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特開2023-74828栽培支援装置、プログラム及び栽培支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074828
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】栽培支援装置、プログラム及び栽培支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230523BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187967
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 泰永
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】果菜類の栽培を支援する、栽培支援装置、プログラム及び栽培支援システムを提供する。
【解決手段】果菜類の栽培を支援する栽培支援装置1において、気温情報を取得する気温取得部10、栽培中の果菜類への施肥量を取得する施肥量取得部20、栽培中の果菜類が受け取る受光量を取得する受光量取得部30、少なくとも気温情報と施肥量とに基づいて、栽培中の果菜類が要求する光合成産物の要求量である総光合成産物要求量を算出する光合成産物要求量算出部40、少なくとも受光量に基づいて、栽培中の果菜類が生産する光合成産物の生産量である総光合成産物生産量を算出する光合成産物生産量算出部50及び少なくとも総光合成産物要求量と総光合成産物生産量とを用いて、栽培中の果菜類の収量を算出する収量算出部70を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果菜類の栽培を支援する栽培支援装置であって、
気温情報を取得する気温取得手段と、
栽培中の果菜類への施肥量を取得する施肥量取得手段と、
前記栽培中の果菜類が受け取る受光量を取得する受光量取得手段と、
少なくとも前記気温情報と前記施肥量とに基づいて、前記栽培中の果菜類が要求する光合成産物の要求量である総光合成産物要求量を算出する光合成産物要求量算出手段と、
少なくとも前記受光量に基づいて、前記栽培中の果菜類が生産する光合成産物の生産量である総光合成産物生産量を算出する光合成産物生産量算出手段と、
少なくとも前記総光合成産物要求量と前記総光合成産物生産量とを用いて、前記栽培中の果菜類の収量を算出する収量算出手段と
を備えることを特徴とする栽培支援装置。
【請求項2】
前記光合成産物要求量算出手段は、
少なくとも前記気温情報に基づいて、前記栽培中の果菜類の器官別の窒素の要求量である器官別窒素要求量を算出する器官別窒素要求量算出手段と、
少なくとも前記器官別窒素要求量から前記栽培中の果菜類一個体の窒素の要求量である総窒素要求量を算出する総窒素要求量算出手段と、
少なくとも前記器官別窒素要求量と、前記総窒素要求量と、施肥量に基づく窒素の吸収量とに基づいて、前記器官別の窒素の分配量である器官別窒素分配量を算出する器官別窒素分配量算出手段と、
少なくとも前記器官別窒素分配量と、前記器官別の窒素の最小分配量と、前記器官別の窒素の最大分配量とに基づいて、前記器官別の光合成産物の要求量である器官別光合成産物要求量を算出する器官別光合成産物要求量算出手段と、
少なくとも前記器官別光合成産物要求量から前記栽培中の果菜類一個体の光合成産物の要求量を前記総光合成産物要求量として算出する総光合成産物要求量算出手段と
を有し、
果実に対する窒素分配量には上限が設けられ、
前記器官別窒素分配量算出手段は、
果実に対する窒素分配量の上限を超える量の窒素が果実以外の器官に再分配され、果実に対する窒素分配量が果実に対する窒素分配量の上限を超えないように、前記器官別窒素分配量を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の栽培支援装置。
【請求項3】
少なくとも前記総光合成産物要求量と、前記総光合成産物生産量と、前記器官別光合成産物要求量とに基づいて、器官別の光合成産物の分配量である器官別光合成産物分配量を算出する器官別光合成産物分配量算出手段
を更に備え、
果実に対する光合成産物分配量には上限が設けられ、
前記器官別光合成産物分配量算出手段は、
果実に対する光合成産物分配量の上限を超える量の光合成産物が果実以外の器官に再分配され、果実に対する光合成産物分配量が果実に対する光合成産物分配量の上限を超えないように、前記器官別光合成産物分配量を算出し、
前記収量算出手段は、
少なくとも前記総光合成産物要求量と、前記総光合成産物生産量と、果実に対する光合成産物分配量と、前記受光量とに基づいて、前記栽培中の果菜類の収量を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の栽培支援装置。
【請求項4】
前記光合成産物生産量算出手段は、
少なくとも光利用効率と、全天日射量と、栽植本数とに基づいて、前記総光合成産物生産量を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の栽培支援装置。
【請求項5】
少なくとも前記総光合成産物要求量と前記総光合成産物生産量とを用いて、前記栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する施肥量提示手段
を更に備えることを特徴する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の栽培支援装置。
【請求項6】
果菜類の栽培を支援する栽培支援用のプログラムであって、
気温情報を取得する気温取得手段と、
栽培中の果菜類への施肥量を取得する施肥量取得手段と、
前記栽培中の果菜類が受け取る受光量を取得する受光量取得手段と、
少なくとも前記気温情報と前記施肥量とに基づいて、前記栽培中の果菜類が要求する光合成産物の要求量である総光合成産物要求量を算出する光合成産物要求量算出手段と、
少なくとも前記受光量に基づいて、前記栽培中の果菜類が生産する光合成産物の生産量である総光合成産物生産量を算出する光合成産物生産量算出手段と、
少なくとも前記総光合成産物要求量と前記総光合成産物生産量とを用いて、前記栽培中の果菜類の収量を算出する収量算出手段と
を備えることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
果菜類の栽培を支援する栽培支援システムであって、
気温情報を取得する気温取得手段と、
栽培中の果菜類への施肥量を取得する施肥量取得手段と、
前記栽培中の果菜類が受け取る受光量を取得する受光量取得手段と、
少なくとも前記気温情報と前記施肥量とに基づいて、前記栽培中の果菜類が要求する光合成産物の要求量である総光合成産物要求量を算出する光合成産物要求量算出手段と、
少なくとも前記受光量に基づいて、前記栽培中の果菜類が生産する光合成産物の生産量である総光合成産物生産量を算出する光合成産物生産量算出手段と、
少なくとも前記総光合成産物要求量と前記総光合成産物生産量とを用いて、前記栽培中の果菜類の収量を算出する収量算出手段と
