(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074796
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】試料混合装置
(51)【国際特許分類】
B01F 23/40 20220101AFI20230523BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20230523BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20230523BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B01F3/08 Z
B01F5/00 D
B01J19/00 321
B81B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187927
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】上原 聡司
【テーマコード(参考)】
3C081
4G035
4G075
【Fターム(参考)】
3C081AA18
3C081BA09
3C081BA23
3C081BA24
3C081CA31
3C081CA40
3C081DA21
3C081EA37
4G035AB37
4G035AC12
4G035AE13
4G075AA13
4G075AA39
4G075BB05
4G075BD03
4G075BD15
4G075DA02
4G075EA01
4G075EB21
4G075EB50
(57)【要約】
【課題】流れ方向において互いに分離した複数の溶液を混合しやすくすること。
【解決手段】試料混合装置100は、流入部11と、分岐部12と、複数の分岐路13と、合流部14と、合流路15と、を備える。流入部11には、流れ方向において互いに分離した複数の溶液を含む試料2が流入する。分岐部12では、流入部11から流出した試料2が分岐する。複数の分岐路13には、分岐部12で分岐した試料2が流れる。合流部14では、複数の分岐路13から流出した試料2が合流する。合流路15では、合流部14で合流した試料2が流れる。複数の分岐路13は、いずれも全体として流体抵抗が同じとなるように構成されている。複数の分岐路13の各々は、始端から終端にかけて流体抵抗が変化するように構成されており、流体抵抗の変化が互いに異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ方向において互いに分離した複数の溶液を含む試料が流入する流入部と、
前記流入部から流出した前記試料が分岐する分岐部と、
前記分岐部で分岐した前記試料が流れる複数の分岐路と、
前記複数の分岐路から流出した前記試料が合流する合流部と、
前記合流部で合流した前記試料が流れる合流路と、を備え、
前記複数の分岐路は、いずれも全体として流体抵抗が同じとなるように構成されており、
前記複数の分岐路の各々は、始端から終端にかけて前記流体抵抗が変化するように構成されており、前記流体抵抗の変化が互いに異なる、
試料混合装置。
【請求項2】
前記複数の分岐路の各々は、管径が互いに異なる複数の管により構成されている、
請求項1に記載の試料混合装置。
【請求項3】
前記複数の分岐路は、それぞれ前記複数の溶液が分離して流れるように構成されている、
請求項1又は2に記載の試料混合装置。
【請求項4】
前記試料に対して加圧する、又は前記合流路の終端を陰圧とすることにより、前記試料を駆動する駆動部を更に備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の試料混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料において互いに分離した状態で存在する複数の溶液を混合するための試料混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微量流体の混合及び攪拌を行う衝突型マイクロミキサーが開示されている。この衝突型マイクロミキサーは、第1の流入流路と、第2の流入流路と、流出流路と、を備える。第1の流入流路と第2の流入流路とは、互いに対向又は交差する方向に延在し、それらの衝突点又は交差点で合流する。