IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図1
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図2
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図3
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図4
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図5
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図6
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図7
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図8
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図9
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図10
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図11
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図12
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図13
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図14
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図15
  • 特開-蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074905
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
F28D20/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188087
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】上松 康二
(72)【発明者】
【氏名】槙井 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和雄
(57)【要約】
【課題】蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体において、蓄熱体の輸送性を向上させ、蓄放熱サイクルの回数の増加による蓄熱効率の低下を抑制する。
【解決手段】蓄熱システム1は、結晶構造を有し、固体のまま液化することなく蓄熱する蓄熱部11と、蓄熱部11を収容するケーシング12とを有する、可搬の蓄熱体10と、蓄熱体10に低温流体を接触させることによって、低温流体の熱を蓄熱体10に蓄えさせる蓄熱装置20と、蓄熱体10に圧力を印加することによって、蓄熱体10に蓄熱された熱を放出させ、作業流体を加熱する放熱装置30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造を有し、固体のまま液化することなく蓄熱する蓄熱部と、前記蓄熱部を収容するケーシングとを有する、可搬の蓄熱体と、
前記蓄熱体に低温流体を接触させることによって、前記低温流体の熱を前記蓄熱体に蓄えさせる蓄熱装置と、
前記蓄熱体に圧力を印加することによって、前記蓄熱体に蓄熱された前記熱を放出させ、作業流体を加熱する放熱装置と
を備える、蓄熱システム。
【請求項2】
前記蓄熱体は、板状である、請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記蓄熱部は、前記結晶構造の変化によって蓄熱及び放熱する、請求項1又は2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
結晶構造を有し、固体のまま液化することなく蓄熱する蓄熱部と、前記蓄熱部を収容するケーシングとを有する、可搬の蓄熱体を準備し、
蓄熱施設において、前記蓄熱体に低温流体を接触させることによって、前記低温流体の熱を前記蓄熱体に蓄えさせ、
蓄熱された前記蓄熱体を放熱施設に移送し、
前記放熱施設において、前記蓄熱体に圧力を印加することによって、前記蓄熱体に蓄熱された前記熱を放出させ、作業流体を加熱し、
放熱された前記蓄熱体を前記蓄熱施設に移送する、蓄熱方法。
【請求項5】
