アダプタ20を落下させる等により意図しない外力が先端カバー21に加わったとしても、当該外力がプリズム22に影響を及ぼすことがない。この場合、例えば、先端カバー21が変形したとしても、隙間23xが設けられているので、第1保持部23aが変形してしまうことを抑止することができる。したがって、プリズム22の破損を抑止することができるだけでなく、プリズム22の保持位置にも影響が及ぶことはない。したがって、プリズム22の固定位置を維持することができ、光軸ズレ等が生じる虞がない。よって、撮像結果に乱れ等が発生することがなく、常に良好な撮像結果を得ることができる。
【0070】
加えて、プリズム22の入射面22aの側方領域と前述の交点C1が当接しない構成により、側方からプリズム22を固定する領域(特許文献1に記載のような)を省き、入射面の拡大に使用することができ、画角を拡大することができる。
【0071】
さらに、先端カバー21の第2保持部21dは、プリズム22の側方斜面22cとは異なる領域である第1側辺22eとの間の隙間に充填された接着剤により接着固定されている。第2保持部21dと第1側辺22eとが接着固定されている構成により、水密性が確保されている。
【0072】
なお、上述の第1の実施形態の側視用光学アダプタ20においては、第1側辺22eを設け、この第1側辺22eに先端カバー21の第2保持部21dを接着固定させる構成としている。しかしながら、この構成は、必ずしも必須の構成ではない。
【0073】
例えば、
図10に示すように、プリズム22Aをn=4の四角形状(挿入軸X方向から見たときの投影形状)としてもよい。ここで、
図10は、プリズム形状についての第1変形例を示す図である。なお、
図10は、第1変形例において、
図4に相当する断面図である。この第1変形例では、上述の第1の実施形態におけるプリズム22の第1側辺22eを省略して構成した例である。
【0074】
図10に示す第1変形例の構成、(即ち上述の第1の実施形態におけるプリズム22の第1側辺22eを省略した構成)としても、アダプタ外径寸法を維持しながら、広画角化を実現することができ、プリズム22Aの固定位置を維持することができ、光軸ズレ等が生じる虞がない。
【0075】
また、上述の第1の実施形態の側視用光学アダプタ20においては、さらに、第2側辺22fを設け、この第2側辺22fを入射面22aと共に、先端カバー21の開口21cから外部に対して露呈する構成としている。しかしながら、この構成は、必ずしも必須の構成ではない。
【0076】
したがって、例えば、上述の第1の実施形態におけるプリズム22の第2側辺22fを省略して構成することもできる。ただし、この場合にも、入射面22aは、先端カバー21の開口21cから外部に対して露呈する構成とすることは必要である。
【0077】
例えば、
図11に示すように、プリズム22Bをn=6の六角形状(挿入軸X方向から見たときの投影形状)としてもよい。ここで、
図11は、プリズム形状についての第2変形例を示す図である。なお、
図11は、第2変形例において、
図4の断面に相当する断面図である。
【0078】
このように、
図11に示す第2変形例の構成、(即ち上述の第1の実施形態におけるプリズム22の第2側辺22fを省略した構成)としても、アダプタ外径寸法を維持しながら、広画角化を実現することができ、プリズム22Bの固定位置を維持することができ、光軸ズレ等が生じる虞がない。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態の側視用光学アダプタについて、説明する。本実施形態の側視用光学アダプタは、基本的には、上述の第1の実施形態と略同様の構成からなる。本実施形態においては、保持部材としての第1保持部(アダプタ本体側)及び第2保持部(先端カバー側)の構成が異なる。したがって、本実施形態の構成を説明するのに際しては、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して、その説明は省略し、異なる構成についてのみ、以下に説明する。
【0080】
図12~
図15は、本発明の第2の実施形態の側視用光学アダプタを示す図である。このうち、
図12は、本発明の第2の実施形態の光学アダプタの外観を示す斜視図である。
図13は、
図12の側視用光学アダプタの分解斜視図である。
図14は、
図12の側視用光学アダプタから側視用光学アダプタカバーを取り外した構成を示す斜視図である。
図15は、
図14の矢印[15]方向から見た正面図である。
【0081】
本実施形態の側視用光学アダプタ20Cは、上述の第1の実施形態の側視用光学アダプタ20と同様に、側視用光学アダプタカバーである先端カバー21Cと、プリズム22と、側視用光学アダプタ本体であるアダプタ本体23Cと、連結部材24と、保持部材とによって主に構成されている。このうち、先端カバー21Cと、アダプタ本体23Cと、保持部材の構成が、上述の第1の実施形態とは異なる。
【0082】
先端カバー21Cは、全体として略筒形状に形成されている点において、第1の実施形態と同様である。本実施形態における先端カバー21Cは、
図13等に示すように、閉塞された先端面21aと、開口した基端面21Cbとを有すると共に、外周面上の一部を切り欠いた開口21cを有する点において、第1の実施形態と同様である。
【0083】
これに加えて、本実施形態における先端カバー21Cは、2つの第2保持部21Cdを有している。この第2保持部21Cdは、基端面21Cbから挿入軸X方向に向けて延出する一対の腕状部である。第2保持部21Cdは、先端カバー21Cの挿入軸Xを挟んで両側面近傍に対向する位置にそれぞれ配設されている。
