(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074893
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】燃焼室、ボイラ及び給湯器
(51)【国際特許分類】
F23M 5/04 20060101AFI20230523BHJP
F22B 37/36 20060101ALI20230523BHJP
F23M 5/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
F23M5/04
F22B37/36 A
F23M5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188069
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡部 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 寛明
(57)【要約】
【課題】断熱材固定用治具の腐食を抑制することができ、メンテナンス性が良好な燃焼室を提供すること。
【解決手段】金属容器と、上記金属容器の内壁面に接するように配置された、無機繊維を含む板状断熱材と、上記板状断熱材を上記金属容器の内壁面に固定するための棒状部材及び固定部材と、を有する燃焼室であって、上記板状断熱材は、上記金属容器側を底面とし、上記板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有し、上記有底孔の底面には上記棒状部材が貫通する貫通孔が形成され、上記棒状部材は、一方の端部が上記有底孔の内部に配置された上記金属容器に固定されるとともに、他方の端部が上記固定部材に固定されており、上記棒状部材の長手方向に垂直な平面において、上記固定部材は、上記貫通孔を通過できない形状であり、上記有底孔の開口が、耐熱性材料で覆われている、ことを特徴とする燃焼室。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属容器と、
前記金属容器の内壁面に接するように配置された、無機繊維を含む板状断熱材と、
前記板状断熱材を前記金属容器の内壁面に固定するための棒状部材及び固定部材と、を有する燃焼室であって、
前記板状断熱材は、前記金属容器側を底面とし、前記板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有し、
前記有底孔の底面には前記棒状部材が貫通する貫通孔が形成され、
前記棒状部材は、一方の端部が前記金属容器に固定されるとともに、他方の端部が前記有底孔の内部に配置された前記固定部材に固定されており、
前記棒状部材の長手方向に垂直な平面において、前記固定部材は、前記貫通孔を通過できない形状であり、
前記有底孔の開口が、耐熱性材料で覆われている、ことを特徴とする燃焼室。
【請求項2】
前記有底孔の前記開口が、前記耐熱性材料で充填されている、請求項1に記載の燃焼室。
【請求項3】
前記有底孔の底面積は、前記有底孔の開口面積よりも大きく、
前記有底孔の前記開口から前記底面まで、前記耐熱性材料が充填されている、請求項1又は2のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項4】
前記耐熱性材料は、無機材料を含む第1の不定形材料である、請求項1~3のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項5】
前記棒状部材の表面には螺旋状の溝が形成されており、前記棒状部材と前記固定部材とが螺合することで、前記棒状部材が前記固定部材と固定されている、請求項1~4のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項6】
前記棒状部材は、前記棒状部材の先端が前記固定部材よりも前記金属容器の内側に突出する突出部を有しており、
前記突出部が、前記有底孔内に充填された前記耐熱性材料により覆われている、請求項1~5のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項7】
前記板状断熱材が板状抄造体である、請求項1~6のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項8】
前記無機繊維は、生体溶解性繊維、アルミナ繊維、ロックウール及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1~7のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項9】
前記無機繊維の平均繊維長は、0.05~3.0mmである、請求項8に記載の燃焼室。
【請求項10】
前記板状断熱材のかさ密度は、0.2~0.6g/cm3である、請求項1~9のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項11】
前記板状断熱材の前記金属容器側の表面には凹部が設けられている、請求項1~10のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項12】
前記板状断熱材の前記金属容器側の表面とは反対側の表面には溝が設けられている、請求項1~11のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項13】
複数の前記棒状部材を有し、
前記板状断熱材は、複数の前記有底孔を有し、
各前記有底孔の底面の貫通孔には、前記棒状部材が貫通しており、
前記板状断熱材は、各前記棒状部材の前記他方の端部に固定される前記固定部材によって、前記金属容器の内壁面に固定されている、請求項1~12のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項14】
複数の前記棒状部材を有し、
前記板状断熱材は、前記無機繊維を含む複数の断熱素体の集合体からなり、
各前記断熱素体は、前記金属容器側を底面とし、前記板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有し、
各前記有底孔の底面には、前記棒状部材が貫通する貫通孔が形成され、
各前記有底孔の底面の貫通孔には、前記棒状部材が貫通しており、
各前記断熱素体は、各前記棒状部材の前記他方の端部に固定される各前記固定部材によって、前記金属容器の内壁面に固定されている、請求項1~12のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項15】