結晶構造を有し、前記結晶構造の変化によって蓄熱及び放熱する蓄熱部と、前記蓄熱部を覆うケーシングとを有する、可搬かつ板状の蓄熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所などの工場で発生する排熱のうち、200℃以上の排熱は、工場付近の様々な施設で利用されている。しかし、200℃未満の排熱に関しては、未利用のまま大気中に放出されている。
【0003】
特許文献1には、工場等の排熱を蓄熱体に蓄熱し、工場等から離れた場所に輸送して、蓄熱された熱を利用する蓄熱システムが記載されている。この排熱システムでは、蓄放熱サイクル、つまり、蓄熱と放熱とのサイクルが繰り返し行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-190747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の蓄熱システムでは、固体から液体に状態変化した際の潜熱を利用する蓄熱体が用いられているため、液体の蓄熱体を水密に保持する必要があり、蓄熱体の容器が複雑化し大型化する。また、潜熱を利用した蓄熱体では、蓄放熱サイクルの回数が増加すると、蓄熱効率が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体において、蓄熱体の輸送性を向上させ、蓄放熱サイクルの回数の増加による蓄熱効率の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、結晶構造を有し、固体のまま液化することなく蓄熱する蓄熱部と、前記蓄熱部を収容するケーシングとを有する、可搬の蓄熱体と、前記蓄熱体に低温流体を接触させることによって、前記低温流体の熱を前記蓄熱体に蓄えさせる蓄熱装置と、前記蓄熱体に圧力を印加することによって、前記蓄熱体に蓄熱された前記熱を放出させ、作業流体を加熱する放熱装置とを備える、蓄熱システムを提供する。
【0008】
前記の構成によれば、可搬の蓄熱体に低温流体の熱を蓄え、蓄熱された蓄熱体を別の場所に運搬して作業流体に放熱することで、低温流体の熱を別の場所で利用することができる。ここで、可搬とは人力で持ち運べることを意味する。すなわち、蓄熱体の取り扱いに特別な機械を必要とせず、容易に熱を持ち運ぶことができる。また、蓄熱部は固体のまま蓄熱され、蓄熱部に熱が加えられたとしても液体や気体となることはない。つまり、蓄熱部は潜熱を利用しないため、蓄放熱サイクルの回数の増加による蓄熱効果の低下が抑制され得る。また、ケーシングに水密性が要求されず、ケーシングを小型化できるため、蓄熱体の輸送性が向上し得る。
【0009】
前記蓄熱体は、板状であってもよい。
【0010】
前記の構成によれば、蓄熱体を並べることや重ねることが容易になるため、蓄熱等の際の場所を有効に利用することができる。すなわち、蓄熱システムの運転効率が向上し得る。
【0011】
前記蓄熱部は、前記結晶構造の変化によって蓄熱及び放熱してもよい。
【0012】
前記の構成によれば、蓄熱部に工場等の排熱を吸熱させることによって結晶構造が変化し、結晶が熱エネルギーを保持する。そして、蓄熱部に外部から圧力を加えることによって結晶構造が変化し、結晶に保持されている熱エネルギーを外部に放出する。このように、熱エネルギーの保持と放出とが、結晶構造の変化に伴って繰り返し行われる。このような結晶構造の変化を利用した蓄熱部では、蓄熱部に所定の圧力を印加しない限り放熱されることはない。すなわち、蓄熱部における熱の保持効率が高く、蓄熱システムにおける熱の損失を低減できる。
【0013】
本発明の第2の態様は、結晶構造を有し、固体のまま液化することなく蓄熱する蓄熱部と、前記蓄熱部を収容するケーシングとを有する、可搬の蓄熱体を準備し、蓄熱施設において、前記蓄熱体に低温流体を接触させることによって、前記低温流体の熱を前記蓄熱体に蓄えさせ、蓄熱された前記蓄熱体を放熱施設に移送し、前記放熱施設において、前記蓄熱体に圧力を印加することによって、前記蓄熱体に蓄熱された前記熱を放出させ、作業流体を加熱し、放熱された前記蓄熱体を前記蓄熱施設に移送する、蓄熱方法を提供する。
【0014】
前記の構成によれば、可搬の蓄熱体に低温流体の熱を蓄え、蓄熱された蓄熱体を別の場所に持っていき作業流体に放熱することで、低温流体の熱を別の場所で利用することができる。ここで、可搬とは人力で持ち運べることを意味する。すなわち、蓄熱体の取り扱いに特別な機械を必要とせず、容易に熱を持ち運ぶことができる。また、蓄熱部は固体のまま蓄熱され、蓄熱部に熱が加えられたとしても液体や気体となることはない。そのため、ケーシングに水密性が要求されず、ケーシングを小型化できるため、蓄熱体の輸送性が向上し得る。さらに、蓄熱部は潜熱を利用しないため、蓄放熱サイクルの回数の増加による蓄熱効果の低下が抑制され得る。
【0015】
本発明の第3の態様は、結晶構造を有し、前記結晶構造の変化によって蓄熱及び放熱する蓄熱部と、前記蓄熱部を覆うケーシングとを有する、可搬かつ板状の蓄熱体を提供する。