流出流路は、第1の流入流路と第2の流入流路とが合流した点から第1の流入流路及び第2の流入流路の両方と交差する方向に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、互いに異なる2つの容器にそれぞれ収容された2種類の溶液を、一方の溶液を第1の流入流路に流入し、他方の溶液を第2の流入流路に流入することで混合することは可能である。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、1つの容器に収容されている2種類の溶液であって、流れ方向において互いに分離している2種類の溶液を混合することが難しい、という課題がある。
【0005】
本開示は、流れ方向において互いに分離した複数の溶液を混合しやすくすることのできる試料混合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る試料混合装置は、流入部と、分岐部と、複数の分岐路と、合流部と、合流路と、を備える。前記流入部は、流れ方向において互いに分離した複数の溶液を含む試料が流入する。前記分岐部は、前記流入部から流出した前記試料が分岐する。前記複数の分岐路は、前記分岐部で分岐した前記試料が流れる。前記合流部は、前記複数の分岐路から流出した前記試料が合流する。前記合流路は、前記合流部で合流した前記試料が流れる。前記複数の分岐路は、いずれも全体として流体抵抗が同じとなるように構成されている。前記複数の分岐路の各々は、始端から終端にかけて前記流体抵抗が変化するように構成されており、前記流体抵抗の変化が互いに異なる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る試料混合装置によれば、流れ方向において互いに分離した複数の溶液を混合しやすくすることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る試料混合装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る試料混合装置の動作についての説明図である。
【
図3】
図3は、実施の形態の変形例に係る試料混合装置の動作についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0010】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0011】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0012】
また、以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲及び「同じ」という用語は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0013】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る試料混合装置100の構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態に係る試料混合装置100の概略構成を示す図である。
図2は、実施の形態に係る試料混合装置100の動作についての説明図である。実施の形態に係る試料混合装置100は、マイクロメートルのスケールで構成されるマイクロミキサーであって、例えば適宜のマイクロマシニング技術により製造される。試料混合装置100は、試料2(
図2参照)に含まれる複数の溶液を混合するための装置である。
【0014】
試料2は、流れ方向(
図1における上下方向)において互いに分離した複数の溶液を含んでいる。試料2は、流入部11に接続された容器4に収容されている。
図2に示す例では、試料2は、2種類の溶液(第1溶液21及び第2溶液22)を含んでいる。第1溶液21及び第2溶液22は、容器4の内部において、試料2の流れ方向において互いに分離している。第1溶液21及び第2溶液22は、界面において拡散することで僅かながら混合し得るが、マイクロリットル程度の微小容量であるため、表面張力の影響が大きくなること、及びレイノルズ数が小さく乱流遷移しにくいことに起因して、容器4の内部で放置された状態では混合することが難しい。特に、試料2に含まれる複数の溶液が比較的粘性が高い場合は、更に混合することが難しくなる。このような試料2は、例えば任意の溶液が満たされた容器4内に、当該溶液とは異なる種類の溶液を滴下することで、作成され得る。