を備えることを特徴とする栽培支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培支援装置、プログラム及び栽培支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物の環境情報および生体情報を測定するセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-69353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、植物に吸収された養分をセンサによって測定するものであるため、実際の栽培の場面には利用しにくい。また、特許文献1の技術は、養分として亜硝酸窒素を測定しているが、果菜類の栽培を具体的な支援(例えば、収量の予測や施肥量の調整等)するものではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、果菜類の栽培を支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様である栽培支援装置は、果菜類の栽培を支援する栽培支援装置であって、気温情報を取得する気温取得手段と、栽培中の果菜類への施肥量を取得する施肥量取得手段と、前記栽培中の果菜類が受け取る受光量を取得する受光量取得手段と、少なくとも前記気温情報と前記施肥量とに基づいて、前記栽培中の果菜類が要求する光合成産物の要求量である総光合成産物要求量を算出する光合成産物要求量算出手段と、少なくとも前記受光量に基づいて、前記栽培中の果菜類が生産する光合成産物の生産量である総光合成産物生産量を算出する光合成産物生産量算出手段と、少なくとも前記総光合成産物要求量と前記総光合成産物生産量とを用いて、前記栽培中の果菜類の収量を算出する収量算出手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る栽培支援装置1の構成例である。
図2】光合成産物要求量算出部40の構成例である。
図3】積算気温と器官別窒素要求量の関係について説明する説明図である。
図4】シンク強度、ソース強度、花芽分化の関係について説明する説明図である。
図5】シンク強度、ソース強度、着果数の関係について説明する説明図である。
図6】栽培支援装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】栽培支援装置1による栽培支援の概念図である。
図8】栽培支援装置1に係る構成に想到するに至る前に実施した実験について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。実施形態に係る栽培支援装置は、果菜類(例えば、トマト等)の栽培を支援する装置である。具体的には、実施形態に係る栽培支援装置は、気温(積算温度)、施肥量、日射量等に基づいて、将来の収量を算出(予測)し、あるいは、適正な施肥量を導出(提示)することによって、果菜類の栽培を支援する。つまり、実施形態に係る栽培支援装置によれば、栽培中の果菜類の生育状況に関してシミュレーションを行うことができる。
【0009】
(シミュレーションの前提)
本シミュレーションでは、生育モデルに対して日単位で気象データ(日平均気温、および日全天日射量など)を与え、栽培中の果菜類の器官毎(葉、茎、根、果実)の生育状況を計算する。なお、本シミュレーションでは、作物の成長は主として気温によって決まるとしている。ある器官の1つの成長過程は積算気温を用いて、成長が停止するときの積算気温を1.0、成長開始時の積算気温を0として、器官の生育段階を積算気温の相対値として示す。また、以下の説明においては、変数名に付した下付き添字nは、定植後日数を示し、変数には24時の結果を格納するものとする。なお、本シミュレーションでは、計算1日目0時の値を「初期値」とする。また、変数名に付した、orgは器官の種類(例えば、葉はL、茎はS、果実はF、根はR)である。下付き添え字i、j、k、lは夫々、葉、茎、果実、根の発生の順番である。花房の発生、花芽分化については後述する。また、特に断りのない限り、株(作物1個体)あたりとして算出している。
【0010】
図1は、本実施形態に係る栽培支援装置1の構成例である。図2は、光合成産物要求量算出部40の構成例である。栽培支援装置1は、図1に示すように、気温取得部10、施肥量取得部20、受光量取得部30、光合成産物要求量算出部40、光合成産物生産量算出部50、器官別光合成産物分配量算出部60、収量算出部70、適正施肥量算出部80及び表示部90を備える。光合成産物要求量算出部40は、図2に示すように、器官別窒素要求量算出部41、総窒素要求量算出部42、器官別窒素分配量算出部43、器官別光合成産物要求量算出部44及び総光合成産物要求量算出部45を備える。
【0011】
栽培支援装置1は、ハードウェアとしては、入力手段(例えば、キーボード、マウス、通信機能等)、記憶機能(RAM、ROM、ハードディスク、SSD等)、演算手段(CPU等)、出力手段(ディスプレイ、通信機能等)を備える装置であればよい。栽培支援装置1は、例えば、パーソナルコンピュータであってもよい。
【0012】
下記の各量は、以下の説明において登場する量(一部)である。「:」の右側は、数式等における表現(変数名等)である。
総光合成産物要求量(「シンク強度」とも称する):Total-Sink-DW
総光合成産物生産量(「ソース強度」とも称する):Total-DW
器官別窒素要求量:Dmd-N(org)
総窒素要求量:Total-Dmd-N
施肥量に基づく窒素の吸収量:N-Abs
器官別窒素分配量:ΔN(org)
器官別光合成産物要求量:Sink-DW(org)
器官別光合成産物分配量:ΔDW(org)
なお、例えば、上記表現には、例えば、下記のような下付き添字が必要に応じて付加される。
定植後の日数:n
葉の発生数:i
茎の発生数:j
花房発生数:k
根発生数:l
【0013】
気温取得部10は、気温情報を取得する。例えば、気温取得部10は、当該地域の天気予報から積算気温(積算気温を示した数値)を取得する。なお、気温取得部10は、操作者の操作(手入力等)によって積算気温を取得してもよいし、外部の装置から積算気温を受信して取得してもよい。
【0014】
施肥量取得部20は、施肥量を取得する。なお、施肥量取得部20は、操作者の操作によって施肥量を取得してもよいし、外部の装置から施肥量を受信して取得してもよい。
【0015】
受光量取得部30は、栽培中の果菜類が受け取る日射量、すなわち受光量を取得する。なお、受光量取得部30は、操作者の操作によって受光量を取得してもよいし、外部の装置から日射量を受信して取得してもよい。
【0016】
(光合成産物要求量算出部40)
光合成産物要求量算出部40は、少なくとも、気温情報と施肥量とに基づいて、栽培中の果菜類が要求する光合成産物の要求量である総光合成産物要求量(Total-Sink-DW)等を算出する。以下、図2を用いて具体的に説明する。
【0017】
器官別窒素要求量算出部41は、気温情報(積算温度)に基づいて、栽培中の果菜類の器官別の窒素の要求量である器官別窒素要求量(Dmd-N(org)n(i~l))を算出する。
【0018】
具体的には、器官別窒素要求量算出部41は、ある器官1つの窒素要求量を算出する。ある器官の窒素蓄積量は、その器官の発生時を起点とする積算気温のシグモイド関数で示される。したがって、例えばn日の時点の器官別窒素要求量(Dmd-N(org) n(i~l))はn日時点の窒素蓄積量とn-1日時点の窒素蓄積量の差として算出される。つまり、窒素要求量は、日単位で算出されるが、例えば、本日の窒素要求量は、本日の窒素蓄積量から昨日の窒素蓄積量を減算した量として算出される。具体的には、器官別窒素要求量算出部41は、次式(式1)のシグモイド関数(y)の増加量(y(n)-y(n-1))として器官別窒素要求量(Dmd-N(org) n(i~l))を算出する。なお、上述したように、積算気温は、当該地域の天気予報から取得してもよい。
【0019】
y=k/(1+be-cx) … (1)
【0020】
式1において、K、b、cは、夫々の器官に応じた定数である。図3は、上記式1に関連し、積算気温と器官別窒素要求量の関係について説明する説明図である。具体的には、図3は、上記式1の関数による曲線(シグモイド曲線)を示している。図3において、X軸は、積算温度(器官毎の相対値)である。図3において、Y軸は、成長開始時を0、成長停止時を1.0として、生育段階を積算気温の相対値として示す。また、それに対応する各器官の大きさ(サイズ(器官毎の相対値))についても、成長開始時を0、完全に成長しきった成長停止時を1.0とする。
【0021】
