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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074870
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】フローセンサおよびガス検知器
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/696 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
G01F1/696 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188027
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 裕正
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋
(72)【発明者】
【氏名】大岩 史奈
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA04
2F035EA08
2F035EA09
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制しながら、温度補正した流体の流量を測定することが可能なフローセンサを提供する。
【解決手段】このフローセンサ100は、流体1の流量の変化に伴って抵抗値が変化する検知素子20と、検知素子20に印加する電圧を制御する制御部30と、を備える。制御部30は、検知素子20に印加する電圧を、第1の電圧Vと、第1の電圧Vよりも低い第2の電圧Vと、に切り替えるとともに、第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VHOと、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOに基づいて取得される周辺温度Tと、に基づいて、流体1の流量を測定するように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量の変化に伴って抵抗値が変化する検知素子と、
前記検知素子に印加する電圧を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検知素子に印加する電圧を、第1の電圧と、前記第1の電圧よりも低い第2の電圧と、に切り替えるとともに、前記第1の電圧を印加した時の前記検知素子の出力と、前記第2の電圧を印加した時の前記検知素子の出力に基づいて取得される周辺温度と、に基づいて、前記流体の流量を測定するように構成されている、フローセンサ。
【請求項2】
前記第1の電圧は、前記検知素子が前記流体よりも高い温度となる電圧である、請求項1に記載のフローセンサ。
【請求項3】
前記第2の電圧は、前記検知素子が前記流体の流量に対して影響を受けない温度となる電圧である、請求項1または2に記載のフローセンサ。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の電圧と、前記第2の電圧とを交互に切り替えながら、前記流体の流量を測定するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のフローセンサ。
【請求項5】
前記制御部は、前記周辺温度に基づいて、前記第1の電圧を印加した時の前記検知素子の出力に対して、前記流体の流量がゼロの時の前記検知素子の出力の温度依存性を補正するベース温度補正を行うとともに、前記流体の流量が測定対象量の時の前記検知素子の出力の温度依存性を補正する流量温度補正を行うように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のフローセンサ。
【請求項6】
前記検知素子は、加熱された状態で前記流体と接触することによる前記流体への熱伝導に応じて抵抗値が変化する気体熱伝導素子である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフローセンサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のフローセンサと、
ガスセンサと、を備える、ガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フローセンサおよびガス検知器に関し、特に、検知素子を備えたフローセンサおよびガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検知素子を備えたフローセンサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、温度センサおよびヒータを備えた熱式フローセンサが開示されている。温度センサは、測定用流路内の流体の温度を測定し、測定結果を制御回路に送信する。ヒータは、制御回路からの指令信号により発熱し、流体を加熱する。また、制御回路は、ヒータの放散熱量の変化を測定する。