【0015】
図1に示すように、試料混合装置100は、流入部11と、分岐部12と、複数(ここでは、2つ)の分岐路13と、合流部14と、合流路15と、流出部16と、を備えている。なお、実施の形態では、流出部16は試料混合装置100の構成要素に含まれているが、試料混合装置100の構成要素に含まれていなくてもよい。また、実施の形態では、各部を構成する管は、いずれも断面が円形状であるが、矩形状等の他の形状であってもよい。
【0016】
流入部11は、直線状の管で構成されており、試料2が流入する部位である。実施の形態では、送液ポンプからなる駆動部3により試料2に対して加圧することで、試料2を駆動する。これにより、流入部11に接続された容器4から試料2が流入部11へと流入する。なお、駆動部3は、後述する合流路15の終端に接続された流出部16を陰圧とすることにより、試料2を駆動する構成であってもよい。
【0017】
分岐部12は、逆Y字状の管で構成されており、流入部11から流出した試料2が分岐する部位である。実施の形態では、分岐部12は、流入部11から流出した試料2を2つの分岐路13に分岐させる。また、実施の形態では、流入部11を構成する管の管径と、分岐部12を構成する管の管径とは、同じである。なお、分岐部12は、流入部11から流出した試料2が分岐する形状であればよく、例えば逆Y字状の他に、逆T字状の管で構成されていてもよい。
【0018】
複数の分岐路13は、分岐部12で分岐した試料2が流れる部位である。実施の形態では、複数の分岐路13は、2つの分岐路13で構成されている。一方の分岐路13は、管径S1a、長さL1aの第1管131aと、管径S1b(<S1a)、長さL1b(>L1a)の第2管131bとを直列に接続して構成されている。他方の分岐路13は、管径S2a(≒S1b)、長さL2a(≒L1b)の第3管132aと、管径S2b(≒S1a)、長さL2b(≒L1a)の第4管132bとを直列に接続して構成されている。つまり、実施の形態では、複数の分岐路13は、管径が互いに異なる複数の管により構成されている。
【0019】
ここで、複数の分岐路13は、いずれも全体として流体抵抗が同じとなるように構成されている。つまり、分岐部12から複数の分岐路13へと試料2が同時に流入し始めたとすると、試料2は、殆ど同時に複数の分岐路13から合流部14へと流入し始めることになる。
【0020】
また、複数の分岐路13の各々は、始端から終端にかけて流体抵抗が変化するように構成されており、かつ、流体抵抗の変化が互いに異なるように構成されている。実施の形態では、2つの分岐路13のうち一方の分岐路13は、始端から終端にかけて、管径が大きい第1管131a、管径が小さい第2管131bの順に試料2が流れるように構成されている。つまり、一方の分岐路13は、流体抵抗が小さい区間を試料2が流れ、その後、流体抵抗が大きい区間を試料2が流れるように構成されている。これに対して、他方の分岐路13は、始端から終端にかけて、管径が小さい第3管132a、管径が大きい第4管132bの順に試料2が流れるように構成されている。つまり、他方の分岐路13は、流体抵抗が大きい区間を試料2が流れ、その後、流体抵抗が小さい区間を試料2が流れるように構成されている。このように、一方の分岐路13と他方の分岐路13とでは、流体抵抗の変化が互いに異なっている。
【0021】
以下、2つの分岐路13の具体的な寸法の一例について説明する。ここでは、試料2に含まれる第1溶液21を一方の分岐路13に、第2溶液22を他方の分岐路13に殆ど完全に分離させることを前提として説明する。この前提を満たすためには、一方の分岐路13の第1管131aの体積と第1溶液21の体積とが略等しく、かつ、他方の分岐路13の第4管132bの体積と第2溶液22の体積とが略等しくなればよい。
【0022】
つまり、第1溶液21の体積を「V1」、第2溶液22の体積を「V2」として、以下の式を満たせばよい。
【0023】
【0024】
例えば、第1溶液21の体積V1=500μL、第2溶液22の体積V2=500μLである場合、一方の分岐路13において、第1管131aの管径S1a=2mm、長さL1a=150mmとなり、第2管131bの管径S1b=0.5mm、長さL1b=200mmと設定される。また、他方の分岐路13において、第3管132aの管径S2a=0.5mm、長さL2a=200mm、第4管132bの管径S2b=2mm、長さL2b=150mmと設定される。