総窒素要求量算出部42は、器官別窒素要求量(Dmd-N(org)n(i~l))から栽培中の果菜類全体(作物一個体)の窒素の要求量である総窒素要求量(Total-Dmd-Nn)を算出する。例えば、総窒素要求量算出部42では、次式(式2)のように、葉の窒素要求量(ΣDmd-N(L)ni)、茎の窒素要求量(ΣDmd-N(S)nj)、果実の窒素要求量(ΣDmd-N(F)nk)、根の窒素要求量(ΣDmd-N(R)nl)の夫々に一定の係数を乗じて合計し、総窒素要求量(Total-Dmd-Nn)を算出する。なお、本実施例では作物一個体を対象とする例としたが、作物複数個体を対象としてもよい。
【0022】
Total-Dmd-Nn=α×ΣDmd-N(L)ni+β×ΣDmd-N(S)nj+γ×ΣDmd-N(F)nk+λ×ΣDmd-N(R)nl … (2)
【0023】
上記式2において、αは葉の窒素要求量(ΣDmd-N(L)ni)に対する係数、βは茎の窒素要求量(ΣDmd-N(S)nj)に対する係数、γは果実の窒素要求量(ΣDmd-N(F)nk)に対する係数、λは根の窒素要求量(ΣDmd-N(R)nl)に対する係数である。
【0024】
器官別窒素分配量算出部43は、器官別窒素要求量(Dmd-N(org)n(i~l))と、総窒素要求量(Total-Dmd-Nn)と、施肥量に基づく窒素の吸収量(N-Absn)とに基づいて、器官別の窒素の分配量である器官別窒素分配量(ΔN(org)n(i~l))を算出する。例えば、器官別窒素分配量算出部43は、次式(式3)のように、器官別窒素分配量(ΔN(org)n(i~l))を算出する。なお、栽培支援装置1は、例えば、肥料の種類毎、品目や品種毎の施肥量に基づく窒素の吸収量(N-Absn)をデータベースとして保持し、必要に応じて参照するものとする。
【0025】
ΔN(org)n(i~l)=Dmd-N(org)n(i~l)/Total-Dmd-Nn×N-Absn … (3)
【0026】
ここで、果実に対する窒素分配量(ΔN(F)nk)には上限(ΔN(F)max)を設ける。栽培支援装置1は、品目や品種毎に、各種設定値(例えば、上記ΔN(F)max、後述する器官別の窒素の最小分配量(ΔN(org)min)等)をデータベースとして保持し、必要に応じて参照するものとする。器官別窒素分配量算出部43は、果実に対する窒素分配量の上限(ΔN(F)max)を超える量(EX-N(F)n)の窒素が果実以外の器官(葉、茎)に再分配され、果実に対する窒素分配量(ΔN(F)nk)が果実に対する窒素分配量の上限(ΔN(F)max)を超えないように、器官別窒素分配量(ΔN(org)n(i~l))を算出する。
【0027】
例えば、器官別窒素分配量算出部43は、次式(式4、式5)のように、果実に対する窒素分配量(ΔN(F)nk)を算出する。
【0028】
ΔN(F)nk=ΔN(F)nk0 : ΔN(F)nk0<ΔN(F)max … (4)
ΔN(F)nk=ΔN(F)max :ΔN(F)max<ΔN(F)nk0 … (5)
【0029】
式4及び式5に示した、ΔN(F)nk0は、再分配しない場合の果実に対する窒素分配量であって、次式(式6)によって示される。
【0030】
ΔN(F)nk0=Dmd-N(F)nk/(Total-Dmd-Nn×N-Absn) … (6)
【0031】
また、器官別窒素分配量算出部43は、次式(式7)のように、葉に対する窒素分配量(ΔN(L)ni)を算出する。
【0032】
ΔN(L)ni={Dmd-N(L)ni/(Total-Dmd-Nn×N-Absn)}+{Dmd-N(L)ni/(LSR-Dmd-Nn×EX-N(F) n)}… (7)
【0033】
また、器官別窒素分配量算出部43は、次式(式8)のように、茎に対する窒素分配量(ΔN(S)nj)を算出する。
【0034】
ΔN(S)nj={Dmd-N(S)nj/(Total-Dmd-Nn×N-Absn)}+{Dmd-N(S)nj/(LSR-Dmd-Nn×EX-N(F)n)}…(8)
【0035】
また、器官別窒素分配量算出部43は、次式(式9)のように、根に対する窒素分配量(ΔN(R)nl)を算出する。
【0036】
ΔN(R)nl={Dmd-N(R)nl/(Total-Dmd-Nn×(N-Absn)}+{(Dmd-N(R)nl/LSR-Dmd-Nn×EX-N(F) n}…(9)
【0037】
式7~式9に示した、果実に対する窒素分配量の上限(ΔN(F)max)を超える量(EX-N(F)n)は、次式(式10)によって示される。また、式7~式9に示した、LSR-Dmd-Nnは、葉の窒素要求量(ΣDmd-N(L)ni)、茎の窒素要求量(ΣDmd-N(S)nj)、根の窒素要求量(ΣDmd-N(RS)nl)の合計であり、次式(式11)によって示される。
【0038】
EX-N(F)n=ΔN(F)ni0-ΔN(F)max … (10)
LSR-Dmd-Nn=ΣDmd-N(L)ni+ΣDmd-N(S)nj+ΣDmd-N(R)nl … (11)
【0039】
続いて分配された窒素の量に基づいて、光合成産物の分配量を決定する。本実施形態では、光合成産物の分配は各器官に分配された窒素の量に基づいて決まる。
【0040】
器官別光合成産物要求量算出部44は、器官別窒素分配量(ΔN(org)ni)と、器官別の窒素の最小分配量(ΔN(org)min)と、器官別の窒素の最大分配量(ΔN(org)max)とに基づいて、器官別の光合成産物の要求量である器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))を算出する。
【0041】
具体的には、器官別光合成産物要求量算出部44は、次式(式12~式14)のように、器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))を算出する。なお、D(org)は、窒素量(N)を乾物重(DW)に変換する数値、実際には、窒素含有率(N含有率。図8のW/W%)の逆数である。
【0042】
Sink-DW(org)n(i~l)=D(org)min : ΔN(org)n(i~l)<ΔN(org)min … (12)
Sink-DW (org)n(i~l)=D(org)×ΔN(org)n(i~l) : ΔN(org)min<ΔN(org)n(i~l)<ΔN(org)max … (13)
Sink-DW (org)n(i~l)=D(org)max :Δ(org)max<ΔN(org)n(i~l) … (14)
【0043】
一例として、器官別光合成産物要求量算出部44は、次式(式15~式17)のように、葉の光合成産物要求量(Sink-DW(L)ni)を算出する。なお、D(L)は、葉の窒素含有率(図8のW/W%)の逆数である。
【0044】
Sink-DW(L)ni=D(L)min : ΔN(L)ni<ΔN(L)min … (15)
Sink-DW (L)ni=D(L)×ΔN(L)ni : ΔN(L)min<ΔN(L)ni<ΔN(L)max … (16)
Sink-DW (L)ni=D(L)max :Δ(L)max<ΔN(L)ni … (17)
【0045】
総光合成産物要求量算出部45は、器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))から栽培中の果菜類全体(作物一個体)の光合成産物の要求量を総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)として算出する。なお、本実施例では作物一個体を対象とする例としたが、作物複数個体を対象としてもよい。
【0046】
例えば、総光合成産物要求量算出部45は、次式(式18)のように、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)を算出する。
【0047】
Total-Sink-DWn=ΣSink-DW(org)n(i~l) … (18)
【0048】
(光合成産物生産量算出部50)