前記複数の断熱素体は、前記板状断熱材の面方向に沿って互いに隙間なく接触している、請求項14に記載の燃焼室。
【請求項16】
前記複数の断熱素体は、前記板状断熱材の面方向に沿って隙間が形成されるよう配置されており、前記隙間には、無機材料を含む第2の不定形材料が充填されている、請求項14に記載の燃焼室。
【請求項17】
前記板状断熱材は、前記金属容器の天面又は底面に配置され、
前記板状断熱材の側面と前記金属容器の内側面との間には、無機材料を含む第3の不定形材料が充填されている、請求項1~16のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の燃焼室を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項19】
請求項1~17のいずれかに記載の燃焼室を備えることを特徴とする給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室、ボイラ及び給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
石油等の燃料を利用して水蒸気や湯を供給する装置として、ボイラや給湯器が用いられている。
【0003】
ボイラや給湯器は、燃料を燃焼室で燃焼させ、この燃焼熱を燃焼室内に配置された水管を介して水に伝えて熱交換を行うことで、水から水蒸気や湯を生成している。
【0004】
燃焼室は高温となるため、周囲の機器を熱害から保護する観点や、エネルギーロスを低減する観点から、通常、耐火物や断熱材によって保護されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0005】
特に、燃焼ガスによって高温となる燃焼室内では、一般的に、耐火物や断熱材として、耐熱性材料を含む流動物を設置対象物の表面に流し込んで固化させたものが使用されていた。このような材料をキャスタブル材料ともいう。
【0006】
燃焼室の天井側に設置されたキャスタブル材料は、その重量により落下する恐れがあるため、固定用の治具等により燃焼室に固定されることがある。このとき使用される固定用治具には、燃焼室内に発生する燃焼ガスに耐え得る金属が一般的に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4946594号公報
【特許文献2】特許第4640705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、金属製治具が燃焼ガスに繰り返し晒されると腐食が進行し、治具の交換や修理等のメンテナンスが困難になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、断熱材固定用治具の腐食を抑制することができ、メンテナンス性が良好な燃焼室を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の燃焼室は、金属容器と、上記金属容器の内壁面に接するように配置された、無機繊維を含む板状断熱材と、上記板状断熱材を上記金属容器の内壁面に固定するための棒状部材及び固定部材と、を有する燃焼室であって、上記板状断熱材は、上記金属容器側を底面とし、上記板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有し、上記有底孔の底面には上記棒状部材が貫通する貫通孔が形成され、上記棒状部材は、一方の端部が上記有底孔の内部に配置された上記金属容器に固定されるとともに、他方の端部が上記固定部材に固定されており、上記棒状部材の長手方向に垂直な平面において、上記固定部材は、上記貫通孔を通過できない形状であり、上記有底孔の開口が、耐熱性材料で覆われている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の燃焼室は、板状断熱材を金属容器の内壁面に固定するための棒状部材及び固定部材を備える。棒状部材は、板状断熱材の有底孔の底面を貫通し、一方の端部が金属容器に固定され、他方の端部が有底孔の内部に配置された固定部材に固定される。従って、本発明の燃焼室では、棒状部材によって、板状断熱材を介して金属容器と固定部材とが対向して配置される。
棒状部材の長手方向に垂直な方向における固定部材の形状は、貫通孔を通過できない形状である。従って、板状断熱材の有底孔の内部に配置された固定部材によって、板状断熱材を金属容器の内壁面に固定することができる。
有底孔の開口は耐熱性材料で覆われているから、有底孔の内部に配置される固定部材、及び、固定部材に固定される棒状部材が、金属容器の内部で生じる燃焼ガス等の影響によって腐食することを抑制できる。そのため、メンテナンス性が良好となる。
【0012】
本発明の燃焼室では、上記有底孔の上記開口が、上記耐熱性材料で充填されていることが好ましい。
有底孔の開口が耐熱性材料で充填されていると、金属容器内で発生した燃焼ガスが有底孔の内部に侵入することをさらに抑制することができる。
【0013】
本発明の燃焼室において、上記有底孔の底面積は、上記有底孔の開口面積よりも大きく、上記有底孔の上記開口から上記底面まで、上記耐熱性材料が充填されていることが好ましい。
上記構成であると、有底孔の開口から底面にまで充填された耐熱性材料が開口を通過することができないため、耐熱性材料が有底孔から脱落することを抑制することができ、棒状部材及び固定部材の耐腐食性を向上させることができる。
【0014】
本発明の燃焼室において、上記耐熱性材料は、無機材料を含む第1の不定形材料であることが好ましい。
耐熱性材料が、無機材料を含む第1の不定形材料であると、棒状部材及び固定部材を燃焼ガス等から保護する材料として適当である。また、無機材料を含む第1の不定形材料は有底孔への充填が容易であるため、作業性を向上させることができる。
【0015】
本発明の燃焼室において、上記棒状部材の表面には螺旋状の溝が形成されており、上記棒状部材と上記固定部材とが螺合することで、上記棒状部材が上記固定部材と固定されていることが好ましい。
上記構成であると、棒状部材と固定部材とを固定する作業が容易である。さらに、固定の解除が容易であるため、板状断熱材を取り外しての検査や、板状断熱材の交換等が容易となり、メンテナンス性に優れる。
【0016】
本発明の燃焼室において、上記棒状部材は、上記棒状部材の先端が上記固定部材よりも上記金属容器の内側に突出する突出部を有しており、上記突出部が、上記有底孔内に充填された上記耐熱性材料により覆われていることが好ましい。