上記特許文献1の熱式フローセンサでは、温度センサの測定結果とヒータの放散熱量の変化とに基づいて、温度補正した流体の流量を測定していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6172475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された熱式フローセンサでは、温度センサおよびヒータを設けているため、温度補正した流体の流量を測定するための部品点数が増加するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、部品点数の増加を抑制しながら、温度補正した流体の流量を測定することが可能なフローセンサおよびガス検知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるフローセンサは、流体の流量の変化に伴って抵抗値が変化する検知素子と、検知素子に印加する電圧を制御する制御部と、を備え、制御部は、検知素子に印加する電圧を、第1の電圧と、第1の電圧よりも低い第2の電圧と、に切り替えるとともに、第1の電圧を印加した時の検知素子の出力と、第2の電圧を印加した時の検知素子の出力に基づいて取得される周辺温度と、に基づいて、流体の流量を測定するように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるフローセンサでは、制御部を、検知素子に印加する電圧を、第1の電圧と、第1の電圧よりも低い第2の電圧と、に切り替えるとともに、第1の電圧を印加した時の検知素子の出力と、第2の電圧を印加した時の検知素子の出力に基づいて取得される周辺温度と、に基づいて、流体の流量を測定するように構成する。これにより、1つの検知素子で流体の温度検知と流体の流量測定との両方を行うことができるので、流体の温度検知のために別個に温度検知素子を設ける必要が無い。その結果、温度検知素子を別個に設ける場合に比べて、部品点数の増加を抑制しながら、温度補正した流体の流量を測定することができる。
【0009】
上記第1の局面によるフローセンサにおいて、好ましくは、第1の電圧は、検知素子が流体よりも高い温度となる電圧である。このように構成すれば、検知素子が流体よりも高い温度となるので、検知素子から流体に熱量を与えることができる。その結果、流体の流量が変化した場合に、与える熱量の変化を発生させることができるので、検知素子の出力を容易に変化させることができる。これにより、流体の流量を容易に測定することができる。
【0010】
上記第1の局面によるフローセンサにおいて、好ましくは、第2の電圧は、検知素子が流体の流量に対して影響を受けない温度となる電圧である。このように構成すれば、検知素子が流体の流量に対して影響を受けない温度となるので、流体の流量によらず、第2の電圧を印加した時の検知素子の出力に基づいて周辺温度を正確に取得することができる。その結果、流体の流量によらず、温度補正を正確に行うことができる。
【0011】
上記第1の局面によるフローセンサにおいて、好ましくは、制御部は、第1の電圧と、第2の電圧とを交互に切り替えながら、流体の流量を測定するように構成されている。このように構成すれば、第1の電圧と、第2の電圧とを交互に切り替えながら、流体の流量が測定されるので、流体の流量や温度が変化した場合にも、流体の流量や温度の変化を測定結果に迅速に反映することができる。
【0012】
上記第1の局面によるフローセンサにおいて、好ましくは、制御部は、周辺温度に基づいて、第1の電圧を印加した時の検知素子の出力に対して、流体の流量がゼロの時の検知素子の出力の温度依存性を補正するベース温度補正を行うとともに、流体の流量が測定対象量の時の検知素子の出力の温度依存性を補正する流量温度補正を行うように構成されている。このように構成すれば、ベース温度補正による温度補正後に、測定対象量の時の検知素子の出力の温度依存性が残存する場合にも、流量温度補正により測定対象量の時の検知素子の出力の温度依存性を補正することができる。その結果、流体の温度補正を精度良く行うことができるとともに、温度補正した流体の流量を精度良く測定することができる。
【0013】
上記第1の局面によるフローセンサにおいて、好ましくは、検知素子は、加熱された状態で流体と接触することによる流体への熱伝導に応じて抵抗値が変化する気体熱伝導素子である。このように構成すれば、簡素な構成の気体熱伝導素子を用いて、流体の温度検知と流体の流量測定とを行うことができる。
【0014】
この発明の第2の局面によるガス検知器は、上記第1の局面によるフローセンサと、ガスセンサと、を備える。
【0015】
この発明の第2の局面によるガス検知器では、上記第1の局面によるフローセンサを備える。これにより、上記第1の局面によるフローセンサと同様に、部品点数の増加を抑制しながら、温度補正した流体の流量を測定することが可能なガス検知器を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、部品点数の増加を抑制しながら、温度補正した流体の流量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態によるフローセンサを示した模式図である。
図2】一実施形態による気体熱伝導素子の構成例を示した模式的な断面図である。
図3図2に示した気体熱伝導素子の検知領域を示した模式的な平面図である。
図4】一実施形態によるフローセンサの検知回路の例を示した図である。
図5】一実施形態による第1の電圧と第2の電圧との切替制御を説明するための図である。
図6】一実施形態による温度補正を説明するための図である。
図7】流体の流量に対する検知素子の出力特性を各電圧で測定した実験結果を示したグラフである。
図8図7の低電圧側の実験結果を示したグラフである。
図9】第2の電圧における環境温度に対する検知素子の出力特性を各流量条件で測定した実験結果を示したグラフである。
図10図9のグラフの出力の平均値を示したグラフである。
図11】第1の電圧における環境温度に対する検知素子の出力特性を各流量条件で測定した実験結果を示したグラフである。
図12図11のグラフの出力に対してベース温度補正を行った結果を示したグラフである。