【0016】
前記の構成によれば、蓄熱体に所定の圧力を印加しない限り放熱されることはない。すなわち、蓄熱体における熱の保持効率が高く、熱の損失を低減できる。また、可搬とは人力で持ち運べることを意味する。すなわち、蓄熱体の取り扱いに特別な機械を必要とせず、容易に熱を持ち運ぶことができる。さらに、蓄熱体が板状であるため、蓄熱体を並べることや重ねることが容易となり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓄熱システム、蓄熱方法、及び蓄熱体によれば、蓄熱体の輸送性を向上させ、蓄放熱サイクルの回数の増加による蓄熱効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱システムの概略を示す図。
図2】蓄熱体の正面図。
図3図2の蓄熱体の側面図。
図4】蓄熱装置の概略図。
図5】放熱装置の概略図。
図6】蓄熱体の変形例の正面図。
図7図6の蓄熱体の側面図。
図8】蓄熱体の変形例の正面図。
図9図8の蓄熱体の側面図。
図10】蓄熱体の変形例の正面図。
図11図10の蓄熱体の側面図。
図12】蓄熱装置の変形例の概略図。
図13】放熱装置の変形例の概略図。
図14】放熱装置の変形例の概略図。
図15】放熱装置の変形例の概略図。
図16】放熱装置の変形例の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態における蓄熱システム1の全体構成を示す概略図である。蓄熱システム1は、蓄熱体10、工場(蓄熱施設)2、施設(放熱施設)3、及び輸送車両4を備える。工場2で蓄熱された蓄熱体10は、トラック等の輸送車両4によって、施設3に移送され、施設3で放熱される。放熱された蓄熱体10は、輸送車両4によって、再び工場2に移送され、工場2で蓄熱される。このように、蓄熱システム1では、工場2における蓄熱体10への蓄熱と、施設3における蓄熱体からの放熱とが繰り返し行われる。換言すると、蓄熱システム1では、蓄放熱サイクル、つまり、蓄熱と放熱とのサイクルが繰り返し行われる。
【0020】
本実施形態では、工場2は、製鉄所であるが、これに限定されず、ごみ焼却場、発電所、又はその他の任意の熱を発生させる設備等であってもよい。工場2では、様々な温度帯の排熱が生じている。様々な温度帯の排熱のうち、例えば200℃以上の高温排熱は、パイプラインを介して工場2内の発電設備やボイラーなどに利用されている。一方で、例えば200℃未満の低温排熱(低温流体)は、工場内では利用されず大気中に放出されている。本実施形態では、工場内で使用されずに大気中に放出されている200℃未満の低温排熱の熱を蓄熱体10に蓄えている。低温排熱は、200℃未満に限定されず、工場内で使用されない未利用熱の全てを含む。
【0021】
また、本実施形態では、施設3は、病院であるが、これに限定されず、温水プール、建築構造物の温度調整装置、又は他の任意の熱を利用する施設等であってもよい。後に詳述するように、施設3では、蓄熱体10に蓄えられた熱によって、水(作業流体)が加熱され、温水として利用者に届けられる。
【0022】
工場2で蓄熱された蓄熱体10は、輸送車両4の荷台に載せられ、施設3に移送される。後に詳述するが、蓄熱体10は、人力で容易に持ち運べる大きさであり、人力によって輸送車両4の荷台に載せられる。
【0023】
また、施設3で放熱された蓄熱体10は、再び輸送車両4の荷台に載せられ、工場2に移送され、低温排熱によって蓄熱される。
【0024】
図2及び図3を参照すると、蓄熱体10は、蓄熱部11と、蓄熱部11を収容するケーシング12とを有する。
【0025】
蓄熱部11は、結晶構造を有する素材で形成されており、固体のまま液化することなく蓄熱及び放熱する。詳細には、蓄熱部11は、常温において固体状態で安定に存在できる結晶構造Aと結晶構造Bとをとることができる素材で形成される。すなわち、外部から熱エネルギーを吸収して結晶構造Aから結晶構造Bへ変化することによって固体のまま蓄熱し、外部へエネルギーを放出して結晶構造Bから結晶構造Aへ変化することによって固体のまま放熱する。換言すると、蓄熱部11は、結晶構造の変化によって固体のまま蓄熱及び放熱する。このように、蓄熱部11は、蓄熱時及び放熱時において、液化や気化することはないことを特徴とする。蓄熱部11は、例えば、五酸化三チタン(Ti)を利用でき、この場合はβ相とγ相の相転移を利用する。
【0026】