【0084】
そして、側視用光学アダプタ20Cを組み立て状態とした時、2つの第2保持部21Cdの端面は、アダプタ本体23Cの当接面23Cdに当接する。そのため、先端カバー21の外径は、アダプタ本体23Cの外径と略同径に形成されている。そして、このとき21Cdの端面と当接面23Cdとの間は、例えば接着剤等によって接着固定される。なお、接着剤等に代えてレーザ溶接などを用いて固定してもよい。
【0085】
また、このとき、図示されていないが、2つの第2保持部21Cdは、第1側辺22eとの間の隙間に接着剤が充填されて接着固定される。この構成により、第2保持部21Cdと第1側辺22eとの間の水密性が確保されている。
【0086】
また、先端カバー21Cの基端面21Cbは、当該側視用光学アダプタ20Cを組み立て状態とした時、アダプタ本体23Cの先端面23Cbに当接する。そのため、先端カバー21の外径は、アダプタ本体23Cの外径と略同径に形成されている。そして、このとき、先端カバー21Cの基端面21Cbと、アダプタ本体23Cの先端面23Cbとの間は、例えば接着剤等によって接着固定される。なお、接着剤等に代えてレーザ溶接などを用いて固定してもよい。
【0087】
アダプタ本体23Cは、撮像光学系の一部を構成する光学レンズ(不図示)と、照明開口25と、照明導光路(不図示)等を有して構成されている点は、上述の第1の実施形態と同様である。また、本実施形態においても、アダプタ本体23Cの内部構成事態は、従来の光学アダプタ等に採用される公知の構成が適用されているものとして、詳細な説明は省略する。
【0088】
アダプタ本体23Cには、第1保持部23Caが形成されている。本実施形態における第1保持部23Caは、プリズム22の2つの側方斜面22cをそれぞれ覆い保持する部位と、対辺22bを覆う部位とを有し、これらの部位が連続して形成されている。第1保持部23Caは、アダプタ本体23Cの外周縁部から挿入軸X方向において前方に向けて突出して形成されている。そして、第1保持部23Caは、アダプタ本体23Cの先端側の外周の略半周を覆うように形成されている。つまり、第1保持部23Caは、左右両側面が繋がった形態で形成されている。
【0089】
なお、この場合において、入射辺22aを延長した直線(A)と、2つの側方斜辺22cのそれぞれを延長した直線(B)との交点(C1)は、第1保持部23Caと当接しない構成は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0090】
このような構成により、本実施形態の側視用光学アダプタ20Cにおけるプリズム22は、アダプタ本体23Cの第1保持部23Caによって保持されて接着固定される。この場合において、第1保持部23Caは、プリズム22の側方斜辺22cだけでなく、対辺22bに対しても接着固定される。
【0091】
そして、プリズム22が接着固定されたアダプタ本体23Cに対して先端カバー21Cが組み込まれたとき、アダプタ本体23Cの第1保持部23Caの先端面23Cbは先端カバー21Cの基端面21Cbに当接し接着される。同時に、先端カバー21Cの第2保持部21Cdの端面はアダプタ本体23Cの当接面23Cdに当接し接着される。
【0092】
保持部材は、プリズム22を保持する部材である。保持部材は、第1保持部材と、当該第1保持部材とは別の第2保持部材とを有している。第1保持部材は側視用光学アダプタ本体であり、詳しくはアダプタ本体23Cの第1保持部23Caである。第2保持部材は側視用光学アダプタカバーであり、詳しくは先端カバー21Cの第2保持部21Cdである。
【0093】
プリズム22及び連結部材24の各構成は、上述の第1の実施形態の構成と全く同様である。また、その他の構成は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0094】
以上のように構成される第2の実施形態の側視用光学アダプタ20Cによっても、上述の第1の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0095】
上述した第1の実施形態における入射辺、側辺などプリズム22の各辺は、設計に影響を与えない範囲で丸みを帯びていても良い。すなわち、内視鏡挿入部の挿入軸方向から見た投影形状が、必ずしも直線でなくても良い。また、各辺の交点は、必ずしも尖っている必要はなく、面取り加工がされていても良い。この場合も、各辺を延長した直線の交点を、投影形状の各頂点と考えればよい。
【0096】
上述した第1の実施形態では、プリズム22の投影形状が主にn=8である八角形状である例を示したが、プリズム22の投影形状は、n≧4(nは自然数)であればこれに限定されない。例えば、
図16に示す例は、n=7、すなわちプリズム22Dの投影形状が七角形の場合である。ここで、
図16は、第2実施形態のプリズム形状についての変形例を示す図である。なお、
図16は、当該変形例において、
図4の断面に相当する断面図である。この
図16に示すように、nが奇数となる場合、入射辺に対する対辺は2本以上となる場合がある。この場合でも、アダプタ外径寸法を維持しながら、広画角化を実現することができ、プリズム22Dの固定位置を維持することができ、光軸ズレ等が生じる虞がない。
【0097】
上述した各実施形態では、内視鏡の挿入部の先端部11に着脱可能な構成の光学アダプタを例示しているが、先端部11に光学アダプタを着脱する形態とは別に、光学アダプタに内蔵される光学系が挿入部の先端部に一体に構成される形態の内視鏡においても、本発明の構成は適用できる。
