(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074815
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】緩衝材
(51)【国際特許分類】
B32B 5/26 20060101AFI20230523BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20230523BHJP
D04H 1/58 20120101ALI20230523BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H1/425
D04H1/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187949
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大田 司
(72)【発明者】
【氏名】竹下 三四郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 博志
(72)【発明者】
【氏名】神垣 真哉
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AJ01B
4F100AJ04A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00A
4F100DG15B
4F100JA20A
4F100JK11A
4L047AA08
4L047AB06
4L047BA12
4L047CB01
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】緩衝性能を高めつつ、紙粉の飛散を防止または抑制することができる緩衝材を提供すること。
【解決手段】セルロース繊維と、該セルロース繊維を結着させる結合材料と、を含み、シート状をなす緩衝シートと、前記緩衝シートの少なくとも一方の面側に設けられ、不織布で構成される不織布シートと、を備え、前記セルロース繊維は、前記緩衝シートの厚さ方向と交わる方向に配向しており、前記セルロース繊維の配向方向が、外力を受ける方向に沿った向きで用いられることを特徴とする緩衝材。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と、該セルロース繊維を結着させる結合材料と、を含み、シート状をなす緩衝シートと、
前記緩衝シートの少なくとも一方の面側に設けられ、不織布で構成される不織布シートと、を備え、
前記セルロース繊維は、前記緩衝シートの厚さ方向と交わる方向に配向しており、
前記セルロース繊維の配向方向が、外力を受ける方向に沿った向きで用いられることを特徴とする緩衝材。
【請求項2】
前記不織布シートにおける繊維の配向方向は、前記緩衝シートにおける前記セルロース繊維の配向方向と同方向である請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記緩衝シートにおけるセルロース繊維の含有量Aと、前記緩衝シートにおける結合材料の含有量Bとの比B/Aは、1/9以上3/7以下である請求項1または2に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記不織布シートに含まれる繊維は、天然系繊維である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、乾式で解繊した古紙パルプに水を添加し海綿状とした古紙パルプ粒状体と、熱可塑性を有する繊維状または粉体状の合成樹脂との混合物を加熱、加圧して成形された古紙ボードが開示されている。この古紙ボードは、例えば、緩衝材として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている古紙ボードでは、古紙パルプ成分や熱可塑性樹脂成分が水平方向に並んでいる。このため、古紙ボードを緩衝材として用いた場合、古紙ボードの厚み方向からの衝撃に対しての緩衝能力が不十分である。さらに、特許文献1に記載されている古紙ボードでは、製造途中や、緩衝材として使用中に、紙粉が飛散してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の緩衝材は、セルロース繊維と、該セルロース繊維を結着させる結合材料と、を含み、シート状をなす緩衝シートと、
前記緩衝シートの少なくとも一方の面側に設けられ、不織布で構成される不織布シートと、を備え、
前記セルロース繊維は、前記緩衝シートの厚さ方向と交わる方向に配向しており、
前記セルロース繊維の配向方向が、外力を受ける方向に沿った向きで用いられることを特徴とする緩衝材。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の緩衝材を製造することができる製造装置の一例を模式的に示す図である。
【
図3】緩衝機能を説明するための図であって、
図2に示す緩衝材の部分拡大断面図である。
【
図4】緩衝機能を説明するための図であって、
図2に示す緩衝材の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の緩衝材を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、緩衝材について説明する。
【0008】
なお、以下では、説明の便宜上、
図2~
図4に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むxy平面が水平となっており、z軸が鉛直となっている。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。
【0009】