光合成産物生産量算出部50は、少なくとも、日射量に基づいて、栽培中の果菜類が生産する光合成産物の生産量である総光合成産物生産量(Total-DWn)を算出する。例えば、光合成産物生産量算出部50は、次式(式19)のように、光利用効率(g-DW/MJ)と、全天日射量(MJ/m2)と、栽植本数(本/m2)等とに基づいて、総光合成産物生産量(Total-DWn)を算出する。
【0049】
Total-DWn=光利用効率×(1-e-k*LAIn)×(全天日射量n/栽植本数)… (19)
【0050】
式19において、kは吸光係数、LAInはn日の時点の葉面積指数(m2/m2)である。
【0051】
(器官別光合成産物分配量算出部60)
器官別光合成産物分配量算出部60は、少なくとも、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)と、総光合成産物生産量(Total-DWn)と、器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))とに基づいて、器官別の光合成産物の分配量である器官別光合成産物分配量(ΔDW(org)n(i~l))を算出する。例えば、器官別光合成産物分配量算出部60は、次式(式20)のように、器官別光合成産物分配量(ΔDW(org) n(i~l))を算出する。
【0052】
ΔDW(org)n(i~l)=Sink-DW(org)n(i~l)/Total-Sink-DWn×Total-DWn… (20)
【0053】
ここで、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)には上限(ΔDW(F)Lim)を設ける。器官別光合成産物分配量算出部60は、果実に対する光合成産物分配量の上限(ΔDW(F)Lim)を超える量(EX-DW(F))の光合成産物が果実以外の器官(葉、茎、根)に再分配され、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)が果実に対する光合成産物分配量の上限(ΔDW(F)Lim)を超えないように、器官別光合成産物分配量(ΔDW(org)n(i~l))を算出する。
【0054】
例えば、器官別光合成産物分配量算出部60は、次式(式21、式22)のように、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)を算出する。
ΔDW(F)nk=ΔDW(F)nko : ΔDW(F)nk0<ΔDW(F)Lim … (21)
ΔDW(F)nk=ΔDW(F)Lim :ΔDW(F)Lim<ΔDW(F)nk0 … (22)
【0055】
式21及び式22に示した、ΔDW(F)nk0は、再分配しない場合の果実に対する光合成産物分配量であって、次式(式23)によって示される。
【0056】
ΔDW(F)nk0=Sink-DW(F)nk/Total-Sink-DWn×Total-DWn … (23)
【0057】
また、器官別光合成産物分配量算出部60は、次式(式24)のように、葉に対する光合成産物分配量(ΔDW(L)ni)を算出する。
【0058】
ΔDW(L)ni={Sink-DW(L)ni/Total-Sink-DWn×Total-DWn}+{Sink-DW(L)ni/LSR-Sink-DWn×EX-DW(F)n }… (24)
【0059】
また、器官別光合成産物分配量算出部60は、次式(式25)のように、茎に対する光合成産物分配量(ΔDW(S)nj)を算出する。
【0060】
ΔDW(S)nj={Sink-DW(S)nj/Total-Sink-DWn×Total-DWn}+{Sink-DW(S)nj/LSR-Sink -DWn×EX-DW(F)n }… (25)
【0061】
また、器官別光合成産物分配量算出部60は、次式(式26)のように、根に対する光合成産物分配量(ΔDW(R)nl)を算出する。
【0062】
ΔDW(R)nl={Sink-DW(R)nl/Total-Sink-DWn×Total-DWn}+{Sink-DW(R)nl/LSR-Sink-DWn×EX-DW(F)n }… (26)
【0063】
式24~式26に示した、果実に対する光合成産物分配量の上限(ΔDW(F)Lim)を超える量(EX-DW(F)n)は、次式(式27)によって示される。また、式24~式26に示した、LSR-Sink-DWnは、葉の光合成産物要求量(ΣSink-DW (L)ni)、茎の光合成産物要求量(ΣSink-DW (S)nj)、根の光合成産物要求量(ΣSink-DW (R)nl)の合計であり、次式(式28)によって示される。
【0064】
EX-DW(F)n=ΔDW(F)nk0-ΔDW(F)Lim … (27)
LSR-Sink-DWn=ΣSink-DW(L)ni+ΣSink-DW(S)nj+ΣSink-DW(R)nl … (28)
【0065】
(収量算出部70)
収量算出部70は、少なくとも、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)と総光合成産物生産量(Total-DWn)とを用いて、栽培中の果菜類の収量(果実収量)を算出する。収量算出部70は、例えば、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)と、総光合成産物生産量(Total-DWn)と、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)と、日射量とに基づいて、栽培中の果菜類の収量を算出する。将来の気温データや日射量データ等に基づいて、1日ごと総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)と総光合成産物生産量(Total-DWn)がどのように変化し、群落の状態(茎葉の状態、花房、果実の状態)がどのように変化するかを推定し、各日における収量をシミュレーションする。
【0066】
(花芽分化、着果数)
ここでは、シンク強度(総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn))とソース強度(総光合成産物生産量(Total-DWn))のバランス、体内糖濃度、花芽分化時期、着果数の関係に着目し、様々な環境条件、肥培管理の条件で果菜類(一例としてトマト、イチゴ)を栽培し、体内(葉を想定)の糖(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース)濃度が、花芽分化と着果数に及ぼす影響を実験、調査した。この際、上述のバランスと体内糖濃度の関係、体内糖濃度と花芽分化・着果数の関係を実験を行って、調査し、推定式(回帰式)等の統計的手法を用いて、花芽分化の時期・着果数を推定し、最後に、日射量を考慮し、栽培中の果菜類の収量を算出する。
【0067】
なお、一定の量を超える窒素は葉に分配され(式7)、葉に対する窒素の分配量(ΔN(L)ni)が増加すれば、葉における光合成産物の要求量(Sink-DW(L)ni)、すなわち、葉における光合成産物の消費量が増加する(式15~式17)。つまり、糖は、総光合成産物の量に依存し、体内(葉)において消費されるが、窒素が一定量を超えて供給された場合、体内(葉)における窒素の含有率が増加し、体内(葉)での糖(光合成産物)の消費が進行し、結果、体内糖濃度が減少する。
【0068】
また、栽培支援装置1は、果菜類の品目毎実験、調査に基づき導出した、各種の関数、夫々の関数に用いられる定数、係数等をデータベースとして保持し、必要に応じて参照するものとする。
【0069】
(花芽分化)
ソース強度(Total-DWn)をX、シンク強度(Total-Sink-DWn)をXとし、花芽分化をYとした場合、花芽分化(Y)は、ソース強度(X)とシンク強度(X)のバランス(aX-bX+c)の一部の範囲において、次式(式29)によって近似される。
【0070】
Y=aX-bX+c … (29)
【0071】