本実施形態では、ケーシング12は、金属製の板状で、略矩形である。つまり、蓄熱体10は、板状である。好ましくは、ケーシング12はアルミニウム合金製又は鉄鋼製である。ケーシング12は、後述のプレス上部32(図5参照)及びプレス下部33(図5参照)によって圧力が印加される一対のプレス面12a,12bと、一対のプレス面12a,12bの長辺を接続する一対の側面12c,12dと、一対のプレス面12a,12bの短辺を接続する上面12e及び下面12fとを備える。本実施形態では、ケーシング12の上面12e側には、蓄熱体10を把持できるように、取手12gが設けられている。また、ケーシング12の内部には、一対のプレス面12a,12b、一対の側面12c,12d、上面12e、及び下面12fによって画定された空間13が設けられている。空間13には、蓄熱部11が収容されている。
【0027】
本実施形態では、蓄熱部11は、板状に成形され、空間13に隙間が生じないように収容されている。換言すると、蓄熱部11の全ての表面はケーシング12に接している。蓄熱部11は、粉末状のまま、空間13に密封されていてもよい。
【0028】
本実施形態では、蓄熱体10は、人力で持ち運ぶことができる、つまり、可搬である。好ましくは、蓄熱体10の幅wは約200mmで、高さhは約300mmで、厚みtは約10mmである。
【0029】
図4を参照すると、工場2は、蓄熱装置20を備える。蓄熱装置20は、ベルトコンベア21と排熱口22とを有する。排熱口22は、工場2に接続され、工場2の低温排熱を吐出する。複数の蓄熱体10が収納されたコンテナ5は、ベルトコンベア21上に載置され、ベルトコンベア21によって運ばれる。ベルトコンベア21によって運ばれた蓄熱体10は、排熱口22を介して、低温排熱に接触させられる。この際、蓄熱部11(図2参照)は、結晶構造Aから結晶構造Bに変化し、低温排熱の熱を蓄熱部11(図2参照)に蓄える。
【0030】
図5を参照すると、施設3は、プレス上部32とプレス下部33とを有する放熱装置30を備える。蓄熱された蓄熱体10は、プレス上部32とプレス下部33とによって挟み込まれるように圧力が印加される。この際、蓄熱部11(図2参照)は、結晶構造Bから結晶構造Aに変化することで、蓄熱体10に蓄えられた熱を放出する。プレス上部32とプレス下部33とによって印加される圧力は、例えば、70MPaである。
【0031】
本実施形態では、放熱装置30は、プレス上部32の内部に設けられた上部流路34と、プレス下部33の内部に設けられた下部流路35とを備える。上部流路34と下部流路35とには、水(作業流体)が流れる。上部流路34及び下部流路35のそれぞれの一端は、施設3に接続されている。上部流路34及び下部流路35に供給された水は、プレス上部32及びプレス下部33を通る際に蓄熱体10から放出された熱によって加熱され、施設3へと戻っていく。例えば、施設3へと戻った温水は、温水プールなどに利用される。
【0032】
以下に、図1図4、及び図5を参照して、本実施形態における蓄熱体10の蓄熱方法について説明する。
【0033】
まず、工場2において、蓄熱装置20を用いて排熱口22から排出される低温排熱を蓄熱体10に接触させることによって、低温排熱の熱を蓄熱体10に蓄えさせる。
【0034】
次に、工場2において蓄熱された蓄熱体10は、輸送車両4により、施設3に移送される。
【0035】
その後、施設3において、放熱装置30を用いて蓄熱体10に圧力を印加することによって、蓄熱体10に蓄熱された熱を放出させ、上部流路34と下部流路35とを流れる水を加熱する。
【0036】
そして、施設3において放熱された蓄熱体10は、再度、工場2に移送され、蓄熱される。
【0037】
本実施形態によれば、可搬の蓄熱体10に低温排熱の熱を蓄え、蓄熱された蓄熱体10を別の場所に運搬して水に放熱することで、低温排熱の熱を別の場所で利用することができる。ここで、可搬とは人力で持ち運べることを意味する。すなわち、蓄熱体10の取り扱いに特別な機械を必要とせず、容易に熱を持ち運ぶことができる。また、蓄熱部11は固体のまま蓄熱され、蓄熱部11に熱が加えられたとしても液体や気体となることはない。つまり、蓄熱部11は潜熱を利用しないため、蓄放熱サイクルの回数の増加による蓄熱効果の低下が抑制され得る。また、ケーシング12に水密性が要求されず、ケーシング12を小型化できるため、蓄熱体10の輸送性が向上し得る。
【0038】
また、蓄熱体10は板状であることから、蓄熱体10を並べることや重ねることが容易になるため、蓄熱等の際の場所を有効に利用することができる。すなわち、蓄熱システム1の運転効率が向上し得る。
【0039】
さらに、蓄熱部11に工場2等の排熱を吸熱させることによって結晶構造が結晶構造Aから結晶構造Bへと変化し、結晶が熱エネルギーを保持する。そして、蓄熱部11に外部から圧力を加えることによって結晶構造が結晶構造Bから結晶構造Aへと変化し、結晶に保持されている熱エネルギーを外部に放出する。このように、熱エネルギーの保持と放出とが、結晶構造の変化に伴って繰り返し行われる。このような結晶構造の変化を利用した蓄熱部11では、蓄熱部11に所定の圧力を印加しない限り放熱されることはない。すなわち、蓄熱部11における熱の保持効率が高く、蓄熱システム1における熱の損失を低減できる。
【0040】