図2に示すように、本実施形態の緩衝材WSは、6枚の緩衝シート1Aと、緩衝シート1Aの両面側にそれぞれ設けられた不織布シート1Bと、を備える。本実施形態では、緩衝材WSは、両面側に不織布シート1Bが設けられた緩衝シート1Aが6枚、x軸方向に重ねられた状態で使用される。
【0010】
まず、緩衝シート1Aについて説明する。
緩衝シート1Aは、複数のセルロース繊維と、該セルロース繊維を結着させる結合材料と、を含む。
【0011】
セルロース繊維は、植物由来で豊富な天然素材であり、繊維としてセルロース繊維を用いることにより、環境問題や埋蔵資源の節約等に好適に対応することができるとともに、緩衝材WSの安定供給、コスト低減等の観点からも好ましい。また、セルロース繊維は、各種繊維の中でも、理論上の強度が特に高いものであり、緩衝材の強度の向上の観点からも有利である。
【0012】
セルロース繊維は、通常、主としてセルロースで構成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニン等が挙げられる。
【0013】
ただし、セルロース繊維中におけるリグニンの含有率は、5.0質量%以下であるのが好ましく、3.0質量%以下であるのがより好ましく、1.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、緩衝材WSの緩衝性能、特に圧縮特性がより優れたものとなる。
【0014】
また、セルロース繊維中におけるセルロースの含有率は、50.0質量%以上であるのが好ましく、60.0質量%以上であるのがより好ましく、80.0質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0015】
また、セルロース繊維としては、例えば、漂白等の処理が施されたものを用いてもよい。また、セルロース繊維は、例えば、紫外線照射処理、オゾン処理、プラズマ処理等の処理が施されたものであってもよい。
【0016】
セルロース繊維としては、動物セルロース繊維、植物セルロース繊維等の天然セルロース繊維のほか、有機セルロース繊維、無機セルロース繊維、有機無機複合セルロース繊維等の化学セルロース繊維を用いてもよい。より詳しくは、セルロース繊維としては、セルロース、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなるセルロース繊維が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよいし、精製等を行った再生セルロース繊維として用いてもよい。また、セルロース繊維は、各種の表面処理が施されていてもよい。
【0017】
セルロース繊維の平均長さは、特に限定されないが、長さ-長さ加重平均セルロース繊維長として、10μm以上50mm以下であるのが好ましく、20μm以上5.0mm以下であるのがより好ましく、30μm以上3.0mm以下であるのがさらに好ましい。
【0018】
これにより、緩衝材WSの形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、緩衝材WSの緩衝性能をより優れたものとすることができる。
【0019】
緩衝シート1Aに含まれるセルロース繊維は、独立した1本のセルロース繊維としたときに、その平均太さが、1.0μm以上1000μm以下であるのが好ましく、2.0μm以上100.0μm以下であるのがより好ましい。
【0020】
これにより、緩衝材WSの形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、緩衝材WSの緩衝性能をより優れたものとすることができる。また、緩衝材WSの表面に不本意な凹凸が生じることをより効果的に防止することができる。
【0021】
なお、セルロース繊維の断面が円でない場合には、断面の面積と等しい面積を有する円を仮定したときの当該円の直径を当該セルロース繊維の太さとして取り扱うものとする。
【0022】
セルロース繊維の平均アスペクト比、すなわち、平均太さに対する平均長さは、特に限定されないが、10以上1000以下であるのが好ましく、15以上500以下であるのがより好ましい。
【0023】
これにより、緩衝材WSの形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、緩衝材WSの緩衝性能をより優れたものとすることができる。また、緩衝材WSの表面に不本意な凹凸が生じることをより効果的に防止することができる。
【0024】
本明細書では、セルロース繊維というときには、セルロース繊維1本のことを指す場合と、複数のセルロース繊維の集合体のことを指す場合とがある。また、セルロース繊維は、被解繊物を解繊処理することにより繊維状に解きほぐされたセルロース繊維、すなわち、解繊物であってもよい。ここで被解繊物としては、例えば、パルプシート、紙、古紙、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マット、段ボール等の、セルロース繊維が絡み合いまたは結着されたもの等が挙げられる。
【0025】
緩衝シート1A中におけるセルロース繊維の含有率は、63.0質量%以上90.0質量%以下であるのが好ましく、67.0質量%以上88.0質量%以下であるのがより好ましく、72.0質量%以上86.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、緩衝材WSの強度、緩衝性能をより優れたものとすることができる。
【0026】
緩衝シート1Aは、結合材料を含んでいる。
結合材料は、セルロース繊維とセルロース繊維とを結着する機能を有するが、さらに、上記以外の機能を有してもよい。より具体的には、例えば、結合材料は、セルロース繊維以外の成分、例えば、後述する着色剤等が緩衝材から脱落することを抑制する機能を有してもよい。
【0027】
結合材料としては、熱可塑性を有するものが好ましい。