【0098】
具体的には、例えば、上述した各実施形態のプリズムや第1保持部材、第2保持部材などが、内視鏡の先端部11内に撮像光学系として内蔵される構成が考えられる。また、この構成とする場合、挿入部2が本体部3に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0099】
上述した各実施形態では、側方視野を確保するための側視用光学アダプタ或いは側視用内視鏡に適用する例を示したが、本発明の構成は、上述した形態(側視用)に限られることはない。
【0100】
本発明の構成は、例えば、斜方視野を確保するための斜視用光学アダプタ或いは斜視用内視鏡に適用することができる。
【0101】
【0102】
即ち、
図17は、本発明の第3の実施形態の光学アダプタの外観を示す斜視図である(
図2に相当)。
図18は
図17の矢印[18]で示す平面に沿う断面図である(
図3に相当)。なお、
図17,
図18は、本実施形態の側視用光学アダプタが挿入部2の先端に装着されている状態を示している。
【0103】
図19は、
図18の[19]-[19]線に沿う断面図である(
図4に相当)。
図20は、
図17の光学アダプタから光学アダプタカバーを取り外した状態の分解斜視図である(
図5に相当)。
図21は、
図17の光学アダプタの分解斜視図である(
図6に相当)。なお、
図20,
図21は、本実施形態の側視用光学アダプタのみを示している。
図22は、
図17の光学アダプタにおける光学アダプタカバー以外の構成の側面図である。
図23は、
図22の矢印[23]方向から見た正面図である。
図24は、
図17の光学アダプタにおけるプリズムのみを取り出して示す外観斜視図である。
【0104】
本発明の第3の実施形態の斜視用光学アダプタ20Eは、
図1に示す内視鏡装置1の挿入部2の先端部11に着脱自在に構成される光学アダプタである点において、上述の第1の実施形態と同様である。本実施形態の斜視用光学アダプタ20Eは、特に斜方視野を確保するための光学アダプタとして構成されている点が、上述の第1の実施形態とは異なる。したがって、本実施形態についての以下の説明は、上述の第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は省略し、異なる部分のみについて詳述する。
【0105】
本実施形態の側視用光学アダプタ20Eは、図示のように、斜視用光学アダプタカバーである先端カバー21Eと、プリズム22Eと、側視用光学アダプタ本体であるアダプタ本体23と、連結部材24と、保持部材とによって主に構成されている。
【0106】
先端カバー21Eは、基本的には、上述の第1の実施形態における先端カバー21と同様の構成を有し、プリズム22Eの形状に合わせて、開口21c及び第2保持部21dの形状が若干異なるのみである(
図17~
図21等参照)。
【0107】
また、プリズム22Eは、挿入軸Xに対して斜方からの入射光の光路を挿入軸Xと略平行な方向へと向かう光路に変更する光学素子である。プリズム22Eは、アダプタ本体23及び先端カバー21に設けられた保持部材によって保持されている。
【0108】
プリズム22Eは多面体である点において、上述の第1の実施形態におけるプリズム22と同様である。本実施形態におけるプリズム22Eにおいて、被検体からの観察光が入射する入射面22aは、当該プリズム22Eが斜視用光学アダプタ20Eに組み付けられたときに、挿入軸X方向に対して前方に向けた傾斜を有して側方に向けて配置されている。プリズム22Eにおいて、その他の面は、上述の第1の実施形態におけるプリズム22と略同様である。そして、プリズム22Eの2つの側方斜面22cが、アダプタ本体23の第1保持部23aによって挟持されることで、プリズム22Eは、アダプタ本体23に保持されている。その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。
【0109】
このように構成された上記第3の実施形態によっても、上述の各実施形態と同様の効果を得ることができる。即ち、本発明は斜視用光学アダプタにおいても、全く同様に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
またさらに、上述の第3実施形態の斜視用光学アダプタに内蔵される光学系が挿入部の先端部に一体に構成される形態の斜視型内視鏡に対しても、本実施形態の構成を適用することができる。
【0110】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0111】
1…内視鏡装置
2…挿入部
3…本体部
4…操作部
11…先端部
11a…先端部本体
12…湾曲部
13…可撓管部
14…表示装置
15…ケーブル
20,20C…側視用光学アダプタ
20E…斜視用光学アダプタ
21,21C,21D,21E…先端カバー
21a…先端面
21b,21Cb…基端面
21c…開口
21d,21Cd…第2保持部
22,22A,22B,22D,22E…プリズム
22a…入射面,入射辺
22b…対面,対辺
22c…側方斜面,側方斜辺
22d…反射面
22g…出射面
23,23C…アダプタ本体
23a,23Ca…第1保持部
23b…当接面
23Cb…先端面
23Cd…当接面
23x…隙間
24…連結部材
25…照明開口
26…照明導光路
27a,27b…光学レンズ
28…撮像素子