上記構成であると、突出部を覆う耐熱性材料が引っ掛かりとなって、耐熱性材料が有底孔から脱落することを抑制することができる。
【0017】
本発明の燃焼室において、上記板状断熱材は、板状抄造体であることが好ましい。
板状抄造体は、スラリー液中でバインダーを無機繊維に添着させて、無機繊維の偏りが少なくなるよう抄造して得られる抄造体である。このような板状抄造体は、無機繊維の偏りが少なく変形しにくい特性を有しているので、燃焼室の内部に配置される板状断熱材として適している。
【0018】
本発明の燃焼室において、上記無機繊維は、生体溶解性繊維、アルミナ繊維、ロックウール及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
無機繊維が上記材料を含むと、耐熱性に優れた板状断熱材を得ることができる。
【0019】
本発明の燃焼室において、上記無機繊維の平均繊維長は、0.05~3.0mmであることが好ましい。
無機繊維の平均繊維長が上記範囲であると、無機繊維の偏りが少なく積層した板状成形体が得られ、かさ密度と断熱特性が安定する。
【0020】
本発明の燃焼室において、上記板状断熱材のかさ密度は、0.2~0.6g/cm3であることが好ましい。
板状断熱材のかさ密度が上記範囲であると、不定形品を使用した耐火材や断熱材と比較して燃焼室の重量増加を抑えることができる。
【0021】
本発明の燃焼室において、上記板状断熱材の上記金属容器側の表面には凹部が設けられていることが好ましい。
板状断熱材の金属容器側の表面に凹部が設けられていると、該凹部が空気層として機能して断熱性を向上させることができる。
【0022】
本発明の燃焼室において、上記板状断熱材の上記金属容器側の表面とは反対側の表面には溝が設けられていることが好ましい。
板状断熱材の金属容器の表面とは反対側の表面に溝が設けられていると、板状断熱材のうち特に熱が加わりやすい燃焼室側表面において、熱収縮によって板状断熱材にクラックが生じることを抑制することができる。
【0023】
本発明の燃焼室は、複数の上記棒状部材を有し、上記板状断熱材は、複数の上記有底孔を有し、各上記有底孔の底面の貫通孔には、上記棒状部材が貫通しており、上記板状断熱材は、各上記棒状部材の上記他方の端部に固定される上記固定部材によって、上記金属容器の内壁面に固定されていることが好ましい。
上記構成であると、1つの板状断熱材を複数組の棒状部材及び固定部材により固定することができるため、板状断熱材の固定の安定性が向上する。
【0024】
本発明の燃焼室において、複数の上記棒状部材を有し、上記板状断熱材は、上記無機繊維を含む複数の断熱素体の集合体からなり、各上記断熱素体は、上記金属容器側を底面とし、上記板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有し、各上記有底孔の底面には、上記棒状部材が貫通する貫通孔が形成され、各上記有底孔の底面の貫通孔には、上記棒状部材が貫通しており、各上記断熱素体は、各上記棒状部材の上記他方の端部に固定される各上記固定部材によって、上記金属容器の内壁面に固定されていることが好ましい。
上記構成であると、板状断熱材を構成する各断熱素体を、棒状部材及び固定部材の組により金属容器の内壁面に固定することができる。
【0025】
本発明の燃焼室において、上記複数の断熱素体は、上記板状断熱材の面方向に沿って互いに隙間なく接触していることが好ましい。
面方向に対向する2つの断熱素体が隙間なく接触していると、板状断熱材の断熱性を高めることができる。
【0026】
本発明の燃焼室において、上記複数の断熱素体は、上記板状断熱材の面方向に沿って隙間が形成されるよう配置されており、上記隙間には、無機材料を含む第2の不定形材料が充填されていることが好ましい。
面方向に対向する2つの断熱素体の間の隙間に第2の不定形材料が充填されていると、断熱素体同士の間に生じる隙間による断熱性能の低下を抑制することができる。
【0027】
本発明の燃焼室において、上記板状断熱材は、上記金属容器の天面又は底面に配置され、
上記板状断熱材の側面と上記金属容器の内側面との間には、無機材料を含む第3の不定形材料が充填されていることが好ましい。
金属容器の寸法と板状断熱材の寸法を、両者の間に隙間が生じないように完全に調整することが困難である場合がある。そのような場合であっても、上記のように、板状断熱材の側面と金属容器の内側面との間に上記第3の不定形材料が充填されていると、断熱性能の低下を抑制することができる。
【0028】
本発明のボイラは、本発明の燃焼室を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明のボイラは、本発明の燃焼室を備えるため、断熱材固定用治具の腐食を抑制することができ、メンテナンス性が良好である。
【0030】
本発明の給湯器は、本発明の燃焼室を備えることを特徴とする。
【0031】
本発明の給湯器は、本発明の燃焼室を備えるため、断熱材固定用治具の腐食を抑制することができ、メンテナンス性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2に示す燃焼室に用いられる板状断熱材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、棒状部材の一方の端部を金属容器の内壁面に固定する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、板状断熱材を金属容器の内壁面に配置する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、棒状部材の他方の端部に固定部材を固定する工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、板状抄造体の有底孔の開口を耐熱性材料で覆う工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の燃焼室に用いられる板状断熱材の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の燃焼室に用いられる板状断熱材のさらに別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、棒状部材及び固定部材の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第5実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の第6実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第7実施形態に係るボイラの一例を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の第8実施形態に係る給湯器の一例を模式的に示す断面図である。