これにより、緩衝材の製造過程において、熱を付与することで結合材料を溶融または軟化させて、セルロース繊維間で延展することによりセルロース繊維を結着させやすくなる。
【0028】
結合材料は、200℃以下で溶融または軟化するものが好ましく、160℃以下で溶融または軟化するものがより好ましい。
【0029】
これにより、比較的低温での熱処理で、セルロース繊維をより好適に結着させることができ、省エネルギーの観点からより好ましい。
【0030】
結合材料のガラス転移温度は、45℃以上95℃以下であるのが好ましく、50℃以上90℃以下であるのがより好ましい。
【0031】
これにより、比較的低温での熱処理で、セルロース繊維をより好適に結着させることができ、省エネルギーの観点からより好ましいとともに、例えば、緩衝材が高温環境下に置かれた際に、不本意に天然系結合材料が軟化してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0032】
結合材料は、石油由来の石油系結合材であってもよく、天然由来の天然系結合材料であってもよい。
【0033】
石油系結合材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種の合成樹脂などが挙げられる。
【0034】
合成樹脂のうち熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0035】
天然系結合材料以外の結合材料としては、合成樹脂のうち、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブタン酸等の生分解性樹脂を用いてもよい。
【0036】
生分解性樹脂を用いることにより、緩衝材の環境適合性をより優れたものとすることができる。
また、樹脂は、例えば、共重合体化や変性がなされていてもよい。
【0037】
天然系結合材料としては、例えば、ロジン、ダンマル、マスチック、コーパル、琥珀、シェラック樹脂、麒麟血、サンダラック、コロホニウム等の天然樹脂;天然高分子である澱粉や、これらの変性物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、天然系結合材料は、シェラック樹脂を含むものであるのが好ましい。
【0038】
これにより、緩衝材WSの強度、緩衝性能をより優れたものとすることができるとともに、緩衝材WSの加工性をより優れたものとすることができる。
【0039】
澱粉は、複数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子材料である。澱粉は、直鎖状であってもよいし、分岐を含んでもよい。
【0040】
澱粉としては、例えば、各種植物由来のものを用いることができる。澱粉の原料としては、トウモロコシ、小麦、米等の穀類、ソラマメ、緑豆、小豆等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ等のイモ類、カタクリ、ワラビ、葛等の野草類、サゴヤシ等のヤシ類が挙げられる。
【0041】
また、澱粉としては、例えば、加工澱粉、変性澱粉を用いてもよい。加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸物エステル化リン酸架橋澱粉、尿素リン酸化エステル化澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、高アミロースコーンスターチ等が挙げられる。また、変性澱粉としては、例えば、α化澱粉、デキストリン、ラウリルポリグルコース、カチオン化澱粉、熱可塑性澱粉、カルバミン酸澱粉等が挙げられる。
【0042】
緩衝シート1A中における結合材料の含有率は、12.0質量%以上28.0質量%以下であるのが好ましく、14.0質量%以上25.0質量%以下であるのがより好ましく、15.0質量%以上22.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0043】
また、緩衝シート1Aにおけるセルロース繊維の含有量Aと、緩衝シート1Aにおける結合材料の含有量Bとの比B/Aは、1/9以上3/7以下であることが好ましく、1/8以上2/7であることがより好ましい。これにより、セルロース繊維の含有量を十分確保しつつ、セルロース繊維同士の結合をより確実に行うことができる。
【0044】
緩衝シート1Aは、セルロース繊維と、結合材料とを含んでいればよいが、さらにこれら以外の成分を含んでいてもよい。以下、このような成分を「その他の成分」ともいう。
【0045】
その他の成分としては、例えば、難燃剤、着色剤、凝集抑制剤、界面活性剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
【0046】
緩衝シート1A中におけるその他の成分の含有率は、7.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましく、3.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0047】
図2に示すように、緩衝シート1Aは、シート状をなすものである。緩衝シート1Aの厚さは、特に限定されないが、1.0mm以上100mm以下であるのが好ましく、1.5mm以上30mm以下であるのがより好ましく、2.0mm以上20mm以下であるのがさらに好ましい。
【0048】
これにより、緩衝材WSの強度・剛性をより優れたものとすることができる。また、例えば、シート状の緩衝材WSを深絞り等の加工により立体形状を有する緩衝材WSに加工する場合等における加工性をより優れたものとすることができ、シワや破れの発生をより効果的に防止することができる。
【0049】
次に、不織布シート1Bについて説明する。
不織布シート1Bは、本実施形態では、緩衝シート1Aの両面側にそれぞれ設けられている。不織布シート1Bは、緩衝シート1Aに接合されている。各不織布シート1Bは、同様の構成であるため、以下、一方の不織布シート1Bについて説明する。