図13図12のグラフの出力に対して流量温度補正を行った結果を示したグラフ(1)である。
図14図12のグラフの出力に対して流量温度補正を行った結果を示したグラフ(2)である。
図15】一実施形態によるフローセンサを備えたガス検知器の構成例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図14を参照して、一実施形態によるフローセンサ100の構成について説明する。
【0020】
(フローセンサの構成)
本実施形態のフローセンサ100は、流路10内に供給された流体1の流量を測定する装置である。流量の測定対象となる流体1は、気体(ガス)である。
【0021】
図1に示すように、フローセンサ100は、流路10と、検知素子20と、制御部30(図6参照)と、を備える。
【0022】
流路10は、流体1が流通する通路である。流路10は、中空の管状構造を有する。
【0023】
検知素子20は、流路10内に配置されている。検知素子20は、流体1の流量の変化に伴って抵抗値が変化する検知素子である。具体的には、検知素子20は、加熱された状態で流体1と接触することによる流体1への熱伝導に応じて抵抗値が変化する気体熱伝導素子である。
【0024】
図2および図3は、検知素子20に用いられる気体熱伝導素子50の一構成例を示す。気体熱伝導素子50は、半導体製造プロセスを用いて半導体基板中に機械的構造を形成するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により形成されている。すなわち、気体熱伝導素子50は、MEMSセンサであり、たとえば、一辺の大きさが0.1mm程度のサイズを有している。
【0025】
検知素子20としての気体熱伝導素子50は、電源部61(図4参照)に接続され、電源部61から電流が供給される。気体熱伝導素子50は、電源部61(図4参照)に接続される一対の電極部50aを含む。
【0026】
気体熱伝導素子50は、絶縁性支持層51と、抵抗体パターン52と、不活性被覆層53と、を含む。図2の例では、絶縁性支持層51と抵抗体パターン52と不活性被覆層53とが、半導体製造プロセスによって母材層54に形成されている。
【0027】
母材層54は、たとえばSi(シリコン)である。母材層54は、エッチングにより形成された凹部54aを有する。凹部54aは、後述する検知領域SAの下部全体に亘って形成されている。凹部54aの形成範囲内に存在する絶縁性支持層51は、母材層54から離れて母材層54とは非接触状態で設けられている。
【0028】
絶縁性支持層51は、母材層54の表面に形成され、絶縁体により構成されている。絶縁性支持層51は、平面視で、検知領域SAを構成する矩形状の保持部51a(図3参照)と、保持部51aを支持するための梁部51b(図3参照)と、外周部51cとを含む。図3の例では、複数(4つ)の梁部51bが、それぞれ保持部51aと外周部51cとに接続し、保持部51aを支持している。絶縁性支持層51は、たとえば、SiO(二酸化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)などの絶縁体の単一層または複合層(複数種類の絶縁体の積層構造)からなる。
【0029】
図2に示すように、抵抗体パターン52は、絶縁性支持層51の表面に形成され、導電体により構成されている。図3に示すように、抵抗体パターン52は、保持部51a上に形成されたヒータ部52aと、梁部51b上に形成された配線部52bとを含む。ヒータ部52aは、一本の線状構造をミアンダ状に折り返して、保持部51aの略全体に分布するように形成したものである。配線部52bは、ヒータ部52aの一端と他端とを、それぞれ梁部51b上を通って、一対の電極部50aに1本ずつ接続している。一対の電極部50aからの電流供給により、ヒータ部52aが発熱する。抵抗体パターン52を構成する導電体は、たとえばPt(白金)からなる。抵抗体パターン52の構造は、単一層構造でもよいし、導電体(Ptなど)と絶縁体(Ta(五酸化タンタル)など)との複合層構造であってもよい。なお、図3では、便宜的に抵抗体パターン52にハッチングを付して示している。
【0030】
図2に示すように、不活性被覆層53は、絶縁性支持層51および抵抗体パターン52の表面を被覆するように形成されている。不活性被覆層53は、少なくともヒータ部52aの表面全体を被覆する。不活性被覆層53は、抵抗体パターン52により加熱された状態においてもガスに対する反応性が低い不活性物質からなる。不活性物質は、たとえばSiOである。なお、図3では、便宜的に不活性被覆層53の図示を省略している。不活性被覆層53は、図3における絶縁性支持層51および抵抗体パターン52の全体を被覆している。
【0031】
図3に示すように、検知領域SAは、保持部51a、ヒータ部52aおよびこれらを覆う不活性被覆層53により構成されている。ヒータ部52aが発熱すると、検知領域SAと周囲のガスとの接触に伴う熱伝導により熱が放出される。気体熱伝導素子50に流体1が供給されている状況下では、検知領域SAが流体1と接触することにより、流量に応じて放熱量が変化する。この際、ヒータ部52aの温度変化に対応してヒータ部52a(抵抗体パターン52)の電気抵抗が変化する。気体熱伝導素子50では、ヒータ部52a(抵抗体パターン52)の電気抵抗の変化に基づいて、温度変化をもたらした流体1の流量を算出することが可能である。また、熱伝導率が温度に依存することから、気体熱伝導素子50は、流体1の温度(環境温度)に影響される。
【0032】
〈検知回路〉
図4を参照して、フローセンサ100における検知素子20の検知回路60の構成例を示す。検知回路60は、検知素子20と、電源部61と、固定抵抗62と、電圧検知部63と、を含む。