【0033】
(発明の詳細な説明)
[燃焼室]
まず、本発明の燃焼室について説明する。
本発明の燃焼室は、金属容器と、上記金属容器の内壁面に接するように配置された、無機繊維を含む板状断熱材と、上記板状断熱材を上記金属容器の内壁面に固定するための棒状部材及び固定部材と、を有する燃焼室であって、上記板状断熱材は、上記金属容器側を底面とし、上記板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有し、上記有底孔の底面には上記棒状部材が貫通する貫通孔が形成され、上記棒状部材は、一方の端部が上記有底孔の内部に配置された上記金属容器に固定されるとともに、他方の端部が上記固定部材に固定されており、上記棒状部材の長手方向に垂直な平面において、上記固定部材は、上記貫通孔を通過できない形状であり、上記有底孔の開口が、耐熱性材料で覆われている、ことを特徴とする。
【0034】
本発明の燃焼室は、板状断熱材を金属容器の内壁面に固定するための棒状部材及び固定部材を備える。棒状部材は、板状断熱材の有底孔の底面を貫通し、一方の端部が金属容器に固定され、他方の端部が有底孔の内部に配置された固定部材に固定される。従って、本発明の燃焼室では、棒状部材によって、板状断熱材を介して金属容器と固定部材とが対向して配置される。
棒状部材の長手方向に垂直な方向における固定部材の形状は、貫通孔を通過できない形状である。従って、板状断熱材の有底孔の内部に配置された固定部材によって、板状断熱材を金属容器の内壁面に固定することができる。
有底孔の開口は耐熱性材料で覆われているから、有底孔の内部に配置される固定部材、及び、固定部材に固定される棒状部材が、金属容器の内部で生じる燃焼ガス等の影響によって腐食することを抑制できる。そのため、メンテナンス性が良好となる。
【0035】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1におけるA-A線断面図である。
図3は、
図1及び
図2に示す燃焼室に用いられる板状断熱材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように燃焼室1は、金属容器50と、金属容器50の内壁面に配置された板状断熱材10とを有する。板状断熱材10は、無機繊維を含んで構成されている。
【0036】
金属容器50の内部空間は、天面50aと、底面50bと、内側面50cとによって区画されている。
板状断熱材10は、金属容器50の内壁面である天面50aに接するように配置されている。
【0037】
図2に示すように、燃焼室1は、さらに棒状部材20と固定部材30とを有している。
板状断熱材10は、棒状部材20及び固定部材30によって、金属容器50の内壁面である天面50aに固定されている。
【0038】
図2及び
図3に示すように、板状断熱材10は、相対的に面積が広い第1主面10a及び第2主面10bと、第1主面10a及び第2主面10bを連結する側面10cを有する板状形状である。板状断熱材10には、さらに、第1主面10aに開口する有底孔13と、有底孔の底部と第2主面10bとを接続する貫通孔16とが設けられている。
【0039】
棒状部材及び固定部材によって、板状断熱材が金属容器の内壁面に固定される理由を、
図4、
図5、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0040】
図4は、棒状部材の一方の端部を金属容器の内壁面に固定する工程の一例を模式的に示す断面図である。
図5は、板状断熱材を金属容器の内壁面に配置する工程の一例を模式的に示す断面図である。
図6は、棒状部材の他方の端部に固定部材を固定する工程の一例を模式的に示す断面図である。
図7は、板状抄造体の有底孔の開口を耐熱性材料で覆う工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0041】
まず、
図4に示すように、棒状部材20の一方の端部20aを、金属容器50の天面50aに固定する。
【0042】
続いて、
図5に示すように、板状断熱材10の有底孔の底面13bに設けられた貫通孔16に棒状部材20を通し、板状断熱材10を金属容器50の内壁面である天面50aに配置する。このとき、板状断熱材10に設けられた有底孔13の底面13bが金属容器50側に配置されるようにする。
【0043】
このとき、板状断熱材10は金属容器50の天面50aに接しているだけである。従って、作業者が手や治具等で板状断熱材10を保持していないと、板状断熱材10は金属容器50の天面50aから脱落する状態である。
【0044】
続いて、
図6に示すように、棒状部材20の他方の端部20bを、有底孔13内に配置された固定部材30に固定する。
ここで、棒状部材20の長手方向に垂直な平面において、固定部材30は、貫通孔16を通過できない形状である。従って、棒状部材20の一方の端部20aが金属容器50の天面50aに固定され、かつ、棒状部材の他方の端部20bが固定部材30に固定されていることによって、板状断熱材10は、棒状部材20の両端に固定された金属容器50及び固定部材30に挟まれて固定される。この時点で、作業者が手や治具等で板状断熱材10を保持していなくとも、板状断熱材10が金属容器50の天面50aに固定された状態となる。
【0045】
最後に、
図7に示すように、板状断熱材10の有底孔13の開口13aを、耐熱性材料40で覆うことで、棒状部材20及び固定部材30が配置されている有底孔13が、燃焼室と分断される。そのため、棒状部材20及び固定部材30が、金属容器50内部で生じる燃焼ガス等による腐食の影響を受けることを抑制できる。
【0046】
以上の工程により、棒状部材及び固定部材によって金属容器の内壁面に板状断熱材を固定することができる。さらに、棒状部材及び固定部材が金属容器の内部で生じる燃焼ガス等の影響によって腐食することを抑制でき、メンテナンス性が良好となる。
【0047】
なお、板状断熱材を金属容器の内壁面に固定する工程は、最終的に板状断熱材が棒状部材及び固定部材によって金属容器の内壁面に固定されるような順序であればよく、
図4~
図6に示した順序に限定されない。