【0050】
このように緩衝シート1Aの両面が、不織布シート1Bで覆われていることにより、緩衝シート1Aのセルロース繊維等の粉が飛散してしまうのを防止または抑制することができる。よって、保護対象にセルロース繊維などの粉が付着してしまうのを防止または抑制することができる。また、前述したように、製造途中においても、紙粉が飛散してしまうのを防止または抑制することができる。さらに、緩衝シート1Aを補強することができ、緩衝シート1Aが座屈するように変形してしまうのを防止または抑制することができる。
【0051】
不織布シート1Bを構成する繊維の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料や、ガラス、アルミナ、炭素等の無機材料や、金属材料や、セルロース、パルプ等の天然由来の材料(天然系繊維)からなる群より選ばれた1種または2種以上で構成されることが好ましい。
【0052】
これらのなかでも、不織布シートに含まれる繊維は、天然系繊維であることが好ましい。これにより、緩衝材WSを破棄する際、環境への悪影響を低減することができる。
【0053】
特に、不織布シート1Bを構成する繊維としては、緩衝シート1Aに用いられるセルロース繊維と同じものであることが好ましい。
【0054】
また、不織布シート1Bを構成する繊維の平均長さは、緩衝シート1Aに含まれるセルロース繊維の平均長さよりも長いことが好ましい。これにより、不織布シート1Bから紙粉が出るのを防止または抑制することができる。
【0055】
織布シート1Bを構成する繊維の平均長さは、特に限定されないが、長さ-長さ加重平均セルロース繊維長として、12μm以上60mm以下であるのが好ましく、25μm以上6.0mm以下であるのがより好ましく、40μm以上4.0mm以下であるのがさらに好ましい。
【0056】
これにより、不織布シート1Bを構成する繊維の間から、緩衝シート1Aのセルロース繊維が飛び出てしまうのを効果的に防止または抑制することができる。
【0057】
不織布シート1Bを構成する繊維は、独立した1本のセルロース繊維としたときに、その平均太さが、1.0μm以上1000μm以下であるのが好ましく、2.0μm以上100.0μm以下であるのがより好ましい。
【0058】
これにより、不織布シート1Bを構成する繊維の間から、緩衝シート1Aのセルロース繊維が飛び出てしまうのをより効果的に防止または抑制することができる。
【0059】
不織布シート1Bを構成する繊維の平均アスペクト比、すなわち、平均太さに対する平均長さは、特に限定されないが、10以上1000以下であるのが好ましく、15以上500以下であるのがより好ましい。
【0060】
また、不織布シート1Bは、繊維同士を結合させる結合材料を含んでいてもよい。この結合材料としては、特に限定されないが、例えば、緩衝シート1Aに含まれる結合材料の一例として列挙したものから適宜選択して用いることができる。
【0061】
不織布シート1Bの厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上5mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上3mm以下であるのがより好ましく、0.5mm以上2mm以下であるのがさらに好ましい。
【0062】
これにより、緩衝シート1Aのセルロース繊維等の粉が飛散してしまうのをより効果的に防止または抑制することができる。
【0063】
不織布シート1Bの厚さは、緩衝シート1Aの厚さの5%以上90%以下であることが好ましく、10%以上80%以下であることがより好ましい。これにより、第1突起11Aおよび第2突起12Aが前述した効果を十分に発揮することができる。また、緩衝シート1Aのセルロース繊維等の粉が飛散してしまうのをより確実に防止または抑制することができる。
【0064】
また、不織布シート1Bの密度は、0.01g/cm3以上0.05g/cm3以下であるのが好ましく、0.02g/cm3以上0.04g/cm3以下であるのがより好ましい。これにより、緩衝シート1Aのセルロース繊維等の粉が飛散してしまうのをより効果的に防止または抑制することができるとともに、緩衝シート1Aの緩衝性能を十分に確保することができる。
【0065】
また、不織布シート1Bの坪量は、緩衝シート1Aにおけるセルロース繊維の坪量よりも小さい。これにより、不織布シート1Bによって緩衝シート1Aの緩衝性能が低下してしまうのを防止または抑制することができる。
【0066】
また、不織布シート1Bの坪量は、10g/m2以上300g/m2以下であるのが好ましく、20g/m2以上200g/m2以下であるのがより好ましく、30g/m2以上100g/m2以下であるのがさらに好ましい。これにより、緩衝シート1Aのセルロース繊維等の粉が飛散してしまうのをより効果的に防止または抑制することができるとともに、緩衝シート1Aの緩衝性能を十分に確保することができる。
【0067】
また、不織布シート1Bは、厚さ0.5mmの不織布シート1Bを16枚重ねて300ccの空気を10cm/秒の速度で吹き付けた際、透気するのにかかる時間が、0.5秒以上2.0秒以下であるのが好ましく、0.7秒以上1.7秒以下であるのがより好ましい。
【0068】
このような不織布シート1Bによれば、緩衝シート1Aのセルロース繊維等の粉(紙粉)が飛散してしまうのを不織布シート1Bによって防止または抑制することができる。よって、保護対象に紙粉が付着してしまうのを防止または抑制することができる。また、前述したように、製造途中においても、紙粉が飛散してしまうのを防止または抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、緩衝シート1Aの両面側にそれぞれ設けられているが、本発明ではこれに限定されず、一方の面側のみに設けられていてもよい。
