(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074754
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】網状の海苔加工食品
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20230523BHJP
【FI】
A23L17/60 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187869
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】592015802
【氏名又は名称】赤穂化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】森本 博俊
(72)【発明者】
【氏名】富方 克哉
(72)【発明者】
【氏名】中川 光司
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LE01
4B019LE06
4B019LP01
4B019LP03
4B019LP07
4B019LP11
(57)【要約】
【課題】従来とは見た目が異なる意匠性の高い網状の海苔加工食品を提供すること。
【解決手段】繊維状の海苔を含む網状の海苔加工食品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状の海苔を含む網状の海苔加工食品。
【請求項2】
前記繊維状の海苔が、スジアオノリである請求項1に記載の海苔加工食品。
【請求項3】
目付量が、5g/m2以上50g/m2以下である請求項1または2に記載の海苔加工食品。
【請求項4】
水分量が、5重量%以上15重量%以下である請求項1~3のいずれかに記載の海苔加工食品。
【請求項5】
前記繊維状の海苔の長さが、1cm以上10cm以下である請求項1~4のいずれかに記載の海苔加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用藻類である海苔を網状に加工した海苔加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
板海苔は、一般的に、食用藻類である紅藻類のアサクサノリやスサビノリ等を原料とする。板海苔は、これらの葉体を裁断し、これを多量の水と共に抄製機に送って海苔簾上に抄き上げ、水分量10重量%程度に乾燥することにより製造されている(特許文献1参照)。
このようにして仕上げられた板海苔は、全形(タテ21cm×ヨコ19cm)を基本にして、さまざまな形にカットされ、あるいは細かくされて、巻いて使う巻きずしやおにぎり、混ぜて使う和え物、油で揚げた素揚げや天ぷら、お好み焼きやサラダのトッピングを始め、多くの料理に使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在使われている一般的な板海苔は、目付量(1平方メートルあたりの重さ)が75g/m2程度であり、厚みが均一で黒褐色でツヤのあるものが良品とされる。板海苔は、数多くの料理にいろいろな工夫を施して使われている。一方、板海苔は、その目付量や色味のバリエーションが乏しい。特に、近年は、料理をSNS等で公開することが行われており、料理の見栄えを良くすることが求められているが、従来の板海苔では、人目を惹きつけるような見栄えとすることは難しく、板海苔を用いた料理に目新しさを加えることは困難である。そのため、料理を作る方から新規な板海苔を望む声がある。
そこで、本発明は、従来とは見た目が異なる意匠性の高い網状の海苔加工食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、繊維状の海苔を含む網状の海苔加工食品を提供することにより、料理を作る方の要望に応えるものである。
具体的な本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.繊維状の海苔を含む網状の海苔加工食品。
2.前記繊維状の海苔が、スジアオノリである1.に記載の海苔加工食品。
3.目付量が、5g/m2以上50g/m2以下である1.または2.に記載の海苔加工食品。
4.水分量が、5重量%以上15重量%以下である1.~3.のいずれかに記載の海苔加工食品。
5.前記繊維状の海苔の長さが、1cm以上10cm以下である1.~4.のいずれかに記載の海苔加工食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の海苔加工食品は、網状であり、従来の板海苔とは全く異なる見た目を有し、意匠性に優れている。本発明の海苔加工食品は、繊維状の海苔を含むため、形を保ったままで目付量と水分量を調整することができる。本発明の海苔加工食品は、目付量により隙間の大きさ、また、水分量により柔軟性を調整することができるため、これらの特長を生かして様々な料理に目新しさを加えることができる。本発明の海苔加工食品は、隙間が大きく、隙間を通してその下にあるものを覗くことができるため、食材や皿の色味を隠すことがなく、料理の彩りを豊かにすることができる。スジアオノリを用いた本発明の海苔加工食品は、風味に優れ、少ない量でありながらも海苔の風味を感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実験3で製造した目付量20g/m
2の海苔加工食品。
【
図2】実験3で製造した目付量40g/m
2の海苔加工食品。
【
図3】実験3で製造した目付量75g/m
2の海苔加工食品。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、繊維状の海苔を含む網状の海苔加工食品に関する。なお、本明細書において、繊維状とは、そのアスペクト比(長さの太さに対する比:長さ/太さ)が10倍以上であることを意味する。なお、本明細書において、繊維の太さは任意の3点以上で測定した平均値を意味する。
本発明で使用する海苔は、食用の海苔であれば特に制限されず、スジアオノリ、ヒラアオノリ、ボウアオノリ等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、食味に優れるため、スジアオノリを用いることが好ましい。