例えば、まず最初に板状断熱材を金属容器の内壁面に配置し、その後、棒状部材を板状断熱材の貫通孔に通すと共に、棒状部材の一方の端部を金属容器の内壁面に固定し、最後に棒状部材の他方の端部に固定部材を固定する、という順序でも、棒状部材及び固定部材によって金属容器の内壁面に板状断熱材を固定することができる。
【0048】
[板状断熱材]
板状断熱材は、無機繊維を含む。
無機繊維は、生体溶解性繊維、アルミナ繊維、ロックウール及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
生体溶解性繊維としてはアルカリアースシリケート繊維を使用することができる。
無機繊維が上記材料を含むと、耐熱性に優れた板状断熱材を得ることができる。
【0049】
板状断熱材は、不定形材料が固化してなる成形体であってもよく、抄造体であってもよく、ニードル体であってもよい。また、板状成形体であってもよく、板状抄造体であってもよく、板状ニードル体であってもよい。
不定形材料が固化してなる成形体とは、無機材料を含む不定形材料を成形型に流し込み固めて乾燥、成形したものであり、板状成形体とは、該不定形材料を板状に固めて乾燥、成形したものである。
抄造体とは、無機繊維を含むスラリーを成形型に流し込み、吸引脱水する抄造成形、乾燥(抄造法)により得られる成形体であり、板状抄造体とは、抄造法により得られた板状の抄造体である。
ニードル体とは、無機繊維集合体にニードリング処理を施してなる成形体であり、板状ニードル体とは、ニードリング処理を施して得られた板状のニードル体である。
【0050】
これらの中では、板状断熱材は抄造体であることが好ましく、板状抄造体であることがより好ましい。
板状抄造体は、無機繊維の偏りが少なく変形しにくい特性を有しているので、燃焼室の内部に配置される板状断熱材として適している。
【0051】
無機繊維の平均繊維径は特に限定されないが、板状断熱材が抄造体の場合には、2.0~15.0μmであることが好ましい。
板状断熱材が抄造体の場合に無機繊維の平均繊維径が上記範囲であると緻密で密度の偏りが少ない抄造体が得られる。
【0052】
無機繊維の平均繊維長は特に限定されないが、板状断熱材が抄造体の場合には、0.05~3.0mmであることが好ましい。
板状断熱材が抄造体の場合に無機繊維の平均繊維長が上記範囲であると、無機繊維の偏りが少なく積層した板状成形体が得られ、かさ密度と断熱特性が安定する。
【0053】
板状断熱材のかさ密度は特に限定されないが、板状断熱材が抄造体の場合には、0.2~0.6g/cm3であることが好ましい。
板状断熱材のかさ密度が上記範囲であると、不定形材料からなる耐火材や断熱材と比較して燃焼室の重量増加を抑えることができる。
【0054】
かさ密度の調整は、例えば、無機繊維を含む不定形材料の成形体の場合には乾燥・固化前の不定形材料に含まれる水分量を調整することにより、抄造体の場合にはスラリー脱水時の圧縮条件及び乾燥時の圧縮条件を調整することにより、ニードル体の場合にはニードリング処理の際のニードル密度及び処理の回数を調整することにより行うことができる。
【0055】
なお、無機繊維を含む不定形材料を乾燥・固化することで得られる成形体のかさ密度は、通常、0.7~1.5g/cm3程度であり、上述した板状断熱材の好ましいかさ密度を満たさない。また、ニードル体のかさ密度は通常、0.07~0.18g/cm3程度である。従って、板状断熱材のかさ密度を好適な範囲に調整する観点からは、板状断熱材は抄造体又はニードル体であることが好ましく、抄造体であることがより好ましい。
【0056】
板状断熱材の厚みは、1~10cmであることが好ましい。
板状断熱材の厚みが上記範囲であると、充分な断熱性を発揮することができる。
【0057】
板状断熱材の体積は、700~150000cm3であることが好ましい。板状断熱材の体積が上記範囲であると、熱収縮による破損が特に生じにくい。
なお上記板状断熱材の体積には、有底孔及び貫通孔、並びに、後述する第2の貫通孔、凹部及び溝の体積を含むものとする。
【0058】
板状断熱材には、厚さ方向に貫通する第2の貫通孔が設けられていてもよい。
このような孔が形成されていることにより、水管や煙管等の配管が配置された燃焼室の内壁面を覆いやすくなる。
なお、第2の貫通孔は、有底孔の底部に設けられる貫通孔(区別のため、第1の貫通孔ともいう)とは異なり、平面視において有底孔と重ならないものである。従って、第2の貫通孔は平面視において凹部や溝と重なっていてもよい。
また、有底孔の底部に設けられる貫通孔(第1の貫通孔)と第2の貫通孔とは、一方の端部が有底孔に接続されているかどうかで区別する。一方の端部が有底孔に接続されている貫通孔が第1の貫通孔であり、両方の端部が有底孔に接続されていない貫通孔が第2の貫通孔である。
【0059】
板状断熱材は、無機繊維以外の成分を含んでいてもよい。
無機繊維以外の成分としては、例えば、無機粒子、無機バインダ、有機バインダ、凝集剤等が挙げられる。
【0060】
無機粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、天然鉱物粒子等が挙げられる。
無機バインダとしては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
有機バインダとしては、ポリビニルアルコール、澱粉、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0061】
板状断熱材における無機繊維の占める重量割合は、30~97重量%であることが好ましい。
【0062】
板状断熱材の表面には、凹部や溝が設けられていてもよい。
なお、本明細書において、凹部及び溝は、凹部及び溝が延びる方向に垂直な断面において、凹部及び溝の深さ方向の長さ(以下、深さ寸法)と幅方向の長さ(以下、幅寸法)の比により区別する。具体的には、幅寸法/深さ寸法が5以上のものを凹部、5未満のものを溝とする。
【0063】
図8は、本発明の燃焼室に用いられる板状断熱材の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図8に示す板状断熱材10は、相対的に面積が広い第1主面10a及び第2主面10bと、第1主面10a及び第2主面10bを連結する側面10cを有する板状形状である。
板状断熱材10には、有底孔13と、貫通孔16と、凹部17とが設けられている。
凹部17は、板状断熱材10の第2主面10bに設けられている。凹部17の平面視形状は環状であり、平面視において、貫通孔16及び有底孔13とは重ならない位置に設けら
【0064】