【0033】
電源部61は、制御部30(図6参照)の制御の下、検知素子20に電圧を印加する。制御部30は、電源部61を制御することにより、検知素子20に印加する電圧を制御する。電源部61による電圧の印加により、検知素子20が加熱される。検知素子20は、電源部61の正極に接続されている。
【0034】
固定抵抗62は、検知素子20に一方端が接続され、電源部61の負極に他方端が接続されている。
【0035】
電圧検知部63は、検知素子20の抵抗値に応じて変化する固定抵抗62の両端間の電圧値を検知する。制御部30は、検知素子20の出力として、固定抵抗62の両端間の電圧値を電圧検知部63から取得する。
【0036】
〈制御部〉
次に、図5および図6を参照して、制御部30による流体1の流量の測定に関する処理を説明する。
【0037】
制御部30は、検知素子20の出力信号を取得し、流路10内に供給された流体1の流量を測定する。制御部30は、CPUなどのプロセッサにより構成されている。
【0038】
ここで、本実施形態では、制御部30は、検知素子20に印加する電圧を、第1の電圧Vと、第1の電圧Vよりも低い第2の電圧Vと、に切り替えるとともに、第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VHOと、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOに基づいて取得される周辺温度Tと、に基づいて、流体1の流量を測定する。なお、周辺温度Tとは、検知素子20の周辺の温度であり、検知素子20の周辺に流体1が流通している場合、流体1の温度が反映される。
【0039】
本実施形態では、第1の電圧Vは、検知素子20が流体1よりも高い温度となる電圧である。すなわち、第1の電圧Vは、検知素子20から流体1への放熱量が比較的大きくなる電圧に設定されている。第1の電圧Vは、たとえばフローセンサ100の使用温度範囲や検知素子20の寿命に基づいて決定されている。また、第1の電圧Vは、第2の電圧Vよりも高い一定電圧である。第2の電圧Vは、検知素子20が流体1の流量に対して影響を受けない温度となる電圧である。すなわち、第2の電圧Vは、検知素子20から流体1への放熱量が比較的小さくなる(ほとんどない)電圧に設定されている。第2の電圧Vは、後述する実験などに基づいて決定されている。また、第2の電圧Vは、第1の電圧Vよりも低い一定電圧である。なお、第1の電圧Vおよび第2の電圧Vは、特に限られない。後述する実験では、一例として、第1の電圧Vが2500mVで、検知素子20の温度が200℃となり、第2の電圧Vが375mVで、検知素子20の温度が34℃となっている。
【0040】
本実施形態では、制御部30は、第1の電圧Vと、第2の電圧Vとを交互に切り替えながら、流体1の流量を測定する。この際、制御部30は、第1の電圧Vと、第2の電圧Vとに切り替える定電圧制御手段として機能する。制御部30は、第1の電圧Vと、第2の電圧Vとを交互に検知素子20に印加することにより、検知素子20をパルス駆動するように構成されている。パルス駆動では、検知素子20に、第1の電圧Vが時間Hで印加されることと、第2の電圧Vが時間Lで印加されることとが繰り返される。時間Hおよび時間Lは、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。時間Hおよび時間Lは、たとえば、共に50μsである。
【0041】
制御部30は、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOに基づいて、出力VLOに対応する周辺温度Tを取得する。この際、制御部30は、出力VLOと周辺温度Tとを対応付ける第1換算情報から、出力VLOに対応する周辺温度Tを取得する。第1換算情報は、実験などに基づいて予め作成されている。
【0042】
制御部30は、周辺温度Tに基づいて、第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VHOに対して、温度補正を行う。本実施形態では、制御部30は、周辺温度Tに基づいて、第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VHOに対して、流体1の流量がゼロの時の検知素子20の出力の温度依存性を補正するベース温度補正を行うとともに、流体1の流量が測定対象量の時の検知素子20の出力の温度依存性を補正する流量温度補正を行う。
【0043】
ベース温度補正では、制御部30は、周辺温度Tに基づいて、周辺温度Tと流体1の流量がゼロの時の検知素子20の出力とを対応付ける第2換算情報から、周辺温度Tに対応するベース温度補正の補正値V1を取得する。第2換算情報は、実験などに基づいて予め作成されている。制御部30は、出力VHOから補正値V1を減算することにより、出力VHOに対して、ベース温度補正を行う。
【0044】
流量温度補正では、制御部30は、周辺温度Tに基づいて、周辺温度Tと流体1の流量が測定対象流量の時の検知素子20の出力とを対応付ける第3換算情報から、周辺温度Tに対応する流量温度補正の補正値V2を取得する。第3換算情報は、実験などに基づいて予め作成されている。制御部30は、ベース温度補正後の出力VHOから補正値V2を減算することにより、ベース温度補正後の出力VHOに対して、流量温度補正を行う。
【0045】
制御部30は、ベース温度補正および流量温度補正後の出力VHOとして、補正出力値Vを取得する。制御部30は、補正出力値Vに基づいて、補正出力値Vと流体1の流量値とを対応付ける第4換算情報から、補正出力値Vに対応する流体1の流量値を取得する。第4換算情報は、実験などに基づいて予め作成されている。