式29において、a、b、cは定数である。図4は、シンク強度(Total-Sink-DW)、ソース強度(Total-DW)、花芽分化の関係について説明する説明図である。図4において、X軸は、バランス(aX-bX+c)である。図4において、Y軸は、花芽分化であり、所定の値(図中は「1」と正規化)に達すると花芽分化する。X軸の値Xは、Yの値が増加し始めるバランスの値である。X軸の値Xは、Yの値が1に達するバランスの値である。図4は、次式(式30~式32)によって示される。
【0072】
y=0 : X<X… (30)
y=(1/(X-X))X-(X/X-X) : X<X<X… (31)
y=1 : X<X… (32)
【0073】
なお、(1/(X-X))を「a」、(X/(X-X))を「c」とし、Xを「X-X」とした場合、式31は、次式(式33)のようになり、式29の一例となる。
【0074】
y=aX-aX-c… (33)
【0075】
花房が分化するかどうかは、前花房の分化後からの積算気温によっても判断される。従って、花房が分化するかどうかの判定条件は、例えば、下記の2つの条件が両方とも成立した場合に分化するとする。
条件1:前花房が分化してから210℃日以上経過
条件2:シンク強度(総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn))とソース強度(総光合成産物生産量(Total-DWn))のバランス(aX-bX+c)がX以上
【0076】
(着果数)
着果数は、バランス(dX-eX+f)による回帰式(非図示。図5参照)によって近似される。d、e、fは定数である。図5は、シンク強度(Total-Sink-DWn)、ソース強度(Total-DWn)、着果数の関係について説明する説明図である。図5において、X軸は、所定期間におけるバランス(dX-eX+f)である。図5において、Y軸は、花房あたりの着果数である。
【0077】
つまり、花房当たり着果数は、花房の分化後からの所定期間(例えば、日平均気温20℃の日が7日間続いて、積算された140℃日の期間)を着果数決定期間として、この期間における、バランス(dX-eX+f)によって決定(予測)される。
【0078】
なお、着果数に応じて、各果菜の窒素要求量(Dmd-N(F)nk)、光合成産物要求量(Sink-DW(F)nk)を補正する。例えば、イチゴにおいて、花房当たり標準の着果数を8とした場合、着果数が7であるときは、7/8×Dmd-N(F)nk,7/8×Sink-DW(F)nkと補正し、着果数が4であるときは、4/8×Dmd-N(F)nk,4/8×Sink-DW(F)nkと補正してもよい。
【0079】
(収量)
着果数(例えば、所定の割合の一部)と、積算気温とに基づいて、収量を算出する。換言すれば、上述のように決定(予測)した着果数に対し1未満の係数を掛け、夫々に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)を気温で積分(積算気温)し、将来(例えば、特定の収穫時期)の栽培中の果菜類の収量を算出(予測)する。栽培支援装置1は、算出した収量を表示部90に表示する。なお、栽培支援装置1は、表示部90に代えて又は加えて、通信部を備え、他の装置(例えば、プリンタ、スマートフォン等)に収量を出力してもよい。
【0080】
(適正施肥量算出部80)
適正施肥量算出部80は、少なくとも、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)と総光合成産物生産量(Total-DWn)とを用いて、栽培中の果菜類(果実)の収量を増加させる施肥量を算出する。上述したように、栽培中の果菜類の収量は、積算気温、施肥量、日射量に依存するため、例えば、積算気温及び日射量を固定し(条件を変えずに)、収量が極大化する施肥量を算出する。一例として、収量を極大化させる施肥量を算出する式(上述した各式を変形させた1以上の式)を用意し、適正施肥量算出部80は、当該用意した式に、共に固定値である積算気温と日射量を投入し、収量が極大化する際の施肥量を算出してもよい。あるいは、適正施肥量算出部80は、上述した各式に、施肥量の値を順次変化させて投入し(積算気温及び日射量は固定値を投入し)、収量が極大化する際の施肥量を取得してもよい。なお、算出される施肥量に範囲(現実的な範囲)を設け、適正施肥量算出部80は、当該範囲内において、収量が極大化する施肥量を算出してもよい。また、適正施肥量算出部80は、データベース(肥料の種類毎、果菜類の品目毎の施肥量に基づく窒素の吸収量(N-Absn)のデータベース)を参照し、当該品目における肥料の種類毎の施肥量を算出してもよい。栽培支援装置1は、算出した施肥量を表示部90に表示する。なお、栽培支援装置1は、表示部90に代えて又は加えて、通信部を備え、他の装置に施肥量を出力してもよい。
【0081】
なお、上述したように、施肥量(窒素)が一定量を超える場合、体内糖濃度が減少し、却って収量が減少するため、適正施肥量算出部80は、必要な葉面積を確保するための必要最低限の施肥量を算出することとなる。
【0082】
なお、栽培支援装置1は、栽培中の果菜類の収量を提示する機能(収量算出部70、表示部90等)と、栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能(適正施肥量算出部80、表示部90等)とを備えるが、栽培支援装置1は、栽培中の果菜類の収量を提示する機能と、栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能のうちの一方を有してもよい。また、栽培中の果菜類の収量を提示する機能を有する栽培支援装置1(栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能を有しているか否かは問わない)を収量提示装置(又は収量算出装置)2と称し、栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能を有する栽培支援装置1(栽培中の果菜類の収量を提示する機能を有しているか否かは問わない)を施肥量提示装置(又は施肥量算出装置)3と称してもよい。
【0083】
図6は、栽培支援装置1の動作の一例を示すフローチャートである。栽培支援装置1(気温取得部10、施肥量取得部20、受光量取得部30)は、気温情報、施肥量及び日射量を取得し、記憶部(例えば、ハードディスク等)に記憶する(ステップS1)。
【0084】
栽培支援装置1(光合成産物要求量算出部40)は、気温情報や施肥量等に基づいて、器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)を算出し、記憶部に記憶する(ステップS2)。
【0085】
栽培支援装置1(光合成産物生産量算出部50)は、日射量等に基づいて、総光合成産物生産量(Total-DWn)を算出し、記憶部に記憶する(ステップS3)。
【0086】
栽培支援装置1(器官別光合成産物分配量算出部60)は、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)、総光合成産物生産量(Total-DWn)、器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))等に基づいて、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)を算出し、記憶部に記憶する(ステップS4)。
【0087】
栽培支援装置1(収量算出部70)は、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)、総光合成産物生産量(Total-DWn)、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)、日射量等に基づいて、栽培中の果菜類の収量を算出する(ステップS5)。
【0088】