凹部17は、板状断熱材10の金属容器側の表面である第2主面10bに設けられていることが好ましい。
凹部17が板状断熱材10の金属容器側の表面に設けられていると、凹部17が空気層として機能し、板状断熱材10の断熱性能を向上させることができる。
【0065】
図9は、本発明の燃焼室に用いられる板状断熱材のさらに別の一例を模式的に示す斜視図である。
図9に示す板状断熱材10は、相対的に面積が広い第1主面10a及び第2主面10bと、第1主面10a及び第2主面10bを連結する側面10cを有する板状形状である。
板状断熱材10には、有底孔13と、貫通孔16と、溝18とが設けられている。
溝18は、板状断熱材10の第1主面10aに合計4本設けられている。各溝18の平面視形状は、板状断熱材10の側面10cから板状断熱材10の中心に向かって伸びる直線形状である。ただし、溝18は有底孔13までは到達していない。溝が有底孔に到達していると、溝を通じて有底孔の内部に燃焼ガスが侵入するおそれがある。
【0066】
溝18は、板状断熱材10の金属容器側の表面とは反対側の表面である第1主面10aに設けられていることが好ましい。
溝18が板状断熱材10の金属容器側の表面とは反対側の表面に設けられていると、板状断熱材10の燃焼室の内側に向けられた表面に熱収縮によってクラックが生じることを抑制することができる。
【0067】
溝については、部分的に溝の幅や深さが異なっていてもよい。
部分的に溝の幅や深さが異なることにより、板状断熱材の部位により加わる熱量の違いに起因する応力を緩和することができ、クラックの発生をより効果的に抑制することができる。
【0068】
板状断熱材は、金属容器側を底面とし、板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有する。
有底孔の底面には、棒状部材が貫通する貫通孔が形成されている。
【0069】
有底孔の深さは、0.5~7cmであることが好ましい。
また、有底孔の深さは、板状断熱材の厚さの30~70%であることが好ましい。
【0070】
有底孔の開口面積は、1箇所当たり3~50cm2であることが好ましい。
【0071】
板状断熱材を厚さ方向から見た際に、有底孔は、凹部又は溝と重ならない位置に設けられていることが好ましい。
【0072】
なお、有底孔と、上述した溝及び凹部とは、開口が耐熱性材料で覆われているかどうかで区別する。すなわち、開口が耐熱性材料で覆われたものが有底孔であり、開口が耐熱性材料で覆われていないものが溝又は凹部である。
【0073】
[耐熱性材料]
耐熱性材料は、有底孔の開口を覆うことができればその形状は特に限定されないが、例えば、開口だけを覆うフタ形状や、有底孔に充填した後に乾燥・固化させた不定形形状が挙げられる。また、棒状部材と固定部材を耐熱性材料で直接覆うことも可能であり、例えば、棒状部材と固定部材の表面に無機繊維を含むシート状耐熱材料を無機接着剤により貼り付けたり、有底孔内やその周囲に無機接着剤を塗布、無機繊維を含むシート状耐熱材料を固定してもよい。棒状部材と固定部材周囲を無機繊維を含むシート状耐熱材料で覆い無機繊維を含む紐状物で結束固定する等が挙げられる。
【0074】
耐熱性材料としては、例えば、無機材料を含む第1の不定形材料を用いることができる。
耐熱性材料が、無機材料を含む第1の不定形材料であると、棒状部材及び固定部材を燃焼ガス等から保護する材料として適当である。また、無機材料を含む第1の不定形材料は有底孔への充填が容易であるため、作業性を向上させることができる。
【0075】
第1の不定形材料を構成する無機材料としては、例えば、板状断熱材を構成する無機繊維や無機粒子、無機コロイドゾル等が挙げられる。
【0076】
本発明の燃焼室において、有底孔の開口は、耐熱性材料で充填されていてもよい。
有底孔の開口が耐熱性材料で充填されている例を、第2実施形態として以下に説明する。
【0077】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
図10に示す燃焼室2では、板状断熱材10の有底孔13の開口13aには、耐熱性材料41が充填されている。
上記構成であると、金属容器50内で発生した燃焼ガスが有底孔13の内部に侵入することをさらに抑制することができる。
【0078】
本発明の燃焼室において、有底孔の底面積は、有底孔の開口面積よりも大きく、有底孔の開口から底面まで、耐熱性材料が充填されていることが好ましい。
このような例を第3実施形態として以下に説明する。
【0079】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
図11に示す燃焼室3では、有底孔14の底面14bの面積(底面積)が開口14aの面積(開口面積)よりも大きい。底面積が開口面積よりも大きい有底孔14において、有底孔14の開口14aから底面14bまで耐熱性材料が充填されていると、有底孔14の底面14b側に配置された耐熱性材料41の形状が、有底孔14の開口14aを通過できない形状となる。そのため、耐熱性材料41が有底孔14から脱落しにくくなる。
【0080】
有底孔の底面積は、開口面積の110~300%であることが好ましい。
【0081】
図11に示したような形状の板状断熱材は、例えば、貫通孔だけを形成した第1の板状断熱シートと、有底孔の空間部分となるテーパー形状の貫通孔だけを形成した第2の板状断熱シートとを準備し、第2の板状断熱シートの表面のうち、貫通孔の開口面積の大きい方を第1の板状断熱シートに向けて、第1の板状断熱シートと第2の板状断熱シートを積層して接合する方法が挙げられる。第1の板状断熱シートと第2の板状断熱シートの接合は、例えば、耐熱性接着剤による接着や、耐熱性繊維で縫い合わせる等の方法で行うことができる。
【0082】
[棒状部材及び固定部材]
本発明の燃焼室において、板状断熱材は、棒状部材と固定部材によって、金属容器の内壁面に固定される。
棒状部材の一方の端部は金属容器の内壁面に固定され、棒状部材の他方の端部は固定部材に固定される。
【0083】
棒状部材としては、例えば、金属製又はセラミック製の棒、寸切りボルト(長ネジボルトともいう)等が挙げられる。
棒状部材を構成する金属としては、例えば、鉄、銅、鋼、ステンレス、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、インバー(登録商標)等が挙げられる。
棒状部材を構成するセラミックとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、炭素、炭化ケイ素、窒化珪素等が挙げられる。
【0084】