【0025】
このように、複数の溶液の各々の量が既知である場合、複数の溶液の各々の量に応じて各分岐路13の寸法を適宜調整すればよい。なお、第1溶液21及び第2溶液22の粘性が互いに異なる場合は、これらの粘性を考慮して各分岐路13の寸法を適宜調整すればよい。
【0026】
合流部14は、Y字状の管で構成されており、複数の分岐路13から流出した試料2が合流する部位である。実施の形態では、合流部14は、2つの分岐路13から流出した試料2を合流させる。また、実施の形態では、合流部14を構成する管の管径と、後述する合流路15の管径とは、同じである。なお、合流部14は、複数の分岐路13から流出した試料2が合流する形状であればよく、例えばY字状の他に、T字状の管で構成されていてもよい。
【0027】
合流路15は、直線状の管で構成されており、合流部14で合流した試料2が流れる部位である。
【0028】
流出部16は、合流路15を流れる試料2を外部へ流出させる部位である。流出部16には、例えば更に同径の管が接続されてもよいし、既存のマイクロミキサーが接続されてもよい。
【0029】
[動作]
以下、実施の形態に係る試料混合装置100の動作について
図2を参照しながら説明する。準備段階において、容器4には、第1溶液21及び第2溶液22を含む試料2と、バッファ20と、が収容される。ここでは、試料2の流れ方向において下から順に、第1溶液21、第2溶液22が互いに分離した状態で容器4に収容されている。また、バッファ20は、純水である。なお、バッファ20は必須ではない。
【0030】
まず、
図2の(a)に示すように、第1溶液21が流入部11へと流入し、分岐部12へと流入する。ここで、他方の分岐路13の第3管132aは細く、その始端において表面張力による抵抗及び圧力損失(以下、単に「流体抵抗」という)が大きいため、
図2の(b)に示すように、第1溶液21の第3管132aへの流入はそれ程進行しない。これに対して、一方の分岐路13の第1管131aは太く、第3管132aと比較して流体抵抗が小さいため、
図2の(b)に示すように、第1溶液21の第1管131aへの流入が進行する。
【0031】
なお、管内における圧力損失は、溶液の粘性に依存する。このため、分岐路13の長さ方向において溶液と気体とが同時に存在している場合は、溶液による圧力損失が支配的となり、気体による圧力損失は殆ど無視することができる。
【0032】
第1溶液21の第1管131aへの流入が進み、第1溶液21が第2管131bの始端に差し掛かると、当該始端における流体抵抗及び第2管131bの細さによる流体抵抗の大きさが、他方の分岐路13を流れている溶液に対する流体抵抗よりも大きくなる。このため、第1溶液21の一部及び第2溶液22の第3管132a及び第4管132bへの流入に比べて、第1溶液21の第2管131bへの流入はそれ程進行しない。
【0033】
その後、
図2の(c)に示すように、一方の分岐路13における第1溶液21の流入と、他方の分岐路13における第1溶液21の一部及び第2溶液22の流入とが進む。
【0034】
そして、第1溶液21が一方の分岐路13の終端(合流部14の始端)に差し掛かり、第1溶液21の一部及び第2溶液22が他方の分岐路13の終端(合流部14の始端)に差し掛かると、一方の分岐路13の終端における流体抵抗と、他方の分岐路13の終端における流体抵抗とが略同じとなる。このため、
図2の(d)に示すように、第1溶液21の一方の分岐路13から合流部14への流入と、第1溶液21の一部及び第2溶液22の他方の分岐路13から合流部14への流入とが略同時に進行する。これにより、第1溶液21及び第2溶液22は、これらの界面が流れ方向に沿った界面となるように、合流路15において合流する。
【0035】
上述のように、実施の形態に係る試料混合装置100は、複数の溶液(ここでは、第1溶液21及び第2溶液22)を、流れ方向と直交する界面を有する状態から、流れ方向に沿った界面を有する状態へと変換することが可能である。このため、試料2が容器4に収容されている状態と比較して、界面の面積を大きくすることができるため、複数の溶液を拡散により混合しやすくなる。このように、実施の形態に係る試料混合装置100では、流れ方向において互いに分離した複数の溶液を混合しやすくすることができる、という利点がある。また、複数の溶液が流入する合流路15を構成する管を細くすれば、複数の溶液を界面近傍に集中させることができるので、複数の溶液を更に拡散により混合しやすくすることができる。