栽培支援装置1(適正施肥量算出部80)は、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)、総光合成産物生産量(Total-DWn)、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F)nk)、日射量、気温情報等に基づいて、栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を算出し、記憶部に記憶する(ステップS6)。
【0089】
栽培支援装置1(表示部90)は、記憶部に記憶されている、栽培中の果菜類の収量、収量を増加させる施肥量を表示する(ステップS7)。なお、ステップS2、S3の順は逆であってもよい。
【0090】
(適正気温算出部)
栽培支援装置1は、適正施肥量算出部80に代えて又は加えて、栽培中の果菜類(果実)の収量を増加させる積算気温を算出する適正気温算出部(図1において非図示)を備えてもよい。適正気温算出部は、少なくとも、総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)と総光合成産物生産量(Total-DWn)とを用いて、栽培中の果菜類の収量を増加させる積算気温を算出する。上述したように、栽培中の果菜類の収量は、積算気温、施肥量、日射量に依存するため、例えば、施肥量及び日射量を固定し、収量が極大化する積算気温を算出する。一例として、収量を極大化させる積算気温を算出する式(上述した各式を変形させた1以上の式)を用意し、適正気温算出部は、当該用意した式に、共に固定値である施肥量と日射量を投入し、収量が極大化する際の積算気温を算出してもよい。あるいは、適正気温算出部は、上述した各式に、積算気温の値を順次変化させて投入し(施肥量及び日射量は固定値を投入し)、収量が極大化する際の積算気温を取得してもよい。また、適正気温算出部は、上述のようにして算出した積算気温に基づいて推奨される設定気温(推奨設定気温)を算出してもよい。なお、算出される積算気温や推奨設定気温に範囲(現実的な範囲)を設け、適正気温算出部は、当該範囲内において、収量が極大化する積算気温や推奨設定気温を算出してもよい。栽培支援装置1は、算出した積算気温や推奨設定気温を表示部90に表示する。なお、栽培支援装置1は、表示部90に代えて又は加えて、通信部を備え、他の装置に積算気温や設定推奨気温を出力してもよい。
【0091】
上述したように、栽培支援装置1は、栽培中の果菜類の収量を増加させる積算気温や推奨設定気温を提示する機能(適正気温算出部、表示部90等)を備える場合があるが、積算気温や推奨設定気温を提示する機能を有する栽培支援装置1(栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能、栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能等を有しているか否かは問わない)を気温提示装置(又は気温算出装置)4と称してもよい。
【0092】
(適正日射量算出部)
栽培支援装置1は、適正施肥量算出部80や適正気温算出部に代えて又は加えて、栽培中の果菜類(果実)の収量を増加させる日射量を算出する適正日射量算出部(図1において非図示)を備えてもよい。適正日射量算出部は、少なくとも、総光合成産物要求量(Total-Sink-DW n)と総光合成産物生産量(Total-DWn)とを用いて、栽培中の果菜類の収量を増加させる日射量を算出する。上述したように、栽培中の果菜類の収量は、積算気温、施肥量、日射量に依存するため、例えば、積算気温及び施肥量を固定し、収量が極大化する日射量を算出する。一例として、収量を極大化させる日射量を算出する式(上述した各式を変形させた1以上の式)を用意し、適正日射量算出部は、当該用意した式に、共に固定値である積算気温と施肥量とを投入し、収量が極大化する際の日射量を算出してもよい。あるいは、適正日射量算出部は、上述した各式に、日射量の値を順次変化させて投入し(積算気温及び施肥量は固定値を投入し)、収量が極大化する際の日射量を取得してもよい。また、適正日射量算出部は、上述のようにして算出した日射量と品目や品種毎のデータ(植栽密度と日射量の関係を示したデータベース)とに基づいて推奨される植栽密度(推奨栽植密度)を算出してもよい。なお、算出される日射量や推奨栽植密度に範囲(現実的な範囲)を設け、適正日射量算出部は、当該範囲内において、収量が極大化する日射量や推奨栽植密度を算出してもよい。栽培支援装置1は、算出した日射量や推奨栽植密度を表示部90に表示する。なお、栽培支援装置1は、表示部90に代えて又は加えて、通信部を備え、他の装置に日射量や推奨栽植密度を出力してもよい。
【0093】
上述したように、栽培支援装置1は、栽培中の果菜類の収量を増加させる日射量や推奨栽植密度を提示する機能(適正日射量算出部、表示部90等)を備える場合があるが、日射量や推奨栽植密度を提示する機能を有する栽培支援装置1(栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能、栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する機能等を有しているか否かは問わない)を日射量提示装置(又は日射量算出装置)5と称してもよい。
【0094】
図7は、栽培支援装置1による栽培支援の概念図である。図7に示した「葉N供給量」「茎N供給量」「根N供給量」「果実N供給量」は、光合成産物要求量算出部40(具体的には、器官別窒素要求量算出部41)によって算出される器官別窒素要求量(Dmd-N(org)n(i~l))に相当する。図7に示した「総N要求量」は、光合成産物要求量算出部40(具体的には、総窒素要求量算出部42)によって算出される総窒素要求量(Total-Dmd-Nn)に相当する。図7に示した「養分吸収量」は、施肥量に基づく窒素の吸収量(N-Absn)に相当する。
【0095】
図7に示した「葉N分配量」「茎N分配量」「根N分配量」「果実N分配量」は、光合成産物要求量算出部40(具体的には、器官別窒素分配量算出部43)によって算出される器官別窒素分配量(ΔN(org)n(i~l))に相当する。図7に示した「葉C供給量」「茎C供給量」「根C供給量」「果実C供給量」は、光合成産物要求量算出部40(具体的には、器官別光合成産物要求量算出部44)によって算出される器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))に相当する。図7に示した「総C要求量(シンク強度)」は、光合成産物要求量算出部40(具体的には、総光合成産物要求量算出部45)によって算出される総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn)に相当する。図7に示した「光合成産物量(ソース強度)」は、光合成産物生産量算出部50によって算出される総光合成産物生産量(Total-DWn)に相当する。なお、図7に示すように、光合成速度に作用する要素としてCO濃度等を用いて、総光合成産物生産量を算出してもよい。
【0096】
図7に示した「葉C分配量」「茎C分配量」「根C分配量」「果実C分配量」は、器官別光合成産物分配量算出部60によって算出される器官別光合成産物分配量(ΔDW(org)n(i~l))に相当する。図7に示した「バランス」は、シンク強度(総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn))とソース強度(総光合成産物生産量(Total-DWn))のバランス(本実施例では差に基づくバランス)である。図7に示した「果実肥大・収量」は、収量算出部70によって算出される収量等に相当する。
【0097】