棒状部材の一方の端部と金属容器の内壁面とを固定する方法としては、例えば、溶接、螺合等が挙げられる。
螺合の場合には、例えば、金属容器の内壁面に、予め、棒状部材の一方の端部に設けられた螺旋状の溝に対応する溝(雌ねじ)が形成された孔を設けておいてもよい。
【0085】
棒状部材の他方の端部と固定部とを固定する方法としては、例えば、溶接、螺合、把持等が挙げられる。
【0086】
固定部材としては、例えば、棒状部材の他方の端部の表面に形成された螺旋状の溝と螺合し、棒状部材の長手方向における任意の位置でその位置を固定できるものが挙げられる。
また、固定部材として、例えば、棒状部材を貫通する貫通孔を有することにより棒状部材の一方の端部から他方の端部までの特定の領域を任意にスライド可能に構成されており、かつ、任意の位置で棒状部材を把持及び開放する把持・開放機構を備えることにより、棒状部材の長手方向における任意の位置でその位置を固定させることができるものが挙げられる。
【0087】
固定部材を構成する材料としては、棒状部材と同様の材料を好適に用いることができる。
固定部材を構成する材料は、棒状部材を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよいが、熱膨張係数を揃える観点からは、同じであることが好ましい。
【0088】
金属容器及び固定部材のいずれか一方は、最初から棒状部材と固定され一体化されていてもよい。棒状部材の一方の端部と他方の端部のうちのいずれか一方が開放されている状態であれば、金属容器の内壁面からの板状断熱材の着脱が可能である。
【0089】
棒状部材の一方の端部と金属容器とが予め固定され一体化されたものとしては、例えば、金属容器の内壁面に寸切りボルトの一方の端部を溶接等の手段で固定したものが挙げられる。
この場合、例えば、板状断熱材に設けられた貫通孔を棒状部材が通過するように、板状断熱材を金属容器の内壁面に配置し、棒状部材の他方の端部に固定部材を固定することにより、板状断熱材を金属容器の内壁面に固定することができる。
【0090】
棒状部材の他方の端部と固定部材とが予め固定され一体化されたものしては、例えば、六角ボルト、六角穴付きボルト及び蝶ボルトなどのヘッド付ボルト(単にボルトともいう)が挙げられる。ヘッド付きボルトにおいては、ボルトヘッドが固定部材であり、棒状部材である寸切りボルトと最初から固定され一体化されていると考えることができる。
棒状部材の他方の端部と固定部材とが予め固定され一体化したものとして六角ボルトを用いる場合、例えば、板状断熱材の貫通孔に棒状部材の一方の端部を通した後、棒状部材の一方の端部を、金属容器の内壁面に設けられた、内側面に螺旋状の溝(雌ねじ)が設けられたねじ穴に螺合させることにより、板状断熱材を金属容器の内壁面に固定することができる。
【0091】
図12は、棒状部材及び固定部材の別の一例を模式的に示す斜視図である。
棒状部材21の側面には螺旋状の溝22(雄ねじ)が形成されている。
棒状部材21の一方の端部21aは、金属容器(図示しない)に形成された螺旋状の溝(雌ねじ)と螺合することで固定される。
棒状部材の他方の端部21bは、固定部材31の内側面に形成された螺旋状の溝32(雌ねじ)と螺合することで固定される。
棒状部材21はいわゆる寸切りボルトであり、固定部材31はいわゆるナットである。
上記構成であると、棒状部材21と固定部材31とを固定する工程が容易である。さらに、固定の解除が容易であるため、板状断熱材10を取り外しての検査や、板状断熱材10の交換等が容易となり、メンテナンス性に優れる。
【0092】
なお、
図12に示す棒状部材21では、棒状部材21の側面全体に螺旋状の溝22が形成されているが、螺旋状の溝22は金属容器50及び固定部材31と螺合するために必要な部分だけに形成されていてもよい。
図12に示す棒状部材及び固定部材を用いた燃焼室の一例を、第4実施形態として以下に説明する。
【0093】
[第4実施形態]
図13は、本発明の第4実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
図13に示す燃焼室4では、板状断熱材10が、棒状部材21及び固定部材31によって、金属容器50の天面50aに固定されている。
板状断熱材10の燃焼室側の表面(第1主面10a)には、金属容器50側を底面13bとする有底孔13が設けられている。
有底孔13の開口13aから底面13bまで、耐熱性材料41が充填されている。
【0094】
棒状部材21の一方の端部は金属容器50の天面50aと螺合することで固定されており、棒状部材21の他方の端部は固定部材31と螺合することで固定されている。
【0095】
棒状部材21の他方の端部21bの先端は、固定部材31よりも金属容器50の内側に突出する突出部21b1を有している。
棒状部材21が突出部21b1を有していると、突出部21b1を覆う耐熱性材料41が引っ掛かりとなって、耐熱性材料41が有底孔13から脱落することを抑制できる。
このとき、
図13に示すように、突出部21b1に螺旋状の溝22が形成されていると、耐熱性材料41の引っ掛かりが強まるため、耐熱性材料41が有底孔13から脱落することをさらに抑制できる。
【0096】
本発明の燃焼室は、複数の棒状部材を有し、板状断熱材は複数の有底孔を有し、各有底孔の底面の貫通孔には棒状部材が貫通しており、板状断熱部材は、各棒状部材の他方の端部に固定される固定部材によって金属容器の内壁面に固定されていることが好ましい。このような場合は、複数の「棒状部材と固定部材の組」により1つの板状断熱材が金属容器の内壁面に固定されているともいえる。
このような場合の一例を、第5実施形態として以下に説明する。
【0097】
図14は、本発明の第5実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
図14に示す燃焼室5は、金属容器50と、金属容器50の内壁面である天面50aに配置された板状断熱材10と、棒状部材21と固定部材31とを有している。
板状断熱材10は、2つの有底孔13を有し、各有底孔13には、棒状部材21及び固定部材31が配置されている。すなわち、板状断熱材10は、2組の棒状部材21及び固定部材31によって、2箇所で金属容器50の天面50aに固定されている。
【0098】
本発明の燃焼室は、板状断熱材が、無機繊維を含む複数の断熱素体の集合体で構成されていてもよい。各断熱素体は、金属容器側を底面とし、板状断熱材の厚さ方向に沿って設けられた有底孔を有し、各上記有底孔の底面には、上記棒状部材が貫通する貫通孔が形成されていることが好ましい。そして、各断熱素体が、棒状部材及び固定部材によって金属容器の内壁面に固定されていることが好ましい。