【0036】
なお、
図2に示す例では、第1溶液21が一方の分岐路13に、第2溶液22が他方の分岐路13に殆ど完全に分離して流れているが、これに限られない。例えば、試料2に含まれる複数の溶液の各々の量が未知である場合、複数の溶液をそれぞれ複数の分岐路13に殆ど完全に分離させることは難しい。このような場合でも、合流路15において、複数の溶液の少なくとも一部は流れ方向に沿った界面を有する状態へと変換されるため、複数の溶液を混合しやすくなる効果が期待できる。
【0037】
また、流出部16から回収した試料2を再び容器4に収容し、再度、試料混合装置100を用いて試料2を混合させてもよい。この場合、試料混合装置100による混合を繰り返すことで、更に試料2を混合しやすくなる効果か期待できる。
【0038】
[効果等]
以上のように、実施の形態に係る試料混合装置100は、流入部11と、分岐部12と、複数の分岐路13と、合流部14と、合流路15と、を備える。流入部11には、流れ方向において互いに分離した複数の溶液を含む試料2が流入する。分岐部12では、流入部11から流出した試料2が分岐する。複数の分岐路13には、分岐部12で分岐した試料2が流れる。合流部14では、複数の分岐路13から流出した試料2が合流する。合流路15では、合流部14で合流した試料2が流れる。複数の分岐路13は、いずれも全体として流体抵抗が同じとなるように構成されている。複数の分岐路13の各々は、始端から終端にかけて流体抵抗が変化するように構成されており、流体抵抗の変化が互いに異なる。
【0039】
これによれば、複数の溶液を、流れ方向と直交する界面を有する状態から、流れ方向に沿った界面を有する状態へと変換することが可能である。このため、試料2が容器4に収容されている状態と比較して、界面の面積を大きくすることができるため、複数の溶液を拡散により混合しやすくなるので、流れ方向において互いに分離した複数の溶液を混合しやすくすることができる、という利点がある。
【0040】
また、これによれば、複数の溶液に対して超音波を与えたり、振動を与えたりする等のアクティブ型のマイクロミキサーではなく、単に流入部11へ複数の溶液を流入するだけのパッシブ型のマイクロミキサーを実現することができる。このため、実施の形態に係る試料混合装置100では、アクティブ型のマイクロミキサーのように複数の溶液を流入するタイミング等を制御する必要がない、という利点もある。
【0041】
また、実施の形態に係る試料混合装置100では、複数の分岐路13の各々は、管径が互いに異なる複数の管により構成されている。
【0042】
これによれば、管径を異ならせるだけで複数の分岐路13の各々の流体抵抗を変化させることができるので、複数の分岐路13の各々を設計しやすい、という利点がある。
【0043】
また、実施の形態に係る試料混合装置100では、複数の分岐路13は、それぞれ複数の溶液が分離して流れるように構成されている。
【0044】
これによれば、合流路15において、分離された複数の溶液が合流することで、複数の溶液を混合しやすくなる、という利点がある。
【0045】
また、実施の形態に係る試料混合装置100は、試料2に対して加圧する、又は合流路15の終端を陰圧とすることにより、試料2を駆動する駆動部3を更に備える。
【0046】
これによれば、例えば重力による自然落下により試料2を流入部11へ流入させる場合と比較して、試料2を流入部11へと流入させやすい、という利点がある。
【0047】
(変形例)
以下、本開示の1つ又は複数の態様に係る試料混合装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0048】
実施の形態に係る試料混合装置100では、複数の分岐路13は2つであるが、これに限られない。例えば、複数の分岐路13は、3つ以上であってもよい。複数の分岐路13の数は、試料2に含まれる溶液の種類の数以上であれば、試料2を混合する効率が向上しやすいため、好ましい。
【0049】
以下、3つの分岐路を有する試料混合装置100Aについて
図3を参照して説明する。
図3は、実施の形態の変形例に係る試料混合装置100Aの動作についての説明図である。以下では、変形例に係る試料混合装置100Aのうち実施の形態に係る試料混合装置100と共通する構成については説明を省略する。