図7に示した「適正量」は、適正施肥量算出部80によって算出される収量を極大化させる施肥量、適正気温算出部によって算出される収量を極大化させる積算気温又は推奨設定気温、適正日射量算出部によって算出される収量を極大化させる日射量や推奨栽植密度等に相当する。図7に示した「適正量」から「施肥量」への破線は、適正施肥量算出部80によって算出される施肥量がフィードバックされる様子を示している。図7に示した「適正量」から「気温」への破線は、適正気温算出部によって算出される積算気温又は推奨設定気温がフィードバックされる様子を示している。図7に示した「適正量」から「日射量」への破線は、適正日射量算出部によって算出される日射量や推奨栽植密度がフィードバックされる様子を示している。なお、「日射量」は気象要因(物理量)であり、受光量は日射量のうち葉が受け取ったものを計算で求める。葉が受け取らなかったものは、地面におちて、光合成には利用できない。センサで測定するのは日射量であるが、日射量と葉面積指数(LAI)と吸光係数から計算で求めるものが受光量となる。
【0098】
(システムへの応用)
栽培支援装置1は、果菜類の栽培環境の制御に用いてもよい。つまり、栽培管理あるいは環境管理として、果菜類の栽培環境を制御可能な他の1以上の装置(機械、システム、機構、施設)が、栽培支援装置1によって上述の如く算出された適正量(施肥量、気温、日射量、CO濃度)に基づいて、果菜類の栽培環境を制御してもよい。
【0099】
(施肥量の制御)
栽培支援装置1は、適正施肥量算出部80によって算出した施肥量を、施肥を実施する装置(機械、機構、施設、システム)に供給(ネットワークを介して送信、媒体を介して入出力)し、施肥を実行する装置は、栽培支援装置1から供給された施肥量に基づいて施肥を実施してもよい。施肥を実施する装置は、施肥機と称されるものであってもよいし、養液等を自動供給するロボット等であってもよい。
【0100】
(気温の制御)
栽培支援装置1は、適正気温算出部によって算出した気温(例えば、推奨設定気温)を、気温を調整可能な装置(機械、機構、施設、システム)に供給(ネットワークを介して送信、媒体を介して入出力)し、気温を調整可能な装置は、栽培支援装置1から供給された気温に基づいて気温を調整してもよい。気温を調整可能な装置は、暖房機、空調機、外気の接触/遮断を制御可能な構成(開閉制御可能な窓、天井、カーテン等)を制御する装置であってもよい。
【0101】
(日射量の制御)
栽培支援装置1は、適正日射量算出部によって算出した気温(例えば、日射量)を、日射量を調整可能な装置(機械、機構、施設、システム)に供給(ネットワークを介して送信、媒体を介して入出力)し、日射量を調整可能な装置は、栽培支援装置1から供給された日射量に基づいて日射量を調整してもよい。日射量を調整可能な装置は、日射量を調整可能な構成(開閉制御可能な窓、天井、カーテン等)を制御する装置であってもよい。
【0102】
なお、栽培支援装置1が出力する適正量(施肥量、気温、日射量)は、果菜類の栽培を支援する栽培支援情報であるとも言えるため、栽培支援装置1を栽培支援情報算出装置6と称してもよい。
【0103】
(本実施形態に関連する補足説明)
近年、収量を予測する生育モデルの研究開発が盛んに行われ、環境情報から収量を予測し、出荷計画や作業計画の立案に役立てたり、予測収量と実収量を比較し、その差が生じた要因を考察して栽培管理に活用したりするようになっている。
【0104】
果菜類の生産では、栄養成長と生殖成長のバランス(いわゆる草勢)を、栽培期間を通して適切な範囲に維持することが重要とされる。葉が茂り、茎が太くなる草勢が強い(栄養成長が強い)状態においては、花芽分化の遅れ、果実肥大の抑制、外観品質の低下(障害果の発生)などが生じ、収量が低下する。一方、葉面積が小さく、茎径が細く草勢が弱い(生殖成長が強い)状態においても、開花の遅れ、落下、着果数の減少、果実肥大の抑制、芯止まりなどが生じ収量が低下する。本実施形態においても示したが、光合成産物を供給する能力をソース強度(光合成量)、光合成産物を受け取る能力はシンク強度(生育量)とも呼ばれる。ソース強度がシンク強度を上回る状態が続くと栄養成長が強くなる。シンク強度がソース強度を上回る状態が続くと生殖成長が強くなる。栄養成長と生殖成長のバランスを維持し、光合成産物の分配を最適化するためには、ソース強度とシンク強度のバランスを適切に維持することが重要とされる。
【0105】
近年、日射の不足や高温、低温など平年とは大きく異なる気象条件が頻発している。その結果、作物の栄養成長、生殖成長のバランスが適切な範囲を外れ、生育や収量が低下する事例が多くなっている。このため、生産現場では、栄養成長、生殖成長のバランスを適切に維持するためのモデル(システム)の開発が渇望されている。
【0106】
一般に、作物の生育は養分供給によって大きく変わるため、養分供給量を考慮したモデルを確立する必要がある。
【0107】
図8は、栽培支援装置1に係る構成に想到するに至る前に実施した実験について説明する説明図である。発明者は、トマトの養液栽培において、濃度が異なる2つの培養液(標準濃度、高濃度)においてトマトを栽培し、夫々について器官別(葉、茎、果実)の乾物量を比較した。図8(A)は、標準濃度で栽培したトマトの器官別の乾物量と、高濃度で栽培したトマトの期間別の乾物量と、を比較したものである。図8(A)に示すように、高濃度の培養液とした場合でも、茎葉の乾物重については増加するものの、果実の乾物重については増加しなかった。発明者は、図8(A)の結果に接し、夫々に含有する窒素についても測定した。図8(B)は、標準濃度で栽培したトマトの器官別の乾物量に含まれる窒素量等と、高濃度で栽培したトマトの期間別の乾物量に含まれる窒素量等と、を比較したものである。図8(B)において、括弧無の数値は窒素量(蓄積量)、括弧付の数値は窒素含有率(N含有率)である。図8(B)は示すように、高濃度の培養液で栽培した場合、窒素含有率については何れの器官も殆ど変化は見られなかったが、窒素量については茎葉において増加が見られた(つまり茎葉部への窒素分配量の増加を確認した)。なお、乾物量は、窒素の量ではなく光合成産物の量に大きく依存する。
【0108】
発明者は、上記実験結果に基づいて、光合成産物(C)の各器官への分配量は、窒素(N)の各器官への分配量に影響される構成を組み込んだモデルを考案した。具体的には、器官別光合成産物要求量算出部44、器官別光合成産物分配量算出部60等に相当する。つまり、器官別光合成産物分配量算出部60は、器官別光合成産物要求量算出部44によって算出される器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))を用いて器官別光合成産物分配量(ΔDW(org)n(i~l))を算出し、器官別光合成産物要求量算出部44は、器官別窒素分配量(ΔN(org)n(i~l))を用いて器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org)n(i~l))を算出している。
【0109】
更に、発明者は、は花芽分化の時期、着果数を推定する機構を導入した。光合成産物の分配には開花や、花房当たりの着果数が大きく影響する。花芽分化や着果数は光合成量や体内糖濃度と深く関係があるとされる。発明者は、「ソース強度/シンク強度」と体内糖濃度の関係に着目し、「ソース強度/シンク強度」から花芽分化の時期、着果数を推定する機構をモデルに組み込んだ。その結果、栄養成長が強い場合の開花の遅れ、着果数の減少を説明できるようになった。
【0110】
なお、従来から提案されているモデルは、栄養成長、生殖成長に及ぼす影響を気象条件のみによってシミュレートしたものや、養分の影響を考慮したものであっても光合成産物と養分の分配を独立して算出するものである。従って、従来のモデルでは、上述した実験結果を説明(シミュレート)するのは難しい。
【0111】
以上、実施形態について説明したが、機器の構成、データの構成、処理の流れ、表示及び出力の態様などは、適宜変更が可能である。
【0112】