【0070】
このような、緩衝材WSでは、両面側に不織布シート1Bが設けられた緩衝シート1Aが、x軸方向に積層された構成となっている。そして、
図2中上面、すなわち、+z軸側に位置するxy平面と平行な面が、保護対象から外力を受ける受圧面200となる向きで用いられる。
【0071】
また、緩衝シート1Aでは、セルロース繊維が、yz平面の面方向、すなわち、緩衝シート1Aの厚さ方向と交差する方向に配向している。「セルロース繊維が、緩衝シート1Aの厚さ方向と交差する方向に配向している」とは、セルロース繊維の主配向方向が、緩衝シート1Aの面方向に沿った方向であることを言う。
【0072】
より詳しくは、x軸方向の配向度は、y軸方向の配向度およびZ軸方向の配向度よりも低い。そして、yz平面においては、セルロース繊維は、ランダムに配向している。ただし、z軸方向の配向度がy軸方向の配向度に比べて大きくてもよい。
【0073】
セルロース繊維の配向方向を求める方法として、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製:VHX5000)を用いて倍率200倍以上500倍以下の条件下で、緩衝シート1Aの表面を観察した。また、デジタルマイクロスコープで観察したセルロース繊維から50本の繊維を無作為に選択し、観察した表面を基準とする配向方向を測定し、平均値を算出し、セルロース繊維の配向方向とした。
【0074】
別の観点で説明すると、セルロース繊維の配向方向が所定方向である繊維の数をT1とし、配向方向が所定方向とは異なる方向であるセルロース繊維の数をT2とし、T1/T2を求めることにより、所定方向におけるセルロース繊維数の割合を求めることができる。そして、このセルロース繊維数の割合が最も大きい所定方向をセルロースの配向方向とすることができる。
【0075】
このような緩衝材WSに保護対象から外力が加わると、まず、外力が緩衝シート1Aに伝達される。緩衝シート1Aでは、前述したように、繊維がy-z平面の面方向に配向している。このため、緩衝シート1Aに対して+z軸側から外力が加わった際、特に、z軸方向に沿った向きのセルロース繊維が外力を避けるように、
図3に示す状態から、
図4に示す状態となるように、すなわち、±x軸側、または、±y軸側に移動する。この繊維の移動により、繊維が結合材によって結合した状態から互いに解離させるために外力の衝撃エネルギーが消費され、外力が緩和、吸収される。その結果、優れた緩衝機能を発揮することができる。
【0076】
さらに、繊維が外力を受けた方向とは異なる方向に移動するため、繊維が高密度化しにくい。よって、緩衝材WSを繰り返し使用しても、十分な緩衝機能を発揮することができる。
【0077】
このように、緩衝材WSは、セルロース繊維と、該セルロース繊維を結着させる結合材料と、を含み、シート状をなす緩衝シート1Aと、緩衝シート1Aの少なくとも一方の面側に設けられ、不織布で構成される不織布シート1Bと、を備える。また、セルロース繊維は、緩衝シート1Aの厚さ方向と交わる方向に配向しており、セルロース繊維の配向方向が、外力を受ける方向に沿った向きで用いられる。これにより、緩衝材WSに衝撃が加わった際、セルロース繊維が移動しやすく、この移動により緩衝機能を発揮することができる。また、緩衝材シート1Aの少なくとも一方の面が不織布シート1Bに覆われているため、紙粉が飛散するのを防止または抑制することができる。以上より、緩衝材WSによれば、緩衝性能を高めつつ、紙粉の飛散を防止または抑制することができる。
【0078】
さらに、緩衝材WSは、後述する製造装置100により製造されたものであるため、環境への悪影響がなく、また、リサイクル性にも優れる。
【0079】
また、不織布シート1Bにおける繊維の配向方向は、緩衝シート1Aにおけるセルロース繊維の配向方向と同方向である。これにより、緩衝材WSに衝撃が加わった際、不織布シート1Bにおいてもセルロース繊維が移動しやすく、この移動により緩衝機能を発揮することができる。よって、緩衝材WSの緩衝性能をさらに高めることができる。
【0080】
[製造装置]
次に、緩衝材WSの製造に用いることができる製造装置について説明する。
図1は、緩衝材WSを製造することができる製造装置の一例を模式的に示す図である。
【0081】
図1に示すように、製造装置100は、供給部10と、粗砕部12と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、緩衝材形成部80と、切断部90と、加湿部78とを有している。
【0082】
供給部10は、粗砕部12に原料を供給する。供給部10は、例えば、粗砕部12に原料を連続的に投入するための自動投入部である。粗砕部12に供給される原料は、セルロース繊維を含むものであればよい。
【0083】
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料を、空気中等の気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。図示の例では、粗砕部12は、粗砕刃14を有し、粗砕刃14によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部12としては、例えば、シュレッダーを用いる。粗砕部12によって裁断された原料は、ホッパー1で受けられ、その後、管2を介して、解繊部20に搬送される。
【0084】
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数のセルロース繊維が結着されてなる原料、すなわち、被解繊物を、セルロース繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、填料、にじみ防止剤等の物質を、セルロース繊維から分離させる機能をも有する。
【0085】