【0050】
図3に示すように、変形例に係る試料混合装置100Aは、分岐部12、複数の分岐路13、及び合流部14の代わりに、分岐部12Aと、複数の分岐路13Aと、合流部14Aとを備えている点で、実施の形態に係る試料混合装置100と相違する。また、変形例に係る試料混合装置100Aは、試料2の代わりに、試料2Aを混合する点で、実施の形態に係る試料混合装置100と相違する。
【0051】
試料2Aは、3種類の溶液(第1溶液21、第2溶液22、及び第3溶液23)を含んでいる。第1溶液21、第2溶液22、及び第3溶液23は、容器4の内部において、試料2Aの流れ方向において互いに分離している。
【0052】
分岐部12Aは、三又状の管で構成されており、流入部11から流出した試料2Aが分岐する部位である。この変形例では、分岐部12Aは、流入部11から流出した試料2Aを3つの分岐路13Aに分岐させる。また、この変形例では、流入部11を構成する管の管径と、分岐部12Aを構成する管の管径とは、同じである。
【0053】
複数の分岐路13Aは、分岐部12Aで分岐した試料2Aが流れる部位である。この変形例では、複数の分岐路13Aは、3つの分岐路13Aで構成されている。左側の分岐路13Aは、第1管131aと、第2管131bとを直列に接続して構成されている。第1管131a及び第2管131bの管径は、それぞれ実施の形態に係る試料混合装置100における第1管131a及び第2管131bの管径と同じである。
【0054】
中央の分岐路13Aは、第3管132aと第4管132bとを直列に接続し、更に第5管132cを直列に接続して構成されている。第3管132a及び第4管132bの管径は、それぞれ実施の形態に係る試料混合装置100における第3管132a及び第4管132bの管径と同じである。また、第5管132cの管径は、第3管132aの管径と同じである。
【0055】
右側の分岐路13Aは、第6管133aと第7管133bとを直列に接続して構成されている。第6管133aの管径は、第2管131bの管径と同じである。また、第7管133bの管径は、第1管131aの管径と同じである。
【0056】
この変形例においては、第1管131aと第2管131bの長さの合計と、第3管132aと第4管132bと第5管132cの長さの合計と、第6管133aと第7管133bの長さの合計とがいずれも同じになるように、各管の長さが調整されている。また、複数の分岐路13Aは、いずれも全体として流体抵抗が同じとなるように構成されている。つまり、分岐部12Aから複数の分岐路13Aへと試料2Aが同時に流入し始めたとすると、試料2Aは、殆ど同時に複数の分岐路13Aから合流部14Aへと流入し始めることになる。
【0057】
合流部14Aは、三又状の管で構成されており、複数の分岐路13Aから流出した試料2Aが合流する部位である。この変形例では、合流部14Aは、3つの分岐路13Aから流出した試料2Aを合流させる。また、この変形例では、合流部14Aを構成する管の管径と、合流路15の管径とは同じである。
【0058】
次に、変形例に係る試料混合装置100Aの動作について説明する。準備段階において、容器4には、試料2Aと、バッファ20と、が収容される。ここでは、試料2Aの流れ方向において下から順に、第1溶液21、第2溶液22、及び第3溶液23が互いに分離した状態で容器4に収容されている。また、バッファ20は、純水である。なお、バッファ20は必須ではない。
【0059】
まず、
図3の(a)の状態において、第1溶液21が流入部11へと流入し、分岐部12Aへと流入する。ここで、中央の分岐路13Aの第3管132a、及び右側の分岐路13Aの第6管133aは細く、始端において流体抵抗が大きいため、
図3の(b)に示すように、第1溶液21の第3管132a及び第6管133aへの流入はそれ程進行しない。これに対して、左側の分岐路13Aの第1管131aは太く、第3管132a及び第6管133aと比較して流体抵抗が小さいため、
図3の(b)に示すように、第1溶液21の第1管131aへの流入が進行する。
【0060】
第1溶液21の第1管131aへの流入が進み、第1溶液21が第2管131bの始端に差し掛かると、当該始端における流体抵抗と、他の2つの分岐路13Aの第3管132a及び第6管133aの始端における流体抵抗とが略同じになる。このため、第1溶液21の第2管131bへの流入と、第2溶液22の第3管132a及び第6管133aへの流入と、が進行する。