本発明の海苔加工食品は、使用する海苔全量に対して、繊維状の海苔を80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことがより好ましく、95重量%以上含むことがさらに好ましく、100重量%含むことが最も好ましい。また、本発明の海苔加工食品は、使用する海苔全量に対して、スジアオノリを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことがより好ましく、95重量%以上含むことがさらに好ましく、100重量%含むことが最も好ましい。
【0009】
本発明で使用する繊維状の海苔の平均長さは、1cm以上12cm以下であることが、網状の海苔加工食品の製造性の点から好ましい。この長さが1cm未満では、網状の海苔加工食品の製造が困難となる場合がある。また、12cmを超えると製造時に繊維が絡まりやすくなり綺麗な網目状での製造が困難になる場合があり、また、繊維が長すぎて食べにくくなる場合がある。本発明の海苔加工食品において、繊維状の海苔の平均長さは、4cm以上であることがより好ましく、5cm以上であることがさらに好ましい。また、繊維状の海苔の平均長さは、10cm以下であることがより好ましく、7cm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、平均長さとは、任意の30本以上の長さの平均値を意味する。
【0010】
本発明で使用する繊維状の海苔は、その平均アスペクト比は30倍以上であることが好ましい。平均アスペクト比が大きいほど、従来の板海苔と見た目の異なる意匠性に優れた網状の海苔加工食品を容易に製造することができるため、平均アスペクト比は50倍以上であることがより好ましく、80倍以上であることが更に好ましく、100倍以上であることがよりさらに好ましい。なお、本明細書において、平均アスペクト比とは、任意の30本以上の繊維におけるアスペクト比の平均値を意味する。
【0011】
本発明の海苔加工食品は、繊維状の海苔を含む以外は、定法に従って製造することができる。本発明の海苔加工食品は、繊維状の海苔を含み、繊維同士が点接触していれば形を保つことができるため、一般的な板海苔と比較して大きな隙間を有し、目付量を極端に小さくすることができる。本発明の海苔加工食品の目付量は、5g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。目付量が5g/m2未満では、網状の海苔加工食品の製造が困難となる場合があり、目付量が50g/m2を超えると網目が小さくなり、従来の板海苔との見た目の違いが小さくなる場合がある。本発明の海苔加工食品の目付量は、10g/m2以上であることがより好ましく、15g/m2以上であることがさらに好ましい。また、本発明の海苔加工食品の目付量は、45g/m2以下であることがより好ましく、40g/m2以下であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明の海苔加工食品は、水分量が高いほど柔らかくなり、輸送時等に壊れにくくなるが、柔らかくなりすぎて変形加工性と食感が低下する。本発明の海苔加工食品において、これらのバランスを取るために、水分量は5重量%以上15重量%以下であることが好ましく、8重量%以上12重量%以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、海苔加工食品の水分量は、105℃で2分乾燥する前後での温度減少量から算出される値を意味する。
【実施例0013】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
・海苔加工食品の製造工程
特開2002-176866号公報に記載の海藻養殖法を参考にして、スジアオノリを養殖した。スジアオノリは、長さが100cmとなるまで養殖した。収穫したスジアオノリ30本の太さを測定したところ、0.1mm~1mmであり、その平均値は0.6mmであった。
収穫したスジアオノリは、海水および淡水で洗浄し、板海苔の製造時に用いられる切断機で所定の長さに切断したものを水に入れスラリー液にした。これを海苔簾上に抄き上げ、乾燥させ、網状の海苔加工食品を得た。
【0014】
・実験1:繊維長
異なる長さに切断したスジアオノリを用い、上記製造工程を経て目付量15g/m
2、水分量12重量%の海苔加工食品を製造した。
製造した海苔加工食品について、20名の訓練を受けたパネラーにより、繊維感あり/なしについて目視による官能検査を実施した。繊維感があると答えた割合を表1に示す。
【表1】
【0015】
繊維の長さが4cmを超えると繊維感があると感じる方が多くなり、繊維が長くなるにつれてその割合は増加した。そのため、本発明の海苔加工食品において、従来の板海苔と異なる繊維感のある意匠性を出すには、繊維が長い方が望ましいことが確かめられた。
一方、繊維が長くなるにつれて、スラリー中の繊維同士が絡まりやすくなり、綺麗な網目状での製造が難しくなる傾向が見られた。
【0016】
・実験2:水分量
4cmに切断したスジアオノリを用い、上記製造工程を経て水分量の異なる海苔加工食品を製造した。目付量は20g/m
2とした。
製造した海苔加工食品について、20名の訓練を受けたパネラーに、輸送時の安定性、食材として使用する時の変形加工性、食感について触感と試食による官能検査を実施し、輸送安定性あり/なし、変形加工性適/不適、食感良/不良について評価した。輸送安定性あり、変形加工性適、食感良を感じた割合を表2に示す。
【表2】
【0017】
輸送時の安定性、食材として使用する時の変形加工性、食感を総合的に判断すると、水分量は5重量%以上15重量%以下が望ましいことが確かめられた。
【0018】
・実験3:目付量
7cmに切断したスジアオノリを用い、上記製造工程を経て目付量の異なる海苔加工食品を製造した。水分量は8重量%とした。目付量20g/m
2、40g/m
2、75g/m
2のものを、それぞれ
図1~3に示す。
製造した海苔加工食品について、20名の訓練を受けたパネラーに、一般的な板海苔(スサビノリを使用した)と比較した光透過性、表面状態、意匠性、扱いやすさについてどちらが好ましいかを官能検査を行った。本発明の海苔加工食品を好む割合を表3に示す。
【表3】
【0019】
これらを総合的に判断すると、目付量は、5g/m2以上50g/m2以下が望ましいことが確かめられた。