【0046】
(検知素子の出力の温度補正)
次に、図7図14を参照して、本実施形態のフローセンサ100による検知素子20の出力に基づく温度補正を実験結果とともに説明する。
【0047】
図7は、流体1の流量に対する検知素子20の出力特性を各電圧で測定した実験結果を示したグラフである。図7のグラフは、横軸がフローセンサ100に供給された流体1の流量[mL/min]であり、縦軸が検知素子20の出力電圧値[mV]である。縦軸の出力電圧値は、流量500mL/minにおける出力電圧値からの差分値ΔVで示している。図7のグラフには、検知素子20への印加電圧として、375mV、500mV、625mV、750mV、1000mV、1500mV、2000mV、および、2500mV、の8種類を用いた実験結果をそれぞれプロットしてある。
【0048】
図7のグラフから、検知素子20は、どの印加電圧でも、流体1の流量の増大に応じて差分値ΔVが上昇する出力特性を有することが分かる。また、検知素子20は、印加電圧が高いほど差分値ΔVの絶対値が大きくなり、印加電圧が低いほど差分値ΔVの絶対値が小さくなる出力特性を有することが分かる。すなわち、検知素子20では、印加電圧が高いほど出力の流量依存性が高く、印加電圧が低いほど出力の流量依存性が低くなっている。このため、印加電圧を低くすれば、流量の影響を受けない検知素子20の出力を得ることが可能である。
【0049】
図8は、図7の低電圧側(375mV、500mV、625mV、750mV、および、1000mVの5種類)の実験結果を示したグラフである。図8のグラフの横軸および縦軸は、図7のグラフの横軸および縦軸と同じである。
【0050】
図8のグラフから、特に、検知素子20の温度が50℃以下(すなわち、375mV、500mV、625mV)で、出力の流量依存性が低く、流量が変化しても出力がほとんど変化しなくなっている。このため、たとえば、検知素子20の温度が50℃以下となる印加電圧を、流量の影響を受けない第2の電圧Vとすることが可能である。以降の実験では、第2の電圧Vを375mVとしている。
【0051】
図9は、第2の電圧V=375mVにおける環境温度(流体1の温度)に対する検知素子20の出力特性を各流量条件で測定した実験結果を示したグラフである。図9のグラフは、横軸が環境温度[℃]であり、縦軸が検知素子20の出力電圧値[mV]である。縦軸の出力電圧値は、環境温度20℃、流量500mL/minにおける出力電圧値からの差分値ΔVで示している。図9のグラフには、流量300mL/min、500mL/min、および、1000mL/min、の3種類の流量条件での実験結果をグラフにプロットしている。
【0052】
図9のグラフから、検知素子20は、環境温度に対して概ね線形の出力特性を有することが分かる。すなわち、どの流量条件であっても、環境温度が低いほど差分値ΔVが高くなり、環境温度が高いほど差分値ΔVが低くなっている。また、検知素子20は、第2の電圧Vを印加した状態であれば、流量条件に依存せず、環境温度に対する出力特性(出力値)が同等であることが分かる。このため、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOから、周辺温度T(環境温度)を得ることが可能である。
【0053】
図10は、図9のグラフの3種類の流量条件での出力の平均値を示したグラフである。図10のグラフの横軸および縦軸は、図9のグラフの横軸および縦軸と同じである。
【0054】
図10のグラフから、最小二乗法などの回帰分析を用いて、出力VLOと周辺温度T(環境温度)との相関関係を表す式y=-ax+bを得られることが分かる。yは出力VLOを表す変数であり、xは周辺温度Tを表す変数であり、aは傾きを表す係数であり、bは切片を表す係数である。たとえば、式y=-ax+bに基づいて第1換算情報を作成することが可能である。
【0055】
図11は、第1の電圧VH=2500mVにおける環境温度に対する検知素子20の出力特性を各流量条件で測定した実験結果を示したグラフである。図11のグラフの横軸および縦軸は、図9のグラフの横軸および縦軸と同じである。図11のグラフには、流量0ml/min、300mL/min、500mL/min、および、1000mL/min、の4種類の流量条件での実験結果をグラフにプロットしている。
【0056】
図11のグラフから、検知素子20は、第1の電圧VHを印加した状態であれば、流量条件によって、環境温度に対する出力特性(出力値)が大きく異なることが分かる。また、検知素子20は、どの流量条件であっても、環境温度に対して概ね線形の出力特性を有することが分かる。すなわち、どの流量条件であっても、環境温度が低いほど差分値ΔVが高くなり、環境温度が高いほど差分値ΔVが低くなっている。検知素子20の出力が温度依存しているため、正確な流量を測定するためには温度補正を行う必要がある。
【0057】
また、図11のグラフから、最小二乗法などの回帰分析を用いて、流体1の流量が0ml/minの時の検知素子20の出力と周辺温度T(環境温度)との相関関係を表す、ベース温度補正のための式y=-cx+dを得られることが分かる。yは検知素子20の出力を表す変数であり、xは周辺温度Tを表す変数であり、cは傾きを表す係数であり、dは切片を表す係数である。たとえば、式y=-cx+dに基づいて第2換算情報を作成することが可能である。
【0058】
図12は、図11のグラフの出力に対してベース温度補正を行った結果を示したグラフである。図12のグラフでは、0mL/min、300mL/min、500mL/min、1000mL/minの各流量条件での出力から、図11の式y=-cx+dにより算出した補正値V1を減算することにより、ベース温度補正を行っている。図12のグラフの横軸および縦軸は、図11のグラフの横軸および縦軸と同じである。