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた解繊物セルロース繊維の他に、セルロース繊維を解きほぐす際にセルロース繊維から分離した樹脂粒や、インク、トナー、填料等の色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。セルロース繊維から分離した樹脂粒としては、例えば、複数のセルロース繊維同士を結着させるための樹脂を含む粒子が挙げられる。
【0086】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。水等の液体中でスラリー状に溶解させる湿式ではなく、大気等の気中において解繊等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20として、本実施形態ではインペラーミルを用いる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有している。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流とともに吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管3を介して、選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0087】
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物を導入口42から導入し、セルロース繊維の長さによって選別する。選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43とを有している。ドラム部41としては、例えば、篩を用いる。ドラム部41は、網を有し、網の目開きの大きさより小さく網を通過するセルロース繊維または粒子である第1選別物と、網の目開きの大きさより大きく網を通過しないセルロース繊維や未解繊片やダマである第2選別物とを分けることができる。例えば、第1選別物は、管7を介して、混合部50に移送される。第2選別物は、排出口44から管8を介して、解繊部20に戻される。具体的には、ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
【0088】
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、混合部50に搬送する。第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、吸引部48とを含む。
【0089】
吸引部48は、選別部40の開口、すなわち、網の開口を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47および吸引部48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74およびサクション機構76と同様である。
【0090】
ウェブVは、選別部40および第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかく膨らんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管7へ投入され、混合部50へと搬送される。
【0091】
回転体49は、ウェブVが混合部50に搬送される前に、ウェブVを切断することができる。図示の例では、回転体49は、基部49aと、基部49aから突出している突部49bとを有している。突部49bは、例えば、板状の形状を有している。図示の例では、突部49bは4つ設けられ、4つの突部49bが等間隔に設けられている。基部49aが方向Rに回転することにより、突部49bは、基部49aを軸として回転することができる。回転体49によってウェブVを切断することにより、例えば、堆積部60に供給される単位時間当たりの解繊物の量の変動を小さくすることができる。
【0092】
回転体49は、第1ウェブ形成部45の近傍に設けられている。図示の例では、回転体49は、ウェブVの経路において下流側に位置する張架ローラー47aの近傍、すなわち、張架ローラー47aの横に設けられている。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられている。突部49bとメッシュベルト46との間の最短距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下である。
【0093】
混合部50は、選別部40を通過した第1選別物、言い換えると、第1ウェブ形成部45により搬送された第1選別物と、天然系結合材料を含む添加物とを混合する。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、ブロアー56とを有している。図示の例では、添加物は、添加物供給部52からホッパー9を介して管54に供給される。管54は、管7と連続している。
【0094】
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と添加物とを混合させながら搬送することができる。なお、第1選別物と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよい。
【0095】
添加物供給部52としては、
図1に示すようなスクリューフィーダーや、図示しないディスクフィーダー等を用いる。添加物供給部52から供給される添加物は、上述の天然系結合材料を含む。天然系結合材料が供給された時点では、複数のセルロース繊維は結着されていない。天然系結合材料は、緩衝材形成部80を通過する際に一部が溶融して、緩衝材WSの表面領域の複数のセルロース繊維を結着させる。
【0096】