このような場合の一例を、第6実施形態として以下に説明する。
【0099】
[第6実施形態]
図15は、本発明の第6実施形態に係る燃焼室の一例を模式的に示す断面図である。
図15に示す燃焼室6は、金属容器50と、金属容器50の内壁面である天面50aに配置された板状断熱材110と、棒状部材21と固定部材31とを有している。
板状断熱材110は、複数の断熱素体111、112の集合体である。
板状断熱材110が複数の断熱素体111、112の集合体で構成されていると、金属容器50の内壁面の形状が複雑な場合等に、金属容器の内壁面の形状に追従しやすいように、板状断熱材全体の形状を変化させやすくなる。
【0100】
断熱素体111、112は、それぞれ、相対的に面積が広い第1主面111a、112a及び第2主面111b、112bと、第1主面111a、112a及び第2主面111b、112bを連結する側面111c、112cを有する板状形状である。
断熱素体111、112はいずれも有底孔13を有し、それぞれ、棒状部材21及び固定部材31によって、金属容器50の天面50aに固定されている。
【0101】
断熱素体111と断熱素体112は、板状断熱材110の面方向(xy方向)に沿って互いに隙間なく接触している。すなわち、断熱素体111の側面111cの一方と断熱素体112の側面112cの一方とが隙間なく接触している。
面方向に対向する2つの断熱素体111、112が隙間なく接触していると、板状断熱材110の断熱性を高めることができる。
【0102】
板状断熱材が複数の断熱素体を含む場合、板状断熱材の面方向に沿って、複数の断熱素体が、その間に隙間が形成されるように配置されていてもよい。
この場合、該隙間には無機材料を含む第2の不定形材料が充填されていることが好ましい。
第2の不定形材料としては、第1の不定形材料と同様のものを好適に用いることができる。
【0103】
各断熱素体は、無機繊維を含んで構成される。
断熱素体を構成する無機繊維としては、本発明の板状断熱材を構成する無機繊維と同様のものを好適に用いることができる。
無機繊維以外の材料についても、本発明の板状断熱材と同様の材料を好適に用いることができる。
【0104】
断熱素体は、板状抄造体であることが好ましい。
断熱素体に設けられる有底孔の大きさについても、板状断熱材に設けられる有底孔と同様の大きさであることが好ましい。
【0105】
本発明の燃焼室において、板状断熱材は、金属容器の天面又は底面に配置されて、板状断熱材の側面と金属容器の内壁面との間には、無機材料を含む第3の不定形材料が充填されていてもよい。
第3の不定形材料としては、上述した第1の不定形材料と同様のものを好適に用いることができる。
【0106】
本発明の燃焼室は、燃焼室を備える装置に用いることができる。燃焼室を備える装置としては、例えば、ボイラ、給湯器等が挙げられる。
【0107】
[ボイラ]
本発明のボイラは、本発明の燃焼室を備えることを特徴とする。
本発明のボイラは、本発明の燃焼室を備えるため、断熱材固定用治具の腐食を抑制することができ、メンテナンス性が良好である。
【0108】
本発明のボイラの一例を、第7実施形態として以下に説明する。
【0109】
[第7実施形態]
図16は、本発明の第7実施形態に係るボイラの一例を模式的に示す断面図である。
ボイラ600は、燃焼室7と、燃焼室7内に配置された水管80とを有する。
燃焼室7は、金属容器60と、金属容器60の天面60aに配置された板状断熱材10及び底面60bに配置された板状断熱材10とを有する。板状断熱材10は、2組の棒状部材20及び固定部材30によって、2箇所で、金属容器60の天面60aに固定されている。2組の棒状部材20及び固定部材30は、それぞれ、板状断熱材10の有底孔13に収容され、有底孔13の開口は耐熱性材料40で覆われている。従って、燃焼室7は、本発明の燃焼室である。
水管80内には燃焼室7の下部から水が供給されており、水管80内を通過する水は、燃焼室7内で加熱されて水蒸気となり、燃焼室7の上部から排出される。
排出された水蒸気は、必要に応じて液体の水の分離や過熱を行った後、発電、暖房、洗浄、調理、乾燥、消毒、殺菌等の用途に用いられる。
【0110】
[給湯器]
本発明の給湯器は、本発明の燃焼室を備えることを特徴とする。
本発明の給湯器は、本発明の燃焼室を備えるため、断熱材固定用治具の腐食を抑制することができ、メンテナンス性が良好である。
【0111】
本発明の給湯器の一例を、第8実施形態として以下に説明する。
【0112】
[第8実施形態]
図17は、本発明の第8実施形態に係る給湯器の一例を模式的に示す断面図である。
給湯器700は、燃焼室8と、燃焼室8内に配置された熱交換器90を有する。
燃焼室8は、金属容器70と、金属容器70の天面70aに配置された板状断熱材10及び底面70bに配置された板状断熱材10とを有する。板状断熱材10は、2組の棒状部材20及び固定部材30によって、2箇所で、金属容器70の天面70aに固定されている。2組の棒状部材20及び固定部材30は、それぞれ、板状断熱材10の有底孔13に収容され、有底孔13の開口は耐熱性材料40で覆われている。従って、燃焼室8は、本発明の燃焼室である。
熱交換器90内には水が流れており、燃焼室8で熱交換器90内の水が加熱されて湯(温水)となり、給湯器700の外に湯(温水)が供給される。
【0113】
供給される湯の温度は、燃焼室で燃焼させる燃料の量、及び、単位時間あたりに熱交換器内を通過する水量を調整することにより適宜調整することができる。
【符号の説明】
【0114】
1、2、3、4、5、6、7、8 燃焼室
10 板状断熱材
10a 板状断熱材の第1主面
10b 板状断熱材の第2主面
10c 板状断熱材の側面
13、14 有底孔
13a、14a 有底孔の開口
13b、14b 有底孔の底面
16 貫通孔(第1の貫通孔)
17 凹部
18 溝
20 棒状部材
21 棒状部材(寸切りボルト)
20a、21a 棒状部材の一方の端部
20b、21b 棒状部材の他方の端部
21b1 突出部
22 螺旋状の溝(雄ねじ)
30 固定部材
31 固定部材(ナット)
32 螺旋状の溝(雌ねじ)
40、41 耐熱性材料
50、60、70 金属容器
50a、60a、70a 金属容器の天面
50b、60b、70b 金属容器の底面
50c 金属容器の内側面
80 水管
90 熱交換器
110 板状断熱材
111、112 断熱素体
111a、112a 断熱素体の第1主面
111b、112b 断熱素体の第2主面
111c、112c 断熱素体の側面
600 ボイラ
700 給湯器