例えば、上記実施形態では、栽培支援装置1は、各種のデータベースを自装置内に記憶し、自装置内に記憶されている各種のデータベースを適宜参照すると説明したが、各種のデータベースは他の装置(栽培支援装置1がアクセス可能な他の装置)に記憶され、栽培支援装置1は、適宜他の装置にアクセスし各種のデータベースを参照してもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、栽培支援装置1は、シンク強度(総光合成産物要求量(Total-Sink-DWn))とソース強度(総光合成産物生産量(Total-DWn))のバランスとして、シンク強度とソース強度の差を用いた例を説明したが、差に代えて又は加えて、シンク強度とソース強度の比を用いてもよい。何らかの数式によってシンク強度とソース強度のバランスが示されればよい。
【0114】
以上、実施形態について説明したが、上記実施形態によれば、果菜類の栽培を好適に支援することができる。
【0115】
なお、実施形態において説明した各装置(栽培支援装置1、収量提示装置2、施肥量提示装置3、気温提示装置4、日射量提示装置5、栽培支援情報算出装置6等)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上記各装置の処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0116】
上記実施形態にて説明した構成は、少なくとも以下の構成を含む。
【0117】
(1)果菜類の栽培を支援する栽培支援装置(栽培支援装置1等)であって、気温情報を取得する気温取得手段(気温取得部10等)と、栽培中の果菜類への施肥量を取得する施肥量取得手段(施肥量取得部20等)と、前記栽培中の果菜類(例えば、葉)に照射される日射量、すなわち前記栽培中の果菜類が受け取る受光量を取得する受光量取得手段(受光量取得部30等)と、少なくとも前記気温情報と前記施肥量とに基づいて、前記栽培中の果菜類が要求する光合成産物の要求量である総光合成産物要求量(Total-Sink-DW/シンク強度)を算出する光合成産物要求量算出手段(光合成産物要求量算出部40等)と、少なくとも前記受光量に基づいて、前記栽培中の果菜類が生産する光合成産物の生産量である総光合成産物生産量(Total-DW/ソース強度)を算出する光合成産物生産量算出手段(光合成産物生産量算出部50等)と、少なくとも前記総光合成産物要求量(Total-Sink-DW)と前記総光合成産物生産量(Total-DW)とを用いて、前記栽培中の果菜類の収量を算出する収量算出手段(収量算出部70等)とを備えることを特徴とする栽培支援装置。
【0118】
(2)前記光合成産物要求量算出手段は、少なくとも前記気温情報に基づいて、栽培中の果菜類の器官別(葉L、茎S、果実F、根R)の窒素の要求量である器官別窒素要求量(Dmd-N(org))を算出(例えば、式1)する器官別窒素要求量算出手段(器官別窒素要求量算出部41等)と、少なくとも前記器官別窒素要求量(Dmd-N(org))から前記栽培中の果菜類全体(作物一個体)の窒素の要求量である総窒素要求量(Total-Dmd-N)を算出(例えば、式2)する総窒素要求量算出手段(総窒素要求量算出部42等)と、少なくとも前記器官別窒素要求量(Dmd-N(org))と、前記総窒素要求量(Total-Dmd-N)と、施肥量に基づく窒素の吸収量とに基づいて、前記器官別の窒素の分配量である器官別窒素分配量(ΔN(org))を算出(例えば、式3~式11)する器官別窒素分配量算出手段(器官別窒素分配量算出部43等)と、少なくとも前記器官別窒素分配量(ΔN(org))と、前記器官別の窒素の最小分配量(ΔN(org)min)と、前記器官別の窒素の最大分配量(ΔN(org)max)とに基づいて、前記器官別の光合成産物の要求量である器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org))を算出(例えば、式12~式17)する器官別光合成産物要求量算出手段(器官別光合成産物要求量算出部44等)と、少なくとも前記器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org))から前記栽培中の果菜類全体(作物一個体)の光合成産物の要求量を前記総光合成産物要求量(Total-Sink-DW)として算出(例えば、式18)する総光合成産物要求量算出手段(総光合成産物要求量算出部45等)とを有し、果実に対する窒素分配量(ΔN(F))には上限(ΔN(F)max)が設けられ、前記器官別窒素分配量算出手段(器官別窒素分配量算出部43等)は、果実に対する窒素分配量の上限を超える量(EX-N(F))の窒素が果実以外の器官(例えば、葉L、茎S)に再分配され、果実に対する窒素分配量(ΔN(F))が果実に対する窒素分配量の上限(ΔN(F)max)を超えないように、前記器官別窒素分配量(ΔN(org))を算出(例えば、式3~式11)することを特徴とする(1)に記載の栽培支援装置。
【0119】
(3)少なくとも前記総光合成産物要求量(Total-Sink-DW)と、前記総光合成産物生産量(Total-DW)と、前記器官別光合成産物要求量(Sink-DW(org))とに基づいて、器官別の光合成産物の分配量である器官別光合成産物分配量(ΔDW(org))を算出(例えば、式20~式28)する器官別光合成産物分配量算出手段(器官別光合成産物分配量算出部60等)を更に備え、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F))には上限(ΔDW(F)Lim)が設けられ、前記器官別光合成産物分配量算出手段(器官別光合成産物分配量算出部60等)は、果実に対する光合成産物分配量の上限を超える量(EX-DW(F))の光合成産物が果実以外の器官(例えば、葉L、茎S、根R)に再分配され、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F))が果実に対する光合成産物分配量の上限(ΔDW(F)Lim)を超えないように、前記器官別光合成産物分配量(ΔDW(org))を算出(例えば、式20~式28)し、前記収量算出手段(収量算出部70等)は、少なくとも前記総光合成産物要求量(Total-Sink-DW)と、前記総光合成産物生産量(Total-DW)と、果実に対する光合成産物分配量(ΔDW(F))と、前記受光量とに基づいて、前記栽培中の果菜類の収量を算出(例えば、式29~式33)することを特徴とする(2)に記載の栽培支援装置。
【0120】
(4)前記光合成産物生産量算出手段は、少なくとも光利用効率(g-DW/MJ)と、全天日射量(MJ/m2)と、栽植本数(本/m2)とに基づいて、前記総光合成産物生産量(Total-DW)を算出(例えば、式19)することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の栽培支援装置。
【0121】
(5)少なくとも前記総光合成産物要求量(Total-Sink-DW)と前記総光合成産物生産量(Total-DW)とを用いて、前記栽培中の果菜類の収量を増加させる施肥量を提示する施肥量提示手段(適正施肥量算出部80、表示部90等)を更に備えることを特徴する(1)乃至(4)のいずれかに記載の栽培支援装置。
【0122】
(6)(1)~(5)の栽培支援装置のプログラム。
(7)(1)~(5)の栽培支援装置を含む栽培支援システム。
(8)(1)~(5)の栽培支援装置、又は、(7)の栽培支援システムを用いた栽培支援方法。
【符号の説明】
【0123】
1…栽培支援装置
10…気温取得部
20…施肥量取得部
30…受光量取得部
40…光合成産物要求量算出部
41…器官別窒素要求量算出部
42…総窒素要求量算出部
43…器官別窒素分配量算出部
44…器官別光合成産物要求量算出部
45…総光合成産物要求量算出部
50…光合成産物生産量算出部
60…器官別光合成産物分配量算出部
70…収量算出部
80…適正施肥量算出部
90…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8