【0059】
図12のグラフから、0mL/minの流量条件での出力は、環境温度に依存せずに略一定となっていることが分かる。また、300mL/min、500mL/min、1000mL/minの各流量条件でも、環境温度による出力変動(プロットの傾き)が図11よりも低減されている。また、流量条件ごとの出力は互いに縦軸方向に明確に分離しており、流体1の流量に応じた出力特性が損なわれていないことが分かる。このため、ベース温度補正により、流体1の流量に応じた出力特性を損なうことなく、温度依存性を補正できることが分かる。一方、300mL/min、500mL/min、1000mL/minの各流量条件では、わずかに温度依存性が残っている。このため、図13に示すグラフでは、流量温度補正を行っている。
【0060】
また、図12のグラフから、最小二乗法などの回帰分析を用いて、流体の流量が500ml/minの時の検知素子20の出力と周辺温度T(環境温度)との相関関係を表す、流量温度補正のための式y=-ex+fを得られることが分かる。yは検知素子20の出力を表す変数であり、xは周辺温度Tを表す変数であり、eは傾きを表す係数であり、fは切片を表す係数である。たとえば、式y=-ex+fに基づいて第3換算情報を作成することが可能である。また、詳細な説明は省略するが、図12のグラフから、流体の流量が300ml/minの時の検知素子20の出力と周辺温度T(環境温度)との相関関係を表す、流量温度補正のための式y=-gx+h、および、流体の流量が1000ml/minの時の検知素子20の出力と周辺温度T(環境温度)との相関関係を表す、流量温度補正のための式y=-ix+jを得られることが分かる。たとえば、式y=-ex+f、式y=-gx+h、式y=-ix+jに基づいて第3換算情報を作成することが可能である。
【0061】
図13は、図12のグラフの出力に対して流量温度補正を行った結果を示したグラフである。図13のグラフでは、測定対象流量である500mlの流量条件での出力を基準として、300mL/min、500mL/min、1000mL/minの各流量条件での出力に対して、流量温度補正を行っている。ここでは、図12の式y=-ex+fにより算出した温度xの時の出力から、式y=-ex+fにより算出した基準温度20℃の時の出力を減算することにより、各温度での補正値V2を算出している。そして、300mL/min、500mL/min、1000mL/minの各流量条件での出力から、補正値V2を減算することにより、流量温度補正を行っている。図13のグラフの横軸および縦軸は、図12のグラフの横軸および縦軸と同じである。
【0062】
図13のグラフから、300mL/min、500mL/min、1000mL/minの各流量条件で、環境温度による出力変動(プロットの傾き)が図12よりも低減されている。特に、測定対象流量である500mL/minの流量条件での出力は、環境温度に依存せずに略一定となっていることが分かる。また、流量条件ごとの出力は互いに縦軸方向により明確に分離しており、流体1の流量に応じた出力特性が損なわれていないことが分かる。このため、流量温度補正により、流体1の流量に応じた出力特性を損なうことなく、温度依存性をより正確に補正できることが分かる。
【0063】
図14は、図12のグラフの出力に対して流量条件ごとに流量温度補正を行った結果を示したグラフである。すなわち、図14のグラフでは、300mL/min、500mL/min、1000mL/minを測定対象流量とし、300mL/minの流量条件では、図12の式y=-gx+hを用いて流量温度補正を行い、500mL/minの流量条件では、図12の式y=-ex+fを用いて流量温度補正を行い、1000mL/minの流量条件では、図12の式y=-ix+jを用いて流量温度補正を行っている。各流量条件での流量温度補正は、図13で説明した流量温度補正と同様であるので、詳細な説明は省略する。図14のグラフの横軸および縦軸は、図12のグラフの横軸および縦軸と同じである。
【0064】
図14のグラフから、300mL/min、500mL/min、1000mL/minの各流量条件で、出力が環境温度に依存せずに略一定となっていることが分かる。このため、流量温度補正により、図13よりも温度依存性をより一層正確に補正できることが分かる。なお、図14で説明した流量温度補正は、図13で説明した流量温度補正よりも正確な補正が行える一方、補正処理が煩雑になる。このため、測定対象流量が500ml/minなどに予め決まっている場合には、図13で説明した流量温度補正で、簡便かつ正確に補正を行えばよい。
【0065】
(ガス検知器の構成)
次に、図15を参照して、本実施形態のフローセンサ100の適用例として、フローセンサ100を備えたガス検知器200について説明する。
【0066】
ガス検知器200は、本実施形態によるフローセンサ100と、ガスセンサ121と、を備える。図15に示した構成例では、ガス検知器200は、フローセンサ100を含む流量検知部110と、ガスセンサ121を含むガス検知部120とを備え、ポンプ130、制御部140、記憶部141および通信部142をさらに備えている。ガス検知器200は、ガス検知の対象となる流体1を導入する導入口101aと、流体1を導出する導出口101bと、を結ぶガス流路101を備えている。ガス流路101には、ガスセンサ121、フローセンサ100、ポンプ130がこの順で設けられている。導入口101aからガス流路101内に導入された流体1は、ガスセンサ121、フローセンサ100、ポンプ130を順番に通過して、導出口101bから外部へ導出される。
【0067】