【0061】
第2溶液22の第3管132aへの流入が進み、第2溶液22が第4管132bの始端に差し掛かると、当該始端における流体抵抗が、他の2つの分岐路13Aの第2管131b及び第6管133aの流体抵抗よりも小さくなる。このため、
図3の(c)に示すように、第2溶液22の第4管132bへの流入が進行する。一方、他の2つの分岐路13Aにおいては、溶液の流入はそれ程進行しない。
【0062】
第2溶液22の第4管132bへの流入が進み、第2溶液22が第5管132cの始端に差し掛かると、当該始端における流体抵抗と、他の2つの分岐路13Aの第2管131b及び第6管133aにおける流体抵抗とが略同じになる。このため、第1溶液21の第2管131bへの流入と、第2溶液22の第5管132c及び第6管133aへの流入と、が進行する。
【0063】
その後、第2溶液22に続いて第3溶液23の第6管133aへの流入が進み、第3溶液23が第7管133bの始端に差し掛かると、当該始端における流体抵抗が、他の2つの分岐路13Aの第2管131b及び第5管132cの流体抵抗よりも小さくなる。このため、
図3の(d)に示すように、第3溶液23の第7管133bへの流入が進行する。一方、他の2つの分岐路13Aにおいては、溶液の流入はそれ程進行しない。
【0064】
そして、第1溶液21、第2溶液22、及び第3溶液23がそれぞれ左側の分岐路13Aの終端、中央の分岐路13Aの終端、及び右側の分岐路13Aの終端に差し掛かると、これらの終端における流体抵抗が略同じとなる。このため、
図3の(e)に示すように、第1溶液21の左側の分岐路13Aから合流部14Aへの流入と、第2溶液22の中央の分岐路13Aから合流部14Aへの流入と、第3溶液23の右側の分岐路13Aから合流部14Aへの流入とが略同時に進行する。これにより、第1溶液21、第2溶液22、及び第3溶液23は、これらの界面が流れ方向に沿った界面となるように、合流路15において合流する。
【0065】
上述のように、変形例に係る試料混合装置100Aは、複数の溶液(ここでは、第1溶液21、第2溶液22、及び第3溶液23)を、流れ方向と直交する界面を有する状態から、流れ方向に沿った界面を有する状態へと変換することが可能である。このため、試料2Aが容器4に収容されている状態と比較して、界面の面積を大きくすることができるため、複数の溶液を拡散により混合しやすくなる。
【0066】
実施の形態に係る試料混合装置100、及び変形例に係る試料混合装置100Aでは、複数の分岐路13,13Aの各々を管径が互いに異なる管により構成することで流体抵抗の変化に差を生じさせているが、これに限られない。例えば、分岐路13,13Aを湾曲させる等して管の形状を変化させることで、流体抵抗の変化に差を生じさせてもよい。また、例えば、分岐路13,13Aの始端に親水性を低下させるべくポリマー材料をコーティングしたり、流路壁面に凹凸を設けて撥水性を高めたりすることで、流体抵抗の変化に差を生じさせてもよい。さらに、例えば、分岐路13,13Aの壁面をプラズマ又は紫外線等で処理して親水性を高めることで、流体抵抗の変化に差を生じさせてもよい。
【0067】
実施の形態に係る試料混合装置100、及び変形例に係る試料混合装置100Aでは、駆動部3により試料2,2Aを駆動しているが、これに限られない。例えば、試料2,2Aは、重力による自然落下により流入部11から流入させてもよい。この場合、駆動部3は不要である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示は、例えば1つの容器において流れ方向に互いに分離している複数種類の溶液を混合する試料混合装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
100、100A 試料混合装置
11 流入部
12、12A 分岐部
13、13A 分岐路
131a 第1管
131b 第2管
132a 第3管
132b 第4管
132c 第5管
133a 第6管
133b 第7管
14、14A 合流部
15 合流路
16 流出部
2、2A 試料
20 バッファ
21 第1溶液
22 第2溶液
23 第3溶液
3 駆動部
4 容器
L1a、L1b、L2a、L2b 長さ
S1a、S1b、S2a、S2b 管径