なお、添加物供給部52から供給される添加物には、天然系結合材料の他、製造される緩衝材WSの種類に応じて、セルロース繊維を着色するための着色剤や、セルロース繊維の凝集や天然系結合材料の凝集を抑制するための凝集抑制剤、セルロース繊維等を燃えにくくするための難燃剤が含まれていてもよい。混合部50を通過した混合物、すなわち、第1選別物と添加物との混合物である緩衝材製造用組成物は、管54を介して、堆積部60に移送される。
【0097】
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合ったセルロース繊維の解繊物をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0098】
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63とを有している。ドラム部61としては、回転する円筒の篩を用いる。ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さいセルロース繊維または粒子を降らせる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
【0099】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0100】
第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、緩衝材WSとなる堆積物であるウェブWを形成する。なお、ウェブWでは、セルロース繊維の配向方向が面方向に沿っている。
【0101】
第2ウェブ形成部70は、例えば、不織布シート1Bを供給する不織布シート供給部70Aおよび不織布シート供給部70Bと、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76とを有している。
【0102】
不織布シート供給部70Aは、ロール状に巻回された不織布シート1Bを展開しつつ繰り出すローラーである。不織布シート供給部70Aは、メッシュベルト72の上方で、かつ、メッシュベルト72の搬送方向上流側に設置されている。不織布シート供給部70Aによって展開されて繰り出された不織布シート1Bは、メッシュベルト72上に供給される。
【0103】
メッシュベルト72は、移動しながら、堆積部60の開口、すなわち、網の開口を通過した通過物を成形型に堆積させる。メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、通過物を通しにくく空気を通す構成となっている。メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。メッシュベルト72が連続的に移動しながら、メッシュベルト72上の不織布シート1Bを搬送しつつ、堆積部60を通過した通過物が連続的に降り積もることにより、不織布シート1B上の成形型にウェブWが形成される。メッシュベルト72は、例えば、金属製、樹脂製、布製、不織布等のものである。
【0104】
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方、すなわち、堆積部60側とは反対側に設けられている。サクション機構76は、下方に向く気流、すなわち、堆積部60からメッシュベルト72に向く気流を発生させることができる。このサクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上の不織布シート1B上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを抑制できる。
【0105】
不織布シート供給部70Bと、ロール状に巻回された不織布シート1Bを展開しつつ繰り出すローラーである。不織布シート供給部70Bは、メッシュベルト72の上方で、かつ、メッシュベルト72の搬送方向下流側に設置されている。不織布シート供給部70Aによって展開されて繰り出された不織布シート1Bは、不織布シート1B上に堆積されたウェブW上に供給される。これにより、不織布シート1B、ウェブWおよび不織布シート1Bの順で積層された積層体Sが生成される。この積層体Sは、緩衝材形成部80へと搬送される。
なお、不織布シートでは、繊維の配向方向が面方向に沿っている。
【0106】
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70で行われるウェブ形成工程を経ることにより、不織布シート1B、ウェブWおよび不織布シート1Bの順で積層された積層体Sが形成される。
【0107】
ウェブWの厚さは、2.0mm以上150mm以下であるのが好ましく、3.0mm以上120mm以下であるのがより好ましく、5.0mm以上100mm以下であるのがさらに好ましい。
【0108】
また、ウェブWの密度は、0.01g/cm3以上0.05g/cm3以下であるのが好ましく、0.02g/cm3以上0.04g/cm3以下であるのがより好ましい。
【0109】
また、ウェブWの坪量は、20g/m2以上7500g/m2以下であるのが好ましく、30g/m2以上6000g/m2以下であるのがより好ましく、50g/m2以上5000g/m2以下であるのがさらに好ましい。
【0110】
緩衝材形成部80は、メッシュベルト72上の成形型に堆積したウェブWを加熱して緩衝材WSを形成する。緩衝材形成部80では、第2ウェブ形成部70において混ぜ合わされた解繊物および添加物の混合物の堆積物であるウェブWを加熱することにより、天然系結合材料を軟化・溶融させ、これにより複数のセルロース繊維を結着させる。また、ウェブWに含まれる結合素材によって、不織布シート1Bの繊維と、ウェブWに含まれる繊維同士を結着させることができる。これにより、緩衝シート1Aと不織布シート1Bとを接合することができ、これらが接合された緩衝材WSを得ることができる。
【0111】