図15に示すガス検知器200は、監視対象環境の雰囲気(空気)を取り込み、雰囲気中に含有される検知対象ガスの検知を行うガス検知器である。ガス検知器200は、採取ガス中の検知対象ガス濃度が予め設定された所定値以上の高濃度である場合に、高濃度の検知対象ガスが検知されたことを報知する機能を有する。検知対象ガスは、特に限定されないが、人体に対する毒性を有するガスや、可燃性を有するガスなど、監視が必要とされるガスである。
【0068】
流量検知部110は、フローセンサ100、検知回路60(図4参照)を含む。図15では、フローセンサ100の制御部30は、制御部140として設けられている。
【0069】
ガス検知部120は、ガスセンサ121と、ガスセンサ121の出力を取得するためのガス検知回路とを含む。ガスセンサ121の種類、検知原理は特に限定されず、任意である。ポンプ130は、ガス流路101の導入口101a側のガスを吸引し、導出口101b側へ吐出するガスポンプである。流体1は、ポンプ130が発生する負圧により導入口101a内に引き込まれ、強制流によって導出口101bから排出される。
【0070】
制御部140は、CPUなどのプロセッサにより構成されている。制御部140は、プログラムを実行することによる機能ブロックとして、ガス検知判定処理を行う判定部140aを有する。
【0071】
制御部140は、ガス検知部120のガス検知回路への電力供給を制御することにより、ガスセンサ121によるガス検知動作を制御する。判定部140aは、ガス検知部120の各出力に基づき、検知対象ガスの検知ガス濃度を取得する。判定部140aは、検知対象ガスの濃度が予め設定された所定値(判定閾値)以上である場合、検知対象ガスの濃度に応じた所定の報知処理を実行する。所定の報知処理は、通信部142を介して報知信号(警報)を出力することを含む。
【0072】
制御部140は、流量検知部110の検知回路60への電力供給を制御することにより、フローセンサ100による流量検知動作を制御する。制御部140は、上記の通り、フローセンサ100の第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VHOと、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOとを取得し、第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VHOと、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOに基づいて取得される周辺温度Tと、に基づいて、流体1の流量を測定する。
【0073】
制御部140は、ポンプ130への電力供給を制御することにより、ガス流路101内を流通する流体1の流量を制御する。制御部140は、測定された流体1の流量値に基づいて、ポンプ130を制御する。制御部140は、流体1の流量値が予め設定された所定値となるようにポンプ130を制御する。
【0074】
記憶部141は、検知ガス濃度の判定閾値、流量設定値などの各種設定情報、プロセッサが実行するプログラム等を記憶する。記憶部141は、たとえば半導体記憶素子を含む。通信部142は、外部機器とのインターフェースである。通信部142は、有線および/または無線により外部機器と接続され、外部機器に対する信号出力を行うとともに、外部機器からの信号入力を受け付ける。制御部140は、通信部142を介して、外部の報知機器に報知信号を出力することが可能である。制御部140は、通信部142を介して、上位コンピュータから設定情報などを取得して、判定部140aの判定閾値や、ポンプ130の流量などの各種の設定処理を行うことが可能である。
【0075】
ガス検知器200は、たとえば、検知対象ガスを使用する工場などに設置される。一例としては、ガス検知器200は半導体製造工場に設置され、半導体材料ガス、水素ガス等の可燃性ガスの漏洩を検知する。この場合、ガス採取される監視対象環境は、たとえばガス供給装置の設置箇所、排気ダクト、作業員の作業領域などである。
【0076】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0077】
本実施形態では、上記のように、フローセンサ100は、流体1の流量の変化に伴って抵抗値が変化する検知素子20と、検知素子20に印加する電圧を制御する制御部30と、を備え、制御部30は、検知素子20に印加する電圧を、第1の電圧Vと、第1の電圧Vよりも低い第2の電圧Vと、に切り替えるとともに、第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VHOと、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOに基づいて取得される周辺温度Tと、に基づいて、流体1の流量を測定するように構成されている。
【0078】
また、本実施形態では、ガス検知器200は、フローセンサ100と、ガスセンサ121と、を備える。
【0079】