図6及び図7を参照すると、蓄熱体10の変形例では、ケーシング12の一対のプレス面12a,12bにはそれぞれ、切欠き部12hが中心部に設けられており、蓄熱部11の一部が露出している。そのため、蓄熱部11は、ケーシング12を介さず、蓄熱及び放熱され得る。その結果、蓄熱及び放熱が効率よく行われ得る。
【0041】
図8及び図9を参照すると、蓄熱体10の他の変形例では、ケーシング12の一対のプレス面12a,12bにはそれぞれ、切欠き部12hが中心部に設けられている。また、ケーシング12の側面12cには、蓄熱部11の大きさに合わせて開放された開放部12iが設けられている。そのため、蓄熱部11は、ケーシング12の側面12cから差し込まれるように収容される。従って、ケーシング12へ蓄熱部11を容易に収容できる。
【0042】
図10及び図11を参照すると、蓄熱体10のさらに他の変形例では、蓄熱部11は、板状ではなく、円柱状である。空間13に、円柱状の蓄熱部11が9個収容されている。そのため、蓄熱部11の体積当たりの表面積が増加し、蓄熱効率と放熱効率とが向上し得る。
【0043】
図12を参照すると、蓄熱装置20の変形例では、蓄熱装置20は、ベルトコンベア21(図4参照)を有さず、蓄熱室23を有する。好ましくは、蓄熱室23は、図示しない断熱材で覆われている。蓄熱室23には、工場2の低温排熱が供給される給熱口24が設けられており、蓄熱室23内の室温が低温排気によって加熱される。コンテナ5に収容され、蓄熱室23に配置された複数の蓄熱体10は、加熱された室温によって蓄熱される。そのため、多くの蓄熱体10に対して一度に蓄熱することができる。
【0044】
図13を参照すると、放熱装置30の変形例では、放熱装置30は、上部流路34(図5参照)と下部流路35(図5参照)とを有さず、注水口36と、受水部37とを有する。注水口36からプレス上部32、プレス下部33、及び蓄熱体10に向かって水が注がれる。注がれた水は、プレス上部32、プレス下部33、及び蓄熱体10に接した後、受水部37に流れ落ちる。蓄熱体10に注がれた水は、蓄熱体10から放出された熱によって加熱される。加熱された水は、受水部37へと流れ、排水管38を介して施設3に送られる。蓄熱体10と水とが直接的に接するため、蓄熱体10と水との熱交換効率が向上し得る。
【0045】
図14を参照すると、放熱装置30の他の変形例では、放熱装置30は、上部流路34(図5参照)と下部流路35(図5参照)とを有さず、注水口36と、蓄水部39とを有する。蓄水部39には水が満たされており、プレス上部32、プレス下部33、及び蓄熱体10は、蓄水部39に満たされた水中に配置されている。蓄熱体10がプレス上部32とプレス下部33とによって水中で加圧されることによって、蓄熱部11から熱が放出され、蓄水部39内の水が加熱される。加熱された水は、排水管38を介して施設3に送られる。蓄水部39には、施設3に送られた水と同量の水が注水口36から供給される。蓄熱体10が水中で放熱しているため、蓄熱体10と水との熱交換効率が向上し得る。
【0046】
図15を参照すると、放熱装置30のさらに他の変形例では、放熱装置30には、プレス下部33(図5参照)と下部流路35(図5参照)とが設けられておらず、プレス台40が設けられている。プレス台40は、プレス上部32から加えられる圧力に耐え得る程度の強度で構成された台である。この変形例では、プレス台40には、下部流路は設けられていない。プレス台40が設けられていることで、プレス下部33(図5参照)を設ける必要がないため、放熱装置30は簡素化され得る。
【0047】
図16を参照すると、放熱装置30のさらに他の変形例では、放熱装置30には、プレス下部33(図5参照)が設けられておらず、プレス第40が設けられている。また、プレス台40には、下部流路35が設けられている。プレス台40は、プレス上部32から加えられる圧力に耐え得る程度の強度で構成された台である。プレス台40が設けられていることで、プレス下部33(図5参照)を設ける必要がないため、放熱装置30は簡素化され得る。また、プレス台40には、下部流路35が設けられているため、蓄熱体10と水との熱交換効率が向上し得る。
【符号の説明】
【0048】
1 蓄熱システム
2 工場(蓄熱施設)
3 施設(放熱施設)
4 輸送車両
5 コンテナ
10 蓄熱体
11 蓄熱部
12 ケーシング
12a,12b プレス面
12c,12d 側面
12e 上面
12f 下面
12g 取手
12h 切欠き部
12i 開放部
13 空間
20 蓄熱装置
21 ベルトコンベア
22 排熱口
23 蓄熱室
24 給熱口
30 放熱装置
32 プレス上部
33 プレス下部
34 上部流路
35 下部流路
36 注水口
37 受水部
38 排水管
39 蓄水部
40 プレス台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16