緩衝材形成部80は、積層体Sを加熱する加熱部84を備えている。加熱部84としては、例えば、ヒートプレス、加熱ローラー等が用いられるが、以下は加熱ローラーを用いた例で説明する。加熱部84における加熱ローラーの数は、特に限定されない。図示の例では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を備えている。加熱部84を加熱ローラー86として構成することにより、積層体Sを連続的に搬送しながら緩衝材WSを成形することができる。
【0112】
加熱ローラー86は、例えば、その回転軸が平行になるように配置される。加熱ローラー86のローラー半径は、2.0cm以上5.0cm以下であるのが好ましく、2.5cm以上4.0cm以下であるのがより好ましく、2.5cm以上3.5cm以下であるのがさらに好ましい。
【0113】
加熱ローラー86は、積層体Sに接触し、ウェブWを挟んで搬送しつつ積層体Sを加熱する。
【0114】
加熱ローラー86の回転速度は、例えば、20rpm以上500rpm以下であるのが好ましく、30rpm以上350rpm以下であるのがより好ましく、50rpm以上300rpm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、ウェブWの表面領域を十分にかつより精度よく加熱することができる。
【0115】
加熱ローラー86は、積層体Sを挟んで搬送し、所定の厚さの緩衝材WSを形成する。
ここで加熱ローラー86によってウェブWに印加される圧力は、0.50MPa以下であるのが好ましく、0.01MPa以上0.45MPa以下であるのがより好ましく、0.05MPa以上0.40MPa以下であるのがさらに好ましい。
【0116】
ウェブWを加熱する際の加熱ローラー86の表面温度は、160℃以上であるのが好ましく、165℃以上250℃以下であるのがより好ましく、170℃以上220℃以下であるのがさらに好ましい。
【0117】
本工程での加熱加圧時間は、1秒間以上300秒間以下であるのが好ましく、10秒間以上60秒間以下であるのがより好ましく、15秒間以上45秒間以下であるのがさらに好ましい。
【0118】
これにより、緩衝材WSの生産性をより優れたものとしつつ、緩衝材WSの強度、緩衝性能等をより優れたものとすることができる。また、省エネルギーの観点からも好ましい。
【0119】
本実施形態の製造装置100は、必要に応じて、切断部90を有してもよい。図示の例では、緩衝材形成部80の下流側に切断部90が設けられている。切断部90は、緩衝材形成部80によって成形された緩衝材WSを含む成形型を切断する。図示の例では、切断部90は、緩衝材WSの搬送方向と交差する方向に緩衝材WSの成形型を切断する第1切断部92と、搬送方向に平行な方向に緩衝材WSを切断する第2切断部94とを有している。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過した緩衝材WSを含む成形型を切断する。
【0120】
また、本実施形態の製造装置100は、加湿部78を有してもよい。図示の例では、切断部90の下流側であって排出部96の上流側に設けられている。加湿部78は、緩衝材WSに対して水や水蒸気を付与することができる。加湿部78の具体的な態様としては、例えば、水または水溶液のミストを吹き付ける態様、水または水溶液をスプレーする態様、水または水溶液をインクジェットヘッドから吐出して付着させる態様等が挙げられる。
【0121】
製造装置100が加湿部78を有することにより、形成される緩衝材WSに湿り気をもたせることができる。これにより、セルロース繊維が湿気を帯びて柔らかくなる。そのため、緩衝材WSを用いて容器等を立体成形する場合に、シワや破れがさらに生じにくくなる。また、緩衝材WSに湿り気をもたせることにより、セルロース繊維間の水素結合を形成しやすくなるので、緩衝材WSの密度が高まり、例えば、強度を向上できる。
【0122】
図1の例では、加湿部78は、切断部90の下流側に設けられているが、加湿部78は、緩衝材形成部80の下流側に設けられれば、上記と同様の効果を得ることができる。すなわち、加湿部78は、緩衝材形成部80の下流側で、かつ、切断部90の上流側に設けられてもよい。
【0123】
このような緩衝材WSを所望の枚数重ねて、重ねた方向と交わる方向を受圧面とした向きで任意の場所に設置することにより、
図1に示すような緩衝材WSが得られる。なお、図示の構成に限定されず、例えば、1枚だけでも緩衝材としての機能を十分に発揮することができる。
【0124】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0125】
例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0126】
例えば、本発明の緩衝材は、上述したような方法、製造装置を用いて製造されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0127】
1…ホッパー、1A…緩衝シート、1B…不織布シート、2,3,7,8…管、9…ホッパー、10…供給部、12…粗砕部、14…粗砕刃、20…解繊部、22…導入口、24…排出口、40…選別部、41…ドラム部、42…導入口、43…ハウジング部、44…排出口、45…第1ウェブ形成部、46…メッシュベルト、47,47a…張架ローラー、48…吸引部、49…回転体、49a…基部、49b…突部、50…混合部、52…添加物供給部、54…管、56…ブロアー、60…堆積部、61…ドラム部、62…導入口、63…ハウジング部、70…第2ウェブ形成部、70A…不織布シート供給部、70B…不織布シート供給部、72…メッシュベルト、74…張架ローラー、76…サクション機構、78…加湿部、80…緩衝材形成部、84…加熱部、86…加熱ローラー、90…切断部、92…第1切断部、94…第2切断部、96…排出部、100…製造装置、200…受圧面、R…方向、S…積層体、V…ウェブ、W…ウェブ、WS…緩衝材