上記構成により、1つの検知素子20で流体1の温度検知と流体1の流量測定との両方を行うことができるので、流体1の温度検知のために別個に温度検知素子を設ける必要が無い。その結果、温度検知素子を別個に設ける場合に比べて、部品点数の増加を抑制しながら、温度補正した流体1の流量を測定することができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、第1の電圧Vは、検知素子20が流体1よりも高い温度となる電圧である。これにより、検知素子20が流体1よりも高い温度となるので、検知素子20から流体1に熱量を与えることができる。その結果、流体1の流量が変化した場合に、与える熱量の変化を発生させることができるので、検知素子20の出力を容易に変化させることができる。これにより、流体1の流量を容易に測定することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、第2の電圧Vは、検知素子20が流体1の流量に対して影響を受けない温度となる電圧である。これにより、検知素子20が流体1の流量に対して影響を受けない温度となるので、流体1の流量によらず、第2の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力VLOに基づいて周辺温度Tを正確に取得することができる。その結果、流体1の流量によらず、温度補正を正確に行うことができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、第1の電圧Vと、第2の電圧Vとを交互に切り替えながら、流体1の流量を測定するように構成されている。これにより、第1の電圧Vと、第2の電圧Vとを交互に切り替えながら、流体1の流量が測定されるので、流体1の流量や温度が変化した場合にも、流体1の流量や温度の変化を測定結果に迅速に反映することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、制御部30は、周辺温度Tに基づいて、第1の電圧Vを印加した時の検知素子20の出力に対して、流体1の流量がゼロの時の検知素子20の出力の温度依存性を補正するベース温度補正を行うとともに、流体1の流量が測定対象量の時の検知素子20の出力の温度依存性を補正する流量温度補正を行うように構成されている。これにより、ベース温度補正による温度補正後に、測定対象量の時の検知素子20の出力の温度依存性が残存する場合にも、流量温度補正により測定対象量の時の検知素子20の出力の温度依存性を補正することができる。その結果、流体1の温度補正を精度良く行うことができるとともに、温度補正した流体1の流量を精度良く測定することができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、検知素子20は、加熱された状態で流体1と接触することによる流体1への熱伝導に応じて抵抗値が変化する気体熱伝導素子50である。これにより、簡素な構成の気体熱伝導素子50を用いて、流体1の温度検知と流体1の流量測定とを行うことができる。
【0085】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、第1の電圧と、第2の電圧とを交互に切り替えながら、流体の流量を測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、温度補正した流体の流量を使用可能な精度で測定可能であれば、第1の電圧と、第2の電圧とを交互に切り替えなくてもよい。たとえば、第1の電圧の検知素子への印加と、第2の電圧の検知素子への印加とを間欠的に繰り返してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、周辺温度に基づいて、ベース温度補正と、流量温度補正とを行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、温度補正した流体の流量を使用可能な精度で測定可能であれば、ベース温度補正と、流量温度補正のいずれか一方のみを行ってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、検知素子が気体熱伝導素子である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検知素子は、流体の流量の変化に伴って抵抗値(出力)が変化する検知素子であれば、どのような構造、検出原理の検知素子であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態において示した気体熱伝導素子の構造はあくまでも一例であり、これに限定されない。気体熱伝導素子はどのような構造を有していてもよい。たとえば抵抗体パターンの形状などは任意である。絶縁性支持層、抵抗体パターン、不活性被覆層の構成材料も特に限定されない。
【0090】
また、上記実施形態では、検知素子が、MEMSセンサである例を示したが、本発明はこれに限られない。検知素子が半導体製造プロセスを用いない従来型の(大型の)検知素子であってもよい。たとえば気体熱伝導素子は、セラミックスなどの絶縁性基板上に、白金線などの抵抗体パターンを形成し、ガラスなどの不活性被覆材によって抵抗体パターンを被覆した構造を有していてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、フローセンサにより測定した流量値に基づいてポンプを制御するガス検知器の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガス検知器がポンプを備えなくてもよい。この場合、フローセンサにより測定した流量に応じて、ガスセンサの出力を補正してもよい。すなわち、ガスセンサに供給する流体の流量を一定にする代わりに、ガスセンサの出力から、流量に起因する変動成分を除去する補正を行ってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 流体
20 検知素子
30 制御部
50 気体熱伝導素子
100 フローセンサ
121 ガスセンサ
200 ガス検知器
第1の電圧
第2の電圧
HO 第1の電圧を印加した時の検知素子の出力
LO 第2の電圧を印加した時の検知素子の出力
T 周辺温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15